特許第6799596号(P6799596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘプタレス セラピューティクス リミテッドの特許一覧

特許6799596ムスカリンM1及び/またはM4受容体のアゴニストとしてのオキシム化合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799596
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ムスカリンM1及び/またはM4受容体のアゴニストとしてのオキシム化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20201214BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20201214BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20201214BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20201214BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20201214BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20201214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201214BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C07D401/04CSP
   A61K31/55
   A61K31/454
   A61P25/28
   A61P25/04
   A61P25/30
   A61P43/00 111
   A61P25/00
【請求項の数】18
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2018-522540(P2018-522540)
(86)(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公表番号】特表2018-536653(P2018-536653A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】GB2016053396
(87)【国際公開番号】WO2017077292
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2019年7月17日
(31)【優先権主張番号】1519352.7
(32)【優先日】2015年11月2日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514120896
【氏名又は名称】ヘプタレス セラピューティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Heptares Therapeutics Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジャイルズ・アルバート
(72)【発明者】
【氏名】テハン,ベンジャミン・ジェラルド
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−528489(JP,A)
【文献】 特表2015−501799(JP,A)
【文献】 特表2008−521821(JP,A)
【文献】 特表2000−501117(JP,A)
【文献】 特表平11−501014(JP,A)
【文献】 特表2002−543186(JP,A)
【文献】 Meanwell, N. A.,Synopsis of Some Recent Tactical Application of Bioisosteres in Drug Design,Journal of Medicinal Chemistry,2011年,54,pp. 2529-2591,DOI: 10.1021/jm1013693
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY/MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
の化合物またはその塩であって、式中、
pは0、1または2であり、
qは0、1または2であり、
YはN、O、SまたはCであり、
及びXは、全体として合計4〜9の炭素原子を含有し、且つ互いに結合し、部分
【化2】
が単環式または二環式の環系を形成するような飽和炭化水素基であり、
は、任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜6非芳香族炭化水素基であって、前記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい前記炭化水素基であり、
任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜6非芳香族炭化水素基であり、
は、水素、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1〜3アルコキシ、及び任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜5非芳香族炭化水素基であって、前記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい前記炭化水素基から選択され、
は、Hまたは任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜6非芳香族炭化水素基であって、前記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい前記炭化水素基であり、
はフッ素であり、
はフッ素である
前記化合物またはその塩。
【請求項2】
が、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルから選択される、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチルから選択される、請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
が、水素、フッ素及びメトキシから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
が、水素、メチル、エチル、エチニル及び1−プロピニルから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
pが0である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
qが0である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
前記部分
【化3】
によって形成される前記二環式環系が、
(a)ピペリジンと、
(b)アゼパンと、
(c)アザビシクロ−オクタンまたはアザビシクロ−ノナン環系と、
(d)2−アザ−スピロ[3.4]オクタンまたは6−アザ−スピロ[3.4]オクタン環系と、
(e)シクロペンタノピロリジン環系と
から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項9】
前記部分
【化4】
によって形成される前記二環式環系が、以下の環系
【化5】
から選択される、請求項8に記載の化合物またはその塩。
【請求項10】
式(2)
【化6】
を有し、
式中、R、R、R、R、R、Y及びpは請求項1〜6のいずれか1項に定義されるとおりであり、sは0または1であり、tは0または1である、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項11】
4−{4−[N−メトキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
(4S)−4−{4−[N−メトキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
(4S)−4−{4−[N−メトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシブタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
(4S)−4−{4−[N−メトキシブタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシ−2−メチルプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル
4−{4−[N−メトキシ−2−メチルプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシ−4−メチルペンタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−エトキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−プロポキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−(プロパン−2−イルオキシ)エタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−エトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−プロポキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−(プロパン−2−イルオキシ)プロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
2−{4−[N−メトキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル、
2−{4−[N−メトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル、
2−{4−[N−メトキシブタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル、
4−{4−[N’−メトキシ−N−(2−メチルプロピル)カルバムイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−(4−{シアノ[(プロパン−2−イルオキシ)イミノ]メチル}ピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル
から選択される、化合物またはその塩
【請求項12】
4−{4−[N−メトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシブタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシ−2−メチルプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシ−2−メチルプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−(プロパン−2−イルオキシ)プロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
2−{4−[N−メトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル、
2−{4−[N−メトキシブタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル
から選択される、請求項11に記載の化合物またはその塩。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む医薬。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む、認知障害もしくは精神障害の治療用の、あるいは急性、慢性、神経障害性、もしくは炎症性疼痛の治療または重篤度の軽減用の医薬。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載される化合物またはその塩及び薬学的に許容される医薬添加剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
ムスカリンM受容体及び/またはM受容体アゴニスト活性を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【請求項17】
及びM受容体サブタイプと比較してM及びM受容体に対する選択性を示す、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む、アルツハイマー病、レビー小体型認知症及び他の認知障害の治療用の、または急性、慢性、神経障害性、もしくは炎症性疼痛の治療または重篤度の軽減用の、または依存症の治療用の、または運動障害の治療用の医薬。
【請求項18】
、M及びM受容体サブタイプと比較してM受容体に対する選択性を示す、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む、統合失調症または他の精神病性障害の治療用の、または急性、慢性、神経障害性、もしくは炎症性疼痛の治療または重篤度の軽減用の、または依存症の治療用の、または運動障害の治療用の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はある種の新規なオキシム化合物、それらの塩、それらを含有する医薬組成物及び人体の治療におけるそれらの使用に関する。詳細には、本発明は、ムスカリンM及び/またはM受容体のアゴニストであり、延いてはアルツハイマー病、統合失調症、認知障害及びムスカリンM/M受容体によって媒介される他の疾患の治療、ならびに疼痛の治療または緩和に有用なある種の化合物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)は、中枢神経系及び末梢神経系の両方において神経伝達物質アセチルコリンの作用を媒介する、Gタンパク質共役型受容体スーパーファミリーに属する。5種のmAChRサブタイプ、M〜Mがクローニングされている。M mAChRは主として皮質、海馬、線条体及び視床においてシナプス後部で発現され、M mAChRは主として脳幹及び視床に位置するが、皮質、海馬及び線条体にも位置し、これらにおいてM mAChRはコリン作動性シナプス終末に存在する(Langmead et al.,2008 Br J Pharmacol)。但し、M mAChRは、心臓組織上(ここではM mAChRが心臓の迷走神経支配を媒介する。)ならびに平滑筋及び外分泌腺中でも末梢性に発現される。M mAChRはCNSにおいて比較的低レベルで発現されるが、平滑筋ならびに汗腺及び唾液腺などの腺組織において広範に発現される(Langmead et al.,2008 Br J Pharmacol)。
【0003】
中枢神経系におけるムスカリン受容体、特にM mAChRは、より高度な認知過程の媒介において重要な役割を果たす。アルツハイマー病などの認知障害に関連する疾患は、基底前脳におけるコリン作動性ニューロンの喪失を伴う(Whitehouse et al.,1982 Science)。統合失調症(これも認知障害を特徴とする)にあっては、統合失調症患者の前頭前皮質、海馬及び尾状核被殻においてmAChR密度が減少する(Dean et al., 2002 Mol Psychiatry)。更に動物モデルにおいて、中枢コリン作動性経路の遮断または病変が重度の認知障害を引き起こし、精神病患者において、非選択性mAChRアンタゴニストが精神異常発現性作用を誘導することが明らかになっている。コリン作動薬置換療法は、主として内因性アセチルコリンの分解を防ぐためのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用に基づいている。これらの化合物は、臨床において症候性認知低下に対する有効性を示したが、胃腸運動の障害、徐脈、悪心及び嘔吐を含む、末梢のM及びM mAChRの刺激に起因する用量を制限する副作用を引き起こす(http://www.drugs.com/pro/donepezil.htmlhttp://www.drugs.com/pro/rivastigmine.html)。
【0004】
認知機能の向上を狙った直接的なM mAChRアゴニストの特定を目標として、更なる発見に向けた努力が行われている。かかる努力の結果、キサノメリン、AF267B、サブコメリン、ミラメリン及びセビメリンなどの化合物を例とする様々なアゴニストが特定された。これらの化合物の多くは、げっ歯動物及び/または非ヒト霊長動物の両方における認知の前臨床モデルにおいて非常に有効であることが明らかになっている。ミラメリンは、げっ歯動物においてスコポラミン誘発性の作業記憶及び空間記憶の低下に対する有効性を示しており、サブコメリンは、マーモセットにおいて視覚対象識別タスクで有効性を示し、キサノメリンは、受動回避パラダイムにおけるmAChRアンタゴニスト誘発性の認知能力の低下を回復させた。
【0005】
アルツハイマー病(AD)は、高齢者が罹患する最も一般的な神経変性疾患であり(2006年において全世界で2,660万人)、重度の記憶喪失及び認知機能障害をもたらす。この疾患の病因論は複雑であるが、2種の顕著な特性である脳の続発症、すなわち、主としてアミロイドβペプチド(Aβ)からなるアミロイド斑の凝集、及び過剰リン酸化されたタウタンパク質によって形成される神経原線維の濃縮体を特徴とする。Aβの蓄積はADの進行における中心的な特徴であると考えられており、したがって、ADの治療のための多くの推測される療法は、現在はAβ産生の阻害を標的としている。Aβは、膜結合性のアミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解開裂に由来する。APPは、非アミロイド形成性及びアミロイド形成性の2つの経路によってプロセッシングを受ける。γ−セクレターゼによるAPPの開裂は両方の経路に共通であるが、前者においては、APPがα−セクレターゼによって開裂し、可溶性APPαを生じる。開裂部位はAβ配列内にあり、それによりAβの形成を妨げる。しかし、アミロイド形成性の経路では、APPがβ−セクレターゼによって開裂し、可溶性のAPPβ及びAβも生じる。イン・ビトロでの研究において、mAChRアゴニストが、可溶性の非アミロイド形成性の経路へ向かうAPPのプロセッシングを促進し得ることが明らかになっている。イン・ビトロでの研究において、mAChRアゴニストであるAF267Bが、アルツハイマー病の異なる構成要素のモデルである3xTgAD遺伝子導入マウスの疾患様の病状を変化させることが明らかになった(Caccamo et al., 2006 Neuron)。最後に、mAChRアゴニストであるセビメリンは、アルツハイマー病患者におけるAβの脳脊髄液レベルを、少ないながらも有意に低下させることが明らかになっており、したがって潜在的な疾患修飾の有効性を実証している(Nitsch et al.,2000 Neurol)。
【0006】
更に、前臨床研究において、mAChRアゴニストが様々な前臨床パラダイムにおける非定型抗精神病薬様のプロファイルを示すことが示唆されている。mAChRアゴニストであるキサノメリンは、ラットにおけるアンフェタミン誘導性のロコモーション(locomotion)、マウスにおけるアポモルフィン誘導性のよじ登り(climbing)、一側性6−OH−DA損傷ラットにおけるドーパミンアゴニスト駆動性の回転(turning)、及びサル(EPS(錐体外路症状)に対する易発症性のない)におけるアンフェタミン誘導性の運動過多(motor unrest)を含む多くのドーパミン駆動性の挙動を回復させる。キサノメリンはラットにおいて、A10は抑制するがA9、ドーパミン細胞発火及び条件回避は抑制せず、前頭前野皮質及び側坐核においてはc−fosの発現を誘導するが、線条体においてはこれを誘導しないことも明らかになっている。これらのデータは全て非定型抗精神病薬様のプロファイルを示唆している(Mirza et al., 1999 CNS Drug Rev)。ムスカリン受容体はまた、依存症の神経生物学とも関係付けられてきた。コカイン及び他の依存性物質の強化効果は中脳辺縁ドーパミン系によって媒介され、この中脳辺縁ドーパミン系においては、コリン作動性ムスカリン受容体サブタイプがドーパミン作動性神経伝達の調節に重要な役割を果たすことが、行動学的及び神経化学的研究によって明らかになっている。例えば、M(4)(−/−)マウスにおいて、コカインへの曝露の結果として、報酬駆動型行動が有意に亢進したことが実証された(Schmidt et al Psychopharmacology (2011) Aug;216(3):367−78)。更にキサノメリンは、これらのモデルにおいてコカインの効果を遮断することが実証されている。
【0007】
キサノメリン、サブコメリン、ミラメリン及びセビメリンは全て、アルツハイマー病及び/または統合失調症の治療のための臨床開発の様々な段階に進んでいる。キサノメリンを用いた第II相治験において、アルツハイマー病に関連する行動障害及び幻覚を含む様々な認知症の症状領域に対するキサノメリンの有効性が実証された(Bodick et al.,1997 Arch Neurol)。この化合物はまた、統合失調症の小規模なフェーズ第II相治験においても評価を受け、プラセボ対照と比較して陽性症状及び陰性症状を有意に低減させた(Shekhar et al.,2008 Am J Psych)。しかしながら、全ての臨床試験において、キサノメリン及び他の関連mAChRアゴニストが示す、吐き気、胃腸の痛み、下痢、発汗(過度の発汗)、唾液分泌亢進(過度の唾液分泌)、失神及び徐脈を含むコリン作動性副作用に関する安全域は容認できないものであった。
【0008】
ムスカリン受容体は中枢及び末梢の疼痛に関与する。疼痛は3種の異なる類型、すなわち、急性、炎症性、及び神経障害性に分類することができる。急性疼痛は、組織損傷を引き起こす可能性がある刺激から生物を安全に保つために重要な保護機能を果たすが、手術後疼痛の管理が必要とされる。炎症性疼痛は、組織損傷、自己免疫応答、及び病原体侵入を含む多くの理由で起こり得るが、神経ペプチド及びプロスタグランジンなどの炎症メディエータの作用によって誘発され、神経炎症及び疼痛を生じる。神経障害性疼痛は非疼痛性刺激に対する異常な疼痛感覚と関連がある。神経障害性疼痛は、脊髄損傷、多発性硬化症、糖尿病(糖尿病性神経障害)、ウイルス感染(HIVまたはヘルペスなど)などの多くの異なる疾患/外傷と関連がある。神経障害性疼痛はまた、疾患の結果として、または化学療法の副作用としての両方で、がんにおいても一般的に見られる。ムスカリン受容体の活性化には、脊髄及び脳のより高い疼痛中心における受容体の活性化を介して、多くの疼痛状態にわたって鎮痛性があることが明らかになっている。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤によるアセチルコリンの内因性レベルの増加、アゴニストまたはアロステリック調節剤によるムスカリン受容体の直接的な活性化は鎮痛活性があることが明らかになっている。それに対して、アンタゴニストでムスカリン受容体を遮断するまたはノックアウトマウスを用いると疼痛感受性が増加する。疼痛におけるM受容体の上記役割に対する証左は、D.F.Fiorino and M.Garcia−Guzman,2012によって概説されている。
【0009】
ごく最近になって、末梢に発現するmAChRサブタイプよりもM mAChRサブタイプに対する選択性の向上を示す少数の化合物が特定されている(Bridges et al.,2008 Bioorg Med Chem Lett;Johnson et al.,2010 Bioorg Med Chem Lett;Budzik et al.,2010 ACS Med Chem Lett)。これらの化合物のいくつかは、M mAChRサブタイプに対する選択性のレベルの増加にもかかわらず、このサブタイプ及びM mAChRサブタイプの両方に対して有意なアゴニスト活性を保持する。本明細書において、本発明者らは、M及びM受容体サブタイプよりもM及び/またはM mAChRに対して高いレベルの選択性を予想外に示す一連の化合物を説明する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、ムスカリンM及び/またはM受容体アゴニストとしての活性を有する化合物を提供する。より詳細には、本発明は、M及びM受容体サブタイプと比較してM及びM受容体に対する選択性を示す化合物を提供する。
【0011】
したがって、第1の実施形態(実施形態1.1)において、本発明は、
式(1)
【0012】
【化1】
【0013】
の化合物またはその塩であって、式中、
pは0、1または2であり、
qは0、1または2であり、
YはN、O、SまたはCであり、
及びXは、全体として合計4〜9の炭素原子を含有し、且つ互いに結合し、部分
【0014】
【化2】
【0015】
が単環式または二環式の環系を形成するような飽和炭化水素基であり、
は、任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜6非芳香族炭化水素基であって、上記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい上記炭化水素基であり、
はシアノまたは、任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜6非芳香族炭化水素基であって、上記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい上記炭化水素基であり、
は、水素、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1〜3アルコキシ、及び任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜5非芳香族炭化水素基であって、上記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい上記炭化水素基から選択され、
は、Hまたは任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜6非芳香族炭化水素基であって、上記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい上記炭化水素基であり、
はフッ素であり、
はフッ素である
上記化合物またはその塩を提供する。
【0016】
1.2 Rが、0、1または2の炭素−炭素多重結合を含有するC1〜6非芳香族炭化水素基であって、任意選択で1〜6のフッ素原子で置換され、且つ上記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい上記炭化水素基である、実施形態1.1に記載の化合物。
【0017】
1.3 Rが、C1〜6アルキル基、C2〜5アルケニル基、C2〜6アルキニル基、及びC3〜6シクロアルキル基もしくはC5〜6シクロアルケニル基からなるかまたはそれを含有するC1〜6非芳香族炭化水素基であって、それぞれが任意選択で1〜6のフッ素原子で置換され、且つ上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及び非芳香族炭化水素基のそれぞれの1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及び非芳香族炭化水素基から選択される、実施形態1.1及び1.2のいずれかに記載の化合物。
【0018】
1.4 RがC1〜4アルキルである、実施形態1.1〜1.3のいずれか1に記載の化合物。
1.5 Rが、
・メチル、
・エチル、
・プロピル、
・イソプロピル、
・ブチル
から選択される、実施形態1.4に記載の化合物。
【0019】
1.6 Rが、シアノ基、C1〜6アルキル基、C2〜5アルケニル基、C2〜6アルキニル基、及びC3〜6シクロアルキル基もしくはC5〜6シクロアルケニル基からなるかまたはそれを含有するC1〜6非芳香族炭化水素基であって、それぞれが任意選択で1〜6のフッ素原子で置換され、且つ上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及び非芳香族炭化水素基のそれぞれの1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及び非芳香族炭化水素基から選択される、実施形態1.1〜1.5のいずれか1に記載の化合物。
【0020】
1.7 RがC1〜4アルキルである、実施形態1.1〜1.6のいずれか1に記載の化合物。
1.8 Rが、
・メチル、
・エチル、
・プロピル、
・イソプロピル、
・ブチル
から選択される、実施形態1.7に記載の化合物。
【0021】
1.9 R及びRが独立にメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルである、実施形態1.1〜1.8に記載の化合物。
1.10 Rが、Hまたは0、1もしくは2の炭素−炭素多重結合を含有するC1〜6非芳香族炭化水素基であって、任意選択で1〜6のフッ素原子で置換され、且つ上記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい上記炭化水素基である、実施形態1.1に記載の化合物。
【0022】
1.11 Rが、H、C1〜6アルキル基、C2〜5アルケニル基、C2〜6アルキニル基、及びC3〜6シクロアルキル基もしくはC5〜6シクロアルケニル基からなるかまたはそれを含有するC1〜6非芳香族炭化水素基であって、それぞれが任意選択で1〜6のフッ素原子で置換され、且つ上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及び非芳香族炭化水素基のそれぞれの1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及び非芳香族炭化水素基から選択される、実施形態1、10のいずれかに記載の化合物。
【0023】
1.12 Rが、水素、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1〜3アルコキシ及びC1〜4アルキルから選択される、実施形態1.1〜1.11のいずれか1に記載の化合物。
【0024】
1.13 Rが、水素、フッ素、メチル及びメトキシから選択される、実施形態1.12に記載の化合物。
1.14 Rが、水素、フッ素及びメトキシから選択される、実施形態1.13に記載の化合物。
【0025】
1.15 Rが水素及びフッ素から選択される、実施形態1.14に記載の化合物。
1.16 Rが水素である、実施形態1.15に記載の化合物。
1.17 Rがフッ素である、実施形態1.16に記載の化合物。
【0026】
1.18 Rが、Hまたは任意選択で1もしくは複数のフッ素原子で置換された非環状C1〜4炭化水素基である、実施形態1.1〜1.17のいずれか1に記載の化合物。
1.19 Rが、Hまたは任意選択で1もしくは複数のフッ素原子で置換された非環状C1〜3炭化水素基である、実施形態1.18に記載の化合物。
【0027】
1.20 Rが、HまたはC1〜3アルキル基またはC1〜2アルキニル基である、実施形態1.19に記載の化合物。
1.21 Rが、H、メチル、フルオロメチル、エチル、エチニル及び1−プロピニルから選択される、実施形態1.20に記載の化合物。
【0028】
1.22 Rがメチルである、実施形態1.21に記載の化合物。
1.23 RがHである、実施形態1.21に記載の化合物。
1.24 pが0または1である、実施形態1.1〜1.23のいずれか1に記載の化合物。
【0029】
1.25 pが0である、実施形態1.35に記載の化合物。
1.26 pが1である、実施形態1.35に記載の化合物。
1.27 qが0または1である、実施形態1.1〜1.26のいずれか1に記載の化合物。
【0030】
1.28 qが0である、実施形態1.27に記載の化合物。
1.29 qが1である、実施形態1.27に記載の化合物。
1.30 YがN、OまたはCHである、実施形態1.1〜1.29のいずれか1に記載の化合物
1.31 YがNである、実施形態1.30に記載の化合物。
【0031】
1.32 YがOである、実施形態1.30に記載の化合物。
1.33 YがSである、実施形態1.30に記載の化合物。
1.34 上記部分
【0032】
【化3】
【0033】
によって形成される上記二環式環系が、
(a)ピペリジンと、
(b)アゼパンと、
(c)アザビシクロ−オクタンまたはアザビシクロ−ノナン環系と、
(d)2−アザ−スピロ[3.4]オクタンまたは6−アザ−スピロ[3.4]オクタン環系と、
(e)シクロペンタノピロリジン環系と
から選択される、実施形態1.1〜1.33のいずれか1に記載の化合物。
【0034】
1.34 X及びXが全体として4〜7の炭素原子を含有する、実施形態1.1〜1.33のいずれか1に記載の化合物。
1.35 上記部分
【0035】
【化4】
【0036】
によって形成される上記二環式環系が、架橋二環式環系である、実施形態1.1〜1.34のいずれか1に記載の化合物。
1.36 上記架橋二環式環系がアザビシクロ−オクタンまたはアザビシクロ−ノナン環系である、実施形態1.35に記載の化合物。
【0037】
1.37 上記架橋二環式環系が、8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン環系、9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン環系及び6−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン環系から選択される、実施形態1.36に記載の化合物。
【0038】
1.38 上記部分
【0039】
【化5】
【0040】
によって形成される上記二環式環系がスピロ環式環系である、実施形態1.1〜1.34のいずれか1に記載の化合物。
1.39 上記スピロ環式環系が2−アザ−スピロ[3.4]オクタンまたは6−アザ−スピロ[3.4]オクタン環系である、実施形態1.38に記載の化合物。
【0041】
1.40 上記部分
【0042】
【化6】
【0043】
によって形成される上記二環式環系が縮合二環式環系である、実施形態1.1〜1.34のいずれか1に記載の化合物。
1.41 上記縮合二環式環系がシクロペンタノピロリジン環系である、実施形態1.40に記載の化合物。
【0044】
1.42 上記部分
【0045】
【化7】
【0046】
によって形成される上記二環式環系が、以下の環系
【0047】
【化8】
【0048】
から選択される、実施形態1.1〜1.41のいずれか1に記載の化合物。
1.43 式(2)
【0049】
【化9】
【0050】
を有し、
式中、R、R、R、R、R、Y及びpは実施形態1.1〜1.34のいずれか1に定義されるとおりであり、sは0または1であり、tは0または1である、実施形態1.1に記載の化合物。
【0051】
1.44 sとtとの合計が1である、実施形態1.43に記載の化合物。
1.45 sが0であり、tが1である、実施形態1.44に記載の化合物。
1.46 sが1であり、tが0である、実施形態1.44に記載の化合物。
【0052】
1.47 式(3)
【0053】
【化10】
【0054】
を有し、
式中、R、R、R、R、R、Y及びpは実施形態1.1〜1.34のいずれか1に定義されるとおりであり、qとrとの合計が2または3であるとの条件で、qは1、2または3であり、rは0または1である、実施形態1.1に記載の化合物。
【0055】
1.48 (i)rが0且つqが2であるか、(ii)rが0且つqが3であるか、または(iii)rが1且つqが1である、実施形態1.47に記載の化合物。
1.49 式(4)
【0056】
【化11】
【0057】
を有し、
式中、R、R、R、R、R、Y及びpは実施形態1.1〜1.34のいずれか1に定義されるとおりであり、u+v+w+xの合計が少なくとも1且つ5を越ないとの条件で、u、v、w及びxはそれぞれ0、1または2である、実施形態1.1に記載の化合物。
【0058】
1.50 u、v、w及びxのそれぞれが1である、実施形態1.49に記載の化合物。
1.51 実施例1−1〜4−1のいずれか1に規定される、実施形態1.1に記載の化合物。
【0059】
1.52 分子量が550未満、例えば500未満、または450未満である、実施形態1.1〜1.50のいずれか1に記載の化合物。
1.53 塩の形態である、実施形態1.1〜1.52のいずれか1に記載の化合物物。
【0060】
1.54 上記塩が酸付加塩である、実施形態1.53に記載の化合物。
1.55 上記塩が薬学的に許容される塩である、実施形態1.53または実施形態1.54に記載の化合物。
定義
本出願においては、別段の表示がない限り、以下の定義が適用される。
式(1)〜(4)の化合物の使用に関連して、用語「治療」は、当該の疾患または障害に罹患している、または罹患する危険性がある、または潜在的に罹患する危険性がある対象に化合物が投与される、任意の形態の介入を記述するために用いられる。したがって、用語「治療」は、予防的(preventative)(予防的(prophylactic))処置及び上記疾患もしくは障害の測定可能なまたは検出可能な症状が現れている場合の治療の両方を包含する。
【0061】
本明細書中において、(例えば疾患または状態の治療方法に関連して)用いられる用語「有効治療量」とは、所望の治療効果を生じさせるのに有効な本化合物の量をいう。例えば、上記状態が疼痛である場合、上記有効治療量は、所望のレベルの鎮痛を与えるのに十分な量である。上記所望のレベルの鎮痛は、例えば、当該疼痛の完全な除去または当該疼痛の重篤度の軽減であってよい。
【0062】
用語「非芳香族炭化水素基」(「C1〜5非芳香族炭化水素基」または「非環状C1〜5非芳香族炭化水素基」の場合のような)とは、炭素原子及び水素原子からなり、芳香環を含有しない基をいう。上記炭化水素基は完全に飽和であってもよく、あるいは1もしくは複数の炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合、または二重結合と三重結合との混合物を含有していてもよい。上記炭化水素基は直鎖状基もしくは分枝鎖状基であってもよく、または環状基からなっていても、もしくは環状基を含有していてもよい。したがって、用語非芳香族炭化水素は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルアルキルなどを包含する。
【0063】
用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」及び「シクロアルケニル」は、別段の表示がない限り、それらの従来の意味(例えばIUPACゴールドブックで定義される)で用いられる。
【0064】
本明細書では、用語「シクロアルキル」は、指定された数の炭素原子の許容する範囲で、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルなどの単環式シクロアルキル基ならびに二環式及び三環式の基の両方を包含する。二環式シクロアルキル基は、ビシクロヘプタン、ビシクロオクタン及びアダマンタンなどの架橋環系を包含する。
【0065】
上記のR、R、R及びRの定義を記載する場合、該定義において、上記非芳香族炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子は、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい。炭素原子がヘテロ原子によって置換される場合、当該ヘテロ原子の原子価が炭素と比較してより低いとは、当該ヘテロ原子に、置換された炭素原子に結合したであろう原子よりも少ない原子が結合することを意味することが理解されよう。したがって、例えば、酸素(2価)によるCH基中の炭素原子(4価)の置換は、得られる分子が含有する水素原子が2少なく、窒素(3価)によるCH基中の炭素原子(4価)の置換は、得られる分子が含有する水素原子が1少ないことを意味する。
【0066】
炭素原子のヘテロ原子による置換の例としては、エーテル−CH−O−CH−またはチオエーテル−CH−S−CH−を与える−CH−CH−CH−鎖中の炭素原子の酸素またはイオウによる置換、ニトリル(シアノ)基CH−C≡Nを与えるCH−C≡C−H中の炭素原子の窒素による置換、ケトン−CH−C(O)−CH−を与える−CH−CH−CH−基中の炭素原子のC=Oによる置換、スルホキシド−CH−S(O)−CH−またはスルホン−CH−S(O)−CH−を与える−CH−CH−CH−基中の炭素原子のS=OまたはSOによる置換、アミド−CH−CH−C(O)−NH−を与える−CH−CH−CH−鎖中の炭素原子のC(O)NHによる置換、アミン−CH−NH−CH−を与える−CH−CH−CH−鎖中の炭素原子の窒素による置換、及びエステル(またはカルボン酸)−CH−CH−C(O)−O−を与える−CH−CH−CH−鎖中の炭素原子のC(O)Oによる置換が挙げられる。かかる置換のそれぞれにおいて、当該炭化水素基の少なくとも1の炭素原子が残る必要がある。

多くの式(1)〜(4)の化合物は、塩、例えば酸付加塩、または特定の場合において、カルボン酸塩、スルホン酸塩及びリン酸塩などの有機及び無機塩基の塩の形態で存在することができる。全てのかかる塩は本発明の範囲内であり、式(1)〜(4)の化合物への言及は、実施形態1.53〜1.55に規定される塩形態の本化合物を包含する。
【0067】
上記塩は一般的には酸付加塩である。
本発明の塩は、塩基性または酸性部分を含有する親化合物から、Pharmaceutical Salts: Properties,Selection,and Use,P. Heinrich Stahl (Editor),Camille G.Wermuth(Editor),ISBN:3−90639−026−8,Hardcover,388 pages,August 2002に記載される方法などの従来の化学的方法によって合成することができる。概括的には、かかる塩は、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基形態を、水もしくは有機溶媒中、または上記二者の混合物中で、適宜の塩基または酸と反応させることによって調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が用いられる。
【0068】
酸付加塩(実施形態1.54に規定される)は、無機及び有機の両方の多種多様な酸によって形成されてもよい。実施形態1.54の範囲内に入る酸付加塩の例としては、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えばL−アスコルビン酸)、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)カンフル酸、カンファー−スルホン酸、(+)−(1S)−カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、α−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば(+)−L−乳酸、(±)−DL−乳酸)、ラクトビオン、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、(±)−DL−マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L−ピログルタミン酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)−L−酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸及び吉草酸、ならびにアシル化アミノ酸及びカチオン交換樹脂からなる群より選択される酸によって形成されるモノ塩またはジ塩が挙げられる。
【0069】
式(1)の化合物がアミン官能基を含有する場合、該化合物は、例えば当業者に周知の方法に従ったアルキル化剤との反応によって、第四級アンモニウム塩を形成してもよい(実施形態1.72)。かかる第四級アンモニウム化合物は式(1)の範囲内である。
【0070】
本発明の化合物は、当該の塩を形成する酸のpKaに応じてモノ塩またはジ塩として存在してもよい。
上記塩形態の本発明の化合物は、一般的には薬学的に許容される塩であり、薬学的に許容される塩の例は、Berge et al.,1977,‘‘Pharmaceutically Acceptable Salts,’’J.Pharm.Sci.,Vol.66,pp.1−19に議論されている。但し、薬学的に許容されない塩も、中間体の形態として調製され、次いで薬学的に許容される塩に変換されてもよい。かかる薬学的に許容されない塩の形態は、例えば本発明の化合物の精製または分離において有用である場合があり、これらも本発明の一部を形成する。
立体異性体
立体異性体は、同一の分子式及び結合した原子の配列を有するが、空間におけるそれらの原子の三次元的な位置関係のみが異なる異性体分子である。上記立体異性体は、例えば、幾何異性体または光学異性体であってよい。
幾何異性体
幾何異性体については、異性は、炭素−炭素二重結合の周りのcis及びtrans(Z及びE)異性、もしくはアミド結合の周りのcis及びtrans異性体、もしくは炭素−窒素二重結合(例えばオキシム中の)の周りのsyn及びanti異性の場合のような、二重結合の周りの原子または基の異なる位置関係、または回転が制限された結合の周りの回転異性、またはシクロアルカン環などの環の周りのcis及びtrans異性に起因する。
【0071】
したがって、別の実施形態(実施形態1.73)において、本発明は、実施形態1.1〜1.72のいずれか1に記載の化合物の幾何異性体を提供する。
光学異性体
上記式の化合物が1または複数のキラル中心を含有し、2種以上の光学異性体の形態で存在し得る場合、文脈上別段の意味に解すべき場合を除き、当該化合物への言及は、個々の光学異性体、または2種以上の光学異性体の混合物(例えばラセミ混合物)としてのいずれかの、当該化合物の全ての光学異性体形態(例えば、鏡像異性体、エピマー及びジアステレオ異性体)を包含する。
【0072】
したがって、別の実施形態(実施形態1.74)において、本発明は、キラル中心を含有する、実施形態1.1〜1.73のいずれか1に記載の化合物を提供する。
上記光学異性体は、該異性体の光学活性によって(すなわち、+及び−異性体、またはd及びl異性体として)キャラクタライズしてもよく、またはCahn、Ingold及びPrelogによって開発された「R及びS」命名法(Advanced Organic Chemistry by Jerry March,4th Edition,John Wiley&Sons,New York,1992,pages 109−114を参照、またCahn,Ingold&Prelog,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1966,5,385−415も参照のこと)を用いた該異性体の絶対立体化学の観点からキャラクタライズしてもよい。光学異性体はキラルクロマトグラフィー(キラル担体上でのクロマトグラフィー)を含む多くの技法によって分離することができ、かかる技法は当業者に周知である。キラルクロマトグラフィーの代替手段として、(+)−酒石酸、(−)−ピログルタミン酸、(−)−ジ−トルオイル−L−酒石酸、(+)−マンデル酸、(−)−リンゴ酸、及び(−)−カンファースルホン酸などのキラル酸とのジアステレオ異性体塩を形成させ、上記ジアステレオ異性体を優先的結晶化により分離し、次いで上記塩を解離させて遊離塩基の個々の鏡像異性体を得ることによって、光学異性体を分離することができる。
【0073】
本発明の化合物が2種以上の光学異性体形態として存在する場合、1対の鏡像異性体中の一方の鏡像異性体が他方の鏡像異性体に対して、例えば生物学的活性の観点で優位性を示す場合がある。したがって、特定の状況において、1対の鏡像異性体中の一方のみを、または複数のジアステレオ異性体の1種のみを治療薬として用いることが望ましい場合がある。
【0074】
したがって、別の実施形態(実施形態1.75)において、本発明は、1または複数のキラル中心を有する、実施形態1.74に記載の化合物を含有する組成物であって、実施形態1.73の化合物の少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%)が単一の光学異性体(例えば、鏡像異性体またはジアステレオ異性体)として存在する、上記組成物を提供する。
【0075】
一つの概括的な実施形態(実施形態1.76)において、実施形態1.74の化合物(または使用する化合物)の総量の99%以上(例えば実質的に全て)が単一の光学異性体として存在する。
【0076】
例えば、一実施形態(実施形態1.77)において、本化合物は単一の鏡像異性体として存在する。
別の実施形態(実施形態1.78)において、本化合物は単一のジアステレオ異性体として存在する。
【0077】
本発明はまた、光学異性体の混合物も提供し、該混合物はラセミまたは非ラセミであってよい。従って、本発明は以下を提供する。
1.79 光学異性体のラセミ混合物の形態である、実施形態1.74に記載の化合物。
【0078】
1.80 光学異性体の非ラセミ混合物の形態である、実施形態1.74に記載の化合物。
同位体
実施形態1.1〜1.80のいずれか1に規定される本発明の化合物は、1または複数の同位体置換を含んでいてもよく、特定の元素に対する言及は、その範囲内に当該元素の全ての同位体を包含する。例えば、水素に対する言及は、その範囲内にH、H(D)、及びH(T)を包含する。同様に、炭素及び酸素に対する言及は、それらの範囲内に、それぞれ12C、13C及び14Cならびに16O及び18Oを包含する。
【0079】
同様の意味で、特定の官能基に対する言及は、その文脈が別段の意味を示さない限り、同位体による変化形もその範囲内に包含する。例えば、エチル基などのアルキル基に対する言及は、例えば、5の水素原子の全てが二重水素同位体形態(ペルデューテロエチル基)であるエチル基の場合などの、当該の基の中の1または複数の水素原子が二重水素または三重水素同位体の形態である変化形も包含する。
【0080】
上記同位体は放射性であってもまたは非放射性であってもよい。本発明の一実施形態(実施形態1.81)において、実施形態1.1〜1.80のいずれか1の化合物は放射性同位体を含有しない。かかる化合物は治療に用いることが好ましい。但し、別の実施形態(実施形態1.82)において、実施形態1.1〜1.80のいずれか1の化合物は、1種または複数種の放射性同位体を含有していてもよい。かかる放射性同位体を含有する化合物は、診断の観点から有用である場合がある。
溶媒和物
実施形態1.1〜1.82のいずれか1に規定される式(1)の化合物は溶媒和物を形成していてもよい。好ましい溶媒和物は、本発明の化合物の固体状態の構造(例えば、結晶構造)中への、非毒性の薬学的に許容される溶媒(以下、溶媒和性溶媒と称する。)の分子の取り込みによって形成される溶媒和物である。かかる溶媒の例としては、水、アルコール(エタノール、イソプロパノール及びブタノールなど)及びジメチルスルホキシドが挙げられる。溶媒和物は、上記溶媒和性媒溶を含有する溶媒または溶媒混合物を用いて、本発明の化合物を再結晶することによって調製することができる。任意の所与の例において溶媒和物が形成されたか否かは、当該化合物の結晶を、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)及びX線結晶解析などの周知且つ標準的な技法を用いた分析に供することによって判定することができる。上記溶媒和物は化学量論的または非化学量論的溶媒和物であってよい。特に好ましい溶媒和物は水和物であり、水和物の例としては半水和物、一水和物及び二水和物が挙げられる。
【0081】
したがって、更なる実施形態1.83及び1.84において、本発明は以下を提供する。
1.83 溶媒和物の形態の、実施形態1.1〜1.82のいずれか1に記載の化合物。
【0082】
1.84 上記溶媒和物が水和物である、実施形態1.83に記載の化合物。
溶媒和物及び溶媒和物を製造及びキャラクタライズするために用いられる方法のより詳細な議論については、Bryn et al.,Solid−State Chemistry of Drugs,Second Edition,published by SSCI, Inc of West Lafayette,IN, USA,1999,ISBN 0−967−06710−3を参照されたい。
【0083】
あるいは、本発明の化合物は、水和物として存在するのではなく無水であってもよい。したがって、別の実施形態(実施形態1.85)において、本発明は、無水の形態(例えば無水の結晶形態)の、実施形態1.1〜1.83のいずれか1に規定される化合物を提供する。
結晶形態及び非晶形態
実施形態1.1〜1.83のいずれか1の化合物は、結晶性または非晶性(例えば無定形)の状態で存在していてもよい。化合物が結晶状態で存在するか否かは、粉末X線回折(XRPD)などの標準的な技法によって容易に判定することができる。結晶及びそれらの結晶構造は、単結晶X線結晶解析、粉末X線回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)及び赤外線分光法、例えばフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)を含む多くの技法を用いてキャラクタライズすることができる。様々な湿度の条件下での結晶の挙動を、蒸気吸収重量法によって及びXRPDによっても分析することができる。化合物の結晶構造の決定はX線結晶解析によって実施することができ、X線結晶解析は、本明細書に記載される及びFundamentals of Crystallography,C.Giacovazzo,H.L.Monaco,D.Viterbo,F.Scordari,G.Gilli,G.Zanotti and M.Catti,(International Union of Crystallography/Oxford University Press,1992 ISBN 0−19−855578−4(p/b),0−19−85579−2(h/b))に記載されるものなどの、従来の方法に従って実施することができる。この技法は、単結晶のX線回折の分析及び解読を含む。無定形の固体では、結晶形態に通常存在する三次元構造は存在せず、無定形の形態における分子の互いの位置は本質的に無秩序であり、例えば、Hancock et al.J.Pharm.Sci.(1997),86,1)を参照されたい。
【0084】
したがって、更なる実施形態において、本発明は以下を提供する。
1.86 結晶形態である、実施形態1.1〜1.85のいずれか1に記載の化合物。
1.87(a)50%〜100%結晶性である、より詳細には、少なくとも50%結晶性である、または少なくとも60%結晶性である、または少なくとも70%結晶性である、または少なくとも80%結晶性である、または少なくとも90%結晶性である、または少なくとも95%結晶性である、または少なくとも98%結晶性である、または少なくとも99%結晶性である、または少なくとも99.5%結晶性である、または少なくとも99.9%結晶性である、例えば100%結晶性である、実施形態1.1〜1.85のいずれか1に記載の化合物。
【0085】
1.88 無定形の形態である、実施形態1.1〜1.85のいずれか1に記載の化合物。
プロドラッグ
実施形態1.1〜1.88のいずれか1に規定される式(1)の化合物はプロドラッグの形態で提供されてもよい。「プロドラッグ」とは、例えば、イン・ビボにおいて、実施形態1.1〜1.88のいずれか1に規定される、式(1)の生物学的に活性な化合物に変換される任意の化合物を意味する。
【0086】
例えば、いくつかのプロドラッグは、当該活性化合物のエステル(例えば、生理学的に許容される代謝的に不安定なエステル)である。代謝に際してエステル基(−C(=O)OR)が開裂して当該活性薬物が生成する。かかるエステルは、例えば、(妥当である場合には)親化合物中に存在する他の任意の反応性基を事前に保護し、親化合物中に存在する任意のヒドロキシル基をエステル化し、その後必要に応じて脱保護することによって形成してもよい。
【0087】
また、いくつかのプロドラッグは、酵素的に活性化されて当該活性化合物を生成するか、または更なる化学反応によって当該活性化合物を生成するある化合物を生成する(例えば、ADEPT(抗体指向性酵素プロドラッグ療法)、GDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)、LIDEPT(リガンド指向性酵素プロドラッグ療法)などの場合)。例えば、上記プロドラッグは糖誘導体もしくは他のグリコシド複合体であってもよく、またはアミノ酸エステル誘導体であってもよい。
【0088】
したがって、別の実施形態(実施形態1.89)において、本発明は、実施形態1.1〜1.82のいずれか1に規定される化合物であって、生理学的条件下でヒドロキシル基またはアミノ基を形成するように変換可能な官能基を含有する上記化合物のプロドラッグを提供する。
錯体及び包接化合物
実施形態1.1〜1.89の化合物の錯体(例えば、シクロデキストリンなどの化合物との包接体もしくは包接化合物、または金属との錯体)もまた、実施形態1.1〜1.89の式(1)に包含される。
【0089】
したがって、別の実施形態(実施形態1.90)において、本発明は、錯体または包接化合物の形態の、実施形態1.1〜1.89のいずれか1に記載の化合物を提供する。
生物学的活性及び治療上の使用
本発明の化合物はムスカリンM及び/またはM受容体アゴニストとしての活性を有する。本化合物のムスカリン様活性は、以下の実施例Aに記載のPhospho−ERK1/2アッセイを用いて測定することができる。
【0090】
本発明の化合物の重要な利点は、本化合物がM及びM受容体サブタイプと比較してM及び/またはM受容体に対して高選択性であることである。本発明の化合物は、M及びM受容体サブタイプのアゴニストでもアンタゴニストでもない。例えば、本発明の化合物は一般的に、実施例Aに記載の機能アッセイにおいてM及び/またはM受容体に対しては、少なくとも6(好ましくは少なくとも6.5)のpEC50値及び80を越える(好ましくは95を越える)Emax値を有する一方で、実施例Aの機能アッセイにおいてM及びMサブタイプに対して試験した場合には、本化合物は5未満のpEC50値及び20%未満のEmax値を有する場合がある。
【0091】
本発明のいくつかの化合物は、M及びM受容体の両方に対して活性を有し、いくつかの化合物はM受容体に対して活性を有する。
したがって、実施形態2.1〜2.15において、本発明は以下を提供する。
【0092】
2.1 医薬用の、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
2.2 ムスカリンM及び/またはM受容体アゴニストとしての使用のための、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
【0093】
2.3 本明細書の実施例Aのアッセイまたは該アッセイに実質的に類似するアッセイにおいて、M受容体に対して6.9を超えるpEC50及び少なくとも80のEmaxを有するムスカリンM受容体アゴニストである、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
【0094】
2.4 7.0を超えるpEC50を有するムスカリンM受容体アゴニストである、実施形態2.3に記載の化合物。
2.5 M受容体に対して少なくとも90のEmaxを有する、実施形態2.3または実施形態2.4に記載の化合物。
【0095】
2.6 本明細書の実施例Aのアッセイまたは該アッセイに実質的に類似するアッセイにおいて、ムスカリンM及びM受容体に対して、6.0〜7.8の範囲のpEC50及び少なくとも70のEmaxを有するムスカリンM及びM受容体アゴニストである、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
【0096】
2.7 7.0を超えるpEC50を有するムスカリンM受容体アゴニストである、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
2.8 M受容体に対して少なくとも90のEmaxを有する、実施形態2.6または実施形態2.7に記載の化合物。
【0097】
2.9 本明細書の実施例Aのアッセイまたは該アッセイに実質的に類似するアッセイにおいて、ムスカリンM受容体に対して、6.0〜7.8の範囲のpEC50及び少なくとも70のEmaxを有するムスカリンM受容体アゴニストである、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
【0098】
2.10 ムカリンM及びM受容体と比較して、Μ及びM受容体に対して選択性である、実施形態2.3〜2.9のいずれか1に記載の化合物。
2.11 ムスカリンM及びM受容体と比較して、M受容体に対して選択性である、実施形態2.9に記載の化合物。
【0099】
2.12 ムスカリンM、M及びM受容体と比較して、M受容体に対して選択性である、実施形態2.3〜2.5のいずれか1に記載の化合物。
2.13 ムスカリンM、M及びM受容体と比較して、M受容体に対して選択性である、実施形態2.7または2.9のいずれか1に記載の化合物。
【0100】
2.14 ムスカリンM及びM受容体サブタイプに対して、5未満のpEC50及び50未満のEmaxを有する、実施形態2.3〜2.13のいずれか1に記載の化合物。
【0101】
2.15 ムスカリンM及びM受容体サブタイプに対して、4.5未満のpEC50及び/または30未満のEmaxを有する、実施形態2.14に記載の化合物。
2.16 ムスカリンM及び/またはM受容体によって媒介される疾患または疾病の治療用の、実施形態1.1〜1.90及び実施形態2.3〜2.15のいずれか1に記載の化合物。
【0102】
本発明の化合物は、該化合物のムスカリンM及び/またはM受容体アゴニスト活性に基づいて、アルツハイマー病、統合失調症及び他の精神病性障害、認知障害ならびにムスカリンM及び/またはM受容体によって媒介される他の疾患の治療に用いることができ、様々な種類の疼痛の治療にも用いることができる。
【0103】
したがって、実施形態2.17〜2.38において、本発明は以下を提供する。
2.17 認知障害または精神病性障害の治療用の、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
【0104】
2.18 上記認知障害または精神病性障害が、認知障害、軽度認知障害、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、初老期認知症、老人性認知症、フリードライヒ運動失調症、ダウン症候群、ハンチントン舞踏病、運動亢進症、躁病、トゥレット症候群、アルツハイマー病、進行性核上麻痺、注意機能、見当識機能、学習機能、記憶機能(すなわち、記憶障害、記憶喪失、健忘症、一過性全健忘症候群及び加齢性記憶障害)及び言語機能を含む認知機能の障害;脳卒中、ハンチントン病、ピック病、エイズ関連認知症または多梗塞性認知症、アルコール性認知症、甲状腺機能低下症関連認知症などの他の認知症状態、及び小脳萎縮及び筋萎縮性側索硬化症などの他の変性障害に関連する認知症の結果としての認知障害;せん妄またはうつ(仮性認知症状態)、外傷、頭部外傷、加齢性認知低下、脳卒中、神経変性、薬物誘発性の状態、神経毒性物質、加齢性認知障害、自閉症関連の認知障害、ダウン症候群、精神病に関連する認知障害、及び電気けいれん療法後関連認知障害などの、認知低下を引き起こす可能性のある他の急性または亜急性の疾病;ニコチン、カンナビス、アンフェタミン、コカインを含む薬物乱用または薬物離脱に起因する認知障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)及びパーキンソン病、神経弛緩薬誘発パーキンソニズム、及び遅発性ジスキネジアなどの運動障害、統合失調症、統合失調症様疾患、精神病性うつ病、躁病、急性躁病、偏執症、幻覚性及び妄想性障害、人格障害、強迫性障害、統合失調型障害、妄想性障害、悪性腫瘍、代謝障害、内分泌疾患またはナルコレプシーに起因する精神病、薬物乱用または薬物離脱に起因する精神病、双極性障害及び統合失調感情障害から選択される疾病を含む、該疾病に起因する、または該疾病に関連する、実施形態2.17に記載の化合物。
【0105】
2.19 アルツハイマー病の治療用の、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
2.20 統合失調症の治療用の、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
【0106】
2.21 認知障害の治療方法であって、治療有効用量の実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物の投与を含む、対象(例えば、ヒト、例えばかかる治療を必要とするヒト、などの哺乳動物の患者)における認知障害の上記治療方法。
【0107】
2.22 上記認知障害が、実施形態2.18に規定される疾病を含む、上記疾病に起因する、または上記疾病に関連する、実施形態2.21に記載の方法。
2.23 上記認知障害がアルツハイマー病に起因または関連する、実施形態2.22に記載の方法。
【0108】
2.24 上記認知障害が統合失調症である、実施形態2.22に記載の方法。
2.25 認知障害の治療用の医薬の製造のための、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物の使用。
【0109】
2.26 上記認知障害が、実施形態2.18に規定される疾病を含む、上記疾病に起因する、または上記疾病に関連する、実施形態2.25に記載の使用。
2.27 上記認知障害がアルツハイマー病に起因または関連する、実施形態2.26に記載の使用。
【0110】
2.28 上記認知障害が統合失調症である、実施形態2.26に記載の使用。
2.29 急性、慢性、神経障害性、もしくは炎症性疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、ヘルペス性神経痛、全身性神経痛、内臓痛、変形性関節炎性疼痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、根性痛、坐骨神経痛、背部痛、頭頸部痛、重度もしくは難治性疼痛、侵害受容性疼痛、突破痛、術後疼痛、またはがん性疼痛の治療あるいはその重篤度の軽減用の、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
【0111】
2.30 治療有効用量の実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物の投与を含む、急性、慢性、神経障害性、もしくは炎症性疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、ヘルペス性神経痛、全身性神経痛、内臓痛、変形性関節炎性疼痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、根性痛、坐骨神経痛、背部痛、頭頸部痛、重度もしくは難治性疼痛、侵害受容性疼痛、突破痛、術後疼痛、またはがん性疼痛の治療あるいはその重篤度の軽減方法。
【0112】
2.31 緑内障における眼圧の低減などの末梢性障害の治療ならびにシェーグレン症候群を含むドライアイ及び口渇の治療用の、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物。
【0113】
2.32 治療有効用量の実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物の投与を含む、緑内障における眼圧の低減などの末梢性障害の治療ならびにシェーグレン症候群を含むドライアイ及び口渇の治療方法。
【0114】
2.33 急性、慢性、神経障害性、もしくは炎症性疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、ヘルペス性神経痛、全身性神経痛、内臓痛、変形性関節炎性疼痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、根性痛、坐骨神経痛、背部痛、頭頸部痛、重度もしくは難治性疼痛、侵害受容性疼痛、突破痛、術後疼痛、またはがん性疼痛の治療またはその重篤度の軽減用の、あるいは緑内障における眼圧の低減などの末梢性障害の治療ならびにシェーグレン症候群を含むドライアイ及び口渇の治療用の薬剤の製造のための、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物の使用。
【0115】
2.34 例えば、尋常性天疱瘡、疱疹状皮膚炎、類天疱瘡及び他の水疱形成性皮膚疾病に起因する皮膚病変の治療のための、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物の使用。
【0116】
2.35 機能性消化不良、過敏性腸症候群、胃食道酸逆流症(GER)及び食道蠕動低下などの胃腸機能及び運動性の変調に関連する疾病、胃不全麻痺の症状ならびに慢性下痢を治療、予防、改善するまたは回復させるための、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物の使用。
【0117】
2.36 ボスマ・ヘンキン・クリスティアンセン(Bosma−Henkin−Christiansen)症候群、化学物質中毒(例えば、セレン及び銀)、下垂体機能低下症、カルマン症候群、頭蓋骨骨折、腫瘍の治療及び甲状腺機能不全などの嗅覚機能障害の治療のための、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物の使用。
【0118】
2.37 依存症の治療のための、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物の使用。
2.38 パーキンソン病、ADHD、ハンチントン病、トウレット症候群及び、疾患を引き起こす根本的な病原因子としてのドーパミン系の機能不全に関連する他の症候群などの運動障害の治療のための、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に記載の化合物の使用。
式(1)の化合物の調製方法
式(1)の化合物は、当業者に周知の及び本明細書に記載の合成方法に従って調製することができる。
【0119】
したがって、別の実施形態(実施形態3.1)において、本発明は、
(A)還元的アミノ化条件下における、式(10)
【0120】
【化12】
【0121】
の化合物の式(11)
【0122】
【化13】
【0123】
の化合物との反応であって、式中、R、R、R、R、R、R、X、X、p及びqは、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に定義されるとおりである上記反応、または
(B)塩基の存在下における、式(12)
【0124】
【化14】
【0125】
の化合物の式Cl−C(=O)−CH−Rの化合物との反応、または
(C)求核置換条件下における、式(10)
【0126】
【化15】
【0127】
の化合物の式(13)
【0128】
【化16】
【0129】
の化合物との反応であって、式中、R、R、R、R、R、R、X、X、p及びqは、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に定義されるとおりである上記反応、及び任意選択で、
(D)式(14)
【0130】
【化17】
【0131】
の化合物の式NHORの化合物との反応、または
(E)塩基の存在下における、式(15)
【0132】
【化18】
【0133】
の化合物の式NHの化合物との反応、または
(F)式(15)
【0134】
【化19】
【0135】
の化合物のNaCNとの反応、または
(G)式(1)の1種の化合物を式(1)の別種の化合物に変換すること
を含む、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に規定される化合物の調製方法を提供する。
【0136】
変法(A)においては、ピペリジン複素環化合物(10)を還元的アミノ化条件下で置換ケトン(11)と反応させる。上記還元的アミノ化反応は、一般的には、酢酸を含有するジクロロメタン、ジクロロエタンまたはジメチルホルムアミドなどの溶媒中、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素還元剤、または塩化亜鉛と組み合わせたシアノ水素化ホウ素ナトリウム、またはチタンイソプロポキシドと組み合わせたトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムのいずれかを用いて、周囲温度〜穏やかな(例えば、約20℃〜約70℃の温度への)加熱において行われる。
【0137】
変法(B)は、一般的には、ジクロロメタンまたはジクロロエタンなどの非プロトン性溶媒中、トリエチルアミンなどの非干渉性の塩基の存在下で行われる。この反応は室温で行ってもよい。
【0138】
変法(C)においては、ピペリジン複素環化合物(10)を、求核置換反応においてスルホン酸エステル((13)、R=メチル、トリフルオロメチルまたは4−メチルフェニル)と反応させ、該求核置換反応は一般的に、ニートで(無溶媒で)、またはテトラヒドロフラン、アセトニトリルもしくはジメチルアセトアミドなどの適宜の溶媒中で、穏やかな(例えば、約40℃〜約70℃の温度への)加熱において行われる。
【0139】
変法(D)は、一般的には、メタノールなどのプロトン性溶媒中、酢酸ナトリウムなどの非干渉性の塩基の存在下で行われる。この反応は室温で行ってもよい。
変法(E)は、一般的には、ジクロロメタン、ジクロロエタンまたはジメチルホルムアミドなどの非プロトン性溶媒中、炭酸カリウムなどの非干渉性の塩基の存在下で行われる。この反応は、一般的には、周囲温度〜穏やかな(例えば、約20℃〜約120℃の温度への)加熱において行われる。
【0140】
変法(F)は、一般的には、DMSOまたはジメチルホルムアミドなどの非プロトン性溶媒中で行われる。この反応は、一般的には、周囲温度〜穏やかな(例えば、約20℃〜約120℃の温度への)加熱において行われる。
【0141】
式(12)の中間体化合物は、以下のスキーム1に示す一連の反応によって調製することができる。
【0142】
【化20】
【0143】
反応スキーム1において、ピペリジン(10)を還元的アミノ化条件下でBoc保護ケトン(16)と反応させる。上記還元的アミノ化反応は、一般的には、酢酸を含有するジクロロメタンまたはジクロロエタンなどの溶媒中、塩化亜鉛と組み合わせたシアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはチタンイソプロポキシドと組み合わせたトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムのいずれかの存在下で、穏やかな(例えば、約40℃〜約70℃の温度への)加熱において行われ、中間体ピペリジン化合物(17)を得、次いで化合物(17)を、酸(例えばトリフルオロ酢酸のジクロロメタン溶液)による処理によりBoc基を除去することによって脱保護し、化合物(12)を得る。
【0144】
式(14)の化合物は、以下のスキーム2に示す一連の反応によって調製することができる。
【0145】
【化21】
【0146】
スキーム2において、4−シアノピペリジン誘導体(18)を上記の類の還元的アミノ化条件下でケトン(11)と反応させて、中間体4−シアノピペリジン化合物(19)を得、化合物(19)は選択的にグリニャール試薬の付加を受けてケトン(14)を与える。
【0147】
式(15)の化合物はまた、以下のスキーム3に示す一連の反応によっても調製することができる。
【0148】
【化22】
【0149】
反応スキーム3において、ピペリジンエステル((20)、R’’=エチルまたはメチル)を上記の類の還元的アミノ化条件下で置換ケトン(11)と反応させて、中間体エステル化合物(21)を得、次いで化合物(21)を水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムを用いて穏和な条件下で選択的に加水分解して、化合物(22)を得る。カルボン酸(22)を一般的なアミドカップリング条件下で式NHORの化合物と反応させてアミド(23)を得る。この反応は、アミド結合の形成に通常使用される種類の試薬の存在下で行ってもよい。かかる試薬の例としては、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(Sheehan et al, J. Amer. Chem Soc. 1955, 77, 1067)、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(本明細書においてEDCまたはEDACのいずれかと称する)(Sheehan et al, J. Org. Chem., 1961, 26, 2525)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)などのウロニウム系カップリング剤及び1−ベンゾ−トリアゾリルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(Castro et al, Tetrahedron Letters, 1990, 31, 205)などのホスホニウム系カップリング剤が挙げられる。カルボジイミド系カップリング剤は、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)(L. A. Carpino, J. Amer. Chem. Soc., 1993, 115, 4397)または1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(Konig et al, Chem. Ber., 103, 708, 2024−2034)との組み合わせで有利に用いられる。好ましいアミドカップリング剤はHATUである。上記カップリング反応は、一般的には、アセトニトリル、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリジノンなどの非水性、非プロトン性溶媒中、または任意選択で1種もしくは複数種の混和性の共溶媒を加えた水性溶媒中で行われる。この反応は室温で行われてもよく、または反応剤の反応性がより低い場合には、適宜の高温、例えば約100℃までの温度、例えば50〜80℃で行われてもよい。この反応は、任意選択で、非干渉性の塩基、例えばトリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの第三級アミンの存在下で行われてもよい。代わりに、当該カルボン酸の反応性誘導体、例えば、無水物または酸塩化物を用いてもよい。上記酸塩化物を、一般的には、重炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下で、式NHORの化合物と反応させる。該酸塩化物は、標準的な方法、例えば当該の酸を触媒量のジメチルホルムアミドの存在下、塩化オキサリルで使用することによって調製することができる。
【0150】
アミド(23)を塩化チオニルなどの塩素化剤で処理すると、N−アルコキシピペリジン−4−カルボキシイミドイルクロリド(15)が得られる。
式(1)、(2)、(3)または(4)の1種の化合物またはその保護誘導体が形成された後、当業者に周知の方法によって、当該化合物を式(1)、(2)、(3)または(4)の別の化合物に変換することができる。1種の官能基を別種の官能基に変換するための合成手順の例は、Advanced Organic Chemistry及びOrganic Syntheses(上記の引用を参照のこと)またはFiesers’ Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1−17, John Wiley, edited by Mary Fieser (ISBN: 0−471−58283−2)などの標準的な教科書に記載される。
【0151】
上記の多くの反応において、当該分子上の望ましくない位置で反応が起こることを防ぐために、1または複数の基を保護することが必要な場合がある。保護基の例、及び官能基を保護及び脱保護する方法は、Protective Groups in Organic Synthesis (T. Greene and P. Wuts;3rd Edition;John Wiley and Sons, 1999)を参照されたい。
【0152】
上述の方法によって製造された化合物を、当業者に周知の種々の方法のいずれかによって単離及び精製してもよく、かかる方法の例としては、再結晶及びカラムクロマトグラフィー(例えば、フラッシュクロマトグラフィー)及びHPLCなどのクロマトグラフィー技法が挙げられる。
医薬製剤
上記の活性化合物を単独で投与することも可能ではあるが、医薬組成物(例えば製剤)として提供することが好ましい。
【0153】
したがって、本発明の別の実施形態(実施形態4.1)において、実施形態1.1〜1.90のいずれか1に規定される少なくとも1種の式(1)の化合物を、少なくとも1種の薬学的に許容される医薬添加剤と共に含む医薬組成物が提供される。
【0154】
一実施形態(実施形態4.2)において、本組成物は錠剤組成物である。
別の実施形態(実施形態4.3)において、本組成物はカプセル剤組成物である。
上記薬学的に許容される医薬添加剤(複数可)としては、例えば、担体(例えば、固体、液体または半固体の担体)、アジュバント、希釈剤(例えば、充填剤または増量剤などの固体希釈剤、溶媒及び共溶媒などの液体希釈剤)、顆粒化剤、結合剤、流動性助剤、被覆剤、放出制御剤(例えば、放出抑制性もしくは放出遅延性ポリマーまたはワックス)、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、潤滑剤、防腐剤、抗真菌剤及び抗菌剤、抗酸化剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、増粘剤、香味料、甘味料、顔料、可塑剤、味覚マスキング剤、安定剤、または医薬組成物中で従来から使用される任意の他の医薬添加剤から選択することができる。
【0155】
本明細書では、用語「薬学的に許容される」とは、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を引き起こすことがなく、合理的な利益/リスク比に見合った、健全な医学的判断の範囲内で、対象(例えばヒトの対象)の組織と接触させる使用に適した化合物、材料、組成物及び/または剤形を意味する。各医薬添加剤はまた、当該製剤の他の成分と適合性があるとの意味において「許容される」ことも必要である。
【0156】
式(1)の化合物を含有する医薬組成物は公知の技法に従って製剤することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA, USAを参照されたい。
【0157】
本医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、鼻腔内投与、気管支内投与、舌下投与、眼科投与、耳内投与、直腸投与、膣内投与、または経皮投与に適した任意の形態であってよい。
【0158】
経口投与に適した医薬剤形としては、錠剤(被覆剤または非被覆剤)、カプセル剤(硬質または軟質シェル)、カプレット剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、溶液剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤及び懸濁液剤、舌下錠剤、ウェハー剤または頬側貼付剤などの貼付剤が挙げられる。
【0159】
錠剤組成物は、糖または糖アルコール、例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトール;及び/または、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、または微晶質セルロース(MCC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースもしくはその誘導体、及びコーンスターチ等のデンプンなどの非糖由来の希釈剤などの不活性希釈剤または担体と共に、単位用量の活性化合物を含有していてもよい。錠剤はまた、ポリビニルピロリドンなどの結合剤及び顆粒化剤、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースなどの膨潤性架橋ポリマー)、潤滑剤(例えばステアリン酸塩)、防腐剤(例えばパラベン)、抗酸化剤(例えばBHT)、緩衝剤(例えば、リン酸またはクエン酸緩衝剤)、及びクエン酸塩/重炭酸塩混合物などの発泡剤などの標準的な成分も含有していてよい。かかる医薬添加剤は周知であり、ここで詳細に議論する必要はない。
【0160】
錠剤は、胃液との接触時に(即時放出型錠剤)放出、または長期間にわたりもしくはGI管の特定領域において制御された形態で(制御放出型錠剤)当該薬物を放出するように設計されてもよい。
【0161】
本医薬組成物は、一般的に、約1%(w/w)〜約95%(w/w)の活性成分と、99%(w/w)〜5%(w/w)の(例えば上記で定義したような)薬学的に許容される医薬添加剤またはかかる医薬添加剤の組み合わせとを含む。本組成物は、約20%(w/w)〜約90%(w/w)の活性成分と、80%(w/w)〜10%の薬学的に許容される医薬添加剤または医薬添加剤の組み合わせとを含むことが好ましい。本医薬組成物は、約1%〜約95%、好ましくは約20%〜約90%の活性成分を含む。本発明に係る医薬組成物は、例えば、アンプル剤、バイアル剤、坐剤、予め充填された注射器、糖衣錠、散剤、錠剤またはカプセル剤の形態などの単位剤形であってよい。
【0162】
錠剤及びカプセル剤は、例えば、(薬剤の用量に応じて)0〜20%の崩壊剤、0〜5%の潤滑剤、0〜5%の流動性助剤及び/または0〜99%(w/w)の充填剤/または増量剤を含有していてもよい。錠剤及びカプセル剤はまた、0〜10%(w/w)のポリマー結合剤、0〜5%(w/w)の抗酸化剤、0〜5%(w/w)の顔料を含有していてもよい。徐放性錠剤は、これらに加えて、一般的には、(用量に応じて)0〜99%(w/w)の放出制御性(例えば遅延性)ポリマーを含有することとなる。上記錠剤またはカプセル剤のフィルムコートは、一般的には、0〜10%(w/w)のポリマー、0〜3%(w/w)の顔料、及び/または0〜2%(w/w)の可塑剤を含有する。
【0163】
非経口製剤は、一般的には、(用量及び凍結乾燥体であるか否かに応じて)0〜20%(w/w)の緩衝剤、0〜50%(w/w)の共溶媒、及び/または0〜99%(w/w)の注射用水(WFI)を含有する。筋肉内デポー用の製剤は0〜99%(w/w)の油分も含有していてよい。
【0164】
上記医薬製剤を、単一のパッケージ、通常はブリスターパック中に治療の全経過を含む「患者パック」で患者に提供してもよい。
式(1)の化合物は一般に単位剤形で提供され、したがって、一般的に、所望のレベルの生物学的活性を提供するのに十分な化合物を含有することとなる。例えば、製剤は、1ナノグラム〜2グラムの活性成分、例えば、1ナノグラム〜2ミリグラムの活性成分を含有していてもよい。これらの範囲内において、特定の部分範囲の化合物としては、0.1ミリグラム〜2グラムの活性成分(より一般的には10ミリグラム〜1グラム、例えば50ミリグラム〜500ミリグラム)、または1マイクログラム〜20ミリグラム(例えば、1マイクログラム〜10ミリグラム、例えば0.1ミリグラム〜2ミリグラムの活性成分)である。
【0165】
経口組成物の場合、単位剤形は、1ミリグラム〜2グラム、より一般的には10ミリグラム〜1グラム、例えば50ミリグラム〜1グラム、例えば100ミリグラム〜1グラムの活性化合物を含有していてもよい。
【0166】
上記活性化合物は、所望の治療効果を達成するのに十分な量(有効量)で、該活性化合物を必要とする患者(例えば、ヒトまたは動物の患者)に投与されることとなる。投与される化合物の正確な量は、標準的な手順に従って監督医が決定してもよい。
【実施例】
【0167】
ここで、以下の実施例に記載する具体的な実施形態を参照することによって本発明を例証する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1−1〜4−1
以下の表1に示す実施例1−1〜4−1の化合物を調製した。これらの化合物のNMR及びLCMS特性及びこれらの化合物の調製に用いるための方法を表3に示す。実施例のそれぞれのための出発物質を表2に列挙する。
【0168】
【表1】
【0169】
概括的手順
関連する中間体の調製経路の表示が含まれていない場合、当該の中間体は市販されている。市販の試薬は更に精製することなく利用した。室温(rt)とは約20〜27℃をいう。H NMRスペクトルは、Bruker、VarianまたはJeolの装置のいずれかで、400MHzで記録した。化学シフト値は百万分率(ppm)、すなわち(δ)値で表す。NMRシグナルの多重度に関しては以下の略語を用いる。すなわち、s=一重線、br=ブロード、d=二重線、t=三重線、q=四重線、quint=五重線、td=二重線の三重線、tt=三重線の三重線、qd=二重線の四重線、ddd=二重線の二重線の二重線、ddt=三重線の二重線の二重線、m=多重線である。カップリング定数はHzで測定されたJ値として記載する。NMR及び質量分析の結果は、バックグラウンドピークを考慮するように補正した。クロマトグラフィーとは、60〜120メッシュのシリカゲルを用いて行い、窒素圧(フラッシュクロマトグラフィー)条件下で実施するカラムクロマトグラフィーをいう。反応を監視するためのTLCとは、指定された移動相及びシリカゲルF254(Merck)を固定相として用いたTLC操作をいう。マイクロ波媒介反応は、Biotage InitiatorまたはCEM Discoverマイクロ波反応器中で行った。
【0170】
LCMS実験は、一般的には以下の条件下で、各化合物について指定したエレクトロスプレー条件を用いて実施した。
【0171】
LCMS法A及びB
装置:Waters Alliance 2795、Waters 2996 PDA検出器、Micromass ZQ;カラム:Waters X−Bridge C−18、2.5ミクロン、2.1×20mmまたはPhenomenex Gemini−NX C−18、3ミクロン、2.0×30mm;勾配[時間(分)/溶媒C中のD(%)]:方法A:0.00/2、0.10/2、2.50/95、3.50/95、3.55/2、4.00/2または方法B:0.00/2、0.10/2、8.40/95、9.40/95、9.50/2、10.00/2;溶媒:溶媒C=2.5LのHO+2.5mLのアンモニア溶液;溶媒D=2.5LのMeCN+135mLのHO+2.5mLのアンモニア溶液);注入容量3μL;UV検出230〜400nm;カラム温度45℃;流速1.5mL/分。
【0172】
LCMS法C
装置:Waters Acquity H Class、フォトダイオードアレイ、SQ検出器;カラム:BEH C18、1.7ミクロン、2.1×50mm;勾配[時間(分)/溶媒A中のB(%)]:0.00/5、0.40/5、0.8/35、1.20/55、2.50/100、3.30/100 4.00/5;溶媒:溶媒A=5mMの酢酸アンモニウム及び0.1%ギ酸のHO溶液;溶媒B=0.1%のギ酸のMeCN溶液;注入容量2μL;UV検出200〜400nm;質量検出100〜1200AMU(+veエレクトロスプレー);カラム温度は周囲温度;流速0.5mL/分。
【0173】
LCMS法D
装置:Waters 2695、フォトダイオードアレイ、ZQ−2000検出器;カラム:X−Bridge C18、5ミクロン、150×4.6mm;勾配[時間(分)/溶媒A中のB(%)]:0.00/10、5.00/90、7.00/100、11.00/100、11.01/10 12.00/10;溶媒:溶媒A=0.1%のアンモニアのHO溶液;溶媒B=0.1%のアンモニアのMeCN溶液;注入容量10μL;UV検出200〜400nm;質量検出60〜1000AMU(+veエレクトロスプレー);カラム温度は周囲温度;流速1.0mL/分。
【0174】
LCMS法E
装置:Waters 2695、フォトダイオードアレイ、ZQ−2000検出器;カラム:X−Bridge C18、5ミクロン、150×4.6mm;勾配[時間(分)/溶媒A中のB(%)]:0.00/100、7.00/50、9.00/0、11.00/0、11.01/100、12.00/100;溶媒:溶媒A=0.1%のアンモニアのHO溶液;溶媒B=0.1%のアンモニアのMeCN溶液;注入容量10μL;UV検出200〜400nm;質量検出60〜1000AMU(+veエレクトロスプレー);カラム温度は周囲温度;流速1.0mL/分。
【0175】
LCMS法F
装置:Waters Acquity H Class、フォトダイオードアレイ、SQ検出器;カラム:BEH C18、1.7ミクロン、2.1×50mm;勾配[時間(分)/溶媒A中のB(%)]:0.00/5、0.40/5、0.8/35、1.20/55、2.70/95、3.30/5、4.00/5;溶媒:溶媒A=5mMの酢酸アンモニウム及び0.1%のギ酸のHO溶液;溶媒B=0.1%のギ酸のMeCN溶液;注入容量2μL;UV検出200〜400nm;質量検出100〜1200AMU(+veエレクトロスプレー);カラム温度は周囲温度;流速0.5mL/分。
【0176】
LCMS法G
装置:G1315A DAD、Micromass ZQを備えるHP 1100;カラム:Waters X−Bridge C−18、2.5ミクロン、2.1×20mmまたはPhenomenex Gemini−NX C−18、3ミクロン、2.0×30mm;勾配[時間(分)/溶媒C中のD(%)]:0.00/2、0.10/2、8.40/95、9.40/95、9.50/2、10.00/2;溶媒:溶媒C=2.5LのHO+2.5mLの28%のアンモニアHO溶液;溶媒D=2.5LのMeCN+135mLのHO+2.5mLの28%のアンモニアHO溶液;注入容量1μL;UV検出230〜400nm;質量検出130〜800AMU(+ve及び−veエレクトロスプレー);カラム温度45℃;流速1.5mL/分。
【0177】
実験項中のLCMSデータは、質量イオン、保持時間、UV活性の形式で記載する。
略語
d=日(複数可)
DCE=ジクロロエタン
DCM=ジクロロメタン
DEA=ジエチルアミン
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
DMF=ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
DPPA=ジフェニルホスホリルアジド
ES=エレクトロスプレーイオン化
EtN=トリエチルアミン
EtOAc=酢酸エチル
h=時間(複数可)
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
LC=液体クロマトグラフィー
LiHMDS=リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
MeCN=アセトニトリル
MeOH=メタノール
min=分(複数可)
MS=質量分析
=窒素
NMR=核磁気共鳴
rt=室温
sat.=飽和
sol.=溶液
STAB=トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム
TBAF=テトラブチルアンモニウムフルオリド
THF=テトラヒドロフラン
TLC=薄層クロマトグラフィー
接頭辞n−、s−、i−、t−及びtert−はそれらの通常の意味、すなわち、ノルマル、第二級、イソ、及び第三級を有する。
【0178】
中間体の合成
経路1
中間体1、4−(4−アセチルピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチルの調製によって例示するケトンの一般的な調製手順
【0179】
【化23】
【0180】
アゼパン−4−オン・HCl(5.0g、44mmol)及びトリエチルアミン(19.0mL、133mmol)をDCM(60mL)に溶解し、この溶液を0℃に冷却し、続いてクロロギ酸エチル(6.3mL、66mmol)を滴下によって添加した。得られた反応混合物を25℃で3時間撹拌し、次いでHO(200mL)とEtOAc(70mL)との間で分配させた。水層をEtOAc(2×70mL)で更に抽出し、一つにまとめた有機分をNaSO上で脱水し、溶媒を減圧下で除去した。この粗製化合物をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、0〜0.5%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、4−オキソアゼパン−1−カルボン酸エチル(7.8g、95%)を褐色のガム状物として得た。
【0181】
LCMS(方法C):m/z 186(M+H)(ES)、0.87分、UV活性
4−オキソアゼパン−1−カルボン酸エチル(5.0g、27mmol)、ピペリジン−4−カルボニトリル(3.0g、27mmol)、ZnCl(1.1g、8mmol)及びトリエチルアミン(19.0mL、136mmol)をMeOH(60mL)に溶解し、この反応混合物を50℃で1時間撹拌した。次いで、この混合物を0℃に冷却した後、NaBHCN(6.8g、108mmol)を添加し、更に50℃で7時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をHO(200mL)とEtOAc(80mL)との間で分配させた。水層をEtOAc(2×80mL)で抽出し、一つにまとめた有機分を脱水し(NaSO)、減圧下で濃縮した。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、0〜2.0%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、4−(4−シアノピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル(4.0g、53%)を無色のガム状物として得た。
【0182】
LCMS(方法D):m/z 280(M+H)(ES)、5.13分、UV活性
4−(4−シアノピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル(300mg、0.11mmol)をTHF(5mL)に溶解し、0℃に冷却した。臭化メチルマグネシウム(3Mのエーテル溶液)(1.5mL、4.46mmol)を滴下によって添加し、得られた反応混合物を室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水(50mL)で希釈し、EtOAc(30mL)で抽出した。水層をEtOAc(2×30mL)で更に抽出し、一つにまとめた有機分を脱水し(NaSO)、減圧下で濃縮した。この粗製化合物をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、2.0〜5.0%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、4−(4−アセチルピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル(210mg、66%)を無色のガム状物として得た。
表題化合物のデータを表2に示す。
【0183】
経路2
臭化イソペンチルマグネシウムの調製によって例示するグリニャール試薬の一般的な調製手順
【0184】
【化24】
【0185】
活性化したマグネシウム粉(1.2g、49.7mmol)及びヨウ素(触媒)に、無水THF(5mL)を添加した。この混合物に1−ブロモ−3−メチルブタン(5.0g、33.1mmol)を滴下によって添加し、反応をヒートガンで開始させた。得られた反応混合物を無水THF(35mL)で希釈し、この反応混合物を60℃で2時間更に撹拌した。この粗製混合物を次の工程に直接使用した。
【0186】
経路3
中間体11、(4S)−4−(4−アセチルピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチルの調製によって例示するケトンの一般的な調製手順
【0187】
【化25】
【0188】
(4R)−4−ヒドロキシアゼパン−1−カルボン酸エチル(2.0g、10.7mmol)及びトリエチルアミン(3.0mL、21.2mmol)を0℃でDCM(20mL)に溶解し、この溶液に塩化メタンスルホニル(1.2mL、16.0mmol)を滴下によって添加し、得られた反応混合物を25℃で2時間撹拌した。この混合物をHO(150mL)とEtOAc(80mL)との間で分配させ、水層をEtOAc(2×80mL)で更に抽出し、一つにまとめた有機分を脱水し(NaSO)、溶媒を減圧下で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、0〜0.5%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、(4R)−4−[(メチルスルホニル)オキシ]アゼパン−1−カルボン酸エチル(2.5g、84%)を黄色の液体として得た。
【0189】
LCMS(方法D):m/z 266(M+H)(ES)、5.18分、UV活性
ピペリジン−4−カルボニトリル(1.0g、9.1mmol)をTHF(20mL)に溶解した後、KCO(3.8g、27.3mmol)を添加した。得られた反応混合物を0℃に冷却し、(4R)−4−[(メチルスルホニル)オキシ]アゼパン−1−カルボン酸エチル(2.0g、7.5mmol)を滴下により添加した。得られた反応混合物を80℃で50時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をHO(200mL)とEtOAc(110mL)との間で分配させ、水層をEtOAc(2×110mL)で更に抽出した。一つにまとめた有機分を脱水し(NaSO)、残渣をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、4〜8%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、(4S)−4−(4−シアノピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル(1.6g、76%)を黄色のガム状物として得た。
【0190】
LCMS(方法C):m/z 280(M+H)(ES)、1.49分、UV活性
(4S)−4−(4−シアノピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル(400mg、1.4mmol)をTHF(10mL)に溶解し、この反応混合物を0℃で30分間撹拌した。臭化メチルマグネシウム(3Mのエーテル溶液)(2.0mL、5.9mmol)を滴下によって添加し、得られた反応混合物を25℃で4時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をHO(60mL)とEtOAc(40mL)との間で分配させた。水層をEtOAc(2×40mL)で更に抽出し、一つにまとめた有機分を脱水し(NaSO)、残渣をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、2〜5%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、(4S)−4−(4−アセチルピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル、中間体11(300mg、71%)を無色のガム状物として得た。
表題化合物のデータを表2に示す。
【0191】
経路4
中間体16、2−(4−アセチルピペリジン−1−イル)−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチルの調製によって例示するケトンの一般的な調製手順
【0192】
【化26】
【0193】
2−オキソ−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸tert−ブチル(1.0g、4.4mmol)をDCM(10mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.7mL、8.9mmol)を滴下によって添加した。得られた混合物を30℃で16時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をエーテル(3×5mL)で粉体化することによって精製し、6−アザスピロ[3.4]オクタン−2−オン・TFA(600mg、56%)を灰白色の固体として得た。
【0194】
LCMS(方法D):m/z 126(M+H)(ES)、3.37分、UV活性
0℃の6−アザスピロ[3.4]オクタン−2−オン・TFA(1.0g、8.0mmol)及びトリエチルアミン(2.8mL、20.0mmol)のDCM(10mL)溶液にクロロギ酸エチル(1.1mL、12.0mmol)を滴下によって添加し、得られた反応混合物を25℃で3時間撹拌した。次いでこの混合物をHO(80mL)とEtOAc(50mL)との間で分配させ、水層をEtOAc(2×50mL)で更に抽出し、一つにまとめた有機分を脱水した(NaSO)。溶媒を減圧下で除去し、この粗製残渣をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、0〜0.5%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、2−オキソ−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル(1.40g、89%)を灰白色の固体として得た。
【0195】
LCMS(方法C):m/z 198(M+H)(ES)、1.75分、UV活性
2−オキソ−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル(1.00g、5.1mmol)、ピペリジン−4−カルボニトリル(0.61g、5.6mmol)、ZnCl(0.21g、0.2mmol)及びトリエチルアミン(3.6mL、25.3mmol)をMeOH(15mL)に溶解し、この反応混合物を50℃で1時間撹拌した。次いで、この混合物を0℃に冷却し、NaBHCN(1.30g、20.3mmol)を分割して添加した後、更に50℃で7時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣をHO(100mL)とEtOAc(60mL)との間で分配させた。水層をEtOAc(2×60mL)で抽出し、一つにまとめた有機分をNaSO上で脱水した。残渣をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、0.5〜4.0%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、2−(4−シアノピペリジン−1−イル)−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル(1.40g、81%)を黄色のガム状物として得た。
【0196】
LCMS(方法C):m/z 293(M+H)(ES)、1.53分、UV活性
2−(4−シアノピペリジン−1−イル)−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル(200mg、0.69mmol)をTHF(5mL)に溶解し、この反応混合物を0℃で30分間撹拌した。次いで、臭化メチルマグネシウム(1.4Mのエーテル溶液)(2.0mL、2.85mmol)を滴下によって添加し、得られた反応混合物を25℃で4時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をHO(40mL)とEtOAc(25mL)との間で分配させた。水層をEtOAc(2×25mL)で抽出し、一つにまとめた有機分をNaSO上で脱水した。残渣をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、1.0〜3.0%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、2−(4−アセチルピペリジン−1−イル)−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル(150mg、71%)を黄色のガム状物として得た。
表題化合物のデータを表2に示す。
【0197】
経路5
カルボン酸中間体21、1−[1−(エトキシカルボニル)アゼパン−4−イル]ピペリジン−4−カルボン酸の調製手順
【0198】
【化27】
【0199】
アゼパン−4−オン・HCl(5.0g、44mmol)及びトリエチルアミン(19.0mL、133mmol)を0℃でDCM(60mL)に溶解し、続いてクロロギ酸エチル(6.3mL、66mmol)を滴下によって添加した。得られた反応混合物を25℃で3時間撹拌し、この混合物をHO(200mL)とEtOAc(70mL)との間で分配させた。水層をEtOAc(2×70mL)で更に抽出し、一つにまとめた有機分を脱水し(NaSO)、溶媒を減圧下で除去した。この粗製化合物をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、0〜0.5%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、4−オキソアゼパン−1−カルボン酸エチル(7.8g、95%)を褐色のガム状物として得た。
【0200】
LCMS(方法C):m/z 186(M+H)(ES)、0.87分、UV活性
4−オキソアゼパン−1−カルボン酸エチル(3.0g、16.2mmol)、ピペリジン−4−カルボン酸エチル(2.5g、16.2mmol)及びトリエチルアミン(8.1g、81.0mmol)をMeOH(50mL)に溶解し、この反応混合物を窒素で30分間脱気した。ZnCl(110mg、0.8mmol)を添加し、この混合物を60℃で3時間撹拌した。この反応混合物を0℃に冷却し、NaCNBH(5.1g、81.0mmol)を分割して添加し、この混合物を室温で8時間撹拌した。この混合物を水(500mL)で希釈し、DCM(3×150mL)で抽出し、一つにまとめた有機分をNaSO上で脱水し、減圧下で濃縮した。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(順相、中性シリカゲル、60〜120メッシュ、0〜1%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、4−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル(2.5g、47%)を黄色のガム状物として得た。
【0201】
LCMS(方法F):m/z 328(M+H)(ES)、2.52分、UV活性
4−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−アゼパン−1−カルボン酸エチル(2.3g、7.0mmol)、LiOH(0.34g、14.1mmol)及びHO(15mL)をTHF(15mL)に溶解し、得られた反応混合物を80℃で16時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をHO(80mL)とEtOAc(50mL)との間で分配させた。水層をEtOAc(2×50mL)で抽出し、一つにまとめた有機分をNaSO上で脱水した。この粗製残渣をカラムクロマトグラフィー(通常のシリカ、メッシュサイズ:60〜120、6〜10%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、1−(1−(エトキシカルボニル)アゼパン−4−イル)ピペリジン−4−カルボン酸、中間体21(1.4g、70%)を白色固体として得た。
表題化合物のデータを表2に示す。
【0202】
概括的な合成手順
経路a
実施例1−1、4−{4−[N−メトキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチルの調製によって例示するオキシムの一般的な調製手順
【0203】
【化28】
【0204】
4−(4−アセチルピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル(200mg、0.68mmol)のMeOH(5mL)溶液に、O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(85mg、1.01mmol)及び酢酸ナトリウム(83mg、1.01mmol)を室温で添加し、得られた反応混合物を8時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をHO(50mL)とEtOAc(30mL)との間で分配させ、水層をEtOAc(2×30mL)で更に抽出した。一つにまとめた有機分を脱水し(NaSO)、溶媒を減圧下で除去した。この粗製化合物を分取HPLC[逆相HPLC(X−Bridge、C−18、250×19mm、5μm、毎分19mL、勾配40〜45%(15分間にわたり)、100%(2.0分間にわたり)次いで40%(4.0分間にわたり)、0.1%のNHのMeCN溶液/水]によって精製して、4−{4−[N−メトキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル 異性体1(5mg、2.3%)を無色のガム状物として、及び異性体−2(25mg、11.0%)を無色のガム状物として得た。
表題化合物のデータを表3に示す。
【0205】
経路b
実施例3−1、4−{4−[N’−メトキシ−N−(2−メチルプロピル)カルバムイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチルの調製手順
【0206】
【化29】
【0207】
1−(1−(エトキシカルボニル)アゼパン−4−イル)ピペリジン−4−カルボン酸(1.0g、33.5mmol)及びHATU(1.4g、36.8mmol)をMeCN(20mL)に溶解し、この反応混合物を室温で15分間撹拌した。O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(308mg、36.8mmol)及びDIPEA(1.27g、99.5mmol)を添加し、この混合物を室温で4時間更に撹拌した。この混合物を水(150mL)でクエンチし、DCM(3×60mL)で抽出し、一つにまとめた有機分をNaSO上で脱水し、減圧下で濃縮した。この粗製残渣をカラムクロマトグラフィー(順相、中性シリカゲル、60〜120メッシュ、0〜8%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、4−[4−(メトキシカルバモイル)ピペリジン−1−イル]アゼパン−1−カルボン酸エチル(400mg、36%)を黄色のガム状物として得た。
【0208】
LCMS(方法C):m/z 328(M+H)(ES)、1.47分、UV活性
4−[4−(メトキシカルバモイル)ピペリジン−1−イル]アゼパン−1−カルボン酸エチル(250mg、0.76mmol)をMeOHに溶解し、0℃で塩化チオニル(135mg、1.14mmol)を添加した。次いで、この混合物を室温で3時間撹拌し、0℃に冷却し、NaHCOの飽和溶液で塩基性化した。この混合物を水(60mL)で希釈し、DCM(3×20mL)で抽出し、一つにまとめた有機分をNaSO上で脱水し、減圧下で濃縮した。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(順相、中性シリカゲル、60〜120メッシュ、0〜2.5%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、4−{4−[クロロ(メトキシイミノ)メチル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル(100mg、38%)を黄色のガム状物として得た。
【0209】
LCMS(方法C):m/z 346(M+H)(ES)、1.70分、UV活性
4−{4−[(E)−クロロ(メトキシイミノ)メチル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、KCO及び2−メチルプロパン−1−アミンをDMFに溶解し、この混合物を90℃で3時間撹拌した。次いで、この反応混合物を水(60mL)で希釈し、DCM(3×20mL)で抽出し、一つにまとめた有機分をNaSO上で脱水し、減圧下で濃縮した。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(順相、中性シリカゲル、60〜120メッシュ、0〜4%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、4−{4−[N’−メトキシ−N−(2−メチルプロピル)カルバムイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、実施例3−1(25mg、32%)を褐色のガム状物として得た。
標題化合物のデータを表3に示す。
【0210】
経路c
実施例4−1、4−(4−{シアノ[(プロパン−2−イルオキシ)イミノ]メチル}ピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチルの調製手順
【0211】
【化30】
【0212】
1−(1−(エトキシカルボニル)アゼパン−4−イル)ピペリジン−4−カルボン酸(0.72g、2.41mmol)のDMF(10mL)溶液に、HATU(1.37g、3.61mmol)、O−イソプロピルヒドロキシルアミン・HCl(0.30g、2.65mmol)及びDIPEA(1.26mL、7.23mmol)を添加し、得られた混合物を室温で65時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をDCMで希釈し、NaHCO溶液及び飽和食塩水で洗浄した。有機分をMgSO上で脱水し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカ上(25gのSNAPカートリッジ、0〜9%のMeOHのDCM溶液)で精製して、所望の生成物である4−{4−[(プロパン−2−イルオキシ)カルバモイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル(101mg、12%)を黄色のガム状物として得た。
【0213】
LCMS(方法B):m/z 356(M+H)(ES)、2.58分、UV不活性
4−{4−[(プロパン−2−イルオキシ)カルバモイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル(96mg、0.27mmol)の無水1,2−ジクロロエタン(10mL)溶液に、オキシ塩化リン(45mg、0.29mmol)を添加し、この混合物を85℃で16時間加熱した。次いで、この混合物を室温まで放冷した後に氷でクエンチした。次いでこの混合物を飽和NaHCO水溶液で希釈し、DCM(2×20mL)で抽出した。一つにまとめた有機分をMgSO上で脱水し、ろ過し、減圧下で濃縮して、4−(4−{クロロ[(プロパン−2−イルオキシ)イミノ]メチル}ピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル(99mg、100%)を琥珀色のガム状物として得て、これを直接次の工程に供した。
【0214】
撹拌中の4−(4−{クロロ[(プロパン−2−イルオキシ)イミノ]メチル}ピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル(99mg、0.27mmol)の無水DMSO(2mL)溶液にシアン化ナトリウム(26mg、0.54mmol)を添加し、この溶液をN下、95℃で7時間加熱した後、更にシアン化ナトリウム(26mg、0.54mmol)を添加し、95℃で48時間加熱した。次いで更にシアン化ナトリウム(26mg、0.54mmol)を添加し、この混合物を110℃で16時間加熱した。次にこの混合物を室温まで放冷し、減圧下で濃縮した。残渣をDCMで希釈し、5%の炭酸カリウム(水溶液)(20mL×1)及び飽和食塩水(20mL×1)で洗浄した。有機層をMgSO上脱水し、ろ過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカ上(0〜5%のMeOHのDCM溶液)で精製して、4−(4−{シアノ[(プロパン−2−イルオキシ)イミノ]メチル}ピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル、実施例4−1(5.0mg、5%)を無色油状物として得た。
【0215】
表題化合物のデータを表3に示す。
【0216】
【表2-1】
【0217】
【表2-2】
【0218】
【表3-1】
【0219】
【表3-2】
【0220】
【表3-3】
【0221】
【表3-4】
【0222】
【表3-5】
【0223】
【表3-6】
【0224】
【表3-7】
【0225】
【表3-8】
【0226】
生物学的活性
実施例A
Phospho−ERK1/2アッセイ
Alphascreen Surefire phospho−ERK1/2アッセイ(Crouch & Osmond, Comb. Chem. High Throughput Screen, 2008)を用いて機能アッセイを実施した。ERK1/2リン酸化は、Gq/11及びGi/oタンパク質共役型受容体の両方の活性化の下流の結果であり、それによってERK1/2リン酸化は、異なる受容体サブタイプに対して異なるアッセイ形式を用いる場合よりも、M、M受容体(Gq/11共役型)及びM、M受容体(Gi/o共役型)の評価に非常に適したものになる。ヒトムスカリンM、M、MまたはM受容体を安定的に発現するCHO細胞を、96ウェルの組織培養プレート上で、MEMα+10%の透析済みFBS中に播種した(25K/ウェル)。細胞が接着した後、これを終夜血清不足の状態にした。細胞に5μLのアゴニストを5分間(37℃)添加することによってアゴニスト刺激を行った。培地を除去し、50μLの溶解緩衝液を添加した。15分後に、4μLの試料を384ウェルのプレートに移し、7μLの検出混合液を添加した。プレートを暗所で穏やかに撹拌しながら2時間インキュベートし、次いでPHERAstarプレートリーダーで読み取った。
【0227】
各受容体サブタイプに関して得られたデータからpEC50及びEmaxの値を算出した。
全ての実施例に関してcis及びtransオキシム異性体が存在し、別段の明記がない限り該異性体を分離したが、絶対配置は決定しておらず、異なる異性体のLCMS分析記録上のそれらの保持時間に基づく帰属を行った。ラセミの出発物質を用いる場合は、分離した異性体も依然としてラセミ混合物である。いくつかの実施例に関しては、2種の更なるジアステレオマーがシクロブタン環を挟んで存在し、別段の明記がない限り、可能な場合にはこれらのジアステレオマーを分離し、LCMS分析記録上のそれらの保持時間に基づいて帰属を行った。活性な異性体に関する分析データを表3に報告する。いくつかの活性の弱い化合物に関するデータは、絶対立体化学の優先性を際立たせるために、表4にも挙げている。
【0228】
結果を以下の表4に示す。
【0229】
【表4】
【0230】
実施例B
医薬製剤
(i)錠剤製剤
式(1)の化合物を含有する錠剤組成物を、50mgの当該化合物を、希釈剤としての197mgのラクトース(BP)、及び潤滑剤としての3mgのステアリン酸マグネシウムと共に混合し、公知の方法で圧縮成型して錠剤を形成することによって調製する。
(ii)カプセル剤製剤
100mgの式(1)の化合物を、100mgのラクトース及び任意選択で1重量%のステアリン酸マグネシウムと共に混合し、得られる混合物を標準的な不透明の硬質ゼラチンカプセル中に充填することによって、カプセル剤製剤を調製する。
【0231】
均等物
上述の実施例は本発明を例証することを目的として提示するものであって、本発明の範囲に何等かの限定を加えるものであると解釈されるべきものではない。上述の及び実施例において例証される本発明の特定の実施形態に対して、本発明の基礎をなす原理から逸脱することなく、多くの改変及び変更をなし得ることは容易に明らかとなろう。全てのかかる改変及び変更は、本出願に包含されることを意図する。
態様1
式(1)
【化31】
の化合物またはその塩であって、式中、
pは0、1または2であり、
qは0、1または2であり、
YはN、O、SまたはCであり、
及びXは、全体として合計4〜9の炭素原子を含有し、且つ互いに結合し、部分
【化32】
が単環式または二環式の環系を形成するような飽和炭化水素基であり、
は、任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜6非芳香族炭化水素基であって、前記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい前記炭化水素基であり、
はシアノまたは、任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜6非芳香族炭化水素基であって、前記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい前記炭化水素基であり、
は、水素、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1〜3アルコキシ、及び任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜5非芳香族炭化水素基であって、前記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい前記炭化水素基から選択され、
は、Hまたは任意選択で1〜6のフッ素原子で置換されたC1〜6非芳香族炭化水素基であって、前記炭化水素基の1または2の、但し全てではない炭素原子が、任意選択でO、N及びSならびにそれらの酸化形態から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい前記炭化水素基であり、
はフッ素であり、
はフッ素である
前記化合物またはその塩。
態様2
が、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルから選択される、態様1に記載の化合物。
態様3
が、シアノ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチルから選択される、態様1〜2のいずれか1項に記載の化合物。
態様4
が、水素、フッ素及びメトキシから選択される、態様1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
態様5
が、水素、メチル、エチル、エチニル及び1−プロピニルから選択される、態様1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
態様6
pが0である、態様1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
態様7
qが0である、態様1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
態様8
前記部分
【化33】
によって形成される前記二環式環系が、
(a)ピペリジンと、
(b)アゼパンと、
(c)アザビシクロ−オクタンまたはアザビシクロ−ノナン環系と、
(d)2−アザ−スピロ[3.4]オクタンまたは6−アザ−スピロ[3.4]オクタン環系と、
(e)シクロペンタノピロリジン環系と
から選択される、態様1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
態様9
前記部分
【化34】
によって形成される前記二環式環系が、以下の環系
【化35】
から選択される、態様8に記載の化合物。
態様10
式(2)
【化36】
を有し、
式中、R、R、R、R、R、Y及びpは態様1〜6のいずれか1項に定義されるとおりであり、sは0または1であり、tは0または1である、態様1に記載の化合物。
態様11
4−{4−[N−メトキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
(4S)−4−{4−[N−メトキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
(4S)−4−{4−[N−メトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシブタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
(4S)−4−{4−[N−メトキシブタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシ−2−メチルプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル
4−{4−[N−メトキシ−2−メチルプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシ−4−メチルペンタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−エトキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−プロポキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−(プロパン−2−イルオキシ)エタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−エトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−プロポキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−(プロパン−2−イルオキシ)プロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
2−{4−[N−メトキシエタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル、
2−{4−[N−メトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル、
2−{4−[N−メトキシブタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル、
4−{4−[N’−メトキシ−N−(2−メチルプロピル)カルバムイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−(4−{シアノ[(プロパン−2−イルオキシ)イミノ]メチル}ピペリジン−1−イル)アゼパン−1−カルボン酸エチル
から選択される、態様1に記載の化合物。
態様12
4−{4−[N−メトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシブタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシ−2−メチルプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−メトキシ−2−メチルプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
4−{4−[N−(プロパン−2−イルオキシ)プロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}アゼパン−1−カルボン酸エチル、
2−{4−[N−メトキシプロパンイミドイル]ピペリジン−1−イル}−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル、
2−{4−[N−メトキシブタンイミドイル]ピペリジン−1−イル}−6−アザスピロ[3.4]オクタン−6−カルボン酸エチル
から選択される、態様1に記載の化合物。
態様13
医薬用の態様1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
態様14
認知障害もしくは精神障害の治療用の、あるいは急性、慢性、神経障害性、もしくは炎症性疼痛の治療または重篤度の軽減用の、態様1〜12に記載の化合物。
態様15
態様1〜12のいずれか1項に規定される化合物及び薬学的に許容される医薬添加剤を含む医薬組成物。
態様16
ムスカリンM受容体及び/またはM受容体アゴニスト活性を有する、態様1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
態様17
及びM受容体サブタイプと比較してM及びM受容体に対する選択性を示す、アルツハイマー病、レビー小体型認知症及び他の認知障害の治療用の、または急性、慢性、神経障害性、もしくは炎症性疼痛の治療または重篤度の軽減用の、または依存症の治療用の、または運動障害の治療用の、態様1〜12に記載の化合物。
態様18
、M及びM受容体サブタイプと比較してM受容体に対する選択性を示す、統合失調症または他の精神病性障害の治療用の、または急性、慢性、神経障害性、もしくは炎症性疼痛の治療または重篤度の軽減用の、または依存症の治療用の、または運動障害の治療用の、態様1〜12に記載の化合物。