(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に基づき本発明の実施形態に係る車両用荷室構造の一例を説明する。
なお、
図1に示す車両1の進行方向を「F」、後退方向を「B」、「鉛直上方側を「U」、鉛直下方側を「D」、左側を「L」、右側を「R」として適宜説明する。車両C1は、ドア開口部1b及び荷室1dを有するものであれば、形式・種類は特に限定されない。
【0011】
≪車両≫
車両1は、車両1の後端部1aに形成されたドア開口部1bと、ドア開口部1bを開閉する扉12と、車両1の後部に設けられた荷室1dと、荷室1dのフロア1cに凹設された収納部10をフロアボード3で開閉する収納装置2と、を備えている。
なお、車両1は、後部に荷室1d、扉12、収納装置2を備えている自動車であればよく、例えば、ハッチバックや、ワゴンタイプや、クーペタイプ等から成る。以下、バックドアタイプの扉12を有する自動車を例に挙げて説明する。
【0012】
図1に示すように、ドア開口部1bは、荷室1d内から荷物Aを収納したり、取り出したりするための開口部である。
フロア1cは、荷室1dの床面であり、例えば、車室(キャビン)の床面に連続して形成されている。フロア1cの後端には、ドア開口部1bが形成されている。
【0013】
荷室1dは、荷物Aを収納したり、積載したりする空間である。この荷室1dは、ドア開口部1bと後部座席11との間に形成されている。荷室1dは、後部座席11のシートバック11aを前側に倒せば、フロア1cが荷室1d側と車室側とに繋がってスルーの状態になるようになっている。
【0014】
なお、扉12は、ドア開口部1bを閉塞するものであれば、どのようなタイプのドアでも構わない。以下、扉12の一例として、跳ね上げタイプのヒンジ式ドアを例に挙げて説明する。
【0015】
<収納部>
図3及び
図4に示すように、収納部10は、フロア1cの荷室後端部から荷室前端部に亘って凹設された荷物収納用凹部である。つまり、収納部10は、工具やスペアタイヤや荷物A(
図1参照)等を床下収納する略直方体形状の収納空間から成る。収納部10は、開口部10d内の内壁及び内底面が樹脂製の板部材によって形成されて、例えば、金属製平板部材から成るフロアパネル(図示省略)の上方に配置されている。収納部10の上部内壁には、前端部10aに前側支持部10e及び補助ボード支持部10hが形成され、後端部10bに後側支持部10f及び係合部10gが形成されている。その後側支持部10f、前側支持部10e及び補助ボード支持部10hは、フロアボード3上に重い荷物Aを積載しても、フロアボード3を支持できる強度を備えている。収納部10の内底面は、使用用途等に応じて適宜凹部や凸部を形成してもよい。
【0016】
図2に示すように、収納部10内に荷物A(
図1参照)を収納する場合には、ストラップ7を引き上げて、フロアボード3をリンク部材9の上端部を中心として上方向に回動させて開放する。収納部10は、フロアボード3を開放することで、荷物Aを出し入れすることができるようになっている。
【0017】
≪収納装置≫
図2及び
図3に示すように、収納装置2は、荷物A等を収納した収納部10をフロアボード3で覆ったり、フロアボード3の上に荷物A(
図1参照)を積載したり、収納部10を閉塞した状態でフロアボード3をスライド移動させたりすることが可能である。収納装置2は、収納部10の開口部10d上に配置されたフロアボード3と、補助ボード4及び移動規制部材5と、フロアボード3に設けられたストラップ7、線状部材8及びリンク部材9と、移動規制部材5を回動させるためのシャフト6と、を備えている。
【0018】
<フロアボード>
図2及び
図3に示すように、フロアボード3は、収納部10の開口部10dを開閉する蓋部材の機能と、フロアボード3上に荷物Aを載置する荷室1dの床板部材の機能と、フロアボード3上に載置した荷物A(
図4参照)を移動させるための可動ボードの機能と、を有する。
図3に示すように、フロアボード3は、板状のフロアボード本体31と、フロアボード本体31の下面の左右端部に設けられた係止突起32及び側板33と、フロアボード本体31の移動を案内するガイド部(図示省略)と、を備えている。フロアボード3の前端部3aには、回動可能に軸支された移動規制部材5と、左右一対のリンク部材9と、後方向に配置された補助ボード4と、が配置されている。フロアボード3の後端部3bの中央部には、ストラップ7と線状部材8が取り付けられている。
【0019】
図2に示すように、フロアボード3を前側に移動させた際に、フロアボード3の前端部3aは、収納部10内の開口部10dの前側内縁から後方向に向けて突設された角柱形状の前側支持部10eの上面上に載置されて下側から支えられている。
図4に示すように、その前側支持部10eは、フロア1cから開口部10d内に一段(フロアボード3の厚さ分)下がった位置に段差状に平らに形成されている(
図3参照)。このため、前側支持部10e上に載置されたフロアボード3のボード面は、フロアボード3で開口部10dを閉塞した際に、フロア1cに面一なるように配置される。
【0020】
図2に示すように、フロアボード3は、前端部3aがリンク部材9の上端部に回動自在に連結されている。これにより、フロアボード3は、
図2に示すように、前端部3aを中心として上下方向(矢印s方向)に回動可能になっている。
また、
図4に示すように、フロアボード3は、軸支部材93を中心として回動するリンク部材9が連結されていることによって、前後方向(矢印r方向)に所定距離だけスライドできるように規制されている。
【0021】
フロアボード3の後端部3bは、フロアボード3で収納部10の開口部10dを閉塞しているときに、収納部10内の開口部10dの後側内縁から内側方向に向けて突出形成された後側支持部10f上に載置されて下側から支えされている。その後側支持部10fは、開口部10dの後側内縁において、前側支持部10eの上面と略同じ高さの位置に、段差状に平らに形成されている。
【0022】
図3に示すように、フロアボード本体31は、平面視して四角形の樹脂製の厚板部材から成る。フロアボード本体31は、例えば、左右一対の係止突起32と、左右一対の側板33と、を一体形成した樹脂製部材から成る。なお、フロアボード本体31のボード面及び下面には、車両前後方向(以下「前後方向」という)及び車幅方向に延びる補強用の凹部及び凸部を一体形成してもよい。
【0023】
係止突起32は、フロアボード3を車両後方側(以下「後方側」という)にスライド移動させた際に、後側支持部10fに形成された凹溝状の係合部10gに係合することで、フロアボード3が前後方向に移動するのを規制する抑止部位である(
図8参照)。係止突起32は、例えば、フロアボード本体31の下面の左右端部中央から下方向に向けて突出した四角錐台から成る。
【0024】
側板33は、フロアボード本体31の補強部位である。側板33は、係止突起32の前側側面から前方向に延設された平板状の補強リブから成る。
【0025】
<補助ボード>
図3に示すように、補助ボード4は、フロアボード3を後方向にスライドさせた状態で、収納部10の前端部10aとフロアボード3との間を覆う板状部材である。補助ボード4は、フロアボード3の前端部3aの下側に配置されている。補助ボード4は、後端部位に形成された傾斜部4a(
図4参照)と、左前端部に形成された切欠部4bと、不図示のガイド部が係合するガイド係合部(図示省略)と、が形成された樹脂製の厚板部材から成る。補助ボード4の前端部下面は、補助ボード4の厚さ分だけ後側支持部10fの上面よりも下側の位置から後方向に向けて突設された角柱形状の補助ボード支持部10hに載置して下側から支えられている。
【0026】
傾斜部4aは、後端部位の左端から右端に亘って形成された後下がりの斜めの面である。
図3に示すように、傾斜部4aは、フロアボード3を後方向に移動させたときに、傾斜部4a全体がフロアボード3の下面に当接するように配置されている(
図9参照)。
【0027】
切欠部4bは、フロアボード3が車両前方側(以下「前方側」という)に移動したときに、前側支持部10eを避けるために切欠形成された部位である。切欠部4bは、フロアボード3の下面の前側左右端部が前側支持部10e上に載置されるようにするために形成されている。
【0028】
不図示のガイド部とガイド係合部は、補助ボード4に対してフロアボード3を前後方向にスライド可能に連結すると共に、補助ボード4に対してフロアボード3を上下方向に移動不能に連結するための連結部位である。なお、ガイド部とガイド係合部とは、互いにフロアボード3と補助ボード4との一方に形成されてあればよく、どちらに形成されてあってもよい。
【0029】
その一例を挙げると、ガイド部(図示省略)は、フロアボード3の下面側の補助ボード4に前後方向に延設された溝状のガイド係合部(図示省略)に前後方向に移動自在に係合された係合突起から成る。ガイド部は、フロアボード3の下面から下方向に向けて突設されている。ガイド部の先端部には、基端側よりも左右の幅が広い離脱防止用の膨出部が形成されている。
また、ガイド係合部(図示省略)は、フロアボード3のガイド部が前後方向及び上下方向に所定距離だけに摺動可能に係合される溝から成る。ガイド係合部は、フロアボード3が補助ボード4上を前後方向に摺動する際に、そのフロアボード3が補助ボード4の上面あるいは傾斜部4aから離間しないように、ガイド部に係合されて支持されている。
【0030】
<移動規制部材>
図2及び
図3に示すうように、移動規制部材5は、フロアボード3を後方向に移動させた場合に、フロアボード3上に載置した荷物A(
図4参照)等が前方向に相対移動するのを規制するための部材である。
図5(b)に示すように、移動規制部材5は、車幅方向に延びる規制部材本体51と、規制部材本体51の両端に設けられた回動部材52と、回動部材52をフロアボード3に軸支する軸部材53と、回動部材52をシャフト6に軸支する連結軸部材54と、を備えている。移動規制部材5は、フロアボード3を後方(矢印c方向)にスライドした場合に、シャフト6によって前方側に押圧させて、フロアボード3のボード面よりも上方向(矢印f方向)に突出するように構成されている。
図5(a)に示すように、移動規制部材5は、フロアボード3を後方向側から前方側(矢印i方向側)にスライドさせた場合に、シャフト6によって車両後方側に引っ張られて、フロアボード3のボード面の位置(ボード面に没入する位置)に復帰するように構成されている。
【0031】
規制部材本体51は、フロアボード3の前端部3aに沿って車幅方向に延設された縦断面視して円弧状に形成された平部材から成る。規制部材本体51の上端部は、フロアボード3が前方側(矢印i方向側)にあるときに、フロアボード3のボード面と面一の位置に配置される。規制部材本体51の上端部は、
図5(b)に示すように、フロアボード3が後方向側(矢印c方向側)にあるときに、フロアボード3のボード面よりも高い位置に配置される。
【0032】
回動部材52は、規制部材本体51の両端部に一体に設けられて、側面視して略扇形状の平板部材である。
軸部材53は、側面視して略扇形状の回動部材52の中心側部位を、フロアボード3の前端部側面に回動自在に連結するための部材である。
連結軸部材54は、回動部材52の下端部を、シャフト6の前端に回動可能に連結するための部材である。
【0033】
<シャフト>
図6(a)、(b)に示すように、シャフト6は、フロアボード3(
図4及び
図9参照)を前後方向に移動させることによって伸び縮みする伸縮可能な棒状部材から成る。シャフト6は、筒状の大ロッド61と、大ロッド61に対して出し入れ可能に複数連結された小ロッド62と、大ロッド61の基端側の設けられた基端側連結部63と、小ロッド62の先端に設けられた先端側連結部64と、を備えている。つまり、シャフト6は、伸縮アンテナや、伸縮ロッドのように構成された部材から成る。なお、シャフト6は、エアダンパーのように小ロッド62を先端側に付勢するばね力(弾性)を有するものが好ましい。シャフト6は、一端が補助ボード4(
図4参照)に連結され、他端が移動規制部材5に連結されている。
【0034】
大ロッド61は、シャフト6の本体を構成する大径の円筒状の部材である。
小ロッド62は、伸縮するシャフト6の長さに応じて適宜な本数で伸縮自在に連結すればよい。複数の小ロッド62は、振り出し釣り竿のように基端側の部材から先端側に部材に亘って徐々に径が細くなるように形成されている。
なお大ロッド61及び小ロッド62は、断面視して正方形、長方形、六角形等の角筒状のものであってもよい。
基端側連結部63及び先端側連結部64は、例えば、連結軸部材54(
図5(a)、(b)参照)が軸入される貫通孔を有する円筒状に形成されている。
【0035】
<ストラップ>
図2に示すように、ストラップ7は、フロアボード3を前後方向に移動させるスライド操作するとき、あるいは、フロアボード3を上下方向に移動させる持ち上げ操作をするときに、手を掛けるための把手部材である。ストラップ7は、例えば、略U字状に折り曲げた帯状部材の両端部をフロアボード3の後端部中央に固定して成る。
【0036】
<線状部材>
線状部材8とは、ある程度自由に曲げることが可能であって、フロアボード3を引っ張ることが可能な引張力を有する細長い部材をいう。線状部材8は、1本から成るものであっても、複数本を撚ったものであってもよい。線状部材8は、例えば、線状、ロープ状、紐状、ワイヤー状、あるいは、金属製鎖等の部材から成る。線状部材8は、フロアボード3に左右対称に配置され、前端をストラップ7に連結し、中央部をリンク部材9に回転自在に軸支された支持部材94に巻き掛けて、後端を収納部10の側壁10cに固定している。
【0037】
<リンク部材>
図4に示すように、リンク部材9は、上端部がフロアボード3の前端部3aに軸支され、下端部が収納部10の側壁10cに揺動可能に軸支された揺動部材である。リンク部材9は、リンク本体91と、リンク本体91をフロアボード3に軸支するための軸支部92と、リンク本体91を収納部10の側壁10cに軸支するための軸支部材93と、円筒状の支持部材94と、支持部材94をリンク本体91に軸支する軸部材95と、を備えている。
【0038】
リンク本体91は、略上下方向に延設されて、横断面視して長方形の金属製の平板部材から成る。
軸支部92は、リンク本体91の上端部に形成された軸孔から成る。軸支部92は、軸部材53が回動自在に軸入されて、移動規制部材5を介してフロアボード3の前端部3aに軸支されている。
軸支部材93は、リンク本体91の下端部を回動自在に軸支した軸ピン等から成る。
支持部材94は、例えば、軸部材95が回転自在に挿入される軸孔を有するプーリーのような円筒状の部材から成る。支持部材94は、線状部材8を巻き掛けた状態で支持するものであればよく、回転しない部材であってもよい。
軸部材95は、支持部材94を回転自在に軸支するための軸支ピンである。軸部材95は、リンク本体91の中央部上側寄りの位置に設置されている。
【0039】
≪車両用荷室構造の作用≫
次に、
図1〜
図14を参照して本発明の実施形態に係る車両用荷室構造の作用を説明する。
【0040】
収納部10の上方に荷物Aを載置する場合は、
図1及び
図2に示すように、通常、収納部10をフロアボード3で閉塞して、フロアボード3の上に荷物Aを配置する。
この場合は、
図4に示すように、フロアボード3は、前端部3aが前側支持部10e上に支持され、後端部3bが後側支持部10f上に支持されている。このため、フロアボード3は、安定した状態で、収納部10の開口部10dを閉塞している。
【0041】
例えば、フロアボード3上の前部に載置した荷物Aを乗員が積み下ろす場合、荷物Aは、荷物Aからフロアボード3の後端部3bまでの距離L2と、フロアボード3の後端部3bからリヤバンパ13の後端までの距離L3と、を加算した前後方向の距離L1だけ車両1の後端まで離れている。乗員は、このようなフロアボード3の状態で、重い荷物Aをフロアボード3上の前部に積み込み作業及び積み下ろし作業をする場合、腕を延ばして重い荷物Aを持つ必要がある。このため、腕に負担がかかり、楽な姿勢で作業が行えない。
【0042】
フロアボード3には、フロアボード3をスライド操作するためのストラップ7と、上端部がフロアボード3の前端部3aに軸支され、下端部が収納部10の側壁10cに揺動可能に軸支されたリンク部材9と、前端をストラップ7に連結し、中央部をリンク部材9に回転自在に軸支された支持部材94に巻き掛けて、後端を側壁10cに固定した線状部材8と、が配置されている。
このため、フロアボード3は、前後方向にスライド移動させることが可能である。
【0043】
次に、
図4に示すフロアボード3を後方に移動させて、楽な姿勢で荷物Aを出し入れする場合を、
図7〜
図9を参照しながら説明する。
その場合は、まず、
図7に示すように、ストラップ7を後方側(矢印a方向側)に引っ張って、フロアボード3の後端部3bを収納部10の後側支持部10fから上方向に離間させる。すると、フロアボード3は、前後方向にスライド可能な状態になる。
【0044】
次に、
図8に示すように、ストラップ7を後方側(矢印b方向側)に引っ張って、フロアボード3を後方向(矢印c方向)にスライドさせる。ストラップ7は、後方向(矢印b方向)に引っ張られることによって、線状部材8がストラップ7側(矢印d方向側)に引っ張られる。その線状部材8は、支持部材94に巻き掛けられていることによって、リンク部材9を、軸部材95を中心として後方向(矢印e方向)に回動させる。
【0045】
そのリンク部材9は、上端部に連結されたフロアボード3、及び、移動規制部材5を後方向(矢印c方向)に移動させる。補助ボード4と移動規制部材5とは、伸縮可能なシャフト6によって連結されている。このため、移動規制部材5は、後方向に移動することによって、シャフト6の小ロッド62を縮退させる。シャフト6は、小ロッド62が縮退するときの抵抗力によって、移動規制部材5を、軸部材53を中心として上方向(矢印f方向)に押し上げて回動させる。
【0046】
このように、移動規制部材5は、フロアボード3を後方(矢印c方向)にスライドしたときに、フロアボード3のボード面よりも上方の位置まで回動し、フロアボード3のボード面から上方に突出する。このため、移動規制部材5は、荷物Aが前方向に相対移動するのを抑制することができる。
【0047】
フロアボード3が後方向(矢印c方向)に移動しているときに、フロアボード3の下面は、補助ボード4の上面上を後方向(矢印g方向)にスライド移動する。後方向に移動したフロアボード3と、収納部10の前端部10aとの間は、空間ができるが、補助ボード4がその空間を閉塞している。
このように、フロアボード3は、このフロアボード3を後方にスライドしたとき、収納部10の前端部10aを覆う補助ボード4がフロアボード3の前端部3aの下側に配置している。このため、フロアボード3を後方向に移動させている最中であっても、荷物Aがその空間から収納部10内に落下するのを解消することができる。
【0048】
乗員は、さらにストラップ7を後方側(矢印c方向側)に引っ張って、
図9に示すように、フロアボード3の係止突起32を収納部10の係合部10gに係合させる。フロアボード3は、係止突起32を係合部10gに係合させたことで、前後方向に移動しないように安定した状態に支持される。フロアボード3上の荷物Aは、フロアボード3を後方に移動させたことにより、車両1の後端にあるフロアボード3の後端部3bから荷物Aまでの距離がL2になる。このため、
図4に示すフロアボード3の後端部3bからリヤバンパ13の後端までの距離L3だけ、車両後方にいる乗員までの距離を短くすることができる。
【0049】
このため、乗員は、腕を延ばさなくても、荷物Aの積み降ろし作業及び積み込み作業を行い易くすることができるので、楽な姿勢で荷物Aの出し入れをすることができ、作業をし易くすることができる。このとき、収納部10の開口部10dは、フロアボード3と補助ボード4とによって閉塞されている。
【0050】
次に、後方に移動させたフロアボード3上の前部に荷物Aを載置して、前方に移動させてフロアボード3で収納部10を閉塞する場合を、
図10〜
図13を参照しながら説明する。
その場合は、まず、
図10に示すように、フロアボード3の後端を上方向(矢印h方向)に引き上げて、フロアボード3の係止突起32を収納部10の係合部10gから上方向に離間させる。
【0051】
続いて、
図11に示すように、フロアボード3を前方側(矢印i方向側)に押して、フロアボード3を前方にスライドさせる。フロアボード3は、後端部3bの下面がドア開口部1b上を前方向に摺動し、前端部3aの下面が補助ボード4上を前方向に摺動する。このため、収納部10の開口部10dは、フロアボード3と補助ボード4とで閉塞した状態を維持しながら前方向(矢印i方向)に移動する。
【0052】
フロアボード3は、前方向(矢印i方向)に押されることによって、フロアボード3の前端部3aに連結されたリンク部材9が軸支部材93を中心として前方向(矢印j方向)に回動する。リンク部材9は、回動したことで、支持部材94に巻き掛けられている線状部材8を基端側方向(矢印k方向)に引っ張る。また、フロアボード3は、前方向に移動したことで、移動規制部材5を介してシャフト6の小ロッド62を前方向(矢印m方向)に引っ張る。
【0053】
さらに、フロアボード3を前方側(矢印i方向側)に押して、
図12に示すように、フロアボード3の前端部3aを収納部10の前側支持部10e上に載置させる。このとき、移動規制部材5の規制部材本体51は、フロアボード3の前方向の移動によって引き出されたシャフト6の小ロッド62の引き出されるときの抵抗で下方向(矢印n方向)に回動して、フロアボード3のボード面及びフロア1c面と面一の状態になっている。このように、移動規制部材5は、フロアボード3を後方向側から前方にスライドしたときに、フロアボード3のボード面に没入する位置に復帰する。このため、移動規制部材5は、フロアボード3上の荷物Aを載置したり、降ろしたりする際に、邪魔になることがない。そして、乗員は、ストラップ7を下降させて、フロアボード3の後端部3bを下方向(矢印o方向)に下降させる。
【0054】
すると、フロアボード3の後端部3bは、
図13に示すように、後側支持部10f上に載置される。これにより、フロアボード3は、後端部3bが後側支持部10fに支持され、前端部3aが前側支持部10eに支持されて、安定した状態で収納部10を閉塞する。このため、フロアボード3の上に、種々の荷物Aを安定した状態に載せることが可能となる。フロアボード3の前部上に載置した荷物Aは、荷室1d内の前側寄りの位置に配置される。その結果、乗員は、楽な姿勢で荷物Aを荷室1d内の前側寄りの位置に配置することができる。
【0055】
次に、フロアボード3で収納部10を閉塞している状態から、フロアボード3の後端部3bを上下方向に回動させて、収納部10内に荷物Aを収納したり、取り出したりする場合を説明する。
その場合は、
図13に示すストラップ7を持って上方向(矢印p方向)に引き上げる。すると、フロアボード3は、
図14に示すように、軸部材53を中心として上方向(矢印q方向)に回動して、収納部10を開放する。これにより、収納部10内に、荷物A等を収納したり、取り出したりすることが可能となる。
【0056】
以上のように、本発明の車両用荷室構造は、フロアボード3を後方にスライドさせたとき、フロアボード3の前端部3aと収納部10の前端部10aとを覆う補助ボード4を備えている。これにより、フロアボード3上の荷物Aを出し入れする際には、荷物Aが収納部10内に落下することなく、容易に荷物Aを出し入れすることができる。
【0057】
さらに、本発明の車両用荷室構造は、フロアボード3を後方にスライドさせたときに、フロアボード3の前端部3aから上方向に向かって上昇する移動規制部材5を有している。このため、フロアボード3を後方向に移動させている最中に、フロアボード3上の荷物Aが前方方向に落下するのを抑制することができ、フロアボード3上の荷物Aをスムーズに移動させて積み降ろすことができる。
【0058】
≪変形例≫
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0059】
例えば、前記実施形態では、ワゴンタイプの車両1を例に挙げて説明したが、トランクルームを備えるセダンタイプ等の自動車にも実施することができることは、勿論である。
【0060】
また、前記実施形態では、線状部材8の左右の端部8aと、リンク部材9の下端部に設けられた軸支部材93と、を収納部10の左右の側壁10cに固定した場合を説明したが、その固定場所は、適宜変更しても構わない。線状部材8の端部8aと、リンク部材9の軸支部材93は、例えば、収納部10の内底や、その内底の下方の車体に固定してもよい。
【0061】
また、フロアボード3は、樹脂材料で形成したものに限定されるものではなく、例えば、金属や、木材や、それらを組み合わせて作製したものであっても構わない。
また、前記実施形態では、フロアボード3と補助ボード4とを、ガイド部(図示省略)と、ガイド係合部(図示省略)とによって連結された場合を説明したが、その形状、設置位置等は特に限定されず、適宜変更しても構わない。ガイド部(図示省略)及びガイド係合部(図示省略)は、フロアボード3及び補助ボード4とは別体のものであっても構わない。