特許第6799691号(P6799691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6799691ブリーザ装置、及びブリーザ装置を備える除雪機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799691
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ブリーザ装置、及びブリーザ装置を備える除雪機
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20201207BHJP
   F01M 13/04 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   F01M13/00 G
   F01M13/04 C
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-539612(P2019-539612)
(86)(22)【出願日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2018032101
(87)【国際公開番号】WO2019044963
(87)【国際公開日】20190307
【審査請求日】2019年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2017-168825(P2017-168825)
(32)【優先日】2017年9月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】長谷 裕希
(72)【発明者】
【氏名】諸井 篤
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼峰 大河
(72)【発明者】
【氏名】岡部 格
【審査官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−048601(JP,A)
【文献】 特開2007−332874(JP,A)
【文献】 特開2012−255372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F02M 35/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのブローバイガスを流動させる流動部と、
前記流動部を流動した前記ブローバイガスが流入する筐体と、
前記筐体内から気体を流出させる流出口と、
前記ブローバイガスに含まれる水分を分離する気液分離機構部と、を備えるブリーザ装置であって、
前記気液分離機構部は、前記流動部から前記ブローバイガスを流入させる流入口と前記流出口とを所定の間隔離すと共に、前記水分が流動する液体経路よりも上方に前記流出口を配置し、且つ、エアクリーナエレメントを介さずに前記流入口から前記流出口に前記ブローバイガスが流動する気体経路と、
前記流動部から前記筐体内に導く過程で前記水分を分離する流入側気液分離機構とを有し、
前記流入側気液分離機構が、前記筐体に形成され該筐体内に外部エアを取り込む取込口に対して前記流出口を間にして反対側となる位置に設けられる
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項2】
請求項1記載のブリーザ装置において、
前記気液分離機構部は、前記筐体から前記流出口に前記ブローバイガスを導く過程で、前記水分を分離する流出側気液分離機構を備える
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項3】
請求項2記載のブリーザ装置において、
前記流入側気液分離機構は、前記筐体の内部に設けられ前記ブローバイガスを前記流動部から前記筐体内に導く流入部材を有する
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項4】
請求項3記載のブリーザ装置において、
前記流入部材は、前記流出口への前記水分の流動を遮断する遮断壁を有する
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項5】
請求項4記載のブリーザ装置において、
前記流入部材は、前記流出口へ向かう前記気体経路と異なる方向に前記ブローバイガスを流動させる案内空間を有する
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項6】
請求項5記載のブリーザ装置において、
前記流入部材は、前記案内空間内に突出し前記流動部から該案内空間を構成する壁部に向けて前記ブローバイガスを流出させる突部を有する
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項7】
請求項記載のブリーザ装置において、
前記流入側気液分離機構は、前記筐体の外側に設けられ前記ブローバイガスを前記流動部から前記筐体内に導く流入部材を有し、該流入部材は、外部エアを取り込んでブローバイガスと共に前記筐体に流動させる構成であり、前記流入口から前記筐体を貫通する貫通孔までの間の流動空間がジグザグに形成されると共に、前記液体経路が前記流動空間に連通している
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載のブリーザ装置において、
前記流出側気液分離機構は、前記筐体の底面よりも高い位置に前記流出口を配置する突出部である
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のブリーザ装置において、
前記気液分離機構部は、前記水分を前記筐体の外部に排出する溝部を有する
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項10】
請求項1記載のブリーザ装置において、
前記気液分離機構部は、管状の前記流動部を前記筐体の底部から天井部に向かって突出させ、且つ前記流入口を前記天井部に対向させている
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のブリーザ装置において、
前記筐体は、前記外部エアと前記ブローバイガスを混合して前記流出口に導く
ことを特徴とするブリーザ装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のブリーザ装置と、
前記エンジンと、を備える
ことを特徴とする除雪機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローバイガスに含まれる液体を分離するブリーザ装置、及びブリーザ装置を備える除雪機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(駆動源)は、駆動時に、排ガスや未燃焼の混合気であるブローバイガスを発生させる。従来、除雪機等の作業機では、ブローバイガスを大気に排出していたが、近年では、環境保全のためにブローバイガスを適切に処理することが要望されている。
【0003】
例えば、特開2005−120977号公報に開示のブリーザ構造(エアクリーナー)は、ブローバイガスをエンジンに環流させることで、大気への排出を抑制している。また、このブリーザ装置は、ブローバイガスの流動経路にラビリンス構造及びエアクリーナエレメントを備え、ブローバイガスに含まれる液体を捕集して、エアのみをエンジンに環流させる構成となっている。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、特開2005−120977号公報に開示のブリーザ装置は、ラビリンス構造及びエアクリーナエレメントを備えた複雑な構造に形成されることで、装置の製造コストが増大するという不都合が生じる。また、除雪作業時には、エアクリーナエレメントに吸着した水分が氷結する等の事象が発生し、フィルターの機能が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成によってブローバイガスの液体を良好に分離可能とし、製造コストを低廉化することができるブリーザ装置、及びブリーザ装置を備える除雪機を提供することを目的とする。
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明は、エンジンのブローバイガスを流動させる流動部と、前記流動部を流動した前記ブローバイガスが流入する筐体と、前記筐体内から気体を流出させる流出口と、前記ブローバイガスに含まれる水分を分離する気液分離機構部と、を備えるブリーザ装置であって、前記気液分離機構部は、前記流動部から前記ブローバイガスを流入させる流入口と前記流出口とを所定の間隔離すと共に、前記水分が流動する液体経路よりも上方に前記流出口を配置し、且つ、エアクリーナエレメントを介さずに前記流入口から前記流出口に前記ブローバイガスが流動する気体経路と、前記流動部から前記筐体内に導く過程で前記水分を分離する流入側気液分離機構とを有し、前記流入側気液分離機構が、前記筐体に形成され該筐体内に外部エアを取り込む取込口に対して前記流出口を間にして反対側となる位置に設けられることを特徴とする。
【0007】
上記によれば、ブリーザ装置は、流出口が流入口から所定間隔離れ且つ液体経路よりも上方に配置していることで、流入口から流入したブローバイガスに含まれる水分を、流出口に至るまでの間に良好に分離させる。これにより、流出口に水分が入り込むことが抑制される。しかも、ブローバイガスがエアクリーナエレメントを介さない気体経路を流動するため、ブリーザ装置は、エアクリーナエレメントを備えない簡単な構成となる。特に、除雪作業は、降雪環境下であるため、吸引する粉塵が極めて少なく、除雪機に搭載されたブリーザ装置は、エアクリーナエレメントがなくてもブローバイガスの処理を良好に行うことができる。その結果、製造コストが大幅に低廉化し、またフィルター機能の低下がない高い耐久性を得ることができる。
【0008】
この場合、前記気液分離機構部は、前記筐体から前記流出口に前記ブローバイガスを導く過程で、前記水分を分離する流出側気液分離機構を備えることが好ましい。
【0009】
ブリーザ装置は、流入側気液分離機構及び流出側気液分離機構を備えることで、2段階で水分の分離を行うことが可能となり、流出口に水分が入り込むことをより確実に防ぐことができる。
【0010】
そして、前記流入側気液分離機構は、前記筐体の内部に設けられ前記ブローバイガスを前記流動部から前記筐体内に導く流入部材を有することが好ましい。
【0011】
ブリーザ装置は、流入部材を有することで、流動部と筐体との接続を容易化しつつ、流入部材においてブローバイガスの水分を分離させることができる。
【0012】
上記構成に加えて、前記流入部材は、前記流出口への前記水分の流動を遮断する遮断壁を有することが好ましい。
【0013】
ブリーザ装置は、流入部材の遮断壁により、遮断壁を乗り越えて流出口に向かうようにブローバイガスの気体を流動させる。その一方で、水分は、遮断壁を越えることができずに捕集されることになり、より確実に分離される。
【0014】
また、前記流入部材は、前記流出口へ向かう前記気体経路と異なる方向に前記ブローバイガスを流動させる案内空間を有するとよい。
【0015】
ブリーザ装置は、流入部材の案内空間によって、流出口に向かう気体経路と異なる方向にブローバイガスを一旦流動させることができる。これにより、水分は、ブローバイガスと同方向に流動して、案内空間を出たブローバイガスが流出口に向かっても、案内空間の流動方向を維持したまま移動することができる。
【0016】
さらに、前記流入部材は、前記案内空間内に突出し前記流動部から該案内空間を構成する壁部に向けて前記ブローバイガスを流出させる突部を有することが好ましい。
【0017】
ブリーザ装置は、突部から案内空間を構成する壁部に向けてブローバイガスを流出させることで、壁部に水分を付着させることができ、ブローバイガスの水分をより良好に分離することが可能となる。
【0018】
或いは、前記流入側気液分離機構は、前記筐体の外側に設けられ前記ブローバイガスを前記流動部から前記筐体内に導く流入部材を有し、該流入部材は、外部エアを取り込んでブローバイガスと共に前記筐体に流動させる構成であり、前記流入口から前記筐体を貫通する貫通孔までの間の流動空間がジグザグに形成されると共に、前記液体経路が前記流動空間に連通していることが好ましい。
【0019】
ブリーザ装置は、筐体の外側に取り付けられた流入部材によって、筐体に外部エアと共にブローバイガスを流入させる前に、ジグザグの流動空間によってブローバイガスの水分を分離させることができる。
【0020】
ここで、前記流出側気液分離機構は、前記筐体の底面よりも高い位置に前記流出口を配置する突出部であるとよい。
【0021】
ブリーザ装置は、突出部により流出口を筐体の底面よりも高い位置に配置することで、流出口への水分の流入を簡単に抑制することができる。
【0022】
さらに、前記気液分離機構部は、前記水分を前記筐体の外部に排出する溝部を有するとよい。
【0023】
ブリーザ装置は、筐体の外部に水分を排出する溝部を有することで、筐体内に水分を留まらせることがなくなり、筐体内の湿気を低減することができる。
【0024】
ここで、前記気液分離機構部は、管状の前記流動部を前記筐体の底部から天井壁に向かって突出させ、且つ前記流入口を前記天井壁に対向させた構成とすることもできる。
【0025】
ブリーザ装置は、流動部の流入口を筐体の天井部に対向させた構成とすることで、流入口から筐体に噴出したブローバイガスは、天井部にあたって水分を天井壁に付着させる。すなわち、ブローバイガスから水分を分離させることができる。
【0026】
またさらに、前記筐体は、前記外部エアと前記ブローバイガスを混合して前記流出口に導く構成であるとよい。
【0027】
ブリーザ装置は、筐体内に取り込んだ外部エアとブローバイガスを混合して流出口に導くことで、エンジンにブローバイガスを環流させつつ、酸素を安定的に供給することができる。
【0028】
また、前記の目的を達成するために、本発明に係る除雪機は、上述したブリーザ装置と、前記エンジンとを備えることを特徴する。
【0029】
除雪機は、ブリーザ装置及びエンジンを備えることで、ブローバイガスを外部に排出することなく、低温環境下でも良好に作業を行うことができる。
【0030】
本発明によれば、ブリーザ装置、及びブリーザ装置を備える除雪機は、簡単な構成によってブローバイガスの液体を良好に分離可能とし、製造コストを低廉化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施形態に係るブリーザ装置を搭載した除雪機の側面図である。
図2図1のブリーザ装置の機能部を概略的に示すブロック図である。
図3図1のエアクリーナの一部を切り欠いて示す部分断面斜視図である。
図4図3の流入部材を拡大して示す斜視図である。
図5】ブリーザ装置のブローバイガスの流れを示す部分断面斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るブリーザ装置のエアクリーナの一部を切り欠いて示す部分断面斜視図である。
図7】本発明の参考例に係るブリーザ装置のエアクリーナを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るブリーザ装置、及びブリーザ装置を備える除雪機について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係るブリーザ装置10は、図1に示すように、作業機である除雪機12に搭載される。このブリーザ装置10は、除雪機12のエンジン16の駆動により生じたブローバイガスを処理して、エンジン16の吸気系統に環流させる機能を有している。なお、本発明に係るブリーザ装置10が搭載される作業機は、除雪機12に限定されるものではなく、例えば、耕耘機、発電機、草刈機、芝刈機、ポンプ、電動カート等の種々の機器があげられる。
【0034】
除雪機12は、ブリーザ装置10の他に、機体14と、機体14内に設けられる上記のエンジン16と、機体14の下側で走行を行う走行ユニット18と、機体14の前方で実際に雪を除去する除雪部20とを備える。また、本実施形態に係る除雪機12には、エンジン16の駆動に基づき発電を行う発電機22、及び発電機22の電力を蓄電し種々の電気・電子部品に電力を供給するバッテリ24が設けられている。
【0035】
除雪機12の機体14は、フレーム26と、フレーム26に固定されるカバー28とを有する。フレーム26は、除雪機12全体の骨格を構成している。フレーム26の後部は、斜め上方に延び、ユーザが把持操作するハンドル30となっている。一方、カバー28は、幾つかの板材が組み合わされて除雪機12の外観を構成している。例えば、カバー28は、後記のエンジン本体34を覆うエンジンカバー32を有する。
【0036】
機体14に固定されるエンジン16は、エンジン本体34と、エンジン本体34(エンジンカバー32)の上部に配置される燃料タンク36とを有する。エンジン本体34は、除雪機12を駆動するための駆動源であり、例えば、燃料としてガソリンを使用する公知の4サイクル単気筒エンジンが適用される。また、エンジン本体34には、エンジン本体34を空冷する冷却ファン(不図示)が設けられている。
【0037】
走行ユニット18は、発電機22又はバッテリ24からの電力供給に基づき動作する左右一対のキャタピラ機構38により構成されている。各キャタピラ機構38は、モータ40と、該モータ40の回転速度を調整する減速機42と、減速機42から伝達される駆動力に基づき回転する前部駆動輪44及び後部駆動輪46と、これらの駆動輪44、46に巻きかけられるクローラベルト48とを備える。各モータ40は、ハンドル30の周辺に設けられた操作部50がユーザに操作されることで、バッテリ24から電力が供給されて回転する。モータ40の回転駆動力は、減速機42、前部駆動輪44及び後部駆動輪46を介して、クローラベルト48に伝達される。これにより左右一対のキャタピラ機構38は、別々に駆動して、除雪機12の前進、後退、又は横方向(左右方向)への方向転換等を実施する。
【0038】
一方、除雪部20は、雪を掻き込むオーガ部52と、オーガ部52が掻き込んだ雪を所定方向に噴出するシュータ部54とを有する。オーガ部52は、機体14の下方且つ走行ユニット18の前方に設けられ、電磁クラッチ部17等を介してエンジン16の出力軸16aに連結する駆動軸56を有する。また、オーガ部52は、駆動軸56の回転に基づき旋回するオーガ58及びブロア60を備え、カバー28は、オーガ58の後方を部分的に覆うオーガハウジング62と、このオーガハウジング62の後でブロア60を全体的に覆うブロアハウジング64とを含む。
【0039】
以上の除雪機12は、ユーザによりエンジン本体34が駆動されることで、発電機22やバッテリ24から走行ユニット18に電力が供給され、またエンジン本体34の駆動軸56により除雪部20が駆動する。そして除雪作業において、ユーザはハンドル30及び操作部50を操作して、走行ユニット18を移動(前進、後退、方向転換等)させる。除雪機12は、機体14の前進時に、オーガ部52の前方にある雪をオーガ58で掻き集め、この掻き集めた雪をブロア60で跳ね上げて、シュータ部54を通して投げ出す。
【0040】
ここで、除雪機12のエンジン本体34内には、駆動時に、排ガスや未燃焼の混合気、ピストンの潤滑オイル等が含まれるブローバイガスが発生する。ブリーザ装置10は、上述したように、このブローバイガスをエンジン本体34に環流させるため、エンジン16に取り付けられる。
【0041】
図2に示すように、ブリーザ装置10は、ブローバイガスの冷却を行うブリーザ機構部66と、ブローバイガスの気体を吸気系統に流動させるエアクリーナ68とを備える。また、ブリーザ装置10は、ブローバイガス等の流体を流動させる複数の配管70(流動部)を有する。
【0042】
複数の配管70は、エンジン本体34とブリーザ機構部66の間を繋ぐ第1流動管72、及びブリーザ機構部66とエアクリーナ68の間を繋ぐ第2流動管74を含む。第1流動管72の内部には、エンジン本体34のクランク室とブリーザ機構部66の内部とを連通する第1流路(不図示)が設けられている。第2流動管74の内部には、ブリーザ機構部66の内部とエアクリーナ68の内部とを連通する第2流路74a(図3参照)が設けられている。さらに、複数の配管70は、ブリーザ機構部66とエンジン本体34のオイルタンク35の間を繋ぐオイル流動管76、外部エアをエアクリーナ68に取り込むエア取込管78、及びエアクリーナ68とエンジン16の吸気系統を繋ぐエア吸気管80を有している。
【0043】
ブリーザ機構部66は、第1流動管72を通るブローバイガスを冷却することで、ブローバイガスに含まれるオイルを分離する。この種のブリーザ機構部66の構造については、特に限定されず、種々の構造を採用し得る。例えば、ブリーザ機構部66は、ブローバイガスが流動する空間部を冷却すると共に、空間部にオイルを捕集する捕集部を備えた構造を採ることができる(共に不図示)。或いは、ブローバイガスの流路を有するチューブを冷却して、オイルを分岐したチューブに分流させる構造を採ることができる。ブリーザ機構部66において、ブローバイガスから分離したオイルは、オイル流動管76を介してエンジン本体34のオイルタンク35に戻されることで、エンジン本体34のピストンの潤滑油に再び利用される。
【0044】
図1図3に示すように、ブリーザ装置10のエアクリーナ68は、エンジン本体34(エンジンカバー32)及びブリーザ機構部66の上方に配置される。エアクリーナ68は、ケース82と、基体84とを組み付けることで、エンジンカバー32から離間した位置にエアクリーナ68の筐体83を構成する。筐体83の内部は、所定の容積に形成され、ブローバイガスや外部エアが流入される内部空間83aとなっている。
【0045】
ケース82は、略直方形状に形成され、前後左右を囲う四方の側壁82aと、各側壁82aの上部に連結され天井を構成する天井壁82bとを有する。一方、基体84の上部には、ケース82の下端部が連結及び固定される被固定面部85が設けられている。この被固定面部85は、平面視で長方形状に形成され、その縁部85aにケース82(側壁82a)の下端部が固定される。また、基体84には、縁部85aの内側において、ケース82との接続境界に沿ってシール部材86が設けられている。シール部材86は、内部空間83aから外部にブローバイガスが漏出することを遮断する。
【0046】
そして、エアクリーナ68にブローバイガスを導く第2流動管74(配管70:流動部)は、ブリーザ機構部66から上方に向かって延在し、基体84に設けられた流入部材90に接続される(図5も参照)。流入部材90は、被固定面部85において、縁部85aの内側の所定の角部(以下、第1角部85b1という)の近傍位置に配置されている。この流入部材90の構成については後に詳述する。
【0047】
また、本実施形態に係るエア取込管78は、基体84に一体成形されている。エア取込管78は、平面視で、内部空間83aに連通する所定形状(図3中では台形)のエア取込口78aを有している。エア取込口78aは、被固定面部85の第1角部85b1と異なる角部(以下、第2角部85b2という)の近傍位置に配置されている。そして、エア取込管78は、基体84内において図示しない経路を延在し、エア取込口78aと反対側の他端口(不図示)が機体14の外部に開放されている。
【0048】
さらに、本実施形態に係るエア吸気管80は、基体84に対してスタックボルト等で組み付けられ、被固定面部85の中心部に固定されている。エア吸気管80は、基体84を貫通して被固定面部85から上方に向かって短く突出する突出部81を備える。突出部81の突出端に、エア吸気口80a(流出口)が形成されている。また、エア吸気管80は、基体84の内部を下方に延在し、突出部81と反対側の端部がエンジン本体34の吸気マニホールド(不図示)に連結されている。吸気マニホールドは、図示しない吸気バルブが設けられた吸気路を有している。また、エア吸気管80と吸気マニホールドの連結箇所には、図示しないキャブレータが設けられている。
【0049】
つまり、エアクリーナ68の内部空間83aには、第2流動管74を介してブローバイガスが流入すると共に、エア取込管78を介して外部から外部エアが流入する。そして、内部空間83aでは、ブローバイガスと外部エアが混合して混合エアとなり、この混合エアをエア吸気管80に流動させる。
【0050】
ここで、ブローバイガスは、ブリーザ機構部66を流動する等の理由により、その水分が混入している。このため、本実施形態に係るブリーザ装置10は、エアクリーナ68に流動するブローバイガスから水分を取り除く気液分離機構部88を備える。この気液分離機構部88は、エアクリーナ68からエアを流出する過程で分離を行う流出側気液分離機構88Aと、ブローバイガスをエアクリーナ68に流入する過程で分離を行う流入側気液分離機構88Bとで構成される。より具体的には、流出側気液分離機構88Aは、上述したエア吸気管80の突出部81により構成される。一方、流入側気液分離機構88Bは、基体84に取り付けられる流入部材90と、基体84に形成された溝部98とを含む。
【0051】
流入部材90は、基体84の内部空間83aに、ブローバイガスを流入させるポートである。流入部材90は、第2流動管74が接続されるジョイント部92(図5参照)と、ジョイント部92の上部に連なり横方向に延びる案内箱部94と、案内箱部94の端部に連なり基体84から起立した遮断壁96とを有する。
【0052】
ジョイント部92は、所定の突出長さを有する円筒状に形成されており、ブリーザ装置10の組立状態で、被固定面部85(基体84)を貫通して下方に突出している。基体84内に突出するジョイント部92の外周面には、第2流動管74の端部が強固に固定される。すなわち、第2流動管74の端部に設けられてブローバイガスをエアクリーナ68に導く流入口74bは、実質的に流入部材90のジョイント部92に位置している。ジョイント部92の内部には、第2流路74aに連通する導入路92aが形成されている。導入路92aは、上部において案内箱部94に連通している。
【0053】
案内箱部94は、角部が丸い略直方形状に形成され、被固定面部85から上方向に起立すると共に、第1角部85b1から横方向(被固定面部85の面方向)に沿って短く延在している。案内箱部94の内側には、所定の流路断面積(例えば、導入路92aと同程度の流路断面積)を有する案内空間94aが形成されている。
【0054】
図4に示すように、案内箱部94の案内空間94aは、案内箱部94の形状に沿って横方向に延び、横方向に開口した開口部94bに連通している。案内箱部94は、案内空間94aの天井を構成するシュラウド95(壁部)を有しており、この案内空間94aは、案内箱部94の延在方向に直交する断面視で、上下に長い長方形状を呈している。
【0055】
そして、案内箱部94の奥部(第1角部85b1付近)には、底面から上方向に向かって円筒状の突部93が突出形成されている。この突部93は、ジョイント部92と同じ太さに形成され、また軸方向に沿って導入路92aが貫通形成されている。突部93は、案内空間94a内を上方向に突出して、突出端部の連通口92bがシュラウド95に近接していることで、ブローバイガスをシュラウド95に向けて流出させる。突部93の連通口92bとシュラウド95の距離は、ブローバイガスの噴出強さにもよるが、例えば、導入路92aの直径よりも若干長い、又は同程度に設定されているとよい。
【0056】
遮断壁96は、案内箱部94の開口部94bを構成する開口縁部のうち、エア吸気管80(被固定面部85の中心)寄りの開口縁部94b1に連設されている。この遮断壁96は、開口部94bから流出したブローバイガスがエア吸気口80aに流動する際に、乗り越えなければならない障害物を構成している。遮断壁96の一方面側は、ケース82の側壁82aとの間で開口部94bに障害なく連なる空洞部97を形成している。また、遮断壁96の他方面側は、エア吸気管80の突出部81を臨んでいる。
【0057】
より詳細には、遮断壁96は、横方向(案内箱部94の延在方向)に沿って、所定長さで延在している。例えば、遮断壁96の横方向の長さは、案内箱部94の横方向の長さよりも長く形成されており、遮断壁96の横側端部は、エア吸気管80の突出部81の中心を越えて第1角部85b1と反対側の角部(第3角部85b3)寄りに位置している。さらに、遮断壁96は、流入部材90の案内箱部94やエア吸気管80の突出部81の突出高さよりも高くなるように設計されている。
【0058】
以上のように構成される流入部材90は、その内部においてブローバイガスの流路を大きく曲げていることで、ブローバイガスの水分を流路の内壁に付着させて、気体成分(エア)と水分の分離を促すことができる。すなわち、流入部材90の開口部94bから流動したブローバイガスの気体成分は、空洞部97の流動中に、エア吸気口80aや遮断壁96を越えるように上方に向かう気体経路100を辿る。その一方で、ブローバイガスの水分は、空洞部97において、遮断壁96を越えずに横方向に進む被固定面部85上の液体経路102を辿る。
【0059】
また、第2流動管74の流入口74bと、エア吸気管80のエア吸気口80aとが充分な間隔離れて配置され、しかもエア吸気口80aが液体経路102よりも上方に配置されているので、エア吸気口80aに水分が入り込むことがより確実に抑止される。さらに、エアクリーナ68の内部空間83aには、従来設けられていたエアクリーナエレメントが設けられていない。このため、気体経路100は、内部空間83aをスムーズに流動することができる。流入口74bとエア吸気口80aとの間隔は、特に限定されるものではないが、例えば、エア吸気口80aの直径よりも長い寸法が好ましい。
【0060】
図3に戻り、気液分離機構部88(流入側気液分離機構88B)の溝部98は、基体84の縁部85aの内側に沿って形成されている。溝部98の一端部の底面には、排水路98aの開口が設けられている。排水路98aは、基体84内において所定の経路に形成されており、溝部98は、液体経路102を流動した水分を排水路98aに流動させて、水分を排出する。なお排水路98aは、ブリーザ機構部66が水冷式である場合に、図2中の点線で示すように水分を環流させる構成であってもよい。
【0061】
また、流出側気液分離機構88Aを構成する突出部81は、流入部材90の遮断壁96から離れた位置で、被固定面部85よりも高く形成されていることで、水分が乗り越えられない障害物を別に構成する。すなわち、本実施形態に係る気液分離機構部88は、流出側気液分離機構88Aと流入側気液分離機構88Bの2段階で気体成分と水分の分離を図る。これにより、水分が、エア吸気口80aに入り込むことを一層確実に防止することができる。
【0062】
次に、上記の構成を有するブリーザ装置10及び除雪機12の作用について説明する。
【0063】
ブリーザ装置10を搭載した除雪機12は、使用において、ユーザの操作に基づきエンジン16が駆動される。これにより、除雪機12は除雪作業を実施する。そしてエンジン本体34は、図2に示すように、駆動中にブローバイガスを発生させ、ブリーザ装置10は、このブローバイガスの処理を実施する。
【0064】
具体的には、ブローバイガスは、第1流動管72を介してエンジン本体34からブリーザ機構部66に流動する。そして、ブリーザ機構部66で冷却されることで、ブローバイガスに含まれるオイルが分離される。このオイルは、ブリーザ機構部66から排出され、オイル流動管76を通ってオイルタンク35に流動する。
【0065】
さらに、ブローバイガスは、第2流動管74の第2流路74aを介してブリーザ機構部66からエアクリーナ68に流動する。この際、ブローバイガスは、ブリーザ機構部66によって低温化しており、図5に示すように、水分を含んだ状態で、第2流路74a(流入口74b)から流入部材90の導入路92aに移行する。
【0066】
上述したように、流入部材90は、気液分離機構部88を構成しており、その内部を流動するブローバイガスの水分を分離する。すなわち、ブローバイガスは、導入路92a(突部93)から案内空間94aに向かって噴出し、案内箱部94内においてシュラウド95に当たる。このため、水分が案内箱部94の壁面に付着して、気体成分から分離する。
【0067】
そして、ブローバイガスの気体成分は、案内箱部94内で横方向(ジョイント部92や突出部81の突出方向と直交する方向)に進み、流入部材90の開口部94bから空洞部97に流出した後、内部空間83aの気体経路100を流動する。ここで、エアクリーナ68は、基体84の被固定面部85よりも高い位置にエア吸気管80のエア吸気口80aを配置している。このため、気体経路100は、内部空間83aの上方向に広がると共に、遮断壁96よりも高く流動する流動線を描く。また、気体経路100は、エアクリーナエレメントを通さずにエア吸気口80aに至ることで、内部空間83aの循環を促進することができる。
【0068】
一方、ブローバイガスの水分は、案内箱部94内を横方向に流れ、開口部94bから空洞部97に流出した後、被固定面部85上の液体経路102を進む。つまり、水分は、遮断壁96を乗り越えることが阻止されて、基体84の溝部98に流れ込み、さらに溝部98を通って排水路98aに流出される。
【0069】
また、エアクリーナ68の内部空間83aには、エア取込管78を介して外部エアが流入している。そのため、内部空間83aにおいて、ブローバイガスの気体成分と取り込まれた外部エアが混合した混合エアとなり、この混合エアがエア吸気口80aに流入される。混合エアは、エア吸気管80を通ってエンジン本体34の吸気系統に流動し、エンジン16の燃焼に使用される。
【0070】
上述したように、本実施形態に係るブリーザ装置10及び除雪機12は、以下の効果を奏する。
【0071】
ブリーザ装置10は、エア吸気口80aが流入口74bから所定間隔離れ且つ液体経路102よりも上方に配置していることで、流入口74bから流入したブローバイガスに含まれる水分を、エア吸気口80aに至る間に良好に分離させる。これにより、エア吸気口80aに水分が入り込むことが抑制される。しかも、ブローバイガスがエアクリーナエレメントを介さない気体経路100を流動するため、ブリーザ装置10は、エアクリーナエレメントを備えない簡単な構成となる。特に、除雪作業は、降雪環境下であるため、吸引する粉塵が極めて少なく、除雪機12に搭載されたブリーザ装置10は、エアクリーナエレメントがなくてもブローバイガスの処理を良好に行うことができる。その結果、製造コストが大幅に低廉化し、またフィルター機能の低下がない高い耐久性を得ることができる。
【0072】
また、ブリーザ装置10は、流入部材90を有することで、第2流動管74(配管70)と基体84との接続を容易化しつつ、流入部材90においてブローバイガスの水分を分離させることができる。この場合、流入部材90の遮断壁96は、該遮断壁96を乗り越えてエア吸気口80aに向かうようにブローバイガスを流動させる。その一方で、水分は、遮断壁96を越えることができずに付着(捕集)されて、より確実に分離される。さらに、流入部材90は、導入路92a及び案内空間94aによって、エア吸気口80aに向かう気体経路100と異なる方向にブローバイガスを一旦流動させることができる。これにより、水分は、気体成分と同方向に流動して、案内空間94aを出た気体成分がエア吸気口80aに向かっても、案内空間94aの流動方向を継続したまま水分を移動させることができる。
【0073】
ブリーザ装置10は、基体84の外部に水分を排出する溝部98を有することで、基体84内に水分を留まらせることがなくなり、基体84内の湿気を低減することができる。そして、ブリーザ装置10は、基体84内に取り込んだ外部エアとブローバイガスを混合してエア吸気口80aに導くことで、エンジン16にブローバイガスを環流させつつ、酸素を安定的に供給することができる。
【0074】
また、除雪機12は、ブリーザ装置10及びエンジン16を備えることで、ブローバイガスを外部に排出することなく、低温環境下でも良好に作業を行うことができる。
【0075】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、ブリーザ装置10は、エア吸気口80aが液体経路102よりも上方に位置していれば、流入部材90は、遮断壁96を有していなくてもよい。
【0076】
以下、本発明に係るブリーザ装置の他の実施形態(第2実施形態及び参考例)を説明する。なお、以降の説明において、第1実施形態に係るブリーザ装置10や除雪機12と同一の構成又は同一の機能を有する構成には、同一の符号を付しその詳細な説明は省略する。
【0077】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係るブリーザ装置10Aは、図6に示すように、エアクリーナ68の基体84の下側に、ブローバイガスを内部空間83aに導く流入部材110を設けた点で、第1実施形態に係るブリーザ装置10と異なる。
【0078】
具体的には、基体84の第1角部85b1(図3参照)付近には、基体84の被固定面部85と背面とを貫通する貫通孔112が設けられている。また、基体84の中心(エア吸気管80)を挟んだ第1角部85b1の対角(第4角部85b4)には、除雪機12の外部エアを内部空間83aに取り込む第1エア取込管114(第1エア取込口114a)が設けられている。第1エア取込管114は、ブリーザ装置10Aと同様に基体84に一体成形されている。
【0079】
また、流入部材110は、基体84に固定される取付部116と、取付部116の背面側に一体成形されるジョイント部92と、取付部116の一側辺側に一体成形されるエア取込半筒部118とを有する。
【0080】
取付部116は、被固定面部85に対してある程度の深さを有する椀状に形成されている。ジョイント部92は、取付部116から下方に短く延在しており、その外周面に第2流動管74が連結固定される。取付部116の内面部分(椀状内面部117)には、所定形状の凹凸が形成されている。また、椀状内面部117に対向する基体84の対向面部も、幾つかの段差を有するように形成される。
【0081】
椀状内面部117は、貫通孔112の平面形状よりも大きなサイズに形成されており、この隅部にジョイント部92の導入路92aが連通している。導入路92aの連通口92bから基体84の貫通孔112までは、高さ方向に所定以上の距離を有するように設計されている。すなわち、基体84と椀状内面部117との間に形成された流動空間は、凹凸や段差に沿ってジグザグにブローバイガスを流動させる。連通口92bから流入したブローバイガスは、貫通孔112に至る過程で、椀状内面部117の凹凸や基体84の段差に当たることで、気体成分と水分が分離する。
【0082】
また、エア取込半筒部118は、取付部116の椀形状に連続する樋形状に形成され、その内側に流動溝119を有する。エア取込半筒部118は、エンジン16の側方に向かいつつ下方に向かって斜めに延在しており、流動溝119も延在方向に沿って延びている。エア取込半筒部118は、基体84により流動溝119が覆われることで、除雪機12の外部エアを取り込む第2エア取込管115に構成される。この流動溝119(第2エア取込管115)は、ブローバイガスから分離した水分を樋形状に沿って流動させて、機体14の外部に排出する機能を有している。
【0083】
第2実施形態に係るブリーザ装置10Aは、基本的には以上のように構成されており、以下その作用効果について説明する。ブリーザ装置10Aは、エンジン16の駆動時に、エンジン本体34で発生したブローバイガスを、第2流動管74から流入部材110のジョイント部92に流動させる。流入部材110では、ブローバイガスが椀状内面部117の凹凸や基体84の段差に当たる等して、気体成分と水分が分離する。
【0084】
椀状内面部117で分離された水分は、エア取込半筒部118(第2エア取込管115)に向かって流れ、流動溝119を通ってエアクリーナ68の外部に排出される。一方、ブローバイガスの気体成分は、取付部116内の空間を上方向に進みつつ、第2エア取込管115から流入した外部エアと混合して、貫通孔112に流入する。つまり、内部空間83aには、ブローバイガスと外部エアが混合した状態で流入される。内部空間83aでは、さらに第1エア取込管114から流入した外部エアも混合してエア吸気管80に混合エアを流入させる。
【0085】
なお、第2実施形態でも、エア吸気管80の突出部81が被固定面部85から突出していることで、水分の流動が抑制される。よって仮に、内部空間83a中のブローバイガスに水分がまだ含まれていても、水分が突出部81を乗り越えてエア吸気管80に入ることを大幅に小さくすることができる。
【0086】
以上のように、第2実施形態に係るブリーザ装置10Aでも、第1実施形態に係るブリーザ装置10と同様の効果を得ることができる。特に、このブリーザ装置10Aは、流入部材110によって、内部空間83aに外部エアと共にブローバイガスを流入させる前に、ジグザグの流動空間によってブローバイガスから水分を分離する。その結果、エア吸気管80に水分が流入することをより効果的に抑制することができる。
【0087】
参考例
参考例に係るブリーザ装置10Bは、図7に示すように、エアクリーナ68の筐体120内で、第2流動管74(流入口74b)を底部120aから所定高さ突出させ、且つエア吸気口80aから離して配置した点で、第1及び第2実施形態に係るブリーザ装置10、10Aと異なる。
【0088】
具体的には、筐体120は、直方形状の箱体に形成されている。筐体120の底部120aは、第2流動管74を挿通及び固定する。底部120aは、筐体120の天井部120bと比較して長手方向に短くなっており、筐体120の一方の側面との間に、外部エアを流入させるエア取込口78aを形成している。エア取込口78aには図示しないエア取込管が接続されている。また、エア吸気口80aは、筐体120の他方の側面に設けられ、図示しないエア吸気管に混合エアを流動させる。さらに、エア吸気口80aの下部には、底部120a及びエア取込口78aを仕切る仕切り壁122が設けられている。
【0089】
第2流動管74は、底部120aから上方向に向かって所定高さ突出し、筐体120の天井部120b付近に突出端(第2流動管74の流入口74b)を配置している。流入口74bは、エア吸気口80aに対して所定距離離れていることで、ブローバイガスに含まれる水分がエア吸気口80aに流れ込むことを抑制する。つまり、流入口74bからエア取込口78aに向かう横方向(水平方向)に気体成分が流動する気体経路100が形成される一方で、液体経路102は、第2流動管74の周辺部の底部120aに形成されてエア取込口78aに至っている。
【0090】
以上のように構成されるブリーザ装置10Bは、第2流動管74の流入口74bから筐体120内にブローバイガスが流入する。この際、ブローバイガスは、筐体120の天井部120bにあたって水分を付着させる。また、ブローバイガスは、第2流動管74の流入口74bからエア吸気口80aに移動する際に、水分を下方向に落とすことができる。水分は、底部120aに落ちると、底部120aに沿って移動しエア取込口78aから排出される。
【0091】
エア取込口78aからは外部エアが流入して、ブローバイガスの気体成分と混合し、混合エアとしてエア吸気口80aに流入する。また、仕切り壁122は、上昇する外部エアに対する障害を構成し、仮に液体経路102によって排出された水分が外部エアにのった場合でも、水分がエア吸気口80aに流入することを抑制する。
【0092】
以上のように、参考例に係るブリーザ装置10Bでも、第1及び第2実施形態に係るブリーザ装置10、10Aと同様に、ブローバイガスの水分がエア吸気口80aに入り込むことを抑制することができる。特に、このブリーザ装置10Bは、簡単な構造を採ることができるので、装置の製造コストの低減を図ることが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7