特許第6799762号(P6799762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6799762ソルダーレジスト組成物、被膜、被覆プリント配線板、被膜の製造方法、及び被覆プリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799762
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ソルダーレジスト組成物、被膜、被覆プリント配線板、被膜の製造方法、及び被覆プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20201207BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20201207BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20201207BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20201207BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20201207BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/004 505
   G03F7/027 515
   G03F7/38 511
   G03F7/40 501
   H05K3/28 D
   H05K3/28 F
   C08G59/42
【請求項の数】10
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2016-47974(P2016-47974)
(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公開番号】特開2017-161811(P2017-161811A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
(72)【発明者】
【氏名】丸澤 尚
(72)【発明者】
【氏名】橋本 壯一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 貴
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−322755(JP,A)
【文献】 特開平03−012430(JP,A)
【文献】 特開平07−076639(JP,A)
【文献】 特開2017−135388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有樹脂(A)と、
光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される一種以上の光重合性化合物(B)と、
光重合開始剤(C)と、
融点130℃以上の結晶性エポキシ化合物(D)と、
着色剤(E)と、を含有するソルダーレジスト組成物であり
前記結晶性エポキシ化合物(D)は、固体粒子の状態で分散し、当該ソルダーレジスト組成物の固形分中に8〜40質量%の割合で含まれ、
前記着色剤(E)は、青色着色剤(E1)及び黄色着色剤(E2)を含有し、
前記青色着色剤(E1)は、化学構造中に少なくとも1つのハロゲン原子を有し、分子量中に占めるハロゲン含有量が25%以下の銅フタロシアニン顔料を含む、
緑色被膜を形成する、ソルダーレジスト組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、光重合性官能基を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)を含む、請求項1に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項3】
前記着色剤(E)は、黒色着色剤及び赤色着色剤のうち少なくとも一方を含む、請求項1又は2に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項4】
カルボキシル基含有樹脂(A)と、
光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される一種以上の光重合性化合物(B)と、
光重合開始剤(C)と、
融点130℃以上の結晶性エポキシ化合物(D)と、
着色剤(E)と、を含有するソルダーレジスト組成物であり、
前記結晶性エポキシ化合物(D)は、固体粒子の状態で分散し、当該ソルダーレジスト組成物の固形分中に8〜40質量%の割合で含まれ、
前記着色剤(E)は、青色着色剤(E1)及び黄色着色剤(E2)を含有し、
前記着色剤(E)は、黒色着色剤及び赤色着色剤のうち少なくとも一方を含む、
緑色被膜を形成する、ソルダーレジスト組成物。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のソルダーレジスト組成物の硬化物からなる緑色の被膜であって、
第一の領域と、前記第一の領域よりも光透過率が高い第二の領域とを含む、被膜。
【請求項6】
請求項に記載の被膜と、
プリント配線板と、を備え、
前記プリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層上にある銅製の配線とを備え、
前記被膜は、前記絶縁層及び前記配線を覆っている、被覆プリント配線板。
【請求項7】
前記絶縁層の色は、黄色、黄緑色、白色、クリーム色、褐色、オレンジ色、緑色、又は黒色である、請求項に記載の被覆プリント配線板。
【請求項8】
前記プリント配線板は、リジッド材及びフレキシブル材のうち少なくとも一方を含む、請求項又はに記載の被覆プリント配線板。
【請求項9】
〈a〉請求項1乃至のいずれか1項に記載のソルダーレジスト組成物から塗膜を形成する工程と、
〈b〉前記塗膜を露光する工程と、
〈c〉露光後の前記塗膜を加熱することで緑色の被膜を形成する工程と、を含み、
前記〈b〉の工程では、前記塗膜における第一の部分に光を照射し、前記塗膜における前記第一の部分とは異なる第二の部分には光を照射せず、あるいは前記第一の部分よりも露光量が低くなるように光を照射し、
前記〈c〉の工程の加熱により、前記被膜に、前記第一の部分から第一の領域を形成し、前記第二の部分から前記第一の領域よりも光透過率が高い第二の領域を形成する、被膜の製造方法。
【請求項10】
請求項乃至のいずれか1項に記載の被覆プリント配線板を製造する方法であって、
〈d〉請求項1乃至のいずれか1項に記載のソルダーレジスト組成物を、前記プリント配線板上に前記絶縁層及び前記配線を覆うように配置することで、塗膜を形成する工程と、
〈e〉前記塗膜を露光する工程と、
〈f〉露光後の前記塗膜をアルカリ性現像液で現像する工程と、
〈g〉現像後の前記塗膜を加熱することで緑色の被膜を形成する工程と、を含み、
前記〈e〉の工程では、前記塗膜における第一の部分に光を照射し、前記塗膜における前記第一の部分とは異なる第二の部分には前記第一の部分よりも露光量が低くなるように光を照射し、
前記〈g〉の工程の加熱により、前記被膜に、前記第一の部分から第一の領域を形成し、前記第二の部分から前記第一の領域よりも光透過率が高い第二の領域を形成する、被覆プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルダーレジスト組成物、被膜、被覆プリント配線板、被膜の製造方法、及び被覆プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板上には、通常、配線の保護、部品実装時の短絡防止等のために、ソルダーレジスト層等の被膜が形成される。また、プリント配線板には、製品情報等を表示する文字、記号等が、マーキングされることがある。
【0003】
マーキングの視認性に優れた被覆配線板として、プリント配線板上に、着色層として機能する第二の被膜、及び第一の被膜をこの順で形成した被覆配線板が知られている(特許文献1)。第一の被膜は、第二の領域と、この第二の領域よりも光透過性の低い第一の領域とを備える。第一の被膜は特定の融点を有し且つ光重合性を有しない有機化合物を含有する感光性の被膜形成用組成物から形成される。この場合、被膜形成用組成物から形成される塗膜を露光する際の露光量を部分的に異ならせるだけで、第一の領域と第二の領域とを備える第一の被膜を作製できる。
【0004】
この被覆配線板において、例えば、第一の被膜(ソルダーレジスト外層)が緑色の着色剤を含有し、第二の被膜(ソルダーレジスト内層)が黒色の着色剤を含有する場合には、第一の領域の外観色は緑色に見え、第二の領域の外観色は第一の被膜の色(緑色)と第一の被膜から透けて見える第二の被膜の色(黒色)とが混合して黒色又は暗緑色に見える。これにより、第一の領域と第二の領域との相違が明確に視認され、マーキングの視認性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5643416号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の被覆配線板では、プリント配線板上に第一の被膜及び第二の被膜からなる二層の被膜を形成することを要するため、生産性の低下を招いていた。また、プリント配線板を覆う被膜全体の膜厚が厚くなりやすくなるため、被覆配線板を作製する際、露光(UV光)が二層の被膜の表層から深部まで十分に届きにくく、その結果、被膜の硬化が不十分となって、プリント配線板と二層の被膜との密着性が十分ではないおそれがあった。また、特許文献1の組成物において、第二の被膜(内層)を省略して、第一の被膜(外層)だけで緑色の被膜を形成したのでは、十分な特性の被膜が得られず、また、マーキングの視認性も悪く、マーキングの視認性が良好で、被膜特性に優れた緑色の被膜を単層で形成することは難しかった。
【0007】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、露光時の露光量を部分的に異ならせることにより、単層であっても視認性の優れたマーキングを付与することが可能で、被膜特性に優れた緑色の被膜を作製できるソルダーレジスト組成物、このソルダーレジスト組成物から作製された被膜、この被膜を備える被覆プリント配線板、被膜の製造方法、及び被覆プリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るソルダーレジスト組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される一種以上の光重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、融点130℃以上の結晶性エポキシ化合物(D)と、着色剤(E)と、を含有する。前記結晶性エポキシ化合物(D)は、固体粒子の状態で分散している。前記着色剤(E)は、青色着色剤(E1)及び黄色着色剤(E2)を含有する。当該ソルダーレジスト組成物は、緑色被膜を形成する。
【0009】
前記一実施形態にあっては、前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、光重合性官能基を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)を含むことが好ましい。
【0010】
前記一実施形態にあっては、前記結晶性エポキシ化合物(D)は、当該ソルダーレジスト組成物の固形分中に8〜40質量%の割合で含まれていることが好ましい。
【0011】
前記一実施形態にあっては、前記青色着色剤(E1)は、化学構造中に少なくとも1つのハロゲン原子を有し、分子量中に占めるハロゲン含有量が25%以下の銅フタロシアニン顔料を含むことが好ましい。
【0012】
前記一実施形態にあっては、前記着色剤(E)は、黒色着色剤及び赤色着色剤のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る被膜は、上記のソルダーレジスト組成物の硬化物からなる緑色の被膜であって、第一の領域と、前記第一の領域よりも光透過率が高い第二の領域とを含む。
【0014】
本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板は、上記の被膜と、プリント配線板と、を備え、前記プリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層上にある銅製の配線とを備え、前記被膜は、前記絶縁層及び前記配線を覆っている。
【0015】
前記一実施形態にあっては、前記絶縁層の色は、黄色、黄緑色、白色、クリーム色、褐色、オレンジ色、緑色、又は黒色であることが好ましい。
【0016】
前記一実施形態にあっては、前記プリント配線板は、リジッド材及びフレキシブル材のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の一実施形態に係る被膜の製造方法は、
〈a〉上記のソルダーレジスト組成物から塗膜を形成する工程と、
〈b〉前記塗膜を露光する工程と、
〈c〉露光後の前記塗膜を加熱することで緑色の被膜を形成する工程と、を含み、
前記〈b〉の工程では、前記塗膜における第一の部分に光を照射し、前記塗膜における前記第一の部分とは異なる第二の部分には光を照射せず、あるいは前記第一の部分よりも露光量が低くなるように光を照射し、
前記〈c〉の工程の加熱により、前記被膜に、前記第一の部分から第一の領域を形成し、前記第二の部分から前記第一の領域よりも光透過率が高い第二の領域を形成する。
【0018】
本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法は、上記の被覆プリント配線板を製造する方法であって、
〈d〉上記のソルダーレジスト組成物を、前記プリント配線板上に前記絶縁層及び前記配線を覆うように配置することで、塗膜を形成する工程と、
〈e〉前記塗膜を露光する工程と、
〈f〉露光後の前記塗膜をアルカリ性現像液で現像する工程と、
〈g〉現像後の前記塗膜を加熱することで緑色の被膜を形成する工程と、を含み、
前記〈e〉の工程では、前記塗膜における第一の部分に光を照射し、前記塗膜における前記第一の部分とは異なる第二の部分には前記第一の部分よりも露光量が低くなるように光を照射し、
前記〈g〉の工程の加熱により、前記被膜に、前記第一の部分から第一の領域を形成し、前記第二の部分から前記第一の領域よりも光透過率が高い第二の領域を形成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ソルダーレジスト組成物から形成された塗膜を露光すると共に露光時の露光量を部分的に異ならせることにより、単層であっても視認性の優れたマーキングを付与することが可能で、被膜特性の優れた緑色の被膜を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態における、被膜及び被膜を備える被膜プリント配線板の製造方法を示す概略の断面図である。
図2】本発明の一実施形態における、被膜及び被膜を備える被膜プリント配線板の製造方法を示す概略の断面図である。
図3】本発明の一実施形態における、被膜及び被膜を備える被膜プリント配線板の製造方法を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書においては、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを(メタ)アクリロイルと表す場合がある。また、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す場合がある。また、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す場合がある。
【0022】
<ソルダーレジスト組成物>
本実施形態のソルダーレジスト組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される一種以上の光重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、融点130℃以上の結晶性エポキシ化合物(D)と、着色剤(E)と、を含有する。結晶性エポキシ化合物(D)は、固体粒子の状態で分散している。着色剤(E)は、青色着色剤(E1)及び黄色着色剤(E2)を含有する。当該ソルダーレジスト組成物は、緑色被膜を形成する。
【0023】
本実施形態のソルダーレジスト組成物から塗膜を形成し、この塗膜を露光すると共にこの露光時の露光量を部分的に異ならせると、単層であっても視認性に優れたマーキングを有する緑色の被膜を形成することができる。銅製の配線を備えるプリント配線板上に緑色被膜を形成すると、マーキングの視認性が特に優れる。緑色は視感度が高いからである。また、緑色被膜は、目に優しく、ソルダーレジストとして汎用されている色なので用途範囲が広がる。
【0024】
ソルダーレジスト組成物の組成について、更に詳しく説明する。
【0025】
[カルボキシル基含有樹脂(A)]
カルボキシル基含有樹脂(A)は、ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜に、アルカリ性溶液による現像性、すなわちアルカリ現像性を付与することができる。
【0026】
(カルボキシル基含有樹脂(A1))
カルボキシル基含有樹脂(A)は、光重合性官能基を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)(以下、(A1)成分ともいう)を含有することができる。光重合性官能基は、例えばエチレン性不飽和基である。ここで、エチレン性不飽和基とは、付加反応が可能な炭素炭素二重結合であってよい。エチレン性不飽和基は、芳香環の二重結合を含まなくてよい。エチレン性不飽和基は、共役二重結合を含まなくてもよい。ただし、共役二重結合であっても付加反応による重合性があるならば、エチレン性不飽和基に分類され得る。
【0027】
(A1)成分は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a1)における前記エポキシ基のうち少なくとも一つに、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)が反応し、更に多価カルボン酸及びその無水物から選択される少なくとも一種からなる群から選択される化合物(a3)が付加した構造を有する樹脂(以下、第一の樹脂(a)という)を、含有することができる。
【0028】
エポキシ化合物(a1)は、例えばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂及びエポキシ基を有する化合物を含むエチレン性不飽和化合物の重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することができる。
【0029】
エポキシ化合物(a1)が、エポキシ基を備える化合物(p1)を含むエチレン性不飽和化合物(p)の重合体を含有してもよい。この重合体の合成に供されるエチレン性不飽和化合物(p)は、エポキシ基を備える化合物(p1)のみを含有してもよく、エポキシ基を備える化合物(p1)とエポキシ基を備えない化合物(p2)とを含有してもよい。
【0030】
エポキシ基を備える化合物(p1)は、適宜のポリマー及びプレポリマーから選択される化合物を含有することができる。具体的には、エポキシ基を備える化合物(p1)は、アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、メタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、アクリレートの脂環エポキシ誘導体、メタクリレートの脂環エポキシ誘導体、β−メチルグリシジルアクリレート、及びβ−メチルグリシジルメタクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に、エポキシ基を備える化合物(p1)が、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0031】
エポキシ基を備えない化合物(p2)は、エポキシ基を備える化合物(p1)と共重合可能な化合物であればよい。エポキシ基を備えない化合物(p2)は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(重合度n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、3−マレイミド安息香酸N−スクシンイミジル、直鎖状或いは分岐を有する脂肪族又は脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、及びN−置換マレイミド類(例えばN−シクロヘキシルマレイミド)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0032】
エポキシ基を備えない化合物(p2)が、更に一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物を含有してもよい。この化合物が使用され、その配合量が調整されることで、被膜の硬度及び油性が容易に調整される。一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物は、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0033】
エチレン性不飽和化合物(p)が、例えば溶液重合法、エマルション重合法等の公知の重合法により重合することで、重合体が得られる。溶液重合法の具体例として、エチレン性不飽和化合物(p)を適当な有機溶剤中で、重合開始剤の存在下、窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法並びに共沸重合法が、挙げられる。
【0034】
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される有機溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0035】
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される重合開始剤は、例えばジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシビバレート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、並びにレドックス系の開始剤からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0036】
エチレン性不飽和化合物(a2)は、適宜のポリマー及びプレポリマーからなる群から選択される化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物を含有することができる。エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を複数個備える化合物を更に含有することができる。エチレン性不飽和基を複数個備える化合物は、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のヒドロキシル基を備える多官能アクリレート、並びに多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0037】
特にエチレン性不飽和化合物(a2)が、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、アクリル酸及びメタクリル酸に由来するエチレン性不飽和基は特に光反応性に優れるため、第一の樹脂(a)の光反応性が高くなる。
【0038】
エチレン性不飽和化合物(a2)の使用量は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対してエチレン性不飽和化合物(a2)のカルボキシル基が0.4〜1.2モルの範囲内となる量であることが好ましく、特に前記カルボキシル基が0.5〜1.1モルの範囲内となる量であることが好ましい。
【0039】
多価カルボン酸及びその無水物からなる群から選択される化合物(a3)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等のジカルボン酸;シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸等の三塩基酸以上の多価カルボン酸;並びにこれらの多価カルボン酸の無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0040】
化合物(a3)は、第一の樹脂(a)に酸価を与えることで、ソルダーレジスト組成物に希アルカリ水溶液による再分散、再溶解性を付与することを主たる目的として使用される。化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは30mgKOH/g以上、特に好ましくは60mgKOH/g以上となるように調整される。また、化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは160mgKOH/g以下、特に好ましくは130mgKOH/g以下となるように調整される。
【0041】
第一の樹脂(a)が合成される際に、エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応、並びにこの付加反応による生成物(付加反応生成物)と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、公知の方法が採用され得る。例えばエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応にあたっては、エポキシ化合物(a1)の溶剤溶液にエチレン性不飽和化合物(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の反応温度で反応させることで、付加反応生成物が得られる。熱重合禁止剤としてはハイドロキノンもしくはハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。触媒としてベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビンなどが挙げられる。
【0042】
付加反応生成物と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、付加反応生成物の溶剤溶液に化合物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて撹拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により反応させることで、第一の樹脂(a)が得られる。反応条件はエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応の場合と同じ条件でよい。熱重合禁止剤及び触媒としては、エポキシ化合物(a1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応時に使用された化合物をそのまま使用することができる。
【0043】
(A1)成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる樹脂(第二の樹脂(b)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体には必要に応じてカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物も含まれていてもよい。
【0044】
第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有することができる。例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択されるヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートに、二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含有することができる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0045】
第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であればよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物のうち、いずれも含有することができる。
【0046】
芳香環を有する化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及びビニルビフェニルからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0047】
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;及びN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物は被膜の硬度及び油性の調節が容易である等の点で好ましい。
【0048】
第二の樹脂(b)を得るためのエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、適宜のポリマー又はプレポリマーが挙げられる。このエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例として、アクリル酸又はメタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類;アクリレート又はメタクリレートの脂環エポキシ誘導体;β−メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。特に、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートが用いられることが好ましい。
【0049】
(A1)成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物とヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるヒドロキシル基の一部又は全部にエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物を付加して得られる樹脂(以下、第三の樹脂(c)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体には必要に応じてカルボキシル基及びヒドロキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物が含まれていてもよい。
【0050】
第三の樹脂(c)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えば上述の第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と同じでよい。
【0051】
第三の樹脂(c)を得るためのヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタ
ノールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、及びN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0052】
第三の樹脂(c)を得るためのエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物の具体例としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズAOI」)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI」)、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−EG」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−BM」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−BP」)、及び1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート)(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズBEI」)が挙げられる。
【0053】
(A1)成分全体の重量平均分子量は、800〜100000の範囲内であることが好ましい。この範囲内において、ソルダーレジスト組成物に特に優れた感光性と解像性とが付与される。
【0054】
(A1)成分全体の酸価は30mgKOH/g以上であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト組成物に良好な現像性が付与される。この酸価は60mgKOH/g以上であれば更に好ましい。また、(A1)成分全体の酸価は160mgKOH/g以下であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜中のカルボキシル基の残留量が低減し、被膜の良好な電気特性、耐電蝕性及び耐水性等が維持される。この酸価は130mgKOH/g以下であれば更に好ましい。
【0055】
(カルボキシル基含有樹脂(A2))
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基を有し、光重合性官能基を有さないカルボキシル基含有樹脂(A2)(以下、(A2)成分ともいう)を含有することができる。
【0056】
(A2)成分は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。エチレン性不飽和単量体には更にカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物が含まれていてもよい。
【0057】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有することができ、例えばエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択されるヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートに、二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含有することができる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0058】
カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であればよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物のうち、いずれも含有することができる。
【0059】
芳香環を有する化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO、PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及びビニルビフェニルからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0060】
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;及びN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物は被膜の硬度及び油性の調節が容易である等の点で好ましい。
【0061】
(A2)成分を得るために用いられる化合物の種類、比率等は、(A2)成分の酸価が適当な値となるように適宜選択される。(A2)成分の酸価は20〜180mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、35〜165mgKOH/gの範囲内であれば更に好ましい。
【0062】
[光重合性化合物(B)]
光重合性化合物(B)は、ソルダーレジスト組成物に光硬化性を付与する。光重合性化合物(B)は、光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される一種以上の化合物を含有する。
【0063】
光重合性モノマーは、例えばエチレン性不飽和基を有する。エチレン性不飽和基の定義は、上記(A)成分の説明で述べたとおりである。
【0064】
光重合性モノマーは、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0065】
光重合性モノマーが、リン含有化合物(リン含有光重合性化合物)を含有することも好ましい。この場合、ソルダーレジスト組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有光重合性化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0066】
光重合性プレポリマーとしては、光重合性モノマーを重合させて得られるプレポリマーに、エチレン性不飽和基を付加したプレポリマーや、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類等が挙げられる。
【0067】
[光重合開始剤(C)]
光重合開始剤(C)は、例えば、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含む化合物;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のα−ヒドロキシアルキルフェノン類;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のα−アミノアルキルフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−ホスフィネート等のモノアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド等のビスアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;並びに、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(О−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル] −,1−(0−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。光重合開始剤(C)は、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノン類、チオキサントン類、及びアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される2種以上の成分が含まれていることが特に好ましい。
【0068】
[結晶性エポキシ化合物(D)]
結晶性エポキシ化合物(D)は、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜中に光透過性の異なる領域を形成しやすくする。結晶性エポキシ化合物(D)は、融点が130℃以上であり、好ましくは138℃〜230℃である。結晶性エポキシ化合物(D)における結晶性とは、25℃で固体であって、融点を有することを意味する。結晶性エポキシ化合物(D)は、結晶のような固体を形成してもよいが、完全に結晶化しなくてもよい。結晶性エポキシ化合物(D)は、樹脂であってよく、その場合、結晶性エポキシ樹脂と定義される。ここでは、エポキシ樹脂とは分子内にエポキシ基を2個以上含む化合物を意味する。
【0069】
結晶性エポキシ化合物(D)は、エポキシ基を有し且つ結晶性を有するモノマー、プレポリマー及びポリマーからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。このような化合物は市販され、容易に入手可能である。例えば結晶性エポキシ化合物(D)は、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(高融点タイプ)、新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312(ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社製の品名GTR−1800(テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0070】
結晶性エポキシ化合物(D)は、ソルダーレジスト組成物中に、固体粒子の状態で分散している。すなわち、結晶性エポキシ化合物(D)は、ソルダーレジスト組成物に溶け込んでいない。結晶性エポキシ化合物(D)が固体粒子の状態であることにより、光透過率の異なる領域を被膜に容易に形成することができる。なお、結晶性エポキシ化合物(D)が固体粒子の状態であるならば、結晶性エポキシ化合物(D)の一部がソルダーレジスト組成物中で溶解していてもよいが、全部が溶解していない方がより好ましい。
【0071】
結晶性エポキシ化合物(D)は、ソルダーレジスト組成物中に、粒子として存在している。結晶性エポキシ化合物(D)は、粒子径20μm以下で分散していることが好ましい。粒子径がこの範囲になることにより、光透過率の異なる領域を効果的に形成することができる。結晶性エポキシ化合物(D)が一次粒子を形成する場合、その平均一次粒子径が20μm以下であることが好ましい。また、結晶性エポキシ化合物(D)が凝集により二次粒子等の凝集物を形成する場合には、その凝集物の粒子径が20μm以下であることが好ましい。また、結晶性エポキシ化合物(D)は、塊となった固体や粒子径の大きい粒子が粉砕されて、粒子径が20μm以下となっていてもよい。要するに、ソルダーレジスト組成物中で分散している(D)成分の粒子が20μm以下であることが好ましい。結晶性エポキシ化合物(D)の粒子径の下限は特に限定されるものではないが、たとえば、結晶性エポキシ化合物(D)の粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。なお、粒子径は、レーザー回折粒度分布測定装置により測定される。
【0072】
[着色剤(E)]
着色剤(E)は、被膜に色を付与することができる。着色剤(E)は、青色着色剤(E1)及び黄色着色剤(E2)を含有する。すなわち、ソルダーレジスト組成物は、青色着色剤(E1)及び黄色着色剤(E2)を含有する。ソルダーレジスト組成物が青色着色剤(E1)及び黄色着色剤(E2)を含有することにより、これらの着色剤の色が混合された色が被膜に付与され、被膜は緑色になる。そして、青色着色剤(E1)と黄色着色剤(E2)との混合で被膜の緑色を形成するようにすると、光透過性の異なる領域の視認性が格段に向上する。特に銅製の配線を備えるプリント配線板上に被膜を形成する場合のマーキングの視認性を更に向上することができる。青色着色剤(E1)と黄色着色剤(E2)の混合による緑色は、緑色着色剤のみで被膜を緑色にした場合に比べて、視認性が高い。緑色着色剤単独では、色のコントラストが付きにくいが、青色着色剤(E1)と黄色着色剤(E2)の併用では、色のコントラストが付きやすいからである。また、青色着色剤(E1)と黄色着色剤(E2)との混合によると、少ない着色剤の量でも明るく隠蔽性が高い緑色を被膜に付与することができる。また、緑色は視感度が高く、色の違いが認識しやすい。また、緑色被膜は、目に優しく、ソルダーレジストに汎用されているため、利用範囲が広がる。
【0073】
着色剤(E)は、顔料と染料のいずれも含み得る。すなわち、青色着色剤(E1)は、顔料であってもよいし、染料であってもよい。また、黄色着色剤(E2)は、顔料であってもよいし、染料であってもよい。顔料は、無機粒子や有機金属粒子などであってもよい。顔料は、ソルダーレジスト組成物中に分散されるものであってもよい。染料は、有機化合物であってもよい。染料は、ソルダーレジスト組成物中で溶解するものであってもよい。
【0074】
青色着色剤(E1)は、例えば、フタロシアニン系青色着色剤、アントラキノン系青色着色剤などの着色剤が挙げられる。フタロシアニン系青色着色剤としては、例えば、金属置換又は無置換のフタロシアニン化合物が挙げられる。青色着色剤(E1)は、顔料であることが好ましい。青色着色剤(E1)は、より具体的な例として、Pigment Blue 15;Pigment Blue 15:1;Pigment Blue 15:2;Pigment Blue 15:3;Pigment Blue 15:4;Pigment Blue 15:6;Pigment Blue 16;Pigment Blue 60が、挙げられる。
【0075】
青色着色剤(E1)は、化学構造中に少なくとも1つのハロゲン原子を有し、分子量中に占めるハロゲン含有量が25%以下の銅フタロシアニン顔料を含むことが好ましい。その場合、銅製の配線を備えるプリント配線板上に被膜を形成する場合のマーキングの視認性を更に向上することができる。ハロゲンの作用により、銅フタロシアニン顔料の色のコントラストがより一層効果的に付きやすくなるからである。ただし、環境のためにはハロゲン含有量は少ない方がよく、ハロゲン含有量は25%以下が好ましい。また、緑色の色味を良好にするためにも、ハロゲン含有量は多くない方がよい。例えば、ハロゲン含有量は20%以下となってもよい。ハロゲン含有量の下限は特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン含有量は1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、3%以上であることがさらに好ましく、5%以上であることがよりさらに好ましい。ハロゲンとしては、塩素、フッ素、臭素などが例示される。なお、分子量中に占めるハロゲン含有量とは、質量基準で算出されるものであり、当該着色剤分子の分子量中に占めるハロゲン原子の原子量の割合として得られ、たとえば、元素分析で測定される。ハロゲンを含む青色着色剤は、より具体的には、塩素化銅フタロシアニンが例示される。
【0076】
黄色着色剤(E2)の具体例として、モノアゾ系黄色着色剤、ジスアゾ系黄色着色剤、縮合アゾ系黄色着色剤、ベンズイミダゾロン系黄色着色剤、イソインドリノン系黄色着色剤、及びアントラキノン系黄色着色剤が挙げられる。黄色着色剤(E2)は、染料であってよい。黄色着色剤(E2)のより具体的な例として、Pigment Yellow 24;Pigment Yellow 108;Pigment Yellow 193;Pigment Yellow 147;Pigment Yellow 150;Pigment Yellow 199;Pigment Yellow 202;Pigment Yellow 110;Pigment Yellow 109;Pigment Yellow 139;Pigment Yellow 179;Pigment Yellow 185;Pigment Yellow 93;Pigment Yellow 94;Pigment Yellow 95;Pigment Yellow 128;Pigment Yellow 155;Pigment Yellow 166;Pigment Yellow 180; Pigment Yellow 120;Pigment Yellow 151;Pigment Yellow 154;Pigment Yellow 156;Pigment Yellow 175;及びPigment Yellow 181、が挙げられる。また、黄色着色剤(E2)のより具体的な例として、Pigment Yellow 1, 2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 12, 61, 62, 62:1, 65, 73,74, 75, 97, 100, 104, 105, 111, 116, 167, 168, 169, 182, 及び183;並びにPigment Yellow12, 13, 14, 16, 17, 55, 63, 81, 83, 87, 126, 127, 152, 170, 172, 174, 176, 188,及び198、なども挙げられる。
【0077】
着色剤(E)は、緑色被膜を形成できることを条件として、さらに他の色の着色剤を含んでいてもよい。着色剤(E)は、目的とする被膜の緑色の色味や、プリント配線基板の絶縁層の色などに応じて適宜選択され得る。着色剤(E)は、例えば黒色着色剤、赤色着色剤、緑色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤などを含有することができる。
【0078】
着色剤(E)は、緑色着色剤を含まなくてよい。本実施形態のソルダーレジスト組成物は、青色着色剤(E1)と黄色着色剤(E2)との併用によって被膜に緑色が付与されるため、緑色着色剤のさらなる添加は必要でないからである。ただし、色調を整えるために、緑色着色剤が添加されてもよい。緑色着色剤は、例えば、フタロシアニン系緑色着色剤、アントラキノン系緑色着色剤、ペリレン系緑色着色剤、及び金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物からなる群から選択される一種以上の着色剤を含有することができる。緑色着色剤のより具体的な例として、ピグメントグリーン7;及びピグメントグリーン36で表される着色剤が挙げられる。
【0079】
着色剤(E)は、青色着色剤(E1)及び黄色着色剤(E2)に加えて、黒色着色剤及び赤色着色剤のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、銅製の配線を備えるプリント配線板上に被膜を形成する場合に、被膜におけるマーキングの視認性が特に高くなる。光透過性の違う領域のコントラストを向上できるからである。黒色着色剤及び赤色着色剤は、被膜の緑色が維持される程度(緑色とは認識されない色に変わらない程度)で添加され得る。
【0080】
黒色着色剤は、ペリレン系黒色着色剤を含有することができる。ペリレン系黒色着色剤は、例えば、カラーインデックス(C.I.)ピグメントブラック31、及びカラーインデックス(C.I.)ピグメントブラック32からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。また、ペリレン系黒色着色剤は上記の成分以外に、カラーインデックスの番号はないが、ペリレン系の近赤外線透過黒色着色剤として知られているBASF社のLumogen Black FK 4280及びLumogen Black
FK 4281のうち、少なくとも一方を含有することができる。黒色着色剤は、カーボンブラック、ナフタレンブラック、及びチタンブラックから選ばれるものを含有してもよい。
【0081】
赤色着色剤は、例えば、モノアゾ系赤色着色剤、ジスアゾ系赤色着色剤、アゾレーキ系赤色着色剤、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤、ペリレン系赤色着色剤、ジケトピロロピロール系赤色着色剤、縮合アゾ系赤色着色剤、アントラキノン系赤色着色剤、及びキナクリドン系からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。赤色着色剤のより具体的な例として、Pigment Red 1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 12, 14, 15, 16, 17, 21, 22, 23,31, 32, 112, 114, 146, 147, 151, 170, 184, 187, 188, 193, 210, 245, 253, 258,266, 267, 268,及び269;Pigment Red 37, 38, 及び41;Pigment Red 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 49:1, 49:2, 50:1, 52:1, 52:2,53:1, 53:2, 57:1, 58:4, 63:1, 63:2, 64:1,及び68;Pigment Red 171;Pigment Red 175;Pigment Red 176;Pigment Red 185;Pigment Red 208; Pigment Red 123;Pigment Red 149;Pigment Red 166;Pigment Red 178;Pigment Red 179;Pigment Red 190;Pigment Red 194;Pigment Red 224;Pigment Red 254;Pigment Red 255;Pigment Red 264;Pigment Red 270;Pigment Red 272;Pigment Red 220;Pigment Red 144;Pigment Red 166;Pigment Red 214;Pigment Red 220;Pigment Red 221;Pigment Red 242;Pigment Red 168;Pigment Red 177;Pigment Red 216;Pigment Red 122;Pigment Red 202;Pigment Red 206;Pigment Red 207;並びにPigment Red 209が挙げられる。アントラキノン系赤色着色剤は、例えば、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド83、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド168、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド177、及びカラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド216で表されるものが挙げられる。赤色着色剤がアントラキノン系赤色着色剤であることにより、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜による導体配線の隠蔽性を特に確保しやすい。また、この赤色着色剤は、分散性と耐候性に優れている。
【0082】
[無機フィラー(F)]
ソルダーレジスト組成物は、無機フィラー(F)を含有してもよい。無機フィラー(F)は、被膜特性を向上させることができる。たとえば、無機フィラー(F)の添加により、被膜の耐熱性、耐候性、耐薬品性が向上する。
【0083】
無機フィラーは、例えば、硫酸バリウム、結晶性シリカ、微粉シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、ハイドロタルサイト、クレー、珪酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チッ化アルミニウム、チッ化硼素、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウム、モンモリロナイト、セピオライト等が挙げられる。
【0084】
無機フィラー(F)の粒子径は、特に限定されるものではないが、たとえば、0.001〜20μmの範囲内であってよい。この粒子径の範囲になると、無機フィラー(F)による特性の向上が良好に発揮される。粒子径は、レーザー回折粒度分布測定装置により測定される。
【0085】
[その他の成分]
ソルダーレジスト組成物は、その他、適宜の成分を含有することができる。例えば、ソルダーレジスト組成物は、上記の結晶性エポキシ化合物(D)以外のエポキシ化合物を含有してもよい。成分(D)以外のエポキシ化合物は、融点130℃未満の結晶性エポキシ化合物を含有することができる。結晶性エポキシ化合物は、融点を有するエポキシ化合物である。エポキシ化合物は、エポキシ樹脂であってもよい。
【0086】
融点130℃未満の結晶性エポキシ化合物は、例えば、新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−80XY(ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−120TE(チオエーテル型結晶性エポキシ樹脂)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製の品名YX−4000(ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂)、及び1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(低融点タイプ)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0087】
また、ソルダーレジスト組成物は、非晶性エポキシ化合物を含有してもよい。非晶性エポキシ化合物は、融点を有さないエポキシ化合物である。非晶性エポキシ化合物は、非晶性エポキシ樹脂を含有してもよい。非晶性エポキシ樹脂は、例えば、非晶性のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON N−695)、非晶性のフェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON N−775)、非晶性のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON N−865)、非晶性のビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名jER1001)、非晶性のビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名jER4004P)、非晶性のビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON EXA−1514)、非晶性のビスフェノールAD型エポキシ樹脂、非晶性の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、非晶性のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、及び非晶性の特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品名EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−120T)、及び前記以外の非晶性のビスフェノール系エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0088】
ソルダーレジスト組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、ソルダーレジスト組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
【0089】
有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールアセテート類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0090】
ソルダーレジスト組成物中の有機溶剤の割合は、ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜を乾燥させる際に有機溶剤が速やかに揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、ソルダーレジスト組成物全体に対して、有機溶剤が5〜99.5質量%の範囲内であることが好ましく、15〜80質量%の範囲内であれば更に好ましい。なお、有機溶剤の好適な割合は、塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。有機溶剤は、(D)成分である結晶性エポキシ化合物が固体粒子の状態を維持できる量であってよい。有機溶剤の量が多すぎると、結晶性エポキシ化合物(D)が有機溶剤に溶解しやすくなるおそれがある。
【0091】
ソルダーレジスト組成物は、上記成分以外の成分を更に含有してもよい。
【0092】
例えば、ソルダーレジスト組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。
【0093】
ソルダーレジスト組成物がエポキシ化合物を含有する場合、ソルダーレジスト組成物は、更にエポキシ化合物を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
【0094】
ソルダーレジスト組成物は、密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、並びに2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体が、挙げられる。
【0095】
ソルダーレジスト組成物は、更に公知の光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。例えばソルダーレジスト組成物は、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等を含有してもよい。
【0096】
ソルダーレジスト組成物は、硬化促進剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;高分子分散剤;及び着色分散剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有してもよい。
【0097】
[ソルダーレジスト組成物に含まれる各成分の配合量及び調製方法]
ソルダーレジスト組成物中の成分の量は、ソルダーレジスト組成物が光硬化性を有しアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
【0098】
カルボキシル基含有樹脂(A)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物の固形分量に対して20〜65質量%の範囲内であれば好ましく、25〜55質量%の範囲内であればより好ましく、30〜50質量%の範囲内であれば更に好ましい。なお、ここでいう固形分量とは、ソルダーレジスト組成物から被膜を形成する過程で揮発する溶剤などの成分を除いた、全成分の合計量のことである。
【0099】
光重合性化合物(B)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)(100質量%とする)に対して5〜60質量%の範囲内であれば好ましく、10〜50質量%の範囲内であればより好ましく、15〜40質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0100】
光重合開始剤(C)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して1〜50質量%の範囲内であることが好ましく、3〜40質量%の範囲内であればより好ましく、5〜25質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0101】
結晶性エポキシ化合物(D)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して15〜200質量%の範囲内であることが好ましく、20〜100質量%の範囲内であればより好ましく、25〜80質量%の範囲内であれば更に好ましく、30〜60質量%の範囲内であれば特に好ましい。
【0102】
また、結晶性エポキシ化合物(D)は、ソルダーレジスト組成物の固形分中に8〜40質量%の割合で含まれていることが好ましい。結晶性エポキシ化合物(D)の固形分中の量が好適化されることによって、光透過率の異なる領域を効果的に形成することができる。結晶性エポキシ化合物(D)は、ソルダーレジスト組成物の固形分中に10〜36質量%の割合で含まれることがより好ましく、12〜35質量%の割合で含まれることがさらに好ましく、15〜30質量%の割合で含まれることが特に好ましい。
【0103】
着色剤(E)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.01〜6質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜3質量%の範囲内であればより好ましい。着色剤(E)の含有割合が上記範囲内であれば、被膜におけるマーキングの視認性が高くなる。
【0104】
青色着色剤(E1)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.01〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜4質量%の範囲内であればより好ましい。黄色着色剤(E2)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.01〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜4質量%の範囲内であればより好ましい。青色着色剤(E1)と黄色着色剤(E2)との含有比率は、質量比で、10:1〜1:10であることが好ましく、5:1〜1:3であることがより好ましく、4:1〜1:2であることがさらに好ましく、3:1〜1:1であることが特に好ましい。青色着色剤(E1)と黄色着色剤(E2)との含有比率が上記範囲内であれば、被膜に良好な緑色が付与されるとともに、被膜におけるマーキングの視認性をより高くすることができる。黒色着色剤が用いられる場合、黒色着色剤の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.01〜4質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜1質量%の範囲内であればより好ましい。ただし、ソルダーレジスト組成物は黒色着色剤を含有しなくてもよく、その場合、前記含有割合は0質量%であってよい。赤色着色剤が用いられる場合、赤色着色剤の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.01〜4質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜1質量%の範囲内であればより好ましい。ただし、ソルダーレジスト組成物は赤色着色剤を含有しなくてもよく、その場合、前記含有割合は0質量%であってよい。
【0105】
無機フィラー(F)の含有量は、固形分中の割合で好適化され得る。ソルダーレジスト組成物は無機フィラー(F)を含まなくてもよく、その場合、固形分中の無機フィラー(F)の含有量は0質量%である。また、ソルダーレジスト組成物は無機フィラー(F)を含んでもよく、その場合、無機フィラー(F)は、ソルダーレジスト組成物の固形分中に0質量%より大きい割合で含まれ得る。無機フィラー(F)は被膜特性を向上させ得るものの、視認性を低下させるおそれもあるため、視認性の観点からは、無機フィラー(F)の含有量は少ない方が有利である。無機フィラー(F)の含有量が多くなると、被膜にコントラストが付きにくくなるおそれがある。また、無機フィラー(F)の含有量が多くなると、被膜の光透過率が全体的に高くなって、隠蔽性が低下するおそれがある。ソルダーレジスト組成物の固形分中の無機フィラー(F)の含有割合は、0〜25質量%であることが好ましく、0〜15質量%であることがより好ましく、0〜10質量%であることがさらに好ましく、0〜5質量%であることが特に好ましい。なお、ソルダーレジスト組成物が無機フィラー(F)を含む場合、固形分中の無機フィラー(F)の含有割合は、0.01質量%以上であってよく、さらには0.1質量%以上であってもよく、さらには1質量%以上であってもよい。
【0106】
ソルダーレジスト組成物は、ハロゲン含有量が1500ppm以下であることが好ましい。それと同時に、塩素含有量及び臭素含有量がそれぞれ900ppm以下であることが好ましい。緑色着色剤を用いる場合、緑色着色剤は、通常、ハロゲン(特に塩素)を含有するため、ハロゲン量が多くなりやすく、環境に悪影響を及ぼしやすい。しかしながら、青色着色剤(E1)及び黄色着色剤(E2)を用いることにより、塩素含有量が900ppm以下においても、緑色の被膜を形成することが可能である。また、単層のソルダーレジストの被膜においても、視認性を向上することができる。ハロゲンは、主として着色剤の成分に含まれ得る。そのため、着色剤の含有割合を調整することで、ハロゲン含有量を制御することができる。ただし、着色剤以外の成分がハロゲンを含む場合であっても、ソルダーレジスト組成物全体として、ハロゲン含有量が1500ppm以下であり、かつ、塩素含有量及び臭素含有量がそれぞれ900ppmであることが好ましい。ハロゲン含有量(特に塩素含有量)は、800ppm以下がより好ましく、700ppm以下がさらに好ましく、600ppm以下がよりさらに好ましい。ハロゲン含有量(特に塩素含有量)は、100ppm以下であってもよく、さらには10ppmであってもよく、さらには0ppm(すなわちハロゲンを含まない)であってもよい。なお、上述のように、青色着色剤(E1)がハロゲンを含む場合など、ハロゲンを含むことにより好ましい効果が得られる場合もある。そのため、ハロゲンを含む場合でも、ハロゲン含有量(特に塩素含有量)が900ppm以下となることが好適である。ソルダーレジスト組成物がハロゲンを含む場合、ハロゲン含有量は、100ppm以上となってもよいし、200ppm以上となってもよいし、300ppm以上となってもよいし、さらには400ppm以上となってもよい。
【0107】
上記のようなソルダーレジスト組成物の原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、ソルダーレジスト組成物が調製され得る。ソルダーレジスト組成物を混練することで、結晶性エポキシ化合物(D)や無機フィラーの良好な分散性が得られ、視認性を向上させることができる。
【0108】
保存安定性等を考慮して、ソルダーレジスト組成物の原料の一部を混合することで第一剤を調製し、原料の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。例えば、ソルダーレジスト組成物の原料のうち、光重合性化合物(B)と、有機溶剤の一部と、結晶性エポキシ化合物(D)とを予め混合して分散させることで第一剤を調製し、ソルダーレジスト組成物の原料のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合することで、ソルダーレジスト組成物を調製することができる。
【0109】
<被膜及び被覆プリント配線板>
上記のソルダーレジスト組成物は、その硬化物で構成される被膜が緑色である。ソルダーレジスト組成物自体が緑色であってもよい。緑色の被膜によって、ソルダーレジストの色が緑色の被覆プリント配線板を形成することができる。なお、被膜は、色味の異なる複数の領域が形成され得るが、最も面積の大きい領域が緑色と認識されるものであってよい。
【0110】
図3は、ソルダーレジスト組成物から形成された被膜、及びその被膜を備える被覆プリント配線板の一実施形態を示している。被覆プリント配線板10は、プリント配線板1と、ソルダーレジスト組成物の硬化物からなる被膜3とを備える。被膜3は緑色である。プリント配線板1は、絶縁層と、絶縁層上にある銅製の配線とを備える。被膜3は、絶縁層及び配線を覆っている。図3では、絶縁層と配線とが一体化して描画され、プリント配線板1が模式的に示されている。被膜3は、図3に示すように、第一の領域31と、この第一の領域31よりも光透過率が高い第二の領域32とを備えている。第二の領域32は、第一の領域31よりも透明性が高い。
【0111】
絶縁層の色は特に限定されず、例えば、黄色、黄緑色、白色、クリーム色、褐色、オレンジ色、緑色又は黒色であるのが好ましい。
【0112】
プリント配線板1としては、例えば、紙フェノール基板(FR−1、FR−2)、紙エポキシ基板(FR−3、アイボリー色)、ガラスエポキシ基板(ガラス布エポキシ)(FR−4、FR−5)、ガラスマットポリエステル基板(FR−6)、ガラスコンポジット基板(ガラス紙エポキシ)(CEM−1)、ガラスコンポジット基板(ガラス基材エポキシ)(CEM−3)、ガラスポリイミド基板、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂(テフロン(登録商標))基板、金属基板(主にアルミニウム)、セラミック基板などが挙げられる。
【0113】
プリント配線板1は、リジッド材及びフレキシブル材のうち少なくとも一方を含むのが好ましい。その場合、被覆プリント配線板の利用範囲が広がる。
【0114】
本実施形態では、光透過率の違いにより、第一の領域31の外観色の色調と、第二の領域32の外観色の色調とが、大きく異なる。第二の領域32は、光透過率が高いため、外観色が、第二の領域32自身の色とプリント配線板1の色とが混ざった色になる。一方、第一の領域31は、光透過率が低いため、外観色が、主に第一の領域31自身の色となる。このため、第一の領域31と第二の領域32とを利用して、視認性の高いマーキングを得ることができる。被膜3が複数の着色剤(E)を含有することにより、第一の領域31の外観色と第二の領域32の外観色との色調の差が更に大きくなり、これらの色のコントラストが付き、マーキングの視認性が更に向上する。
【0115】
第一の領域31と第二の領域32とは、気泡の含有量の違いにより光透過性が異なっていてもよい。例えば、第一の領域31が気泡を含有しており、第二の領域32が気泡を含有していない、あるいは気泡の割合が第一の領域31よりも低くなっていてもよい。その場合、第一の領域31は、気泡を多く含むことで、第二の領域32よりも光透過性が低くなる。被膜3を外部から観察すると、第一の領域31では気泡による光の散乱が生じるため白っぽい色調になると共に下地であるプリント配線板1の色は透けて見えにくくなる。一方、第二の領域32では気泡による光の散乱が無いか少ないためプリント配線板1の色が透けて見えやすく、そのため第二の領域32の外観色は、第二の領域32自身の色とプリント配線板1の色とが混ざった色になる。このため、第一の領域31と第二の領域32との間には外観の相違が生じる。
【0116】
また、第一の領域31と、第二の領域32とは、光沢値が異なっていてもよい。例えば、第一の領域31が、第二の領域32より高い光沢値であってよい。光沢値は、例えば、市販の光沢計で測定することができる。具体的には、光沢値は、HORIBA製のハンディ光沢計IG−310又はIG−320により、入射角60°、受光角60°の条件で測定できるが、これに限定されるものではない。
【0117】
第一の領域31と第二の領域32との光透過率の違いが気泡含有量の違いに由来する場合、第一の領域31における気泡の割合は3〜70%の範囲内であることが好ましく、5〜60%の範囲内であれば更に好ましい。また、第一の領域31における気泡の割合の値に対する、第二の領域32における気泡の割合の値の割合は、0〜5%の範囲内であることが好ましい。なお、この気泡の割合は、被膜3の表面を研磨することで現れる面(すなわち、被膜3の表面に沿った被膜3の断面)における、長径0.5μm以上の気泡の面積割合である。この面積割合は、例えば塗膜における20μmの表面積を有する面における長径0.5μm以上の気泡の面積に基づいて導出される。気泡の割合は、後述する被膜及び被膜を備える被覆プリント配線板の製造方法において、露光時の第一の部分21の露光量及び第二の部分22の露光量を適宜調整することで、制御され得る。
【0118】
被膜3に第一の領域31及び第二の領域32を形成することで、被膜3に視認性の高いマーキングを容易に形成することができる。例えば第一の領域31が適宜の図形、文字等の形状に形成されることで、第一の領域31によるマーキングが形成され得る。あるいは、第二の領域32が適宜の図形、文字等の形状に形成されることで、第二の領域32によるマーキングが形成され得る。このため、被膜3の形成と同時に、マーキングを施すことができる。好ましくは、光透過率の高い領域である第二の領域32にマーキングが形成され得る。
【0119】
被膜3の厚みは、例えば5〜100μmの範囲内である。具体的には、被膜3の厚みは、例えば銅製の配線を備えたプリント配線板の銅線上において5〜60μmの範囲内であってよい。このように被膜3の厚みは、従来の二層の被膜よりも被膜全体の厚みを薄くすることができるので、例えば、被覆プリント配線板1を作製する際、露光(UV光)が被膜3の表層から深部まで十分に届きやすく、プリント配線板1と被膜3との密着性を向上させることができる。また、この厚み範囲において、第一の領域31の外観色と第二の領域32の外観色との相違が明確に視認可能である。
【0120】
第一の領域31は、光透過性が低く、被膜自身の色になりやすく、また、可視領域の波長の光の反射が大きくなるため、第二の領域32よりも明るい緑色になり得る。一方、第二の領域32は、光透過性が高く、また、可視領域の波長の光の反射が小さいため、暗い緑色になり得る。また、第二の領域32は、下地の色が混合されるため、下地が暗い色の場合、さらに暗い緑色になるか又は黒に近くなる。このように明るい緑色と暗い緑色又は黒色とのコントラストが付くことによって、視認性が高まる。
【0121】
被膜3においては、第一の領域31の面積が第二の領域32の面積よりも大きいことが好ましく、例えば、第一の領域31の面積が第二の領域32の面積の2倍以上、さらには5倍以上であってもよい。第一の領域31が緑色になることで、全体として緑色の被膜3が形成され得る。
【0122】
第一の領域31の光透過率は、例えば、0〜1%の範囲内であってよい。第二の領域32の光透過率は、例えば、1.000001〜10%の範囲内であってよい。第二の領域32の光透過率と第一の領域31の光透過率との差は、1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、2.5%以上であることがさらに好ましい。光透過率の差が多くなるほど、マーキングの視認性が向上する。なお、光透過率は、PETフィルム上に膜厚30μmの被膜を形成し、リファレンスとして被膜形成時と同様の処理をしたPETフィルム(被膜なし)を用い、可視領域である400nm〜800nmの領域において、0.5nm間隔で分光光度計にて光透過率を測定し、それぞれの波長の光透過率の平均値を求めることにより、算出される。
【0123】
緑色の色味の違いは色差によって表すことができる。ここでは、色差L値、a値、及びb値が色の指標として用いられる。L値は、明るさの指標であり、JIS 8781−4:2013に規定する CIE 1976 L色空間における明度指数「L」を指す。また、a値及びb値は、緑味の指標であり、JIS 8781−4:2013に規定する CIE 1976 L色空間におけるクロマネティクス指数「a」及び「b」を指す。
【0124】
以下の色差の説明において、色差の数値は下地の影響を受ける場合がある。下地は、例えば、絶縁層又は銅である。特に光透過性の高い第二の領域32は下地の影響を受けやすい。そのため、色差は、下地となる基材に依存した値であり得る。下記の好ましい色差の関係を満たすのは、下地が、黄色、黄緑色、白色、クリーム色、褐色、オレンジ色、緑色及び黒色の中から選ばれる少なくとも一つの色の場合であることが好ましく、2以上の色であることが好ましく、全部の色であることがさらに好ましい。なお、色差の測定は、通常、被膜3の裏側、すなわち被覆プリント配線板1の裏側から光が当たらない状態で行われる。
【0125】
第一の領域31は、L値が40以上、かつ、a値が−15以下であることが好ましい。L値は、値が大きいほど、白味が大きくなり、色の明るさが増す。そのため、色のコントラストが付きやすい。a値は、値が小さいほど、緑味が増す。そのため、緑色の被膜が得られやすい。第一の領域31のL値は、41以上がより好ましく、42以上がさらに好ましく、43以上がよりさらに好ましい。第一の領域31のa値は、−17以下がより好ましく、−20以下がさらに好ましい。第二の領域32のL値は、40未満であってよく、39未満がより好ましく、38未満がさらに好ましく、37未満がよりさらに好ましい。
【0126】
第一の領域31のL値をLとし、第二の領域32のL値をLとしたとき、二つの領域の光透過性の違いから、L>Lの関係が成り立ち得る。第二の領域32のL値(L)から第一の領域31のL値(L)を引いた値(ΔL=L−L)は、−5以下であることが好ましい。すなわち、L−Lで表される式の値が5以上であることが好ましい。L値の違いが大きくなるほど、コントラストが付きやすくなり、マーキングの視認性が高まる。前記ΔL(=L−L)は、−6以下であることがより好ましく、−7以下であることがさらに好ましく、−8以下であることがよりさらに好ましい。
【0127】
第一の領域31のa値をaとし、第二の領域32のa値をaとしたとき、二つの領域の光透過性の違いから、a<aの関係が成り立ち得る。第二の領域32のa値(a)から第一の領域31のa値(a)を引いた値(Δa=a−a)は、5以上であることが好ましい。a値の違いが大きくなるほど、緑味の違いが大きくなり、マーキングの視認性が高まる。前記Δaは、6以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましく、8以上であることがよりさらに好ましい。また、第二の領域32のa値が−25以上であることが好ましい。その場合、緑味の違いが大きくなりやすい。第二の領域32のa値は−20以上であることがより好ましい。
【0128】
値については、特に限定されるものではないが、緑色被膜を形成するためには、その値が大きくも小さくもなりすぎない方がよい。たとえば、第一の領域31のb値(b)は−15〜15の範囲内であることが好ましい。また、第二の領域32のb値(b)は−15〜15の範囲内であることが好ましく、−10〜10の範囲内であることがより好ましく、−8〜8の範囲内であることがさらに好ましい。なお、b値については、b値が高い方が、黄色味が増し、第一領域31が明るい緑色に見える場合がある。一方、b値については、視認性を向上させるためには、第二領域32を黒に近づける方が有利であり、b値は0に近い方が好ましい。この観点から、b値の絶対値は、b値の絶対値よりも値が大きくてもよい。
【0129】
<被膜及び被覆プリント配線板の製造方法>
図1〜3を参照して、本実施形態の被膜及び被覆プリント配線板の製造方法を説明する。
【0130】
本実施形態の被膜の製造方法は、
〈a〉上記のソルダーレジスト組成物から塗膜2を形成する工程と、
〈b〉塗膜2を露光する工程と、
〈c〉露光後の塗膜2を加熱することで緑色の被膜3を形成する工程と、を含む。
【0131】
前記〈b〉の工程では、塗膜2における第一の部分21に光を照射し、塗膜2における第一の部分21とは異なる第二の部分22には光を照射せず、あるいは第一の部分21よりも露光量が低くなるように光を照射する。
【0132】
前記〈c〉の工程の加熱により、被膜3に、第一の部分21から第一の領域31を形成し、第二の部分22から前記第一の領域31よりも光透過率が高い第二の領域32を形成する。
【0133】
上記の被膜の製造方法は、〈b〉の工程の後、〈c〉の工程の前に、塗膜2を現像液で現像する工程を含まなくてもよく、塗膜2を現像液で現像する工程を含んでもよい。
【0134】
本実施形態の被覆プリント配線板の製造方法は、
被覆プリント配線板10を製造する方法であって、
〈d〉上記のソルダーレジスト組成物を、プリント配線板1上に絶縁層及び配線を覆うように配置することで、塗膜2を形成する工程と、
〈e〉塗膜2を露光する工程と、
〈f〉露光後の塗膜2をアルカリ性現像液で現像する工程と、
〈g〉現像後の塗膜2を加熱することで緑色の被膜3を形成する工程と、を含む。
【0135】
前記〈e〉の工程では、塗膜2における第一の部分21に光を照射し、塗膜2における第一の部分21とは異なる第二の部分22には第一の部分21よりも露光量が低くなるように光を照射する。
【0136】
前記〈g〉の工程の加熱により、被膜3に、第一の部分21から第一の領域31を形成し、第二の部分22から第一の領域31よりも光透過率が高い第二の領域32を形成する。
【0137】
以下、各工程を説明する。
【0138】
[工程〈a〉,〈d〉]
工程〈a〉,〈d〉では、図1に示すように、プリント配線板1上に、本実施形態のソルダーレジスト組成物からなる塗膜2を形成する。この際、工程〈d〉では、本実施形態のソルダーレジスト組成物を、プリント配線板上に絶縁層及び配線を覆うように配置することで、塗膜2を形成する。塗膜2は未硬化の状態であってよい。ソルダーレジスト組成物の塗膜2は、例えば、塗布法、又はドライフィルム法で形成され得る。
【0139】
塗布法で塗膜2を形成する場合、液状のソルダーレジスト組成物をプリント配線板1上に塗布することで、ソルダーレジスト組成物からなる塗膜2を形成することができる。
【0140】
ソルダーレジスト組成物の塗布方法は、公知の方法が採用され得る。例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される方法で、塗布が行われる。
【0141】
塗布法では塗膜2に揮発成分(有機溶剤など)が含まれる場合がある。そのため、必要に応じて、ソルダーレジスト組成物中の有機溶剤を揮発させるために、塗膜2を加熱してもよい(予備乾燥)。塗膜2が加熱されることによって、乾燥された塗膜2が形成される。この場合の加熱温度は、ソルダーレジスト組成物中の結晶性エポキシ化合物(D)の融点よりも低い温度であることが好ましく、特にソルダーレジスト組成物中の結晶性エポキシ化合物(D)の融点から30℃減じた温度よりも低い温度であることが好ましい。この加熱温度は、例えば60〜100℃の範囲内である。低い温度で加熱することで、結晶性エポキシ化合物(D)は、固体粒子の状態を維持することができる。また、結晶性エポキシ化合物(D)の融点以上の温度で加熱してもよい。ただし、その場合、結晶性エポキシ化合物(D)による作用が損なわれないよう、融点以上である温度での加熱時間が10分未満であることが好ましく、8分以内であることがさらに好ましく、5分以内であることが特に好ましい。
【0142】
ドライフィルム法で塗膜2を形成する場合、支持体の上に形成されたソルダーレジスト組成物からなるドライフィルムをプリント配線板1に移動させることで、ソルダーレジスト組成物からなる塗膜2を形成することができる。
【0143】
ドライフィルム法では、予め適宜の支持体上にソルダーレジスト組成物を塗布してから乾燥することでドライフィルムを形成する。ドライフィルムは、ソルダーレジスト組成物からなる。ドライフィルムは未硬化の状態であってよい。乾燥条件は、ソルダーレジスト組成物中の結晶性エポキシ化合物(D)の融点よりも低い温度であることが好ましく、特にソルダーレジスト組成物中の結晶性エポキシ化合物(D)の融点から30℃減じた温度よりも低い温度であることが好ましい。この加熱温度は、例えば60〜100℃の範囲内である。低い温度で加熱することで、結晶性エポキシ化合物(D)は、固体粒子の状態を維持することができる。また、結晶性エポキシ化合物(D)の融点以上の温度で加熱してもよい。ただし、その場合、結晶性エポキシ化合物(D)による作用が損なわれないよう、融点以上である温度での加熱時間が10分未満であることが好ましく、8分以内であることがさらに好ましく、5分以内であることが特に好ましい。このドライフィルムをプリント配線板1に重ねてから、ドライフィルムとプリント配線板1に圧力をかけることで、プリント配線板1上にドライフィルムを転着させることができる。このドライフィルムが塗膜2となる。支持体は、ドライフィルムの転着後に除去され得る。これにより、図1に示す状態となる。
【0144】
[工程〈b〉,〈e〉]
工程〈b〉,〈e〉では、図2に示すように、塗膜2にマスク4を介して光を照射することで、塗膜2を露光する。これにより、塗膜2の表層から深部にわたって効率良く光硬化反応が進む。特に、塗膜2は単層であるので、従来の二層の被膜よりも全体の膜厚が薄く、また、表層から深部にかけて境界面がなく、ほぼ同じ組成成分であるため、塗膜2は表層から深部に亘って充分に硬化される。
【0145】
この際、塗膜2における第一の部分21に光を照射し、塗膜2における第一の部分21とは異なる第二の部分22には第一の部分21よりも露光量が低くなるように光を照射する。また、塗膜2における第一の部分21及び第二の部分22とは異なる第三の部分23には光を照射しない。このように光を照射すると、塗膜2における第一の部分21では光重合性化合物の光重合反応が進行する。一方、第二の部分22では、第一の部分21よりも程度が低いものの、光重合性化合物の光重合反応が進行する。第三の部分23では、光重合性化合物の光重合反応が進行しない。
【0146】
第一の部分21における露光量は均一であってもよく、第一の部分21内に互いに露光量の異なる複数の部分が存在してもよい。また、第二の部分22に光を照射する場合、第二の部分22における露光量は均一であってもよく、第二の部分22内に互いに露光量の異なる複数の部分が存在してもよい。
【0147】
露光のための光は、この光の照射を受けてソルダーレジスト組成物中の光重合性化合物の光重合反応が進行するように、選択される。例えば露光のための光として、紫外線、可視光、又は近赤外線が選択される。紫外線が選択される場合、紫外線源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうち二種以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0148】
マスク4は、互いに光透過性の程度が異なる三種類の部分を備える。例えばマスク4は、光透過性を有する部分(以下、透過性部41という)と、透過性部41よりも低い光透過性を有する部分(以下、低透過性部42という)と、光透過性を有しない部分(以下、非透過性部43という)とを備える。
【0149】
このマスク4を介して塗膜2が露光されると、塗膜2における透過性部41に対応する部分(第一の部分21)には光が照射され、塗膜2における低透過性部42に対応する部分(第二の部分22)には、第一の部分21よりも低い露光量で光が照射され、塗膜2における非透過性部43に対応する部分(第三の部分23)には、光が照射されない。なお、第一の部分21は露光時に光が照射される部分であり、第二の部分22は露光時に光が第一の部分21よりも低い露光量で光が照射される部分であり、第三の部分23は露光時に光が照射されない部分であると、いうこともできる。マスク4は、第一の部分21、第二の部分22及び第三の部分23が、塗膜2における所定の箇所に位置するように、設計される。
【0150】
第一の部分21の露光量に対する、第二の部分22の露光量の割合は、例えば1〜75%の範囲内であり、特に1.2〜60%の範囲内であることが好ましい。第一の部分21の露光量は、例えば100〜5000mJ/cmの範囲内であり、第二の部分22の露光量は、例えば20〜500mJ/cmの範囲内である。
【0151】
なお、本実施形態ではマスク4を用いたが、第一の部分21、第二の部分22及び第三の部分23における露光量が所望の値にコントロール可能であれば、上記のようなマスク4が用いられなくてもよい。例えば、まず塗膜2に、第三の部分23を遮蔽すると共に第一の部分21及び第二の部分22を遮蔽しないマスク(第一のマスク)を介して、光を照射し、続いて第一のマスクに、第二の部分22を遮蔽すると共に第一の部分21は遮蔽しないマスク(第二のマスク)を重ね、この第一のマスクと第二のマスクを介して、更に光を照射してもよい。この場合でも、第一の部分21には光が照射され、第二の部分22には、第一の部分21よりも低い露光量で光が照射され、第三の部分23には、光が照射されない。
【0152】
また、露光方法として、マスク(ネガマスク)を用いる方法以外の方法が採用されてもよい。例えば光源から発せられる紫外線を塗膜2上の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で塗膜を露光してもよい。この際、塗膜2における第一の部分21に光を照射し、塗膜2における第一の部分21とは異なる第二の部分22には第一の部分21よりも露光量が低くなるように光を照射する。また、塗膜2における第一の部分21及び第二の部分22とは異なる第三の部分23には光を照射しない。このように光を照射すると、塗膜2における第一の部分21では光重合性化合物の光重合反応が進行する。一方、第二の部分22では、第一の部分21よりも程度が低いものの、光重合性化合物の光重合反応が進行する。第三の部分23では、光重合性化合物の光重合反応が進行しない。なお、直接描画法の光源は、上述したものと同様であってよい。
【0153】
プリント配線板1上に、ソルダーレジスト組成物からなる塗膜2を形成した時点から、塗膜2の露光が完了する時点までの間、塗膜2の温度を、結晶性エポキシ化合物(D)の融点よりも低い温度に維持することが好ましい。それにより、第一の領域31の光透過性が低くなりやすい。このため第一の領域31と第二の領域32との間の外観色の相違が、より顕著になる。これは、加熱により結晶性エポキシ化合物(D)を溶融させるよりも前に、第一の部分21内の光重合性化合物の重合を進行させることで、第一の部分21内で結晶性エポキシ化合物(D)の周囲に重合体の架橋構造を形成することができ、このため塗膜2の露光後に第一の部分21を加熱しても、第一の部分21が変化しにくくなるためであると、推察される。更に好ましくは、ソルダーレジスト組成物をプリント配線板1上に配置する時点から、塗膜2の露光が完了する時点までの間、塗膜2の温度を、結晶性エポキシ化合物(D)の融点から30℃減じた温度よりも低い温度に維持する。
【0154】
[工程〈f〉]
工程〈f〉では、露光後の塗膜2をアルカリ性現像液で現像する。これにより、塗膜2における非透過性部43に対応する部分である塗膜2の第三の部分23が、プリント配線板1上から除去される。非透過性部43は、重合が進行していないからである。塗膜2の第一の部分21及び第二の部分22は、プリント配線板1上に残存する。
【0155】
アルカリ性現像液の具体例として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、及び水酸化リチウム水溶液が挙げられる。現像液として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミンを使用することもできる。ただし、環境の観点からは、アミン系溶媒は使用しない方が好ましい。アルカリ性現像液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。
【0156】
[工程〈c〉,〈g〉]
工程〈c〉,〈g〉では、プリント配線板1上の露光後の塗膜2を加熱することで被膜3を形成する。このように塗膜2が加熱されると、図3に示すように、第一の部分21から第一の領域31が形成され、また同時に、第二の部分22からは第二の領域32が形成される。加熱により熱硬化が進行し得る。
【0157】
本実施形態のソルダーレジスト組成物は、結晶性エポキシ化合物(D)が固体状態で分散しているため、第一の部分21の光透過性が低くなりやすい。一方、第二の部分22は、加熱されることで光透過性が高くなる。このため、被膜3における第一の領域31の光透過性が、第二の領域32よりも低くなる。また、ソルダーレジスト組成物がエポキシ化合物を含有する場合は、塗膜2を加熱すると、エポキシ化合物の熱硬化反応が進行し得る。
【0158】
このように光透過率の異なる第一の領域31と第二の領域32とが形成されるのは、次の理由によるためと推察される。
【0159】
露光後の塗膜2は、露光時に光が照射されているため、光重合性化合物の光重合反応により生成した重合体を含んでいる。ただし、第1の部分21は、第2の部分22よりも光重合反応が進んでおり、重合体の割合が多い。この状態で塗膜2を加熱すると、塗膜2内の結晶性エポキシ化合物(D)が溶融することで、塗膜2が変形しようとする。このとき、第一の部分21は、重合体を多く含有するため、結晶性エポキシ化合物(D)の溶融に追随して変形しにくい。このために、第一の部分21が変形せずに、歪が生じるなどして光透過率が低くなるものと、考えられる。第一の部分21の歪は、たとえば、気泡となって表れる。一方、第二の部分22は、重合反応の進行度が小さく、重合体を含まないか、あるいはこの重合体の割合が第一の部分よりも低い。このため、塗膜2を加熱すると、第二の部分22は、第一の部分21と比べて、結晶性エポキシ化合物(D)の溶融に追随して変形しやすい。このために、第二の部分22が変形し、第一の部分21よりも歪が生じにくくなり、光透過率が第一の部分21よりも高くなるものと考えられる。第二の部分22が第一の部分21よりも歪が小さくなると、たとえば、気泡の割合が少なくなる。
【0160】
塗膜2の加熱温度は、好ましくはTh≧Tm−30の関係を満たし、より好ましくはTm+200≧Th≧Tm−30の関係を満たす。この式において、Th(℃)は塗膜2の加熱温度であり、Tm(℃)は、結晶性エポキシ化合物(D)の融点である。塗膜2の加熱温度が上記範囲内であれば、ソルダーレジスト組成物中の成分の熱による劣化を抑制することができる。加熱温度は、例えば100〜300℃の範囲内である。また加熱時間は10分〜5時間の範囲内である。
【0161】
なお、塗膜2を加熱する際の加熱温度が、結晶性エポキシ化合物(D)の融点よりも低くても、結晶性エポキシ化合物(D)の融点から30℃を減じた温度以上であれば、第一の領域31の光透過率よりも第二の領域32の光透過率が高くなり得る。その理由は明確には解明されていないが、塗膜2内では結晶性エポキシ化合物(D)に別の化合物が混入することで、結晶性エポキシ化合物(D)の融点降下(凝固点降下)が生じるのが、理由の一つであると推察される。もちろん、加熱温度は、結晶性エポキシ化合物(D)の融点より高くてもよい。
【0162】
塗膜2の加熱後に、塗膜2全体に光を照射してもよい。この場合、塗膜2内に未反応のまま残存する光重合性化合物の光重合反応が進行する。
【0163】
以上の工程により、図3に示す被覆プリント配線板10が得られる。
【実施例】
【0164】
[カルボキシル基含有樹脂溶液の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルホスフィン1.5質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を加熱温度110℃、加熱時間10時間の条件で加熱することで、付加反応を進行させた。続いて、混合物にテトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を加えてから、更に混合物を加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A)を得た。
【0165】
[原料]
カルボキシル基含有樹脂溶液A以外に、次の原料を用意した。
・光重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製の品名KAYARAD DPHA)。
・光重合開始剤A:BASF社製の品名Irgacure TPO。
・光重合開始剤B:BASF社製の品名Irgacure 184。
・結晶性エポキシ化合物A:1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(高融点タイプ)、結晶性エポキシ樹脂、融点150〜158℃。
・結晶性エポキシ化合物B:ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312、融点138〜145℃。
・結晶性エポキシ化合物C:ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製の品番YX−4000、融点105℃。
・結晶性エポキシ化合物D:ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80XY、融点75〜85℃。
・非晶性エポキシ化合物溶液:非晶性のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製の品名EPICLON N−695を固形分70%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解した溶液。
・青色着色剤A:フタロシアニンブルー、Pigment Blue 15:3。
・青色着色剤B:塩素化銅フタロシアニン(ハロゲン含有量:6%)、Pigment Blue 15:1。
・黄色着色剤A:1,1’−[(6−フェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ビス(イミノ)]ビス(9,10−アントラセンジオン)、Pigment Yellow 147。
・黄色着色剤B:Nickel,5,5’−azobis−2,4,6(1H,3H,5H)−pyrimidinetrione complexes、Pigment Yellow 150。
・黒色着色剤:ペリレン系黒色顔料、BASF社製の品名Paliogen Black S 0084、Pigment Black 31。
・赤色着色剤:アントラキノン系赤色顔料、BASF社製の品名Paliogen Red L 4045、Pigment Red 177。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製の品名バリエースB30。
・微粉シリカ:株式会社トクヤマ製の品名レオロシールMT−10C。
・メラミン:日産化学工業株式会社製の品名メラミンHM。
・消泡剤:信越化学工業株式会社製の品名KS−66。
・溶剤A:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
・溶剤B:メチルエチルケトン。
【0166】
[ソルダーレジスト組成物及び被膜の製造]
表1〜3に示す原料を混合し、三本ロールにより分散させて、ソルダーレジスト組成物を調製した。なお、結晶性エポキシ化合物A〜Dは、予めジェットミルにより、平均粒径が20μm以下となるように粉砕して固体粒子の状態にし、その後混合した。
【0167】
ここで、実施例1〜19、比較例1〜3及び5〜7においては、結晶性エポキシ化合物を固体粒子の状態で分散させてソルダーレジスト組成物を調製した。また、比較例4においては、一部の成分を三本ロールにより分散した後、その他の成分を追加して、全部の成分をフラスコ内で撹拌混合することにより、結晶性エポキシ化合物Bを溶解させて、ソルダーレジスト組成物を調製した。なお、比較例7については、2剤構成とし、比較例7Uの第1混合物(表3の比較例7の“U”を指す)と、比較例7Tの第2混合物(表3の比較例7の“T”を指す)と、を調製した。
【0168】
実施例1〜19、比較例1〜6においては、次のように塗膜を形成した。厚み35μmの銅製の配線を備えた、下記の6種類のプリント配線板を用意し、上記のソルダーレジスト組成物を塗布することで、絶縁層と、絶縁層上にある銅製の配線を覆う1層の塗膜を形成した。塗布は、実施例1〜19、比較例1〜3、5、6については、スクリーン印刷法で行い、比較例4については、スピンコート法で行った。
・絶縁層表面の色が黄色であるプリント配線板(ガラスエポキシ基板)。
・絶縁層表面の色が黄緑色であるプリント配線板(ガラスエポキシ基板)。
・絶縁層表面の色が白色(クリーム色)であるプリント配線板(ガラスコンポジット基板)。
・絶縁層表面の色が明るい褐色であるプリント配線板(紙フェノール基板)。
・絶縁層表面の色がオレンジ色であるプリント配線板(ポリイミド基板)。
・絶縁層表面の色が黒色であるプリント配線板(黒化処理ガラスエポキシ基板)。
【0169】
また、比較例7においては、次のように塗膜を形成した。上記6種類のプリント配線板を用意し、このプリント配線板上に、第1混合物(表3の比較例7Uの混合物;黒色のネガ型フォトソルダーレジストインク)を塗布し、80℃で15分間加熱した。この加熱後の銅製の配線上でのフォトソルダーレジストインクの塗膜の厚みは15μmであった。このフォトソルダーレジストインクの塗膜の上に、第2混合物(表3の比較例7Tの混合物)をスクリーン印刷法で塗布した。これにより、2層の塗膜を形成した。
【0170】
上記で得られた各塗膜について、次のように塗膜を硬化させた。まず、塗膜を80℃で30分間、予備加熱した。続いて、光透過性を有する透過性部と、透過性部よりも低い光透過性を有する低透過性部と、光透過性を有さない非透過性部と、を備えるマスクを介して、塗膜に紫外線を照射することで、塗膜を露光した。塗膜における透過性部を透過する光が照射される部分(第一の領域)における露光量は500mJ/cmであり、低透過性部を透過する光が照射される部分(第二の領域)における露光量は80mJ/cmであった。次に、露光後の塗膜に、1%NaCO水溶液を0.2MPaの圧力で60秒間スプレー噴射することで、現像した。最後に、塗膜を180℃で1時間加熱した。これにより、実施例1〜19、比較例1〜6においては、銅製の配線上の厚みが25μmである被膜を形成した。また、比較例7においては、銅製の配線上の厚みが40μmである被膜を形成した。以上により、被覆プリント配線板のテストピースを得た。
【0171】
以下に示す、ダム残り、密着性、耐酸性、耐アルカリ性、耐メッキ性、はんだ耐熱性、鉛筆硬度、及び耐電蝕性の評価項目においては、絶縁層表面の色が黄色であるプリント配線板(ガラスエポキシ基板)上に形成した被膜を用いて、評価を行った。
【0172】
[評価]
1.ダム残り
500mJ/cmの照射量で露光される箇所と露光されない箇所を有し、幅40μm、50μm、60μm、及び70μmのソルダーダムが形成されるようなマスクを用い、絶縁層上にソルダーレジスト組成物からダムを形成した。形成したダム(ソルダーダム)に対して、セロハン粘着テープを貼り付けた後、これを剥離する剥離試験(テープテスト)を行った。この剥離試験の結果、残存したソルダーダムのうち、最も線幅の細いもの(ダム残り)を測定して、下記のように判定した。
A:最も細いソルダーダムの線幅が、40μmであるもの。
B:最も細いソルダーダムの線幅が、50μm、60μmであるもの。
C:最も細いソルダーダムの線幅が、70μm、あるいは70μmのソルダーダムが剥離したもの。
【0173】
2.密着性
JIS D0202の試験方法に従って、テストピースの銅製の配線上における被膜に碁盤目状に100マスのクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリング試験後の剥がれの状態を目視により観察した。その結果を次の評価基準により評価した。
A:クロスカット残存率が81〜100%。
B:クロスカット残存率が71〜80%。
C:クロスカット残存率が70%以下。
【0174】
3.耐酸性
室温下でテストピースを10%の硫酸に30分間浸漬した後、被膜の外観を目視で観察した。その結果を、次の評価基準により評価した。
A:異常が認められない。
B:少し変化が認められる。
C:被膜の剥離等の大きな変化が認められる。
【0175】
4.耐アルカリ性
室温下でテストピースを10%の水酸化ナトリウムに1時間浸漬した後、被膜の外観を目視で観察した。その結果を、次の評価基準により評価した。
A:異常が認められない。
B:少し変化が認められる。
C:被膜の剥離等の大きな変化が認められる。
【0176】
5.耐メッキ性
市販品の無電解ニッケルメッキ浴及び無電解金メッキ浴を用いて、テストピースにめっきを施した。メッキの状態を観察した。更に、メッキ後の被膜に対してセロハン粘着テープ剥離試験をおこなった。その結果を次の評価基準により評価した。
A:被膜に、メッキによる外観変化、テープ剥離試験による剥離、メッキの潜り込みの、いずれも認められない。
B:被膜にメッキによる外観変化は認められないが、テープ剥離試験による剥離が一部認められる。
C:被膜にメッキによる浮き上がりが認められ、テープ剥離試験による剥離も認められる。
【0177】
6.はんだ耐熱性
テストピースに水溶性フラックス(ロンドンケミカル社製、品番LONCO 3355−11)を塗布し、続いてこのテストピースを260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬し、続いてこれを水洗した。この一連の操作を3回繰り返した後のテストピースにおける被膜の外観を観察し、次の評価基準により評価した。
A:異常が認められない
B:少し変化が認められる。
C:被膜の剥離等の大きな変化が認められる。
【0178】
7.鉛筆硬度
テストピースにおける被膜の鉛筆硬度を、三菱ハイユニ(三菱鉛筆社製)を用いて、JIS K5400に準拠して測定して評価した。
【0179】
8.耐電蝕性
IPC B−25くし型電極Bクーポン上に、上記テストピースの場合と同じ条件でソルダーレジスト組成物から被膜を形成することで、評価用のプリント配線板を得た。この評価用のプリント配線板のくし型電極にDC100Vのバイアス電圧を引加しながら、評価用のプリント配線板を40℃、90%R.H.の条件下に500時間曝露した。この試験後の評価用のプリント配線板におけるマイグレーションの有無を確認した。その結果を次に示すように評価した。
A:全くマイグレーションが確認されない。
B:若干のマイグレーションが確認される。
C:マイグレーションが発生している。
【0180】
9.明るさ(L値による評価)
色差計により、各実施例及び比較例で形成された被膜について、第一の領域のL値(L)と、第二の領域のL値(L)と、それらL値の差(ΔL=L−L)とを測定し、その結果を次に示すように評価した。L値(明るさ)とは、JIS 8781−4:2013に規定する CIE 1976 L色空間における明度指数「L」を指す。
A:第二の領域のL値が38未満、かつ、ΔLが−7以下。
B:第二の領域のL値が40未満、かつ、ΔLが−5以下、ただし上記「A」の条件を満たさない。
C:第二の領域のL値が40以上、あるいは、ΔLが−5より大きい。
【0181】
10.緑味(a値及びb値による評価)
色差計により、各実施例及び比較例で形成された被膜について、第一の領域のa値(a)と、第二の領域のa値(a)と、それらa値の差(Δa=a−a)と、第一の領域のb値(b)と、第二の領域のb値(b)と、を測定し、その結果を次に示すように評価した。a値及びb値(緑味)とは、JIS 8781−4:2013に規定する CIE 1976 L色空間におけるクロマネティクス指数「a」及び「b」を指す。
A:第二の領域のa値が−20以上、かつ、Δaが7以上、かつ、bが−15〜15の範囲内、かつ、bが−8〜8の範囲内。
B:第二の領域のa値が−25以上、かつ、Δaが5以上、かつ、bが−15〜15の範囲内、かつ、bが−15〜15の範囲内、ただし上記「A」の条件を満たさない。
C:上記「A」及び「B」の条件を満たさない。
【0182】
11.視認性(外観色)
各実施例及び比較例で形成された被膜の外観を目視で観察し、第一の領域と第二の領域とが、明瞭に区別可能か否かを確認した。その結果、明瞭に区別可能の場合を「A」、区別可能の場合を「B」、境界が不明瞭であるが区別可能の場合を「C」と、区別不能の場合を「D」と、評価した。
【0183】
[結果]
表1〜3に、以上の評価の結果を示す。表1〜3から、実施例1〜19のソルダーレジスト組成物は、比較例1〜7の組成物よりも、評価が良好で、視認性に優れた緑色の被膜を形成できることが確認された。
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【0186】
【表3】
【0187】
[光透過率]
上記の実施例の被膜において、第一の領域と第二の領域との光透過率が異なることは、目視により明らかであるが、参考のため、実施例5において、光透過率の相違を数値的に確認した。
【0188】
まず、PETフィルム上に、上記と同様にして、実施例5の組成物から膜厚30μmの被膜を形成した。ポストキュア(加熱)の条件は、150℃で1時間、又は180℃で1時間、とした。なお、第一の領域の露光量は500mJ/cmであり、第二の領域の露光量は80mJ/cmである。また、リファレンスとして、PETフィルムに被膜形成時と同様の処理を施して、被膜のないPETフィルムを得た。これらについて、可視領域である400nm〜800nmの領域において、0.5nm間隔で分光光度計にて光透過率を測定し、それぞれの波長の光透過率の平均値を求めた。以上により、光透過率を算出した。
【0189】
その結果、実施例5の被膜では、
ポストキュア(加熱)の条件が150℃で1時間では、
第一の領域の光透過率:0.121316%、
第二の領域の光透過率:3.032438%、
ポストキュア(加熱)の条件が180℃で1時間では、
第一の領域の光透過率:0.000665%、
第二の領域の光透過率:2.992107%、
であった。これにより、光透過率の違いが数値で確認された。
【0190】
[好適な色差値の確認]
実施例3、5及び6について、第一の領域及び第二の領域における、銅層上の被膜の色差値から、好適な色差値を確認した。なお、第一の領域は緑色を呈し、第二の領域は黒色を呈した。表4に、結果を示す。
【0191】
表4に示すように、実施例3、5及び6においては、第一の領域は、L値が40以上で、かつ、a値が−15以下であり、第二の領域は、L値が40未満であり、かつ、a値が−25以上である。また、第二の領域と第一の領域とのL値の差(ΔL=L−L)は、−5以下である。また、第二の領域と第一の領域とのa値の差(Δa=a−a)は、5以上である。実施例3、5及び6は、いずれも、第一の領域と第二の領域との境界が区別可能である。特に、実施例5及び6においては、第二の領域のL値が38未満で、かつ、ΔLが−7以下であり、さらに、第二の領域のa値が−20以上、かつ、Δaが7以上、かつ、bが−15〜15の範囲内、かつ、bが−8〜8の範囲内であり、第一の領域と第二の領域との境界が明瞭であり、これらの領域の色の違いがはっきりしている。よって、好適な色差の関係が確認された。
【0192】
【表4】
【符号の説明】
【0193】
1 プリント配線板
2 塗膜
3 被膜
10 被覆プリント配線板
21 第一の部分
22 第二の部分
31 第一の領域
32 第二の領域
図1
図2
図3