特許第6799778号(P6799778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799778
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】車両用操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20201207BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20201207BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20201207BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20201207BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D101:00
   B62D113:00
   B62D119:00
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-198167(P2016-198167)
(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公開番号】特開2018-58512(P2018-58512A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】應矢 敏明
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−230427(JP,A)
【文献】 特開2006−151074(JP,A)
【文献】 特開2009−001044(JP,A)
【文献】 特開2007−307972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00−6/10
B62D 5/00−5/32
B62D 7/00−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左転舵輪および右転舵輪を個別に転舵するための左転舵機構および右転舵機構を含み、操向のために操作される操舵部材と前記左転舵機構および右転舵機構とが機械的に結合されておらず、前記左転舵機構が左転舵モータによって駆動され、前記右転舵機構が右転舵モータによって駆動される車両用操舵装置であって、
前記左転舵輪の転舵角の目標値である左目標転舵角および前記右転舵輪の転舵角の目標値である右目標転舵角を設定する上位制御装置と、前記左転舵モータを駆動制御する左転舵制御装置と、前記右転舵モータを駆動制御する右転舵制御装置とを含み、
前記左転舵制御装置は、前記左転舵輪の転舵角が、前記上位制御装置から受信した前記左目標転舵角と等しくなるように前記左転舵モータを制御する第1制御モードと、前記左転舵輪の転舵角が中立位置に対応する角度となるように、前記左転舵モータをトルクフィードバック制御する第2制御モードとを切り替える第1モード切替手段を含んでおり、
前記第1モード切替手段は、通常時は、制御モードを前記第1制御モードに設定し、前記上位制御装置と前記左転舵制御装置との間に通信異常が発生したときには、制御モードを前記第2制御モードに切り替える手段を含んでおり、
前記右転舵制御装置は、前記右転舵輪の転舵角が、前記上位制御装置から受信した前記右目標転舵角と等しくなるように前記右転舵モータを制御する第3制御モードと、前記右転舵輪の転舵角が中立位置に対応する角度となるように、前記右転舵モータをトルクフィードバック制御する第4制御モードとを切り替える第2モード切替手段を含んでおり、
前記第2モード切替手段は、通常時は、制御モードを前記第3制御モードに設定し、前記上位制御装置と前記右転舵制御装置との間に通信異常が発生したときには、制御モードを前記第4制御モードに切り替える手段を含んでいる、車両用操舵装置。
【請求項2】
前記左転舵輪の転舵角である左転舵角を検出するための左転舵角検出手段と、
前記右転舵輪の転舵角である右転舵角を検出するための右転舵角検出手段とを含み、
前記第1モード切替手段は、制御モードが前記第2制御モードに設定されているときに、前記上位制御装置と前記左転舵制御装置との間の通信が復帰した場合には、前記上位制御装置から受信した左目標転舵角と、前記左転舵角検出手段によって検出される左転舵角との差の絶対値が第1所定値未満になったときに、制御モードを前記第1制御モードに切り替える手段を含んでおり、
前記第2モード切替手段は、制御モードが前記第4制御モードに設定されているときに、前記上位制御装置と前記右転舵制御装置との間の通信が復帰した場合には、前記上位制御装置から受信した右目標転舵角と、前記右転舵角検出手段によって検出される右転舵角との差の絶対値が第2所定値未満になったときに、制御モードを前記第3制御モードに切り替える手段を含んでいる、請求項1に記載の車両用操舵装置。
【請求項3】
前記左転舵制御装置は、制御モードが前記第1制御モードに設定されており、かつ前記右転舵制御装置側の制御モードが前記第4制御モードに設定されているときには、見かけ上のオーバーオールギヤ比を増加させる手段を含み、
前記右転舵制御装置は、制御モードが前記第3制御モードに設定されており、かつ前記左転舵制御装置側の制御モードが前記第2制御モードに設定されているときには、見かけ上のオーバーオールギヤ比を増加させる手段を含む、請求項1または2に記載の車両用操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、左右の転舵輪を個別に転舵するための左右の転舵機構を含み、操向のために操作される操舵部材と左右の転舵機構とが機械的に結合されておらず、左右の転舵機構が左右の転舵モータによって個別に駆動される車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転に代表される高度運転支援機能を成立させるとともに、エンジンルームのレイアウトの自由度向上を目的とした、中間シャフトを使用しないステア・バイ・ワイヤシステムの有効性が評価され始めている。そして、エンジンルームのレイアウトの更なる自由度向上を図るために、下記特許文献1,2に示すように、ラックアンドピニオン機構等を含むステアリングギヤ装置を使用せず、左右の転舵輪を個別の転舵モータで制御する左右独立転舵システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−174160号公報
【特許文献2】特開2015−20586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
左右独立転舵システムが採用されたステア・バイ・ワイヤシステムにおいて、左右の転舵輪の目標転舵角を演算する上位制御装置と、左転舵モータを制御するための下位制御装置としての左転舵制御装置と、右転舵モータを制御するための下位制御装置としての右転舵制御装置とを備えた制御システムによって転舵制御を行うことが考えられる。左転舵制御装置は、上位制御装置から受信した左転舵輪の目標転舵角に基づいて左転舵モータを制御し、右転舵制御装置は、上位制御装置から受信した右転舵輪の目標転舵角に基づいて右転舵モータを制御する。
【0005】
このような制御システムでは、通信異常によって、左転舵制御装置および右転舵制御装置のうちのいずれか一方に、上位制御装置から目標転舵角が一時的に送られなくことがある。そうすると、左転舵制御装置および右転舵制御装置のうち、目標転舵角が送られてこなくなった制御装置側の転舵輪は、当該制御装置によって最後に受信された目標転舵角に転舵角が固定されてしまう。このため、操向性能を維持できなくなるおそれがある。
【0006】
この発明の目的は、左転舵制御装置および右転舵制御装置のうちのいずれか一方と上位制御装置との間に通信異常が発生したとしても、操向性能を維持しながら車両を走行させることができるようになる車両用操舵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による車両用操舵装置は、左転舵輪(3L)および右転舵輪(3R)を個別に転舵するための左転舵機構(5L)および右転舵機構(5R)を含み、操向のために操作される操舵部材(2)と前記左転舵機構および右転舵機構とが機械的に結合されておらず、前記左転舵機構が左転舵モータ(4L)によって駆動され、前記右転舵機構が右転舵モータ(4R)によって駆動される車両用操舵装置(1)であって、前記左転舵輪の転舵角の目標値である左目標転舵角および前記右転舵輪の転舵角の目標値である右目標転舵角を設定する上位制御装置(20)と、前記左転舵モータを駆動制御する左転舵制御装置(22)と、前記右転舵モータを駆動制御する右転舵制御装置(23)とを含み、前記左転舵制御装置は、前記左転舵輪の転舵角が、前記上位制御装置から受信した前記左目標転舵角と等しくなるように前記左転舵モータを制御する第1制御モードと、前記左転舵輪の転舵角が中立位置に対応する角度となるように、前記左転舵モータをトルクフィードバック制御する第2制御モードとを切り替える第1モード切替手段(58L,59L)を含んでおり、前記第1モード切替手段は、通常時は、制御モードを前記第1制御モードに設定し、前記上位制御装置と前記左転舵制御装置との間に通信異常が発生したときには、制御モードを前記第2制御モードに切り替える手段を含んでおり、前記右転舵制御装置は、前記右転舵輪の転舵角が、前記上位制御装置から受信した前記右目標転舵角と等しくなるように前記右転舵モータを制御する第3制御モードと、前記右転舵輪の転舵角が中立位置に対応する角度となるように、前記右転舵モータをトルクフィードバック制御する第4制御モードとを切り替える第2モード切替手段(58R,59R)を含んでおり、前記第2モード切替手段は、通常時は、制御モードを前記第3制御モードに設定し、前記上位制御装置と前記右転舵制御装置との間に通信異常が発生したときには、制御モードを前記第4制御モードに切り替える手段を含んでいる、車両用操舵装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0008】
この構成では、左転舵モータが第1制御モードで制御され、右転舵モータ4Lが第3制御モードによって制御されている場合において、例えば、上位制御装置と左転舵制御装置との間に通信異常が発生すると、左転舵モータは第2制御モードによって制御されるようになる。これにより、左転舵モータは、左転舵角が中立位置に対応する角度となるようにトルクフィードバック制御される。一方、右転舵モータは、右転舵角が右目標転舵角に等しくなるように制御される。このため、車両は操向性能を維持しながら走行することが可能となる。
【0009】
同様に、左転舵モータが第1制御モードで制御され、右転舵モータ4Lが第3制御モードによって制御されている場合において、例えば、上位制御装置と右転舵制御装置との間に通信異常が発生すると、右転舵モータは第4制御モードによって制御されるようになる。これにより、右転舵モータは、右転舵角が中立位置に対応する角度となるようにトルクフィードバック制御される。一方、左転舵モータは、左転舵角が左目標転舵角に等しくなるように制御される。このため、車両は操向性能を維持しながら走行することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記左転舵輪の転舵角である左転舵角を検出するための左転舵角検出手段(10L)と、前記右転舵輪の転舵角である右転舵角を検出するための右転舵角検出手段(10R)とを含み、前記第1モード切替手段は、制御モードが前記第2制御モードに設定されているときに、前記上位制御装置と前記左転舵制御装置との間の通信が復帰した場合には、前記上位制御装置から受信した左目標転舵角と、前記左転舵角検出手段によって検出される左転舵角との差の絶対値が第1所定値未満になったときに、制御モードを前記第1制御モードに切り替える手段を含んでおり、前記第2モード切替手段は、制御モードが前記第4制御モードに設定されているときに、前記上位制御装置と前記右転舵制御装置との間の通信が復帰した場合には、前記上位制御装置から受信した右目標転舵角と、前記右転舵角検出手段によって検出される右転舵角との差の絶対値が第2所定値未満になったときに、制御モードを前記第3制御モードに切り替える手段を含んでいる、請求項1に記載の車両用操舵装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記左転舵制御装置は、制御モードが前記第1制御モードに設定されており、かつ前記右転舵制御装置側の制御モードが前記第4制御モードに設定されているときには、見かけ上のオーバーオールギヤ比を増加させる手段を含み、前記右転舵制御装置は、制御モードが前記第3制御モードに設定されており、かつ前記左転舵制御装置側の制御モードが前記第2制御モードに設定されているときには、見かけ上のオーバーオールギヤ比を増加させる手段を含む、請求項1または2に記載の車両用操舵装置である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の構成を説明するための図解図である。
図2図2は、反力ECUの電気的構成を示すブロック図である。
図3図3は、左転舵ECUの電気的構成を示すブロック図である。
図4A図4Aは、左転舵輪の転舵角δに対する目標トルクTの設定例を示すグラフである。
図4B図4Bは、左転舵輪の転舵角δに対する目標トルクTの設定例の他の例を示すグラフである。
図5図5は、右転舵ECUの電気的構成を示すブロック図である。
図6図6は、左転舵モータ制御部内の切替制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、右転舵モータ制御部内の切替制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の構成を説明するための図解図であり、左右独立転舵システムが採用されたステア・バイ・ワイヤシステムの構成が示されている。
この車両用操舵装置1は、運転者が操向のために操作する操舵部材としてステアリングホイール2と、左転舵輪3Lおよび右転舵輪3Rと、ステアリングホイール2の回転操作に応じて駆動される左転舵モータ4Lおよび右転舵モータ4Rと、左転舵モータ4Lの駆動力に基づいて左転舵輪3Lを転舵する左転舵機構5Lと、右転舵モータ4Rの駆動力に基づいて右転舵輪3Rを転舵する右転舵機構5Rとを備えている。
【0014】
ステアリングホイール2と左転舵機構5Lおよび右転舵機構5Rとの間には、ステアリングホイール2と、左転舵機構5Lおよび右転舵機構5Rとの間に、機械的にトルクや回転などの動きが伝達されるような機械的な結合はなく、ステアリングホイール2の操作量(操舵角、操舵トルク等)に応じて左転舵モータ4Lおよび右転舵モータ4Rが駆動制御されることによって、左転舵輪3Lおよび右転舵輪3Rが転舵されるようになっている。左転舵機構5Lおよび右転舵機構5Rとしては、例えば、特許文献2に開示されたサスペンション装置や、特許文献1に開示された転舵装置を用いることができる。
【0015】
この実施形態では、転舵モータ4L,4Rが正転方向に回転されると、右方向に車両を換向させる方向(右転舵方向)に転舵輪3L,3Rの転舵角が変化し、転舵モータ4L,4Rが逆転方向に回転されると、左方向に車両を換向させる方向(左転舵方向)に転舵輪3L,3Rの転舵角が変化するものとする。
ステアリングホイール2は、車体側に回転可能に支持された回転シャフト6に連結されている。この回転シャフト6には、ステアリングホイール2に作用する反力トルク(操作反力)を発生する反力モータ7が設けられている。この反力モータ7は、例えば、回転シャフト6と一体の出力シャフトを有する電動モータにより構成されている。
【0016】
回転シャフト6の周囲には、回転シャフト6の回転角(ステアリングホイール2の操舵角θh)を検出するための操舵角センサ8が設けられている。この実施形態では、操舵角センサ8は、回転シャフト6の中立位置(基準位置)からの回転シャフト6の正逆両方向の回転量(回転角)を検出するものであり、中立位置から右方向への回転量を例えば正の値として出力し、中立位置から左方向への回転量を例えば負の値として出力する。
【0017】
また、回転シャフト6の周囲には、運転者によってステアリングホイール2に付与される操舵トルクThを検出するためのトルクセンサ9が設けられている。この実施形態では、トルクセンサ9によって検出される操舵トルクThは、右方向への操舵のためのトルクが正の値として検出され、左方向への操舵のためのトルクが負の値として検出され、その絶対値が大きいほど操舵トルクの大きさが大きくなるものとする。
【0018】
左転舵機構5Lの近傍には、左転舵輪3Lの転舵角δを検出するための左転舵角センサ10Lが備えられている。右転舵機構5Rの近傍には、右転舵輪3Rの転舵角δを検出するための右転舵角センサ10Rが備えられている。車両には、さらに、車速Vを検出するための車速センサ11が設けられている。
操舵角センサ8およびトルクセンサ9および車速センサ11は、上位ECU(Electronic Control Unit)(上位制御装置)20にそれぞれ接続されている。反力モータ7は、下位ECUの1つである反力ECU(反力制御装置)21に接続されている。左転舵モータ4Lおよび左転舵角センサ10Lは、下位ECUの1つである左転舵ECU(左転舵制御装置)22に接続されている。右転舵モータ4Rおよび右転舵角センサ10Rは、下位ECUの1つである右転舵ECU(右転舵制御装置)23に接続されている。
【0019】
上位ECU20は、所定演算周期毎に、トルクセンサ9によって検出される操舵トルクTh、操舵角センサ8によって検出される操舵角θhおよび車速センサ11によって検出される車速Vに基づいて、反力モータ7に発生させるべき反力トルクの目標値である目標反力トルクTを演算する。上位ECU20によって演算される目標反力トルクTは、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信ラインを介して反力ECU21に送信される。
【0020】
また、上位ECU20は、所定演算周期毎に、操舵角センサ8によって検出される操舵角θhおよび車速センサ11によって検出される車速Vに基づいて、左転舵輪3Lの転舵角の目標値である左目標転舵角δおよび右転舵輪3Rの転舵角の目標値である右目標転舵角δを演算する。上位ECU20は、左目標転舵角δおよび右目標転舵角δのうち、車両旋回時に内側にくる車輪に対する目標転舵角の絶対値が、車両旋回時に外側にくる車輪の目標転舵角の絶対値よりも大きくなるように、左目標転舵角δおよび右目標転舵角δを演算する。
【0021】
上位ECU20によって演算される左目標転舵角δは、例えばCAN等の通信ラインを介して左転舵ECU22に送信される。上位ECU20によって演算される右目標転舵角δは、例えばCAN等の通信ラインを介して右転舵ECU23に送信される。左転舵ECU22と右転舵ECU23とは、例えばCAN等の通信ラインを介して互いに通信可能となっている。
【0022】
図2は、反力ECU21の電気的構成を示すブロック図である。
反力ECU21は、マイクロコンピュータから構成される反力モータ制御部31と、反力モータ制御部31によって制御され、反力モータ7に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)32と、反力モータ7に流れるモータ電流を検出する電流検出部33とを備えている。
【0023】
反力モータ制御部31は、上位ECU20から送信される目標反力トルクTを受信する。反力モータ制御部31は、受信した目標反力トルクTに基づいて、反力モータ7の駆動回路32を駆動制御する。具体的には、反力モータ制御部31は、目標反力トルクTに応じた反力トルクが反力モータ7から発生するように、駆動回路32を駆動制御する。
【0024】
図3は、左転舵ECU22の電気的構成を示すブロック図である。
左転舵ECU22は、マイクロコンピュータから構成される左転舵モータ制御部41Lと、左転舵モータ制御部41Lによって制御され、左転舵モータ4Lに電力を供給する駆動回路(インバータ回路)42Lと、左転舵モータ4Lに流れるモータ電流を検出する電流検出部43Lとを備えている。
【0025】
左転舵モータ制御部41Lは、CPUおよびメモリ(ROM、RAM、不揮発性メモリなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、角速度演算部51Lと、転舵角偏差演算部52Lと、PI制御部(転舵角)53Lと、角速度偏差演算部54Lと、PI制御部(角速度)55Lと、目標トルク設定部56Lと、左目標モータ電流演算部57Lと、切替部58Lと、切替制御部59Lと、電流偏差演算部60Lと、PI制御部(電流)61Lと、PWM(Pulse Width Modulation)制御部62Lとが含まれる。
【0026】
左転舵モータ制御部41Lの制御モードには、通常時に設定される第1制御モードと、上位ECU20と左転舵ECU22との間に通信異常が発生したときに設定される第2制御モードとがある。第1制御モードは、左転舵輪3Lの転舵角δが、上位ECU20から受信した左目標転舵角δと等しくなるように左転舵モータ4Lを制御するモードである。第2制御モードは、左転舵輪3Lの転舵角δが中立位置に対応する角度(零)となるように、左転舵モータ4Lをトルクフィードバック制御するモードである。
【0027】
角速度演算部51L、転舵角偏差演算部52L、PI制御部(転舵角)53L、角速度偏差演算部54LおよびPI制御部(角速度)55Lは、第1制御モード時に使用される左目標モータ電流IL1(以下、「第1の左目標モータ電流IL1」という場合がある。)を演算するためのものである。目標トルク設定部56Lおよび左目標モータ電流演算部57Lは、第2制御モード時に使用される左目標モータ電流IL2(以下、「第2の左目標モータ電流IL2」という場合がある。)を演算するためのものである。切替部58Lは第1の左目標モータ電流IL1および第2の左目標モータ電流IL2のいずれか一方を選択し、左目標モータ電流Iとして出力する。切替制御部59Lは、制御モードの切替制御を行うものであり、切替部58Lを制御する。電流偏差演算部60L、PI制御部61LおよびPWM制御部62Lは、電流検出部43Lによって検出される左モータ電流Iが、切替部58Lから出力される左目標モータ電流Iに等しくなるように制御するためのものである。以下、各部について、説明する。
【0028】
角速度演算部51Lは、左転舵角センサ10Lによって検出される左転舵角δを時間微分することによって、左転舵角δの角速度(左転舵角速度)ωを演算する。
転舵角偏差演算部52Lは、上位ECU20から送られてくる左目標転舵角δと、左転舵角センサ10Lによって検出される左転舵角δとの偏差Δδ(=δ−δ)を演算する。
【0029】
PI制御部53Lは、転舵角偏差演算部52Lによって演算される左転舵角偏差Δδに対するPI演算を行なうことにより、左転舵角速度の目標値である左目標転舵角速度ωを演算する。
角速度偏差演算部54Lは、PI制御部53Lによって演算される左目標転舵角速度ωと、角速度演算部51Lによって演算される左転舵角速度ωとの偏差Δω(=ω−ω)を演算する。
【0030】
PI制御部55Lは、角速度偏差演算部54Lによって演算される左転舵角速度偏差Δωに対するPI演算を行なうことにより、左転舵モータ4Lに流すべき電流の目標値である第1の左目標モータ電流IL1を演算する。PI制御部55Lによって演算された第1の左目標モータ電流IL1は、切替部58Lの第1入力端子に入力される。
目標トルク設定部56Lは、左転舵角センサ10Lによって検出される左転舵角δに基づいて、左転舵輪3Lの転舵角δを零にするための目標トルク(目標モータトルク)Tを設定する。転舵輪3Lの転舵角δに対する目標トルクTの設定例は、図4Aに示されている。左転舵角センサ10Lによって検出される左転舵角δは、中立位置から右方向への転舵角が正の値にとられ、左方向への転舵角が負の値にとられている。また、目標トルクTは、左転舵モータ4Lから右方向転舵のためのモータトルクを発生させるべきときには正の値とされ、左転舵モータ4Lから左方向転舵のためのモータトルクを発生させるべきときには負の値とされる。
【0031】
左転舵角δが零(中立位置)のときには、目標トルクTは零とされる。目標トルクTは、左転舵角δの正の値に対しては負をとり、左転舵角δの負の値に対しては正をとる。目標トルクTは、左転舵角δの絶対値が大きくなるほど、その絶対値が大きくなるように設定される。
目標トルク設定部56Lは、図4Bに示す設定例にしたがって目標トルクTを設定してもよい。図4Bの設定例では、A(A>0)を所定値とすると、左転舵角δが−A〜Aの範囲(左転舵角不感帯)の微小な値のときには、目標トルクTは零とされる。左転舵角δが−A〜Aの範囲外である場合には、目標トルクTは、左転舵角δの正の値に対しては負をとり、左転舵角δの負の値に対しては正をとる。また、左転舵角δが−A〜Aの範囲外である場合には、目標トルクTは、左転舵角δの絶対値が大きくなるほど、その絶対値が大きくなるように設定される。
【0032】
目標トルク設定部56Lによって設定された目標トルクTは、左目標モータ電流演算部57Lに与えられる。左目標モータ電流演算部57Lは、目標トルク設定部56Lから与えられる目標トルクTを左転舵モータ4Lのトルク定数で徐算することにより、第2の左目標モータ電流IL2を演算する。左目標モータ電流演算部57Lによって演算された第2の左目標モータ電流IL2は、切替部58Lの第2入力端子に入力される。
【0033】
切替部58Lは、第1入力端子に入力される第1の左目標モータ電流IL1および第2入力端子に入力される第2の左目標モータ電流IL2のうちのいずれか一方を選択して出力する。切替部58Lは、切替制御部59Lによって制御される。切替制御部59Lは、通常時は、制御モードを第1制御モードに設定する。具体的には、切替制御部59Lは、切替部58Lの第1入力端子に入力される第1の左目標モータ電流IL1が選択されるように、切替部58Lを制御する。
【0034】
切替制御部59Lは、左転舵ECU22と上位ECU20との間に通信異常が発生したときには、制御モードを第2制御モードに切り替える。具体的には、切替制御部59Lは、切替部58Lの第2入力端子に入力される第2の左目標モータ電流IL2が選択されるように、切替部58Lを制御する。
切替制御部59Lは、制御モードが第2制御モードに設定されている場合において、左転舵ECU22と上位ECU20との間の通信が復帰した場合には、上位ECU20から受信した左目標転舵角δと左転舵角δとの差の絶対値が所定値B(B>0)未満となったときに、制御モードを第1制御モードに戻す。
【0035】
切替制御部59Lは、例えば、左転舵ECU22と上位ECU20との間の所定時間当たりの通信エラー発生回数が所定の第1の閾値を超えたときに、左転舵ECU22と上位ECU20との間に通信異常が発生したと判定する。また、切替制御部59Lは、通信異常が発生した後、例えば、前記通信エラー発生回数が所定の第2の閾値未満となったときに、通信が復帰したと判定する。切替制御部59Lの動作の詳細については、後述する。
【0036】
電流偏差演算部60Lは、切替部58Lから出力される左目標モータ電流Iと、電流検出部43Lによって検出される左モータ電流Iとの偏差ΔI(=I−I)を演算する。
PI制御部61Lは、電流偏差演算部60Lによって演算される左モータ電流偏差ΔIに対するPI演算を行なうことにより、左転舵モータ4Lに流れる左モータ電流Iを左目標モータ電流Iに導くための左モータ駆動指令値を生成する。
【0037】
PWM制御部62Lは、左モータ駆動指令値に対応するデューティ比の左PWM制御信号を生成して、駆動回路42Lに供給する。これにより、左モータ駆動指令値に対応した電力が左転舵モータ4Lに供給されることになる。
図5は、右転舵ECU23の電気的構成を示すブロック図である。
右転舵ECU23は、マイクロコンピュータから構成される右転舵モータ制御部41Rと、右転舵モータ制御部41Rによって制御され、右転舵モータ4Rに電力を供給する駆動回路(インバータ回路)42Rと、右転舵モータ4Rに流れるモータ電流を検出する電流検出部43Rとを備えている。
【0038】
右転舵モータ制御部41Rは、CPUおよびメモリ(ROM、RAM、不揮発性メモリなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、角速度演算部51Rと、転舵角偏差演算部52Rと、PI制御部(転舵角)53Rと、角速度偏差演算部54Rと、PI制御部(角速度)55Rと、目標トルク設定部56Rと、右目標モータ電流演算部57Rと、切替部58Rと、切替制御部59Rと、電流偏差演算部60Rと、PI制御部(電流)61Rと、PWM制御部62Rとが含まれる。
【0039】
右転舵モータ制御部41Rの制御モードには、通常時に設定される第3制御モードと、上位ECU20と右転舵ECU23との間に通信異常が発生したときに設定される第4制御モードとがある。第3制御モードは、右転舵輪3Rの転舵角δが、上位ECU20から受信した右目標転舵角δと等しくなるように右転舵モータ4Rを制御するモードである。第4制御モードは、右転舵輪3Rの転舵角δが中立位置に対応する角度(零)となるように、右転舵モータ4Rをトルクフィードバック制御するモードである。
【0040】
角速度演算部51R、転舵角偏差演算部52R、PI制御部(転舵角)53R、角速度偏差演算部54RおよびPI制御部(角速度)55Rは、第3制御モード時に使用される右目標モータ電流IR1(以下、「第1の右目標モータ電流IR1」という場合がある。)を演算するためのものである。目標トルク設定部56Rおよび右目標モータ電流演算部57Rは、第4制御モード時に使用される右目標モータ電流IR2(以下、「第2の右目標モータ電流IR2」という場合がある。)を演算するためのものである。切替部58Rは第1の右目標モータ電流IR1および第2の右目標モータ電流IR2のいずれか一方を選択し、右目標モータ電流Iとして出力する。切替制御部59Rは、制御モードの切替制御を行うものであり、切替部58Rを制御する。電流偏差演算部60R、PI制御部61RおよびPWM制御部62Rは、電流検出部43Rによって検出される右モータ電流Iが、切替部58Rから出力される右目標モータ電流Iに等しくなるように制御するためのものである。以下、各部について、説明する。
【0041】
角速度演算部51Rは、右転舵角センサ10Rによって検出される右転舵角δを時間微分することによって、右転舵角δの角速度(右転舵角速度)ωを演算する。
転舵角偏差演算部52Rは、上位ECU20から送られてくる右目標転舵角δと、右転舵角センサ10Rによって検出される右転舵角δとの偏差Δδ(=δ−δ)を演算する。
【0042】
PI制御部53Rは、転舵角偏差演算部52Rによって演算される右転舵角偏差Δδに対するPI演算を行なうことにより、右転舵角速度の目標値である右目標転舵角速度ωを演算する。
角速度偏差演算部54Rは、PI制御部53Rによって演算される右目標転舵角速度ωと、角速度演算部51Rによって演算される右転舵角速度ωとの偏差Δω(=ω−ω)を演算する。
【0043】
PI制御部55Rは、角速度偏差演算部54Rによって演算される右転舵角速度偏差Δωに対するPI演算を行なうことにより、右転舵モータ4Rに流すべき電流の目標値である第1の右目標モータ電流IR1を演算する。PI制御部55Rによって演算された第1の右目標モータ電流IR1は、切替部58Rの第1入力端子に入力される。
目標トルク設定部56Rは、右転舵角センサ10Rによって検出される右転舵角δに基づいて、右転舵輪3Rの転舵角δを零にするための目標トルク(目標モータトルク)Tを設定する。転舵輪3Rの転舵角δに対する目標トルクTの設定例は、前述の図4Aに示される設定例と同様である。転舵輪3Rの転舵角δに対する目標トルクTの設定例として、前述の図4Bに示される設定例と同様な設定例を用いてもよい。
【0044】
目標トルク設定部56Rによって設定された目標トルクTは、右目標モータ電流演算部57Rに与えられる。右目標モータ電流演算部57Rは、目標トルク設定部56Rから与えられる目標トルクTを右転舵モータ4Rのトルク定数で徐算することにより、第2の右目標モータ電流IR2を演算する。右目標モータ電流演算部57Rによって演算された第2の右目標モータ電流IR2は、切替部58Rの第2入力端子に入力される。
【0045】
切替部58Rは、第1入力端子に入力される第1の右目標モータ電流IR1および第2入力端子に入力される第2の右目標モータ電流IR2のうちのいずれか一方を選択して出力する。切替部58Rは、切替制御部59Rによって制御される。切替制御部59Rは、通常時は、制御モードを第3制御モードに設定する。具体的には、切替制御部59Rは、切替部58Rの第1入力端子に入力される第1の右目標モータ電流IR1が選択されるように、切替部58Rを制御する。
【0046】
切替制御部59Rは、右転舵ECU23と上位ECU20との間に通信異常が発生したときには、制御モードを第4制御モードに切り替える。具体的には、切替制御部59Rは、切替部58Rの第2入力端子に入力される第2の右目標モータ電流IR2が選択されるように、切替部58Rを制御する。
切替制御部59Rは、制御モードが第4制御モードに設定されている場合において、右転舵ECU23と上位ECU20との間の通信が復帰した場合には、上位ECU20から受信した右目標転舵角δと右転舵角δとの差の絶対値が所定値B(B>0)未満となったときに、制御モードを第3制御モードに戻す。
【0047】
切替制御部59Rは、例えば、右転舵ECU23と上位ECU20との間の所定時間当たりの通信エラー発生回数が所定の第1の閾値を超えたときに、右転舵ECU23と上位ECU20との間に通信異常が発生したと判定する。また、切替制御部59Rは、通信異常が発生した後、例えば、前記通信エラー発生回数が所定の第2の閾値未満となったときに、通信が復帰したと判定する。切替制御部59Rの動作の詳細については、後述する。
【0048】
電流偏差演算部60Rは、切替部58Rから出力される右目標モータ電流Iと、電流検出部43Rによって検出される右モータ電流Iとの偏差ΔI(=I−I)を演算する。
PI制御部61Rは、電流偏差演算部60Rによって演算される右モータ電流偏差ΔIに対するPI演算を行なうことにより、右転舵モータ4Rに流れる右モータ電流Iを右目標モータ電流Iに導くための右モータ駆動指令値を生成する。
【0049】
PWM制御部62Rは、右モータ駆動指令値に対応するデューティ比の右PWM制御信号を生成して、駆動回路42Rに供給する。これにより、右モータ駆動指令値に対応した電力が右転舵モータ4Rに供給されることになる。
図6は、左転舵モータ制御部41L内の切替制御部59Lの動作を説明するためのフローチャートである。
【0050】
左転舵ECU22の電源がオンされると、切替制御部59Lは、制御モードを第1制御モードに設定する(ステップS1)。具体的には、切替制御部59Lは、切替部58Lの第1入力端子に入力される第1の左目標モータ電流IL1が選択されるように、切替部58Lを制御する。そして、切替制御部59Lは、左転舵ECU22と上位ECU20との間に通信異常が発生したか否かを判別する(ステップS2)。
【0051】
通信異常が発生していない場合には(ステップS2:NO)、切替制御部59Lは、ステップS1に戻る。
前記ステップS2において、通信異常が発生したと判別された場合には(ステップS2:YES)、切替制御部59Lは、制御モードを第2制御モードに設定する(ステップS3)。具体的には、切替制御部59Lは、切替部58Lの第2入力端子に入力される第2の左目標モータ電流IL2が選択されるように、切替部58Lを制御する。この後、切替制御部59Lは、左転舵ECU22と上位ECU20との間の通信が復帰したか否かを判別する(ステップS4)。
【0052】
通信が復帰していない場合には(ステップS4:NO)、切替制御部59Lは、ステップS3に戻る。前記ステップS4において、通信が復帰したと判別された場合には(ステップS4:YES)、切替制御部59Lは、上位ECU20から受信した左目標転舵角δと左転舵角δとの差の絶対値|δ−δ|が所定値B未満であるか否かを判別する(ステップS5)。絶対値|δ−δ|が所定値B以上である場合には(ステップS5:NO)、切替制御部59Lは、ステップS3に戻る。
【0053】
前記ステップS5において、絶対値|δ−δ|が所定値B未満であると判別された場合には(ステップS5:YES)、切替制御部59Lは、ステップS1に戻る。
図7は、右転舵モータ制御部41R内の切替制御部59Rの動作を説明するためのフローチャートである。
右転舵ECU23の電源がオンされると、切替制御部59Rは、制御モードを第3制御モードに設定する(ステップS11)。具体的には、切替制御部59Rは、切替部58Rの第1入力端子に入力される第1の右目標モータ電流IR1が選択されるように、切替部58Rを制御する。そして、切替制御部59Rは、右転舵ECU23と上位ECU20との間に通信異常が発生したか否かを判別する(ステップS12)。
【0054】
通信異常が発生していない場合には(ステップS12:NO)、切替制御部59Rは、ステップS11に戻る。
前記ステップS12において、通信異常が発生したと判別された場合には(ステップS12:YES)、切替制御部59Rは、制御モードを第4制御モードに設定する(ステップS13)。具体的には、切替制御部59Rは、切替部58Rの第2入力端子に入力される第2の右目標モータ電流IR2が選択されるように、切替部58Rを制御する。この後、切替制御部59Rは、右転舵ECU23と上位ECU20との間の通信が復帰したか否かを判別する(ステップS14)。
【0055】
通信が復帰していない場合には(ステップS14:NO)、切替制御部59Rは、ステップS13に戻る。前記ステップS14において、通信が復帰したと判別された場合には(ステップS14:YES)、切替制御部59Rは、上位ECU20から受信した右目標転舵角δと右転舵角δとの差の絶対値|δ−δ|が所定値B未満であるか否かを判別する(ステップS15)。絶対値|δ−δ|が所定値B以上である場合には(ステップS15:NO)、切替制御部59Rは、ステップS13に戻る。
【0056】
前記ステップS15において、絶対値|δ−δ|が所定値B未満であると判別された場合には(ステップS15:YES)、切替制御部59Rは、ステップS11に戻る。
上位ECU20と左転舵ECU22との間および上位ECU20と右転舵ECU23との間に通信異常が発生していない場合には、左転舵モータ4Lは第1制御モードによって制御され、右転舵モータ4Lは第3制御モードによって制御される。つまり、左転舵モータ4Lおよび右転舵モータ4Lは、それぞれ左転舵角δおよび右転舵角δが、上位ECU20から送られてくる左目標転舵角δおよび右目標転舵角δに等しくなるように制御される。
【0057】
左転舵モータ4Lが第1制御モードによって制御され、右転舵モータ4Lが第3制御モードによって制御されている場合において、例えば、上位ECU20と左転舵ECU22との間に通信異常が発生すると、左転舵モータ4Lは第2制御モードによって制御されるようになる。これにより、左転舵モータ4Lは、左転舵角δが零となるようにトルクフィードバック制御される。一方、右転舵モータ4Rは、右転舵角δが右目標転舵角δに等しくなるように制御される。
【0058】
左転舵輪3Lは左転舵角δが零となるようにトルクフィードバック制御されるため、旋回時においても、外力により左転舵角δが変化しやすく、しかも外力がなくなった場合に左転舵角δが零に戻りやすい。したがって、右転舵輪3Rによる車両の旋回に左転舵輪3が与える影響が小さくなる。このため、車両は操向性能を維持しながら走行することが可能となる。
【0059】
この後、上位ECU20と左転舵ECU22との間の通信が復帰した場合には、上位ECU20から受信した左目標転舵角δと左転舵角δとの差の絶対値|δ−δ|が所定値B未満となったときに、左転舵モータ4Lは第1制御モードによって制御されるようになる。
左転舵モータ4Lが第1制御モードによって制御され、右転舵モータ4Lが第3制御モードによって制御されている場合において、例えば、上位ECU20と右転舵ECU23との間に通信異常が発生すると、右転舵モータ4Rは第4制御モードによって制御されるようになる。これにより、右転舵モータ4Rは、右転舵角δが零となるようにトルクフィードバック制御される。一方、左転舵モータ4Lは、左転舵角δが左目標転舵角δに等しくなるように制御される。
【0060】
右転舵輪3Rは右転舵角δが零となるようにトルクフィードバック制御されるため、旋回時においても、外力により右転舵角δが変化しやすく、しかも外力がなくなった場合に右転舵角δが零に戻りやすい。したがって、左転舵輪3Lによる車両の旋回に右転舵輪3が与える影響が小さくなる。このため、車両は操向性能を維持しながら走行することが可能となる。
【0061】
この後、上位ECU20と右転舵ECU23との間の通信が復帰した場合には、上位ECU20から受信した右目標転舵角δと左転舵角δとの差の絶対値|δ−δ|が所定値B未満となったときに、右転舵モータ4Rは第3制御モードによって制御されるようになる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、左転舵モータ4Lが第1制御モードによって制御され、右転舵モータ4Lが第3制御モードによって制御されている場合において、例えば、上位ECU20と左転舵ECU22との間に通信異常が発生した場合には、左転舵モータ制御部41L側の制御モードは第2制御モードとなる。この場合、さらに、右転舵モータ制御部41Rにおいて、見かけ上のオーバーオールギヤ比(ハンドル角に対する転舵角の比)を増加させるような制御を行うようにしてもよい。
【0062】
例えば、右転舵モータ制御部41Rは、上位ECU20から送られてくる右目標転舵角δに1よりも大きなゲインを乗算し、ゲイン乗算後の右目標転舵角δを、右目標転舵角δとして転舵角偏差演算部52Rに与えるようにしてもよい。また、例えば、右転舵モータ制御部41Rは、PI制御部55Rによって演算される第1の右目標モータ電流IR1に1よりも大きなゲインを乗算し、ゲイン乗算後の第1の右目標モータ電流IR1を切替部58Rの第1入力端子に入力させるようにしてもよい。こうすることで、右転舵輪3Rがより大きなコーナリングフォースを発生するため、左転舵輪3Lの転舵角δの絶対値がトルクフィードバック制御によって右転舵角δの絶対値よりも小さくなっても、車両の旋回性能の低下を抑制できる。
【0063】
同様に、前述の実施形態では、左転舵モータ4Lが第1制御モードによって制御され、右転舵モータ4Lが第3制御モードによって制御されている場合において、例えば、上位ECU20と右転舵ECU23との間に通信異常が発生した場合には、右転舵モータ制御部41R側の制御モードは第4制御モードとなる。この場合、さらに、左転舵モータ制御部41Lにおいて、見かけ上のオーバーオールギヤ比(ハンドル角に対する転舵角の比)を増加させるような制御を行うようにしてもよい。
【0064】
例えば、左転舵モータ制御部41Lは、上位ECU20から送られてくる左目標転舵角δに1よりも大きなゲインを乗算し、ゲイン乗算後の左目標転舵角δを、左目標転舵角δとして転舵角偏差演算部52Lに与えるようにしてもよい。また、例えば、左転舵モータ制御部41Lは、PI制御部55Lによって演算される第1の左目標モータ電流IL1に1よりも大きなゲインを乗算し、ゲイン乗算後の第1の左目標モータ電流IL1を切替部58Lの第1入力端子に入力させるようにしてもよい。こうすることで、左転舵輪3Lがより大きなコーナリングフォースを発生するため、右転舵輪3Rの転舵角δの絶対値がトルクフィードバック制御によって左転舵角δの絶対値よりも小さくなっても、車両の旋回性能の低下を抑制できる。
【0065】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…車両用操舵装置、2…ステアリングホイール、3L…左転舵輪、3R…右転舵輪、4L…左転舵モータ、4R…右転舵モータ、5L…左転舵機構、5R…右転舵機構、20…上位ECU、22…左転舵ECU、23…右転舵ECU、58L,58R…切替部、59L,59R…切替制御部、56L,56R…目標トルク設定部、57L…左目標モータ電流演算部、57R…右目標モータ電流演算部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7