特許第6799782号(P6799782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799782
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20201207BHJP
   B62D 1/185 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   B62D1/19
   B62D1/185
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-24370(P2017-24370)
(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公開番号】特開2018-130996(P2018-130996A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】作田 雅芳
(72)【発明者】
【氏名】長谷 篤宗
(72)【発明者】
【氏名】山岡 道明
(72)【発明者】
【氏名】吉原 愛仁
(72)【発明者】
【氏名】吉村 知記
(72)【発明者】
【氏名】明法寺 祐
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−017908(JP,A)
【文献】 特開2015−077904(JP,A)
【文献】 特開2016−047718(JP,A)
【文献】 特開2014−196065(JP,A)
【文献】 特開2007−276591(JP,A)
【文献】 特開2016−185719(JP,A)
【文献】 特開2016−182847(JP,A)
【文献】 特開2012−250638(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0155448(US,A1)
【文献】 中国実用新案第204750268(CN,U)
【文献】 特開2012−153279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00−1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラム軸方向の一端に操舵部材が接続されるアッパジャケットと、
前記コラム軸方向における前記アッパジャケットの他端に対して摺動可能に外嵌されたロアジャケットと、
車体に固定される被固定部を有し、前記ロアジャケットを支持する支持部材と、
二次衝突時の衝撃を吸収する衝撃吸収機構であって、前記アッパジャケットと一体移動し、二次衝突時に前記支持部材と摩擦摺動する摺動部材を有する衝撃吸収機構とを含み、
前記摺動部材が、前記支持部材および前記ロアジャケットによって挟持される被挟持部と、前記被挟持部と一体に形成されており、前記被挟持部よりも前記被固定部に近い位置において前記ロアジャケットおよび前記支持部材の両方に接触する伝達部とを有する、ステアリング装置。
【請求項2】
前記伝達部が、前記支持部材と前記ロアジャケットとの間で前記被固定部に向けて前記被挟持部から延び出している、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記伝達部が、前記アッパジャケットの中心軸線よりも前記被固定部の近くで前記支持部材および前記ロアジャケットの両方に接触する、請求項1または2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記伝達部は、前記アッパジャケットがテレスコ調整範囲内のいずれの位置にある状態であっても、前記支持部材および前記ロアジャケットの両方に接触する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記伝達部が、前記支持部材および前記ロアジャケットの間に介在された平板部と、前記支持部材および前記ロアジャケットのうちの少なくとも一方に向けて前記平板部から突出する突出部とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記衝撃吸収機構は、前記アッパジャケットに取り付けられ、二次衝突時に前記アッパジャケットと摩擦摺動する別の摺動部材をさらに有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロアジャケット(アウターコラム)にアッパジャケット(インナーコラム)がテレスコ調整可能に内嵌されたステアリング装置が知られている。このようなステアリング装置では、ロアジャケットが、車体に固定された支持部材に支持されており、ロアジャケットに対するアッパジャケットの軸方向の位置がテレスコ調整によって調整される。車両衝突の二次衝突時には、衝撃荷重が発生するが、ロアジャケットに対してアッパジャケットが摩擦摺動する抵抗力により、当該衝撃荷重が吸収される。
【0003】
下記特許文献1のステアリング装置では、金属製リングがアッパジャケットの外周面に圧入されている。二次衝突時には、ロアジャケットに対してアッパジャケットが摩擦移動した後に、金属製リングがロアジャケットに衝突する。その後は、ロアジャケットに対してアッパジャケットが摩擦摺動する際の抵抗力、および、金属製リングに対してアッパジャケットが摩擦摺動する際の抵抗力の和に相当する荷重によって、衝撃荷重が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−17908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二次衝突時に運転者を一層適切に保護することを目的として、近年、二次衝突の発生直後に充分に衝撃荷重を吸収することができるステアリング装置が要求されている。特許文献1に記載のステアリング装置では、二次衝突時には、ロアジャケットに対してアッパジャケットが摩擦移動した後に、金属製リングがロアジャケットに衝突する。この場合、二次衝突の発生直後にはロアジャケットに対してアッパジャケットが摩擦摺動する抵抗力のみによって衝撃荷重が吸収される。したがって、二次衝突の発生直後から充分に衝撃荷重を吸収することができないおそれがある。
【0006】
そこで、アッパジャケットと一体移動する摺動部材が、二次衝突時にロアジャケットおよび支持部材と摩擦摺動する構成のステアリング装置が提案されている。
このステアリング装置では、二次衝突時には、ロアジャケットに対するアッパジャケットの摩擦摺動が開始されると同時にロアジャケットおよび支持部材と摺動部材とが摩擦摺動する。つまり、二次衝突の発生直後から二種類の摩擦摺動が併用される。そのため、二次衝突の発生直後に充分に衝撃を吸収することができる。
【0007】
ここで、ステアリング装置では、車両の走行中などに車体に生じる振動は、支持部材およびロアジャケットを順に介してアッパジャケットに伝達される。振動の伝達経路に剛性が低い部分が存在すると、振動に対する剛性(振動剛性)が低下し、アッパジャケットが振動しやすくなる。アッパジャケットが振動すると、アッパジャケットに接続された操舵部材が振動し、車両の操作性が低下する。
【0008】
先ほど説明した摺動部材を有する構成のステアリング装置では、ロアジャケットと支持部材との間に摺動部材が介在されている。そのため、車体から支持部材に伝わる振動は、摺動部材を介してロアジャケットに伝達される。
摺動部材を有する構成のステアリング装置では、ロアジャケットおよび支持部材と摺動部材との摩擦による抵抗力を充分に確保するためには、支持部材において比較的撓み易い(比較的剛性が低い)部分とロアジャケットとの間に摺動部材を介在させる必要がある。支持部材において比較的剛性が低い部分とロアジャケットとの間に摺動部材を介在させ場合、ロアジャケットには、支持部材において比較的剛性が低い部分を経由して振動が伝達される。これでは、ロアジャケットおよびアッパジャケットが振動しやすくなるので、振動剛性が低下するおそれがある。
【0009】
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、アッパジャケットと一体移動する摺動部材と、ロアジャケットおよび支持部材との摩擦摺動によって二次衝突時の衝撃荷重を吸収するステアリング装置において、簡易な構成で振動剛性の向上を図ることができるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、コラム軸方向(X)の一端に操舵部材(2)が接続されるアッパジャケット(7)と、前記コラム軸方向における前記アッパジャケットの他端に対して摺動可能に外嵌されたロアジャケット(8)と、車体(13)に固定される被固定部(24)を有し、前記ロアジャケットを支持する支持部材(17)と、二次衝突時の衝撃を吸収する衝撃吸収機構(SA)であって、前記アッパジャケットと一体移動し、二次衝突時に前記ロアジャケットおよび前記支持部材と摩擦摺動する摺動部材(50)を有する衝撃吸収機構とを含み、前記摺動部材が、前記支持部材および前記ロアジャケットによって挟持される被挟持部(53)と、前記被挟持部と一体に形成されており、前記被挟持部よりも前記被固定部に近い位置において前記ロアジャケットおよび前記支持部材の両方に接触する伝達部(54)とを有する、ステアリング装置(1;1P)である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記伝達部が、前記支持部材と前記ロアジャケットとの間で前記被固定部に向けて前記被挟持部から延び出している、請求項1に記載のステアリング装置である。
請求項3に記載の発明は、前記伝達部が、前記アッパジャケットの中心軸線(C2)よりも前記被固定部の近くで前記支持部材および前記ロアジャケットの両方に接触する、請求項1または2に記載のステアリング装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記伝達部は、前記アッパジャケットがテレスコ調整範囲内のいずれの位置にある状態であっても、前記支持部材および前記ロアジャケットの両方に接触する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のステアリング装置である。
請求項5に記載の発明は、前記伝達部が、前記支持部材および前記ロアジャケットの間に介在された平板部(58)と、前記支持部材および前記ロアジャケットのうちの少なくとも一方に向けて前記平板部から突出する突出部(59)とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のステアリング装置である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記衝撃吸収機構は、前記アッパジャケットに取り付けられ、二次衝突時に前記アッパジャケットと摩擦摺動する別の摺動部材(40)をさらに有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のステアリング装置である。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、衝撃吸収機構の摺動部材において、伝達部は、被挟持部よりも支持部材の被固定部に近い位置でロアジャケットおよび支持部材の両方に接触する。そのため、支持部材において比較的剛性が高い部分を経由して、ロアジャケットと支持部材との間で振動が伝達される。したがって、振動剛性の向上を図ることができる。また、伝達部が被挟持部と一体に形成されているため、振動剛性を向上させるための新たな部品を追加する必要がない。
【0015】
その結果、簡易な構成で振動剛性を向上させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、伝達部は、支持部材とロアジャケットとの間で被固定部に向けて被挟持部から延び出している。支持部材とロアジャケットとに被挟持部を挟持させることによって、被挟持部よりも被固定部に近い位置で、支持部材およびロアジャケットに伝達部を容易に接触させることができる。よって、簡易な構成で振動剛性を向上させることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、伝達部は、アッパジャケットの中心軸線よりも被固定部の近くで支持部材およびロアジャケットの両方に接触する。そのため、支持部材において剛性が一層高い部分を経由して、ロアジャケットと支持部材との間で振動が伝達される。したがって、振動剛性を一層向上させることができる。
請求項4に記載の発明によれば、伝達部は、アッパジャケットがテレスコ調整範囲内のいずれの位置にある状態であっても、支持部材およびロアジャケットの両方に接触する。そのため、テレスコ調整によってロアジャケットに対してアッパジャケットをどの位置に移動させた場合であっても、支持部材において比較的剛性が高い部分を経由して、ロアジャケットと支持部材との間で振動が伝達される。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、伝達部では、支持部材およびロアジャケットのうちの少なくとも一方に向けて平板部から突出部が突出する。そのため、支持部材およびロアジャケットのうちの少なくとも一方は、突出部と接触する。これにより、支持部材およびロアジャケットの両方に平板部が接触する場合と比較して、伝達部が支持部材およびロアジャケットに接触する部分の面積を低減することができる。したがって、二次衝突時における支持部材およびロアジャケットと伝達部との摩擦摺動により発生する抵抗力を低減できる。よって、二次衝突時において支持部材と摺動部材とが摩擦摺動する際に発生する抵抗力が、過剰に大きくなることを抑制できる。つまり、二次衝突時における支持部材と摺動部材との摩擦摺動を阻害することなく振動剛性を向上させることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、衝撃吸収機構は、前述した摺動部材とは別の摺動部材をさらに有する。ここで、二次衝突時に運転者を適切に保護するためには、ロアジャケットに対してアッパジャケットが所定の距離だけ摺動する必要がある。別の摺動部材がアッパジャケットに取り付けられている構成では、二次衝突時にアッパジャケットが移動する距離が、コラム軸方向における別の摺動部材の幅に相当する距離だけ、所定の距離よりも短くなる。そのため、コラム軸方向における別の摺動部材の幅に相当する距離だけロアジャケットとアッパジャケットとの嵌合長を短くし、摺動距離を維持する必要がある。ロアジャケットとアッパジャケットとの嵌合長を短くすると、ステアリング装置の振動剛性が低下する。しかし、この発明によれば、伝達部が被挟持部よりも被固定部の近くで支持部材とコラムジャケットとの両方に接触する。そのため、支持部材において被挟持部が接触する部分よりも剛性が高い部分を経由して、ロアジャケットと支持部材との間で振動が伝達される。したがって、ロアジャケットとアッパジャケットとの嵌合長が短くなった場合であっても、振動剛性を充分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、図1におけるII−II線に沿った断面の模式図である。
図3図3は、ステアリング装置に備えられた衝撃吸収機構の斜視図である。
図4図4は、図1におけるIV−IV線に沿った断面の模式図である。
図5図5は、衝撃吸収機構の周辺の模式的な側面図である。
図6図6は、二次衝突が発生したときの衝撃吸収機構の周辺の様子を示す模式図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係るステアリング装置の断面の模式図である。
図8図8は、第2実施形態の第1変形例に係るステアリング装置の断面の模式図である。
図9図9は、第2実施形態の第2変形例に係るステアリング装置の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3と、コラムジャケット6と、インターミディエイトシャフト4と、転舵機構5とを備える。ステアリングシャフト3の一端(軸方向上端)には、ステアリングホイール等の操舵部材2が連結されている。ステアリング装置1は、操舵部材2の操舵に連動して、転舵輪(図示せず)を転舵する。転舵機構5は、例えばラックアンドピニオン機構であるが、これに限られない。
【0021】
以下では、ステアリングシャフト3の軸方向であるコラム軸方向Xの上方を軸方向上方XUといい、コラム軸方向Xの下方を軸方向下方XLという。
ステアリングシャフト3は、筒状のアッパシャフト3Uおよびロアシャフト3Lを有している。アッパシャフト3Uとロアシャフト3Lとは、例えばスプライン嵌合やセレーション嵌合によって相対移動可能に嵌合されている。操舵部材2は、アッパシャフト3Uの軸方向上方XUの一端に連結されている。
【0022】
コラムジャケット6は、アッパシャフト3Uを介して操舵部材2が一端に接続されたアッパジャケット7と、アッパジャケット7の他端に摺動可能に外嵌されたロアジャケット8とを含む。アッパジャケット7は、インナジャケットでもあり、ロアジャケット8は、アウタジャケットでもある。コラム軸方向Xは、アッパジャケット7の軸方向でもあり、ロアジャケット8の軸方向でもある。軸方向上方XUは、アッパジャケット7の一端側でもあり、軸方向下方XLは、アッパジャケット7の他端側でもある。
【0023】
ステアリングシャフト3は、コラムジャケット6内に挿通されている。アッパシャフト3Uは、軸受9を介してアッパジャケット7に回転可能に支持されている。ロアシャフト3Lは、軸受10を介してロアジャケット8に回転可能に支持されている。アッパシャフト3Uがロアシャフト3Lに対してコラム軸方向Xに移動することによって、アッパジャケット7がロアジャケット8に対してコラム軸方向Xに移動する。コラムジャケット6は、ステアリングシャフト3とともにコラム軸方向Xに伸縮可能である。
【0024】
ステアリングシャフト3およびコラムジャケット6をコラム軸方向Xに伸縮させることで、操舵部材2の位置を車両の前後方向に調整することができる。このように、ステアリング装置1はテレスコ調整機能を有する。
テレスコ調整は、所定のテレスコ調整範囲内でアッパジャケット7を摺動させることで行われる。テレスコ調整範囲には、コラム軸方向Xにおけるアッパジャケット7の調整上限位置と、コラム軸方向Xにおけるアッパジャケット7の調整下限位置と、調整上限位置および調整下限位置の間の位置とが含まれている。コラムジャケット6は、アッパジャケット7が調整上限位置にあるときに最も伸びた状態になり、アッパジャケット7が調整下限位置にあるときに最も縮んだ状態になる。
【0025】
図2は、図1におけるII−II線に沿った断面の模式図である。アッパジャケット7には、コラム軸方向Xに長手の案内溝27が形成されている。ロアジャケット8には、案内溝27に嵌合され、案内溝27に対してコラム軸方向Xに相対移動可能な被案内突起28が固定されている。ロアジャケット8には、挿通孔8bが形成されており、挿通孔8bには、被案内突起28が挿通されている。被案内突起28は、ロアジャケット8の外周面において挿通孔8bの周りの部分に当接する頭部28aと、挿通孔8bに挿通された軸部28bとを含む。頭部28aおよび軸部28bは、一体に形成されている。軸部28bの先端は、案内溝27に嵌合している。
【0026】
テレスコ調整時、案内溝27の軸方向下端が被案内突起28と当接することで、アッパジャケット7は、テレスコ調整範囲の調整上限位置に規制される。これにより、ロアジャケット8からのアッパジャケット7の抜け防止が達成される。また、テレスコ調整時、案内溝27の軸方向上端が被案内突起28と当接することで、アッパジャケット7は、テレスコ調整範囲の調整下限位置に規制される。
【0027】
図1を参照して、ステアリング装置1は、車体13に固定された固定ブラケット14と、固定ブラケット14によって支持されたチルト中心軸15と、ロアジャケット8の外周に固定され、チルト中心軸15によって回転可能に支持されたコラムブラケット16とを含む。ステアリングシャフト3およびコラムジャケット6は、チルト中心軸15の中心軸線であるチルト中心CCを支点にしてチルト方向Y(略上下方向)に回動可能である。以下では、チルト方向Yの上方をチルト方向上方YUといい、チルト方向Yの下方をチルト方向下方YLという。
【0028】
ステアリングシャフト3およびコラムジャケット6をチルト中心CC回りに回動させることで、操舵部材2の位置をチルト方向Yに調整することができる。このように、ステアリング装置1はチルト調整機能を有する。
図2を参照して、ステアリング装置1は、車体13に固定され、ロアジャケット8を支持するブラケットなどの支持部材17と、チルト調整およびテレスコ調整後のアッパジャケット7の位置をロックする締付機構18とを含む。締付機構18は、ロアジャケット8のコラム軸方向Xの上部に一体に設けられた一対の被締付部19を、支持部材17を介して締め付ける。
【0029】
ロアジャケット8は、ロアジャケット8の軸方向上端8aから軸方向下方XLに延びるスリット26を有する。一対の被締付部19は、スリット26の両側に配置されている。締付機構18は、一対の被締付部19に取り付けられている。締付機構18が一対の被締付部19を締め付けることにより、ロアジャケット8は、弾性的に縮径し、アッパジャケット7を締め付ける。
【0030】
支持部材17は、ボルト25などを介して車体13に固定された板状の被固定部24と、被固定部24からチルト方向下方YLに延びる一対の側板22とを含む。各側板22には、チルト方向Yに延びるチルト用長孔23が形成されている。
ロアジャケット8の一対の被締付部19は、一対の側板22間に配置されている。各被締付部19には、円孔からなる軸挿通孔29が形成されている。
【0031】
締付機構18は、締付軸21(挿通軸)と、締付軸21を回転操作する操作レバー20とを含む。締付軸21の中心軸線C1が、操作レバー20の回転中心に相当する。
締付軸21は、例えば、ボルトである。締付軸21は、支持部材17の両側板22のチルト用長孔23とロアジャケット8の両被締付部19の軸挿通孔29とに挿通される。締付軸21およびロアジャケット8は、チルト調整時に、支持部材17に対し相対移動する。その際、締付軸21は、チルト用長孔23内でチルト方向Yに移動する。
【0032】
締付軸21の一端に設けられた頭部21aは、操作レバー20と一体回転可能に固定されている。締付機構18は、締付軸21の頭部21aと一方の側板22(図2で左側の側板22)との間に介在し、操作レバー20の操作トルクを締付軸21の軸力(一対の側板22を締め付けるための締付力)に変換する力変換機構30をさらに含む。
力変換機構30は、操作レバー20と一体回転可能に連結され、締付軸21に対して中心軸線C1が延びる方向である締付軸方向Jの移動が規制された回転カム31と、回転カム31に対してカム係合し、一方の側板22を締め付ける一方の締付部材32とを含む。締付部材32は、回転が規制された非回転カムである。一方の締付部材32は、ロアジャケット8の一方の被締付部19(図2で左側の被締付部19)に締付軸方向Jから対向している。
【0033】
締付機構18は、他方の側板22(図2で右側の側板22)を締め付ける他方の締付部材33と、他方の締付部材33と他方の側板22との間に介在する針状ころ軸受37とをさらに含む。他方の締付部材33は、締付軸21の他端に設けられたねじ部21bに螺合したナットである。他方の締付部材33は、針状ころ軸受37を介して他方の側板22を締め付ける。他方の締付部材33は、ロアジャケット8の他方の被締付部19(図2で右側の被締付部19)に締付軸方向Jから対向している。
【0034】
回転カム31と、一方の締付部材32と、針状ころ軸受37とは、締付軸21の外周によって支持されている。締付部材32は、一方の側板22に形成されたチルト用長孔23との嵌合によって、その回転が規制されている。
操作レバー20のロック方向への回転に伴って、回転カム31が締付部材32に対して回転すると、締付部材32は、締付軸方向Jに沿って回転カム31から離れる方向に移動する。これにより、一対の締付部材32,33によって、支持部材17の一対の側板22がクランプされて締め付けられる。
【0035】
このとき、支持部材17の各側板22が、ロアジャケット8の対応する被締付部19を締め付けることから、ロアジャケット8のチルト方向Yの移動が規制されて、チルトロックが達成される。また、両被締付部19が締め付けられることで、ロアジャケット8は、弾性的に縮径してアッパジャケット7を締め付ける。その結果、アッパジャケット7がテレスコ調整範囲内の所定のテレスコ位置にロック(保持)され、テレスコロックが達成される。
【0036】
以上のように、締付機構18は、支持部材17を介してロアジャケット8をアッパジャケット7に締め付けることによって、ロアジャケット8に対するアッパジャケットの位置を保持する。
一方、操作レバー20がロック解除方向へ回転すると、回転カム31の回転に伴い、締付部材32は、締付軸方向Jに沿って回転カム31に近づく方向に移動する。これにより、一対の締付部材32,33による一対の側板22の締め付けが解除され、チルト調整およびテレスコ調整が可能となる。
【0037】
図3を参照して、ステアリング装置1は、二次衝突時の衝撃を吸収する衝撃吸収機構SAをさらに含む。衝撃吸収機構SAは、第1摺動部材40(別の摺動部材)および一対の第2摺動部材50(摺動部材)を含む。第1摺動部材40および第2摺動部材50は、金属製であり、プレス加工や鍛造によって一体に形成されている。図4は、図1におけるIV−IV線に沿った断面の模式図である。
【0038】
図4を参照して、第1摺動部材40は、アッパジャケット7に対して摩擦摺動可能にアッパジャケット7に取り付けられている。第1摺動部材40は、たとえばアッパジャケット7に圧入されている。第1摺動部材40とアッパジャケット7との摩擦摺動を第1相対摺動という。第1相対摺動の際に発生する抵抗力を第1抵抗力G1という。
第1摺動部材40は、アッパジャケット7の外周面に外嵌された筒状の嵌合部41と、嵌合部41の一端からアッパジャケット7の径方向Rに張り出した円環状のフランジ部42と、嵌合部41の内周面からアッパジャケット7の外周面に向けて突出し、アッパジャケット7の外周面と接触する複数(本実施形態では8つ)の突部43とを含む。径方向Rとは、アッパジャケット7の中心軸線C2を中心とする半径方向である。
【0039】
複数の突部43とアッパジャケット7の外周面との摩擦力や突部43の強度を調整することによって、第1相対摺動によって発生する第1抵抗力G1を調整することができる。複数の突部43は、アッパジャケット7の外周面の周方向Cに沿って等間隔に配置されているため、第1抵抗力G1が安定し易い。
第1摺動部材40は、第2摺動部材50を固定する一対の固定部44をさらに含む。一対の固定部44のぞれぞれは、径方向Rにおけるフランジ部42の外方端から径方向外方へ延びている。径方向外方とは、径方向Rにおいて中心軸線C2から離れる方向のことである。一対の固定部44は、アッパジャケット7を挟むように周方向Cにおいて互いに180°離間した位置に配置されている。
【0040】
図1を参照して、アッパジャケット7には、コンビスイッチやキーロックなどの取付部品100が取り付けられている。取付部品100は、アッパジャケット7において第1摺動部材40が取り付けられている部分よりも軸方向上方XUに取り付けられている。また、ステアリング装置1は、アッパジャケット7に固定され、コラム軸方向Xにおける操舵部材2側(軸方向上方XU)から第1摺動部材40に対向する対向部材101をさらに含んでいる。対向部材101の軸方向下端は、アッパジャケット7において取付部品100と第1摺動部材40との間に位置している。対向部材101は、たとえば、取付部品100をアッパジャケット7に取り付けるためのブラケットなどである。当該ブラケットは、溶接、かしめまたは圧入などによってアッパジャケット7に固定されている。対向部材101は、取付部品100をアッパジャケット7に取り付けるためのブラケットに限られず、取付部品100以外の車両用部品(たとえば、コラムカバー、ワイヤーハーネス、ニーエアバッグなど)をアッパジャケット7に取り付けるためのブラケットであってもよい。
【0041】
図3を参照して、第2摺動部材50は、第1摺動部材40から軸方向下方XLに延びる略矩形状の板部材である。一対の第2摺動部材50は、第1摺動部材40と一体に形成されているため、第1摺動部材40に固定(連結)されている。そのため、第2摺動部材50は、テレスコ調整の際、第1摺動部材40とともにアッパジャケット7と一体移動する。
【0042】
図2を参照して、一対の第2摺動部材50は、アッパジャケット7を挟んで締付軸方向Jに離間しており、締付軸方向Jに互いに対向している。一方の第2摺動部材50は、一方の側板22と、一方の被締付部19との間に介在されている。他方の第2摺動部材50は、他方の側板22と、他方の被締付部19との間に介在されている。
各第2摺動部材50は、締付機構18による締付状態(ロアジャケット8がアッパジャケット7を締め付けた状態)では、対応する締付部材32,33によって、対応する被締付部19に押し付けられている。
【0043】
締付機構18による締付状態における一対の第2摺動部材50と、一対の側板22および一対の被締付部19との摩擦摺動を第2相対摺動という。第2相対摺動によって発生する抵抗力を第2抵抗力G2という。第2摺動部材50と側板22およびロアジャケット8との摩擦力を調整することによって第2抵抗力G2を調整することができる。
一対の側板22のそれぞれは、被固定部24と各側板22との連結部分22aを支点として、互いに対向する方向(締付軸方向Jに相当)にその先端部22bを移動させるように撓むことができる。側板22では、連結部分22aから離れるにしたがって剛性が低減される。そのため、側板22においてアッパジャケット7の中心軸線C2よりもチルト方向下方YL側の部分は、側板22においてアッパジャケット7の中心軸線C2よりもチルト方向上方YU側の部分よりも剛性が低い。側板22においてアッパジャケット7の中心軸線C2よりもチルト方向上方YU側の部分を高剛性部22Aといい、側板22においてアッパジャケット7の中心軸線C2よりもチルト方向下方YLの部分を低剛性部22Bという。さらに、低剛性部22Bには、各チルト用長孔23が形成されているため、低剛性部22Bの剛性が一層低減されている。
【0044】
図3を参照して、第2摺動部材50は、第1摺動部材40に固定された固定部51と、コラム軸方向Xと平行に延びる延設部52とを含む。図2も参照して、各第2摺動部材50の延設部52は、締付機構18による締付時にロアジャケット8および対応する側板22間で挟持される被挟持部53と、支持部材17およびロアジャケット8間で振動を伝達する伝達部54とを含む。各第2摺動部材50の延設部52は、被挟持部53と固定部51とを連結する連結部55をさらに含む(図3参照)。
【0045】
被挟持部53には、締付軸21が挿通され、コラム軸方向Xに長手の軸方向長孔56が形成されている。一方の第2摺動部材50の軸方向長孔56には、締付軸21に支持された一方の締付部材32が挿通されている(図2参照)。被挟持部53は、アッパジャケット7の中心軸線C2よりも被固定部24側とは反対側(チルト方向下方YL)に位置している。各延設部52の伝達部54は、ロアジャケット8と支持部材17の対応する側板22との間で被挟持部53から被固定部24側(チルト方向上方YU)に向かって延びる平板状である。
【0046】
各第2摺動部材50では、対応する側板22の低剛性部22Bおよび被締付部19間で被挟持部53が特に強固に挟持される。そのため、第2相対摺動時には、各延設部52の被挟持部53と、対応する側板22の低剛性部22Bおよび被締付部19とが主に摩擦摺動する。
各延設部52の伝達部54は、被挟持部53よりも被固定部24の近く(チルト方向上方YU)で、少なくとも締付機構18の締付状態において、支持部材17の対応する側板22とロアジャケット8との両方に接触する接触部でもある。詳しくは、各延設部52の伝達部54は、少なくともその一部がアッパジャケット7の中心軸線C2よりも被固定部24の近く(チルト方向上方YU)で支持部材17の対応する側板22とロアジャケット8との両方に接触する。言い換えると、各伝達部54は、少なくともその一部が対応する側板22の高剛性部22Aに接触する。被挟持部53よりも被固定部24に近い位置(被挟持部53よりもチルト方向上方YUの位置)で振動が伝達される。
【0047】
連結部55は、コラム軸方向Xにおける被挟持部53の中央部よりも軸方向上方XUの部分の被固定部24側(チルト方向上方YU)の端部に連結されている。連結部55は、コラム軸方向Xにおいて伝達部54と固定部51との間に配置されている。コラム軸方向Xにおける連結部55と伝達部54との間には、連結部55と伝達部54とをコラム軸方向Xに分離するためのスリット57が形成されている。スリット57は、軸方向下方XLに向かうにしたがって、チルト方向Yにおける伝達部54の幅が広くなるようにコラム軸方向Xに対して傾斜して延びている。連結部55には、延設部52の曲げ剛性を低減するための貫通孔55aが形成されている。
【0048】
図5(a)および図5(b)は、衝撃吸収機構SAの周辺の模式的な側面図である。図5(a)は、アッパジャケット7が調整下限位置にある状態を示しており、図5(b)は、アッパジャケット7が調整上限位置にある状態を示している。
図5(a)および図5(b)を参照して、テレスコ調整の際には、第2摺動部材50がアッパジャケット7とともにコラム軸方向Xに移動する。締付軸21は、軸方向長孔56内でコラム軸方向Xに沿って第2摺動部材50に対して相対移動する。延設部52において軸方向長孔56を軸方向上方XUから区画する部分を上方区画部56aといい、延設部52において軸方向長孔56を軸方向下方XLから区画する部分を下方区画部56bという。
【0049】
アッパジャケット7がテレスコ調整範囲内の任意の位置に位置する状態で、締付軸21および一方の締付部材32と軸方向長孔56の上方区画部56aおよび下方区画部56bとの間には間隔が設けられている。詳しくは、図5(a)に示すように、テレスコ調整時にアッパジャケット7が調整下限位置にある状態であっても、一方の第2摺動部材50において、締付軸21および一方の締付部材32と軸方向長孔56の上方区画部56aとは接触していない。図5(b)に示すように、一方の第2摺動部材50において、テレスコ調整時にアッパジャケット7が調整上限位置にある状態であっても、締付軸21および一方の締付部材32と軸方向長孔56の下方区画部56bとは接触していない。図示は省略するが、他方の第2摺動部材50においても、アッパジャケット7がテレスコ調整範囲内の任意の位置に位置する状態で、締付軸21と軸方向長孔56の上方区画部56aおよび下方区画部56bとの間には間隔が設けられている。
【0050】
一方の第2摺動部材50の延設部52の伝達部54は、図5(a)に示すように、アッパジャケット7が調整下限位置にある状態でロアジャケット8と対応する側板22との間にその一部が介在されており、ロアジャケット8と対応する側板22との両方に接触している。また、一方の第2摺動部材50の延設部52の伝達部54は、図5(b)に示すように、アッパジャケット7が調整上限位置にある状態でロアジャケット8と対応する側板22との間にその一部が介在されており、ロアジャケット8と対応する側板22との両方に接触している。他方の第2摺動部材50の延設部52の伝達部54も一方の第2摺動部材50の延設部52の伝達部54と同様の構成を有している。
【0051】
このように、各伝達部54は、アッパジャケット7がテレスコ調整範囲内のいずれの位置にある状態であっても、ロアジャケット8と対応する側板22との両方に接触する。
次に、車両衝突の二次衝突が発生したときのステアリング装置1の動作について説明する。二次衝突とは、車両衝突時に車両の運転者が操舵部材2に衝突することである。
図6は、二次衝突が発生したときの衝撃吸収機構SAの周辺の様子を示す模式図である。図6(b)は、図6(a)に示す状態よりも後の状態を示している。
【0052】
締付機構18による締付状態で二次衝突が発生すると、操舵部材2を介してアッパジャケット7に衝撃が伝達される。ロアジャケット8は、車体13に固定された支持部材17の一対の側板22によって支持されている。そのため、二次衝突時には、アッパジャケット7が支持部材17およびロアジャケット8に対して軸方向下方XLに移動する。これにより、ロアジャケット8に対してアッパジャケット7を摩擦摺動させながらコラムジャケット6が収縮する。締付機構18による締め付けが達成された状態でロアジャケット8に対してアッパジャケット7が摩擦摺動する際の抵抗力をコラム抵抗力Fとする。
【0053】
たとえば、第1相対摺動によって発生する第1抵抗力G1が第2相対摺動によって発生する第2抵抗力G2よりも大きい場合を想定する。この場合、まず、第2相対摺動が開始される。各第2摺動部材50は、二次衝突時に支持部材17の対応する側板22およびロアジャケット8と第2相対摺動することによって第2抵抗力G2を発生させる第2抵抗力発生手段として機能する。第2相対摺動では、締付軸21は、二次衝突の開始後、時間の経過とともに軸方向長孔56内で第1摺動部材40側(軸方向上方XU)に相対移動する。
【0054】
二次衝突の初期段階における衝撃荷重は、第2相対摺動によって発生する第2抵抗力G2と、ロアジャケット8に対してアッパジャケット7が摩擦摺動する際のコラム抵抗力Fとの和に相当する。第2相対摺動の途中で、案内溝27の軸方向下端と被案内突起28とが当接し、被案内突起28が破断する。被案内突起28が破断された後も第2相対摺動は継続される。そのため、二次衝突の発生直後には、テレスコ調整後のアッパジャケット7の位置に関係なく、第2相対摺動が開始される。このように、第2抵抗力G2およびコラム抵抗力Fによって二次衝突の発生直後に衝撃荷重を充分に吸収することができる。
【0055】
そして、図6(a)に示すように、第1摺動部材40とロアジャケット8の軸方向上端8aとが当接する。これにより、ロアジャケット8および支持部材17に対する第1摺動部材40および第2摺動部材50の軸方向下方XLへの移動が規制される。これにより、支持部材17およびロアジャケット8に対する第2摺動部材50の移動が終了する。つまり、第2相対摺動が停止する。ロアジャケット8の軸方向上端8aは、第2相対摺動を停止させる第2ストッパとして機能する。一方、アッパジャケット7は、ロアジャケット8に対して軸方向下方XLへ移動し続ける。そのため、アッパジャケット7と第1摺動部材40との相対移動(第1相対摺動)が開始される。第1摺動部材40は、二次衝突時に、アッパジャケット7と第1相対摺動することによって第1抵抗力を発生させる第1抵抗力発生手段として機能する。
【0056】
第1相対摺動が開始された後の衝撃荷重は、第1相対摺動によって発生する第1抵抗力G1と、ロアジャケット8に対してアッパジャケット7が摩擦摺動する際のコラム抵抗力Fとの和に相当する。第1相対摺動は、対向部材101が軸方向上方XUから第1摺動部材40に当接することによって停止する(図6(b)参照)。このように、二次衝突の初期段階では、第2相対摺動が起こり、二次衝突の終期段階では、第1相対摺動が起こる。
【0057】
先ほどとは異なり、第1相対摺動によって発生する第1抵抗力G1が第2相対摺動によって発生する第2抵抗力G2よりも小さい場合(G1<G2)、まず、第1相対摺動が先に起こり、対向部材101が軸方向上方XUから第1摺動部材40に当接することによって第1相対摺動が停止する。対向部材101は、第1相対摺動を停止させる第1ストッパとして機能する。第1相対摺動が終わると第2相対摺動が開始される。この場合であっても、第1抵抗力G1およびコラム抵抗力Fによって二次衝突の発生直後に衝撃荷重を充分に吸収することができる。
【0058】
また、先程とは異なり、第1相対摺動によって発生する第1抵抗力G1と、第2相対摺動によって発生する第2抵抗力G2とが等しい場合(G1=G2)、第1相対摺動および第2相対摺動が同時に開始されることも有り得るし、第1相対摺動および第2相対摺動が交互に起こることも有り得る。
第1実施形態によれば、衝撃吸収機構SAの第2摺動部材50において、伝達部54は、被挟持部53よりも支持部材17の被固定部24に近い位置でロアジャケットおよび支持部材の両方に接触する。そのため、支持部材17において比較的剛性が高い部分を経由して、ロアジャケット8と支持部材17との間で振動が伝達される。
【0059】
さらに、振動剛性は、振動の伝達経路が長くなると低下するところ、第1実施形態では、伝達部54が被挟持部53よりも支持部材17の被固定部24に近い位置に位置する。そのため、第2摺動部材50に伝達部54が設けられていない構成のステアリング装置と比較して、振動の伝達経路を短縮することができる。
したがって、振動剛性の向上を図ることができる。また、伝達部54が被挟持部53と一体に形成されているため、振動剛性を向上させるための新たな部品を追加する必要がない。
【0060】
その結果、簡易な構成で振動剛性を向上させることができる。
また、第1実施形態によれば、各延設部52の伝達部54は、支持部材17の対応する側板22とロアジャケット8との間で被固定部24に向けて被挟持部53から延び出している。対応する側板22とロアジャケット8とに各被挟持部53を挟持させることによって、被挟持部53よりも被固定部24に近い位置で、対応する側板22およびロアジャケットに伝達部54を容易に接触させることができる。よって、簡易な構成で振動剛性を向上させることができる。
【0061】
また、第1実施形態によれば、伝達部54は、アッパジャケット7の中心軸線C2よりも被固定部24の近くで支持部材17およびロアジャケット8の両方に接触する。そのため、支持部材17において剛性が一層高い部分(側板22の高剛性部22A)を確実に経由して、ロアジャケット8と支持部材17との間で振動が伝達される。したがって、振動剛性を一層向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、各第2摺動部材50の伝達部54は、アッパジャケット7がテレスコ調整範囲内のいずれの位置にある状態であっても、ロアジャケット8および支持部材17の対応する側板22の両方に接触する。そのため、テレスコ調整によってアッパジャケット7をテレスコ調整範囲内のどの位置に移動させた場合であっても、支持部材17において比較的剛性が高い部分を経由して、ロアジャケット8と支持部材17との間で振動が伝達される。
【0063】
連結部55は、締付機構18による締付状態においてその先端を締付軸方向Jに移動させるように撓む。本実施形態によれば、連結部55と伝達部54との間にコラム軸方向Xに対して交差して延びるスリット57が設けられている。そのため、連結部55につられて伝達部54が撓むことが抑制される。
ここで、二次衝突時に運転者を適切に保護するためには、ロアジャケット8に対してアッパジャケット7が所定の距離だけ摺動する必要がある。第1摺動部材40がアッパジャケット7に取り付けられている構成では、二次衝突時にアッパジャケット7が移動する距離が、コラム軸方向Xにおける第1摺動部材40の幅に相当する距離だけ、所定の距離よりも短くなる。そのため、コラム軸方向Xにおける第1摺動部材40の幅に相当する距離だけロアジャケット8とアッパジャケット7との嵌合長を短くし、摺動距離を維持する必要がある。ロアジャケット8とアッパジャケット7との嵌合長を短くすると、ステアリング装置1の振動剛性が低下する。しかし、第1実施形態によれば、各伝達部54が被挟持部53よりも被固定部24の近くで支持部材17の対応する側板22とコラムジャケット8との両方に接触する。そのため、対応する側板22において被挟持部53が接触する部分(低剛性部22B)よりも剛性が高い部分(高剛性部22A)を経由して、ロアジャケット8と支持部材17との間で振動が伝達される。したがって、ロアジャケット8とアッパジャケット7との嵌合長が短くなった場合であっても、振動剛性を充分に確保することができる。
【0064】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係るステアリング装置1Pの断面の模式図である。図7では、今まで説明した部材と同じ部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する(後述する図8および図9も同様)。
図7を参照して、第2実施形態に係るステアリング装置1Pが第1実施形態に係るステアリング装置1(図2参照)と異なる点は、各延設部52の伝達部54が、ロアジャケット8および支持部材17の対応する側板22の間に介在された平板部58と、ロアジャケット8に向けて(締付軸方向Jに)平板部58から突出する突出部59とを含む点である。突出部59は、コラム軸方向Xに延びる筋状に形成されている。突出部59は、コラム軸方向Xから見て、略台形状である。この実施形態では、突出部59の先端は、平坦であるが、突出部59の先端は、コラム軸方向Xから見て、円弧状となるように形成されていてもよい。
【0065】
突出部59は、平板部58をプレス加工などにより変形させることにより形成されている。そのため、平板部58において突出部59が設けられている側の面(ロアジャケット8側の面)とは反対側の面(対応する側板22側の面)には、突出部59と対応する位置に凹部59aが形成されている。
第2実施形態では、アッパジャケット7の中心軸線C2よりも被固定部24に近い位置(チルト方向上方YUの位置)で、突出部59がロアジャケット8に接触し、かつ、平板部58が対応する側板22に接触する。したがって、平板部58および突出部59を経由して、ロアジャケット8と支持部材17の対応する側板22との間で振動が伝達される。
【0066】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第2実施形態によれば、ロアジャケット8に向けて平板部58から突出部59が突出している。そのため、締付機構18の締付状態には、ロアジャケット8は、突出部59と接触する。これにより、支持部材17およびロアジャケット8の両方に平板部58が接触する場合と比較して、伝達部が支持部材17およびロアジャケット8に接触する部分の面積を低減することができる。したがって、二次衝突時における支持部材17およびロアジャケット8と伝達部54との摩擦摺動により発生する抵抗力を低減できる。よって、二次衝突時において支持部材17およびロアジャケット8と第2摺動部材50との第2相対摺動によって発生する第2抵抗力G2が、過剰に大きくなることを抑制できる。つまり、第2相対摺動を阻害することなく振動剛性を向上させることができる。
【0067】
図8に示すように、第2実施形態とは異なり、突出部59は、支持部材17の対応する側板22に向けて突出していてもよい。この場合、アッパジャケット7の中心軸線C2よりも被固定部24に近い位置(チルト方向上方YUの位置)で、突出部59が対応する側板22に接触し、かつ、平板部58がロアジャケット8に接触する。
図9に示すように、第2実施形態とは異なり、突出部59は、支持部材17の対応する側板22およびロアジャケット8の両方に向けて突出していてもよい。この場合、アッパジャケット7の中心軸線C2よりも被固定部24に近い位置(チルト方向上方YUの位置)で、突出部59が対応する側板22およびロアジャケット8に接触する。このように、支持部材17の対応する側板22およびロアジャケット8の両方に向けて突出部59が突出している場合、伝達部54が支持部材17およびロアジャケット8に接触する部分の面積を一層低減することができる。
【0068】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、ステアリング装置1は、第2摺動部材50を必ずしも一対含んでいる必要はない。すなわち、一対の第2摺動部材50のうちの一方のみが設けられていてもよい。
また、上述の実施形態では、第1摺動部材40および第2摺動部材50は、プレス加工や鋳造などによって一体に形成されているとした。しかし、上述の実施形態とは異なり、別々に形成された第1摺動部材40と第2摺動部材50とが溶接などにより固定(連結)されていてもよい。また、上述の実施形態では、第1摺動部材40および第2摺動部材50は、金属製であるとしたが、上述の実施形態とは異なり、第1摺動部材40および第2摺動部材50は、樹脂などによって形成されていてもよい。また、上述の実施形態では、第1摺動部材40および一対の第2摺動部材50は、固定されているとしたが、必ずしも固定されている必要はない。たとえば、第1摺動部材40および一対の第2摺動部材50は、一体移動可能に凹凸係合されていてもよい。
【0069】
また、上述の実施形態とは異なり、第1摺動部材40がアッパジャケット7に溶接などによって固定されていてもよい。この場合、二次衝突の発生直後には、必ず第2相対摺動が起こる。また、上述の実施形態とは異なり、衝撃吸収機構SAには、第1摺動部材40が設けられておらず、第2摺動部材50がアッパジャケット7に直接固定されていてもよい。この場合であっても、二次衝突の発生直後には、必ず第2相対摺動が起こる。
【符号の説明】
【0070】
1;1P…ステアリング装置、2…操舵部材、7…アッパジャケット、8…ロアジャケット、13…車体、17…支持部材、24…被固定部、40…第1摺動部材(別の摺動部材)、50…第2摺動部材(摺動部材)、53…被挟持部、54…伝達部、58…平板部、59…突出部、C2…中心軸線、SA…衝撃吸収機構、X…コラム軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9