特許第6799795号(P6799795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799795
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/732 20060101AFI20201207BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20201207BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20201207BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20201207BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20201207BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20201207BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20201207BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20201207BHJP
【FI】
   A61K31/732
   A61P3/04
   A61K47/02
   A61K47/18
   A61K47/36
   A61K47/22
   A61K47/26
   !A23L33/10
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-507900(P2017-507900)
(86)(22)【出願日】2016年8月5日
(86)【国際出願番号】JP2016073160
(87)【国際公開番号】WO2017033710
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2019年7月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-163719(P2015-163719)
(32)【優先日】2015年8月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 将平
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特表平02−502908(JP,A)
【文献】 特表2006−527700(JP,A)
【文献】 特開昭60−078559(JP,A)
【文献】 特開2004−357699(JP,A)
【文献】 特開2006−217807(JP,A)
【文献】 特開2005−104844(JP,A)
【文献】 特開2003−231631(JP,A)
【文献】 特表2010−526043(JP,A)
【文献】 特開2004−350591(JP,A)
【文献】 特表2004−537575(JP,A)
【文献】 医薬添加物辞典 2007,2007年 7月25日,第1刷,第378,394−396頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
A61K 31/732
A61K 47/02
A61K 47/18
A61K 47/22
A61K 47/26
A61K 47/36
A61P 3/04
A23L 33/10
・DB
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)LMペクチン、B)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の発泡剤、並びに、C)キサンチン誘導体、アミノ酸、糖アルコール、及び天からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有しており、
前記キサンチン誘導体がカフェイン及びテオブロミンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記アミノ酸がアスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸及びロイシンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記糖アルコールがエリスリトール及びキシリトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、
経口組成物。
【請求項2】
前記キサンチン誘導体及び/又は前記アミノ酸を、A)LMペクチン1質量部に対して0.005質量部以上、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.003質量部以上含有する請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
前記糖アルコールを、A)LMペクチン1質量部に対して0.1質量部以上、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.05質量部以上含有する請求項1に記載の経口組成物。
【請求項4】
記寒天を、A)LMペクチン1質量部に対して0.1質量部以上、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.1質量部以上含有する請求項1に記載の経口組成物。
【請求項5】
固形製剤の形態である請求項1〜のいずれかに記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A)LMペクチンとB)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種とを配合した経口組成物に関し、医薬品、医薬部外品及び食品等の分野において利用され得る。
【背景技術】
【0002】
肥満はメタボリックシンドロームに至る深刻な社会問題である。肥満を予防するための有効な手段としては、食事摂取量を制限してのダイエットが挙げられるが、これによって生じる空腹感のため、長続きしないというのが実状であった。そこで、空腹感を解消するために、香料又は香料化合物を主成分とする空腹感緩和剤(特許文献1参照)、シリアル食品(特許文献2参照)、可食性リンタンパクと金属との炭酸塩(特許文献3参照)、ゲル形成成分を含む胃内ラフト組成物を用いる方法(特許文献4参照)、あるいは水性の酸と接触した際に非毒性ガスを生成し得る発泡剤を含む胃内ラフト組成物を用いる方法(特許文献5参照)等が提供されている。
【0003】
通常、胃内ラフト組成物を形成させる場合には、ペクチンやアルギン酸等のゲル形成分が用いられる。ペクチンはα−1,4−結合したポリガラクツロン酸が主成分の水溶性多糖類であり、リンゴや柑橘類から抽出され、ゲル化剤として広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−7427号公報
【特許文献2】特許4791102号公報
【特許文献3】特開2010−94085号公報
【特許文献4】特許5079713号公報
【特許文献5】特表2005−507409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ペクチンを構成するガラクツロン酸のうち、メチルエステル化の比率が50%未満のLMペクチン(低メトキシルペクチン)と、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の特定の発泡剤とを組み合わせると、これらを含有する組成物においてプラスチックを溶かしたような風味(プラスチックを連想させる特有の異風味、すなわち、プラスチックを熱した際に発生する臭いを連想させる風味。以下、場合により「特有の異風味」という。前記臭いの原因としては、未反応モノマー、低分子量物質、添加剤等が考えられている)が生じ、服用性に悪影響を与えるという課題があることを見出した。
【0006】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、LMペクチンと炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の発泡剤とを配合することにより生じる特有の異風味を低減させた経口組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、A)LMペクチンとB)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の発泡剤とを含有する組成物に、C)キサンチン誘導体、アミノ酸、糖アルコール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、デンプン、寒天及び植物性タンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加することで、A)LMペクチン及びB)発泡剤を配合することによって生じる特有の異風味が低減することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
(1)A)LMペクチン、B)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の発泡剤、並びに、C)キサンチン誘導体、アミノ酸、糖アルコール、高甘味度甘味料、デンプン、寒天及び植物性タンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有しており、前記高甘味度甘味料はアスパルテーム、アセスルファムカリウム及びスクラロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である経口組成物。
(2)前記キサンチン誘導体及び/又は前記アミノ酸を、A)LMペクチン1質量部に対して0.005質量部以上、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.003質量部以上含有する(1)記載の経口組成物。
(3)前記糖アルコールを、A)LMペクチン1質量部に対して0.1質量部以上、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.05質量部以上含有する(1)記載の経口組成物。
(4)前記高甘味度甘味料を、A)LMペクチン1質量部に対して0.0005質量部以上、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.0005質量部以上含有する(1)記載の経口組成物。
(5)前記デンプン、前記寒天及び前記植物性タンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種を、A)LMペクチン1質量部に対して0.1質量部以上、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.1質量部以上含有する(1)記載の経口組成物。
(6)前記キサンチン誘導体がカフェイン及び/又はテオブロミンである(1)又は(2)記載の経口組成物。
(7)前記アミノ酸がグルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸及びロイシンからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)又は(2)記載の経口組成物。
(8)前記糖アルコールがエリスリトール、キシリトール及びソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)又は(3)記載の経口組成物。
(9)前記デンプンがトウモロコシ由来のデンプン及び/又はバレイショ由来のデンプンである(1)又は(5)記載の経口組成物。
(10)前記植物性タンパク質が大豆由来のタンパク質である(1)又は(5)記載の経口組成物。
(11)固形製剤の形態である(1)〜(10)のいずれかに記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、A)LMペクチンとB)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の発泡剤とを配合することにより生じる特有の異風味が低減された経口組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ペクチンは、α−1,4−結合したポリガラクツロン酸が主成分の水溶性多糖類であり、「A)LMペクチン」は、ペクチンを構成するガラクツロン酸のうち、メチルエステル化されているものの比率(エステル化度)が50%未満の低メトキシルペクチンである。本発明においてA)LMペクチンの由来・製法等について特に制限はなく、リンゴ、柑橘類等、何れの由来であってもよい。一般的に、ペクチンはエステル化度が50%未満のLMペクチン(低メトキシルペクチン)と50%以上のHMペクチン(高メトキシルペクチン)との2つのグレードに分類されるが、特に、LMペクチンは下記の炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる1種以上の発泡剤と配合することでプラスチックを溶かしたような風味(特有の異風味)を生じやすい。A)LMペクチンの含有量は、特に限定されないが、経口組成物全体に対して、通常、0.3〜90質量%、好ましくは0.3〜80質量%、より好ましくは0.3〜50質量%である。
【0011】
本発明における「B)発泡剤」は、「炭酸水素ナトリウム」、「炭酸水素カリウム」、「炭酸ナトリウム」及び「炭酸カリウム」からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、酸と反応して気体成分を生成するアルカリ金属塩である。いずれも本発明において由来・製法等について特に制限はなく、天然物から精製して得られるもののみならず、合成品を利用することもできる。B)発泡剤の含有量(上記のうち2種以上の混合物である場合にはそれらの合計含有量)は、特に限定されないが、A)LMペクチン1質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。
【0012】
本発明の経口組成物は、C)キサンチン誘導体、アミノ酸、糖アルコール、高甘味度甘味料、デンプン、寒天及び植物性タンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、場合により「C)成分」という)をさらに含有する。C)成分としては、これらのうちの1種を単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
【0013】
「キサンチン誘導体」は、プリン塩基の1種であるキサンチンの誘導体である。キサンチン誘導体としては、キサンチンがメチル化された誘導体が挙げられ、より具体的には、カフェイン、テオブロミン、テオフィリン及びこれらの塩が挙げられ、これらのうちの1種を単独でも2種以上の混合物であってもよい。例えば、カフェインは緑茶や紅茶、コーヒーといった飲料に含まれることが知られている。本発明においてキサンチン誘導体の由来・製法等について特に制限はなく、天然物から精製して得られるもののみならず、合成品を利用することもできる。本発明におけるキサンチン誘導体としては、好ましくはカフェイン、テオブロミン及びテオフィリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはカフェイン及び/又はテオブロミンであり、さらに好ましくはカフェイン又はテオブロミンである。キサンチン誘導体の含有量(混合物である場合にはそれらの合計含有量)は、特に限定されないが、A)LMペクチン1質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.005〜0.5質量部、さらに好ましくは0.01〜0.3質量部、特に好ましくは0.03〜0.3質量部であり、B)発泡剤1質量部に対して、好ましくは0.003質量部以上、より好ましくは0.003〜4質量部、さらに好ましくは0.006〜2質量部、特に好ましくは0.02〜2質量部である。また、キサンチン誘導体の含有量としては、A)LMペクチン1質量部に対して0.005質量部以上(より好ましくは、(i)0.005〜0.5質量部、0.01〜0.3質量部、及び0.03〜0.3質量部)、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.003質量部以上(より好ましくは、上記(i)の範囲に対して、それぞれ、0.003〜4質量部、0.006〜2質量部、及び0.02〜2質量部)であることが好ましい。キサンチン誘導体の含有量が上記下限未満であるとA)LMペクチンとB)発泡剤とを配合することにより生じる特有の異風味の低減効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとキサンチン誘導体特有の風味が強くなって経口組成物の風味が損なわれる傾向にある。
【0014】
「アミノ酸」は、アミノ基及びカルボキシル基両方の官能基を持つ化合物並びにその塩である。本発明においてアミノ酸の由来・製法特について特に制限はなく、天然物から精製して得られるもののみならず、合成品を利用することもできる。本発明におけるアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン、アスパラギン酸、ロイシン、トリプトファン、アルギニン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、メチオニン及びオルニチンが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の混合物であってもよい。これらの中でも、好ましくはグルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸及びロイシンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは前記群から選ばれるいずれか1種である。アミノ酸の含有量(混合物である場合にはそれらの合計含有量)は、特に限定されないが、A)LMペクチン1質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.01〜2.5質量部、特に好ましくは0.07〜1.5質量部であり、B)発泡剤1質量部に対して、好ましくは0.003質量部以上、より好ましくは0.006質量部以上、さらに好ましくは0.006〜20質量部、特に好ましくは0.04〜10質量部である。また、アミノ酸の含有量としては、A)LMペクチン1質量部に対して0.005質量部以上(より好ましくは、(ii)0.01質量部以上、0.01〜2.5質量部、及び0.07〜1.5質量部)、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.003質量部以上(より好ましくは、上記(ii)の範囲に対して、それぞれ、0.006質量部以上、0.006〜20質量部、及び0.04〜10質量部)であることが好ましい。アミノ酸の含有量が上記下限未満であるとA)LMペクチンとB)発泡剤とを配合することにより生じる特有の異風味の低減効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとアミノ酸特有の風味が強くなって経口組成物の風味が損なわれる傾向にある。
【0015】
「糖アルコール」は糖類の一種であり、糖分子のカルボニル基が還元された鎖状のアルコールである。本発明において糖アルコールの由来・製法等について特に制限はなく、天然物から精製して得られるもののみならず、合成品を利用することもできる。本発明における糖アルコールとしては、通常食品や経口剤に用いられているものであれば特に制限されず、例えば、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、還元パラチノース、ラクチトール及びマルチトールが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の混合物であってもよい。これらの中でも、好ましくはエリスリトール、キシリトール及びソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは前記群から選ばれるいずれか1種である。糖アルコールの含有量(混合物である場合にはそれらの合計含有量)は、特に制限されないが、A)LMペクチン1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.2〜32質量部であり、B)発泡剤1質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.1〜300質量部である。また、糖アルコールの含有量としては、A)LMペクチン1質量部に対して0.1質量部以上(より好ましくは、(iii)0.2質量部以上、及び0.2〜32質量部)、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.05質量部以上(より好ましくは、上記(iii)の範囲に対して、それぞれ、0.1質量部以上、及び0.1〜300質量部)であることが好ましい。糖アルコールの含有量が上記下限未満であるとA)LMペクチンとB)発泡剤とを配合することにより生じる特有の異風味の低減効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると摂取した場合に緩下作用が引き起こされる可能性が高くなる傾向にある。
【0016】
本発明における「高甘味度甘味料」は、「アスパルテーム」、「アセスルファムカリウム」及び「スクラロース」からなる群から選ばれる少なくとも1種である。例えば、アスパルテームはPAL SWEET DIET(味の素ヘルシーサプライ株式会社)、アセスルファムカリウムはアセスルファムK(味の素ヘルシーサプライ株式会社)、スクラロースは三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製スクラロース等の市販品を用いることができる。高甘味度甘味料の含有量(混合物である場合にはそれらの合計含有量)は、特に限定されないが、A)LMペクチン1質量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、さらに好ましくは0.001〜3質量部、特に好ましくは0.004〜3質量部であり、B)発泡剤1質量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.0009質量部以上、さらに好ましくは0.0009〜30質量部、特に好ましくは0.002〜30質量部である。また、これらの含有量としては、A)LMペクチン1質量部に対して0.0005質量部以上(より好ましくは、(iv)0.001質量部以上、0.001〜3質量部、及び0.004〜3質量部)、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.0005質量部以上(より好ましくは、上記(iv)の範囲に対して、それぞれ、0.0009質量部以上、0.0009〜30質量部、及び0.002〜30質量部)であることが好ましい。高甘味度甘味料の含有量が上記下限未満であるとA)LMペクチンとB)発泡剤とを配合することにより生じる特有の異風味の低減効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると高甘味度甘味料自体による甘みが強くなって経口組成物の風味が損なわれる傾向にある。
【0017】
「デンプン」は、α−グルコースがグリコシド結合によって重合した多糖類の一種、並びに、これに物理的処理(漂白処理、酸処理、塩基処理等)、酵素的処理(アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の酵素による処理等)、又は化学的処理(酸化処理、エステル化処理、アセチル化処理、エーテル化処理、架橋処理等)を行ったものであり、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の混合物であってもよい。本発明においてデンプンの由来・製法等について特に制限はなく、トウモロコシ、米、バレイショ、タピオカ等、何れの由来であってもよいが、好ましくは、トウモロコシ由来及び/又はバレイショ由来であり、より好ましくは、トウモロコシ由来又はバレイショ由来である。デンプンの含有量(混合物である場合にはそれらの合計含有量)は、特に制限されないが、A)LMペクチン1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.4〜30質量部であり、B)発泡剤1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.2〜300質量部である。また、デンプンの含有量としては、A)LMペクチン1質量部に対して0.1質量部以上(より好ましくは、(v)0.4質量部以上、及び0.4〜30質量部)、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.1質量部以上(より好ましくは、上記(v)の範囲に対して、それぞれ、0.2質量部以上、及び0.2〜300質量部)であることが好ましい。
【0018】
「寒天」とは、天草などの海草から得られる煮汁を凍結・乾燥させたものであり、アガロースやアガロペクチン等の多糖類を主成分として含む。本発明において寒天の由来・製法特について特に制限はなく、テングサ由来であってもオゴノリ由来であってもよく、1種を単独であっても2種以上の混合物であってもよい。寒天の含有量(混合物である場合にはそれらの合計含有量)は、特に限定されないが、A)LMペクチン1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.4〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部であり、B)発泡剤1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.2〜50質量部、特に好ましくは0.6〜25質量部である。また、寒天の含有量としては、A)LMペクチン1質量部に対して0.1質量部以上(より好ましくは、(vi)0.4質量部以上、0.4〜5質量部、及び1〜3質量部)、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.1質量部以上(より好ましくは、上記(vi)の範囲に対して、それぞれ、0.2質量部以上、0.2〜50質量部、及び0.6〜25質量部)であることが好ましい。寒天の含有量が上記下限未満であるとA)LMペクチンとB)発泡剤とを配合することにより生じる特有の異風味の低減効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると寒天特有の風味が強くなって経口組成物の風味が損なわれる傾向にある。
【0019】
「植物性タンパク質」は、大豆、小麦等の植物に由来するタンパク質であり、1種を単独であっても2種以上の混合物であってもよい。植物性タンパク質としては、製法について特に制限は無いが、好ましくは大豆由来のタンパク質である。植物性タンパク質の含有量(混合物である場合にはそれらの合計含有量)は、特に限定されないが、LMペクチン1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.4〜30質量部、特に好ましくは1〜25質量部であり、B)発泡剤1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.2〜300質量部、特に好ましくは0.6〜250質量部である。また、植物性タンパク質の含有量としては、A)LMペクチン1質量部に対して0.1質量部以上(より好ましくは、(vii)0.4質量部以上、0.4〜30質量部、及び1〜25質量部)、かつ、B)発泡剤1質量部に対して0.1質量部以上(より好ましくは、上記(vii)の範囲に対して、それぞれ、0.2質量部以上、0.2〜300質量部、及び0.6〜250質量部)であることが好ましい。植物性タンパク質の含有量が上記下限未満であるとA)LMペクチンとB)発泡剤とを配合することにより生じる特有の異風味の低減効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると植物性タンパク質特有の風味が強くなって経口組成物の風味が損なわれる傾向にある。
【0020】
「経口組成物」は、例えば、医薬品、医薬部外品、食品などに幅広く利用することができる経口組成物であり、例えば、医薬製剤、医薬部外品製剤、特定保健用食品、栄養機能食品、特別用途食品、機能性食品、健康補助食品(サプリメント)、又は食品用製剤であり得る。
【0021】
経口組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を配合できる。例えば、ビタミン類、ミネラル類、生薬、生薬抽出物、ローヤルゼリー、デキストリン等を適宜配合することができる。また、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、コーティング剤等を配合し、さらに必要に応じて、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、保存剤、pH調整剤等を配合することができる。
【0022】
本発明の経口組成物の形態は特に制限されず、通常使用され得る任意の剤形をとることができる。例えば、錠剤(素錠、口腔内速崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ドロップ剤などを含む)、散剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、固形発泡飲料、粉末飲料などの固形製剤(経口用固形製剤)、又はドリンク剤、飲料、濃縮飲料等の経口用液体製剤として提供することができる。これらの中でも本発明の経口組成物の形態としては、固形製剤であることが好ましい。
【0023】
本発明の経口組成物は、当該技術分野における慣用の方法をそのまま又は適宜応用して製造することができる。例えば、LMペクチン、炭酸水素ナトリウム等の発泡剤、カフェイン等のC)成分及び任意の賦形剤を混合・造粒した後、圧縮成形することで錠剤とすることができ、また、LMペクチン、炭酸水素ナトリウム等の発泡剤及びカフェイン等のC)成分を保存剤やpH調整剤等とともに精製水に溶解させることで、ドリンク剤を調製することができる。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例、比較例及び参考例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1〜40及び比較例1〜10)
表1〜9に記載の組成となるように各成分を秤量・混合し、実施例1〜40及び比較例1〜10の経口組成物(混合粉体)を調製した。なお、コーンスターチ(トウモロコシ由来のデンプン)及びバレイショデンプン(バレイショ由来のデンプン)としては、それぞれ、第17改正日本薬局方に準じた規格のものを、寒天としては伊那寒天S−6(伊那食品工業株式会社)を、大豆タンパク(大豆由来のタンパク質)としてはウィルプロP20(日本新薬株式会社)を、それぞれ用いた。
試験例1
得られた各混合粉体の全量をそれぞれ精製水200mlに溶解させて溶液を調製し、実施例1〜35及び比較例2〜7については比較例1を、実施例36及び37については比較例8を、実施例38及び39については比較例9を、実施例40については比較例10を、それぞれコントロールとして、同コントロールと比較した経口組成物の風味を下記の評価基準1に従って評価した。評価は3名で行い、個々の評価結果の平均値を算出した。結果を表1〜9に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
【表7】
【0033】
【表8】
【0034】
【表9】
【0035】
評価基準1
+3:プラスチックを溶かしたような風味を著しく改善した
+2:プラスチックを溶かしたような風味を改善した
+1:プラスチックを溶かしたような風味をやや改善した
0 :変化なし
−1:プラスチックを溶かしたような風味がやや増強した
−2:プラスチックを溶かしたような風味が増強した
−3:プラスチックを溶かしたような風味が著しく増強した
表1〜4の結果より、比較例1(コントロール)に比べて、カフェイン、テオブロミンなどのキサンチン誘導体やグルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸、ロイシンなどのアミノ酸を含む実施例1〜15においては、プラスチックを溶かしたような風味(特有の異風味)が低減し、風味の改善効果が認められた。一方、比較例2〜5では、特有の異風味に対する改善効果が認められないか、あるいは異風味がより増強した。
【0036】
また、表1及び表5の結果より、糖類である粉糖、ブドウ糖、果糖を含む比較例4、6、7は特有の異風味に対して十分な改善効果は認められなかった。一方、驚くべきことに、同じ糖類であるエリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの糖アルコールを含む実施例16〜21においては、比較例4、6、7と比べて特有の異風味に対する強い改善効果が認められた。
【0037】
さらに、表6〜8の結果より、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、寒天、大豆タンパク、及びコーンスターチやバレイショデンプンなどのデンプンを含む実施例22〜35において、特有の異風味に対する改善効果が認められた。
【0038】
また、表9の結果より、LMペクチンと炭酸水素カリウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムとの組み合わせにおいてもプラスチックを溶かしたような風味(特有の異風味)が生じたが、グルタミン酸ナトリウムを含まない比較例8〜10に比べ、グルタミン酸ナトリウムを含む実施例36〜40では特有の異風味に対する改善効果が認められた。
【0039】
さらに、個々の評価者による評価結果では、比較例1に比べて、実施例1〜35においては、3名の評価者全員が特有の異風味に対する改善効果を認識したのに対し、比較例2〜7では特有の異風味に対する改善効果を認識できない、あるいはむしろ異風味がより増強されてしまうと感じる評価者が認められた。同様に、各コントロールと比べて、実施例36〜40においても3名の評価者全員が特有の異風味に対する改善効果を認識した。
【0040】
(参考例)
表10に記載の組成となるように各成分を秤量・混合し、参考例1〜5の経口組成物(混合粉体)を調製した。
試験例2
得られた各混合粉体の全量それぞれを精製水200mlに溶解させて溶液を調製し、下記の評価基準2に従って経口組成物の風味を評価した。評価は3名で行い、個々の評価結果の平均値を算出した。結果を表10に示す。
【0041】
【表10】
【0042】
評価基準2
7:プラスチックを溶かしたような風味を非常に強く感じる
6:プラスチックを溶かしたような風味を強く感じる
5:プラスチックを溶かしたような風味をやや強く感じる
4:プラスチックを溶かしたような風味を感じる
3:プラスチックを溶かしたような風味をやや弱く感じる
2:プラスチックを溶かしたような風味を弱く感じる
1:プラスチックを溶かしたような風味が非常に弱い(ほぼ感じない、HMペクチン又はLMペクチンのみの場合と同程度である)
参考例1及び参考例2の結果より、HMペクチンに比べLMペクチンの方が炭酸水素ナトリウムと組み合わせた際に、プラスチックを溶かしたような風味(特有の異風味)を強く呈することが認められた。また、参考例3〜5の結果より、LMペクチンと炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムとの組み合わせにおいても、炭酸水素ナトリウムの組み合わせ同様に特有の異風味を呈することが認められた。
【0043】
以上により、A)LMペクチンとB)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の発泡剤とを配合することにより生じる特有の異風味は、C)キサンチン誘導体、アミノ酸、糖アルコール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、デンプン、寒天及び植物性タンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加することで十分に低減されることが確認された。また、特にLMペクチンと前記特定の発泡剤との組み合わせにおいて、特有の異風味が増強することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、A)LMペクチンとB)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の発泡剤とを配合することにより生じる特有の異風味を抑えた経口組成物を提供することが可能となった。よって、本発明を肥満予防のためのダイエットを志向した医薬品、医薬部外品及び食品として提供することにより、これらの産業の発達が期待される。