特許第6799802号(P6799802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6799802
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】エレベータの安全装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/26 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   B66B13/26 H
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-74471(P2020-74471)
(22)【出願日】2020年4月20日
【審査請求日】2020年4月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 寛
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−040292(JP,A)
【文献】 特開2010−235283(JP,A)
【文献】 特開2014−055045(JP,A)
【文献】 特開2010−058881(JP,A)
【文献】 特開2012−071971(JP,A)
【文献】 特開2015−003786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00−13/30
B66B 1/00− 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗降口を開閉するドアに備えられ、前記ドアの閉動作中において前記乗降口に存在する検知対象物を検知するためのエレベータの安全装置であって、
光ビームを出射する投光器と、
前記投光器から出射された光ビームを反射する反射部と、
前記反射部より反射した光ビームを検知する受光器と、
前記ドアに設けられ、上下方向に延びる支持部材と、
前記支持部材が所定の位置である第一位置と該第一位置より戸開方向側の位置である第二位置との間を姿勢を維持した状態で回動可能となるように前記支持部材と共同して平行リンク機構を構成するリンク部材と、
前記ドアが戸開方向へ移動することに伴い、前記支持部材を前記第一位置から前記第二位置へと移動させるカム機構と、を備え、
前記投光器及び前記受光器は、乗場に着床したかごと昇降路壁面との間であって且つ前記乗降口の上端より上方に配置され、
前記反射部は、乗場に着床したかごと昇降路壁面との間であって且つ前記乗降口の下端より下方に配置されており、
前記投光器、前記受光器及び前記反射部は、前記支持部材に支持されており、
前記支持部材が前記第一位置に位置するとき、前記光ビームが前記ドアの戸閉側端縁よりも戸閉側を通過し、
前記支持部材が前記第二位置に位置するとき、前記光ビームが前記ドアの戸閉側端縁よりも戸開側を通過する、エレベータの安全装置。
【請求項2】
前記カム機構が、前記支持部材に作動的に連結されたローラと、該ローラと当接することにより前記支持部材を回動させる当接部材とを備え、
前記ドアが戸開位置に位置する際、前記ローラと前記当接部材とが当接して前記支持部材は前記第二位置に位置し、
前記ドアが戸開位置から戸閉方向に移動するに伴い、前記ローラと前記当接部材とが離間して前記支持部材が前記第一位置に位置する、請求項に記載のエレベータの安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、ドアに物が挟まった状態を検知するための安全装置が備えられている。該安全装置の例としては、例えば下記特許文献1に記載のようなレーザーセンサを用いたドアエッジセンサが知られている。
例えば犬等のペットに紐を繋いでエレベータを利用する際、ペットと人とが乗場フロアとかご内部とに分かれた状態、即ち、紐がエレベータの内部と外部(乗場フロア)とに跨った状態であるにもかかわらずエレベータドアが閉じてしまい、紐の存在を検知できずにかごの昇降が開始されてしまうと、非常に危険な状態となる。
前記特許文献1記載のドアエッジセンサは、センターオープン方式のドア装置を構成する2枚のドアパネルのうちの一方のドアパネルの先端側(戸閉側)上部に取り付けられたレーザー発振装置及びセンサと、該ドアパネルの先端側下部であって且つガイドシューを設置するためのシル溝内に取り付けられた反射板とを備えている。該ドアエッジセンサは、レーザー発振装置から出たレーザー光を前記反射板で反射させ、前記センサで反射したレーザーを受光するように構成されている。そして、ドアが開状態から閉動作を開始して完全に閉状態となるまでの間に、例えば紐等が該レーザーを横切ることでセンサによるレーザーの受光が遮られたことを検知することで、上記のようなかごと乗場に跨って存在する紐等を検知することが可能となっている。
【0003】
ところで、上記のようなレーザーセンサを用いたドアエッジセンサは、ドアが閉じた際にドアエッジセンサを備えたドアパネルとは反対側のドアパネルの先端部分と干渉する、即ち、レーザーがその反対側のドアパネルによって遮られることとなる。そこで、ドアが完全に閉じる直前でレーザーをドアパネルの上部で反射させるための第二の反射板を他方のドアパネル上部に備え、該第二の反射板でレーザーを反射させる必要がある。
しかし、一対のドアパネルの間隔が、上方よりも下方が狭くなるように僅かに傾いた状態で取り付けられると、レーザーが前記第二の反射板で反射される前に他方のドアパネル下部や反射板用の清掃具で遮られることとなる。したがって、このような不具合が生じないようドアパネルの傾きを正確に調整する必要があり、その作業が極めて煩雑であった。
【0004】
また、戸開状態においてレーザーを覗き込まれると目を傷める恐れがあるため、戸開状態ではレーザー光の照射を停止する等の制御を行う必要があった。
【0005】
さらに、前記特許文献1記載のドアエッジセンサは、反射板がシル溝内を移動するため、シル溝内に溜まったゴミ等によって反射板が汚れたり、損傷するといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2010/024215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑み、ドアの設置が容易なエレベータの安全装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態としてのエレベータの安全装置は、
エレベータの乗降口を開閉するドアに備えられ、前記ドアの閉動作中において前記乗降口に存在する検知対象物を検知するためのエレベータの安全装置であって、
光ビームを出射する投光器と、
前記投光器から出射された光ビームを反射する反射部と、
前記反射部より反射した光ビームを検知する受光器と、を備え、
前記投光器及び前記受光器は、乗場に着床したかごと昇降路壁面との間であって且つ前記乗降口の上端より上方に配置され、
前記反射部は、乗場に着床したかごと昇降路壁面との間であって且つ前記乗降口の下端より下方に配置されている。
【0009】
また、一実施形態としてのエレベータの安全装置は、
前記ドアに設けられ、上下方向に延びる支持部材と、
前記支持部材が所定の位置である第一位置と該第一位置より戸開方向側の位置である第二位置との間を姿勢を維持した状態で回動可能となるように前記支持部材と共同して平行リンク機構を構成するリンク部材と、
前記ドアが戸開方向へ移動することに伴い、前記支持部材を前記第一位置から前記第二位置へと移動させるカム機構と、をさらに備え、
前記投光器、前記受光器及び前記反射部は、前記支持部材に支持されており、
前記支持部材が前記第一位置に位置するとき、前記光ビームが前記ドアの戸閉側端縁よりも戸閉側を通過し、
前記支持部材が前記第二位置に位置するとき、前記光ビームが前記ドアの戸閉側端縁よりも戸開側を通過する、ように構成される。
【0010】
また、一実施形態としてのエレベータの安全装置は、
前記カム機構が、前記支持部材に作動的に連結されたローラと、該ローラと当接することにより前記支持部材を回動させる当接部材とを備え、
前記ドアが戸開位置に位置する際、前記ローラと前記当接部材とが当接して前記支持部材は前記第二位置に位置し、
前記ドアが戸開位置から戸閉方向に移動するに伴い、前記ローラと前記当接部材とが離間して前記支持部材が前記第一位置に位置する、ように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るエレベータの安全装置によれば、ドアの設置が容易なエレベータの安全装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、センターオープンタイプのかごドアに設置された本発明の一実施形態に係るエレベータの安全装置を示し、前記かごドアが戸開状態となった際の正面図である。
図2図2は、前記一実施形態のエレベータの安全装置において、前記かごドアが閉動作中の状態を示す正面図である。
図3図3は、前記一実施形態のエレベータの安全装置において、前記かごドアが戸閉状態となった際の正面図である。
図4図4(A)〜(D)は、エレベータドアの閉動作中における前記一実施形態のエレベータの安全装置の動きを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図1図4を参照しつつ説明する。
【0014】
一実施形態におけるエレベータの安全装置1(以下、安全装置という)は、建物内を複数の階層に跨って上下方向に延びる昇降路と、該昇降路内を昇降するかごと、を備えるエレベータにおいて、かごの乗降口30を開閉するかごドア42に取り付けられている。
前記かごは、図1に示すように、シル(敷居)32を有するかご本体31と、ドア装置4とを備える。ドア装置4は、乗降口の上方において該乗降口30の幅方向(図1における左右方向:以下、「開閉方向」とも称する。)に延びるガイドレール41と、かごの乗降口30を開閉するかごドア42と、かごドア42を吊り下げた状態でガイドレール41に沿って往復動可能なドアハンガー43と、を備える。
本実施形態におけるかごドア42は、かごの乗降口30を開閉するべく接離可能に設けられた左右一対のかごドア42a、42bを有する、いわゆるセンターオープンタイプのドアである。
【0015】
本実施形態の安全装置1は、例えば赤色半導体レーザ等の光ビームBを出射する投光器11aと、前記投光器11aから出射された光ビームBを反射する第一反射板12と、前記第一反射板12より反射した光ビームBを検知する受光器11bと、を備える。前記受光器11bは、光ビームBの検知量が所定の閾値を下回ったときに検知対象物としての異物を検知したことを示す異物検知信号を出力するように構成される。本実施形態では、前記投光器11aおよび前記受光器11bは、両者を一体として備えた投光/受光ユニット11を構成している。該投光/受光ユニット11は、乗場に着床したかごと昇降路壁面との間であって、且つ前記乗降口30の上端より上方に位置するよう、前記左右一対のかごドアのうちの何れか一方に設置される。より具体的には、前記投光/受光ユニット11は、図中右側のかごドア42aの上方に位置するように設置される。
また、前記第一反射板12は、乗場に着床したかごと昇降路壁面との間であって、且つ前記乗降口30の下端より下方に位置するよう、前記投光/受光ユニット11の設置されたかごドア42aに設置される。
【0016】
前記一方のかごドア42aには、さらに、上下方向に延びる支持部材20が設けられている。該支持部材20は、該支持部材20の上部に固定される上部ステー21を介して前記投光/受光ユニット11を支持するとともに、該支持部材20の下部に固定される下部ステー22を介して前記第一反射板12を支持している。本実施形態の支持部材20は、上下方向に延び且つ断面が略L字状のいわゆるアングル部材である。
【0017】
前記上部ステー21は、その一端側が前記支持部材20に固定されるとともに、他端側には前記投光/受光ユニット11が設けられる。前記投光/受光ユニット11を、乗場に着床したかごと昇降路壁面との間であって、且つ前記乗降口30の上端より上方に位置させるべく、該上部ステー21は、前記投光/受光ユニット11の設置位置まで上下方向に延在するとともに、かごの乗降方向(すなわち、かごドアの開閉方向および上下方向と直行する方向)に沿ってかご本体より外側(すなわち、乗場側)へと延在する。
【0018】
前記下部ステー22は、その一端側が前記支持部材20に固定されるとともに、他端側には前記第一反射板12が設けられる。前記第一反射板12を、乗場に着床したかごと昇降路壁面との間であって、且つ前記乗降口30の下端より下方に位置させるべく、該下部ステー22は一端側から他端側にかけてかごの乗降方向(すなわち、かごドアの開閉方向および上下方向と直行する方向)に沿ってかご本体(すなわち、かごシル)より外側(すなわち、乗場側)へと延在するとともに、前記第一反射板12の設置位置まで上下方向に延在する。
【0019】
本実施形態の安全装置1は、前記支持部材20と共同して平行リンク機構を構成する一対のリンク要素25(リンク部材)と、該一対のリンク要素25をかごドアに固定する一対の基部26とを備えている。一対のリンク要素25は、基部26と支持部材20とを接続し、上下方向に間隔をあけて配置される。各リンク要素25は、乗降方向に延びる軸S1周りに相対回転可能に基部26に接続されると共に、乗降方向に延びる軸S2周りに相対回転可能に前記支持部材20に接続されている。これにより、前記一対のリンク要素25は、支持部材20と共同して平行リンク機構を構成する。
【0020】
前記平行リンク機構により、前記支持部材20は、所定の位置である第一位置と該第一位置より戸開方向側の位置である第二位置との間を姿勢を維持した状態で回動可能となる。
本実施形態では、前記第一位置は、前記リンク要素25に接続された前記支持部材20の可動範囲のうち、前記支持部材20が最も戸閉側となる位置である。
前記一対のリンク要素25は、前記支持部材20が前記第一位置に位置する際、軸S1と軸S2とを結ぶ中心線が略水平な状態となる。前記第一位置においては、前記一対のリンク要素25のうち少なくとも何れか一方は規制部材27と当接して更なる回動が規制され、前記支持部材20は前記第二位置方向へのみ回動可能となる。
【0021】
また、本実施形態では、前記第二位置は、前記リンク要素25に接続された前記支持部材20が、前記第一位置から戸開側上方に向かって所定の距離だけ回動した位置であり、該支持部材20の可動範囲のうち、支持部材20が最も高くなる位置よりも戸閉側の位置である。言い換えると、前記一対のリンク要素25の各々は、前記支持部材20が前記第一位置から前記第二位置へと回動するに伴い、軸S1と軸S2とを結ぶ仮想線が前記軸S1を中心として90度未満回転する。前記第二位置において、前記一対のリンク要素25のうち少なくとも何れか一方を規制部材(図示せず)と当接させ、更なる回動を規制することも可能である。
かかる構成により、前記支持部材20には、重力によって常に第二位置側から第一位置側へ向かって回動しようとする力が作用することとなる。
【0022】
また、図1〜3に示すように、前記支持部材20の下部には、該支持部材20を前記第一位置から前記第二位置へと移動させるカム機構50が備えられている。本実施形態では、該カム機構50は、前記支持部材20に作動的に連結されたローラ51と、該ローラ51と当接することによって前記支持部材20を回動させる当接部材52とを備える。本実施形態では、該ローラ51は、連結部材53を介して前記支持部材20と連結されている。前記連結部材53の上部は、前記支持部材20の下部に固定されており、前記連結部材53の下部には、前記ローラ51が取り付けられている。前記当接部材52は、かご本体31の床面の一部、例えばシルに設けられ、且つかごドア42aが完全に開状態となる前に前記ローラ51と当接する位置に設けられている。本実施形態における前記当接部材52は、かごドアの開閉方向に対して傾斜した傾斜面52aと、該傾斜面52aの上端から水平方向に延びる水平面52bとを有する。前記傾斜面52aの上端および前記水平面52bの高さは、該傾斜面52aおよび水平面52bと当接して前記ローラが上方に押し上げられた際に、前記支持部材20が前記第一位置から前記第二位置へと押し上げられる高さとなっている。
【0023】
上記構成の平行リンク機構およびカム機構を備えたことにより、かごドア42aが戸閉状態から開動作によって戸開方向に移動する際、完全な戸開状態となる前に前記ローラ51は前記当接部材52の傾斜面52aに当接し、更なるかごドアの移動に伴って該傾斜面52aに沿って上方へと案内される。これにより、該ローラ51と連結部材53を介して連結された前記支持部材20は、かごドア42aが戸閉位置から戸開方向に移動し、完全な戸開状態となる前に、前記第一位置から前記第二位置へと回動する。
【0024】
前記投光/受光ユニット11および前記第一反射板12は、上下方向において互いに対向するように配置されており、前記投光/受光ユニット11から出射した光ビームBが前記第一反射板12によって反射し、前記投光/受光ユニット11により検知されるように配置される。すなわち、光ビームBが進む経路は、前記投光/受光ユニット11から前記第一反射板12を経て再び前記投光/受光ユニット11へと戻る略一直線状となる。
【0025】
前記支持部材20が前記第一位置にあるとき、例えば図2に示すように、光ビームBはかごドア42aの戸閉側端縁よりも戸閉側に所定距離、例えば5〜20mmだけ離れた位置を通過する。前記支持部材20が前記第一位置から第二位置、即ち戸開方向へ向かって回動すると、該支持部材20に支持された前記投光/受光ユニット11および前記第一反射板12も回動し、それに伴って光ビームBも戸開方向へ向かって移動する。前記支持部材20が前記第二位置に到達すると、光ビームBはかごドア42aの戸閉側端縁よりも戸開側に所定距離、例えば5〜20mmだけ離れた位置まで移動する。これにより、かごドア42aが戸開状態で待機している際の光ビームBの経路は、かごドア42aと乗場ドアとの隙間に隠れた状態となる。
【0026】
また、好ましくは該かごドア42aの戸当たり側端縁の下端にアンダーガード45が下向きに突設されており、前記光ビームBは、戸開状態において該アンダーガード45の戸閉側端縁よりも戸開側の位置まで後退する。
【0027】
かごドア42aが戸開状態から閉動作によって戸閉方向に移動する際、前記当接部材52の水平面52bによって上方へ押し上げられていた前記ローラ51は、傾斜面52aに沿って下降し、更なるかごドア42aの移動に伴って該傾斜面52aと離間する。これにより、該ローラ51と連結部材53を介して連結された前記支持部材20は、かごドア42aが戸開位置から戸閉方向に移動するに伴い、前記第二位置から前記第一位置へと回動する。
【0028】
前記投光/受光ユニット11および第一反射板12が設けられたかごドア42aと反対側のかごドア42bには、ドアが閉状態となった際に前記第一反射板12の光ビーム反射面を清掃するブラシを有する清掃具15と、該清掃具によって前記光ビームBが遮られる前に該光ビームBを反射して前記投光/受光ユニット11へと戻す第二反射板13と、が備えられている。また、該反対側のかごドア42bの戸閉側の下端にもアンダーガード45が下向きに突設され、該かごドア42bとシル32との隙間に異物が入ることを防止する構成となっている。
【0029】
かかる構成のエレベータの安全装置1によれば、かごドア42が完全な戸開状態となっている際には前記支持部材20は前記カム機構によって第二位置に保持されており、光ビームBの経路は、図1および図4(A)に示すように、かごドア42aと乗場ドア61aとの間、より具体的には、かご本体31のシル32と、乗場6のシル62との間であり、且つ、かごドア42a及び乗場ドア61aの戸閉側端縁よりも戸開側に位置する。したがって、かごドア42が完全な戸開状態となっている際には、利用者は光ビームBを覗き込むことができず、利用者にとって安全となる。また、戸開状態で光ビームBの照射を停止する等の複雑な制御を行う必要もない。
【0030】
かごドア42が閉動作を開始すると、前記支持部材20は自重によって第二位置から第一位置に向かって回動し、それに伴って光ビームBの経路は、図2および図4(B)に示すように、かごドア42aの戸閉側に向かってかごドア42aの戸閉側端縁を追い越してかごドア42aの戸閉側端縁よりも戸閉側へと移動する。
【0031】
図4(C)に示すように、かごドア42の閉動作中に紐などの異物Xが光ビームBを横切ると、光ビームBが遮られて投光/受光ユニット11による光ビームBの検知が中断され、投光/受光ユニット11は異物検知信号を出力する。一方、前記投光/受光ユニット11および第一反射板12が設けられたかごドア42aと反対側のかごドア42bの進路に異物が存在する場合、該かごドア42b又は前記アンダーガード45によって該異物は戸閉方向へと導かれ、完全な戸閉状態となる前に前記光ビームBを横切ることとなる。これにより、前記投光/受光ユニット11が設けられたかごドア42aと反対側のかごドア42bの下部に存在する異物も、上記安全装置によって検知されることとなる。
投光/受光ユニット11が出力した異物検知信号はエレベータの制御ユニット(図示せず)へと送信され、該制御ユニットはドアを閉動作から開動作へと反転させる。
【0032】
また、閉動作中に異物を検知することなく閉状態となる際には、図3及び図4(D)に示すように、前記第一反射板12が清掃具15と接触する直前に第二反射板13が光ビームBを反射して該光ビームBを前記投光/受光ユニット11へと戻し、異物検知信号が出力されることなく閉動作が完了する。
【0033】
本実施形態に係るエレベータの安全装置によれば、投光/受光ユニット11および第一反射板12がかごと昇降路壁面との間に配置されるため、かごドア42aが閉状態となる際に投光/受光ユニット11が反対側のかごドア42bと干渉することがない。したがって、かごドアの設置角度に対する許容範囲が大きくなるという効果がある。
【0034】
また、前記支持部材20が前記第一位置にある状態、すなわち、光ビームBがかごドア42aの戸閉側端縁よりも戸閉側に所定距離だけ離れた位置の異物検知をしながら閉動作を完了することができ、該光ビームBは反対側のかごドア42bの戸閉側端縁、すなわちドア同士の戸当たり面を超える範囲まで異物検知を継続することが可能となる。これにより、従来、反対側ドアとの戸当たり面を超えた領域、すなわち、反対側のドア下面とシルとの隙間に存在する異物については検知することができなかったが、本実施形態ではこれを検知することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態のエレベータの安全装置1によれば、前記第一反射板12が従来のようにシル溝内を移動するものではないため、第一反射板12がシル溝内に溜まったゴミ等によって汚れる又は損傷することが無く、異物の誤検知を防止することができる。
【0036】
尚、本発明のエレベータの安全装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0037】
上記実施形態では、エレベータの安全装置が、左右一対のドアが乗降口の幅方向の両側に向けて戸開する、いわゆるセンターオープンタイプのドアに設置された場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。本発明のエレベータの安全装置は、例えば、ドアが乗降口の幅方向の片方に向けて戸開する、いわゆる片開きタイプのドアに設置されてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、エレベータの安全装置がかごドアに設置された場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、エレベータの乗降口を開閉する乗場ドアに設置されてもよい。
さらに、エレベータの乗降口を開閉するドアには一般にセーフティシューと称される上下方向に沿って長い長尺状の部材がリンク機構とともに備えられるが、本発明に係る安全装置はこのようなセーフティシューと併用されうるものである。
【0039】
また、上記実施形態では、光ビームを出射する投光器と光ビームを検知する受光器とが一体となった投光/受光ユニットを用いた場合について説明したが、投光器と受光器とが別体であってもよい。また、投光器と受光器とが別体である場合、投光器と受光器とを異なる位置に配置してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、カム機構が支持部材に作動的に連結されたローラと、該ローラと当接することにより前記支持部材を回動させる当接部材とを備えたものについて説明したが、カム機構は上記構成に限定されず、ドアの開閉動作により生じる左右方向の力を、前記支持部材を上下に回動させる上下方向の力に変換するものであれば、特に制限されない。
【0041】
カム機構の他の例としては、かご本体又は乗場に固定され閉方向に向いた当接面を有する当接部材と、乗降方向に延びる軸周りに回動可能となるようドアに枢支された逆L字形状のカム部材とを備え、該カム部材の一端側が前記支持部材と作動的に連結され、該カム部材の他端側がドアが完全な開状態となる前に前記当接部材の当接面と当接しうるような構成としてもよい。かかる構成のカム機構によれば、ドアが完全な開状態となる際にカム部材の他端側が当接部材の当接面と当接することによって該カム部材が回転し、該カム部材の一端側が前記支持部材を上方へ押し上げることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…エレベータの安全装置、4…ドア装置、6…乗場、11…投光/受光ユニット、12…第一反射板、13…第二反射板、15…清掃具、20…支持部材、21…上部ステー、22…下部ステー、25…リンク要素、26…基部、27…規制部材、30…乗降口、31…かご本体、32…シル、41…ガイドレール、42、42a、42b…かごドア、43…ドアハンガー、45…アンダーガード、50…カム機構、51…ローラ、52…当接部材、52a…傾斜面、52b…水平面、53…連結部材、61a、61b…乗場ドア、62…乗場シル、S1、S2…軸、B…光ビーム、X…異物
【要約】
【課題】
エレベータの乗降口に挟まった異物をより確実に検知することのできるエレベータの安全装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
エレベータの乗降口を開閉するドアに備えられ、前記ドアの閉動作中において前記乗降口に存在する検知対象物を検知するためのエレベータの安全装置であって、光ビームを出射する投光器と、前記投光器から出射された光ビームを反射する反射部と、前記反射部より反射した光ビームを検知する受光器と、を備え、前記投光器及び前記受光器は、乗場に着床したかごと昇降路壁面との間であって且つ前記乗降口の上端より上方に配置され、前記反射部は、乗場に着床したかごと昇降路壁面との間であって且つ前記乗降口の下端より下方に配置されている、エレベータの安全装置による。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4