特許第6799884号(P6799884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6799884手すりベルトの同期測定装置および手すりベルトの同期測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6799884
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】手すりベルトの同期測定装置および手すりベルトの同期測定方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   B66B31/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-118880(P2019-118880)
(22)【出願日】2019年6月26日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】内藤 綱規
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−163902(JP,U)
【文献】 特開2013−170077(JP,A)
【文献】 特開平04−089792(JP,A)
【文献】 特開2011−219214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 − 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータまたはマンコンベアの踏み段と手すりベルトとの間の相対的な移動差の測定に用いられる手すりベルトの同期測定装置であって、
前記手すりベルトに着脱可能に装着される治具本体と、
前記治具本体から前記手すりベルトの走行方向と直角に前記踏み段側に延びる測定バーと、
前記測定バーの先端部から垂下し、先端部が前記踏み段に着座する垂下測定ラインと、を備えることを特徴とする手すりベルトの同期測定装置。
【請求項2】
前記測定バーは、前記治具本体の上に前記手すりベルトの走行方向にスライド可能であることを特徴とする請求項1に記載の手すりベルトの同期測定装置。
【請求項3】
前記治具本体は、前記測定バーのスライド量を前記移動差として測定するスケールを有することを特徴とする請求項2に記載の手すりベルトの同期測定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載した手すりベルトの同期測定装置を用いて、エスカレータまたはマンコンベアの踏み段と手すりベルトとの間の相対的な移動差の測定に用いられる手すりベルトの同期測定方法であって、
前記治具本体を前記手すりベルトに装着し、
前記垂下測定ラインを鉛直にその先端部が前記踏み段に着くまで垂れ降ろし、
前記踏み段を所定距離走行させ、前記垂下測定ラインが斜めになっていれば、鉛直に戻るまでの前記測定バーのスライド量を前記移動差として測定することを特徴とする手すりベルトの同期測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータやマンコンベアの手すりベルトの同期測定装置および手すりベルトの同期測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータやマンコンベアでは、踏み段と手すりベルトは、同じ速度で同期して移動するようになっている。エスカレータでは、駆動モータの動力は、駆動チェーンを介して踏み段の駆動輪に伝動される。また、踏み段の駆動輪は、チェーンにより手すりベルトの駆動輪と連結されている。踏み段に動力を伝える伝動機構には、チェーンやスプロケットが用いられているので、滑りが生じることはないが、手すりベルトと駆動輪の間の伝動は、摩擦伝動になるため、滑りが生じることがある。このため、エスカレータでは、手すりベルトの移動速度が踏み段に較べて若干遅れがちとなる。
【0003】
エスカレータでは、手すりベルトが踏み段と同期して遅れなく移動しているか否かを測定することが、定期点検で行われている。このような踏み段と手すりベルトの同期については、エスカレータの設置条件やエスカレータの仕様などにより、遅れを数百mm以内に収めるよう調整している。
そして、このような踏み段と手すりベルトの移動の同期測定に利用される測定治具に関する先行技術としては、特許文献1に記載された測定治具を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59−163902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現在のところ、踏み段と手すりベルトの移動の同期測定については、許容できる遅れの基準値が規定されているだけで、測定用の器具、手順等について決められたものがあるわけではない。従来は、各メーカ、保守会社ともそれぞれ自前の方法で測定を行っているのが実情である。
【0006】
従来、踏み段と手すりベルトの同期測定に関して、よく問題とされていたのは、欄干の下にある内デッキが測定の邪魔になり、正確な測定が難しかったことである。
また、測定器具を手すりベルトに取り付けても、手すりベルトの走行とともに少しずつ位置がずれてくるという問題もあった。
さらには、標準的な測定方法が確立していないため、測定作業を行う作業者によって測定の仕方が変わり、信頼できる測定結果を得られないことがあった。
【0007】
本発明は、前記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであって、簡単な操作で正確に手すりベルトと踏み段の移動差を測定できるようにした手すりベルトの同期測定装置および手すりベルトの同期測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る手すりベルトの同期測定装置は、エスカレータまたはマンコンベアの踏み段と手すりベルトとの間の相対的な移動差の測定に用いられる測定治具であって、前記手すりベルトに着脱可能に装着される治具本体と、前記治具本体から前記手すりベルトの走行方向と直角に前記踏み段側に延びる測定バーと、前記測定バーの先端部から垂下し、先端部が前記踏み段に着座する垂下測定ラインと、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る手すりベルトの同期測定方法は、前記手すりベルトの同期測定装置を用いて、エスカレータまたはマンコンベアの踏み段と手すりベルトとの間の相対的な移動差の測定に用いられる手すりベルトの同期測定方法であって、前記治具本体を前記手すりベルトに装着し、前記垂下測定ラインを鉛直にその先端部が前記踏み段に着くまで垂れ降ろし、 前記踏み段を所定距離走行させ、前記垂下測定ラインが斜めになっていれば、鉛直に戻るまでの前記測定バーのスライド量を前記移動差として測定することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態よる同期測定装置が取り付けられたエスカレータの欄干を示す断面図である。
図2】上から見た同期測定装置を示す平面図である。
図3】横から見た同期測定装置を示す側面図である。
図4】踏み段に対する手すりベルトの相対的な遅れを示す図である。
図5】同期測定装置による実際の測定手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による手すりベルトの同期測定装置および手すりベルトの同期測定方法の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態よる手すりベルトの同期測定装置が取り付けられたエスカレータの欄干を示す断面図である。
【0012】
図1において、参照番号10は、エスカレータ(マンコンベアと称する場合もある)を示す。11は、エスカレータの欄干である。この欄干11は、デッキ12に立設されている。デッキ12の踏み段14側の内デッキ12aは、下り勾配に傾斜している。参照番号16は、欄干11に沿って走行する手すりベルトである。
【0013】
本実施形態による同期測定装置20は、手すりベルト16に着脱可能に装着される治具本体21と、測定バー24と、垂下測定ライン26と、を有している。
【0014】
図2は、上から見た同期測定装置20を示す平面図である。図3は、横から見た同期測定装置20を示す側面図である。
治具本体21は、手すりベルト16に、上から着脱可能に嵌合する部材である。治具本体21の上面には、測定バー24を水平に、かつ手すりベルト16の走行方向に対して直角に保持するバーホルダ22が設けられている。このバーホルダ22は、手すりベルト16の走行方向にスライドさせてその位置を調整可能になっている。図2に示されるように、治具本体21には、バーホルダ22のスライド量を読み取るためのスケール23が設けられている。
【0015】
測定バー24の先端部には、接続金具25を介して垂下測定ライン26が接続されている。図1に示されるように、垂下測定ライン26の下端には、着座部27が取り付けられ、測定時には着座部27が踏み段14に着地するようになっている。なお、測定バー24は、内デッキ12aを交わすこと(すなわち、垂下測定ライン26や着座部27が内デッキ12aと干渉することを防止すること)ができるのに十分な長さを有している。垂下測定ライン26は、細い棒や板が用いられる他、ロープ、ワイヤであってもよい。着座部27は、重りとしても機能している。
【0016】
本実施形態による手すりベルトの同期測定装置20は、以上のように構成されるものであり、次に、これを使用した手すりベルトの同期測定方法について説明する。
図4は、踏み段14に対する手すりベルト16の相対的な遅れ(移動差)を示す図である。
手すりベルト16とその駆動輪の間の伝動は、摩擦伝動になるため、滑りが生じることがある。この滑りに起因して、エスカレータでは、手すりベルト16の移動速度が踏み段14に較べて若干遅れがちとなる。図4は、踏み段14が下降運転されている場合であるが、踏み段14が上昇運転されている場合も同様である。
【0017】
同期測定装置20の治具本体21を手すりベルト16に取り付ける時は、垂下測定ライン26を踏み段14の角に向かって鉛直に垂れ下がるようにしておく。垂下測定ライン26は、測定バー24の先端に取り付けられており、内デッキ12aを交わして、踏み段14に垂らすことができる。
【0018】
もし、踏み段14が手すりベルト16と同期して同じ速度で移動しているならば、垂下測定ライン26は、鉛直な状態を維持したままである。これに対して、踏み段14に対して手すりベルト16が相対的に遅れていれば、垂下測定ライン26は、手すりベルト16の遅れに追従して傾くことになる。
そこで、踏み段14を所定距離走行させ、踏み段14が停止してから、垂下測定ライン26が鉛直になるまで、測定バー24を手すりベルト16の走行方向に動かす。このとき測定バー24のスライド量Aは、手すりベルト16の遅れによる移動差に相当している。
【0019】
本実施形態の同期測定装置20では、図2に示されているように、治具本体21にスケール23が設けられているので、手すりベルト16の遅れによる移動差をその場で読み取って測定することができる。
【0020】
次に、図5は、同期測定装置20による実際の測定手順を示す図である。
図5(A)に示されるように、まず、停止しているエスカレータの下階の乗降口で、同期測定装置20を手すりベルト16に装着しておく。
次に、図5(B)において、同期測定装置20が上階に到達するまでエスカレータを上昇方向に運転して、この間の手すりベルト16の遅れによる移動差を測定し、移動差があれば記録する。
その後、エスカレータを図5(C)に示されるように、同期測定装置20が下階に到達するまでエスカレータを下降方向に運転して、この間の手すりベルト16の遅れによる移動差を測定し、移動差があれば記録する。
【0021】
以上のようにして、本実施形態によれば、手すりベルト16に同期測定装置20を取り付け、垂下測定ライン26を踏み段14に垂らすようにしておき、エスカレータの運転により同期測定装置20を下階から上階または上階から下階まで移動させるだけで、簡易に手すりベルト16の遅れによる移動差を正確に測定することができる。
【0022】
以上、本発明の手すりベルトの同期測定装置および手すりベルトの同期測定方法について、好適な実施形態を挙げて説明したが、これらの実施形態は、例示として挙げたもので、発明の範囲の制限を意図するものではない。もちろん、明細書に記載された新規な装置、方法およびシステムは、様々な形態で実施され得るものであり、さらに、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、種々の省略、置換、変更が可能である。請求項およびそれらの均等物の範囲は、発明の主旨の範囲内で実施形態あるいはその改良物をカバーすることを意図している。
【符号の説明】
【0023】
10…エスカレータ、11…欄干、12…デッキ、14…踏み段、16…手すりベルト、20…同期測定装置、21…治具本体、22…バーホルダ、23…スケール、24…測定バー、26…垂下測定ライン、27…着座部
【要約】
【課題】簡単な操作で正確にエスカレータの手すりベルトと踏み段の移動差を測定できるようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態によれば、エスカレータまたはマンコンベアの踏み段と手すりベルトとの間の相対的な移動差の測定に用いられる手すりベルトの同期測定装置は、手すりベルト16に着脱可能に装着される治具本体21と、治具本体21から手すりベルト16の走行方向と直角に踏み段側に延びる測定バー24と、測定バー24の先端部から垂下し、先端部が踏み段14に着座する垂下測定ライン26と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5