(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンテナコイルは、前記コイル開口部を縦断する中心線を介して前記導線が一方向に周回する一方側部と前記導線が他方向に周回する他方側部に二分され、前記一方側部に有する導線の間隔と前記他方側部に有する導線の間隔が同一である請求項5に記載のアンテナ装置。
前記磁性シートは、前記コイル開口部の両端に亘って設けられるように、前記コイル開口部に挿入されて前記アンテナコイルに沿って互いに重畳するように配置される請求項1乃至7の何れか1項に記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0029】
まず、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置が適用される無線通信システムの概略構成を示す斜視図である。
【0030】
本実施形態に係るアンテナ装置1は、電子機器30に組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信する装置であって、例えば、
図1に示すようなRFID用の無線通信システム100に組み込まれて使用される。
【0031】
無線通信システム100は、
図1に示すように、電子機器30に備わるアンテナ装置1と、アンテナ装置1に対するアクセスを行う外部機器となるリーダライタ40とを含む。ここで、アンテナ装置1とリーダライタ40とは、
図1に示す三次元直交座標系XYZのXY平面において互いに対向するように配置されているものとする。
【0032】
リーダライタ40は、XY平面において互いに対向するアンテナ装置1に対して、Z軸方向に磁界を発信する発信器として機能し、具体的には、アンテナ装置1に向けて磁界を発信するアンテナ41と、アンテナ41を介して誘導結合されたアンテナ装置1と通信を行う制御基板42とを備える。
【0033】
すなわち、リーダライタ40は、アンテナ41と電気的に接続された制御基板42が配設されている。この制御基板42には、一又は複数の集積回路チップ等の電子部品からなる制御回路43が実装されている。この制御回路43は、アンテナ装置1から受信されたデータに基づいて、各種の処理を実行する。
【0034】
例えば、制御回路43は、アンテナ装置1に対してデータを送信する場合、データを符号化し、符号化したデータに基づいて、所定の周波数(例えば、13.56MHz)の搬送波を変調し、変調した変調信号を増幅し、増幅した変調信号でアンテナ41を駆動する。また、制御回路43は、アンテナ装置1からデータを読み出す場合、アンテナ41で受信されたデータの変調信号を増幅し、増幅したデータの変調信号を復調し、復調したデータを復号する。
【0035】
なお、制御回路43では、一般的なリーダライタで用いられる符号化方式及び変調方式が用いられ、例えば、マンチェスタ符号化方式やASK(Amplitude Shift Keying)変調方式が用いられている。また、以下では、非接触通信システムにおけるアンテナ装置等について説明をするが、Qi(チー)等の非接触充電システムについても同様に適用することができるものとする。
【0036】
アンテナ装置1は、例えば、リーダライタ40とXY平面において対向するように配置される携帯電話機等の電子機器30の筐体内部に組み込まれる。本実施形態では、アンテナ装置は、誘導結合されたリーダライタ40との間で通信可能となるアンテナコイル12が実装されたアンテナ基板11を有するアンテナモジュール2と、アンテナコイル12に流れる電流により駆動し、リーダライタ40との間で通信を行う通信処理部13と、金属板3とを備える。
【0037】
アンテナモジュール2は、電子機器30の筐体内部に設けられ、誘導結合されたリーダライタ40との間で通信を行う。本実施形態では、
図1に示すように、アンテナモジュール2は、アンテナ基板11と、通信処理部13と、接続部14とを備える。
【0038】
アンテナ基板11には、例えば、フレキシブルフラットケーブルなどの可撓性の導線12a(
図2(A)参照)がパターンニング処理などをすることによって形成されるアンテナコイル12と、アンテナコイル12と通信処理部13とを電気的に接続する端子部14とが実装されている。
【0039】
アンテナコイル12は、リーダライタ40から発信される磁界を受けると、リーダライタ40と誘導結合によって磁気的に結合され、変調された電磁波を受信して、端子部14を介して受信信号を通信処理部13に供給する機能を有する。なお、アンテナコイル12の構成の詳細な説明については、後述する。
【0040】
通信処理部13は、アンテナコイル12に流れる電流により駆動し、リーダライタ40との間で通信を行う。具体的に、通信処理部13は、受信された変調信号を復調し、復調したデータを復号して、復号したデータを、当該通信処理部13が有する内部メモリに書き込む。また、通信処理部13は、リーダライタ40に送信するデータを内部メモリから読み出し、読み出したデータを符号化し、符号化したデータに基づいて搬送波を変調し、誘導結合によって磁気的に結合されたアンテナコイル12を介して変調された電波をリーダライタ40に送信する。なお、通信処理部13は、アンテナコイル12に流れる電力ではなく、電子機器内に組み込まれたバッテリパックや外部電源などの電力供給手段から供給された電力によって駆動してもよい。
【0041】
金属板3は、電子機器30の筐体内に設けられ、外部機器となるリーダライタ40に対向する第1の導電体となる。金属板3は、例えば、携帯電話やスマートフォン、又はタブレットPC等の電子機器の筐体内に設けられ、アンテナモジュール2の通信時にリーダライタ40に対向する第1の導電体を構成するものである。当該第1の導電体として、例えば、スマートフォンの筐体の内面に貼付されたメタルカバーや、スマートフォン内に収納されたバッテリパックの金属筐体、あるいは、タブレットPCの液晶モジュールの裏面に設けられた金属板等の内部構造物が相当する。
【0042】
このような内部構造物である金属板3は、電気を比較的よく流すので、外部から交流磁界が加わると渦電流が発生し、磁界を跳ね返してしまう。このような外部から交流磁界が加わるときの磁界分布を調べると、リーダライタ40と対向した金属板3の外縁側の磁界が強いという特性を有する。このため、従来では、携帯電話機等の電子機器30に組み込んだ際に当該電子機器30の小型化を図りつつ、リーダライタ40との間で良好な通信特性を確保するために、アンテナモジュール2のアンテナコイル12を携帯電話機30の筐体内に設けられた金属筐体等の金属板3の外縁側に設けることが行われていた。
【0043】
しかしながら、いわゆるスマートフォン等の携帯端末装置や電子機器において、デザイン性や耐久性を向上させる目的で筐体表面が金属カバー等の導電材で覆われているものがある。このように金属カバーで覆われた筐体内部にアンテナモジュールを搭載しても、通信用の電磁波が金属カバーに吸収されて十分な通信性能を確保できないことが問題となっていた。このため、外部機器からの磁束が通り抜けるようにするために、金属カバーに開口部やスリット等を新たに設けることが行われていたが、当該金属カバーの強度の低下や、デザイン上の制約といった別の問題が生じていた。
【0044】
また、カメラやマイク等の各種機能素子を備えた多機能化された電子機器において、当該各種機能素子の機能を発揮させるためには、金属カバーの所望の位置に開口部やスリットを設ける必要がある。このことから、アンテナモジュールを金属カバーで遮蔽されることによる通信性能の低下を抑制して、金属カバーの強度の低下や、デザイン上の制約といった問題を解消するためには、各種機能素子用に設けられた開口部やスリットを活用することが好ましい。特に、小型化・多機能化が進んでいる携帯端末装置等の電子機器では、金属カバーに各種機能素子用の開口部が端部側に設けられるような構成上の制約を回避して、アンテナの良好な通信特性を確保できるように、設計自由度を高める要請が大きい。
【0045】
本発明者は、前述した本発明の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、電子機器に備わる基板等の金属板の磁気シールド効果による磁束の集中を利用して特性を上げるNFCアンテナモジュールにおいて、アンテナコイルを少なくとも金属カバーの外部機器との対向面に対する裏側面における金属カバーの端部と開口孔部との間の領域に重畳するように設けることによって、より高い通信性能を確保できることを見出し、かかる知見に基づき更に研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0046】
次に、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。
図2(A)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成の一例を示す斜視図であり、
図2(B)は、
図2(A)のA−A断面図であり、
図2(C)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成の要部の一例を示す平面図である。
【0047】
本実施形態のアンテナ装置1は、
図2(A)乃至
図2(C)に示すように、そのコイル開口部12bを介して幅方向(X方向)に対向する導線12aが互いに近接するように平面状に巻回して設けられる細長い矩形形状のアンテナコイル12と、アンテナコイル12の中心側に有するコイル開口部12bに挿入されて設けられる磁性シート20と、アンテナコイル12の外部機器40(
図1参照)との対向面側に配置され、その端部5a寄りにカメラ等の各種機能素子用の開口孔部6が形成されている金属カバー5と、を備える。
【0048】
本実施形態では、アンテナコイル12は、中央側に有するコイル開口部12bを縦断する中心線L1を介して導線12aが一方向に周回する一方側部12a1と、導線12aが他方向に周回する他方側部12a2に二分される細長い矩形形状となる略短冊形状のコイルである。また、アンテナコイル12は、導線12aが周回する主面が通信時にリーダライタ40と
図1に示すXY平面において対向するように配置される。また、アンテナコイル12の長さ方向(Y方向)の大きさは、アンテナコイル12の面積をなるべく大きくして、通信性能を高めるために、金属カバー5の幅方向(Y方向)の大きさと略同一となっている。
【0049】
アンテナコイル12のコイル開口部12bには、外部機器からの磁束をアンテナコイル12のコイル開口部12bに直接誘導し易くするために、酸化鉄や酸化クロム、コバルト、フェライト等の磁性体から形成される磁性シート20がアンテナコイル12の中心側に有するコイル開口部12bに挿入され、アンテナコイル12に沿って互いに重畳するように配置される。このように磁性シート20を設けることによって、アンテナコイル12の電流により、金属カバー5の開口孔部6のエッジ部に電流が誘起されないようになる。
【0050】
本実施形態において、磁性シート20は、アンテナコイル12の一方側部12a1では、外部機器との対向面側の端部からコイル開口部12bにかけて互いに重畳し、アンテナコイル12の他方側部12a2では、外部機器40との対向面に対する反対面側の端部からコイル開口部12bにかけて互いに重畳するように、コイル開口部12bに挿入されて設けられている。このように、磁性シート20がアンテナコイル12の幅方向(X方向)に亘ってアンテナコイル12と重畳するようにして、コイル開口部12bに挿入されて配置されることによって、金属カバー5の開口孔部6に進入した外部機器40からの磁束が磁性シート20に沿って、アンテナコイル12のコイル開口部12bを通り抜けて、金属カバー5の先端5a側から外部に抜けて磁界ループを形成するようになる。
【0051】
また、本実施形態では、外部機器40からの磁束をより多くアンテナコイル12のコイル開口部12bに直接導入し易くするために、磁性シート20は、コイル開口部12bの両端に亘って設けられるように、コイル開口部12bに挿入されてアンテナコイル12に沿って互いに重畳するように配置されている。すなわち、磁性シート20は、コイル開口部12bの長さ方向(Y方向)を満たす幅のものが当該コイル開口部12bに挿入されている。
【0052】
さらに、本実施形態では、アンテナコイル12は、
図2(B)に示すように、少なくとも金属カバー5の外部機器40との対向面5cに対する裏側面5bにおける金属カバー5の端部5aと開口孔部6との間の領域に重畳するように設けられることを特徴とする。このように、本実施形態では、金属カバー5の裏側面5bにおける金属カバー5の端部5aと開口孔部6との間の領域に、磁性シート20がコイル開口部12bに挿入されたアンテナコイル12を重畳するように設けている。
【0053】
このため、外部機器40からの磁束が金属カバー5に設けられた各種機能素子用の開口孔部6から進入して、磁性シート20に沿ってアンテナコイル12のコイル開口部12bを通り抜けて、金属カバー5の端部5aから外部に抜けて磁界ループを形成するので、より高い通信性能を確保できる。このように、金属カバー5の裏面5b側の端部5aと開口部6との間の領域に、細長い矩形形状のアンテナコイル12と磁性シート20を配置することよって、金属カバー5の強度を確保した上で、実装制約の少ない高性能のNFCアンテナモジュールを実現できる。すなわち、カメラ等の各機能素子用の開口孔部6が設けられた金属カバー5の裏面5bの端部5aと開口孔部6との間の領域に細長い矩形形状のNFCアンテナを配置する場合に、新たに開口部やスリットを追加する必要が無く、強度の高い安価な金属カバー5を実現することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、アンテナ装置1のアンテナコイル12は、そのコイル開口部12bを介して幅方向(X方向)に対向する導線12aが互いに近接する細長い矩形形状となっているが、金属カバー5の開口孔部6が端部5aに近接して配置された場合には、細長い矩形形状のアンテナコイル12を実装することが困難となる。また、アンテナコイル12の面積が小さくなると、コイル開口部12bを通過する外部機器40からの磁束量が減少するので、アンテナ装置1の通信性能が下がる。
【0055】
本発明者は、前述した本発明の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、アンテナモジュールの形状を金属カバーの開口孔部との干渉を回避する形状とすることによって、実装制約の少ない高性能のNFCアンテナモジュールを実現できることを見出し、かかる知見に基づき更に研究を行った結果、本発明を完成するに至った。具体的には、磁性シートに金属カバーの開口孔部と重畳する部位に欠損部を形成して、アンテナコイルが当該欠損部を迂回するように巻回する構成とする。
【0056】
このような構成とすることによって、アンテナモジュールを構成するアンテナコイルと磁性シートは、金属カバーの開口孔部と重畳しないように配置されて、実装制約の少ない高性能のNFCアンテナモジュールを実現している。以下、アンテナモジュールの形状を金属カバーの開口孔部との干渉を回避する形状とする本発明の他の実施形態に係るアンテナ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。
【0057】
図3(A)は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成の一例を示す斜視図であり、
図3(B)は、
図3(A)のB−B断面図であり、
図3(C)は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成の要部の一例を示す平面図である。
【0058】
本実施形態のアンテナ装置101は、
図3(A)乃至
図3(C)に示すように、そのコイル開口部112bを介して幅方向(X方向)に対向する導線112aが互いに近接するように平面状に巻回して設けられる略矩形形状のアンテナコイル112と、アンテナコイル112の中心側に有するコイル開口部112bに挿入されて設けられる磁性シート120と、アンテナコイル112の外部機器40(
図1参照)との対向面側に配置され、その端部105a寄りにカメラ等の各種機能素子用の開口孔部106が形成されている金属カバー105と、を備える。
【0059】
本実施形態では、
図3(A)及び
図3(C)に示すように、磁性シート120に金属カバー105の開口孔部106と重畳する部位に、欠損部として磁性シート120を平面視した際に、当該磁性シート120の面積を減じるように形成される切り欠き部121が設けられ、かつ、アンテナコイル112が切り欠き部121を迂回するように巻回する構成となっていることを特徴とする。アンテナ装置101をこのような構成とすることによって、アンテナコイル112が面積を拡大させながら、金属カバー105の開口孔部106を迂回するので、電子機器の構造上の制約を受けることなく、より高い通信性能を確保できるようになる。すなわち、携帯機器に内蔵し、基板等の金属板の磁気シールド効果による磁束の集中を利用して特性を上げるスリムタイプのNFCアンテナモジュールにおいて、アンテナの一部に切り欠き部121を設けることによって、携帯機器内部の部品との干渉を回避すると共に、金属部品近傍で良好な通信特性を実現できるようになる。
【0060】
また、金属部品の近傍で効果的に性能を発揮させるためには、磁性シート120として酸化鉄や酸化クロム、コバルト、フェライト等の比透磁率の高い磁性材料を用いる必要がある。NFCアンテナモジュールで主に用いられるフェライトシートの比重が5g/cm
3程度あることから、本実施形態のアンテナ装置101の構成とすることによって、磁性シート120を構成する磁性材料の使用量を低減できるので、装置の軽量化を図った上で電子機器の構造上の制約を受けることなく、より高い通信性能を確保できるようになる。なお、
図3(A)乃至
図3(C)に示す例では、切り欠き部121の切断線は、直線となっているが、金属カバー105の開口孔部106と重畳しないように配置されていれば、曲線としてもよい。
【0061】
本実施形態では、アンテナコイル112は、中央側に有するコイル開口部112bを介して導線112aが一方向に周回する一方側部112a1と、導線112aが他方向に周回する他方側部112a2に二分される略矩形形状のコイルである。また、アンテナコイル112は、導線112aが周回する主面が通信時にリーダライタ40と
図1に示すXY平面において対向するように配置される。また、アンテナコイル112の長さ方向(Y方向)の大きさは、アンテナコイル112の面積をなるべく大きくして、通信性能を高めるために、金属カバー105の幅方向(Y方向)の大きさと略同一となっている。
【0062】
アンテナコイル112のコイル開口部112bには、外部機器からの磁束をアンテナコイル112のコイル開口部112bに直接誘導し易くするために、磁性体から形成される磁性シート120がコイル開口部112bに挿入され、アンテナコイル112に沿って互いに重畳するように配置される。このように磁性シート120を設けることによって、アンテナコイル112の電流により、金属カバー105の開口孔部106のエッジ部に電流が誘起されないようになる。
【0063】
本実施形態では、磁性シート120は、アンテナコイル112の一方側部112a1では、外部機器との対向面側の端部からコイル開口部112bにかけて互いに重畳し、アンテナコイル112の他方側部112a2では、外部機器40との対向面に対する反対面側の端部からコイル開口部112bにかけて互いに重畳するように、コイル開口部112bに挿入されて設けられている。このように、磁性シート120がアンテナコイル112の幅方向(X方向)に亘ってアンテナコイル112と重畳するようにして、コイル開口部112bに挿入されて配置されることによって、金属カバー105の開口孔部106に進入した外部機器40からの磁束が磁性シート120に沿って、アンテナコイル112のコイル開口部112bを通り抜けて、金属カバー105の先端105a側から外部に抜けて磁界ループを形成するようになる。
【0064】
また、本実施形態では、外部機器40からの磁束をより多くアンテナコイル112のコイル開口部112bに直接導入し易くするために、磁性シート120は、コイル開口部112bの両端に亘って設けられるように、コイル開口部112bに挿入されてアンテナコイル112に沿って互いに重畳するように配置されている。すなわち、磁性シート120は、コイル開口部112bの長さ方向(Y方向)を満たす幅のものが当該コイル開口部112bに挿入されている。
【0065】
さらに、本実施形態では、アンテナコイル112は、
図3(B)に示すように、少なくとも金属カバー105の外部機器40との対向面105cに対する裏側面105bにおける金属カバー105の端部105aと開口孔部106との間の領域に重畳するように設けられることを特徴とする。具体的には、本実施形態では、金属カバー105の裏側面105bにおける金属カバー105の端部105aと開口孔部106との間の領域に、磁性シート120がコイル開口部112bに挿入されたアンテナコイル112の一方側部112a1を重畳するように設けられている。
【0066】
なお、本実施形態のアンテナ装置101の構成は、
図3(A)乃至
図3(C)に示すものに限定されない。すなわち、
図4(A)乃至
図4(C)、
図5(A)乃至
図5(C)に示すように、磁性シート220、320は、アンテナコイル212、312の一方側部212a1、312a1では、外部機器との対向面に対する反対面側の端部からコイル開口部212b、312bにかけて互いに重畳し、アンテナコイル212、312の他方側部212a2、312a2では、外部機器40との対向面の端部からコイル開口部212b、312bにかけて互いに重畳するように、コイル開口部212b、312bに挿入されて設けられる構成としてもよい。
【0067】
このように、磁性シート220、320がアンテナコイル212、312の幅方向(X方向)に亘ってアンテナコイル212、312と重畳するようにして、コイル開口部212b、312bに挿入されて配置されることによって、金属カバー105(
図2(A)参照)の開口孔部106(
図2(A)参照)に進入した外部機器40からの磁束が磁性シート220、320に沿って、アンテナコイル212、312のコイル開口部212b、312bを通り抜けて、金属カバー105の先端105a(
図2(A)参照)側から外部に抜けて磁界ループを形成するようになるので、電子機器の構造上の制約を受けることなく、より高い通信性能を確保できるようになる。
【0068】
なお、
図4(A)に示す本実施形態の変形例では、一方側部212a1に有する導線212aの間隔と他方側部212a2に有する導線212aの間隔が同一であるので、外部機器40からの磁束をアンテナコイル212のコイル開口部212bに直接導入し易くなるので、
図5(A)に示す本実施形態の他の変形例よりも高い通信性能を確保できる。
【0069】
図6(A)は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成の一例を示す斜視図であり、
図6(B)は、
図6(A)のG−G断面図であり、
図6(C)は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成の要部の一例を示す平面図である。
【0070】
本実施形態のアンテナ装置401は、
図6(A)乃至
図6(C)に示すように、そのコイル開口部412bを介して幅方向(X方向)に対向する導線412aが互いに近接するように平面状に巻回して設けられる略矩形形状のアンテナコイル412と、アンテナコイル412の中心側に有するコイル開口部412bに挿入されて設けられる磁性シート420と、アンテナコイル412の外部機器40(
図1参照)との対向面側に配置され、その端部405a寄りにカメラ等の各種機能素子用の開口孔部406が形成されている金属カバー405と、を備える。
【0071】
本実施形態では、
図6(A)及び
図6(C)に示すように、磁性シート420に金属カバー405の開口孔部406と重畳する部位に、磁性シート420を平面視した際に、当該磁性シート420の面積を減じるように形成される欠損部として開口部421が設けられ、かつ、アンテナコイル412が開口部421を迂回するように巻回する構成となっていることを特徴とする。アンテナ装置401をこのような構成とすることによって、アンテナコイル412が面積を拡大させながら、金属カバー405の開口孔部406を迂回するので、電子機器の構造上の制約を受けることなく、より高い通信性能を確保できるようになる。
【0072】
また、金属部品の近傍で効果的に性能を発揮させるためには、磁性シート420として酸化鉄や酸化クロム、コバルト、フェライト等の比透磁率の高い磁性材料を用いる必要がある。NFCアンテナモジュールで主に用いられるフェライトシートの比重が5g/cm
3程度あることから、本実施形態のアンテナ装置401の構成とすることによって、第2の実施形態と同様に、磁性シート420を構成する磁性材料の使用量を低減できるので、装置の軽量化を図った上で電子機器の構造上の制約を受けることなく、より高い通信性能を確保できるようになる。なお、
図6(A)乃至
図6(C)に示す例では、開口部421の切断線は、直線となっているが、金属カバー405の開口孔部406と重畳しないように配置されていれば、曲線としてもよい。
【0073】
本実施形態では、アンテナコイル412は、中央側に有するコイル開口部412bを介して導線412aが一方向に周回する一方側部412a1と、導線412aが他方向に周回する他方側部412a2に二分される略矩形形状のコイルである。また、アンテナコイル412は、導線412aが周回する主面が通信時にリーダライタ40と
図1に示すXY平面において対向するように配置される。また、アンテナコイル412の長さ方向(Y方向)の大きさは、アンテナコイル412の面積をなるべく大きくして、通信性能を高めるために、金属カバー405の幅方向(Y方向)の大きさと略同一となっている。
【0074】
アンテナコイル412のコイル開口部412bには、外部機器からの磁束をアンテナコイル412のコイル開口部412bに直接誘導し易くするために、磁性体から形成される磁性シート420がコイル開口部412bに挿入され、アンテナコイル412に沿って互いに重畳するように配置される。このように磁性シート420を設けることによって、アンテナコイル412の電流により、金属カバー405の開口孔部406のエッジ部に電流が誘起されないようになる。
【0075】
本実施形態では、磁性シート420は、アンテナコイル412の一方側部412a1では、外部機器との対向面側の端部からコイル開口部412bにかけて互いに重畳し、アンテナコイル412の他方側部412a2では、外部機器40との対向面に対する反対面側の端部からコイル開口部412bにかけて互いに重畳するように、コイル開口部412bに挿入されて設けられている。このように、磁性シート420がアンテナコイル412の幅方向(X方向)に亘ってアンテナコイル412と重畳するようにして、コイル開口部412bに挿入されて配置されることによって、金属カバー405の開口孔部406に進入した外部機器40からの磁束が磁性シート420に沿って、アンテナコイル412のコイル開口部412bを通り抜けて、金属カバー405の先端405a側から外部に抜けて磁界ループを形成するようになる。
【0076】
また、本実施形態では、外部機器40からの磁束をより多くアンテナコイル412のコイル開口部412bに直接導入し易くするために、磁性シート420は、コイル開口部412bの両端に亘って設けられるように、コイル開口部412bに挿入されてアンテナコイル412に沿って互いに重畳するように配置されている。すなわち、磁性シート420は、コイル開口部412bの長さ方向(Y方向)を満たす幅のものが当該コイル開口部412bに挿入されている。
【0077】
さらに、本実施形態では、アンテナコイル412は、
図6(B)に示すように、少なくとも金属カバー405の外部機器40との対向面405cに対する裏側面405bにおける金属カバー405の端部405aと開口孔部406との間の領域に重畳するように設けられることを特徴とする。具体的には、本実施形態では、金属カバー405の裏側面405bにおける金属カバー405の端部405aと開口孔部406との間の領域に、磁性シート420がコイル開口部412bに挿入されたアンテナコイル412の一方側部412a1の一部を重畳するように設けられている。
【0078】
なお、本実施形態のアンテナ装置401の構成は、
図6(A)乃至
図6(C)に示すものに限定されない。すなわち、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、磁性シート520に金属カバー405(
図6(A)参照)の開口孔部406(
図6(A)参照)と重畳する部位に、欠損部として磁性シート520を平面視した際に、当該磁性シート520の面積を減じるように形成される開口部521が設けられる構成としてよい。
【0079】
すなわち、磁性シート520のみに開口部521が設けられる構成とすることによって、磁性シート520を構成する磁性材料の使用量を低減できるので、装置の軽量化を図った上で、より高い通信性能を確保できるようになる。なお、
図7(A)及び
図7(B)に示す例では、開口部521の切断線は、直線となっているが、金属カバー405の開口孔部406と重畳しないように配置されていれば、曲線としてもよい。
【0080】
また、本発明の第2及び第3の実施形態では、金属カバー105、405の裏側面105b、405bにおける金属カバー105、405の端部105a、405aと開口孔部106、406との間の領域に、磁性シート120、420がコイル開口部112b、412bに挿入されたアンテナコイル112、412の一方側部112a1、412a1の一部を重畳するように設けられているが、当該領域にアンテナコイル112、412と磁性シート120、420が設けられていなくても、磁性シート120、420を平面視した際に、当該磁性シート120、420の面積を減じるように形成される欠損部121、421が設けられ、かつ、アンテナコイル112、412が当該欠損部121、421を迂回するように巻回する構成となっていればよい。すなわち、磁性シート120、420に欠損部121、421が設けられ、かつ、アンテナコイル112、412が当該欠損部121、421を迂回するように巻回する構成となっていれば、アンテナコイル112、412が面積を拡大させながら、他の電子機器内部の部品との干渉を回避されるので、電子機器の構造上の制約を受けることなく、より高い通信性能を確保できるようになる。
【実施例】
【0081】
次に、本発明の各実施形態に係るアンテナ装置の検討評価の実施例について、図面を使用しながら説明する。本発明の一実施形態に係るアンテナ装置における作用・効果を以下の実施例、及び比較例を用いて検証した。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0082】
本発明の各実施形態に係るアンテナ装置のリーダライタとの結合係数の変動に係る効果の確認をするための基礎検討評価について、図面を使用しながら説明する。
【0083】
図8(A)は、比較例1となる従来のアンテナ装置の作用・効果を確認するための評価方法を示す斜視図であり、
図8(B)は、当該評価方法を示す平面図である。
図9(A)は、比較例2となる従来のアンテナ装置の作用・効果を確認するための評価方法を示す斜視図であり、
図9(B)は、当該評価方法を示す平面図である。
図10(A)及び
図10(B)は、比較例1及び比較例2に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。
【0084】
まず、従来技術となる比較例1では、
図8(A)及び
図8(B)に示すように、外形30mm×20mmで1.0mmピッチ4ターンのコイル612を外形70mm×150mm、厚み0.3mmのSUS板603上の3.0mmの位置に配置した。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイル41を備えるアンテナ40をコイル612に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0085】
一方、従来技術となる比較例2では、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、NFCアンテナの上部に70mm×135mm、厚み0.3mmで端部側に7mm×7mmの開口孔部606が形成されたアルミ板605を配置した。また、開口孔部606の端部は、アルミ板605の先端から10mmの位置であった。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイル41を備えるアンテナ40をコイル612に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数の分布を40mmの距離で評価した。
【0086】
比較例1及び比較例2に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである
図10(A)及び
図10(B)から、アルミ板605のカバーを配置した比較例2では、比較例1と比べて磁気的な結合が非常に小さくなり、良好な通信特性は得られないことが分かった。すなわち、通常では、開口孔部の先端からアルミ板の先端にかけてスリットを設けることで通信性能を確保する必要があることが分かった。
【0087】
次に、本発明の第1の実施形態のアンテナ装置1(
図2(A)参照)に係る実施例1では、比較例1及び2と同じアンテナ面積の60mm×10mmのスリムアンテナ12をアルミ板5の開口孔部6とアルミ板5の先端5aの間の10mm幅の裏側に配置した。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイル41を備えるアンテナ40をスリムアンテナ12に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0088】
図11(A)及び
図11(B)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の実施例1、比較例1、及び比較例2に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。
図11(A)及び
図11(B)に示すように、同じ面積のアンテナでもスリムアンテナとしたものをアルミ板5の開口孔部6とアルミ板5の先端5aの間の10mm幅の裏側に配置することによって、金属カバーとなるアルミ板5の裏側に配置されているにも関わらず、結合係数kがアルミ板5で遮蔽されない比較例1に近い値まで大幅に上昇したことが分かった。このことから、スリムアンテナ12をアルミ板5の開口孔部6とアルミ板5の先端5aの間の10mm幅の裏側に配置することによって、アルミ板5の開口孔部6にスリットを設けなくても、良好な通信性能を確保できることが分かった。
【0089】
次に、本発明の第2の実施形態のアンテナ装置101(
図3(A)参照)に係る実施例2では、比較例1及び2と同じアンテナ面積の30mm×20mmのアンテナ112をアルミ板105の開口孔部106とアルミ板105の先端105aの間の10mm幅の裏側に配置した。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイル41を備えるアンテナ40をアンテナ112に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0090】
また、本発明の第3の実施形態のアンテナ装置401(
図6(A)参照)に係る実施例3では、比較例1及び2と同じアンテナ面積の40mm×15mmのアンテナ412をアルミ板405の開口孔部406とアルミ板405の先端405aの間の10mm幅の裏側に配置した。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイル41を備えるアンテナ40をアンテナ412に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0091】
図12(A)及び
図12(B)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の実施例1、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の実施例2、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の実施例3、比較例1及び比較例2に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。
図12(A)及び
図12(B)に示すように、アルミ板105、405の開口孔部106、406を避けるようにアンテナの磁性シート120、420に切り欠き部121や開口部421と言った欠損部を設けることによって、金属カバーとなるアルミ板105、405の裏側に配置されているにも関わらず、結合係数kがアルミ板105、405で遮蔽されない比較例1よりも大きな値まで大幅に上昇したことが分かった。このことから、アルミ板105、405の開口孔部106、406を避けるようにアンテナの磁性シート120、420に欠損部を設けることによって、アルミ板105、405の開口孔部6にスリットを設けなくても、良好な通信性能を確保できることが分かった。
【0092】
次に、アルミ板の開口孔部が端部近くに配置された場合には、開口なしのアンテナを実装することが困難となることから、アルミ板開口部の端部とアルミ板端部の距離が5mmの場合について、アンテナ装置のリーダライタとの結合係数の変動に係る効果の確認をするための基礎検討評価を行った。
【0093】
従来技術となる比較例1´では、外形30mm×20mmで1.0mmピッチ4ターンのコイルを外形70mm×150mm、厚み0.3mmのSUS板上の3.0mmの位置に配置した。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイルを備えるアンテナをコイルに対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0094】
一方、従来技術となる比較例2´では、NFCアンテナの上部に70mm×135mm、厚み0.3mmで端部側に7mm×7mmの開口孔部が形成されたアルミ板を配置した。開口孔部の端部は、アルミ板の先端から5mmの位置であった。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイルを備えるアンテナをコイルに対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数の分布を40mmの距離で評価した。
【0095】
次に、本発明の第2の実施形態のアンテナ装置101(
図3(A)参照)に係る実施例2´では、比較例1´及び比較例2´と略同一のアンテナ面積の30mm×20mmのアンテナ112をアルミ板105の開口孔部106とアルミ板105の先端105aの間の5mm幅の裏側に配置した。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイル41を備えるアンテナ40をアンテナ112に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0096】
また、本発明の第3の実施形態のアンテナ装置401(
図6(A)参照)に係る実施例3´では、比較例1´及び比較例2´と同じアンテナ面積の50mm×12mmのアンテナ412をアルミ板405の開口孔部406とアルミ板405の先端405aの間の5mm幅の裏側に配置した。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイル41を備えるアンテナ40をスリムアンテナ12に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0097】
図13(A)及び
図13(B)は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の変形例の実施例2´、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の変形例の実施例3´、比較例1の変形例となる比較例1´、及び比較例2の変形例となる比較例2´に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。
図13(A)及び
図13(B)に示すように、開口孔部がアルミ板の端部に近い場合でのアンテナに切り欠き部や開口部等の欠損部を設けることで良好な通信特性が得られることが分かった。
【0098】
次に、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置のリーダライタとの結合係数の変動に係る効果の確認をするための基礎検討評価について、図面を使用しながら説明する。
【0099】
図14(A)は、比較例3となる従来のアンテナ装置の作用・効果を確認するための評価方法を示す斜視図であり、
図14(B)は、当該評価方法を示す平面図である。
図15(A)は、比較例4となる従来のアンテナ装置の作用・効果を確認するための評価方法を示す斜視図であり、
図15(B)は、当該評価方法を示す平面図である。
図16(A)は、比較例4の変形例である比較例4´となる従来のアンテナ装置の作用・効果を確認するための評価方法を示す斜視図であり、
図16(B)は、当該評価方法を示す平面図である。
【0100】
金属板(70mm×150mm×0.3mmのSUS板)の先端近傍(先端から10mm)にNFCアンテナを配置した場合に対向する円形アンテナ(直径70mmの2巻コイル)を移動した場合のアンテナ間の磁気的結合係数をシミュレーションで求めた。NFCアンテナと対向する円形アンテナの距離は40mmである。
【0101】
従来技術となる比較例3では、
図14(A)及び
図14(B)に示すように、NFCアンテナは、外形30mm×20mmの4巻コイルであり、アンテナコイル712の裏面には、0.1mm厚みのフェライトシート720を貼り付けた。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイルを備えるアンテナをコイルに対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0102】
従来技術となる比較例4では、
図15(A)及び
図15(B)に示すように、NFCアンテナは、50mm×12mmの5巻コイル812の中央の開口にフェライトシート820を挿入したスリムタイプとした。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイルを備えるアンテナをコイルに対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0103】
従来技術となる比較例4´では、
図16(A)及び
図16(B)に示すように、NFCアンテナ812´は、50mm×5mmの5巻コイルの中央の開口にフェライトシート820´を挿入したスリムタイプとした。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイルを備えるアンテナをコイルに対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0104】
一方、本発明の第2の実施形態に係る実施例4のNFCアンテナ101は、50mm×12mmの5巻コイル112の中央の開口112bにフェライトシート120を挿入したスリムタイプであり、部品と干渉する部分に20mm×7mmの凹部からなる切り欠き部121を設けた。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイルを備えるアンテナをコイル512に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0105】
図17(A)及び
図17(B)は、本発明の第2の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の実施例4、比較例3、比較例4、及び比較例4´に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。
【0106】
図17(A)及び
図17(B)に示すように、比較例3と比較例4の結果から、金属対応のスリムアンテナにすることで同一面積のアンテナで2倍近い性能が得られることが分かった。一方、比較例4と比較例4´の結果から、携帯機器内部の部品と干渉しないように、アンテナ幅を従来技術となるconventionalタイプの5mmまで細くすると特性が大きく低下することが分かった。これに対して、本発明の第2の実施形態に係る実施例4の結果から、部品の干渉を回避してアンテナに切り欠き部121となる凹部を設けたとしても、当該conventionalタイプと比較して約40%の特性改善が達成できた。また、アンテナ面積は、25%低減できた。
【0107】
次に、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置のリーダライタとの結合係数の変動に係る効果の確認をするための基礎検討評価について、図面を使用しながら説明する。
図18(A)は、比較例5乃至7となる従来のアンテナ装置の作用・効果を確認するための評価方法を示す斜視図であり、
図18(B)は、当該評価方法を示す平面図である。
【0108】
従来技術となる比較例5では、
図18(A)及び
図18(B)に示すように、NFCアンテナは、外形45mm×12mm、5ターンのコイル912の中央部開口に外形40mm×12mm、厚み0.2mmのフェライトシート920を挿入したものを使用した。そして、NFCアンテナを100mm×100mm×0.3mmのアルミ板903の端部に0.15mmのギャップで配置した。このとき、NFCアンテナは、面積の半分がアルミ板903の外に出ていた。そして、外部機器となるReference PICC140のコイル141とNFCアンテナの距離を40mmとし、コイル912に対してReference PICC140をX方向及びY方向に移動させて磁気的な結合係数kの分布を評価した。
【0109】
同様にアンテナ外形を35mm×12mm(フェライト:30mm×12mm)とした場合の比較例6、25mm×12mm(フェライト:20mm×12mm)とした場合の比較例7の特性をそれぞれ評価した。各アンテナに用いるフェライトシートの量は、それぞれ比較例5の−25%、−50%であった。
【0110】
図19(A)及び
図19(B)は、比較例5乃至7に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。
図19(A)及び
図19(B)に示すように、アンテナの面積の低減に伴ってフェライトシートの量を減少させると、磁気的な結合係数kの値も減少することから、通信性能が低下することが分かった。
【0111】
これに対して、本発明の第3の実施形態の変形例に係る実施例5のNFCアンテナは、50mm×12mmの5巻コイル512の中央の開口512bにフェライトシート520を挿入したスリムタイプであり、フェライトシート520の中央側の部分に12mm×10mmの開口部521を設けた。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイルを備えるアンテナをコイル512に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0112】
一方、本発明の第3の実施形態の変形例に係る実施例5´のNFCアンテナは、50mm×12mmの5巻コイル512の中央の開口512bにフェライトシート520を挿入したスリムタイプであり、フェライトシート520の中央側の部分に24mm×10mmの開口部521を設けた。そして、同様にして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイルを備えるアンテナをコイル512に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0113】
図20(A)及び
図20(B)は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の変形例となる実施例5、実施例5´、比較例5、比較例6、及び比較例7に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。
【0114】
比較例5乃至7では、フェライトシートの面積が減少するにつれて、磁気的な結合係数kの値が低減していたが、フェライトシート520の長さ方向(Y方向)の大きさを変えずに、フェライトシート520の中央側に開口部521を設けた実施例5及び実施例5´では、フェライトの使用量が比較例6、比較例7とそれぞれ同じ使用量であるにも関わらず、大きく通信特性が改善していることが分かった。具体的には、比較例6(−25%)と実施例5´(−50%)が略同等の通信特性であった。すなわち、フェライトシート520を構成するフェライトの使用量を同量に減少させた場合でも、磁性シート520がコイル開口部の両端に亘って設けられるように、コイル開口部に挿入されてアンテナコイル512に沿って互いに重畳するように配置されることによって、より高い通信性能が確保できることが分かった。
【0115】
これに対して、本発明の第3の実施形態に係る実施例6のNFCアンテナは、50mm×12mmの5巻コイル412の中央の開口412bにフェライトシート420を挿入したスリムタイプであり、フェライトシート420の中央側の部分に12mm×10mmの開口部421を設けた。そして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイルを備えるアンテナをコイル412に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0116】
一方、本発明の第3の実施形態の実施例6´のNFCアンテナは、50mm×12mmの5巻コイル412の中央の開口412bにフェライトシート420を挿入したスリムタイプであり、フェライトシート420の中央側の部分に24mm×10mmの開口部421を設けた。そして、同様にして、直径70mmで1.5mmピッチ2ターンの円形コイルを備えるアンテナをコイル412に対してX方向及びY方向にそれぞれ移動させた際の磁気的な結合係数kの分布を40mmの距離で評価した。
【0117】
図21(A)及び
図21(B)は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の実施例6、実施例6´、比較例5、比較例6、及び比較例7に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。
【0118】
前述した比較例5乃至7では、フェライトシートの面積が減少するにつれて、磁気的な結合係数kの値が低減していたが、フェライトシート420の長さ方向(Y方向)の大きさを変えずに、フェライトシート420の中央側に開口部421を設けて、かつ、アンテナコイル512が当該開口部421を迂回するように巻回された実施例6及び実施例6´では、フェライト420の使用量が比較例6、比較例7とそれぞれ略同じ使用量でも、大きく通信特性が改善していることが分かった。また、前述した実施例6と比較して比較例5乃至7に対する改善効果は、低下するものの、アンテナ中央の開口部421にコネクタ等の部品を配置することが可能となり、実装の制約が大きく改善されることが分かった。
【0119】
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0120】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、アンテナ装置の構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。