特許第6799991号(P6799991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799991
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】回動体装置及び収納装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 3/14 20060101AFI20201207BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   E05D3/14 Z
   B60R7/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-208728(P2016-208728)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-71076(P2018-71076A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上原 信真
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 慎也
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−229160(JP,A)
【文献】 実開昭62−160074(JP,U)
【文献】 特開平08−193455(JP,A)
【文献】 特開2000−211437(JP,A)
【文献】 特開2008−213545(JP,A)
【文献】 特開平08−093300(JP,A)
【文献】 米国特許第05471709(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00−9/00
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動体と、
この回動体を基体に対して回動させるヒンジ装置とを具備し、
前記ヒンジ装置は、前記基体と前記回動体の一端側とを連結する四節リンクを構成する第1及び第2のリンク部材を備え、
前記回動体と前記第1のリンク部材とのいずれか一方は、前記回動体の閉状態での前記第2のリンク部材に対する前記回動体の回動方向と前記基体に対する前記第1のリンク部材の回動方向とのそれぞれに対して異なる所定方向に沿って設けられた長穴を有し、
前記ヒンジ装置は、
前記長穴に挿通されて前記回動体と前記第1のリンク部材との他方に固定された可動軸と、
前記第1のリンク部材及び前記第2のリンク部材の回動に連動して、前記回動体の閉状態から開状態へと、前記可動軸を前記長穴に沿う方向からその交差方向へ方向を変えながら前記第2のリンク部材に対して付勢する付勢部材とをさらに備え、
前記回動体は、閉状態から、前記付勢部材の付勢により前記可動軸が前記長穴に対して移動することで前記第1のリンク部材に対して前記回動体の一端側に逃げつつ回動する
ことを特徴とする回動体装置
【請求項2】
収納部及びこの収納部に連通する開口部を備えた基体としての収納体と、
この収納体の開口部の少なくとも一部を回動体の回動により開閉可能に設けられた請求項記載の回動体装置と
を具備したことを特徴とする収納装置。
【請求項3】
回動体装置は、収納体に対して対をなして設けられ、それぞれの回動体の他端側を対向させてこれら回動体が互いに対称な方向に回動するように配置された
ことを特徴とする請求項記載の収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動体を基体に対して回動させるヒンジ装置を有する回動体装置及びこれを備えた収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の運転席と助手席との間に配設され、上面などに開口部を有する本体としての収納体であるボックス本体及びこのボックス本体の開口部を開閉する回動体としての蓋体を備えた収納装置としてのコンソールボックスが知られている。
【0003】
このような構成において、蓋体をボックス本体に対して直接的に回動可能に軸支する場合、蓋体の回動時にこの蓋体の回動軸近傍とボックス本体との干渉を避けるために、蓋体やボックス本体に切り欠きなどの加工を施す必要があるなど、設計の自由度を低下させる。
【0004】
そこで、蓋体をボックス本体に対して四節リンク(二軸ヒンジ)により回動可能に連結することで、蓋体の回動軸の位置を回動に伴い変化させ、この回動軸近傍で蓋体とボックス本体との干渉を避ける構成が知られている(例えば特許文献1ないし4参照。)。
【0005】
しかしながら、これらの構成では、蓋体の回動軸の位置がボックス本体から離れる方向に移動するため、例えば蓋体を一対設けて両開き(観音開き)とするなどの場合(例えば、特許文献5参照。)、互いに対向して配置される蓋体どうしが回動時に干渉しないように、それぞれの蓋体の先端の背面側に切り欠きなどを設ける必要がある。このような切り欠きは、見栄えを低下させるだけでなく、互いに対向する蓋体の先端間に隙間を生じさせるため、例えば蓋体を閉じた状態にも拘らず、蓋体間の隙間からごみやコインなどの薄板状の異物などがボックス本体内へと落下しないように、別途の部材や構造を追加するなどの必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−74946号公報 (第3−6頁、第3−5図)
【特許文献2】特開平4−328045号公報 (第2−3頁、図3−5)
【特許文献3】実開平5−83253号公報 (第5−9頁、図7−10)
【特許文献4】特開平6−229160号公報 (第3頁、図1−2)
【特許文献5】特開2000−211437号公報 (第3頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、見栄えを低下させることなく開閉時に蓋体が干渉しないコンソールボックスの蓋構造が求められている。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、見栄えを低下させることなく回動時の回動体の干渉を防止できる回動体装置及びこれを備えた収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の回動体装置は、回動体と、この回動体を基体に対して回動させるヒンジ装置とを具備し、前記ヒンジ装置は、前記基体と前記回動体の一端側とを連結する四節リンクを構成する第1及び第2のリンク部材を備え、前記回動体と前記第1のリンク部材とのいずれか一方は、前記回動体の閉状態での前記第2のリンク部材に対する前記回動体の回動方向と前記基体に対する前記第1のリンク部材の回動方向とのそれぞれに対して異なる所定方向に沿って設けられた長穴を有し、前記ヒンジ装置は、前記長穴に挿通されて前記回動体と前記第1のリンク部材との他方に固定された可動軸と、前記第1のリンク部材及び前記第2のリンク部材の回動に連動して、前記回動体の閉状態から開状態へと、前記可動軸を前記長穴に沿う方向からその交差方向へ方向を変えながら前記第2のリンク部材に対して付勢する付勢部材とをさらに備え、前記回動体は、閉状態から、前記付勢部材の付勢により前記可動軸が前記長穴に対して移動することで前記第1のリンク部材に対して前記回動体の一端側に逃げつつ回動するものである。
【0010】
求項記載の収納装置は、収納部及びこの収納部に連通する開口部を備えた基体としての収納体と、この収納体の開口部の少なくとも一部を回動体の回動により開閉可能に設けられた請求項記載の回動体装置とを具備したものである。
【0011】
請求項記載の収納装置は、請求項記載の収納装置において、回動体装置は、収納体に対して対をなして設けられ、それぞれの回動体の他端側を対向させてこれら回動体が互いに対称な方向に回動するように配置されたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の回動体装置によれば、付勢部材の付勢力が四節リンクに充分に伝達され、可動軸と連結される回動体が開くときのぐらつきを抑制しつつ閉状態からの回動時に回動体が第1のリンク部材に対して一端側に逃げることが可能となり、例えば基体や回動体に干渉防止用の切り欠きなどを設けて見栄えを低下させることなく、回動時の回動体の干渉を防止できる。
【0013】
求項記載の収納装置によれば、上記の回動体装置を備えることで、収納体や回動体に干渉防止用の切り欠きなどを設ける必要がないため、この切り欠きから収納体の内部が外部から見えたり、回動体により収納体の開口部を閉じた状態で異物などが外部から収納体内に入り込んだりせず、見栄えを低下させることなく回動時の回動体の干渉を防止できるとともに、収納装置としての収納性を確保できる。
【0014】
請求項記載の収納装置によれば、請求項記載の収納装置の効果に加えて、収納体に対して対をなして回動体装置を設け、これら回動体装置のそれぞれの回動体の他端側を対向させてこれら回動体が互いに対称な方向に回動するように、すなわち開口部を回動体もよって両開きとしても、回動体に加工などを施さなくても、ヒンジ装置によって各回動体が互いに接近して干渉することなく円滑に回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態の回動体装置の回動体による開口部の閉状態での一部を模式的に示す側面図である。
図2】同上回動体の閉状態と開状態との中間状態での一部を模式的に示す側面図である。
図3】同上回動体による開口部の開状態での一部を模式的に示す側面図である。
図4】同上回動体装置のヒンジ装置の回動方向と長穴との方向を模式的に示す側面図である。
図5】同上回動体装置の回動体の開動作を模式的に示す説明図である。
図6】同上ヒンジ装置を示す分解斜視図である
図7】同上ヒンジ装置を示す斜視図である。
図8】(a)は同上回動体装置を備えた収納装置の開口部の閉状態を示す斜視図、(b)は同上収納装置の開口部の開状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0017】
図8(a)及び図8(b)において、10は収納装置としてのコンソールボックスで、このコンソールボックス10は、例えば自動車の車両の前席すなわち運転席と助手席との間に位置するセンタコンソールの一部を構成する。そして、このコンソールボックス10は、自動車の車体側に取り付けられる基体としての収納体であるボックス本体12と、このボックス本体12に対して回動可能に設けられた回動体装置としての蓋装置13とを備えている。なお、以下、前後方向、両側方向及び上下方向などの方向は、コンソールボックス10を車体に取り付けた状態を基準として説明する。
【0018】
ボックス本体12は、例えば合成樹脂により箱状に形成されている。このボックス本体12は、物品を収納する収納部21を内部に区画している。また、このボックス本体12の上部は、収納部21と連通する開口部22となっている。本実施の形態では、この開口部22は、例えば四角形状に設けられている。また、この開口部22(ボックス本体)12は、前後方向に長手状に設けられている。
【0019】
一方、蓋装置13は、ボックス本体12の開口部22を開閉可能に設けられている。この蓋装置13は、回動体としての蓋体25と、この蓋体25をボックス本体12に対して回動可能に連結するヒンジ装置26とを備えている。また、この蓋装置13は、開口部22を閉塞した閉状態に蓋体25を保持する図示しないロック機構を備えていてもよい。そして、この蓋装置13は、ボックス本体12に対して対をなして備えられ、それぞれの蓋体25が互いに対称な方向に回動するように配置されている。本実施の形態では、蓋装置13は、左右一対備えられ、各蓋体25が左右対称に回動して開口部22を開閉するように構成されている。
【0020】
蓋体25は、開口部22を開閉可能とする回動体本体としての蓋体本体31と、この蓋体本体31に一体的に固定された回動体連結部としての蓋体側リンク部材32とを備えている。
【0021】
蓋体本体31は、リッドなどとも呼ばれ、ボックス本体12の開口部22を回動により開閉するものである。蓋体本体31は、開口部22を覆う任意の形状とすることができるが、例えば本実施の形態では、開口部22を左右に略二分割した大きさに形成されている。したがって、本実施の形態の蓋体本体31は、前後方向に長手状の四角形状に形成されている。また、この蓋体本体31は、ボックス本体12の上部に位置し、乗員が肘などを乗せるアームレストとして機能することもできる。この蓋体本体31は、例えば皮革、あるいは布などによって覆われていてもよい。なお、この蓋体本体31は、例えば薄箱状とし、上部を下部に対して長手方向にスライド可能、あるいは回動可能などとすることで、小物などを収納できる回動体収容部(蓋体収容部)を内部に構成してもよい。
【0022】
図1ないし図7に示す蓋体側リンク部材32は、蓋体25(蓋体本体31)とヒンジ装置26とを連結し、後述する四節リンクの連接棒を構成するものである。本実施の形態において、この蓋体側リンク部材32は、ヒンジ装置26に対応して一対設けられている。この蓋体側リンク部材32は、例えば一対の側面部34,34を備えている。また、この蓋体側リンク部材32は、連結面部35を備えている。さらに、この蓋体側リンク部材32は、取付部36を備えている。また、この蓋体側リンク部材32は、軸支穴37を備えている。さらに、この蓋体側リンク部材32は、回動体側連結穴である連結穴38を備えている。そして、この蓋体側リンク部材32は、例えば金属により形成されている。
【0023】
側面部34,34は、互いに離れて配置されている。本実施の形態において、これら側面部34,34は、前後に離れて左右方向に沿ってそれぞれ配置されて互いに略平行となっている。各側面部34は、略L字状に形成されている。すなわち、各側面部34は、一端側から他端側に向かって略90°屈曲して設けられている。
【0024】
連結面部35は、側面部34,34を互いに連結して設けられている。
【0025】
取付部36は、蓋体側リンク部材32を蓋体本体31に取り付ける部分である。この取付部36は、各側面部34に設けられている。この取付部36は、例えば各側面部34から、他方の側面部34とは反対方向に向かって板状に延出されている。
【0026】
軸支穴37は、蓋体側リンク部材32(側面部34)の端部(開口部22の外縁側)に開口されている。この軸支穴37は、例えば丸孔状に形成されている。そして、両側面部34の軸支穴37は、前後方向に見て同軸上に位置している。
【0027】
連結穴38は、蓋体側リンク部材32(側面部34)の他端側で、軸支穴37に対して離れた位置に設けられている。本実施の形態では、この連結穴38は、軸支穴37に対して例えば蓋体25の閉状態で上側に離れた位置に設けられている。また、本実施の形態において、この連結穴38は、例えば丸孔状に形成されている。
【0028】
そして、ヒンジ装置26は、第1のリンク部材41と、第2のリンク部材42と、第1ないし第3の回動軸43〜45と、可動軸であるスライド軸46と、付勢部材であるトーションばね47とを備え、蓋体側リンク部材32及び固定部材48とともに四節リンク(本実施の形態ではてこクランク機構)を構成している(図6及び図7)。そして、このヒンジ装置26は、固定部材48を介してボックス本体12に固定されているとともに、蓋体側リンク部材32を介して蓋体25(蓋体本体31)と連結されている。本実施の形態では、ヒンジ装置26は、例えば蓋体25毎に一対ずつ設けられている。なお、以下、左右の蓋体25に対応するヒンジ装置26は、基本的に左右対称な構成であるため、一方についてのみ説明し、他方の説明を省略する。
【0029】
ここで、固定部材48は、四節リンクの固定リンクを構成するもので、ボックス本体12の側面部に固定される被固定部51を備えている。また、この固定部材48は、ヒンジ装置26と連結される連結部52を備えている。さらに、この固定部材48は、(第1及び第2の)取付穴53,54を備えている。そして、この固定部材48は、例えば金属により形成されている。
【0030】
被固定部51は、ボックス本体12の側面部に沿って板状に形成されている。
【0031】
連結部52は、ボックス本体12の側面部に対して交差(直交)する方向、本実施の形態では左右方向に沿って設けられている。本実施の形態では、この連結部52は、一対設けられ、互いに離れて配置されている。また、本実施の形態では、連結部52,52は、前後に離れて左右方向に沿ってそれぞれ配置されて互いに略平行となっている。
【0032】
取付穴53は、第1のリンク部材41をボックス本体12に対して回動可能に軸支するものである。この取付穴53には、第1の回動軸43が挿通される。この取付穴53は、連結部52に設けられている。また、この取付穴53は、円孔状に設けられている。そして、両連結部52の取付穴53は、前後方向に同軸上に位置している。
【0033】
取付穴54は、第2のリンク部材42をボックス本体12に対して回動可能に軸支するものである。この取付穴54には、第2の回動軸44が挿通される。この取付穴54は、連結部52に設けられている。また、この取付穴54は、取付穴53に対して離れて位置している。本実施の形態において、この取付穴54は、取付穴53の下方に離れて位置している。さらに、この取付穴54は、円孔状に設けられている。そして、両連結部52の取付穴54は、前後方向に同軸上に位置している。
【0034】
第1のリンク部材41は、蓋体25(蓋体本体31)とヒンジ装置26とを連結し、四節リンクの往復回動(揺動)するてこを構成するものである。この第1のリンク部材41は、蓋体25の閉状態で第2のリンク部材42に対して開口部22の開側、例えば一対の第1の側面部61,61を備えている。また、この第1のリンク部材41は、第1の連結面部62を備えている。さらに、この第1のリンク部材41は、第1の固定軸支穴63を備えている。さらに、この第1のリンク部材41は、ヒンジ装置側連結穴である長穴64を備えている。そして、この第1のリンク部材41は、例えば金属により形成されている。
【0035】
第1の側面部61は、互いに離れて配置されている。本実施の形態において、これら第1の側面部61,61は、前後に離れて左右方向に沿ってそれぞれ配置されて互いに略平行となっている。
【0036】
第1の連結面部62は、第1の側面部61,61を互いに連結して設けられている。
【0037】
第1の固定軸支穴63は、第1のリンク部材41をボックス本体12(固定部材48)に対して所定の固定位置で回動可能に軸支するものである。この第1の固定軸支穴63は、第1の回動軸43が挿通され、この第1の回動軸43によって取付穴53と同軸に配置されている。第1のリンク部材41(第1の側面部61)の一端部(開口部22の中心側)に開口されている。この第1の固定軸支穴63は、例えば丸孔状に形成されている。そして、両側面部61の第1の固定軸支穴63は、前後方向に見て同軸上に位置している。
【0038】
長穴64は、第1のリンク部材41を蓋体25(蓋体側リンク部材32)に対して可動位置で回動可能に軸支するものである。この長穴63は、スライド軸46が移動可能(スライド可能)に挿通され、このスライド軸46によって連結穴38と連結されている。この長穴64は、第1のリンク部材41(第1の側面部61)の他端部(開口部22の外縁側)に開口されている。この長穴64は、第2のリンク部材42に対する蓋体25(蓋体側リンク部材32)の回動方向D1とボックス本体12(固定部材48)に対する第1のリンク部材41の回動方向D2とのそれぞれに対して異なる方向に沿って設けられている(図4)。例えば、この長穴64は、本実施の形態において、蓋体25により開口部22を閉塞する閉状態におけるスライド軸46の位置での回動方向D1の接線方向に沿って長手状に設けられている。換言すれば、この長穴64は、閉状態に置ける蓋体側リンク部材32の軸支穴37と連結穴38との中心(第1及び第2のリンク部材41,42と蓋体側リンク部材32との連結位置)を結ぶ仮想線L1に対して交差(直交)する方向(仮想線L2方向)に沿って長手状に設けられている。すなわち、この長穴64は、第1のリンク部材41の回動方向D2に対して直交する方向に沿って、言い換えると回動方向D2の径方向に沿って長手状に設けられている。この長穴64は、第1のリンク部材41の両端方向に沿って長手状となっている。そして、両側面部61の長穴64は、前後方向に見て同位置に配置されている。
【0039】
第2のリンク部材42は、蓋体25(蓋体本体31)とヒンジ装置26とを連結し、四節リンクの回動するクランクを構成するものである。この第2のリンク部材42は、例えば一対の第2の側面部71,71を備えている。また、この第2のリンク部材42は、第2の連結面部72を備えている。さらに、この第2のリンク部材42は、第2及び第3の固定軸支穴73,74を備えている。そして、この第2のリンク部材42は、例えば金属により形成されている。
【0040】
第2の側面部71は、互いに離れて配置されている。本実施の形態において、これら第2の側面部71,71は、前後に離れて左右方向に沿ってそれぞれ配置されて互いに略平行となっている。
【0041】
第2の連結面部72は、第2の側面部71,71を互いに連結して設けられている。本実施の形態において、この第2の連結面部72は、トーションばね47によって第2のリンク部材42を付勢する際の被付勢部となっている。
【0042】
第2の固定軸支穴73は、第2のリンク部材42をボックス本体12(固定部材48)に対して所定の固定位置で回動可能に軸支するものである。この第2の固定軸支穴73には、第2の回動軸44が挿通され、この第2の回動軸44によって取付穴54と同軸に連結されている。このため、第2のリンク部材42は、第1のリンク部材41に対して蓋体25と反対側(本実施の形態では下側)の位置に回動中心が設定されている。この第2の固定軸支穴73は、第2のリンク部材42(第2の側面部71)の一端部(開口部22の中心側)に開口されている。この第2の固定軸支穴73は、例えば丸孔状に形成されている。そして、両側面部71の第2の固定軸支穴73は、前後方向に見て同軸上に位置している。
【0043】
第3の固定軸支穴74は、第2のリンク部材42を蓋体25(蓋体側リンク部材32)に対して所定の固定位置で回動可能に軸支するものである。この第3の固定軸支穴74には、第3の回動軸45が挿通され、この第3の回動軸45によって軸支穴37と同軸に連結されている。この第3の固定軸支穴74は、第2のリンク部材42(第2の側面部71)の他端部(開口部22の外縁側)に開口されている。この第3の固定軸支穴74は、例えば丸孔状に形成されている。そして、両側面部71の第3の固定軸支穴74は、前後方向に見て同軸上に位置している。また、第2の固定軸支穴73(第2の回動軸44)と第3の固定軸支穴74(第3の回動軸45)との距離は、第1の固定軸支穴63(第1の回動軸41)と長穴64(スライド軸46)との距離よりも短く設定されている。換言すれば、第2のリンク部材42は、第1のリンク部材41よりも長さが短く形成されている。このため、第2のリンク部材42は、第1のリンク部材41よりも小さい回動半径に沿って回動するように構成されている。
【0044】
なお、これら第1及び第2のリンク部材41,42は、互いの位置関係に応じて、特に第3の回動軸45と第1のリンク部材41とが干渉しないように一部を屈曲させるなど、形状を適宜設定することが可能である(図6及び図7)が、図1ないし図5においては、各リンク部材32,41,42の動作をより明確に示すために、形状を単純化している。
【0045】
第1の回動軸43は、第1のリンク部材41と蓋体25(蓋体側リンク部材32)とを同軸で回動可能に軸支するものである。この第1の回動軸43は、第1の固定軸支穴63と取付穴53とに挿通され、これら第1の固定軸支穴63(第1のリンク部材41)と取付穴53(固定部材48)とのいずれかに固定されている。
【0046】
第2及び第3の回動軸44,45は、それぞれ第2のリンク部材42と蓋体25(蓋体側リンク部材32)とを同軸で回動可能に軸支するものである。第2の回動軸44は、第2の固定軸支穴73と取付穴54とに挿通され、これら第2の固定軸支穴73(第2のリンク部材42)と取付穴53(固定部材48)とのいずれかに固定されている。また、第3の回動軸45は、第3の固定軸支穴74と軸支穴37とに挿通され、これら第3の固定軸支穴74(第2のリンク部材42)と軸支穴37(固定部材48)とのいずれかに固定されている。
【0047】
そして、スライド軸46は、第1のリンク部材41と蓋体25(蓋体側リンク部材32)とを同軸で回動可能に軸支するとともに、第1のリンク部材41と蓋体25(蓋体側リンク部材32)との一方を他方に対して移動可能(スライド可能)に連結するものである。このスライド軸46は、長穴64と連結穴38とに挿通され、本実施の形態では蓋体25(蓋体側リンク部材32)に対して固定され、長穴64に沿って第1のリンク部材41に対して相対的に移動(スライド)可能となっている。したがって、このスライド軸46が挿通された長穴64により、このスライド軸46とともに蓋体本体31(蓋体側リンク部材32)がその回動方向に対して交差(直交)する方向に移動(スライド)可能となっている。
【0048】
トーションばね47は、第2のリンク部材42に対してスライド軸46を長穴64の長手方向に沿って付勢するものである。すなわち、このトーションばね47は、第3の回動軸45を中心として蓋体25(蓋体側リンク部材32)が開口部22の外方に向かう(他方の蓋体25に対して離れる)方向へと回動する方向に向けて蓋体25(蓋体側リンク部材32)を付勢するものである。このトーションばね47は、第3の回動軸45に取り付けられ、一方の腕部47aがスライド軸46に当接され、他方の腕部47bが第2のリンク部材42(第2の連結面部72)に当接されている。そして、このトーションばね47は、一方の腕部47aと他方の腕部47bとが互いに離れる方向、すなわち、第2のリンク部材42とスライド軸46(蓋体25(蓋体側リンク部材32))とが互いに角度を開く方向、換言すれば蓋体25が開口部22を開く方向に付勢力Fを生じさせている。なお、このトーションばね47に代えて、板ばねなどを用いることもできる
【0049】
ロック機構は、トーションばね47の付勢に対して、蓋体25が回動しないように保持するとともに、乗員などの操作により保持を解除可能なものである
【0050】
そして、コンソールボックス10は、閉状態で、蓋体25,25の蓋体本体31,31が開口部22を閉じた状態でロック機構が蓋体25,25を保持している。このとき、蓋体本体31,31は、互いに略隙間なく隣接して開口部22全体を覆っている(図1)。また、スライド軸46(長穴64)と第3の回動軸45とは上下に(開口部22の開口方向に並んで)位置する。そして、トーションばね47は、長穴64の一端(図1中の右端)に位置するスライド軸46に対して付勢力Fを生じさせた状態となっている。
【0051】
この状態で、乗員などがロック機構による各蓋体25の保持を解除し、蓋体25(蓋体本体31)を上方へと引き上げて開動作を行う。なお、トーションばね47の付勢力Fを充分に大きく設定することで、トーションばね47の付勢力Fにより蓋体25が自動的に開動作を行うようにすることもできる。
【0052】
このとき、蓋体本体31は、第1のリンク部材41、第2のリンク部材42、蓋体側リンク部材32、回動軸43〜45及びスライド軸46により四節リンクが構成されていることで、この四節リンクにより規定される第1及び第2のリンク部材41,42の回動軌跡と蓋体側リンク部材32との回動軌跡とによって規定された軌道に沿って回動する(図2及び図3)。
【0053】
より詳細に、この蓋体25の回動動作において、乗員などが蓋体25(蓋体本体31)を上方に引き上げることで、または、トーションばね47の付勢により、第2のリンク部材42が上方へと回動するとともに第1のリンク部材41が上方に回動し、これら第1及び第2のリンク部材41,42と連結された蓋体25の蓋体側リンク部材32が回動する。第2のリンク部材42は、第2の回動軸44を中心として第3の固定軸支穴74側が上方(外方)に向かって回動するのに対して、この第2の回動軸44と蓋体側リンク部材32により連結されている第1のリンク部材41は、第1の回動軸43を中心として長穴64側が上方(外方)に向かって所定位置まで回動し、続いて下方に向かって回動するように揺動する。
【0054】
このとき、第1のリンク部材41の回動軌跡と第2のリンク部材42の回動軌跡とが交差することにより、第2のリンク部材42の回動に伴って蓋体側リンク部材32の第2のリンク部材42と連結される軸支穴37とスライド軸46を介して第1のリンク部材41と連結される連結穴38との相対的な位置関係が徐々に変化する、具体的には軸支穴37(第3の回動軸45)の位置が連結穴38(スライド軸46)の位置に対して徐々に開口部22の中心側(図中の右側)へと移動することで、蓋体側リンク部材32とともに蓋体本体31(蓋体25)が軸支穴37(第3の回動軸45)を中心として回動し、蓋体25が立ち上がっていく。このため、トーションばね47による付勢方向と、長穴64の長手方向との相対的な方向関係の変化により、トーションばね47により付勢力Fが付与されたスライド軸46が、このスライド軸46と一体的に固定された蓋体側リンク部材32とともに長穴64の長手方向にて他端側(図2中の左側)へと逃げながら、換言すれば矢印A(図1)方向に移動することなく蓋体25(蓋体側リンク部材32)が回動する。このため、隣接する蓋体本体31,31どうしがそれぞれ互いに離れる方向に移動しながら、互いに干渉することなく円滑に回動する(図5)。
【0055】
そして、蓋体25が全開した開状態(最大開状態)で、蓋体本体31は上下方向に沿って閉状態に対して略90°をなす方向に沿って開口部22を開く(図3)。この状態で、スライド軸46と第3の回動軸45とは、左右に(開口部22の開口方向に対して交差(直交)する方向に並んで)位置する。このため、トーションばね47の付勢力Fは、スライド軸46に対して下方に向かって、すなわち長穴64の長手方向に対して交差(直交)する方向に向けて作用することにより、スライド軸46が長穴64に沿って移動せず、蓋体25(蓋体本体31)が開状態を維持する。
【0056】
上述したように、上記の一実施の形態によれば、ボックス本体12と蓋体25とを連結する四節リンクを第1及び第2のリンク部材41,42により構成し、第1のリンク部材41と蓋体25との連結位置を蓋体25の回動方向に対して交差する方向に沿って可動的とすることで、回動時に蓋体25が回動方向に対して交差する方向に逃げることが可能となり、例えばボックス本体12や蓋体25に干渉防止用の切り欠きなどを設けて見栄えを低下させることなく、回動時の蓋体25の干渉を防止できる。すなわち、蓋体25,25(蓋体本体31,31)間の隙間を予め狭く設定することができ、外観の向上、閉状態での中見え防止及び異物の進入防止などが可能となる。
【0057】
蓋体25と第1のリンク部材41とのいずれか一方、本実施の形態では第1のリンク部材41に、第2のリンク部材42に対する蓋体25の回動方向D1とボックス本体12に対する第1のリンク部材41の回動方向D2とのそれぞれに対して異なる方向に沿って長穴64を設け、この長穴64に挿通したスライド軸46を蓋体25と第1のリンク部材41との他方に固定し、第2のリンク部材41に対してスライド軸46を長穴64に沿う方向にトーションばね47により付勢することで、トーションばね47の付勢力Fが四節リンク(各リンク部材32,41,42)に充分に伝達されるため、効率的なばね設定が可能で、かつ、スライド軸46の位置を長穴64内で規制できるので、スライド軸46と連結される蓋体25が開くときのぐらつきを抑制できる。しかも、トーションばね47の付勢力Fを充分に大きく設定すれば、蓋体25を自動的に開く構成とすることが可能となる。
【0058】
そして、上記の蓋装置13を備えることで、ボックス本体12や蓋体25(蓋体本体31)に干渉防止用の切り欠きなどを設ける必要がないため、この切り欠きからボックス本体12の内部が外部から見えたり、蓋体25によりボックス本体12の開口部22を閉じた状態で例えばコインなどの薄い異物などが外部からボックス本体12内に入り込んだりせず、見栄えを低下させることなく回動時の蓋体25(蓋体本体31)の干渉を防止できるとともに、コンソールボックス10としての収納性を確保できる。
【0059】
また、ボックス本体12に対して対をなして蓋装置13,13を設け、これら蓋装置13,13のそれぞれの蓋体25(蓋体本体31)が互いに対称な方向に回動するように、すなわち開口部22を蓋体25(蓋体本体31)によって両開き(観音開き)としても、蓋体25に加工などを施さなくても、ヒンジ装置26によって各蓋体25が互いに接近して干渉することなく円滑に回動させることができる。
【0060】
なお、上記の一実施の形態において、長穴64と連結穴38との位置関係を反対としてもよい。すなわち、長穴を蓋体25側(蓋体側リンク部材32)に設けるとともに、連結穴を第1のリンク部材41に設けてもよい。この場合には、第1の回動軸43を第1のリンク部材41に固定することにより、上記の一実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0061】
また、車両の車室に備えられるコンソールボックス10について説明したが、この構成に限られず、車両の他の位置に配置される車両用収納ボックスなどに適用できる。また、車両用に限られず、種々の場所に取り付けられる収納装置に適用することもできる。そして、収納装置に限られず、すなわち、回動体は収納ボックスの開口部を開閉する蓋体に限られず、操作部などの部分を覆う蓋体を備えた蓋装置として適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車両の車室に備えられるコンソールボックスなどに適用できる。
【符号の説明】
【0063】
10 収納装置としてのコンソールボックス
12 基体としての収納体であるボックス本体
13 回動体装置としての蓋装置
21 収納部
22 開口部
25 回動体としての蓋体
26 ヒンジ装置
41 第1のリンク部材
42 第2のリンク部材
46 可動軸であるスライド軸
47 付勢部材であるトーションばね
64 長穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8