(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記有線通信回線に複数の障害が生じたと判断した場合には、前記増幅装置に対して誘導信号を前記有線通信回線を介して送信して、前記増幅装置を、前記複数の第1の通信装置のうちの少なくとも1つに対して前記応答無線信号の送信を誘導する監視無線信号を送信させるように制御する、
請求項3に記載のトンネル用通信システム。
前記有線通信回線は、前記複数の第1の通信装置と前記第2の通信装置を接続する第1の回線及び第2の回線を含み、前記第1の回線と前記第2の回線との端部は接続されており、
前記制御部は、
前記第2の通信装置が、前記第1の回線を介して前記複数の第1の通信装置へ第1の監視有線信号が送信されてから所定の時間内に、前記第1の回線を介して前記複数の第1の通信装置から送信された、前記第1の監視有線信号に対する応答である複数の第1の応答有線信号のうちの一部を受信することができない場合であって、且つ、
前記第2の通信装置が、前記第2の回線を介して前記複数の第1の通信装置へ第2の監視有線信号が送信されてから所定の時間内に、前記第2の回線を介して前記複数の第1の通信装置から送信された、前記第2の監視有線信号に対する応答である複数の第2の応答有線信号の一部を受信することができない場合には、
前記有線通信回線に複数の障害が生じたと判断する、
請求項2又は4に記載のトンネル用通信システム。
前記監視無線信号は、前記第2の通信装置が前記所定の時間内に受信することができた前記第1の応答有線信号又は前記第2の応答有線信号を送信した前記第1の通信装置以外の前記第1の通信装置に対して、送信される、
請求項5に記載のトンネル用通信システム。
前記複数の第1の通信装置は、前記マルチホップ型無線通信装置の通信可能距離の半分の距離に比べて短い間隔を持って配置される、請求項7に記載のトンネル用通信システム。
トンネルに沿って設置された複数の第1の通信装置と、前記複数の第1の通信装置を監視する第2の通信装置と、前記複数の第1の通信装置と前記第2の通信装置とを通信可能に接続するループ状の有線通信回線とを含むトンネル用通信システムにおける通信方法であって、
前記第2の通信装置は、前記有線通信回線に複数の障害が生じたと判断した場合には、前記複数の第1の通信装置のうちの少なくとも1つに対して応答無線信号の送信を誘導する、
ことを含む通信方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成または論理的意義を有する複数の構成を、必要に応じて端末接続装置60a及び端末接続装置60bのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、端末接続装置60a及び端末接続装置60bを特に区別する必要が無い場合には、単に端末接続装置60と称する。
【0026】
<<トンネル用通信システム1の構成の概要>>
本発明の実施形態は、道路12や鉄道等に設けられたトンネル2におけるトンネル用防災システムで用いられるトンネル用通信システム1に適用することができる。まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るトンネル用通信システム1の構成の概要を説明する。
図1は、本実施形態に係るトンネル用通信システム1の概要を示す説明図である。本実施形態に係るトンネル用通信システム1は、トンネル2内で発生した火災等の災害を迅速、且つ、的確に把握し、道路監視者に通報すると共に、初期消火活動を実施する等、災害による被害の拡大を防止する動作を実施するトンネル用防災システムのための通信システムである。従って、当該トンネル用通信システム1は、先に説明したように、どのような状況下であっても、トンネル2内に設けられた火災検知器(火災検知装置)14や消火装置16等の各種端末を監視装置(第2の通信装置)4によって監視、制御することができるよう、常に、監視装置4と端末との間が通信可能な状態に維持されることが求められる。
【0027】
トンネル用通信システム1は、
図1に示すように、道路12(詳細には、上り線12a及び下り線12b)上のトンネル2内に設けられた火災検知器14や消火装置16等の各種端末を監視する監視装置4と、これらの端末とそれぞれ接続され、信号を伝送するための複数の接続装置6(詳細には、端末接続装置60及び増幅装置66)と、監視装置4と接続装置6とを通信可能に接続するループ状の有線通信回線8と主に有する。以下に、本実施形態のトンネル用通信システム1に含まれる各種装置について説明する。
【0028】
(監視装置4)
監視装置4は、例えば、トンネル2の坑口又は上部の換気所通信機械室に設置され、後述する接続装置6を介してトンネル2内の各種端末(火災検知器14、消火装置16等)を監視、制御する。例えば、監視装置4は、火災検知器14が火災を検知したといった火災検知器14の検知状態が変化した旨の通知を受け取った場合には、集中監視センタ(図示省略)の道路管理者に検知状態の変化を通知する。さらに、監視装置4は、当該通知を受けて道路監視者が消火装置16等に対して消火を行うように操作を行った場合には、当該操作に基づく制御信号を消火装置16へ送信する。
【0029】
(接続装置6)
接続装置6は、トンネル2内の上り線道路12a及び下り線道路12bに沿って、トンネル2内の床下に一定間隔をおいて列をなすように複数設置され、これら複数の接続装置6は、後述する有線通信回線8により直列に接続される。なお、接続装置6の個数は、トンネル2や有線通信回線8の長さ等に応じて任意に選択することができる。また、接続装置6の間隔は、火災検知器14や消火装置16の性能に応じた設置間隔で決定する。
【0030】
詳細には、本実施形態に係る接続装置6には、トンネル2内の各種端末(火災検知器14、消火装置(水噴霧自動弁等)16、非常電話扉(図示省略)、非常口扉(図示省略)等)と上述の監視装置4との間のインターフェースである端末接続装置(第1の通信装置)60と、後述する有線通信回線8を送信される有線信号を増幅する増幅装置66とが含まれる。なお、
図1においては、上り線12a、下り線12bのそれぞれに、接続装置6としては、端末接続装置60及び増幅装置60を合せて10個設置されているが、本実施形態においては、10個に限定されるものではなく、トンネル2の長さに応じて設けることができる。また、
図1においては、増幅装置66は、2つの端末接続装置60を挟むように設けられているが、特にこれに限定されるものではない。増幅装置66の設置位置は、有線通信回線8の長さに応じて適切な順番、間隔で設けられていれば、特に限定されるものではないが、トンネル2の各端には増幅装置66が設けられる。
【0031】
端末接続装置60は、先に説明したようにトンネル2内の各種端末と接続されており、監視装置4から送信された信号を変換して上記端末に送信したり、当該端末からの信号を適切な信号に変換して監視装置4に送信したりすることができる。詳細には、端末接続装置60においては、火災検知器14等と接続される火災検知器側ブロック62(
図6参照)と、消火装置16等と接続される消火装置側ブロック64(
図6参照)とは、分離されて設けられている。そして、火災検知器側ブロック62は、後述する有線通信回線8のうちの回線8a(第1の回線)に接続されている。一方、消火装置側ブロック64は、有線通信回線8のうちの回線(第2の回線)8bに接続されている。このように、火災検知器側ブロック62と消火装置側ブロック64とを分離して設けることにより、一方のブロックで故障等が生じても、他方のブロックでの機能を阻害しないようにしている。
【0032】
増幅装置66は、先に説明したように有線通信回線8を送信される有線信号を増幅することができる。さらに、増幅装置66は、トンネル2内に設けられた消火栓(図示省略)に内蔵された赤色表示灯や警報ベル(図示省略)に対して電源を供給したりすることもできる。
【0033】
さらに、本実施形態に係るトンネル用通信システム1においては、各端末、さらに、端末制御装置60の火災検知器側ブロック62及び消火装置側ブロック64には、固有の識別情報(アドレス)がそれぞれ設定されている。例えば、監視装置4は、特定の端末からの通信を受信しようとする場合や、特定の端末を制御しようとする場合には、当該端末の識別情報が含まれた信号を送受信する。そして、各端末は、自己の識別情報が含まれている信号を監視装置4から受信した場合には、当該信号に基づいて所定の動作を行うこととなる。
【0034】
(火災検知器14)
トンネル2内に一定間隔で設置され、交通事故や車両故障によって発生する火災を検知し、上記監視装置4に火災を検知した旨を通報する機能を有する。また、常時、検知機能のレベルを一定に維持することができるように、監視装置4からの制御に基づき検知感度を自己試験することもできる。
【0035】
(消火装置16)
上述の火災検知器14と同様に、トンネル2内に一定間隔で設置され、発生した火災の拡大を避けるために、上記監視装置4からの制御に基づき、トンネル2内の所定の区画に対して消火用水を放水する機能を有する。例えば、消火装置16は、水噴霧自動弁等から構成される。
【0036】
(有線通信回線8)
有線通信回線8は、通信用回線と電源線とを含む多芯ケーブルから構成される、上述の監視装置4と複数の接続装置6とを通信可能に接続する伝送線である。詳細には、
図1に示すように、有線通信回線8は、複数の接続装置6を直列に、且つ、二重に接続する2つの回線8a、8bを有し、これら2つの回線8aの端部は、監視装置4から最も遠い接続装置6nにおいて接続されている(詳細には、2つの回線8aは、接続装置6n内で接続される)。すなわち、有線通信回線8は、回線8aにより、監視装置4から始まって、複数の接続装置6を介して接続装置6nまで接続し、さらに、回線8bにより、当該接続装置6nから始まって、再び複数の接続装置6を介して監視装置4まで接続するような、ループ状の形態で構成されている。より具体的には、回線8aは、監視装置4と、複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62と、複数の増幅装置66とを直列に接続する。回線8bは、監視装置4と、複数の端末接続装置60の各消火装置側ブロック64と、複数の増幅装置66とを直列に接続する。
【0037】
<<トンネル用通信システム1の動作の概要>>
以上、本実施形態に係るトンネル用通信システム1の構成の概要を説明した。続いて、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係るトンネル用通信システム1における動作(通信方法)の概要を説明する。
図2は、本実施形態に係るトンネル用通信システム1の有線通信回線8上で1つの障害100が生じた場合を説明するための説明図であって、詳細には、
図2は、わかりやすくするために、
図1の上り線12aに係るトンネル用通信システム1の構成のみを示している。
【0038】
トンネル用通信システム1においては、例えば、トンネル2内に設置されたいずれかの火災検知器14が火災を検知した場合には、当該火災検知器14は、当該火災検知器14と接続された端末接続装置60に、火災を検知した旨を通知する検知信号を送信する。端末接続装置60は、火災を検知した旨を示す情報に、当該火災検知器14に割り振られた識別情報(アドレス)を付加する。さらに、端末接続装置60は、検知信号を所定の信号形式に変換し、変換した検知信号を有線通信回線8を介して監視装置4へ所定のタイミングで送信する。そして、上記検知信号を受信した監視装置4は、当該検知信号に含まれる情報に基づき、火災を検知した火災検知器14を特定し道路管理者に通知する。
【0039】
また、上記通知に基づいて道路監視者が、上記火災検知器14の周囲の消火装置16等に対して操作を行った場合には、監視装置4は、有線通信回線8を介して当該消火装置16に接続された端末接続装置60に制御信号を送信する。さらに、上記制御信号を受信した端末接続装置60は、上記制御信号を所定の信号形式に変換し、変換した制御信号を上記消火装置16へ送信する。そして、上記制御信号を受信した上記消火装置16は、当該制御信号に含まれる情報に基づき動作する。
【0040】
従って、上述のような消火活動等を迅速に実施するためには、監視装置4は、いかなる状況下であっても、火災検知器14等の検知状況を常に把握することが求められる。
【0041】
そこで、トンネル用通信システム1においては、所定の時間T
1ごとに(例えば、数100m秒ごと)、監視装置4は、火災検知器14の検知状況を確認する動作を行っている。より具体的には、監視装置4は、定期的に、有線通信回線8を介して各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62(
図6参照)に対して監視信号を送信する。そして、当該監視信号を受信した各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、受信した監視信号の応答としての応答信号を、有線通信回線8を介して監視装置4へ送信する。また、各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、自己に接続された火災検知器14等の端末の検知状態が変化した旨(例えば、火災検知器14が火災を検知した場合、火災検知器14が故障した場合)の信号をあらかじめ端末から受信していた場合には、監視信号を受信したタイミングで、検知状態が変化した旨を通知する信号である検知信号を、有線通信回線8を介して監視装置4へ送信する。
【0042】
詳細には、監視装置4は、端末接続装置60の火災検知器側ブロック62に対して監視信号を一斉に要求する。この際、監視装置4は、
図1中の矢印Aの方向に沿って回線8aを通るように監視信号を要求する。さらに、端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、
図1中の矢印Aの方向とは逆の方向に沿って、すなわち、受信した監視信号の送信経路を監視信号が進んだ方向とは逆の方向で、回線8aを介して応答信号を送信する。
【0043】
さらに、当該応答信号には、当該応答信号を送信した端末接続装置60の火災検知器側ブロック62を識別するための識別情報(アドレス)が含まれている。従って、監視装置4は、上記監視信号を送信してから所定の時間T
2(例えば、数100m秒)内に、回線8aを介してすべての端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できた場合には、監視装置4とすべての端末接続装置60の火災検知器側ブロック62との間が通信可能な状態にあることを把握することができる。また、監視装置4は、検知信号を受信した場合には、検知信号を送信した端末接続装置60の火災検知器側ブロック62に対応する区画で火災等が発生した旨を把握することができる。
【0044】
すなわち、トンネル用通信システム1においては、監視装置4が定期的に複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62へ問い合わせを行うポーリング(polling)により、火災の発生がないか否かを確認したり、監視装置4と火災検知器14等との間が通信可能な状態にあるか否かを確認したりすることができる。なお、初回の監視信号を送信してから所定の時間T
2内に回線8aを介してすべての端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できない場合には、その後、上述のような監視信号の送信を複数回(例えば3回)繰り返してもよい。
【0045】
ところで、
図2に示すように、監視装置4から数えて図中右方向へ4番目に位置する接続装置6である増幅装置66dと、監視装置4から数えて図中右方向へ5番目に位置する接続装置6である端末接続装置60eとの間の区間の回線8aにおいて、断線、短絡等の障害100が生じた場合を例に考える。このような場合、監視装置4が回線8aを介して複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62のそれぞれに対して監視信号を送信しても、監視信号は、回線8a上の上記障害100により図中矢印Bの方向に沿って進むことができない。その結果、上記増幅装置66dから、監視装置4から最も遠い位置に設置された接続装置6nである増幅装置66nまでの間に位置する複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62(
図6参照)では、回線8aを介して当該監視信号を受信することができない。また、これら複数の端末接続装置60の各火災検知器側ブロック62は、監視信号を受信していないことから、回線8aを介して上記監視信号の応答となる応答信号を送信することもない。
【0046】
その結果、監視装置4は、監視信号を送信してから所定の時間T
2内に、監視装置4から数えて図中右方向へ2番目に位置する端末接続装置60bと、監視装置4から数えて3番目に位置する端末接続装置60cとの火災検知器側ブロック62からの応答信号を、回線8aを介して受信することができる。しかしながら、監視装置4は、上記増幅装置66dから増幅装置66nまでの間に位置する複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号を、回線8aを介して受信することができない。従って、監視装置4は、回線8aを介してすべての端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できないことから、回線8a上に障害100が発生していることを把握することができる。
【0047】
そこで、回線8a上に障害100が生じていることを把握した監視装置4は、今度は、回線8b及び回線8aを介して複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62のそれぞれに対して監視信号を要求する。この際、監視装置4は、
図2中の矢印Cに沿って、すなわち、回線8bを経由して増幅装置66nまで到達し、さらに、当該増幅装置66nから回線8aを経由して各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62まで進むような経路で、監視信号を要求する。そして、最終的には、監視信号は、上述のような矢印Cの経路にたどって端末接続装置60eの火災検知器側ブロック62に到達する。
図2に示すように、回線8b上には障害100は存在せず、さらには、増幅装置66nから端末接続装置60eの間の区間の回線8a上には障害100が存在しないことから、監視信号は、端末接続装置60eの火災検知器側ブロック62に到達することができる。すなわち、監視装置4は、回線8bを利用することにより上記の障害100を避けるように迂回する経路を使用することが可能となり、この経路を用いることにより監視信号を増幅装置66dから増幅装置66nまでの間に位置する複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62へ要求することができる。
【0048】
そして、上記監視信号を受信した端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、上述と同様に、受信した監視信号の応答としての応答信号を、監視装置4へ送信する。この際、各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、
図2中の矢印Cの経路を矢印Cで示す方向とは逆方向でたどるように、受信した監視信号の送信経路を監視信号が進んだ方向とは逆の方向で、回線8b及び回線8aの一部を介して応答信号を送信する。また、上述と同様に、各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、自己に接続された火災検知器14等の端末の検知状態が変化した場合等には、応答信号と同様に、監視信号を受信したタイミングで、検知状態が変化した旨を通知する信号である検知信号を監視装置4へ送信する。
【0049】
従って、監視装置4は、監視信号を送信してから所定の時間T
2内に、回線8b及び回線8aの一部を介して、増幅装置66dから増幅装置66nまでの間に位置する複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できた場合には、監視装置4とこれらの端末接続装置60との間が通信可能な状態にあることを把握することができる。また、監視装置4は、検知信号を受信した場合には、検知信号を送信した端末接続装置60の火災検知器側ブロック62に対応する区間で火災等が発生した旨等を把握することができる。
【0050】
このように、本実施形態に係るトンネル用通信システム1においては、有線通信回線8をループ状に構成することにより、有線通信回線8上で障害100が生じた場合であっても、通信経路を有線通信回線8上の当該障害100を避けるように迂回させることにより、監視装置4と端末接続装置60等との間を通信可能な状態に維持することができる。
【0051】
<<背景>>
しかしながら、上述のようにループ状に構成された有線通信回線8であっても、監視装置4と端末接続装置60等との間を通信可能な状態に維持できない場合がある。このような場合について、
図3を参照して説明する。
図3は、トンネル用通信システム1の有線通信回線8上で複数の障害100a、100bが生じた場合を説明するための説明図であって、
図2と同様に、わかりやすくするために、
図1の上り線12aに係るトンネル用通信システム1の構成のみを示している。
【0052】
図3に示すように、監視装置4から数えて図中右方向へ4番目に位置する増幅装置66dと、監視装置4から数えて図中右方向へ5番目に位置する端末接続装置60eとの間の区間の回線8aにおいて、1つ目の障害100aが生じている。さらに、監視装置4から数えて図中右方向へ6番目に位置する端末接続装置60fと、監視装置4から数えて図中右方向へ7番目に位置する増幅装置66gとの間の区間の回線8aにおいて、2つ目の障害100bが生じている。
【0053】
このような場合、監視装置4が図中矢印Dに示す方向に沿って回線8aを介して端末接続装置60の火災検知器側ブロック62(
図6参照)に対して監視信号を要求しても、回線8a上の障害100aにより、増幅装置66dから増幅装置66nまでの間に位置する複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、当該監視信号を受信することができない。また、監視装置4が図中矢印Eに示す経路のように回線8b及び回線8aの一部を介して端末接続装置60に対して監視信号を送信しても、回線8a上の障害100bにより、増幅装置66dから増幅装置66a(監視装置4に最も近い位置に設置された増幅装置66)までの間に位置する複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、当該監視信号を受信することができない。その結果、監視装置4からの監視信号を受信できない端末接続装置60の火災検知器側ブロック62、詳細には、障害100aと障害100bとに挟まれている端末接続装置60e、60fの火災検知器側ブロック62は、上記監視信号の応答となる応答信号を送信することもない。すなわち、
図3に示すように、有線通信回線8上で複数の障害100a、100bが生じた場合には、監視装置4と一部の端末接続装置60との間が通信可能な状態でないことがある。
【0054】
そこで、本発明者らは、上記事情を一着眼点にして本発明の実施形態に係るトンネル用通信システム1を創作するに至った。本発明の実施形態によれば、有線通信回線8に複数の障害100が生じた場合であっても、監視装置4と端末との間を通信可能な状態に維持することが可能である。以下、このような本発明の実施形態の詳細な構成及び動作を順次詳細に説明する。
【0055】
<<トンネル用通信システム1の詳細構成>>
以下に、
図4から
図7を参照して、本発明の実施形態に係るトンネル用通信システム1の詳細構成を説明する。
図4は、本発明の実施形態に係るトンネル用通信システム1の詳細構成を説明するための説明図である。
図5は、本発明の実施形態に係る監視装置4の構成を説明するための説明図である。
図6は、本発明の実施形態に係る端末接続装置60の構成を説明するための説明図である。さらに、
図7は、本発明の実施形態に係る増幅装置66の構成を説明するための説明図である。
【0056】
図4に示すように、トンネル用通信システム1は、トンネル2内に設けられた火災検知器14や消火装置16等の各種端末を監視する監視装置4と、これら端末とそれぞれ接続された複数の端末接続装置60と、複数の端末接続装置60と直列に接続される複数の増幅装置66と、監視装置4と端末接続装置60及び増幅装置66とを通信可能な状態に接続するループ状の有線通信回線8とを主に有する。なお、複数の端末接続装置60及び増幅装置66の間隔は、監視装置4と端末接続装置60及び増幅装置66との間の通信を維持することができる程度であれば、特に限定されない。より詳細には、複数の端末接続装置60及び増幅装置66の間隔は、後述する端末接続装置60及び増幅装置66の有する無線通信部606(
図6及び
図7参照)の通信可能距離(無線通信部606を中心にして無線通信部606が通信することが可能な通信可能範囲における半径)よりも短くすることが好ましい。以下に、本実施形態のトンネル用通信システム1に含まれる各種装置の詳細構成について説明する。
【0057】
<監視装置4>
監視装置4は、
図5に示されるように、制御部400と、有線通信部402と、表示部404とを主に有する。以下に、本実施形態の監視装置4に含まれる各機能部について説明する。
【0058】
(制御部400)
制御部400は、監視装置4に内蔵されるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)などのハードウェアを用いて、監視装置4の動作を全般的に制御する機能を有する。例えば、制御部400は、有線通信回線8に複数の障害100が生じたと判断した場合には、複数の端末接続装置60のうちの少なくとも1つに対して応答信号の送信を誘導するように制御する。また、制御部400は、集中監視センタ(図示省略)に設置された集中監視装置(図示省略)からの制御信号を受信した場合には、受信した制御信号に基づいて、後述する有線通信部402に対して、端末接続装置60等へ信号を送信するように制御する。
【0059】
(有線通信部402)
有線通信部402は、監視装置4の内部に設けられ、有線通信回線8を介して端末接続装置60等との間で通信を行うことができる。
【0060】
(操作表示部404)
表示部404は、例えば、監視装置4の表面に設けられ、端末接続装置60や増幅装置66等の状態を示すことができる。表示部404は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)装置や、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置等により実現される。また、表示部404は、監視装置4の表面に設けられた複数のランプ(図示省略)等であってもよい。
【0061】
<端末接続装置60>
端末接続装置60は、
図6に示されるように、制御部600a、600bと、火災検知器14側の有線通信部602aと、消火装置16側の有線通信部602bと、保安器604と、無線通信部(第1の無線通信部)606とを主に有する。以下に、本実施形態の端末接続装置60に含まれる各機能部について説明する。なお、
図6に示されるように、制御部600aと、有線通信部602aと、保安器604とを含み、火災検知器14と接続されるブロックを、火災検知器側ブロック62と称する。また、制御部600bと、有線通信部602bとを含み、消火装置16と接続されるブロックを、消火装置側ブロック64と称する。
【0062】
(制御部600a、600b)
制御部600a、600bは、端末接続装置60に内蔵されるCPU、RAMなどのハードウェアを用いて、端末接続装置60の動作を全般的に制御する機能を有する。詳細には、制御部600aは、火災検知器側ブロック62に含まれる各機能部を制御する機能を有する。また、制御部600bは、消火装置側ブロック64に含まれる各機能部を制御する機能を有する。
【0063】
(火災検知器側有線通信部602a)
火災検知器側有線通信部602aは、端末接続装置60の内部に設けられた、有線通信回線8と火災検知器14等との間のインターフェースである。詳細には、火災検知器側有線通信部602aは、監視装置4から有線通信回線8の回線8aを介して送信された信号を、所定の信号形式に変換して制御部600aを介して火災検知器14に送信したり、制御部600aを介して受信した当該火災検知器14からの信号を同様に変換して回線8aを介して監視装置4へ送信したりすることができる。なお、火災検知器側有線通信部602aは、火災検知器14との間で通信することに限定されるものではなく、例えば、非常口扉14a、非常電話扉(図示省略)、泡消火栓(図示省略)等の開け閉めを検知するリミットスイッチ接点信号を入力してもよい。
【0064】
(消火装置側有線通信部602b)
消火装置側有線通信部602bは、端末接続装置60の内部に設けられた、有線通信回線8と消火装置16等との間のインターフェースである。詳細には、火災検知器側有線通信部602aと同様に、消火装置側有線通信部602bは、監視装置4から有線通信回線8の回線8bを介して送信された信号を変換して消火装置16に送信したり、当該消火装置16からの信号を変換して回線8bを介して監視装置4へ送信したりすることができる。
【0065】
(保安器604)
保安器604は、端末接続装置60の内部に設けられ、火災検知器14を端末接続装置60に接続する。保安器604は、火災検知器14で短絡等が発生すると、当該短絡を検知し、火災検知器14を端末接続装置60から切断する。このように保安器604による切断によって、当該火災検知器14は監視装置4から監視できなくなるものの、当該火災検知器14の短絡が他の火災検知器に悪影響を及ぼすことを避けることができる。
【0066】
(無線通信部606)
無線通信部606は、端末接続装置60の内部に設けられ、他の端末接続装置60及び増幅装置66との間で、マルチホップ型の無線通信を行うことができるマルチホップ型無線通信装置である。詳細には、無線通信部606は、制御部600a及び制御部600bと接続され、監視装置4から受信した信号を変換して各制御部600a、600bを介して火災検知器14等に送信することができる。なお、マルチホップ型の無線通信については、後で詳細を説明する。また、当該無線通信部606は、同様の無線通信部(図示省略)が監視装置4に設けられている場合には、監視装置4の無線通信部とマルチホップ型の無線通信を行うことができる。
【0067】
<増幅装置66>
増幅装置66は、
図7に示されるように、制御部660と、増幅部662と、無線通信部(第3の無線通信部)664とを主に有する。以下に、本実施形態の増幅装置66に含まれる各機能部について説明する。
【0068】
(制御部660)
制御部660は、増幅装置66に内蔵されるCPU、RAMなどのハードウェアを用いて、増幅装置66の動作を全般的に制御する機能を有する。例えば、制御部660は、トンネル2内に設けられた消火栓(図示省略)に内蔵された赤色表示灯や警報ベル(図示省略)に対する電源の供給を制御することができる。また、制御部660は、有線通信回線8を介して監視装置4から、端末接続装置60及び増幅装置66との間での無線通信の開始を誘導する誘導信号を受信した場合には、後述する無線通信部664に対して、無線通信を開始するように制御する監視信号を端末接続装置60等へ送信させるように制御することもできる。
【0069】
(増幅部662)
増幅部662は、有線通信回線8を介して送信される信号を増幅する。例えば、トンネル2が長い距離である場合には当然有線通信回線8も長くなり、有線通信回線8を介して送信される信号は、有線通信回線8を通過した距離に応じて減衰する。従って、有線通信回線8上に一定の間隔を持って増幅部662を持つ増幅装置66を設けることにより、信号を増幅し、有線通信回線8を送信される信号を一定の水準の品質に維持することができる。
【0070】
(無線通信部664)
無線通信部664は、増幅装置66の内部に設けられ、上述の無線通信部606と同様に、他の端末接続装置60及び増幅装置66との間で、マルチホップ型の無線通信を行うことができるマルチホップ型無線通信装置である。なお、マルチホップ型の無線通信については、後で詳細を説明する。
【0071】
なお、
図2に示すように、監視装置4から最も遠い位置に設置された接続装置6nである増幅装置66nの内部においては(
図1及び
図2参照)、有線通信回線8の回線8aと回線8bとは接続されて、ループ状の有線通信回線8を構成している。
【0072】
また、端末接続装置60には、有線通信回線8が有する電源線によって両側の増幅装置66から直流電源が二重に供給されている。
【0073】
<<マルチホップ型無線通信について>>
以上、本実施形態に係るトンネル用通信システム1の各種装置の詳細構成について説明した。続いて、
図8及び
図9を参照して、マルチホップ型無線通信及び本実施形態に係る無線通信について説明する。
図8は、マルチホップ型無線通信を説明するための説明図であり、
図8中においては無線通信経路が実線にて示されている。また、
図9は、本実施形態に係る無線通信を説明するための説明図である。
【0074】
マルチホップ型無線通信とは、複数の無線通信装置900がそれぞれの隣接する無線通信装置900をバケツリレー式に経由して、信号を伝送していく通信技術である。マルチホップ型無線通信は、隣接する無線通信装置900間で伝送を繰り返すことにより、隣接していない無線通信装置900間での通信を可能にすることができることから、広域での通信ネットワークを構築したい場合に用いられる。
【0075】
詳細には、
図8に示す送信元となる無線通信装置900aが送信する信号には、信号を送信したい送信先の無線通信装置900kの識別情報(アドレス)が付加されている。まず、無線通信装置900aは、当該無線通信装置900aからの通信が可能な通信可能範囲内に位置する隣接する無線通信装置900b、900c、900dに当該信号を送信する。これらの無線通信装置900b、900c、900dは、上記信号を受信したものの、当該信号には自己の識別情報が含まれていないことから、自身の通信可能範囲内に位置する他の無線通信装置900に当該信号を送信する。このような送信を繰り返すことにより、最終的には、当該信号は、無線通信装置900kに送信される。
【0076】
なお、各無線通信装置900は、
図8に示すように、複数の通信経路を用いて他の無線通信装置900へ信号を送信することも可能であり、自動的に最適な通信経路を選択することも可能である。また、電波状態の悪化により特定の通信経路を介して信号を送信することができなくなった場合には、各無線通信装置900は、他の通信経路を探索して送信することも可能である。従って、マルチホップ型無線通信は、通信ネットワーク上の障害に対する耐性が高い通信であると言える。
【0077】
ところで、一般的に、無線通信は、周囲の環境等の影響により通信状態が変化しやすいことから、常時、無線通信装置900間を通信可能な状態に維持することを保証することが難しかった。また、トンネル2内での無線通信は、トンネル2は閉空間であり、さらに曲がっていることもあるため、電波の反射及び減衰が生じやすく、電波強度を高くしても長距離の通信を行うことが難しい。さらには、無線通信は、無線信号が理想的に閉空間を伝播するのではないため、通信のために専用に設けられた有線通信回線を伝播する場合と比べて、通信が不安定になる状態が生じることがある。このため、無線通信は、通信の安定性を求める防災用の通信には不向きとされてきた。このような理由により、無線通信は、従来のトンネル用通信システムに用いられることはなかった。
【0078】
しかしながら、本実施形態に係るトンネル用通信システム1においては、無線通信を利用する。ただし、本実施形態においては、無線通信のみでトンネル用通信システム1における通信ネットワークを構築するのではなく、従来のトンネル用通信システム1における有線通信の脆弱性を補うものとして無線通信を用いている。このようにすることで、本実施形態に係るトンネル用通信システム1の通信ネットワークを強固なものとすることができる。また、本実施形態においては、無線通信として、障害に対する耐性が高いマルチホップ型無線通信を用いており、トンネル用通信システム1の通信ネットワークをより強固なものとすることができる。
【0079】
より具体的には、
図9に示すように、本実施形態に係るトンネル用通信システム1は、監視装置4と、トンネル2(
図9では図示省略)内に設けられた火災検知器14等とに接続された複数の端末接続装置60と、複数の増幅装置66と、監視装置4と端末接続装置60及び増幅装置66とを接続するループ状の有線通信回線8とを主に有している。トンネル用通信システム1においては、通常の状態では、上記有線通信回線8を介した有線通信を用いて、監視装置4と端末接続装置60との間で通信を行う。一方、有線通信回線8上に複数の障害100が生じた状態では、端末接続装置60及び増幅装置66に設けられた無線通信部606を用いて、端末接続装置60及び増幅装置66との間でマルチホップ型の無線通信を行う。当該マルチホップ型無線通信においては、
図9に示すように、端末接続装置60及び増幅装置66が、隣接する端末接続装置60又は増幅装置66にバケツリレー式に信号を受け渡すことにより、無線通信を行う。なお、本実施形態においては、マルチホップ型無線通信を実現するために、複数の端末接続装置60及び増幅装置66の間隔が、マルチホップ型の無線通信装置の通信可能距離よりも短くなるように、複数の端末接続装置60及び増幅装置66を設置する。
【0080】
なお、本実施形態を日本国内等で実施する場合には、本実施形態に係るマルチホップ型無線通信は、近年、利用が可能となった920MHz帯のISMバンド(Industrial Scientific and Medical Band)を用いることが好ましい。当該周波数帯域は、半径数km程度の通信可能範囲を有することから、長距離の通信、例えば、長い距離のトンネル2のための無線通信に適用することが可能である。また、免許不要でアンテナが小さいことから防災用の端末機器通信、すなわち、トンネル用通信システム1に適用することができる。
【0081】
<<トンネル用通信システム1の動作>>
以上、本実施形態に係るマルチホップ型無線通信について説明した。続いて、
図10から
図16を参照して、本実施形態に係るトンネル用通信システム1の動作(通信方法)を説明する。
図10は、本実施形態に係るトンネル用通信システム1の動作のフローチャートである。
図11から
図16は、
図10の各ステップを説明するための説明図である。なお、
図11から
図14及び
図16は、監視装置4と、端末接続装置60との信号の送信経路を示すものであり、図中の矢印は信号の送信経路を示す。より詳細には、これらの図においては、実線の矢印を有線信号の送信経路を示し、鎖線の矢印は、有線通信回線8上に生じた障害100によって送信できなかった有線信号の、障害100が生じなかった場合に送信されるべき送信経路を示す。さらに、
図16においては、太い矢印は、無線信号の送信経路を示す。また、これらの図においては、監視装置4に最も近い増幅装置66aのみを示し、他の増幅装置66については図示を省略している。そして、これら図中には、端末接続装置60が図示されているが、これらは、端末接続装置60の火災検知器側ブロック62を意味している。
【0082】
図10に示すように、本実施形態に係るトンネル用通信システム1の動作のフローチャートには、ステップS101からステップS115までの8つのステップが含まれている。これらステップは、監視装置4が、火災検知器14等の端末の検知状況を確認するために、所定の時間T
1ごとに、繰り返し行われる。
【0083】
(ステップS101)
監視装置4は、あらかじめ決められた所定の時間T
1ごとに、
図1中の矢印Aに示す方向に沿って、有線通信回線8の回線8aを介して、端末接続装置60の火災検知器側ブロック62に対して監視信号(第1の監視有線信号)を送信する。
図11においては、図中の上側領域Fの複数の矢印に示されるように、監視装置4は、端末接続装置60の火災検知器側ブロック62へ監視信号を要求する。
【0084】
各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、上記監視信号を受信できた場合には、
図11の下側領域Gの矢印に示されるように、受信した監視信号の応答としての応答信号(第1の応答有線信号)を、回線8aを介して監視装置4へ送信する。この際、各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、上記監視信号と同じ送信経路を上記監視信号の送信方向とは逆の方向となるように(
図1中の矢印Aで示す経路を矢印Aの方向とは逆方向でたどるように)、上記応答信号を送信する。なお、各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、自己に接続された火災検知器14等の端末の検知状態が変化した場合(例えば、火災検知器14が火災を検知した場合)には、上記応答信号と同様に、検知状態が変化した旨を通知する信号である検知信号を、回線8aを介して監視装置4へ送信する(なお、
図11においては、検知信号の送信については、図示を省略している)。次いで、ステップS103へ進む。
【0085】
(ステップS103)
監視装置4は、ステップS101で上記監視信号を要求してから所定の時間T
2内に、回線8aを介してすべての端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できたか否かを判断する。監視装置4は、
図11の下側領域Gの矢印に示されるように、回線8aを介してすべての端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できた場合には、監視装置4と各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62とが回線8aを介して通信可能な状態にあるとして、動作を完了する。なお、監視装置4は、検知信号を受信した場合には、当該検知信号に基づいて、当該検知信号を送信した端末等(例えば、火災検知器14)を特定し道路管理者に通知する。
【0086】
一方、監視装置4は、
図12に示すように、回線8aを介してすべての端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できない場合には、監視装置4と端末接続装置60の火災検知器側ブロック62とが回線8aを介して通信可能な状態にないとして(回線8a上に障害100が発生していると把握して)、ステップS105へ進む。
【0087】
具体的には、
図12は、監視装置4から数えて2番目に位置する端末接続装置60bと、監視装置4から数えて3番目に位置する端末接続装置60cとの間の区間の回線8aにおいて障害100が生じている場合を示している。端末接続装置60b以降の、端末接続装置60bよりも監視装置4から遠い複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62では、回線8aを介して上記監視信号を受信することができない(
図12の上側領域Hの複数の矢印を参照)。従って、上記監視信号を受信できない上記の複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、応答信号を送信することもない。その結果、監視装置4は、上記の複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号を受信することができない(
図12の下側領域Iの矢印を参照)。
【0088】
なお、監視装置4は、すべての端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できない場合には、ステップS101及びステップS103をあらかじめ決められた所定の回数(例えば、3回)だけ繰り返してもよい。また、監視装置4は、ステップS103で応答信号が受信できなかった端末接続装置60を特定し、特定された端末接続装置60から応答信号が受信できないことを警告する警告表示を、表示部404に行わせてもよい。さらに、監視装置4は、集中監視センタ(図示省略)の道路管理者に、ステップS103で応答信号が受信できなかった端末接続装置60の名称等を通知してもよい。
【0089】
(ステップS105)
次に、監視装置4は、
図2中矢印Cに示す経路のように、回線8b及び回線8aを介して複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62のそれぞれに対して監視信号(第2の監視有線信号)を送信する。
図13においては、図中の上側領域Jの複数の矢印に示されるように、監視装置4は、端末接続装置60の火災検知器側ブロック62へ監視信号を要求する。
【0090】
端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、上記監視信号を受信できた場合には、
図13の下側領域Kの矢印に示されるように、応答信号(第2の応答有線信号)を、回線8b及び回線8aの一部を介して監視装置4へ送信する。この際、端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、上記監視信号と同じ送信経路を上記監視信号の送信方向とは逆の方向となるように(
図2中の矢印Cで示す経路を矢印Cの方向とは逆方向でたどるように)、回線8b及び回線8aの一部を介して上記応答信号を送信する。なお、各端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、自己に接続された火災検知器14等の端末の検知状態が変化した場合には、上記応答信号と同様に、検知状態が変化した旨等を通知する信号である検知信号を、回線8b及び回線8aの一部を介して監視装置4へ送信する(なお、
図13においては、検知信号の送信については、図示を省略している)。次いで、ステップS107へ進む。
【0091】
(ステップS107)
監視装置4は、ステップS105で上記監視信号を要求してから所定の時間T
2内に、回線8b及び回線8aの一部を介して、ステップS103で応答信号が受信できなかった端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できたか否かを判断する。監視装置4は、
図13の下側領域Kの矢印に示されるように回線8b及び回線8aの一部を介して上記の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できた場合には、監視装置4と、上記の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62との間が通信可能な状態にあるとして、動作を完了する。なお、監視装置4は、火災を検知した旨等を通知する検知信号を受信した場合には、検知信号に基づいて、当該検知信号を送信した端末接続装置60を特定し道路管理者に通知する。
【0092】
一方、監視装置4は、
図14に示すように、回線8b及び回線8aの一部を介して、ステップS103で応答信号が受信できなかった端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できない場合には、監視装置4と、上記の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62との間が通信可能な状態にないとして(有線通信回線8上に複数の障害100が発生していると把握して)、ステップS109へ進む。
【0093】
具体的には、
図14は、
図12と同様に、端末接続装置60bと端末接続装置60cとの間の区間の回線8aにおいて障害100が生じており、さらに、上記端末接続装置60cと、監視装置4から数えて4番目に位置する端末接続装置60dとの間の区間の回線8aにおいて障害100が生じている場合を示している。この場合には、端末接続装置60dよりも監視装置4に近い複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62では、上記監視信号を受信することができない(
図14の上側領域Lの複数の矢印を参照)。従って、上記監視信号を受信できない上記の複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62は、応答信号を送信することもない。その結果、監視装置4は、上記の複数の端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号を受信することができない(
図14の下側領域Mの矢印を参照)。なお、
図14に示す場合では、ステップS103及びステップS107の両方において、監視装置4が受信できない端末接続装置60は、監視装置4から数えて3番目に位置する端末接続装置60cとなる。
【0094】
なお、監視装置4は、ステップS103で応答信号が受信できなかった端末接続装置60の火災検知器側ブロック62からの応答信号が受信できない場合には、ステップS105及びステップS107をあらかじめ決められた所定の回数だけ繰り返してもよい。
【0095】
(ステップS109)
監視装置4は、ステップS103及びステップS107で受信することができなかった応答信号に対応する端末接続装置60を特定する。すなわち、監視装置4が、所定の時間T
2に、ステップS103において受信することができた応答信号を送信した端末接続装置60又はステップS107で受信することができた応答信号を送信した端末接続装置60以外の端末接続装置60を特定する。先に説明したように、応答信号には、当該応答信号を送信した端末接続装置60を識別するための識別情報が含まれている。従って、監視装置4は、受信した応答信号を解析することにより、どの端末接続装置60からの応答信号を受信することができたことを認識することができる。さらには、当該認識に基づいて、どの端末接続装置60からの応答信号を受信できなかったことを認識することができる。例えば、
図15に示すような、ステップS103においては、端末接続装置60cから60nまでの複数の端末接続装置60からの応答信号を受信することができなかった。さらに、ステップS107においては、端末接続装置60dから60nまでの端末接続装置60以外の端末接続装置60(具体的には、端末接続装置60b及び60c)からの応答信号を受信できなかった場合を考える。このような場合には、受信することができなかった応答信号に対応する端末接続装置60として、端末接続装置60cが特定される。次いで、ステップS111へ進む。
【0096】
また、監視装置4は、ステップS109で特定された端末接続装置60から応答信号が受信できないことを警告する警告表示を、表示部404に行わせてもよい。さらに、監視装置4は、集中監視センタ(図示省略)の道路管理者に、上記警告内容を通知してもよい。
【0097】
(ステップS111)
監視装置4は、ステップS109で特定された端末接続装置60(
図16では、端末接続装置60c)に対して、監視信号を要求する(セレクティング送信)。詳細には、
図16の上側領域Nの細い実線の矢印に示すように、監視装置4は、有線通信回線8を介して、監視装置4に最も近い増幅装置66aに対して誘導信号を送信する。そして、当該増幅装置66aは、上記誘導信号を受信したことに基づいて、ステップS109で特定した端末接続装置60に対して、無線通信による応答信号の送信を誘導する監視信号(監視無線信号)を、
図16の上側領域Nの太い矢印に示すように要求する。
【0098】
なお、ステップS111においては、監視装置4は、すべての端末接続装置60に対して、監視信号を送付してもよいが、ステップS109で特定された端末接続装置60に対してのみ監視信号を送信することが好ましい。無線通信は、先に説明したように、有線通信と比べて信号の遅延が起きやすい。そこで、本実施形態においては、なるべく遅延を生じさせないように、すなわち通信速度を向上させるように、送信する信号の数を少なくすることが好ましく、従って、ステップS111においては、ステップS109で特定された端末接続装置60に対してのみ監視信号を送信することが好ましい。
【0099】
そして、特定された端末接続装置60は、上記監視信号を受信した場合には、
図16の下側領域Pの太い矢印に示されるように、受信した監視信号の応答としての応答信号(応答無線信号)を増幅装置66aへ送信する。さらに、上記応答信号を受信した増幅装置66aは、有線通信回線8を介して、応答信号を監視装置4へ
図16の上側領域Pの細い実線の矢印に示すように送信する。なお、上記応答信号には、当該応答信号を送信した端末接続装置60を識別するための識別情報(アドレス)が含まれている。従って、監視装置4は、受信した応答信号を解析することにより、どの端末接続装置60からの応答信号を受信することができたことを認識することができる。なお、監視信号を受信した端末接続装置60は、自己に接続された火災検知器14等の端末の検知状態が変化した場合には、上記応答信号と同様に、検知状態が変化した旨を通知する検知信号を、無線通信を用いて、監視装置4へ送信する(なお、
図16においては、検知信号の送信については、図示を省略している)。次いで、ステップS113へ進む。
【0100】
(ステップS113)
監視装置4は、ステップS111で上記誘導信号を送信してから所定の時間T
2内に、増幅装置66aを介して、ステップS109で特定した端末接続装置60からの応答信号が受信できたか否かを判断する。監視装置4は、
図16の下側領域Pの複数の矢印に示されるように、ステップS109で特定したすべての端末接続装置60からの応答信号が受信できた場合には、一連の動作を終了する。なお、監視装置4は、火災を検知した旨等を通知する検知信号を受信した場合には、検知信号に基づいて、当該検知信号を送信した端末接続装置60を特定し道路管理者に通知する。一方、ステップS109で特定したすべての端末接続装置60からの応答信号が受信できなかった場合には、ステップS115へ進む。
【0101】
(ステップS115)
監視装置4は、ステップS113において受信することができなかった応答信号に対応する端末接続装置60を特定し、特定された端末接続装置60から応答信号が受信できないことを警告する警告表示を、表示部404に行わせる。さらに、監視装置4は、集中監視センタ(図示省略)の道路管理者に、上記警告内容を通知してもよい。
【0102】
ところで、従来のトンネル用通信システムにおいては、先に説明したように、
図3に示すような有線通信回線上で複数の障害が生じた場合には、監視装置と複数の障害に挟まれた端末接続装置との間で有線通信による通信ができない場合がある。しかしながら、本実施形態に係るトンネル用通信システム1においては、有線通信だけではなく、無線通信を補完的に用いることにより、上述のような場合であっても、監視装置4と端末接続装置60との間の通信を確立することができる。すなわち、本実施形態によれば、従来のトンネル用通信システムにおける有線通信の脆弱性を補うものとして無線通信を用いることにより、有線通信回線8に複数の障害が生じた場合であっても、監視装置4と端末接続装置60(端末)との間を通信可能な状態に維持することが可能である。その結果、トンネル用通信システム1の通信ネットワークを強固なものとすることができる。また、本実施形態においては、無線通信として、障害に対する耐性が高いマルチホップ型無線通信を用いることにより、トンネル用通信システム1の通信ネットワークをより強固なものとすることができる。さらに、本実施形態は、長年の運用によって信頼性の確認された従来のトンネル用通信システムを大幅に改変することなく実現することが可能である。従って、本実施形態によれば、従来のトンネル用通信システムの信頼性を確保しつつ、さらに無線通信を用いることで、さらなる高い信頼性を確保することができる。
【0103】
<<第1の変形例>>
上述の実施形態においては、複数の端末接続装置60及び増幅装置66の間隔を、無線通信部606の通信可能距離よりも短くすることにより、直列に並んだ複数の端末接続装置60及び増幅装置66の間をマルチホップ型無線通信により信号を受け渡して、無線通信を実現していた。しかしながら、直列に並ぶ複数の端末接続装置60及び増幅装置66の有する複数の無線通信部606の中に、故障している無線通信部606が存在する場合には、マルチホップ型の無線通信を用いて、監視装置4と端末接続装置60及び増幅装置66との間で通信できない場合がある。そこで、以下に、このような場合にも対応することが可能な、本発明の実施形態の第1の変形例に係るトンネル用通信システム1aを、
図17を参照して説明する。
図17は、本実施形態の第1の変形例に係るトンネル用通信システム1aを説明するための説明図である。なお、
図17中ではトンネル2の図示は省略されている。
【0104】
より具体的には、
図17に示すように、増幅装置66の図中右隣に位置する端末接続装置60aの無線通信部606が故障している場合には、増幅装置66から上記端末接続装置60aには無線通信を介して通信することができない。しかしながら、本変形例のトンネル用通信システム1aにおいては、
図17に示すように、複数の端末接続装置60及び増幅装置66の間隔を、無線通信部606の通信可能距離Qの半分よりも短くする(言い換えると、複数の端末接続装置60及び増幅装置66を、各無線通信部606の通信可能範囲に3つ以上の他の無線通信部606が含まれるように設置する)。複数の端末接続装置60及び増幅装置66の間隔を、無線通信部606の通信可能距離Qの半分よりも短くすることにより、具体的には、
図17に示される増幅装置66の無線通信部606の通信可能範囲には、上記端末接続装置60aだけでなく、当該端末接続装置60aの図中右隣に位置する端末接続装置60bが含まれることとなる。その結果、増幅装置66は、上記端末接続装置60bに無線通信を介して通信することができる。すなわち、本変形例によれば、端末接続装置60aの無線通信部606が故障した場合であっても、増幅装置66は、上記端末接続装置60bに、さらには当該端末接続装置60bを介して他の端末接続装置60に対して通信することができることから、マルチホップ型の無線通信に係る通信ネットワークを維持することができる。
【0105】
以上により、本変形例によれば、複数の端末接続装置60及び増幅装置66の間隔を、無線通信部606の通信可能距離Qの半分よりも短くすることにより、無線通信部606が故障した端末接続装置60等が存在していても、マルチホップ型の無線通信を用いて、監視装置4と他の端末接続装置60等との間を通信可能な状態に維持することができる。
【0106】
<<第2の変形例>>
上述の実施形態においては、ステップS111において、監視装置4は、監視装置4に最も近い増幅装置66aへ、ステップS109で特定した端末接続装置60に対して無線通信による監視信号の送信を開始するように誘導する誘導信号を、有線通信回線8を介して送信する。そして、上記誘導信号を受信した上記増幅装置66aは、ステップS109で特定した端末接続装置60に対して、無線通信により監視信号を送信していた。しかしながら、本実施形態においては、監視装置4は、増幅装置66aに対して誘導信号を送信することに限定されるものではなく、例えば、監視装置4は、直接、ステップS109で特定した端末接続装置60に対して、無線通信により監視信号を送信してもよい。そこで、本実施形態の第2の変形例としての監視装置4aを、
図18を参照して説明する。
図18は、本実施形態の第2の変形例に係る監視装置4aの構成を説明するための説明図である。
【0107】
図18に示すように、本変形例に係る監視装置4aは、上述の監視装置4と同様に、制御部400と、有線通信部402と、表示部404とを有する。さらに、当該監視装置4aは、無線通信部(第2の無線通信部)406を有する。なお、制御部400、有線通信部402及び表示部404については、上述の監視装置4の制御部400、有線通信部402及び表示部404と同様であるため、以下では説明を省略し、無線通信部406のみを説明する。
【0108】
(無線通信部406)
無線通信部406は、監視装置4aの内部に設けられ、端末接続装置60及び増幅装置66の無線通信部606と同様に、端末接続装置60及び増幅装置66との間で、マルチホップ型の無線通信を行うことができるマルチホップ型無線通信装置である。
【0109】
このように、本変形例においては、監視装置4aに無線通信部406を設けることにより、上述のステップS111において、監視装置4aは、直接、ステップS109で特定した端末接続装置60へ、無線通信により、応答信号(応答無線信号)の送信を誘導する監視信号(監視無線信号)を送信することができる。
【0110】
<<補足>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0111】
また、上述した実施形態の動作における各ステップは、必ずしも記載された順序に沿って処理されなくてもよい。例えば、各ステップは、適宜順序が変更されて処理されてもよい。また、各ステップは、時系列的に処理される代わりに、一部並列的に又は個別的に処理されてもよい。さらに、各ステップの処理の方法についても、必ずしも記載された方法に沿って処理されなくてもよく、例えば、他の機能部によって処理されていてもよい。
【0112】
また、上述の実施形態においては、トンネル用防災システムで用いられるトンネル用通信システム1に適用するものとして説明したが、本実施形態は、トンネル用通信システム1に適用することに限定されるものではなく、高い信頼性が求められる他の通信システムに適用することもできる。