特許第6800007号(P6800007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800007
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】樹脂成形装置および樹脂成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/56 20060101AFI20201207BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20201207BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20201207BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20201207BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   B29C43/56
   B29C43/36
   B29C33/10
   B29C45/02
   B29C43/18
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-243903(P2016-243903)
(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公開番号】特開2018-94855(P2018-94855A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 秀作
(72)【発明者】
【氏名】村松 吉和
(72)【発明者】
【氏名】花里 実
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−300961(JP,A)
【文献】 特開2016−128222(JP,A)
【文献】 特開2013−123849(JP,A)
【文献】 特開2005−186523(JP,A)
【文献】 特開2008−302535(JP,A)
【文献】 特開昭56−002146(JP,A)
【文献】 特開昭63−176115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 43/00−43/58
B29C 45/00−45/84
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置される第1プラテンおよび第2プラテンと、
前記第1プラテンおよび前記第2プラテンの間で型開閉可能に互いに対向して設けられる第1金型および第2金型と、
金型外部に設けられる脱気装置ならびに前記脱気装置と連通される第1脱気配管および第2脱気配管と、を備え、
前記第1金型は、前記第1金型と前記第2金型との間の金型内部を脱気する脱気路を有すると共に、前記第1プラテンおよび前記第2プラテンのいずれにも組み付け可能に構成されており、
前記第2金型は、前記第1プラテンおよび前記第2プラテンのいずれにも組み付け可能に構成されており、
前記第1プラテンは、前記第1脱気配管と連通される第1プラテン路を有すると共に、前記第1金型が組み付けられた状態において前記脱気路が前記第1プラテン路と連通されるように構成されており、
前記第2プラテンは、前記第2脱気配管と連通される第2プラテン路を有すると共に、前記第1金型が組み付けられた状態において前記脱気路が前記第2プラテン路と連通されるように構成されていること
を特徴とする樹脂成形装置。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂成形装置において、
前記第1金型に前記脱気路が設けられ、前記第1プラテンの中央部に前記第1金型が組み付けられ、前記第1プラテンの中央部に前記第1プラテン路が設けられることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の樹脂成形装置において、
前記第1脱気配管の中途であって前記第1プラテン路側に設けられる脱気弁を更に備えることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂成形装置において、
前記第1金型または前記第2金型の少なくともいずれか一方に設けられ、一端が金型面に開口し、他端が前記金型面と交差する側面に開口して前記金型面で被吸着物を吸着する吸着路と、
金型外部に設けられ、前記吸着路と連通される吸着配管および前記吸着配管と連通される吸着装置と、
を更に備え、
前記第1プラテン路の径が、前記吸着路の径よりも大きいことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂成形装置において、
前記第2プラテン路は、型開閉方向に貫通するように前記第2プラテンに設けられていることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項6】
互いに対向して配置され、第1路を有する第1プラテンおよび第2路を有する第2プラテンを準備する工程と、
前記第1プラテンおよび前記第2プラテンの間で型開閉可能に設けられるように、第3路を有する第1金型を前記第1プラテンに組み付け、キャビティを有する第2金型を前記第2プラテンに組み付けた後、型閉じした前記第1金型と前記第2金型との間の金型内部を前記第1路および前記第3路を介して脱気し、前記キャビティで樹脂を成形させる工程と、
前記第1プラテンおよび前記第2プラテンの間で型開閉可能に設けられるように、前記第1金型を前記第2プラテンに組み付け、前記第2金型を前記第1プラテンに組み付けた後、型閉じした前記第1金型と前記第2金型との間の金型内部を前記第2路および前記第3路を介して脱気し、前記キャビティで樹脂を成形させる工程と、
を含むことを特徴とする樹脂成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016−128222号公報(特許文献1)には、一端部がキャビティ凹部の開口部の周りに開口し、他端部が圧調節部と連通される複数の連通路を介して、型閉じした金型内部の気体を吸引して金型内部を減圧させる樹脂成形装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−128222号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、金型(クランパ)の側面(金型面と交差する面)で開口するように連通路(脱気路)が複数設けられ、複数の連通路のそれぞれに連通される複数の配管(管路)が金型外部に設けられ、連通路および配管を介して金型内部を脱気(気体を吸引)し、減圧する方式である。脱気時間を短縮する上では、このように連通路および配管を複数設ける(気体が通過する断面積を増やす)ことが有効であると考えられる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、金型の側面(金型の厚みの範囲)内で連通路が設けられなければならず、連通路に連通される配管の本数の限界(配管の断面積を増やすことの限界)がある。また、連通路に連通される配管を多く設けることができたとしても、脱気に対する配管の抵抗が増えてしまう。したがって、このような金型の側面に開口する連通路から脱気(減圧)する方式では、脱気速度(すなわち減圧速度)の高速化に限界があり、成形時間の短縮を図るのは困難である。
【0006】
本発明の一目的は、成形時間を短縮することのできる技術を提供することにある。なお、本発明の一目的および他の目的ならびに新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかにしていく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0008】
本発明の一解決手段に係る樹脂成形装置は、互いに対向して配置される第1プラテンおよび第2プラテンと、前記第1プラテンおよび前記第2プラテンの間で型開閉可能に互いに対向して設けられる第1金型および第2金型と、金型外部に設けられる脱気装置ならびに前記脱気装置と連通される第1脱気配管および第2脱気配管と、を備え、前記第1金型は、前記第1金型と前記第2金型との間の金型内部を脱気する脱気路を有すると共に、前記第1プラテンおよび前記第2プラテンのいずれにも組み付け可能に構成されており、前記第2金型は、前記第1プラテンおよび前記第2プラテンのいずれにも組み付け可能に構成されており、前記第1プラテンは、前記第1脱気配管と連通される第1プラテン路を有すると共に、前記第1金型が組み付けられた状態において前記脱気路が前記第1プラテン路と連通されるように構成されており、前記第2プラテンは、前記第2脱気配管と連通される第2プラテン路を有すると共に、前記第1金型が組み付けられた状態において前記脱気路が前記第2プラテン路と連通されるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記第1金型に前記脱気路が設けられ、前記第1プラテンの中央部に前記第1金型が組み付けられ、前記第1プラテンの中央部に前記第1プラテン路が設けられることがより好ましい。これによれば、第1金型の中央部から脱気路を均等な長さで分岐することができる。
【0010】
また、前記樹脂成形装置は、前記脱気配管の中途であって前記第1プラテン路側に設けられる脱気弁を更に備えることがより好ましい。これによれば、第1プラテン路およびこれと脱気弁との間の脱気配管の脱気量を削減することができ、脱気時間をより短縮することができる。
【0013】
また、前記樹脂成形装置は、前記第1金型または前記第2金型の少なくともいずれか一方に設けられ、一端が金型面に開口し、他端が前記金型面と交差する側面に開口して前記金型面で被吸着物を吸着する吸着路と、金型外部に設けられ、前記吸着路と連通される吸着配管および前記吸着配管と連通される吸着装置と、を更に備え、前記第1プラテン路の径が、前記吸着路の径よりも大きいことがより好ましい。これによれば、吸着系統および脱気系統の能力の違いに合わせて、第1プラテン路の径を大きく(太く)することで脱気時間をより短縮することができる。
【0014】
また、樹脂成形装置は、型開閉方向に貫通するように前記第2プラテンに設けられ、前記脱気路と連通される第2プラテン路を更に備えることがより好ましい。これによれば、脱気路が設けられた第1金型を第2プラテンに組み付け、第2金型を第1プラテンに組み付ける構成として、金型内部の脱気をすることができる。
【0015】
本発明の一解決手段に係る樹脂成形方法は、互いに対向して配置され、第1路を有する第1プラテンおよび第2路を有する第2プラテンを準備する工程と、前記第1プラテンおよび前記第2プラテンの間で型開閉可能に設けられるように、第3路を有する第1金型を前記第1プラテンに組み付け、キャビティを有する第2金型を前記第2プラテンに組み付けた後、型閉じした前記第1金型と前記第2金型との間の金型内部を前記第1路および前記第3路を介して脱気し、前記キャビティで樹脂を成形させる工程と、前記第1プラテンおよび前記第2プラテンの間で型開閉可能に設けられるように、前記第1金型を前記第2プラテンに組み付け、前記第2金型を前記第1プラテンに組み付けた後、型閉じした前記第1金型と前記第2金型との間の金型内部を前記第2路および前記第3路を介して脱気し、前記キャビティで樹脂を成形させる工程と、を含むことを特徴とする。これによれば、所定の大きさ(断面積)とできる第1路および第2路を介して脱気することで金型内部の脱気時間を短縮することができ、成形時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一解決手段に係る樹脂成形装置によれば、成形時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1に係る樹脂成形装置の型開きした状態の説明図である。
図2図1に示す樹脂成形装置の型閉じした状態の説明図である。
図3】本発明の実施形態2に係る樹脂成形装置の説明図である。
図4】本発明の実施形態3に係る樹脂成形装置の一例(下型にキャビティがある)の説明図である。
図5】本発明の実施形態3に係る樹脂成形装置の他の例(上型にキャビティがある場合)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0019】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る圧縮成形を行う樹脂成形装置10について、図1および図2を参照して説明する。図1および図2は、それぞれ樹脂成形装置10の型開きした状態および型閉じした状態の説明図であり、一部にハッチングを付して断面として示している。本実施形態では、ワークWに樹脂成形部(樹脂R)を成形する樹脂成形装置10として説明する。ワークWは、例えば、複数の電子部品(図示せず)などがマトリクス配置された基板(例えばガラスや金属製などの各種のキャリアプレート、ウェハまたは配線基板など)であり、樹脂成形されて複数の電子部品が樹脂成形部で封止される。また、ワークWは同図に示すように1個だけ配置する場合のみならず、複数個を並べて配置した状態で一括で封止できるようにしてもよい。
【0020】
樹脂成形装置10は、互いに対向して配置される第1プラテン11および第2プラテン12(本実施形態では、固定プラテン11および可動プラテン12に相当する)と、公知のプレス駆動機構とを備える。換言すれば、樹脂成形装置10は、プラテンを適宜駆動する1個のプレス装置として構成されるが、複数のプレス装置を含んで構成されてもよい。プレス駆動機構は、図示しない駆動源(例えばサーボモータなど)および駆動伝達機構(例えばボールネジやトグルリンク機構など)などの公知の機構によって第2プラテン12を駆動し型開閉可能に構成される。固定プラテン11および可動プラテン12の外周部(例えば対向面の四隅)には複数(例えば四隅に対応して4本)のタイバー13が貫通して設けられており、プレス駆動機構によって可動プラテン12がタイバー13にガイドされて固定プラテン11に対して昇降される。
【0021】
また、樹脂成形装置10は、プレス駆動機構などの各部を制御する制御部14を備える。制御部14は、CPU(中央演算処理装置)と、ROM、RAMなどの記憶部とを備え、記憶部に記録された各種制御プログラムをCPUが読み出して実行することで、樹脂成形装置10を構成する各部の動作を制御する。この各部の動作が樹脂成形装置10の動作となる。なお、樹脂成形装置10は、制御部14に対して設定される所定条件を作業者から入力可能に構成される入力部(図示せず)と、所定条件を表示したり、制御部14の実行結果を表示したりする表示部(図示せず)とを備える。
【0022】
また、樹脂成形装置10は、固定プラテン11および可動プラテン12の間で型開閉可能に互いに対向して設けられ、成形金型を構成する第1金型15および第2金型16(本実施形態では、上型15および下型16に相当する)を備える。すなわち、上型15の金型面15a(クランプ面またはパーティング面ともいう)および下型16の金型面16aが対向して配置される。上型15が固定プラテン11の中央部に組み付けられ、下型16が可動プラテン12の中央部に組み付けられる。これにより上型15および下型16は型開閉可能に構成され、上型15に対して下型16が近接して型閉じされ、上型15に対して下型16が離隔して型開きされる。本実施形態では、下型16の金型面16aにキャビティ17(図1に示す型開きした状態では凹部)が設けられる。また、上型15および下型16のそれぞれには制御部14によって制御されるヒータ(図示せず)が内蔵されており、上型15および下型16は所定温度(例えば、180℃)まで加熱可能に構成されている。
【0023】
また、樹脂成形装置10は、ワーク吸着路20と、ワーク吸着配管21と、ワーク吸着装置22と、ワーク吸着弁23(開閉弁)とを備え、上型15の金型面15aにワークW(被吸着物)が吸着されてセット(保持)されるようにワーク吸着系統が構成される。ワーク吸着路20は、一端が上型15の金型面15aに開口し、他端が上型15の金型面15aと交差する向きの側面に開口して、上型15の金型面15aでワークWを吸着するように上型15に設けられる。また、ワーク吸着配管21は、ワーク吸着路20と連通(接続)して金型外部に設けられる。また、ワーク吸着装置22(例えば真空ポンプ)は、ワーク吸着配管21と連通(接続)して金型外部に設けられ、制御部14によって作動が制御される。また、ワーク吸着弁23は、ワーク吸着配管21の中途であってワーク吸着装置22側に設けられ、制御部14によって開閉が制御される。
【0024】
ワーク吸着弁23を開いた状態では、ワーク吸着装置22によって、ワーク吸着配管21およびワーク吸着路20を介してワークWが上型15の金型面15aに吸着してセットされる。他方、ワーク吸着弁23を閉じた状態では、ワークWが上型15の金型面15aに吸着されずに解除される。
【0025】
また、樹脂成形装置10は、フィルム吸着路24、25と、フィルム吸着配管26、27と、フィルム吸着装置30(例えば真空ポンプ)と、フィルム吸着弁31、32(開閉弁)とを備え、キャビティ17の内面を含む下型16の金型面16aにリリースフィルムF(被吸着物)が吸着されてセット(保持)されるようにフィルム吸着系統が構成される。リリースフィルムFとしては、成形金型の加熱温度に耐えられる耐熱性を有し、下型16の金型面16aから容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材を用いる。具体的にリリースフィルムFとしては、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジンなどを用いる。また、リリースフィルムFとしては、プレス機構の外部で切り分けられた矩形又は丸形の枚葉状のものを搬入して用いてもよく、上型15と下型16を挟んで両側に渡って設けられたローダハンドに設置したロール状のものを巻き出して用いてもよい。
【0026】
フィルム吸着路24、25は、下型16の金型面16aでリリースフィルムFを吸着するように下型16に設けられ、それぞれ一端が下型16の金型面16aに開口し、他端が下型16の金型面16aと交差する側面に開口する。また、フィルム吸着配管26、27は、それぞれフィルム吸着路24、25と連通(接続)して金型外部に設けられる。また、ワーク吸着装置22は、フィルム吸着配管26、27と連通(接続)して金型外部に設けられ、制御部14によって駆動が制御される。また、フィルム吸着弁31、32は、それぞれフィルム吸着配管26、27の中途であってフィルム吸着装置30側に設けられ、制御部14によって開閉が制御される。
【0027】
フィルム吸着弁31を開いた状態では、フィルム吸着装置30によって、フィルム吸着配管26およびフィルム吸着路24を介してリリースフィルムFが下型16の金型面16aの外周部に吸着される。また、フィルム吸着弁32を開いた状態では、フィルム吸着装置30によって、フィルム吸着配管27およびフィルム吸着路25を介してリリースフィルムFが下型16の金型面16aの内周部(キャビティ17の内面)に吸着される。他方、フィルム吸着弁31、32を閉じた状態では、リリースフィルムFが下型16の金型面16aに吸着されずに解除される。
【0028】
また、樹脂成形装置10は、脱気路33と、第1プラテン路34(本実施形態では、プラテン路34に相当する)と、脱気配管35と、脱気装置36とを備え、上型15と下型16との間の金型内部(キャビティ17を含む)を脱気するように脱気系統が構成される。脱気路33は、上型15と下型16との間の金型内部を脱気するように上型15に設けられ、一端が上型15の金型面15aに開口し、他端が固定プラテン11側の面(図1では上面)に開口している。また、プラテン路34は、型開閉方向に貫通するように固定プラテン11に設けられ、一端側が型側の脱気路33と連通(接続)される。また、脱気配管35は、プラテン路34の他端側と連通(接続)して金型外部に設けられる。なお、これらの管路の接続箇所には適宜Oリング等のシールリングを設けることで、異なる部材間での接続部分でのエアの漏れが防止される。また、脱気装置36(例えば真空ポンプ)は、脱気配管35と連通(接続)して金型外部に設けられ、制御部14によって吸引動作(負圧動作)が制御される。なお、脱気装置36に、例えば圧縮機を追加して、圧空動作(正圧動作)が制御されるようにしてもよい。
【0029】
本実施形態では、要求される脱気速度(減圧速度)に応じた所定の大きさのプラテン路34を固定プラテン11に設けることができる。このため、所定の大きさ(断面積)とできるプラテン路34と連通される脱気配管35を集中させて一本化することができ、配管径(断面積)を大きくしたり、配管抵抗を低減したりすることができる。したがって、金型内部の脱気時間を短縮することができ、成形時間を短縮する(生産性を向上する)ことができる。また、脱気配管35の径を統一化することで、配管抵抗を少なくし、脱気装置36の効率を向上させることができる。なぜなら、複数の配管をまとめて一本化することで、配管の断面積を拡げながら、配管の断面における外周距離を相対的に短くすることができるからである。
【0030】
また、吸着系統および脱気系統の能力の違いに合わせて、脱気配管35と接続されるプラテン路34の径がワーク吸着路20の径よりも大きい(太い)ことで、金型内部の脱気時間をより短縮することができる。すなわち、吸着系統においては、ワークWやリリースフィルムFを型面に吸い付けるように力を働かせることが目的であるが、脱気系統においては、上型15と下型16との間の金型内部の空気等を所定の減圧度(真空度)になるまで排出する必要がある。この場合、成形するワークWの大判化に応じて型面の大きさも相対的に大きくなるため、排出しなければならない空間の容積(換言すれば、エアの量)も多くなる。このため、脱気配管35と接続されるプラテン路34の径を相対的に大きくできることは、大判のワークWで要求される真空度に早期に到達するために効果が高い。また、本実施形態では、上型15に脱気路33が設けられ、固定プラテン11の中央部に上型15が組み付けられ、固定プラテン11の中央部にプラテン路34が設けられている。これによれば、上型15の中央部から脱気路33を均等な長さで分岐することができる。
【0031】
また、樹脂成形装置10は、脱気配管35の中途であってプラテン路34側(脱気路33側)に設けられる脱気弁37(開閉弁)を備える。この脱気弁37は、制御部14によって開閉が制御される。脱気弁37がプラテン路34側に設けられることで、脱気弁37からプラテン路34までの脱気配管35の長さを短くすることができる。これにより、プラテン路34と脱気弁37との間の脱気配管35の脱気量を削減することができ、金型内部の脱気時間をより短縮することができる。このように、脱気弁37は、上型15の近傍に設置されることが好ましい。なお、図1などでは、構成を明確にするために脱気弁37は固定プラテン11から離して示されているが、固定プラテン11に固定されている。
【0032】
また、脱気系統に関して、制御部14は、閉じられた脱気弁37と脱気装置36との間の脱気配管35内を脱気装置36によって減圧させた状態で、脱気弁37を開いて金型内部を脱気するように制御することができる。この場合、脱気弁37と脱気装置36との間の脱気配管35を真空タンク(チャンバ)として機能させる。これによれば、脱気配管35を予め減圧しておくことで、減圧された脱気配管35と、脱気路33及びプラテン路34とを脱気弁37の開放により接続することができ、脱気装置36の動作によらずに減圧を始めさせることができる。そのうえで、要求される真空度まで脱気装置36により脱気をし続けることで、要求される真空度に早期に到達することができる。また、真空タンクとして機能するものが脱気配管35であるため、樹脂成形装置10筐体内部での設置自由度が高い。また、上述したように脱気弁37が上型15(固定プラテン11)の近傍に設置されることは、脱気弁37から脱気装置36までの間で予め減圧できる脱気配管35を長くすることができることから、脱気時間の短縮をするうえで好ましい。また、樹脂成形装置10筐体内部において別途真空タンクのスペースを設けなくとも、金型内部の脱気時間をより短縮することができる。もちろん、別途真空タンクを併用してもよい。
【0033】
例えば、本実施形態における樹脂成形装置10では、脱気弁37と脱気装置36との間の脱気配管35の容量が、上型15と下型16との間の金型内部と、脱気路33と、プラテン路34と、脱気配管35(プラテン路34と脱気弁37との間)とを合わせた容量以上となるように構成される。これによれば、予め脱気弁37と脱気装置36との間の脱気配管35を減圧しておき、脱気弁37を開くこと(脱気開始)で、上述した脱気配管35の真空タンク(チャンバ)としての機能により金型内部の脱気時間をより短縮することができる。また、ワーク吸着装置22を用いるワーク吸着系統およびフィルム吸着装置30を用いるフィルム吸着系統と、脱気装置36を用いる脱気系統とでは、装置能力(吸引能力)を脱気系統の方が高くなるように異ならせることができ、金型内部の脱気時間の短縮を図ることができる。
【0034】
ところで圧縮成形用の成形金型を構成する上型15は、ベース40と、ベース40の凹部に組み付けられるチェイス41とを備えて構成される。この上型15は、ベース40で固定プラテン11に組み付けられる。また、上型15は、金型面15aの中央部を囲んで設けられるシール部42(例えばOリング)を備える。上型15の金型面15aの中央部と対向する下型16の金型面16aの中央部にはキャビティ17が設けられる。このため、シール部42によれば、型閉じした状態において上型15と下型16との間をシールして、キャビティ17を含む金型内部を密閉する(チャンバを形成する)ことができる。
【0035】
また、上型15の金型面15aでは、シール部42の内側で脱気路33が開口し、この脱気路33よりも内側にワーク吸着路20が開口されている。また、脱気路33がベース40とチェイス41との間でそれぞれの中央部分において径の太いままで連通して設けられ、ワーク吸着路20がチェイス41に設けられる。ベース40では型開閉方向(厚み方向)に貫通するように脱気路33の一部が設けられる。この気路117の一部がプラテン路34と連通するように、ベース40が固定プラテン11に組み付けられる。また、チェイス41にも型開閉方向(厚み方向)に延びてからこれと交差する方向に分岐して金型面15aで開口する脱気路33の他部が設けられる。この脱気路33の他部がベース40の脱気路33の一部と連通するように、チェイス41がベース40に組み付けられる。
【0036】
また、圧縮成形用の成形金型を構成する下型16は、ベース50と、ベース50の凹部に組み付けられるチェイス51と、チェイス51に組み付けられるキャビティ駒52と、キャビティ駒52が挿入されてチェイス51に組み付けられるクランパ53とを備えて構成される。本実施形態では、下型16にキャビティ17(型開きした状態では凹部)が設けられるが、キャビティ17の底部(奥部)がキャビティ駒52の上面で構成され、キャビティ17の側部がクランパ53の内側面(貫通孔の内壁面)で構成される。下型16の金型面16a(クランパ53の上面)では、フィルム吸着路24が開口し、キャビティ17の底部のコーナー部でフィルム吸着路25が開口される。ワーク吸着装置22の吸引動作によって、リリースフィルムFはキャビティ17の形状に倣って金型面16aに吸着されてセット(保持)される。
【0037】
クランパ53は、キャビティ駒52を囲み、チェイス51に弾性部54(例えば、バネ)を介して上下動(進退動)可能に組み付けられる。下型16では、キャビティ駒52とクランパ53とが相対的に移動可能な関係にあり、キャビティ17の開口部からの深さ(すなわちキャビティ17の容積)が可変な構成となる。キャビティ駒52の外側面とクランパ53の内側面との間には隙間が形成されるが、下型16は、チャンバ(密閉空間)を形成するためにその隙間をシールするシール部55(例えば、Oリング)を備える。
【0038】
次に、樹脂成形装置10の動作方法(制御部14の制御方法)について説明すると共に、成形品の製造方法(成形方法)について説明する。
【0039】
まず、図1に示すように、上型15と下型16とが離隔して型開きした状態では、ローダ(図示せず)によって金型内部に搬入されたワークWを、上型15の金型面15aに吸着させてセット(保持)する。具体的には、制御部14によってワーク吸着装置22が作動され、またワーク吸着弁23が開かれ、ワーク吸着配管21およびワーク吸着路20を通じてワークWが金型面15aに吸着されてセットされる。なお、ワーク吸着に替えて爪状の保持部材でワークW外周を保持しセットできる構成としてもよく、これらを併用してもよい。
【0040】
また、フィルム搬送部(図示せず)によって金型内部に搬入されたリリースフィルムFを、キャビティ17を含む下型16の金型面16aに吸着させてセット(保持)する。具体的には、制御部14によってフィルム吸着装置30が作動され、まずフィルム吸着弁31が開かれ、フィルム吸着配管26およびフィルム吸着路24を通じてリリースフィルムFが金型面16aの外周部に吸着される。続いて、フィルム吸着弁32が開かれ、フィルム吸着配管27およびフィルム吸着路25を通じてリリースフィルムFが金型面16aの中央部(キャビティ17の内面)に吸着されてセットされる。
【0041】
続いて、リリースフィルムFを介してキャビティ17内に樹脂Rを供給する。成形金型が所定温度に加熱されているため、樹脂Rがキャビティ17の内面(キャビティ駒52の上面)で溶融していくこととなる。樹脂Rとしては、例えば、液状、顆粒状、粉状、シート状のものを用いることができる。なお、キャビティ17内への樹脂Rの供給は、金型外部でリリースフィルムFの中央部上に樹脂Rを配置し、リリースフィルムFとともに金型内部に搬入して行うこともできる。
【0042】
続いて、プレス駆動機構(図1では白抜き矢印で動作を示す)によって上型15と下型16とを近接させていき、上型15の金型面15aに設けられているシール部42を下型16の金型面16a(クランパ53の上面)に当接(すなわちシールリングタッチ)させる。これにより、キャビティ17を含む金型内部が密閉され、チャンバ(密閉空間)として構成される。
【0043】
例えば制御部14によって脱気装置36が作動され、金型内部がチャンバとして構成された後に脱気弁37が開かれ、脱気配管35、プラテン路34および脱気路33を通じて金型内部が脱気されて減圧される。本実施形態では、脱気速度(減圧速度)に応じた所定の大きさのプラテン路34を設け、脱気路33と連通される脱気配管35をプラテン路34に対して集中させて一本化している。すなわち、脱気配管35の配管径(断面積)を大きくしたり、配管抵抗を削減したりしている。これにより、金型内部の脱気時間を短縮することができ、成形時間を短縮する(生産性を向上する)ことができる。
【0044】
また、本実施形態では、脱気弁37を開く前に脱気装置36と脱気弁37との間の脱気配管35内を脱気装置36によって減圧させた状態としておき、制御部14によって脱気弁37を開いて金型内部を脱気している。これによれば、脱気装置36と脱気弁37との間の脱気配管35を真空タンクとして機能させることができ、別途真空タンクを設けなくとも、金型内部の脱気時間をより短縮することができる。
【0045】
続いて、プレス駆動機構(図2では白抜き矢印で動作を示す)によって上型15と下型16とを更に近接させていき、図2に示すように、上型15(チェイス41)と下型16(クランパ53)とでリリースフィルムFを介してワークWをクランプする。これにより、キャビティ17(凹部)の開口部がワークWによって閉塞される。なお、図示しないエアベント溝をクランパ53の上面に形成しておくことで、リリースフィルムFをクランプした後でもキャビティ17内を脱気、減圧することができる。
【0046】
続いて、制御部14によって脱気弁37を閉じて金型内部の脱気(減圧)を停止した状態とし、上型15と下型16を更に近接させていき(型締めしていき)、キャビティ17を充填した樹脂Rを圧縮する。このとき、脱気弁37が閉じられた状態であるため、樹脂Rが脱気路33に入り込むことが防止される。続いて、キャビティ17内で充填された樹脂Rを保圧した状態(成形位置の状態)で所定時間熱硬化させる。続いて、脱気弁37とプラテン路34との間の脱気配管35に設けられた大気弁(図示せず)を開いて大気開放し、上型15と下型16とを離隔させて型開きした後、ワークWを金型外部に取り出す(搬送する)。更に後処理として取り出されたワークWの樹脂成形部を必要に応じて所定時間熱硬化(ポストキュア)させることによって成形品が完成する。
【0047】
(実施形態2)
前記実施形態1では、圧縮成形を行う樹脂成形装置10について説明した。本実施形態では、トランスファ成形を行う樹脂成形装置10Aについて、図3を参照して説明する。図3は、樹脂成形装置10Aの型開きした状態の説明図であり、一部にハッチングを付して断面として示している。なお、樹脂成形装置10Aは、ワーク吸着系統およびフィルム吸着系統が設けられずに、脱気系統が設けられている。なお、トランスファ成形を行う樹脂成形装置10Aにおいても、同図に図示のないワーク吸着系統およびフィルム吸着系統を設けてもよいのは勿論である。
【0048】
樹脂成形装置10Aは、前記実施形態1と同様に、固定プラテン11および可動プラテン12と、公知のプレス駆動機構と、上型15および下型16とを備え、固定プラテン11および可動プラテン12の間で上型15および下型16がプレス駆動機構によって型開閉可能に互いに対向して設けられる。また、樹脂成形装置10Aは、プレス駆動機構などの各部を制御する制御部14を備える。
【0049】
トランスファ成形を行う樹脂成形装置10Aにおいて、上型15は、上型15の金型面15a(チェイス41の下面)で連通するように設けられるカル60、ゲートランナ61およびキャビティ62(型開きした状態では凹部)を備える。他方、下型16は、下型16を貫通してカル60と対向配置されるポット63と、ポット63内に設けられるプランジャ64と、プランジャ64を昇降する公知のトランスファ機構65とを備える。なお、樹脂成形装置10Aでは、上型15のキャビティ62に対向して下型16の金型面16aにワークWがセットされる。
【0050】
また、樹脂成形装置10Aは、上型15に設けられる脱気路33と、固定プラテン11に設けられるプラテン路34と、金型外部に設けられる脱気配管35および脱気装置36とを備えている。樹脂成形装置10Aでは、上型15と下型16との間の金型内部(キャビティ62を含む)を脱気するように、脱気路33、プラテン路34、脱気配管35および脱気装置36が連通されて脱気系統が構成される。プラテン路34は、実施形態1と同様に、型開閉方向に貫通するように所定の大きさで固定プラテン11に設けられる。このため、脱気路33と連通される脱気配管35をプラテン路34に対して集中させて一本化することもでき、配管径(断面積)を大きくしたり、配管抵抗を削減したりすることができる。したがって、金型内部の脱気時間を短縮することができ、成形時間を短縮することができる。
【0051】
また、樹脂成形装置10Aは、脱気配管35の中途であって脱気路33側(プラテン路34側)に設けられる脱気弁37(開閉弁)を備えている。この脱気弁37は、制御部14によって開閉が制御される。脱気弁37がプラテン路34側(脱気路33側)に設けられることで、脱気弁37からプラテン路34までの脱気配管35の長さを短くすることができる。これにより、脱気路33およびこれと脱気弁37との間の脱気配管35の脱気量を削減することができ、金型内部の脱気時間をより短縮することができる。
【0052】
次に、樹脂成形装置10Aの動作方法(制御部14の制御方法)について説明すると共に、成形品の製造方法(成形方法)について説明する。まず、上型15と下型16とが離隔して型開きした状態では、ローダ(図示せず)によって金型内部に搬入されたワークWを、下型16の金型面16aにセット(配置)する。また、プランジャ64を型面から退避させたポット63内に樹脂Rを供給する。このとき、成形金型が所定温度に加熱されているため、ポット63内に供給された樹脂Rは溶融していくこととなる。
【0053】
続いて、プレス駆動機構(図3では白抜き矢印で動作を示す)によって上型15と下型16とを近接させていき、上型15の金型面15aに設けられているシール部42を下型16の金型面16aに当接(すなわちシールリングタッチ)させる。これにより、キャビティ62を含む金型内部が密閉され、チャンバ(密閉空間)として構成される。
【0054】
金型内部がチャンバとして構成された後、制御部14で制御された脱気装置36の作動(吸引)によって、脱気弁37が開いた状態の脱気配管35、プラテン路34および脱気路33を通じて金型内部を脱気して減圧する。前述したように、脱気路33と連通される脱気配管35をプラテン路34に対して集中させて一本化しているので、金型内部の脱気時間を短縮することができ、成形時間を短縮する(生産性を向上する)ことができる。
【0055】
また、本実施形態では、脱気弁37を開く前に脱気装置36と脱気弁37との間の脱気配管35内を脱気装置36によって減圧させた状態としておき、制御部14によって脱気弁37を開いて金型内部を脱気している。これによれば、脱気装置36と脱気弁37との間の脱気配管35を真空タンクとして機能させることができ、別途真空タンクを設けなくとも、金型内部の脱気時間をより短縮することができる。
【0056】
続いて、プレス駆動機構によって上型15と下型16とを更に近接させていき、上型15と下型16とでワークWをクランプし、型閉じする。これにより、キャビティ62(凹部)の開口部がワークWによって閉塞される。また、上型15と下型16とでシール部42が押し縮められ、金型内部の密閉性が向上する。
【0057】
続いて、制御部14によって脱気弁37を閉じて金型内部の脱気(減圧)を停止した状態とし、ポット63内のプランジャ64を進出させて樹脂Rを押し出し、カル60およびゲートランナ61を介してキャビティ62まで樹脂Rを圧送してキャビティ62を樹脂Rで充填する。このとき、脱気弁37が閉じられた状態であるため、樹脂Rが脱気路33に入り込むことが防止される。
【0058】
続いて、キャビティ62内で充填された樹脂Rを保圧した状態で所定時間熱硬化させる。続いて、脱気弁37とプラテン路34との間の脱気配管35に設けられた大気弁(図示せず)を開いて大気開放し、上型15と下型16とを離隔させて型開きした後、ワークWを金型外部に取り出す(搬送する)。更に後処理としてワークWの樹脂成形部を所定時間熱硬化(ポストキュア)させることによって成形品が完成する。
【0059】
(実施形態3)
前記実施形態1では、片方の第1プラテン11のみに型開閉方向に貫通するように第1プラテン路34が設けられた樹脂成形装置10について説明した。本実施形態では、両方のプラテンにおいて同様の構成を備える構成例について説明する。具体的には、第2プラテン12にも型開閉方向に貫通するように第2プラテン路34A(プラテン路34Aに相当する)が設けられた樹脂成形装置10Bについて、図4および図5を参照して説明する。図4および図5は、樹脂成形装置10Bの型開きした状態の説明図であり、一部にハッチングを付して断面として示している。この樹脂成形装置10Bは、第1金型15と第2金型16を上下逆にして組み付けることができ、図4では下型(第2金型16)にキャビティ17が設けられる「下キャビティ成形」を行う場合、図5では上型(第2金型16)にキャビティ17が設けられる「上キャビティ成形」を行う場合を示している。
【0060】
樹脂成形装置10Bは、前記実施形態1と同様に、固定プラテン11および可動プラテン12と、公知のプレス駆動機構と、第1金型15および第2金型16とを備え、固定プラテン11および可動プラテン12の間で第1金型15および第2金型16がプレス駆動機構によって型開閉可能に互いに対向して設けられる。図4では、第1金型15が固定プラテン11、第2金型16が可動プラテン12に組み付けられ、図5では、第1金型15が可動プラテン12、第2金型16が固定プラテン11に組み付けられる。また、樹脂成形装置10Bは、プレス駆動機構などの各部を制御する制御部14を備える。
【0061】
また、樹脂成形装置10Bでは、下キャビティ成形、及び、上キャビティ成形のいずれの場合においても、第1金型15と第2金型16との間の金型内部(キャビティ17を含む)を脱気することができるように、脱気路33、プラテン路34、34A、脱気配管35、35Aおよび脱気装置36が連通されて脱気系統が構成される。前述の脱気路33、プラテン路34、脱気配管35、脱気装置36の他では、プラテン路34Aが型開閉方向に貫通するように所定の大きさで可動プラテン12に設けられ、脱気配管35Aがプラテン路34Aと連通(接続)して金型外部に設けられる。このため、上型(図4)にある脱気路33と連通される脱気配管35をプラテン路34に対して集中させて一本化することができる。また、下型(図5)にある脱気路33と連通される脱気配管35Aをプラテン路34Aに対して集中させて一本化することもできる。これにより、脱気配管35、35Aの配管径(断面積)を大きくしたり、配管抵抗を削減したりすることができる。したがって、金型内部の脱気時間を短縮することができ、成形時間を短縮することができる。
【0062】
また、樹脂成形装置10Bは、脱気配管35Aの中途であってプラテン路34A側(図5では脱気路33側)に設けられる脱気弁37A(開閉弁)を備える。この脱気弁37Aは、脱気弁37と同様に、制御部14によって開閉が制御され、プラテン路34A側に設けられることで、脱気弁37Aからプラテン路34Aまでの脱気配管35Aの長さを短くすることができる。これにより、上型にキャビティ17が設けられる場合(図5)であっても、プラテン路34Aと脱気弁37Aとの間の脱気配管35Aの脱気量を削減することができ、金型内部の脱気時間をより短縮することができる。また、下型にキャビティ17が設けられる場合(図4)と同様に、上型にキャビティ17が設けられる場合(図5)でも、制御部14によって閉じられた脱気弁37Aと脱気装置36との間の脱気配管35A内を脱気装置36によって減圧させた状態とすることで、脱気弁37Aと脱気装置36との間の脱気配管35Aを真空タンクとして機能させることができる。
【0063】
また、樹脂成形装置10Bは、脱気配管35、35Aのそれぞれの中途であって脱気装置36側に設けられる切替弁38、38Aを備える。切替弁38、38Aは、制御部14によって開閉が制御されて開閉弁として機能し、下型にキャビティ17が設けられる場合(図4)には切替弁38が開状態、切替弁38Aが閉状態とされ、上型にキャビティ17が設けられる場合(図5)には切替弁38が閉状態、切替弁38Aが開状態とされる。
【0064】
このように、本実施形態では、切替弁38、38Aを設ける場合について説明するが、切替弁38、38Aが設けられなくともよい。例えば、脱気配管35、35Aを脱気装置36側で結合させる分岐配管(T字状、Y字状)を設け、下型にキャビティ17が設けられる場合(図4)には脱気弁37Aが常に閉状態とされ、上型にキャビティ17が設けられる場合(図5)には脱気弁37が常に閉状態とされるようにしてもよい。これによれば、脱気配管35と脱気配管35Aとの容量を合わせた分岐配管全体を真空タンクとして機能させることができ、金型内部の脱気時間をより短縮することができる。
【0065】
また、樹脂成形装置10Bでは、ワーク吸着路20と、ワーク吸着配管21、21Aと、ワーク吸着装置22と、ワーク吸着弁23、23A(開閉弁)とを備え、下キャビティ成形、及び、上キャビティ成形のいずれの場合においてもワークWの吸着を可能に構成される。具体的には、図4に示すように第1金型15の金型面15aにワークWが吸着されてセット(保持)されるようにワーク吸着系統が構成される。前述のワーク吸着路20、ワーク吸着配管21、ワーク吸着装置22、ワーク吸着弁23の他では、ワーク吸着配管21Aが金型外部に設けられ、ワーク吸着弁23Aがワーク吸着配管21Aの中途であってワーク吸着装置22側に設けられ、制御部14によって開閉が制御される。そして、上型(図4)にワーク吸着路20がある状態では、ワーク吸着路20とワーク吸着配管21とが継手によって連通される。また、下型(図5)にワーク吸着路20がある状態では、このワーク吸着路20とワーク吸着配管21Aとが継手によって連通される。このように、チェイス41のワーク吸着路20に対して選択的に接続できるように固定プラテン11および可動プラテン12にワーク吸着配管21、21Aが予め設けられているため、ワーク吸着路20を単に繋ぎ換えるだけで、下キャビティ成形、及び、上キャビティ成形のそれぞれの場合に対応したワークWの吸着を行うことができる。
【0066】
また、樹脂成形装置10Bでは、フィルム吸着路24、25と、フィルム吸着配管26、27、26A、27Aと、フィルム吸着装置30と、フィルム吸着弁31、32、31A、32A(開閉弁)とを備え、下キャビティ成形、及び、上キャビティ成形のいずれの場合においてもワークWの吸着を可能に構成される。具体的には、図4に示すようにキャビティ17の内面を含む第2金型16の金型面16aにリリースフィルムFが吸着されてセット(保持)されるようにフィルム吸着系統が構成される。前述のフィルム吸着路24、25、フィルム吸着配管26、27、フィルム吸着装置30、ワーク吸着弁31、32の他では、フィルム吸着配管26A、27Aが金型外部に設けられ、フィルム吸着弁31A、32Aがそれぞれフィルム吸着配管26A、27Aの中途であってフィルム吸着装置30側に設けられ、制御部14によって開閉が制御される。そして、下型(図4)にフィルム吸着路24、25がある状態では、フィルム吸着路24とフィルム吸着配管26とが継手によって連通され、フィルム吸着路25とフィルム吸着配管27とが継手によって連通される。上型(図5)にフィルム吸着路24、25がある状態では、フィルム吸着路24とフィルム吸着配管26Aとが継手によって連通され、フィルム吸着路25とフィルム吸着配管27Aとが継手によって連通される。このように、チェイス51(具体的にはクランパ53)に設けられたフィルム吸着路24、25に接続できるように固定プラテン11および可動プラテン12にフィルム吸着配管26、27、26A、27Aが予め設けられているため、フィルム吸着路24、25を単に繋ぎ換えるだけで、下キャビティ成形、及び、上キャビティ成形のそれぞれの場合に対応したリリースフィルムFの吸着を行うことができる。
【0067】
このような樹脂成形装置10Bの動作方法(制御部14の制御方法)は、下型(第2金型16)にキャビティ17が設けられる場合(図4)は実施形態1で説明した場合と同様である。また、樹脂成形装置10Bにおいて、第1金型15と第2金型16を上下逆にして上型(第2金型16)にキャビティ17が設けられる場合(図5)も基本的に同様となる。
【0068】
ここで、樹脂成形方法の一例について概略する。まず、互いに対向して配置され、第1プラテン路34(第1路)を有する第1プラテン11および第2プラテン路34A(第2路)を有する第2プラテン12を準備する。次いで、下キャビティ成形する場合には、第1プラテン11および第2プラテン12の間で型開閉可能に設けられるように、脱気路33(第3路)を有する第1金型15を第1プラテン11に組み付け、キャビティ17を有する第2金型16を第2プラテン12に組み付ける(図4)。その後、型閉じした第1金型15と第2金型16との間の金型内部を第1プラテン路34および脱気路33を介して脱気し、キャビティ17で樹脂Rを成形させる。
【0069】
また、上キャビティ成形する場合には、第1プラテン11および第2プラテン12の間で型開閉可能に設けられるように、第1金型15を第2プラテン12に組み付け、第2金型16を第1プラテン11に組み付ける(図5)。その後、型閉じした第1金型15と第2金型16との間の金型内部を第2プラテン路34Aおよび脱気路33を介して脱気し、キャビティ17で樹脂Rを成形させる。
【0070】
このような構成とすることで、第1金型15と第2金型16とで構成される1組の金型のみで下キャビティ成形、及び、上キャビティ成形のいずれをも行うこともできる。なお、図4および図5の樹脂成形装置10Bを用いて、下キャビティ成形、及び、上キャビティ成形のそれぞれの専用の第1金型15と第2金型16とで構成される金型を1組ずつ用いてもよい。
【0071】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0072】
前記実施形態1では、ワーク吸着系統およびフィルム吸着系統のそれぞれにワーク吸着装置およびフィルム吸着装置を別個に設けた場合について説明した。これに限らず、ワーク吸着系統およびフィルム吸着系統で共通の吸着装置を設けることもできる。なお、更に脱気系統の脱気装置を共通とすることも考えられるが、脱気時間を短縮させるにあたり脱気系統の能力が吸着系統の能力よりも高くなるため、脱気装置と吸着装置とは別個であることが好ましい。
【0073】
前記実施形態1では、第1プラテンを固定プラテン、第2プラテンを可動プラテンとして適用した場合について説明した。これに限らず、第1プラテンを可動プラテン、第2プラテンを固定プラテンとすることができる。また、前述の実施形態では、タイバー13が第1プラテン11および第2プラテン12を貫通することでこれらをガイドする構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、タイバー13に替えて、第1プラテン11及び第2プラテン12の両側面に設けた一対の側部保持部材を備えた構成としてもよい。この場合、一対の側部保持部材で第1プラテン11の両端を固定し、一対の側部保持部材で構成される枠内において、第2プラテン12を昇降可能とする構成としてもよい。この場合にも、前述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0074】
なお、図1から図5までに示す樹脂成形装置10等の構成を複数有し、ワークWや樹脂Rの供給機能や成形品の収容機能を備えることで、自動的に成形ができる自動機構成においては、複数の装置間でワーク吸着装置22やフィルム吸着装置30を共用してもよい。これにより、例えばワーク吸着やフィルム吸着においてワーク吸着装置22やフィルム吸着装置30を動作させ所定の吸着状態にした後に、対応する弁を閉止し吸着状態を保持できるときには、吸着装置を共用して台数を減らし、コストダウンが可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 樹脂成形装置
11 第1プラテン
12 第2プラテン
15 第1金型
16 第2金型
33 脱気路
34 プラテン路
35 脱気配管
36 脱気装置
図1
図2
図3
図4
図5