(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抵抗値が前記設計値よりも小さい場合には、前記シリサイド層の長さを短くし、前記抵抗値が前記設計値よりも大きい場合には、前記シリサイド層の長さを長くすることにより、前記抵抗値が前記設計値となるよう調整する工程をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による半導体装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態を示す抵抗体の平面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA―A’における断面図である。
【0014】
第1の実施形態の抵抗体は、ポリシリコン層1と、コンタクト部3と、コンタクト部3を含むコンタクト領域11と、コンタクト領域11に形成されたシリサイド層2と、コンタクト領域11以外に形成されたシリサイド層6とで構成され、長方形の形状をなしている。
【0015】
ポリシリコン層1には、抵抗体として導電性をもたせるため、例えば、ボロンやリンなどの不純物が注入されている。コンタクト領域11は、長方形の抵抗体の長手方向の両端に位置し、コンタクト部3を含む領域である。コンタクト部3は、コンタクトホール13内に形成されたコンタクトプラグ12と、コンタクト領域11とが接している部分である。コンタクト領域11は、抵抗体とコンタクトプラグ12とのコンタクト抵抗を下げるために、ポリシリコン層1を高融点金属でシリサイド化することにより、シリサイド層2となっている。シリサイド層6は、後述する抵抗体の抵抗値調整のために設けられたものである。
【0016】
抵抗体は、その両端において、
図1(b)のように、コンタクトホール13内にコンタクトプラグ12を埋め込み、そのコンタクトプラグ12を介してメタル配線4と接続する。しかしながら、抵抗体をメタル配線4に接続する方法は、特にこの方法に限らない。また、本実施形態におけるシリサイド層2とシリサイド層6は、
図1(b)に示すように、高融点金属でポリシリコン層1を表面から底面まで厚さ方向に完全に全てシリサイド化したものである。そうすることで、ポリシリコン層1とシリサイド層2、6との間に、所定の抵抗値をもつ境界面5を形成している。すなわち、本実施形態の抵抗体は、ポリシリコン層1と、ポリシリコン層1を完全にシリサイド化したシリサイド層2、6とが、両者の境界面5を介して抵抗体の長手方向に交互に配置された構成を有している。
【0017】
次に、
図1に示す構造を実現するための作製プロセスを、
図2(a)〜(d)に基づいて説明する。
まず、
図2(a)のように、半導体基板8上にLOCOS酸化膜などの絶縁膜9を形成し、その後、本実施形態の抵抗体を構成するポリシリコン層1をLP−CVD法などで形成する。
【0018】
ポリシリコン層1は、後にその一部を表面から底面まで完全にシリサイド化するために、50〜150nmの膜厚であることが望ましい。これ以上の膜厚になると完全にシリサイド化することが困難であり、これ以下の膜厚では膜厚安定性やポリシリコン内の不純物濃度安定性が低下するのでポリシリコン層1の膜厚はこの範囲で決定するとよい。
【0019】
次に、ポリシリコン層1の抵抗率を決めるための不純物注入をポリシリコン層1全面に対して行う。この不純物は、ボロンなどのP型不純物もしくはリンなどのN型不純物を目的に応じて選ぶ。
【0020】
例えば、抵抗値の温度係数などの特性変動の抑制が求められる場合は、ボロンなどのP型不純物が望ましい。一方、後に形成される境界面5(
図2(d))の抵抗値に比べポリシリコン層1の抵抗値を相対的に小さくしたい場合、ポリシリコン層1に導入する不純物は、移動度が高く、低抵抗率に出来るリンや砒素などのN型不純物の採用が望ましい。
【0021】
また、不純物注入量は、ポリシリコン層1内で1×10
18/cm
3以上の不純物濃度になるように設定する。これ以下の不純物濃度では、境界面5の抵抗値が調整範囲以上に上昇してしまい、かつばらつきやすくなるため、本実施形態の抵抗値調整法にとって好ましくない。一方、境界面5の抵抗値を調整に適した所定の値以上の大きさとするためには、不純物濃度は1×10
21/cm
3以下に設定することが好ましい。境界面5の抵抗値が不純物濃度の低下とともに上昇する理由は、不純物が高濃度のときに形成される低抵抗で線形な電流・電圧特性であるオーミック接合から、低濃度のときに形成される電位障壁に基づく高抵抗のショットキー接合へ移り変わり始めるからである。本実施形態においては、境界面5の抵抗値を、調整に適した値にするため、完全なショットキー接合に至る前の所定の値まで増大した抵抗値をもち、線形な電流・電圧特性が保たれている状態を利用している。
その後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により、ポリシリコン層1を長方形形状に加工する。
【0022】
次に、
図2(b)のように、ポリシリコン層1上に酸化膜などの絶縁膜であるシリサイドブロック膜10を堆積した後、シリサイド形成予定領域のシリサイドブロック膜10を例えばRIEで除去する。その後、必要に応じシリサイド層形成予定領域であるポリシリコン層1をアモルファス化するために1×10
19/cm
3以上の濃度となるように不純物を注入する。特に、ポリシリコン層1が150nm程度と厚い場合は、シリサイド化をより促進させ、厚さ方向に完全にシリサイド化するためにこの工程の追加が望ましい。加えて、シリサイド化の促進のためにこの不純物は、ボロンもしくはBF
2がより好ましい。ちなみに、シリサイド化促進のための注入不純物がP型で、先のポリシリコン層1の抵抗率を決めるための不純物がN型であった場合、シリサイド層形成予定領域とポリシリコン層1との間にPN接合が出来、境界面の抵抗値の高抵抗化が懸念される。しかし、本実施形態においてはこのシリサイド化促進のための不純物を含むポリシリコン層1は後にシリサイド化するのでPN接合とはならず高抵抗とはなることはない。
【0023】
次に、
図2(c)のように、高融点金属7を上部表面に堆積する。後の工程でシリサイド層形成予定領域のポリシリコン層1を高融点金属7で完全にシリサイド化するために、高融点金属7の厚さはポリシリコン層1の厚さの約半分以上に設定するのが好ましい。
【0024】
次に、短時間の熱処理を加え、
図2(d)のようにシリサイドブロック膜10の開口部のみ高融点金属7とポリシリコン層1を反応させシリサイド層2、6を形成する。その際、ポリシリコン層1が表面から底面までシリサイド化されるように、熱処理の温度や時間を設定する。本実施形態における高融点金属7としては、例えば、チタン、コバルト、ニッケル、タングステンなどの材料を用いることができる。その後、未反応のシリサイドブロック膜10上の高融点金属7を除去する。
【0025】
また、このようなシリサイド化処理は、シリサイド層2、6だけでなく半導体装置の構成要素であるトランジスタ(図示せず)のソース、ドレイン、ゲートのシリサイド化処理と同時に行うことで工程の追加が抑制できる。ただし、トランジスタ側のシリサイド化が過剰になると、シリサイド層の膜厚がドレインやソースの拡散深さに近づき、接合リークが無視できなくなる。このような事情を考慮すると、抵抗体の厚みはやはり150nm以下であることが望ましい。
【0026】
図2(d)以降は、ポリシリコン層1及びシリサイド層2の上部に図示しない層間絶縁膜を形成し、抵抗体の両端のシリサイド層2の上にコンタクトプラグ12を形成し、さらに、コンタクトプラグ12の上に電極となるメタル配線4を形成することにより、
図1に示す本実施形態の半導体装置が完成する。
【0027】
以上の説明において、本実施形態のシリサイド層6は、抵抗体のコンタクト領域11以外の領域に1つ形成するとしたが、1つに限らず任意の数に設定してよい。例えば、
図3は、
図1においてシリサイド層6を無くした状態の抵抗体を示したものである。すなわち、コンタクト領域11以外の領域に設けたシリサイド領域6の数が0である場合の事例である。また、
図4は、シリサイド層6を2つ配置した場合の構造例を示したものである。このようなシリサイド層6の追加数は、
図1、
図3、
図4の構造のみに限らず、必要に応じて変更して構わない。さらに、同一半導体装置内に様々な数のシリサイド層6をもつ抵抗体を複数併存させても構わない。
【0028】
次に、本実施形態の抵抗体の抵抗値について説明する。この抵抗体がもつ抵抗値成分は、コンタクトプラグとシリサイド層との間のコンタクト抵抗、シリサイド層抵抗、シリサイド層とポリシリコン層との間の境界面の抵抗、ポリシリコン層抵抗とからなる。
【0029】
これらの抵抗値成分を、それぞれ抵抗値Rc、抵抗値Rs、抵抗値Rb、抵抗値Rpとすると、本実施形態において抵抗体の抵抗値として利用する成分は、抵抗値Rbと抵抗値Rpである。抵抗値Rcや抵抗値Rsは、それらに比べると一般に無視できるほど小さいので抵抗体の抵抗値としてここでは考慮しない。
【0030】
抵抗値Rbは、抵抗体の断面積や、境界面5の結晶性等に依存する値であり、ポリシリコン層1やシリサイド層2、6の長さには依存しない。抵抗値Rpの値は、ポリシリコン層1の長さに比例し、幅と厚さに反比例する値である。
【0031】
例えば、
図1の構造においては、2つのポリシリコン層1と、4つの境界面5が存在するので、それらを合わせた抵抗体の抵抗値Rは下式(1)のように表せる。ここで、Rp1は、
図1における2つのポリシリコン層1の抵抗値を足し合わせたトータルの抵抗値である。
R=Rp1+4×Rb ・・・(1)
【0032】
また、
図3の構造においては、1つのポリシリコン層1と、2つの境界面5が存在するので、それらを合わせた抵抗体の抵抗値Rは下式(2)のようになる。ここでRp2は、
図3における1つのポリシリコン層1の抵抗値である。
R=Rp2+2×Rb ・・・(2)
【0033】
また、
図4の構造においては、3つのポリシリコン層1と、6つの境界面5が存在するので、それらを合わせた抵抗体の抵抗値Rは下式(3)のようになる。ここで、Rp3は、
図4における3つのポリシリコン層1の抵抗値を足し合わせたトータルの抵抗値である。
R=Rp3+6×Rb ・・・(3)
【0034】
なお、
図1、
図3、
図4においては、ポリシリコン層1のトータルの長さがそれぞれ異なるので、その抵抗値も変わる。そこで、各図におけるポリシリコン層1の値を抵抗値Rp1、抵抗値Rp2、抵抗値Rp3と区別している。
【0035】
ところで、一般に半導体装置を作製した後に、半導体装置内の抵抗体の抵抗値が所望の設計値からずれて再設計を余儀なくされた場合には、出来るだけ簡便な方法で安価かつ早期にばらつきの少ない抵抗体を作製し直す事が求められる。再設計によって抵抗体の抵抗値を所望の設計値に合わせこむ調整方法の1つとして、抵抗幅の変更が挙げられる。しかし、抵抗値に反比例する抵抗幅の変更は、抵抗値の変動幅が大きすぎるので再設定が困難である。また、抵抗幅を小さくするほど製造ばらつきの影響を受けて抵抗値がばらつきやすい。そのため、再設計においては抵抗値と比例関係にある抵抗長さの調整が、設計変更に適している。
【0036】
しかしながら、再設計は周辺回路のレイアウトに影響を及ぼすため、抵抗長さの増大方向の変更は許容できない場合が多い。さらに、抵抗体の長さや幅などの形状変更そのものが、エッチング加工におけるマイクロローディング効果等の影響を受け、形状がさらに変化して抵抗値をずらしてしまうこともあり得るので好ましくない。
【0037】
本実施形態によれば、再設計において抵抗体の長さや幅を変えることなく、シリサイド層とポリシリコン層との境界面の数の変更によって抵抗値の大小を調整できるので、安定した抵抗値の抵抗体を簡便に提供できる。
【0038】
このような本実施形態の抵抗体の調整方法について、
図5を用いて、以下に詳細に説明する。
図5は、ポリシリコン層のトータルの長さを横軸にし、抵抗体の抵抗値を縦軸に取った場合の特性変化を示すグラフである。このグラフの中で、実線aと一点鎖線bと点線cの特性はそれぞれ、
図1、
図3、
図4のそれぞれの構造に対応する抵抗体の抵抗値を表す上記式(1)、式(2)、式(3)を描いたものである。式(1)、式(2)、式(3)内の抵抗値Rbを含む項は、ポリシリコン層1の長さに依存しない定数なので、縦軸の切片の値と同一になる。一方、
図5の横軸の値は、ポリシリコン層1のトータルの長さに相当し、抵抗値Rp1、抵抗値Rp2、抵抗値Rp3の値は、この軸上の点によって変化する。ポリシリコン層1の長さの変化に対する抵抗体の抵抗値の変化割合は
図1、
図3、
図4の構造によらず同じなので、実線aと一点鎖線bと点線cの傾きは同じになる。
【0039】
例えば、
図1の構造の抵抗体の抵抗値の変化の様子を示した特性線である実線aにおいては、ポリシリコン層1の長さが0の時、すなわち縦軸との切片の値は、式(1)の4×Rbに相当する。また、同様に
図3の構造の抵抗体の特性線である、一点鎖線bにおいては縦軸との切片の値は、式(2)の2×Rbに相当する。さらに、
図4の構造の抵抗体の特性線である点線cにおいては、縦軸との切片の値は、式(2)の6×Rbに相当する。
【0040】
後述するように、境界面5の抵抗値を抵抗体の抵抗値補正に使用するためには、境界面5の抵抗値が、少なくともポリシリコン層1のシート抵抗値よりも高い方が調整範囲が広がるので好ましい。本発明者の実験では、ポリシリコン層1のシート抵抗値が約500Ω/sqであるのに対し、境界面5の抵抗値は、約1000Ωが得られている。さらに、境界面5の抵抗値を上げたい場合、作製プロセスで説明したポリシリコン層1に注入する不純物濃度を下げる方法を採用することで容易に実現できる。
【0041】
本実施形態においては、設計段階での抵抗体の構造を
図1とし、そのポリシリコン層1のトータルの長さの設定値を
図5のグラフのX0とした場合、抵抗値は実線上のY0と予測できる。そして、何らかの原因で抵抗体の抵抗値が所望の設計値からはずれてしまった場合に、抵抗体の再設計は、シリサイド層6の数を変化させることによって行う。例えば、抵抗値が設計値Y0よりも大かった場合、
図1から
図3のようにシリサイド層6を減らし、一点鎖線bで示す特性線上で抵抗値調整を行う。または、抵抗値が設計値よりも小さかった場合、
図1から
図4のようにシリサイド層6を1つ増やし、点線cで示す特性線上で抵抗値調整を行う。抵抗体の抵抗値は、上記式(1)、式(2)、式(3)に基づき、抵抗値Rbの数に比例して変化するので、事前に抵抗値Rbを試作等で確認しておけば抵抗体の抵抗値変化量は予測しやすい。
【0042】
また、抵抗体の再設計は、上記に加えてさらにシリサイド層6の長さを変えてポリシリコン層1の長さを調節し抵抗値を増加あるいは減少させて行っても構わない。
図5において、ポリシリコン層1の長さがX0で、その時の抵抗体の抵抗値がY0であった場合、ポリシリコン層1の長さを変えることで、座標値(X0、Y0)の抵抗値から実線上の右上もしくは左下の方向に抵抗値を変えることができる。
【0043】
そのため、境界面5の数を増減させると同時に、ポリシリコン層1の長さを増減させることで、
図5のa、b、cなどの任意の特性線上の任意の抵抗値を自由に設定することが出来る。抵抗体の形状を変えない状態での抵抗値の変更は、境界面の数の増減に加え、シリサイド層の長さを変える事によって相対的にポリシリコン層の長さを変えることによって行う。境界面5とポリシリコン層1の長さを変えて抵抗値を変更する場合は、初期の抵抗体の設計を、シリサイド層6の無い
図3のような構造を採用して行ってもよい。特に、低い抵抗値の抵抗体を作製したい場合、境界面5の抵抗値が大きすぎてシリサイド層6を設けられない場合がある。それに対し、シリサイド層6を設けたまま抵抗体の幅を増やして抵抗値を下げるよりも、
図3の構造の方が、小さい面積で低コストに抵抗体を作製することが可能である。この場合、設計段階での抵抗値の設計値は
図5の一点鎖線b上のある点を選ぶ。そして、抵抗値を大きくする方向の再調整が必要となった場合は、シリサイド層6を増やし、同時にポリシリコン層1の長さをも調整して実線a上のいずれかの値を選ぶことで、抵抗体の抵抗値を増加あるいは減少させる事ができる。また、抵抗値を小さくする方向の再調整は、シリサイド層6を増やさずに、ポリシリコン層1の長さを短くして一点鎖線b上の、より低い抵抗値を選ぶことができる。
【0044】
次に、本実施形態による抵抗値の調整プロセスを含む半導体装置の製造方法について説明する。本実施形態においては、以下のような工程フローを用いて所望の抵抗値の抵抗体を有する半導体装置を作製する。
(A)所望の設計値となるような半導体装置を設計し、
図2に示した作製プロセスを経て半導体装置を作製する。
(B)抵抗体の抵抗値を測定し、設計値と比較する。
(C)抵抗値が設計値よりも小さい場合には、シリサイド層の数を増加させ、抵抗値が設計値よりも大きい場合には、シリサイド層の数を減少させることにより、抵抗値が前記設計値となるように再設計する。
(D)再び、
図2に示した作製プロセスを経て半導体装置を作製する。
【0045】
以上述べたような製造方法は、(B)の工程において抵抗体の抵抗値が設計値に対して大きく乖離したときに、有効である。前述したように、本実施形態では、境界面5の抵抗値を大きく設定できるので、抵抗体の中に設けるシリサイド層の数を増減する事で、抵抗体の形状は変えずに大幅な抵抗値の変更を行う事ができる。
【0046】
なお、(C)の工程では、シリサイド層の数を増減させて再設計することとしたが、先に述べたように、シリサイド層6の数と、さらにポリシリコン層1の長さとの2つのパラメータを利用して調整することも可能である。
【0047】
このような製造方法は、抵抗体の設計値を変更する場合に広い範囲の調整(租調整)と高精度な調整(微調整)の両立が可能になる、という利点がある。本実施形態においては、境界面5の抵抗の数に対する抵抗値の変動が大きく、シリサイド層の長さに対する抵抗値の変動が小さい。そのため、抵抗値の粗調整をシリサイド層6の数で行い、微調整をシリサイド層6の長さで行うといった方法が簡便にできる。例えば、ポリシリコン層1に導入される不純物がN型の場合、キャリア移動度が高く特性の傾きがP型不純物の場合に比べて緩やかになる。そのため、ポリシリコン抵抗長さの変化に対する抵抗体の抵抗値の変化が小さくなり、以上の粗調整と微調整を使い分けた調整方法が特に有効になる。
【0048】
また、P型不純物を用いた抵抗体とN型不純物を用いた抵抗体を、直列に接続して前者を抵抗値の粗調整用、後者を微調整用としてもよい。
また、本実施形態の構造は、抵抗体のコンタクト領域11以外にシリサイド層を設けるものであれば、
図1、
図3、
図4に限られるものではない。
【0049】
以上説明した本実施形態は、特許文献1のように抵抗体の幅で抵抗値を調整する必要は無い。そのため、調整後に抵抗体が小さくなる事を想定し最小ルールに抵触することがないよう、あらかじめ大きな占有サイズを確保する必要がないので、チップ面積の増大とそれに基づくコスト増加を抑制することが出来る。
【0050】
本実施形態においては、抵抗値が小さくなった場合も大きくなった場合も、シリサイド層の変更で調整できる。そのため、作製プロセスの後半であるシリサイド層形成工程の1枚のフォトマスク修正だけで調整が可能になり、開発費用の増大や開発期間の長期化を抑制することができる。
【0051】
図6は、本発明における第2の実施形態を示すもので、
図3に示す抵抗体から、コンタクト領域11に形成するシリサイド層2を削除したものである。
図6の構造においては、シリサイド層2が無い分コンタクト抵抗値が増大するが、
図3に示す境界面5の抵抗値を削減出来る。この構造は、
図3の構造の代わりに
図6の構造を採用することによるコンタクト抵抗値の増大よりも、境界面5の抵抗値の方が過大であるときに有効である。特に、低い抵抗値の抵抗体を作製したい場合、境界面5の抵抗値が大きすぎるために、シリサイド層2を設けたまま抵抗体の幅を増やして抵抗値を下げるよりも、
図6の構造の方が小さい面積で低コストに抵抗体を作製することが可能である。
【0052】
このときの抵抗体の抵抗値は、コンタクト抵抗値が無視できる程小さい場合、式(4)のように表せる。
R=Rp ・・・(4)
【0053】
図6に示す構造の抵抗体の抵抗値が、設計値から外れ、再設計が必要な場合には、
図7に示すようにシリサイド層6を追加した構成による調整で対応する。シリサイド層6は、
図7のように1つに限られるものではなく、必要に応じて数を増やして構わないことは第1の実施形態の場合と同様である。
図7の場合の抵抗体の抵抗値は、上記式(2)と同様となる。またそのときの半導体装置の製造方法は、
図1の場合の(A)から(D)の方法と同じである。