(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ヘルメットは、万一の事故発生の際に頭部を保護するために着用する。そして、ヘルメットの保護性能を発揮させるためには、頭部をヘルメットの開口部から入れてヘルメットを装着した後は、あごひもをアゴの下でしっかり結び、ヘルメットを頭部に固定しなければならない。
【0003】
また、自動二輪車用のヘルメットの場合は、エンジン音、排気音、風切音等、自動二輪車の走行時に発生する耳障りな各種の騒音をある程度遮断する機能も果たしている。これ等の騒音のうち、エンジン音や排気音は比較的高い周波数成分を含むため、ヘルメットを通過する際にかなり低減される。これに対して、風切音は、比較的低い周波数成分を含んでいる。そのため、ヘルメットを通過しても低減し難く、乗員にとっては大きな悩みの種になっている。
【0004】
風切音には、自動二輪車の車体や乗員の身体と空気との摩擦によって発生する音や、ヘルメット下端の着用のための開口部から侵入する風の音が含まれる。そこで、ヘルメット内部の静粛性を高めるためには、ヘルメットの密閉性を高めて、音や風の侵入を遮断する必要がある。そのために、ヘルメットの開口部と、着用者の首とのすき間から音や風が侵入するのを防ぐ工夫が行われてきた。下記特許文献1には、ヘルメットの下端の全周囲を囲うスクリーンが示されている。防寒対策も兼ねているのだが、スクリーンの面積が大きすぎるために、ヘルメットの重量が重くなり、着用者の首への負担が大きくなる。
【0005】
また、特許文献2には、伸縮性のある材料で作られたシート材をヘルメットの下端の全周囲に取り付けて、着用者の首回り、および、アゴの下を覆う方法が示されている。ヘルメットを着脱する時は、アゴ部分のフラップを解除して、開口部を広げる。このようなヘルメットは、着脱が容易でなく、また、着用者が首を動かしにくいという不便さを着用者に感じさせる。
【0006】
さらに、特許文献3には、ヘルメットの下端にU字状に着用者の首の周囲を覆うネックカバーが示されている。このようなネックカバーは、着用者が首を動かした時に、首の周囲とネックカバーとの間にすき間が生じ易い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、ヘルメットの開口部の密閉性を向上させることによって、ヘルメット内部の静粛性を向上させ、かつ、着用者に不便さを感じさせないネックカバー及びヘルメットを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のネックカバーは、ヘルメットにおいて
着用者の頭部が挿入される開口部に取り付けられ、該開口部の周縁部から
着用者側へ向かって張り出して、
着用者側の内側周縁部分は、少なくとも、着用者の首の後部であるうなじから首の前部である喉元までの範囲を覆うように延在し、該喉元を覆う部分には、ヘルメットの内側に取り付けられたあごひもを挿通する左右一対の挿通孔が形成されている。
【0010】
請求項1記載のネックカバーによれば、
着用者が頭を開口部に入れてヘルメットを装着した後、着用者がネックカバーの挿通孔に通したあごひもをアゴの下で締結すると、あごひもがヘルメット全体をアゴの方へ引き寄せるので、ネックカバーが着用者の首の後部であるうなじに密着する。
また、ネックカバーの左右に存在する挿通孔があごひもによってそれぞれアゴの下へ向けて引っ張られるので、ネックカバーの左右側部の内側周縁部分が着用者の首回りの左右側面に引き寄せられることになる。そして、着用者の喉元には、締結されたあごひもによって、挿通孔を含むネックカバーの前方部分が密着する。
このようにして、着用者の首回りは、ネックカバーの内側周縁部分によって完全に覆われる。また、ネックカバーは、あごひもによって固定されているだけなので、着用者が首を動かすのを妨げない。さらに、ヘルメットを脱ぐ時は、あごひもの締結を解くと、喉元の前方部分はもちろんのこと、ネックカバーの内側周縁部分も同時に着用者の首から離れるので、容易にヘルメットを脱ぐことができる。
【0011】
請求項2記載のネックカバーは、請求項1のネックカバーにおいて、
着用者のうなじを覆う部分と、
着用者の首の左側部から喉元までを覆う部分と、
着用者の首の右側部から喉元までを覆う部分と、を含んで構成されている。
【0012】
請求項2記載のネックカバーによれば、着用者の首の後部(うなじ)を覆う部分は、あごひもを締結すると、ヘルメット全体がアゴの方へ向かって引き付けられるので、容易に着用者の首の後部(うなじ)に密着する。
また、ネックカバーのその他の部分、即ち、着用者の首の左右側部から喉元までを覆う部分も前述の段落[0010]に記載したようにして、着用者の首回りに密着する。
【0013】
請求項3記載のネックカバーは、請求項1又は請求項2のネックカバーにおいて、前記内側周縁部分が、該内側周縁部
分よりも
着用者とは離間する側の部分に比べて柔軟性を有している。
【0014】
請求項3記載のネックカバーによれば、内側周縁部分がその他の部分よりも柔軟性を有している。これにより、あごひもを締結した際の張力をより有効に内側周縁部分へ伝えることができる。
【0015】
請求項4記載のヘルメットは、ヘルメットの内側に取り付けられ、着用者と接触するクッション材と、前記クッション材と一体化された請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のネックカバーと、を備えている。
【0016】
請求項4記載のヘルメットによれば、ネックカバーをヘルメットのクッション材と一体にすることにより、使用部品の点数も、組立工数をも減らすことができる。さらに、ヘルメットの重量も軽減できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係るヘルメット用のネックカバー及びヘルメットは、ヘルメットの開口部と着用者の首回りとの間のすき間をなくし、ヘルメットの密閉性を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜
図5を用いて本発明の実施形態に係るヘルメットについて説明する。なお、ヘルメットを使用している状態の装着者から見た前後方向前方側を矢印FRで示し、右側及び左側をそれぞれ矢印RH及び矢印LHで示し、上下方向上側を矢印UPで示す。また、以下の説明で、単に前後、左右、上下の方向を示す場合は、ヘルメットを装着している状態の着用者
(装着者)から見た前後、左右、上下を示すものとする。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態のヘルメット10は、着用のために頭を入れる開口部Qがヘルメットの下端にあり、着用者に視界を提供する開口窓42がヘルメットの前面にあり、開口窓42を開閉するためのシールド18が回動可能に取り付けられている。
ヘルメット10の外側は硬質材料のシェル12で覆われ、その内側に、衝撃を吸収するためのライナー14が固定されている。さらに、ライナー14の内側には、ヘルメットの被り心地を良くするための各種クッション材が取付けられている。
図1では、開口窓42からヘルメットの内部が見え、クッション材のうちの1つである、着用者の両頬に密着するチークパッド60が示されている。
【0021】
図2Aは、第一の実施例のヘルメット10を示している。また、
図2Aは、開口部Qにおけるネックカバー40の位置を示している。
ネックカバー40は、ヘルメット10の開口部Qの周縁から内側へ向かって張り出し、U字型の形状を成して、着用者の首の後部(うなじ)から前部(のど元)まで、首回りの全周囲を覆うことができる。さらに、ネックカバー40は、表側(ヘルメット10の外側向き)を合成皮革などの丈夫で伸縮性のある材料で覆い、裏側(ヘルメット10の内側向き)にパイル生地などの柔軟な材料で覆い、中間に発泡合成樹脂などの芯材を配しているので、着用者の首回りに密着し、かつ、ヘルメット10の着脱や、首の動きの邪魔にならない。
【0022】
また、
図2Bは、第二の実施例のヘルメットを示している。
ここでは、U字型の形状のネックカバー40を、中央部分のネックパッド54Dと、その他の部分に分けて構成している。
そして、ネックパッド54D以外の部分を,左側パッドと,右側パッドの二つに分けることで、少なくとも3つの部品からU字型の形状のネックカバー40が構成されていることを示している。
【0023】
しかし、左右のパッド部分(左側パッド,右側パッド)をさらに分割することも可能である。
図2Bでは、左右のパッド部分をさらに、挿通孔86を境目として、サブネックパッド64及びサブカバー84の2つの部品に分割している。
サブネックパッド64が開口部Qの周縁に配され、開口部の内側へ向けて張り出し、サブカバー84と縫製や接着などの方法で連結している。
【0024】
さらに、
図2A及び
図2Bでは、ネックカバー40、または、サブネックパッド64は、シェル12とライナー14との間に挟むことによって、ヘルメット10に取り付けてある。
しかし、ネックカバー40、または、サブネックパッド64は、チークパッド60(
図1参照)のようなクッション材のように、ライナー14の内側にホック止めしてもよい。または、クッション材の内側に配置して、直接、クッション材に、ファスナー止めや、ホック止めをすることが可能である。
要するに、着用者の首回りを覆うようにネックカバー40を構成できれば、取付け位置
や、取付け方法は制限を受けないのである。
ただし、好ましくは、洗濯や消耗品の交換のために、ネックカバー40、または、サブネックパッド64は、脱着可能に取り付けられていることが望ましい。
【0025】
図3は、本発明の実施形態に係るヘルメット10が着用者Pに装着され、あごひも20を締結した状態を斜め下方側から着用者の右側を見た斜視図が示されている。
あごひも20を締結することにより、ヘルメット全体をアゴの方へ引き寄せるので、ネックカバー40(
図2A参照)の後部、または、ネックパッド54D(
図2B参照)が着用者の首の後部に密着する。
また、ネックカバー40、または、サブネックパッド64の前方部分の左右に存在する挿通孔86があごひも20によってそれぞれアゴの下へ向けて引っ張られるので、ネックカバー40の左右側部の内側周縁部分、または、左右のサブカバー84の内側周縁部分が着用者の首回りP1の左右側面にそれぞれ引き寄せられることになる。さらに、着用者の喉元には、締結されたあごひもによって、挿通孔86を含むネックカバー40の前方部分、または、サブカバーの前方の端部84A(
図4参照)が密着するので、着用者の首回りP1は、完全に密閉される。(
図3参照)
【0026】
図4は、第二の実施例の右側パッド70Rを示したものである。
右側パッド70Rをサブネックパッド64およびサブカバー84の二つの部分に分けている。サブカバー84は、着用者の首回りP1に密着するための内側周縁部分を含むので、サブネックパッド64よりも柔軟で伸縮性のある材料で作られることが望ましい。
段落[0021]で説明したように、ネックカバー40は、表側に合成皮革などの丈夫で耐久性のある材料を使用し、中間に発泡合成樹脂などの芯材を配して、裏側をパイル生地などで覆っている。
サブカバー84は、表側に柔らかい材料を使用するか、または、ネックカバーと同じ材料であっても、薄いものを選び、また、裏側の生地を伸縮性のある材料に変えることで、着用者の首回りP1への密着性を向上させることができる。
また、サブカバー84に挿通孔86を設けることで、あごひも20を締結した時の張力をより有効に、効率よく内側周縁部分へ伝えることができる。
【0027】
また、右側パッド70Rは、サブカバー84の反対側の周縁部分に係止板82が縫製等により取付けられ、そして、係止板82の係止溝82Aが、シェル12とライナー14(
図2Aおよび
図2B参照)の間に固定された図示しないボス部に係止される。
しかし、段落[0024]で説明したように、取付け位置や、取付け方法は制限を受けないのである。
【0028】
図5は、本発明の実施形態に係る第二の実施例のヘルメットから取り外したセンターパッド、チークパッド、そして、ヘルメット本体を示している。
【0029】
チークパッド60は、着用者の頬に沿って配置されるクッション材である。
図5では、チークパッド60R(右側)が、右側パッド70Rと縫製、接着、ホック留めなどにより一体化される。右側パッド70Rは、段落[0027]で説明したようにヘルメット10に係止され、そして、チークパッド60は、ヘルメット内部(ライナー14の側面)にあるホック36に係止される。
このようにして、右側パッド70Rはヘルメットに脱着可能に取り付けられる。
また、図示しないが、左側パッド70Lも同様にして取り付けられる。
【0030】
センターパッド54は、着用者の頭部(頭頂部、前頭部、および、側頭部)及び首の後部(うなじ)に沿ってそれぞれ配置されるクラウンパッド(
図5の54A、54B、および54Cにわたる部分)及び、ネックパッド54Dを備えている。
また、センターパッド54は、前頭部配置部54Bの下端部から前方側へ延出したところに前側係止部54Fを備え、ライナー14の前側に係止される。さらに、ネックパッド54Dの裏側には、ホック36が備えられ、ライナー14の後側に係止される。
【0031】
以上の説明のように、第二の実施例のネックカバーは、ヘルメット10のクッション材と一体化することで、ヘルメットに着脱可能に取り付けることができる。
また、クッション材との一体化によって、使用部品の点数を減らし、ひいては、組立工数をも減らすことができる。さらに、ヘルメットの重量も軽減できる。
【0032】
また、チークパッド60とネックパッド54Dを連結させれば、開口部Qの周縁にU字型の形状のクッションを形成することになる。そのU字型クッションにネックカバー40を連結させると
図2Aの状態となる。
即ち、第一の実施例のネックカバーをヘルメットのクッション材と一体化することも可能である。
【0033】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0034】
図2A、
図2B及び
図3に示したように、本実施形態のネックカバー40は、頭を開口部Qに入れてヘルメット10を装着した後、ネックカバー40の挿通孔86に通したあごひも20をアゴの下で締結すると、あごひも20がヘルメット10全体をアゴの方へ引き寄せるので、ネックカバー40が着用者Pの首の後部に密着する。また、ネックカバー40の左右に存在する挿通孔86があごひも20によってそれぞれアゴの下へ向けて引っ張られるので、ネックカバー40の左右側部の内側周縁部分が着用者の首回りの左右側面に引き寄せられることになる。そして、着用者Pの喉元には、締結されたあごひも20によって、挿通孔86を含むネックカバー40の前方部分が密着する。
このようにして、着用者Pの首回りP1は、ネックカバー40の内側周縁部分によって完全に覆われる。また、ネックカバー40は、あごひもによって固定されているだけなので、着用者Pが首を動かすのを妨げない。さらに、ヘルメット10を脱ぐ時は、あごひも20の締結を解くと、喉元の前方部分はもちろんのこと、ネックカバー40の内側周縁部分も同時に着用者Pの首から離れるので、容易にヘルメットを脱ぐことができる。
【0035】
なお、本実施形態の説明では、主に、自動二輪の乗車用ヘルメットを例に説明してきたが、上記のように、ヘルメットを装着するために頭を入れる開口部と、ヘルメットを保持するためのあごひもを備えるヘルメットであれば、本実施形態のネックカバーを用いることができる。
即ち、自転車用、スポーツ用、スノーモービル用、水上スキー用などのヘルメットに利用可能である。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。