特許第6800038号(P6800038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800038
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】アッパサポート
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20201207BHJP
   F16F 1/373 20060101ALI20201207BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20201207BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   F16F9/54
   F16F1/373
   F16F15/08 E
   B60G15/06
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-28285(P2017-28285)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-132175(P2018-132175A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】松村 浩幸
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−137402(JP,A)
【文献】 特開2010−084824(JP,A)
【文献】 実開平04−106540(JP,U)
【文献】 特開2013−015187(JP,A)
【文献】 特開2008−151177(JP,A)
【文献】 特開2009−293768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/54
B60G 15/06
F16F 1/373
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバを構成するピストンロッドの上端部分に外挿された状態で、軸直角方向に広がる平板形状の内周端部が該ピストンロッドへ締付固定されるインナ部材を備えていると共に、該インナ部材に固着された本体ゴム弾性体が上側へ向けて小径となるテーパ支持面を備えており、該本体ゴム弾性体の該テーパ支持面に車両ボデーのボデー側取付部が載せられることにより、該本体ゴム弾性体が該車両ボデーの分担支持荷重によって該インナ部材と該ボデー側取付部の間で圧縮された状態で、該ピストンロッドと該車両ボデーの間に介装されるアッパサポートにおいて、
前記ピストンロッドの周囲を離れた位置で取り囲むように外挿状態で配される筒状部を備えた固着部材が別部品として前記インナ部材に設けられており、該固着部材の該筒状部が前記本体ゴム弾性体の内周部分に固着されていることを特徴とするアッパサポート。
【請求項2】
前記本体ゴム弾性体の内周部分には前記インナ部材から前記ピストンロッドの先端側へ向けて立ち上がる筒状シール部が設けられており、該筒状シール部が前記固着部材の前記筒状部に固着されていると共に、
該固着部材の該筒状部が、前記ピストンロッドに取り付けられて前記ボデー側取付部との当接によってリバウンドストッパを構成するストッパ部材に対して、該本体ゴム弾性体の該筒状シール部を介して押し付けられて、それら筒状部とストッパ部材の間がシールされている請求項1に記載のアッパサポート。
【請求項3】
前記固着部材が有底筒状とされており、該固着部材の周壁部によって前記筒状部が構成されていると共に、該固着部材の底壁部が前記インナ部材に重ね合わされた状態で該インナ部材とともに前記ピストンロッドに固定されている請求項1又は2に記載のアッパサポート。
【請求項4】
前記固着部材が筒状とされており、該固着部材の下端部が前記インナ部材に形成された溝部に嵌合されて該インナ部材に固定されていると共に、該固着部材における該溝部から突出する部分が前記筒状部とされている請求項1又は2に記載のアッパサポート。
【請求項5】
前記本体ゴム弾性体の前記テーパ支持面に沿って広がるアウタ部材が該本体ゴム弾性体に固着されており、前記インナ部材および前記固着部材の前記筒状部が該アウタ部材と該本体ゴム弾性体によって弾性連結されている請求項1〜4の何れか一項に記載のアッパサポート。
【請求項6】
前記固着部材が前記インナ部材よりも薄肉とされている請求項1〜5の何れか一項に記載のアッパサポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション機構を構成するショックアブソーバのピストンロッドを車両ボデーに防振連結するアッパサポートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、サスペンション機構を構成するショックアブソーバのピストンロッドと車両ボデーとを防振連結するアッパサポートが知られている。アッパサポートは、例えば特許第4922975号公報(特許文献1)に示されているように、ピストンロッドの上端部分を構成するボルト部に外挿された状態で固定されるベース部材を備えていると共に、ベース部材に本体ゴム部が固着された構造を有している。本体ゴム部には上側へ向けて収縮する本体ゴム部の外周面が設けられており、車体の車体側取付部が本体ゴム部の外周面に載せられることによって、本体ゴム部が車体荷重によってベース部材と車体側取付部の間で圧縮された状態で、アッパサポートがピストンロッドと車体の間に介装されるようになっている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載のアッパサポートでは、ピストンロッドのボルト部に外挿状態で配されたベース部材が、内周端部をピストンロッドの上端面と第一ナットの間で挟持されることで、ピストンロッドに固定されるようになっている。
【0004】
ところが、特許文献1のような構造では、ベース部材の内周端部がピストンロッドに固定される構造であることから、ベース部材の内周端部を軸方向で突出させることができない。それ故、軸直角方向においてベース部材と車体側取付部との間で本体ゴム部の圧縮ばね成分を確保し難く、軸直角方向のばねを硬く設定し難いことから、車両の走行性能などについてより大きなチューニング自由度をより大きく求められる場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4922975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、本体ゴム弾性体のばね特性のチューニング自由度を大きく得ることができる、新規な構造のアッパサポートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様は、ショックアブソーバを構成するピストンロッドの上端部分に外挿された状態で、軸直角方向に広がる平板形状の内周端部が該ピストンロッドへ締付固定されるインナ部材を備えていると共に、該インナ部材に固着された本体ゴム弾性体が上側へ向けて小径となるテーパ支持面を備えており、該本体ゴム弾性体の該テーパ支持面に車両ボデーのボデー側取付部が載せられることにより、該本体ゴム弾性体が該車両ボデーの分担支持荷重によって該インナ部材と該ボデー側取付部の間で圧縮された状態で、該ピストンロッドと該車両ボデーの間に介装されるアッパサポートにおいて、前記ピストンロッドの周囲を離れた位置で取り囲むように外挿状態で配される筒状部を備えた固着部材が別部品として前記インナ部材に設けられており、該固着部材の該筒状部が前記本体ゴム弾性体の内周部分に固着されていることを、特徴とする。
【0009】
このような第一の態様に従う構造とされたアッパサポートによれば、本体ゴム弾性体の外周部分に取り付けられるボデー側取付部と、本体ゴム弾性体の内周部分に固着される固着部材の筒状部との軸直角方向間に、本体ゴム弾性体が配されていることによって、軸直角方向において本体ゴム弾性体の圧縮ばね成分を大きく得ることができる。これにより、インナ部材の内周端部がピストンロッドに固定される構造とされて、インナ部材とボデー側取付部との間で本体ゴム弾性体の軸直角方向の圧縮ばねを得難い場合であっても、軸直角方向のばね特性をより大きな自由度で設定することが可能となって、目的とする防振性能や車両の操縦安定性などを有利に実現することができる。
【0010】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載されたアッパサポートにおいて、前記本体ゴム弾性体の内周部分には前記インナ部材から前記ピストンロッドの先端側へ向けて立ち上がる筒状シール部が設けられており、該筒状シール部が前記固着部材の前記筒状部に固着されていると共に、該固着部材の該筒状部が、前記ピストンロッドに取り付けられて前記ボデー側取付部との当接によってリバウンドストッパを構成するストッパ部材に対して、該本体ゴム弾性体の該筒状シール部を介して押し付けられて、それら筒状部とストッパ部材の間がシールされているものである。
【0011】
第二の態様によれば、筒状シール部がストッパ部材に押し付けられてシールが構成されることにより、水などの異物が筒状部とストッパ部材の間を通じて入り込んでピストンロッドなどに付着するのを防ぐことができて、耐久性の向上などが図られる。更に、筒状シール部には固着部材の筒状部が固着されており、筒状シール部の弾性変形量が筒状部によって制限されていることから、筒状シール部の弾性変形によるシール性能の低下が回避されて、高い信頼性を備えたシール構造を実現することができる。
【0012】
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載されたアッパサポートにおいて、前記固着部材が有底筒状とされており、該固着部材の周壁部によって前記筒状部が構成されていると共に、該固着部材の底壁部が前記インナ部材に重ね合わされた状態で該インナ部材とともに前記ピストンロッドに固定されているものである。
【0013】
第三の態様によれば、固着部材が有底筒状とされており、固着部材の底壁部がインナ部材とともにピストンロッドに固定されることから、固着部材をピストンロッドに容易に取り付けることができる。
【0014】
本発明の第四の態様は、第一又は第二の態様に記載されたアッパサポートにおいて、前記固着部材が筒状とされており、該固着部材の下端部が前記インナ部材に形成された溝部に嵌合されて該インナ部材に固定されていると共に、該固着部材における該溝部から突出する部分が前記筒状部とされているものである。
【0015】
第四の態様によれば、固着部材がインナ部材に予め固定されることから、それらインナ部材と固着部材を一体的に取り扱うことができて、例えば、本体ゴム弾性体の加硫成形用金型にセットする際に作業が容易になり得る。しかも、インナ部材と固着部材は、固着部材の下端部をインナ部材の溝部に嵌め入れることで、簡単に固定することができる。
【0016】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか1つの態様に記載されたアッパサポートにおいて、前記本体ゴム弾性体の前記テーパ支持面に沿って広がるアウタ部材が該本体ゴム弾性体に固着されており、前記インナ部材および前記固着部材の前記筒状部が該アウタ部材と該本体ゴム弾性体によって弾性連結されているものである。
【0017】
第五の態様によれば、インナ部材および固着部材の筒状部とアウタ部材との間に本体ゴム弾性体が配されていることにより、ボデー側取付部の形状や配置によるばね特性への影響が低減されて、本体ゴム弾性体の軸直角方向の圧縮ばね成分を安定して大きく得ることができる。また、本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載されたアッパサポートにおいて、前記固着部材が前記インナ部材よりも薄肉とされているものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ピストンロッドの周囲を離れた位置で取り囲むように外挿状態で配される筒状部を備えた固着部材がインナ部材に設けられており、固着部材の筒状部が本体ゴム弾性体の内周部分に固着されていることから、ボデー側取付部と固着部材の筒状部との軸直角方向間に本体ゴム弾性体が配されている。これにより、インナ部材の内周端部がピストンロッドに固定される構造であっても、軸直角方向において本体ゴム弾性体の圧縮ばね成分を大きく得易くなることから、軸直角方向のばね特性をより大きな自由度で設定することが可能となって、目的とする防振性能や車両の操縦安定性などを有利に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一の実施形態としてのアッパサポートを示す斜視図。
図2図1に示すアッパサポートの断面図。
図3図1に示すアッパサポートを車両への装着状態で示す断面図。
図4】本発明の第二の実施形態としてのアッパサポートを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1,2には、本発明の第一の実施形態としてのアッパサポート10が示されている。アッパサポート10は、インナ部材12とアウタ部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。以下の説明において、上下方向とは、原則として、図2中の上下方向を言う。
【0022】
より詳細には、インナ部材12は、金属などで形成された高剛性の部材であって、段付きの略円環板形状とされており、内周部分が外周部分よりも上側に位置していると共に、径方向の中央部分には上下に貫通するロッド挿通孔18が形成されている。なお、インナ部材12としては、板金具のプレス加工品であるプレス金具が好適に用いられる。
【0023】
アウタ部材14は、金属などで形成された高剛性の部材であって、全体として略円筒形状を有していると共に、上方へ向けて次第に収縮して小径となるテーパ筒形状とされている。また、本実施形態のアウタ部材14は、上端部が内周側へ湾曲して軸直角方向で広がっている。なお、アウタ部材14としては、インナ部材12と同様に、板金具のプレス加工品であるプレス金具が好適に用いられる。
【0024】
そして、インナ部材12に対して上側へ離れてアウタ部材14が配設されており、それらインナ部材12とアウタ部材14が本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、全体として上方に向けて次第に大径となるテーパ筒状の弾性連結部20を備えており、小径とされた弾性連結部20の下端部がインナ部材12に固着されていると共に、大径とされた弾性連結部20の上端部がアウタ部材14に固着されている。本実施形態の本体ゴム弾性体16は、インナ部材12とアウタ部材14を備える一体加硫成形品として形成されている。
【0025】
さらに、インナ部材12の外周部分の表面が本体ゴム弾性体16によって覆われており、インナ部材12の外周部分の下面から下方へ向けて突出するカバーゴム22が、本体ゴム弾性体16に一体形成されている。カバーゴム22は、下方に向けて径方向で幅狭となる略一定の断面形状で全周に亘って連続的に延びており、後述するピストンロッド40の周囲を取り囲んで異物の侵入を防止し得るようにされている。また、インナ部材12の内周端部は、本体ゴム弾性体16から突出しており、本体ゴム弾性体16から露出している。
【0026】
更にまた、インナ部材12の外周部分を覆うゴムは、弾性連結部20に対して内周端部で一体的につながっていると共に、外周部分で下方に離れて位置しており、本体ゴム弾性体16における弾性連結部20の下側には、外周面に開口して全周に亘って連続する第一の調節溝24が形成されている。なお、インナ部材12は、本体ゴム弾性体16の成形時に本体ゴム弾性体16の加硫成形用金型によって支持されることから、複数箇所で本体ゴム弾性体16から部分的に露出している。
【0027】
更にまた、アウタ部材14の外周面が本体ゴム弾性体16によって覆われており、アウタ部材14が本体ゴム弾性体16に対して埋設状態で固着されている。そして、本体ゴム弾性体16は、上側へ向けて次第に小径となるテーパ支持面26を備えており、アウタ部材14の外周面に沿って広がっている。なお、アウタ部材14は、本体ゴム弾性体16の成形時に本体ゴム弾性体16の加硫成形用金型によって支持されることから、複数箇所で本体ゴム弾性体16から部分的に露出している。
【0028】
更にまた、本体ゴム弾性体16によって弾性連結されたインナ部材12とアウタ部材14は、軸方向に離れた位置に配されており、軸直角方向の投影において重なり合っていない。
【0029】
また、本体ゴム弾性体16の内周端部には、筒状シール部28が一体形成されている。筒状シール部28は、上下に延びる略円筒形状とされており、インナ部材12の内周端よりも外周に位置して、インナ部材12から後述するピストンロッド40の先端側である上側に向けて立ち上がるように設けられている。この筒状シール部28は、下部が弾性連結部20と一体的につながっていると共に、上部が弾性連結部20よりも内周側に離れて位置しており、弾性連結部20と筒状シール部28の上部との径方向間には、全周に亘って連続する溝状の第二の調節溝30が上方に向かって開口して形成されている。
【0030】
本体ゴム弾性体16の筒状シール部28には、固着部材32が固着されている。固着部材32は、金属などで形成された硬質の部材であって、略有底円筒形状を有しており、周壁部が略円筒形状の筒状部34とされていると共に、底壁部の径方向中央部分には上下に貫通するロッド挿通孔36が形成されている。なお、固着部材32の筒状部34は、本体ゴム弾性体16の筒状シール部28に対して軸方向寸法が小さくされており、筒状シール部28に対して、上面から露出することなく、筒状シール部28の径方向(厚さ方向)の中間部分に埋設状態で固着されている。筒状部34のインナ部材12から上方への突出高さは、第二の調節溝30の底面(最深部)よりも上方に設定されている。この固着部材32としては、板金具のプレス加工品であるプレス金具が好適に用いられる。
【0031】
そして、固着部材32は、底壁部がインナ部材12の上面に重ね合わされた状態で配されて、筒状部34が本体ゴム弾性体16の筒状シール部28に加硫接着されており、インナ部材12と固着部材32の筒状部34が本体ゴム弾性体16によってアウタ部材14と弾性連結されている。また、固着部材32の筒状部34は、アウタ部材14の下部に対して軸直角方向の投影において重なり合う位置に配置されている。また、固着部材32の底壁部は、インナ部材12の上面に非固着で重ね合わされて、本体ゴム弾性体16によって連結されていても良いが、予め溶接などの手段で固定されて、本体ゴム弾性体16の成形用金型に対して一体的にセットできるようにしても良い。
【0032】
このように、アウタ部材14と固着部材32の筒状部34は、本体ゴム弾性体16によって弾性連結されていると共に、アウタ部材14の下部と固着部材32の筒状部34がオーバーラップして配置されている。これにより、本実施形態の本体ゴム弾性体16は、軸直角方向において、アウタ部材14と固着部材32の筒状部34との間で圧縮ばね成分を得易くなっていることから、軸直角方向のばねをより硬く設定することが可能とされており、本体ゴム弾性体16のばね特性のチューニング自由度がより大きく確保されている。
【0033】
かくの如き構造とされたアッパサポート10は、図3に示すように、車両のショックアブソーバ38のピストンロッド40と車両ボデー42の間に介装される。ピストンロッド40は、段差面44を挟んで上側が下側よりも小径で外周面にねじ山を形成されたボルト部46とされている。
【0034】
すなわち、ピストンロッド40の上端部分を構成するボルト部46が、アッパサポート10におけるインナ部材12のロッド挿通孔18と固着部材32のロッド挿通孔36に挿通されて、上下に重ね合わされたインナ部材12および固着部材32の底壁部が、ボルト部46に螺着される第一のナット48とピストンロッド40の段差面44との間で上下に挟持される。なお、第一のナット48とピストンロッド40の段差面44との間で挟持されるインナ部材12の内周端部と固着部材32の底壁部の内周端部は、何れも軸直角方向に広がる平板形状とされていると共に、何れも本体ゴム弾性体16から突出して、ピストンロッド40に対してゴムを介することなく直接的に取り付けられている。また、第一のナット48は、固着部材32の筒状部34の内周側に配されている。
【0035】
これにより、インナ部材12と固着部材32がピストンロッド40のボルト部46に対して外挿状態で固定されるようになっている。かくの如き固着部材32のピストンロッド40への装着状態において、固着部材32の筒状部34が、ピストンロッド40に対して外周側に離れて配置されて、ピストンロッド40を取り囲むように外挿状態で配設されている。なお、インナ部材12の下面には、ベアリング49がピストンロッド40に外嵌された状態で取り付けられており、ショックアブソーバ38に対して外挿状態で配されるコイルスプリング50の上端部を支持するスプリングシート51が、ベアリング49を介してインナ部材12およびピストンロッド40に支持されている。
【0036】
また、本体ゴム弾性体16のテーパ支持面26には、車両ボデー42のボデー側取付部52が上側から載せられている。ボデー側取付部52は、テーパ支持面26の形状に対応するテーパ形状を有していると共に、上下に貫通する貫通孔54を備えている。そして、ボデー側取付部52が本体ゴム弾性体16のテーパ支持面26に対して非固着で重ね合わされると共に、ピストンロッド40のボルト部46が貫通孔54に対する挿通状態でボデー側取付部52よりも上側に突出している。
【0037】
なお、図3には、ピストンロッド40と車両ボデー42の間に介装されたアッパサポート10に対して、車両ボデー42の分担支持荷重が入力されていない状態が図示されているが、車両への装着状態では、インナ部材12とアウタ部材14の間に車両ボデー42の分担支持荷重が入力されることで、本体ゴム弾性体16が弾性的に圧縮変形せしめられて、インナ部材12とアウタ部材14が上下方向で接近せしめられる。
【0038】
さらに、ピストンロッド40のボルト部46には、ストッパ部材56が取り付けられる。ストッパ部材56は、カップ金具58の上端部において外周へ広がるフランジ部60に対して、ストッパゴム62が固着された構造を備えている。なお、ストッパ部材56のカップ金具58は、好適には、板金具のプレス加工品であるプレス金具によって形成される。
【0039】
そして、ストッパ部材56は、カップ金具58の底壁部を貫通するロッド挿通孔64にピストンロッド40のボルト部46が挿通された状態で、カップ金具58がボルト部46に螺着される第二のナット66によってピストンロッド40に固定されることにより、ピストンロッド40に対してインナ部材12および固着部材32よりも先端側で取り付けられる。このストッパ部材56は、フランジ部60がボデー側取付部52にストッパゴム62を介して当接することにより、本体ゴム弾性体16の弾性連結部20の上下方向における引張変形量を制限するリバウンドストッパ68を構成するようになっている。なお、ストッパ部材56におけるカップ金具58の底壁部は、第一のナット48の上面に重ね合わされて、第一のナット48と第二のナット66の間で挟持されることによって、上下方向で位置決めされている。
【0040】
このようにストッパ部材56がピストンロッド40に固定された状態において、固着部材32の筒状部34とストッパ部材56が、本体ゴム弾性体16の筒状シール部28を介して間接的に当接しており、それら固着部材32の上端部とストッパ部材56の下端部との間がシールされている。これにより、インナ部材12とストッパ部材56の底壁部との上下間において、ピストンロッド40が外部から隔てられている。従って、ボデー側取付部52の貫通孔54を通じて入り込む水や砂塵などの異物が、ピストンロッド40に付着するのを防ぐことができて、耐久性の向上などが図られる。
【0041】
特に、筒状部34を固着されていない筒状シール部28単体がストッパ部材56に押し付けられる場合に比して、固着部材32に固着された筒状シール部28とストッパ部材56とが、第二のナット66の締付けによってより強く密着することから、固着部材32とストッパ部材56の間がより高い信頼性でシールされる。筒状部34の上端開口部は、筒状シール部28を挟んで、ストッパ部材56の円板形状の底壁部の外周縁部に対して外周側の斜め下方に対向配置されている。ここにおいて、筒状部34の上端開口部の対向面は、湾曲断面形状で外周に広がっていると共に、ストッパ部材56の底壁部の外周縁部の対向面は、湾曲断面形状で上方に立ち上がっている。これにより、筒状シール部28を挟む対向面が、互いに凸側のR面形状とされており、筒状シール部28における応力や歪の集中が抑えられている。
【0042】
また、本実施形態に従う構造とされたアッパサポート10では、固着部材32の筒状部34が本体ゴム弾性体16の筒状シール部28に固着されていることにより、軸直角方向の圧縮ばね成分をボデー側取付部52と固着部材32の筒状部34の間で大きく得ることができる。その結果、アッパサポート10によれば、軸直角方向でより硬いばねを設定することが可能となることから、ばね特性のチューニング自由度が大きく確保されて、例えば軸直角方向のばねを硬くすることでより優れた操縦安定性を実現することなども容易になる。
【0043】
さらに、本実施形態の本体ゴム弾性体16は、外周面に開口する第一の調節溝24によって軸方向のばねが調節されていると共に、弾性連結部20と筒状シール部28の間に形成された第二の調節溝30によって軸直角方向のばねが調節されている。従って、第一の調節溝24と第二の調節溝30の形状や深さなどを適宜に調節することにより、本体ゴム弾性体16のばね特性をチューニングすることができる。
【0044】
また、本実施形態の固着部材32は、略有底円筒形状とされており、底壁部の内周端部が第一のナット48によってインナ部材12とともにピストンロッド40に締結されるようになっていることから、固着部材32のピストンロッド40への取付けが簡単である。しかも、インナ部材12と固着部材32の底壁部が互いに重ね合わされて、ピストンロッド40の段差面44と第一のナット48の間で挟持されることにより、第一のナット48によってピストンロッド40に締結される部材の厚さが大きくなって、第一のナット48の緩みが生じ難くなる。
【0045】
図4には、本発明の第二の実施形態としてのアッパサポート70が示されている。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0046】
より詳細には、本実施形態のアッパサポート70は、略円筒形状の固着部材72を備えている。固着部材72は、上下に延びる略円筒形状とされており、内径寸法がインナ部材12のロッド挿通孔18の内径寸法よりも大きくされている。そして、固着部材72は、下端部がインナ部材12の上面に開口する環状の溝部74に嵌合されることにより、インナ部材12に固定されている。なお、本実施形態において、固着部材72の筒状部34は、インナ部材12の溝部74から上方へ突出した部分とされており、固着部材72の筒状部34に対して本体ゴム弾性体16の筒状シール部28が固着されている。
【0047】
このような本実施形態に従う構造とされたアッパサポート70においても、第一の実施形態のアッパサポート10と同様に、軸直角方向での圧縮ばね成分を確保し易くなることによるばね特性のチューニング自由度の向上や、インナ部材12と図示しないストッパ部材との間をより効果的にシールすることによる耐久性の向上などが図られ得る。
【0048】
さらに、本実施形態では、固着部材72の下端部がインナ部材12の溝部74に嵌め入れられることによって、インナ部材12と固着部材72が予め相互に固定されている。これにより、例えば本体ゴム弾性体16の成形用金型にインナ部材12と固着部材72をセットする際に、それらインナ部材12と固着部材72を一体的に取扱うことが可能であり、金型へのセット作業が簡単になる。しかも、インナ部材12と固着部材72が予め固定されていることによって、保管や輸送も簡単になる。加えて、インナ部材12と固着部材72は、固着部材72の下端部を溝部74へ嵌め入れるという簡単な手段で固定することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、互いにオーバーラップして配置されるアウタ部材14と固着部材32の筒状部34とのラップ代や、第一,第二の調節溝24,30の深さなどは、目的とするばね特性に応じて適宜に変更され得る。
【0050】
また、前記実施形態では、インナ部材12とアウタ部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を例示したが、アウタ部材14は必須ではなく省略され得る。この場合には、ボデー側取付部52と固着部材32の筒状部34との間で、本体ゴム弾性体16の軸直角方向の圧縮ばね成分を確保することができる。
【0051】
また、前記実施形態では、インナ部材12および固着部材32が第一のナット48によってピストンロッド40に固定されると共に、ストッパ部材56が第二のナット66によってピストンロッド40に固定される構造を例示したが、それらインナ部材12と固着部材32とストッパ部材56を第二のナット66によってピストンロッド40に固定することもできる。即ち、ピストンロッド40のボルト部46に対して螺着されずに外挿されるスペーサを第一のナット48に代えて採用して、インナ部材12と固着部材32とスペーサとストッパ部材56をそれぞれピストンロッド40のボルト部46に外挿した状態で、第二のナット66をボルト部46に螺着することにより、それらインナ部材12と固着部材32とストッパ部材56を第二のナット66によってピストンロッド40に固定できる。
【符号の説明】
【0052】
10,70:アッパサポート、12:インナ部材、14:アウタ部材、16:本体ゴム弾性体、26:テーパ支持面、28:筒状シール部、32,72:固着部材、34:筒状部、38:ショックアブソーバ、40:ピストンロッド、42:車両ボデー、52:ボデー側取付部、56:ストッパ部材、68:リバウンドストッパ、74:溝部
図1
図2
図3
図4