(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の車両用灯具は、主に四輪車(自動車)を対象としていたため、配光パターンを坂道やカーブに合わせて変化させる機能があった。しかし、四輪車は直立した状態から殆ど傾かないため、車両の傾きに合わせて配光パターンを調整する必要性は低かった。
【0008】
しかしながら、主として、二輪車(バイク)の場合には、カーブ等で車両が大きく傾くことがあり、従来の車両用灯具では、配光パターンを車両の傾きに追従させることができないという問題があった。
【0009】
また、四輪車の場合であっても、例えば、走路自体に傾斜(バンク角)があるような場合には、同様に、従来の車両用灯具では、配光パターンを車両の傾きに追従させることができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両の鉛直方向に対する傾きに合わせて迅速に配光パターンを変更することができる車両用灯具及び車両用灯具の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明は、車両前方に生成される配光パターンの輝度分布を演算する配光演算部と、光源と、該光源から出射される光を所定方向に反射するミラー部及び該ミラー部を回動軸線周りに回動させるアクチュエータとからなる光偏向器と、前記ミラー部で反射された光を入射させて蛍光を出射する蛍光体と、該蛍光体から出射される光を投影する投影光学部とで構成され、前記配光演算部により演算された前記輝度分布に基づいて、前記投影光学部からの光が照射される照射領域に前記配光パターンを生成する配光生成部と、前記配光演算部により演算された前記輝度分布に基づいて駆動信号を生成し、該駆動信号により前記配光生成部を駆動させる第1駆動部と、を備えた車両用灯具において、車両の所定位置に取り付けられて、車両の鉛直方向に対する傾斜角を検出する傾斜角検出手段を備え、前記配光演算部は、前記傾斜角検出手段から受信した検出信号の前記傾斜角が予め定めた閾値以下であるとき、現在の配光パターンの傾斜を補正する第1配光補正信号を前記第1駆動部に送信し、前記第1駆動部は、前記第1配光補正信号に基づく第1補正駆動信号を前記配光生成部に送信し、前記配光生成部は、前記第1補正駆動信号に基づいて前記光源及び前記光偏向器を駆動させ、前記現在の配光パターンを補正することを特徴とする。
【0012】
本発明の車両用灯具は、第1駆動部が配光演算部により演算された配光パターンの輝度分布に基づいて駆動信号を生成し、配光生成部を駆動させて車両前方の照射可能領域に配光パターンを生成する。
【0013】
例えば、カーブ等で車両が鉛直方向に対して傾いた場合、傾斜角検出手段の検出信号が配光演算部に送信される。配光演算部は、傾斜角が閾値以下の検出信号を受信したとき第1配光補正信号を第1駆動部に送信して、第1駆動部は、第1補正駆動信号に基づいて配光生成部を駆動させる。これにより、配光パターンの傾斜が補正される(後述する画像補正)。画像による補正は処理速度が速いため、車両の傾きに合わせて迅速に配光パターンを変更することができる。
【0014】
第1発明の車両用灯具において、前記配光生成部に取り付けられて、該配光生成部を回動させる機械的回動手段と、前記機械的回動手段を駆動させる第2駆動部と、をさらに備え、前記配光演算部は、前記傾斜角検出手段から受信した検出信号の前記傾斜角が前記閾値よりも大きいとき、現在の配光パターンの傾斜を補正する第2配光補正信号を前記第1駆動部及び前記第2駆動部に送信し、前記第1駆動部及び前記第2駆動部は、前記第2配光補正信号に基づく第2補正駆動信号を前記配光生成部に送信し、前記配光生成部は、前記第2補正駆動信号に基づいて前記光源、前記光偏向器及び前記機械的回動手段を駆動させ、前記現在の配光パターンを補正することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、配光演算部は、傾斜角検出手段から受信した検出信号の前記傾斜角が前記閾値よりも大きいとき第2配光補正信号を第1駆動部及び第2駆動部に送信する。第1駆動部及び第2駆動部は、第2補正駆動信号に基づいて配光生成部を駆動させ、さらに、配光生成部は、光源、光偏向器に加えて機械的回動手段を駆動させ、配光パターンの傾斜が補正される(後述する機械的回動補正)。これにより、車両の傾きが大きくなった場合にも、2種類の補正を組み合せて、迅速に配光パターンを変更することができる。
【0016】
また、第1発明の車両用灯具において、車両が二輪車である場合、前記傾斜角検出手段は、運転者の両足が置かれる足置部に取り付けられて、該傾斜角検出手段の取付位置と路面との間の距離を検出する一対の車高センサであることが好ましい。
【0017】
車両が二輪車である場合、傾斜角検出手段として一対の車高センサを、運転者の両足が置かれる足置部に取り付ける。車高センサは、超音波等によりその取付位置と路面との間の距離を測定することができる。足置部は、通常、路面に対して水平であるので、各車高センサの数値差から車両の傾きを容易に検出することができる。
【0018】
また、第1発明の車両用灯具において、前記傾斜角検出手段は、車両の左右の中心軸上に取り付けられたジャイロセンサであることが好ましい。
【0019】
車両の左右の中心軸上にジャイロセンサを取り付けることで、車両の鉛直方向(回転軸)に対する回転角速度を検出することができる。
【0020】
第2発明は、車両前方に生成される配光パターンの輝度分布を演算する配光演算処理と、前記配光演算処理で演算された前記輝度分布に基づいて、光が照射される照射領域に前記配光パターンを生成する配光生成処理と、車両の鉛直方向に対する傾斜角を算出する傾斜角算出処理と、前記傾斜角算出処理で取得された前記傾斜角が予め定めた閾値以下であるか否かを判定する閾値判定処理と、前記閾値判定処理の判定結果が前記閾値以下であるとき、前記傾斜角算出処理で取得された前記傾斜角を前記配光パターンの傾斜を補正する第1補正値として補正する第1補正処理と、を備えた車両用灯具の制御方法において、前記第1補正処理では、前記第1補正値に基づいて前記配光演算処理及び前記配光生成処理とを行い、前記配光パターンを補正すること特徴とする。
【0021】
本発明の車両用灯具の制御方法では、配光演算処理にて車両前方に生成される配光パターンの輝度分布が演算され、配光生成処理にてその輝度分布に基づいて照射可能領域に配光パターンが生成される。
【0022】
例えば、カーブ等で車両が鉛直方向に対して傾いた場合、傾斜角算出処理にて車両の鉛直方向に対する傾斜角が算出され、閾値判定処理にて判定結果が閾値以下であるか否かが判定される。判定結果が閾値以下であるとき、その傾斜角を第1補正値とする。そして、第1補正値に基づいて再度、配光演算処理と配光生成処理とが行われ、傾斜を補正した新たな配光パターンが生成される。これにより、車両の傾きに合わせて迅速に配光パターンを変更することができる。
【0023】
第2発明の車両用灯具の制御方法において、前記配光パターンの傾斜を機械的回動手段の回動により補正する回動補正処理と、前記閾値判定処理の判定結果が前記閾値よりも大きいとき、前記配光パターンの傾斜を補正する第2補正値を算出する第2補正値算出処理と、をさらに備え、前記第2補正値算出処理で算出された前記第2補正値に基づいて前記配光演算処理、前記配光生成処理及び前記回動補正処理を行い、前記配光パターンを補正することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、車両が鉛直方向に対して傾いた場合に、傾斜角算出処理と閾値判定処理とが行われ、閾値判定処理の判定結果が閾値よりも大きいとき、第2補正値算出処理が行われる。そして、第2補正値算出処理にて算出された第2補正値に基づいて、配光演算処理、配光生成処理に加えて回動補正処理が行われる。配光パターンが機械的回動手段の回動によっても補正されるので、車両が大きく傾いた場合にも、迅速に配光パターンを変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の実施形態の車両用灯具1の全体構成図である。車両用灯具1は、二輪車又は四輪車に搭載される灯具(ヘッドランプ)であり、主に光学系装置2と、制御装置3とで構成されている。なお、
図1には、センサ部4が示されているが、これは、車両用灯具1とは別に取り付けられている。
【0027】
まず、光学系装置2(本発明(請求項1)の「配光生成部」に相当)は、LD(Laser Diode)6と、光偏向器7と、蛍光体8と、投影レンズ9とで構成されている。光学系装置2は、車両用灯具1の前方に配置され、モータ10が取り付けられていることで、光学系装置2を機械的に回動させることができる。
【0028】
LD6(本発明の「光源」)は、例えば、中心発光波長が450nmの青色レーザダイオードである。LD6は、後述する第1駆動回路14aによりオン、オフ及び光量が制御される。十分な光量が確保できるのであれば、LD6の代わりに発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)を用いてもよい。
【0029】
光偏向器7は、二次元的に傾倒可能なミラー部を備え、ミラー部に入射した光の反射方向を自在に変えられるようになっている。本実施形態では、ミラー部がLD6から出射されたレーザ光を蛍光体8の方向に反射させる。光偏向器7についても第1駆動回路14aにより制御される。
【0030】
光偏向器7としては、例えば、特開2005−128147号公報や特許第4092283号公報に記載された公知の構成のミラーを適用することができる。
【0031】
蛍光体8は、光が照射されると蛍光を発する部材である。具体的には、蛍光体8は、光偏向器7のミラー部で反射されたレーザ光(青色の励起光)が照射されることで蛍光が励起され、この青色光と補色の関係にある黄色光を発する。このため、この蛍光体8からは青色光と黄色光とが混色した白色光が出射される。
【0032】
投影レンズ9(本発明の「投影光学部」)は、蛍光体8と配光パターンが生成される照射可能領域Dとの間に配置されている。蛍光体8から出射された光(白色光)は、投影レンズ9と図示しないケーシングの透光カバーを通過して、車両前方の照射可能領域Dに結像される。
【0033】
モータ10(本発明の「機械的回動手段」)は、光学系装置2に取り付けられたステッピングモータであり、後述する第2駆動回路14bにより回動角が制御される。
【0034】
次に、制御装置3は、コントローラ12と、配光記憶メモリ13と、駆動回路14と、ヘッドランプ制御ECU(Engine Control Unit)15とで構成されている。
【0035】
コントローラ12(本発明の「配光演算部」)は、ヘッドランプ制御ECU15から配光パターンの生成に必要な情報(配光生成情報)を取得する。また、コントローラ12は、配光記憶メモリ13から現在の配光パターン(配光輝度情報)を読込み、新たな配光パターンの輝度分布を演算する。その後、コントローラ12は、新たな配光パターンで照射可能領域Dに光が照射されるための配光輝度分布を駆動回路14に送信する。
【0036】
配光記憶メモリ13には、コントローラ12が演算実行時に使用するデータを一時記憶するためのRAM、コントローラ12が実行するプログラムデータを記憶しているROM、所定の不揮発性記憶装置等が含まれている。
【0037】
駆動回路14は、第1駆動回路14aと、第2駆動回路14bとで構成されている。第1駆動回路14a(本発明の「第1駆動部」)は、LD駆動信号によりLD6に供給する駆動電力を制御し、LD6のオン、オフ及び光量の変更を行う。また、第1駆動回路14aは、光偏向器7のアクチュエータに光偏向器駆動信号を供給して、ミラー部の傾倒態様を制御する。
【0038】
第2駆動回路14b(本発明の「第2駆動部」)は、モータ駆動信号によりモータ10の回動を制御する。具体的には、車両が鉛直方向に対して傾いた場合に、照射可能領域Dを元の水平方向に戻すように、常にモータ10を回動させる。
【0039】
ヘッドランプ制御ECU15は、後述するセンサ部4の車載カメラ17で撮像された画像情報や車高センサ18の距離情報(検出信号)を取得し、配光パターンの生成に必要な信号に変換して、コントローラ12に送信する。
【0040】
次に、センサ部4は、車載カメラ17と、車高センサ18とで構成されている。車載カメラ17は、車両前方を撮像可能なものであればよく、光学系装置2が回動するとき、共に回動しない位置に取り付けられている。例えば、可視光と赤外線とを撮像可能なデジタルカメラが挙げられるが、車両の衝突防止等の目的で歩行者や障害物を監視するカメラを兼用していてもよい。
【0041】
車高センサ18(本発明の「傾斜角検出手段」)は、車両の所定位置に取り付けられて、車両の鉛直方向に対する傾斜角を検出することができるセンサである。本実施形態の車高センサ18は、超音波や赤外線によりセンサ取付位置と路面との間の距離情報を取得し、検出信号をヘッドランプ制御ECU15に送信する。
【0042】
図2A,
図2Bは、車両(バイク30)に取り付けた各種センサを示している。
【0043】
まず、
図2Aは、バイク30を上方向から見た図である。上述の車高センサ18は、運転者が足を置く左右のステップ部30a,30b(本発明の「足置部」)の下面側にそれぞれ取り付けられている。特に、運転者の左足側のステップ部30aに左車高センサ18a、右足側のステップ部30bに右車高センサ18bが取り付けられている。
【0044】
車高センサ18a,18bは、例えば、超音波や赤外線でセンサ取付位置と路面との間の距離を測定する。それぞれの検出値は、検出信号としてヘッドランプ制御ECU15に送信されるが、距離の差から鉛直方向に対するバイク30の左右方向の傾きが算出される。そして、この傾きを補正するように配光パターンが再生成される。
【0045】
バイク30の左右方向の傾きを取得するために、ジャイロセンサ(角速度センサ、本発明の「傾斜角検出手段」)や加速度センサを用いてもよい。車高センサ18a,18bやジャイロセンサ19は、バイク30の左右の中心軸上、かつ変位が最も大きい位置(できる限り路面から離れた高い位置)に取り付けることが好ましい。
【0046】
図2A又はバイク30を左方向から見た
図2Bに示されるように、本実施形態では、車両用灯具1の上面側にジャイロセンサ19を取り付けている。光学系装置2の回動機構の内部にジャイロセンサ19を配置するようにしてもよい。
【0047】
特に、ジャイロセンサ19は、走路自体に傾斜(バンク角)があった場合を含めて、バイク30の傾きを検出することができる。なお、上述の車高センサ18(車高センサ18a,18b)と、ジャイロセンサ19の何れかがあれば、バイク30の左右方向の傾きを検出するのに十分である。
【0048】
また、バイク30は、急ブレーキをかけたとき等に前後方向に傾くことがある。このような場合、バイク30の前後方向の傾きを補正するように配光パターンを補正する必要がある。
【0049】
タイヤ付近(サスペンション部分等)に、センサを取り付けた場合、路面の段差等により影響を受けることがある。このため、車両用灯具1が前後方向に傾くボディ部分にセンサを取り付けることが好ましい。
図2A,2Bに示されるように、車両用灯具1の上面側に取り付けられたジャイロセンサ19により、バイク30の前後方向に傾きを検出することができる。
【0050】
バイク30の前後方向の傾きを検出して、配光パターンを補正する制御を行う場合、車両用灯具1、特に光学系装置2の回動機構の内部にセンサを配置することが好ましい。なお、バイク30の左右方向の傾斜、前後方向の傾斜が同時に発生することもあるが、ジャイロセンサ19は地軸に対する傾きを測定することができるので、配光パターンを補正することができる。
【0051】
次に、
図3A〜
図3Cを参照して、車両が鉛直方向に対して大きく傾いた場合に、照射可能領域Dに生成される配光パターンについて説明する。
【0052】
バイク30が鉛直方向に対して左方向に角度θ
1だけ傾いた場合、
図3Aに示されるように、配光パターンが生成される照射可能領域Dが同じ角度だけ回転する。照射可能領域Dは光偏向器7のミラー部が傾倒可能な最大範囲であり、照射可能領域D内の非着色部分は、光が照射されて所定の輝度を有する照射領域S、照射可能領域D内の着色部分は、光が遮蔽されたマスク領域Mである。
【0053】
図3Aにおいて、照射可能領域Dの回転に伴って、配光パターン(照射領域S+マスク領域M)が回転しているため、対向車Vのフロントガラス部分は光(ハイビーム等)で照射されて、対向車Vの運転者が眩惑することがある。そこで、車両用灯具1は、車両の鉛直方向に対する傾斜角(角度θ
1)の情報を取得して、配光パターンの傾斜を元に戻す画像補正及び機械的回動補正を行う。
【0054】
具体的には、コントローラ12が駆動回路14に配光補正信号を送信し、第1駆動回路14aが配光補正信号に基づいてLD6へのLD駆動信号と、光偏向器7への光偏向器駆動信号を更新する(
図1参照)。これにより、画像補正、すなわち、配光パターンの再生成が行われ、配光パターンが元の方向に回転する。
【0055】
また、第2駆動回路14bが配光補正信号に基づいてモータ10へのモータ駆動信号を更新する。これにより、モータ10による機械的回動補正、すなわち、照射可能領域Dの機械的な回転が行われる。一般に、機械的回動補正よりも画像補正の方が高速に処理されるため、
図3Bに示されるように、配光パターンの方が先に元の水平方向に近づく。
【0056】
図3Bには、ほぼ水平状態の配光パターンが示されている。ここで、対向車Vのフロントガラス部分は、大部分が配光パターンのマスク領域Mに含まれることとなり、対向車Vの運転者がハイビーム等により眩惑することがなくなる。なお、照射可能領域Dは、未だ角度θ
2だけ回転した状態であるので、配光パターンは、その一部が切り取られた状態である。
【0057】
その後、間もなく画像補正による配光パターンの回転が終了して、配光パターンが水平状態になる。そして、モータ10が角度θ
2だけ照射可能領域Dを逆方向に回転させて照射可能領域Dが水平状態となり、照射可能領域D内に配光パターンが収まった状態となる(
図3C参照)。
【0058】
このように、バイク30が鉛直方向に対して大きく傾いて、その傾斜角が車高センサ18で検出された場合、駆動回路14により画像補正と機械的回動補正の両方が行われる。
【0059】
モータ10による機械的回動補正は、車両が大きく傾いても補正が行えるという利点があるが、機械的な動作であるため、比較的時間がかかる。一方、画像補正は迅速な配光パターンの補正が可能であるため、画像補正と機械的回動補正とを組み合せることにより、素早い傾斜変化に追従させて、配光パターンを変更することができる。
【0060】
詳細は後述するが、バイク30の鉛直方向に対する傾斜が閾値(例えば、傾斜角θが5°)より小さい場合には、画像補正のみで対応することもできる。
【0061】
次に、
図4を参照して、車両が鉛直方向に対して傾いた場合に実行される画像補正と機械的回動補正のフローチャートを説明する。ここでは、
図2Aに示したように、バイク30の一対のステップ部30a,30bに、それぞれ車高センサ18a,18bが取り付けられている場合を説明する。
【0062】
なお、ステップS01〜S03は、ヘッドランプ制御部ECU15(以下、符号省略)による処理であり、ステップS04以降は、コントローラ12(以下、符号省略)による処理である。
【0063】
まず、車両が鉛直方向に対して傾斜した場合に、ヘッドランプ制御ECUは、一対の車高センサからの検出信号を取得する(ステップS01)。その後、ステップS02に進む。
【0064】
次に、ヘッドランプ制御ECUは、車両の鉛直方向に対する傾斜角を算出する(ステップS02、本発明の「傾斜角算出処理」)。バイク30が鉛直方向に対して傾いた場合、車高センサ18からの検出信号は、距離の値が異なっている。このため、センサ同士の配置距離も用いて、車両の鉛直方向に対する傾斜角を算出することができる。その後、ステップS03に進む。
【0065】
次に、ヘッドランプ制御ECUは、配光回転角度R
0を算出する(ステップS03)。配光回転角度R
0は、画像補正と機械的回動補正を行う回転角度の目標値である。その後、ステップS04に進む。
【0066】
次に、コントローラは、ヘッドランプ制御ECUから取得した回転角度R
0が閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS04、本発明の「閾値判定処理」)。閾値は、適宜設定することができるが、例えば、5°とする。
【0067】
最初に、ステップS04の判定がYESである場合を説明する。コントローラは、目標モータ回転角度R
Mを算出する(ステップS05、本発明の「第2補正値算出処理」)。目標モータ回転角度R
Mは、モータ10による機械的回動補正のための目標回転角度である。その後、ステップS06に進む。
【0068】
次に、コントローラは、回転角度R
Mの情報(モータ駆動信号で、本発明の「第2補正駆動信号」)を第2駆動回路14bへ送信する(ステップS06、本発明の「回動補正処理」)。これにより、モータ10による機械的回動補正が実行され、配光パターンの傾斜が機械的に元に戻される。その後、ステップS07に進む。
【0069】
次に、コントローラは、配光回転角度R
Pを算出する(ステップS07、本発明の「第2補正値算出処理」)。回転角度R
Pは、現在のモータ回転角度r
Mとして、以下の式で与えられる。
R
P=R
M−r
M・・・(式1)
【0070】
例えば、目標モータ回転角度R
Mが30°で、現在のモータ回転角度r
Mが20°であった場合、R
P=10°となる。これは、モータ10の回動により照射可能領域Dが回転すると配光パターンも共に回転し、画像補正で残り分の角度(10°)だけ戻せば、配光パターンは水平状態になることを意味する。
【0071】
次に、コントローラは、回転角度R
P用の輝度分布を演算する(ステップS08、本発明の「配光演算処理」)。具体的には、配光記憶メモリ13から現在の配光パターンの輝度分布情報を取得した後、新たな輝度分布を演算する。その後、ステップS09に進む。
【0072】
次に、コントローラは、回転角度R
Pの情報(LD駆動信号及び光偏向器駆動信号で、本発明の「第2補正駆動信号」)を第1駆動回路14aへ送信する(ステップS09、本発明の「配光生成処理」)。これにより、LD6及び光偏向器7の駆動による画像補正が実行され、配光パターンが再生成される。
【0073】
最後に、ステップS04の判定がNOである場合(本発明の「第1補正処理」)を説明する。この場合、コントローラは、回転角度R
0用の輝度分布を演算し(ステップS10、本発明の「配光演算処理」)、回転角度R
0の情報を第1駆動回路14aへ送信する(ステップS11、本発明の「配光生成処理」)。
【0074】
すなわち、回転角度R
0が閾値(例えば、5°)以下の場合には、画像補正のみで配光パターンの傾斜を補正する。機械的回動補正よりも画像補正の方が高速に処理されるため、回転角度R
0が小さい場合には、画像補正のみで対応する。なお、画像補正のみで傾斜を補正する場合には、照射可能領域Dは傾斜したままの状態でもよい。以上で、車両が鉛直方向に対して傾いた場合の一連の処理を終了する。
【0075】
車両が速い角速度で傾いた場合も、モータ10による機械的回動補正では対応することができない。この場合には、画像補正によって配光パターンの傾斜を補正する。上述のステップS04では、傾斜時の角速度が所定値以上か否かを判定条件、又は判定条件の1つとしてもよい。
【0076】
このように、本発明の車両用灯具1では、車両が鉛直方向に対して大きく傾いた場合でも、画像補正と機械的回動補正とを行うことで、迅速に配光パターンの傾斜を補正することができる。機械的回動補正のみでも配光パターンの傾斜を補正することは可能だが、モータ10を使用するため時間がかかる。しかし、画像補正が同時に行われることで、配光パターンを車両の傾きに遅延なく追従させることができる。
【0077】
また、走路自体に傾斜(バンク角)がある場合にも、本発明の車両用灯具1は、配光パターンを水平にすることができる。バンク角によっては、二輪車は、鉛直方向に対して90°近くまで傾く。ジャイロセンサの位置は、二輪車のステップ部に限られず、できる限り路面から離れた高い位置が望ましい。
【0078】
モータ10は、車両用灯具1の周りを覆うように取り付けられ、±90°回動するような構成であることが好ましい。これにより、二輪車が鉛直方向に対して大きく傾いた場合でも、配光パターンの傾斜を補正することができる。
【0079】
光学系装置2の内部は、
図1で示した実施形態に限られない。LD6と光偏向器7との間に、集光レンズを配置してもよいし、集光レンズを通過したレーザ光を蛍光体に照射して、蛍光が光偏向器7に入射するようにしてもよい。また、光偏向器7の代わりに、ミラー素子がマトリクス状に配置されているデジタルミラーデバイスを用いてもよい。