(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置や、複数枚の基板を一括して処理するバッチ式の基板処理装置が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の枚葉式の基板処理装置は、基板を保持するスピンベースと、スピンベース上に設けられた複数のチャックピンと、スピンベースを回転させるスピンモータと、スピンベースの中央部から基板の上面側の中央部、および、下面側の中央部に向けて処理液を吐出する処理液ノズルと、スピンベースに保持された基板の周囲を取り囲むカップとを備えている。
【0004】
この基板処理装置では、複数のチャックピンが水平な姿勢で基板を把持している状態で、電動モータがスピンベースを回転させる。そして、処理液ノズルから吐出された処理液が、回転状態の基板の上面又は下面に供給される。基板の上面又は下面に供給された処理液は、基板の回転による遠心力によって、基板の外方に広がる。そして、基板の周縁部に達した処理液は、基板の周囲に振り切られ、カップによって受け止められる。
【0005】
特許文献1の基板処理装置では、チャックピン各々の上方に配置され、基板から排出される処理液を基板の周囲に案内するガイド部材が設けられている。ガイド部材は、スピンベースの回転方向の上流側において周方向(基板回転軸線まわりの方向)に広がる部材とされている。ガイド部材のガイド内縁は、基板の周端部が収容される収容溝よりも内方に配置され、ガイド部材のガイド外縁は、ガイド内縁よりも下方の高さでかつチャックピンよりも外方の位置に配置されている。
【0006】
特許文献1では、ガイド部材を設けることによって、チャックピンの近傍に達した処理液が、基板、チャックピン、およびガイド部材によって形成された捕集溝内に入り込むため、基板に対する処理液の再付着が低減される、とされている。
【0007】
また、特許文献2には、幅が漸進的に減少する接触部によって基板の周端部を支持するチャックピンが開示されている。このようなチャックピンで基板を支持することによって、基板とチャックピンが接触する領域まで処理液が円滑に供給されるため、基板の全体領域で工程均一度を向上させることができる、とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、基板の下面側(スピンベース側)に供給された処理液は、基板の周縁部を支持するチャックピンに衝突することによって、しぶき(液滴やミスト)となり、基板の上面側に付着し得る。特に、
図10中、矢符FDrで示すように、スピンベース911を上方から見たとき、基板Wの下面側に供給された処理液は、基板Wの回転方向RDrとは反対回りの渦状に広がる。このため、処理液は、チャックピン912各々に対して、回転方向RDrの下流側(先側)から優勢的に衝突し得る。したがって、チャックピン912の特に下流側において、処理液のしぶきが発生しやすくなっており、そのしぶきが基板の上面側に回り込んで、基板の上面に付着し得る。
【0010】
仮に、特許文献1のガイド部材を設けたとしても、チャックピン912に衝突した処理液が、基板Wの上側に移動することを抑制することは難しい。なぜなら、特許文献1のガイド部材の内縁は、基板よりも上側に設けられる。このため、基板の下面側で発生した処理液のしぶきの上面側へ回り込みを、ガイド部材によって抑制することは困難である。また、該ガイド部材は、基板を把持する把持部よりも回転方向の上流側(手前側)に広がる。上記のとおり、処理液は把持部の下流側で発生しやすいため、チャックピン912に衝突した処理液の基板Wの上面側への回り込みを、上流側に広がるガイド部材によって抑制することは困難である。
【0011】
そこで、本発明は、基板のスピンベース側の面に供給された処理液が基板の反対側の面に付着することを低減し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、第1態様は、基板を処理液で処理する基板処理装置であって、基板回転軸線まわりに回転するスピンベースと、前記スピンベースを前記基板回転軸線まわりの所定の回転方向に回転させるスピンモータと、それぞれが前記スピンベースに設けられ、前記基板を前記スピンベースから上側に離間させて把持する複数のチャックピンと、前記複数のチャックピンに把持された前記基板と前記スピンベースとの間に処理液を供給する処理液供給部とを備え、前記複数のチャックピンの各々は、前記基板の周端面に押しつけられることによって前記基板を把持する基板把持部と、前記スピンベースに設けられ、前記基板把持部を前記スピンベースから上側に離間させて支持する支持部と、前記基板把持部から前記回転方向の下流側に延びる部分であって、前記スピンベースの内側を向く内向面と、前記内向面の下端に位置しており前記スピンベースの側である下側を向く庇下面とを有する下流側庇部とを有し、前記下流側庇部の前記庇下面が、前記基板把持部に把持された前記基板の上面よりも下側に配される。
【0013】
第2態様は、第1態様の基板処理装置であって、前記下流側庇部の前記庇下面が、前記基板把持部に把持された前記基板の下面よりも上側に配される。
【0014】
第3態様は、第1態様または第2態様の基板処理装置であって、前記下流側庇部の前記上側を向く庇上面が、前記基板把持部に把持された前記基板の上面よりも上側に配される。
【0015】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記チャックピンは、前記基板把持部から前記回転方向の上流側に延びる部分であって、前記スピンベースの内側を向く内向面と、前記スピンベースの側である下側を向く庇下面とを有する上流側庇部、をさらに有し、前記上流側庇部の前記庇下面が、前記基板把持部に把持された前記基板の上面よりも下側に配される。
【0016】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記下流側庇部の前記内向面が、上側から下側に向かって前記スピンベースの外側へ傾斜する。
【0017】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記支持部は、下側から上側に延びる棒状に形成され、その上側の端部に前記基板把持部を支持する支柱部を含み、前記支柱部の外形が、円形状に形成された部分を含む。
【0018】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記下流側庇部における前記内向面と前記庇下面との境界部分が、前記基板回転軸線まわりの周方向にわたって屈曲した角状に形成されている。
【0019】
第8態様は、基板を処理液で処理する基板処理方法であって、(a)基板回転軸線まわりに回転するスピンベースに設けられた複数のチャックピンによって、基板を前記スピンベースから上側に離間させて把持する把持工程と、(b)前記把持工程の後、前記スピンベースを基板回転軸線まわりの所定の回転方向に回転させることによって、前記基板を回転させる回転工程と、(c)前記回転工程にて、回転する基板と前記スピンベースとの間に処理液を供給する処理液供給工程とを含み、前記複数のチャックピンの各々は、前記基板の周端面に押しつけられることによって前記基板を把持する基板把持部と、前記スピンベースに設けられ、前記基板把持部を前記スピンベースから上側に離間させて支持する支持部と、前記基板把持部から前記回転方向の下流側に延びる部分であって、前記スピンベースの内側を向く内向面と、前記内向面の下端に位置しており前記スピンベースの側である下側を向く庇下面とを有する下流側庇部とを有し、前記把持工程は、前記下流側庇部の前記内向面が前記基板の前記周端面に対向し、かつ、前記下流側庇部の前記庇下面が、前記基板把持部に把持された前記基板の上面よりも下側に配される工程である。
【発明の効果】
【0020】
第1態様から第7態様の基板処理装置によると、回転する基板とスピンベースの間に供給される処理液は、回転方向とは反対まわりの渦状に広がることによって、支持部に対して回転方向の下流側(先側)に優勢的に衝突し得る。下流側庇部は、基板把持部よりも回転方向の下流側において、基板の上面側へ向けた処理液の移動を遮る。したがって、基板の下面側に供給された処理液が、基板の上面に付着することを有効に低減し得る。
【0021】
第2態様の基板処理装置によると、下流側庇部の庇下面が、基板の下面よりも上側に位置することによって、基板の下面周縁部付近を通過する処理液が、庇下面の下側を通過しやすくなる。これによって、処理液が下流側庇部に衝突し難くなるため、基板の上面に処理液が付着することを低減し得る。
【0022】
第3態様の基板処理装置によると、下流側庇部の庇上面が基板の上面よりも上側に配されるように下流側庇部の厚みを大きくすることによって、下流側庇部の強度を向上し得る。
【0023】
第4態様の基板処理装置によると、上流側庇部は、基板把持部よりも回転方向の上流側において、基板の上面側へ向けた処理液の移動を遮る。したがって、基板の下面側に供給された処理液が、基板の上面に付着することを有効に低減し得る。
【0024】
第5態様の基板処理装置によると、下流側庇部の内向面が上側から下側にかけてスピンベースの外側に傾斜するため、スピンベースの回転中に、下流側庇部の内向面に付着した処理液を下側に誘導でき、良好に液切りし得る。
【0025】
第6態様の基板処理装置によると、支持部における支柱部を円形状に形成することによって、支柱部に衝突した処理液が、支柱部の外周面に沿ってスピンベースの外方へ移動し易くなる。このため、支柱部に衝突した処理液が、基板の上面に付着することを低減し得る。
【0026】
第7態様の基板処理装置によると、下流側庇部における内向面および庇下面の境界部分を角状にすることによって、その境界部分に衝突した処理液を上側とスピンベースの外側とに分離できるため、しぶきの発生を低減し得る。
【0027】
第8態様の基板処理方法によると、回転する基板とスピンベースの間に供給される処理液は、回転方向とは反対まわりの渦状に広がることによって、支持部に対して回転方向の下流側(先側)に優勢的に衝突し得る。下流側庇部は、基板把持部よりも回転方向の下流側において、基板の上面側へ向けた処理液の移動を遮る。したがって、基板の下面側に供給された処理液が、基板の上面に付着することを有効に低減し得る。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0030】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態の基板処理装置1を示す概略全体図である。
図2は、第1実施形態のスピンチャック5を示す平面図である。
【0031】
図1に示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wに処理液を供給する複数の処理ユニット2と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御部3とを含む。
【0032】
各処理ユニット2は、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式のユニットである。各処理ユニット2は、内部空間を有する箱形のチャンバー4と、チャンバー4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な基板回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、スピンチャック5に保持されている基板Wに処理液を供給する処理液供給装置6と、基板回転軸線A1まわりにスピンチャック5を取り囲む筒状のカップ7とを含む。
【0033】
チャンバー4は、スピンチャック5等を収容する箱形の隔壁8と、隔壁8の上部から隔壁8内にクリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送る送風ユニットとしてのFFU(ファンフィルターユニット)9と、カップ7の下部からチャンバー4内の気体を排出する排気ダクト10とを含む。FFU9は、隔壁8の上方に配置されている。FFU9は、隔壁8の天井からチャンバー4内に下向きにクリーンエアーを送る。排気ダクト10は、カップ7の底部に接続されており、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気設備に向けてチャンバー4内の気体を案内する。したがって、チャンバー4内を下方に流れるダウンフロー(下降流)が、FFU9および排気ダクト10によって形成される。基板Wの処理は、チャンバー4内にダウンフローが形成されている状態で行われる。
【0034】
スピンチャック5は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース11と、スピンベース11の上面外周部から上方に突出する複数のチャックピン12と、複数のチャックピン12を開閉させるチャック開閉機構13とを含む。スピンチャック5は、さらに、スピンベース11の中央部から下方に延びるスピン軸14と、スピン軸14を回転させることによりスピンベース11およびチャックピン12を基板回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ15とを含む。
【0035】
スピンベース11の外径は、基板Wの直径よりも大きい。スピンベース11の中心線は、基板回転軸線A1上に配置されている。複数のチャックピン12は、スピンベース11の外周部でスピンベース11に保持されている。複数のチャックピン12は、周方向X1(基板回転軸線A1まわりの方向)に間隔を空けて配置されている。各チャックピン12は、基板Wの周縁部に押し付けられる。これにより、基板Wの下面とスピンベース11の上面とが上下方向に離れた状態で、基板Wが水平に保持される。すなわち、チャックピン12は、基板Wをスピンベース11から上側に離間させて把持する。複数のチャックピン12によって基板Wが挟まれた状態で、スピンモータ15がスピン軸14を回転させると、基板Wは、スピンベース11およびチャックピン12と共に基板回転軸線A1まわりに回転する。
【0036】
図1に示すように、処理液供給装置6は、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する上面ノズルとしての薬液ノズル34と、薬液ノズル34に接続された上薬液配管35と、上薬液配管35に介装された上薬液バルブ36とを含む。上薬液バルブ36が開かれると、上薬液配管35から薬液ノズル34に供給された薬液が、薬液ノズル34から下方に吐出され、上薬液バルブ36が閉じられると、薬液ノズル34からの薬液の吐出が停止される。薬液ノズル34に供給される薬液の一例は、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤のうちの少なくとも一つを含む液体である。
【0037】
薬液ノズル34は、基板Wの上面に対する処理液の着液位置が中央部と周縁部との間で移動するように移動しながら処理液を吐出するスキャンノズルである。
図1に示すように、処理ユニット2は、薬液ノズル34を移動させることにより、薬液の着液位置を基板Wの上面内で移動させる薬液ノズル移動装置37を含む。薬液ノズル移動装置37は、薬液ノズル34を移動させることにより、薬液の着液位置を基板Wの上面内で移動させる。さらに、薬液ノズル移動装置37は、薬液ノズル34から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する処理位置と、薬液ノズル34がスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間で薬液ノズル34を移動させる。
【0038】
図1に示すように、処理液供給装置6は、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出する上面ノズルとしてのリンス液ノズル38と、リンス液ノズル38に接続された上リンス液配管39と、上リンス液配管39に介装された上リンス液バルブ40とを含む。上リンス液バルブ40が開かれると、上リンス液配管39からリンス液ノズル38に供給されたリンス液が、リンス液ノズル38から下方に吐出され、上リンス液バルブ40が閉じられると、リンス液ノズル38からのリンス液の吐出が停止される。リンス液ノズル38に供給されるリンス液は、純水(脱イオン水:Deionized Water)である。リンス液ノズル38に供給されるリンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、IPA(イソプロピルアルコール、)および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0039】
リンス液ノズル38は、スキャンノズルである。
図1に示すように、処理ユニット2は、リンス液ノズル38を移動させることにより、リンス液の着液位置を基板Wの上面内で移動させるリンス液ノズル移動装置41を含む。リンス液ノズル移動装置41は、リンス液ノズル38を移動させることにより、リンス液の着液位置を基板Wの上面内で移動させる。さらに、リンス液ノズル移動装置41は、リンス液ノズル38から吐出されたリンス液が基板Wの上面に着液する処理位置と、リンス液ノズル38がスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間でリンス液ノズル38を移動させる。
【0040】
図1に示すように、処理液供給装置6は、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル42と、下面ノズル42に接続された下薬液配管43と、下薬液配管43に介装された下薬液バルブ44と、下面ノズル42に接続された下リンス液配管45と、下リンス液配管45に介装された下リンス液バルブ46とを含む。下面ノズル42は、スピンベース11の上面中央部から上方に突出している。基板Wが支持位置または把持位置でスピンチャック5に保持されている状態では、下面ノズル42の吐出口が、スピンベース11の上面と基板Wの下面との間に位置し、基板Wの下面中央部に上下方向に対向する。この状態で、下薬液バルブ44または下リンス液バルブ46が開かれると、下面ノズル42から上方に吐出された薬液またはリンス液が、基板Wの下面中央部に供給される。下面ノズル42は、基板Wとスピンベース11との間に処理液を供給する処理液供給部の一例である。
【0041】
下面ノズル42が、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出するように構成されることは必須ではない。例えば、下面ノズル42は、スピンベース11の中央から外側へ向かう方向、あるいは、その外側へ向かう方向と基板Wの下面に向かう方向との合成方向に処理液を吐出するように構成され得る。下面ノズル42は、回転する基板Wの下面に処理液が接するように、基板Wとスピンベース11との間に処理液を供給するように構成され得る。
【0042】
図1に示すように、カップ7は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方(基板回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。カップ7は、スピンチャック5を取り囲む筒状の外壁47と、スピンチャック5と外壁47との間に配置された複数の処理液カップ(第1処理液カップ48、第2処理液カップ49、第3処理液カップ50)と、基板Wの周囲に飛散した処理液を受け止める複数のガード(第1ガード51、第2ガード52、第3ガード53、第4ガード54)と、複数のガードのそれぞれを独立して昇降させるガード昇降装置55とを含む。
【0043】
図1に示すように、各処理液カップ48〜50は、スピンチャック5と外壁47との間でスピンチャック5を取り囲んでいる。内側から二番目の第2処理液カップ49は、第1処理液カップ48よりも外方に配置されており、第3処理液カップ50は、第2処理液カップ49よりも外方に配置されている。第3処理液カップ50は第2ガード52と一体であり、第2ガード52と共に昇降する。各処理液カップ48〜50は、上向きに開いた環状の溝を形成している。各ガード51〜54のそれぞれは、基板Wに供給される処理液の種類等に応じてガード昇降装置55の制御により任意に昇降駆動され、使用された処理液をその種類等に応じた任意の処理液カップ48〜50に導くことができる。各処理液カップ48〜50に導かれた処理液は、この溝を通じて図示しない回収装置または廃液装置に送られる。
【0044】
図1に示すように、各ガード51〜54は、スピンチャック5と外壁47との間でスピンチャック5を取り囲んでいる。内側の3つのガード51〜53は、外側の3つのガード52〜54のうちの少なくとも一つによって取り囲まれた内ガードであり、外側の3つのガード52〜54は、内側の3つのガード51〜53のうちの少なくとも一つを取り囲む外ガードである。
【0045】
図1に示すように、各ガード51〜54は、斜め上に内方に延びる円筒状の傾斜部56と、傾斜部56の下端から下方に延びる円筒状の案内部57とを含む。各傾斜部56の上端部は、ガード51〜54の上端部を構成しており、基板Wおよびスピンベース11よりも大きな直径を有している。4つの傾斜部56は、上下に重ねられており、4つの案内部57は、同軸的に配置されている。最も外側の案内部57を除く3つの案内部57は、それぞれ、複数の処理液カップ48〜50内に出入り可能である。すなわち、カップ7は、折り畳み可能であり、ガード昇降装置55が4つのガード51〜54の少なくとも一つを昇降させることにより、カップ7の展開および折り畳みが行われる。
【0046】
図1に示すように、ガード昇降装置55は、ガードの上端が基板Wより上方に位置する上位置と、ガードの上端が基板Wより下方に位置する下位置との間で、各ガード51〜54を昇降させる。ガード昇降装置55は、上位置と下位置との間の任意の位置で各ガード51〜54を保持可能である。基板Wへの処理液の供給や基板Wの乾燥は、いずれかのガード51〜54が、基板Wの周端面に対向している状態で行われる。たとえば内側から三番目の第3ガード53を基板Wの周端面に対向させる場合には、第1ガード51および第2ガード52が下位置に配置され、第3ガード53および第4ガード54が上位置に配置される。また、最も外側の第4ガード54を基板Wの周端面に対向させる場合には、第4ガード54が上位置に配置され、他の3つのガード51〜53が下位置に配置される。
【0047】
<チャックピン12>
次に、チャックピン12の詳細な構成について説明する。
図3は、第1実施形態のチャックピン12を示す斜視図である。
図4は、第1実施形態のチャック部17を示す3面図(平面図、正面図および側面図)である。
図5は、第1実施形態のチャックピン12が閉位置に位置している状態を示す平面図である。
図6は、第1実施形態のチャックピン12が開位置に位置している状態を示す平面図である。
図7は、第1実施形態のチャック部17が基板Wを把持している様子を示す側面図である。
【0048】
チャックピン12は、基板Wを把持する位置(閉位置)と、基板Wの把持が解除された位置(開位置)との間で変位する。以下の説明では、特に断らない限り、チャックピン12が閉位置に位置している状態について説明する。
【0049】
チャックピン12は、台座部16とチャック部17とを備えている。チャック部17は、支柱部18と、基板載置部19と、基板把持部20と、下流側庇部21とを含む。台座部16は、スピンベース11の上面に設けられている。チャック部17の支柱部18は、台座部16の上面に設けられている。基板把持部20および下流側庇部21は、支柱部18の上側端部に設けられている。台座部16および支柱部18は、基板把持部20をスピンベース11から上側に離して支持する支持部の一例である。
【0050】
基板載置部19は、支柱部18の基板回転軸線A1側に設けられている。台座部16、チャック部17(支柱部18、基板載置部19、基板把持部20および下流側庇部21)は、一体とされている。台座部16は、チャック開閉機構13によって、チャック部17とともに、基板回転軸線A1と平行なピン回転軸線A2まわりに回転する。
【0051】
基板把持部20は、基板Wの周端面に押しつけられることによって基板Wを把持する。基板把持部20は、基板回転軸線A1に平行な平坦面であり、かつ、基板回転軸線A1側を向く当接面20Sを有する。基板載置部19の上面は、基板Wの下面周縁部を支持する載置面19Sとなっている。載置面19Sは、当接面20Sよりも下側に配置されている。
【0052】
図5および
図6に示すように、各チャックピン12は、基板把持部20の当接面20Sが基板Wの周端面に押し付けられる閉位置と、基板把持部20の当接面20Sが基板Wの周端面から離れる開位置との間で、スピンベース11に対してピン回転軸線A2まわりに回転可能である。チャック開閉機構13は、閉位置と開位置との間で各チャックピン12をピン回転軸線A2まわりに回転させる。閉位置は、基板Wが複数のチャックピン12によって把持される位置であり、開位置は、複数のチャックピン12による基板Wの把持が解除される位置である。制御部3は、チャック開閉機構13を制御することにより、複数のチャックピン12が基板Wを把持する閉状態と、複数のチャックピン12による基板Wの把持が解除される開状態との間で、複数のチャックピン12の状態を切り替える。
【0053】
基板Wがスピンチャック5に搬入されるときには、制御部3は、各チャックピン12を開位置に退避させる。制御部3は、この状態で、搬送ロボットに基板Wを複数のチャックピン12に載置させる。これにより、
図6において二点鎖線で示すように、基板載置部19各々の載置面19Sが、基板Wの下面周縁部に接触し、基板Wが、スピンベース11の上面よりも上方の支持位置で水平な姿勢で支持される。
【0054】
台座部16の上面における、支柱部18よりも基板回転軸線A1側の位置には、基板支持部22が設けられている。基板支持部22は、台座部16の上面に設けられた基部23と、基部23の上面中央部に設けられた突起部24とを含む。突起部24は、基板回転軸線A1と平行に延びる棒状に形成された部分である。突起部24の上面は、平坦な水平面とされており、基部23の上面よりも狭い(面積が小さい)。突起部24の上面は、基板載置部19の載置面19Sと略同じ高さとなっている。基板Wがスピンチャック5に搬入されたときには、基板Wは、基板載置部19の載置面19Sに支持されるとともに、基板支持部22の突起部24の上面によっても支持される。
【0055】
ピン回転軸線A2は、突起部24の水平方向の中心と一致するように設定されている。すなわち、チャックピン12は、突起部24を中心として回転することによって、開閉する。チャックピン12が開状態から閉状態に切り替えられたとき、基板Wの下面は、突起部24の上面と摺接する。突起部24を基部23よりも小径であるため、基板Wの下面が他の部材と摺接する範囲を小さくできる。また、突起部24自体はピン回転軸線A2まわりに回転するだけであるため、基板Wの下面における突起部24と摺接する領域を最小限に抑えることができる。なお、基板支持部22を設けることは必須ではなく、省略することも可能である。
【0056】
基板Wが基板載置部19に載置された後、制御部3は、各チャックピン12を開位置から閉位置に移動させる。各チャックピン12が閉位置に向かって移動すると、基板把持部20が基板Wの周端面に近づき、基板Wの周縁部が当接面20Sに当接する。これにより、
図5および
図7に示すように、基板Wが、支持位置よりも上方の把持位置で水平な姿勢で把持される。なお、当接面20Sの垂直方向中央に、水平線状の溝を形成してもよい。当接面20Sに溝を設けることによって、基板Wを既定の把持位置に好適に導き得る。このように、複数のチャックピン12の基板把持部20各々によって基板Wを把持する工程は、把持工程に相当する。そして、スピンベース11を回転させることによって、基板把持部20各々に把持された基板Wを回転させる工程は、回転工程に相当する。さらに、この回転する基板Wの下面に向けて、下面ノズル42から処理液を吐出する工程は、回転する基板Wとスピンベース11の間に処理液を供給する処理液供給工程に相当する。
【0057】
<下流側庇部21>
下流側庇部21は、基板把持部20から回転方向RDrの下流側(回転方向RDrの先側、すなわち、回転方向RDrを示す矢印の矢先側)に延びる部分である。下流側庇部21は、スピンベース11の内側(基板回転軸線A1側)を向く内向面210Sと、内向面210Sの下端であってスピンベース11の側である下側を向く庇下面211Sとを有する。
【0058】
図7に示すように、基板Wが基板把持部20各々によって把持されたとき、内向面210Sは、基板Wの周端面に対向する。また、
図4または
図7に示すように、下流側庇部21の庇下面211Sは、台座部16の上面に対向する。すなわち、下流側庇部21の庇下面211Sと、台座部16の上面との間には、空間が形成されている。この空間は、下面ノズル42から基板Wの下面に供給された処理液が、スピンベース11の外方に向けて移動する際に通過する空間である。
【0059】
基板把持部20および下流側庇部21の上面各々は、面一であって、水平面を形成している。下流側庇部21は、径方向外側に向かうに連れて水平方向の幅が細くなる形状を有する。下流側庇部21の回転方向RDrの下流側の外縁は、径方向外側に向かうに連れて回転方向RDrの上流側(手前側)に向かうように湾曲して延びている。
【0060】
図7に示すように、基板Wが基板把持部20各々によって把持されたとき、下流側庇部21の庇下面211Sは、基板Wの上面(表面)よりも下側に位置する。ここでは、下流側庇部21の内向面210Sの下端が、基板把持部20に把持された基板Wの上面よりも下側に位置する。
【0061】
図2に示すように、回転中の基板Wの下面に向けて下面ノズル42から処理液を吐出すると、その処理液は、基板W(およびスピンベース11)の回転による遠心力によって、基板Wの外方に広がる。そして、
図7に示すように、チャックピン12におけるチャック部17の支柱部18の外壁に衝突し、しぶき(液滴またはミスト)となって様々な方向に跳ね返り得る。特に、
図2中、矢符FDrで示すように、処理液は、回転方向とは反対回りの渦状に外方へと広がるため、支柱部18に対して、回転方向RDrの下流側の面に優勢的に衝突し得る。
【0062】
図7に示すように、支柱部18に衝突して発生した処理液のしぶきは、基板Wの周縁部付近に飛散する。これに対して、支柱部18の回転方向RDrの下流側には、下流側庇部21が設けられている。下流側庇部21の庇下面211Sの水平面2110Sは、基板Wの上面よりも下側の位置に配置されている。このため、支柱部18に衝突した後基板Wの上面側へ向かう処理液の進路(例えば、
図7中、矢符DR1で示す処理液の進路)は、下流側庇部21によって遮られる。これによって、基板Wの下面に供給された処理液が基板Wの上面側へ回り込むことを低減できる。したがって、基板Wの上面に処理液が付着することを有効に低減できる。
【0063】
また、
図7に示すように、基板Wが基板把持部20各々によって把持されたとき、下流側庇部21の上側を向く庇上面212Sは、基板Wの上面よりも上側に位置する。庇上面212Sがこの位置に配されるように下流側庇部21に厚みを持たせることによって、下流側庇部21の強度を向上できる。
【0064】
図4または
図7に示すように、下流側庇部21の内向面210Sは、上側から下側へ向けてスピンベース11の外側へ一定の傾きで傾く傾斜面となっている。このように内向面210Sが傾斜していることによって、スピンベース11および基板Wの回転中に、内向面210Sに付着した処理液を下側へ誘導できる。したがって、内向面210Sに付着した処理液を良好に液切りし得る。
【0065】
図7に示すように、基板Wが基板把持部20各々によって把持されたとき、下流側庇部21の庇下面211Sは、基板Wの下面(裏面)よりも上側に位置する。ここでは、下流側庇部21の内向面210Sの上側端部は、基板載置部19の載置面19Sよりも上側に位置する。このため、外方へ広がる処理液のうち基板Wの下面付近を通過する処理液が、内向面210Sに衝突するのを低減できる。したがって、処理液のしぶきの発生を低減でき、もって、基板Wの下面に供給された処理液が基板Wの上面に付着することを低減できる。
【0066】
また、下流側庇部21の内向面210Sと庇下面211Sとの境界部分(内向面210Sの下側端部あるいは庇下面211Sの基板回転軸線A1側の端部)は、周方向X1にわたって屈曲した角状に形成されている。仮に、内向面210Sと庇下面211Sとの境界部分を丸めた場合、その境界部分に衝突した処理液が元の方向に跳ね返ることによって、処理液のしぶきが大きくなり得る。これに対して、内向面210Sおよび庇下面211Sの境界部分を角状にすることによって、境界部分に衝突した処理液を、上方向とスピンベース11の外側方向とに分離できるため、しぶきの発生を低減できる。また、この角状の境界部分に衝突した処理液のうち、上側へ進む処理液は、傾斜面である内向面210Sによって下方へ誘導され得る。このため、跳ね返った処理液が基板Wの上側に付着することを低減できる。
【0067】
図4または
図7に示すように、下流側庇部21の庇下面211Sは、基板回転軸線A1の側において水平面2110S(基板回転軸線A1と直交する平面)となっているのに対して、基板回転軸線A1と反対の側は、基板回転軸線A1から離れる方向(径方向Y1の外側方向)に向かって、上側に傾く傾斜面2111Sとなっている。
【0068】
庇下面211Sは、傾斜面2111Sを形成するため、径方向Y1の外方に向かうに連れて、下流側庇部21と台座部16との間の間隔が広がっている。このため、支柱部18に衝突してスピンベース11の外方へ跳ね返った処理液は、矢符DR2、DR3に示すように、下流側庇部21によって移動を妨げられることなく、スピンベース11の外方へ移動できる。
【0069】
本例では、支柱部18は、円柱状に形成されており、支柱部18の外周面の断面視形状(水平面で切断した断面を鉛直方向から見た形状)が円形となっている。このため、支柱部18に衝突した処理液は、支柱部18の外周面に沿ってスピンベース11の外方へ移動しやすくなる。このため、支柱部18に衝突した処理液が、基板Wの上面に付着することを低減し得る。特に、処理液は、支柱部18に対して回転方向RDrの下流側に優勢的に衝突する。このため、支柱部18の回転方向RDr下流側の外周面部分(下流側庇部21の下方に位置する外周面部分)の断面視形状を円形状のような湾曲形状にするとよい。
【0070】
<2. 第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号又はアルファベット文字を追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0071】
図8は、第2実施形態のチャックピン12Aを示す斜視図である。チャックピン12Aは、第1実施形態のチャックピン12に、上流側庇部25をさらに備えたものである。具体的に、上流側庇部25は、基板把持部20から回転方向RDrの上流側に延びる部分である。上流側庇部25は、基板把持部20のうち下流側庇部21とは反対側の部分から延びている。
【0072】
上流側庇部25は、スピンベース11の内側を向く内向面250Sと、内向面250Sの下端に位置しておりスピンベース11の側である下側を向く庇下面251Sとを有する。内向面250Sは、下流側庇部21の内向面210Sと同様に、基板把持部20各々によって基板Wが把持されたときに、基板Wの周端面に対向する。庇下面251Sは、下流側庇部21の庇下面211Sと同様に、台座部16の上面に対向している。庇下面251Sと台座部16の上面との間には、空間が形成されており、該空間は、下面ノズル42から吐出された処理液がスピンベース11の外方へ移動する際に通過する空間となっている。
【0073】
また、図示を省略するが、基板把持部20によって基板Wが把持されたとき、上流側庇部25の庇下面251Sは、下流側庇部21の庇下面211Sと同様に、基板Wの上面よりも下方側に位置する。
【0074】
上流側庇部25を設けることによって、基板把持部20よりも回転方向RDrの上流側において、支柱部18などに衝突して発生した処理液のしぶきが基板Wの下面側から上面側へ飛散することを抑制できる。したがって、基板Wの上面に処理液が付着することを低減できる。
【0075】
<3. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0076】
下流側庇部21は、基板把持部20および支柱部18と一体に形成されているが、これらとは別の部材としてもよい。
【0077】
上記実施形態では、支柱部18は、基板回転軸線A1において均一な大きさを有するものとしているが、これは必須ではない。
図9は、変形例のチャックピン12Bを示す図である。チャックピン12Bの支柱部18Aの基部(台座部16に接続される部分)の断面積が、先端部(基板把持部20が設けられる部分)寄りの断面積よりも大きくなっている。このように、支柱部18Aの基部を太く形成することによって、支柱部18Aの強度を向上できる。また、先端部を基部よりも細くすることによって、下流側庇部21の直下の空間を確保できるため、支柱部18Aに衝突した処理液が基板Wの上側へ拡散することを低減できる。
【0078】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。