(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等では、プラント内の機器から状態量を取得することが記載されているが、一般的には、必ずしもプラント内の全ての機器が状態量を計測する計測器を具備しているとは限らない。
このため、情報処理装置は、機器から状態量の計測値を収集すると共に、状態量を収集できない機器の状態量の値を推測し、計測値と推定値とからプラントの運用の結果により生じる状態を予測する必要がある。しかしながら、プラントを説明するモデルが複数ある場合、何れのモデルにより推定値を算出すれば適切にプラントの管理を行うことができるのかが不明であった。
本発明は、上記の課題に鑑みてされたものであって、機器の状態量の推定値の算出に用いるのに、適切なモデルを決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、
管理システムは、
通信装置と情報処理装置とを備える管理システムであって、前記通信装置は、対象装置の状態量の計測値を取得する取得部と、前記対象装置の第1の状態量と前記対象装置の第2の状態量とが一対一で対応しており、前記第1の状態量の変化量に対して前記第2の状態量の変化量が小さい場合に前記第1の状態量の計測値を、大きい場合に前記第2の状態量の計測値を前記情報処理装置に送信することを決定する抽出部と、前記抽出部が前記第1の状態量の計測値を前記情報処理装置に送信することを決定した場合に、前記第1の状態量の計測値を前記情報処理装置に送信する送信部とを備え、情報処理装置は、前記第1の状態量の計測値を取得する計測値取得部と、前記対象装置の管理のための評価項目ごとに、前
記第2の状態量の値を推定するためのモデルを決定するモデル決定部と、前記モデル決定部が決定したモデルを用いて、前記計測値に基づいて前記第2の状態量の値を推定する推定部と、前記推定部が推定した値を用いて前記評価項目の値を算出する管理部とを備える。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る
管理システムは、前記対象装置の複数の状態量について、計測値を取得するか否かを決定する取得決定部をさらに備え、前記計測値取得部は、計測値を取得すると判定された状態量の計測値を取得し、前記推定部は、前記モデルを用いて、計測値を取得しないと判定された状態量の値を推定するものであってよい。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様に係る
管理システムは、前記取得決定部は、計測値を取得するか否かを、前記評価項目に基づいて決定するものであってよい。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、第2または第3の態様に係る
管理システムは、前記取得決定部は、計測値を取得するか否かを、前記対象装置の機器構成に基づいて決定するものであってよい。
【0009】
本発明の第5の態様によれば、第2から第4の何れかの態様に係る
管理システムは、前記取得決定部は、計測値を取得するか否かを、前記モデルにおける前記状態量の値の変化率に基づいて決定するものであってよい。
【0010】
本発明の第6の態様によれば、第1から第5の何れかの態様に係る
管理システムは、前記モデルは、少なくとも統計モデルおよび物理モデルのいずれか一方を含むものであってよい。
【0011】
本発明の第7の態様によれば、第1から第6の何れかの態様に係る
管理システムは、前記状態量の値に基づいて前記モデルを更新するモデル更新部をさらに備え、前記推定部は、更新された前記モデルを用いて、前記状態量の値を推定するものであってよい。
【0012】
本発明の第8の態様によれば、通信装置は、対象装置の状態量
の計測値を取得する取得部と、
前記対象装置の第1の状態量と前記対象装置の第2の状態量とが一対一で対応しており、前記第1の状態量の変化量に対して前記第2の状態量の変化量が小さい場合に前記第1の状態量の計測値を、大きい場合に前記第2の状態量の計測値を管理装置に送信することを決定する抽出部と、前記抽出部が
前記第1の状態量の計測値を前記管理装置に送信することを決定した場合に、前記第1の状態量の計測値を前記管理装置に送信する送信部とを備える。
【0013】
本発明の第9の態様によれば、情報処理方法は、
対象装置の状態量の計測値を取得することと、前記対象装置の第1の状態量と前記対象装置の第2の状態量とが一対一で対応しており、前記第1の状態量の変化量に対して前記第2の状態量の変化量が小さい場合に前記第1の状態量の計測値を、大きい場合に前記第2の状態量の計測値を情報処理装置に送信することを決定することと、前記第1の状態量の計測値を前記情報処理装置に送信することを決定した場合に、前記第1の状態量の計測値を前記情報処理装置に送信することと、前記第1の状態量の計測値を取得することと、前記対象装置の管理のための評価項目ごとに、前
記第2の状態量の値を推定するためのモデルを決定することと、決定した前記モデルを用いて、前記計測値に基づいて前記第2の状態量の値を推定することと、推定した前記値を用いて前記評価項目の値を算出することとを有する。
【0014】
本発明の第10の態様によれば、プログラムは、コンピュータに
対象装置の状態量の計測値を取得することと、前記対象装置の第1の状態量と前記対象装置の第2の状態量とが一対一で対応しており、前記第1の状態量の変化量に対して前記第2の状態量の変化量が小さい場合に前記第1の状態量の計測値を、大きい場合に前記第2の状態量の計測値を情報処理装置に送信することを決定することと、前記第1の状態量の計測値を前記情報処理装置に送信することを決定した場合に、前記第1の状態量の計測値を前記情報処理装置に送信することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、情報処理装置は、対象装置の管理のための評価項目ごとに決定したモデルに基づいて第2の状態量の値を推定する。これにより、対象装置の状態量の推定値の算出に用いるために各評価項目に適したモデルを決定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〈第1の実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る管理システムの構成を示す概略ブロック図である。
管理システム1は、対象装置10と、複数の計測器20と、通信装置30と、管理装置40とを備える。
対象装置10は、管理装置40による管理対象の装置である。対象装置10の例としては、例えばガスタービン、蒸気タービン、ボイラ、石炭ガス化炉などが挙げられる。また、環境プラント、化学プラント、および航空機のような交輸システムであってもよい。
計測器20は、対象装置10に設けられ、対象装置10の状態量を計測する。なお、計測器20は、対象装置10を構成するすべての機械に設けられているとは限られない。
通信装置30は、計測器20が計測した状態量の計測値をネットワークNを介して管理装置40に送信する。
管理装置40は、通信装置30から受信した計測値に基づいて対象装置10を管理する。管理装置40は、情報処理装置の一例である。
【0018】
《管理装置の構成》
図2は、第1の実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
管理装置40は、計測値取得部401と、欠落検出部402と、モデル記憶部403と、推定部404と、評価値算出部405と、確率分布記憶部406と、確率特定部407と、評価値決定部408と、管理部409とを備える。
【0019】
計測値取得部401は、通信装置30から、複数の計測器20によって計測された状態量の計測値を受信する。
欠落検出部402は、計測値取得部401が取得した複数の計測値に基づいて、管理すべき状態量のうち値が欠落しているものを検出する。ここで、値の欠落とは、時間的または空間的な欠落をいう。例えば、管理部409が時間Δtごとの状態量を管理する場合において、時刻Tの計測値と時刻T+2Δtの計測値が取得された場合、欠落検出部402は、時刻T+Δtの計測値の欠落を検出する。また例えば、管理部409が距離Δdごとの状態量を管理する場合において、位置(0,0)、位置(2Δd,0)、位置(0,2Δd)、位置(2Δd,2Δd)の計測値が取得された場合、位置(0,Δd)、位置(Δd,0)、位置(Δd,Δd)、位置(Δd,2Δd)、位置(2Δd,Δd)の計測値の欠落を検出する。
【0020】
モデル記憶部403は、対象装置10の挙動を説明する複数のモデルを記憶する。モデルとしては、統計モデルまたは物理モデルを用いることができる。統計モデルとは、対象装置10の過去の運用における状態量の値に基づいて、統計学的に対象装置10の挙動を再現したモデルである。統計モデルは、蓄積された過去の運用における状態量の値に基づいて更新される。物理モデルとは、対象装置10の設計情報に基づいて、自然法則に倣った数式(例えば、熱力学方程式)により対象装置10の挙動を再現したモデルである。
推定部404は、計測値取得部401が取得した計測値に基づいて、モデル記憶部403が記憶する各モデルごとに状態量の値を推定する。以下、推定部404による推定の対象となる状態量を目的状態量という。つまり、推定部404は、異なるモデルを用いて複数の目的状態量の値を算出する。
評価値算出部405は、推定部404が推定した複数の推定値のそれぞれについて、当該推定値と計測値取得部401が計測した計測値とを用いて、対象装置10の複数の評価項目それぞれの値を算出する。評価項目とは、管理部409による対象装置10の管理に用いられる項目である。評価項目の例としては、NOx排出量、売電収入額、ガス温度などが挙げられる。
【0021】
確率分布記憶部406は、評価項目の値とその値をとる確率とを関連付けた確率分布テーブルを記憶する。確率分布テーブルは、対象装置10の設計情報または過去の評価項目の値の統計によって予め求められたものである。なお、確率分布記憶部406は、確率分布テーブルに代えて確率分布関数を記憶してもよい。
確率特定部407は、確率分布記憶部406が記憶する確率分布情報に基づいて、評価値算出部405が算出した評価値ごとに、その値を取る確率を特定する。
【0022】
評価値決定部408は、評価項目ごとに、確率特定部407が特定した確率が最も高い評価値を特定し、これらを対象装置10の管理に用いる評価値として決定する。なお、確率が最も高い評価値を管理に用いる評価値として決定することは、最も確率が高い評価値の算出に用いられたモデルを、評価項目の算出に用いる状態量の値を推定するためのモデルに決定することと等価である。つまり、評価値決定部408は、モデル決定部の一例である。
管理部409は、評価値決定部408によって決定された評価値に基づいて対象装置10を管理する。対象装置10の管理の例としては、評価値が最適になるように対象装置10の制御量を計算し、制御信号を出力することなどが挙げられる。評価項目の例としては、NOx排出量、売電収入額、ガス温度などが挙げられる。
【0023】
《管理システムの動作》
図3は、第1の実施形態に係る管理システムの動作を示すシーケンス図である。
管理システム1による管理が開始されると、通信装置30は計測器20から計測値を取得する(ステップS1)。通信装置30は、取得した計測値を管理装置40に送信する(ステップS2)。
【0024】
管理装置40の計測値取得部401が通信装置30から計測値を受信すると、欠落検出部402は、計測値取得部401が取得した計測値の欠落を検出する(ステップS3)。推定部404は、計測値取得部401が取得した計測値を複数のモデルのそれぞれに適用し、欠落が検出された状態量(目的状態量)の推定値をそれぞれ求める(ステップS4)。
【0025】
次に、評価値算出部405は、推定部404が推定した複数の推定値のそれぞれに基づいて、複数の評価項目の値を算出する(ステップS5)。評価項目の値は、複数の状態量の値を説明変数とする関数によって求めることができる。評価値算出部405は、当該関数の説明変数に、計測値および推定値を代入することで、評価値を算出する。
【0026】
次に、確率特定部407は、確率分布記憶部406が記憶する確率分布情報に基づいて、各評価値の出現確率を特定する(ステップS6)。そして、評価値決定部408は、評価項目ごとに、確率特定部407が特定した確率が最も高い評価値を、対象装置10の管理に用いる評価項目の値に決定する(ステップS7)。つまり、第1の実施形態によれば、各評価項目の値は、評価項目ごとに異なるモデルによって推定された状態量の値によって算出され得る。この場合、各評価項目で算出に用いられた状態量の値が異なり得る。そして管理部409は、評価値決定部408が決定した評価値に基づいて対象装置10を管理する(ステップS8)。対象装置10がガスタービンの場合、例えば、ガスタービン出力指令値を変更する、IGVの開度設定を変更する、燃料流量を変更する、等により、特定された管理値に基づいて、対象装置10を管理する。
【0027】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、管理装置40は、複数の評価項目ごとに、状態量の値を推定するためのモデルを決定し、そのモデルに基づいて推定された状態量の値によって算出された評価項目の値を用いて、対象装置10を管理する。これにより、評価項目ごとに適した状態量の値を用いて、評価値を算出することができる。
【0028】
なお、第1の実施形態に係る管理装置40は、評価項目ごとにその値の発生確率が最大となる値を用いて対象装置10を管理するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、管理装置40は、評価項目ごとに最も評価が悪くなる評価値を用いて対象装置10を管理してもよい。つまり、管理装置40は、評価項目ごとに、評価項目の値が最も悪くなるようなモデルを、状態量の値の推定に用いてもよい。これにより、管理装置40は、最悪ケースを前提に対象装置10の管理を行うことができる。この他、管理装置40は、任意のポリシーに基づいて各評価項目の算出に用いる状態量の値を求めるためのモデルを決定してよい。
【0029】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態に係る管理システム1は、計測器20によって値を計測できない状態量について、値を推定する。一方、対象装置10に設けられる計測器20が多くなると、必然的に送受信される計測値の数も多くなる。多くの計測値に基づいて管理を行うことで管理の精度が向上することは確かであるが、送受信されるデータの量が多くなると、通信に掛かる時間も増加し、リアルタイムでの管理ができなくなる可能性がある。
これに対し、第2の実施形態に係る管理システム1は、計測器20によって値を計測することができる状態量の一部の値を、推定によって求め、通信時間による管理の遅れを抑制する。第2の実施形態に係る管理システム1は、第1の実施形態と通信装置30の構成が異なる。
【0030】
《通信装置の構成》
図4は、第2の実施形態に係る通信装置の構成を示す概略ブロック図である。
第2の実施形態に係る通信装置30は、計測器20による計測値のすべてを管理装置40に送信せず、その一部のみを管理装置40に送信する。
通信装置30は、取得部301と、抽出部302と、送信部303とを備える。
取得部301は、複数の計測器20それぞれから計測値を取得する。
抽出部302は、取得した計測値の中から管理装置40に送信するものを抽出する。抽出部302は、管理装置40における評価項目に基づいて、送信すべき計測値を抽出する。例えば、抽出部302は、評価項目の算出において相対的に大きい係数が設定されている状態量の計測値を、優先的に送信すべき計測値として抽出する。
送信部303は、抽出部302によって抽出された計測値を管理装置40に送信する。
【0031】
《管理システムの動作》
図5は、第2の実施形態に係る管理システムの動作を示すシーケンス図である。
管理システム1による管理が開始されると、通信装置30の取得部301は計測器20から計測値を取得する(ステップS101)。次に、抽出部302は、取得した計測値から、管理装置40における評価項目に基づいて状態量の計測値を抽出する(ステップS102)。送信部303は、取得した計測値を管理装置40に送信する(ステップS103)。
【0032】
管理装置40の計測値取得部401が通信装置30から計測値を受信すると、欠落検出部402は、計測値取得部401が取得した計測値の欠落を検出する(ステップS104)。このとき、欠落検出部402は、通信装置によって抽出されなかった状態量の欠落を検出することができる。推定部404は、計測値取得部401が取得した計測値を複数のモデルのそれぞれに適用し、欠落が検出された状態量の推定値をそれぞれ求める(ステップS105)。
【0033】
次に、評価値算出部405は、推定部404が推定した複数の推定値のそれぞれに基づいて、複数の評価項目の値を算出する(ステップS106)。確率特定部407は、確率分布記憶部406が記憶する確率分布情報に基づいて、各評価値の出現確率を特定する(ステップS107)。そして、評価値決定部408は、評価項目ごとに、確率特定部407が特定した確率が最も高い評価値を、対象装置10の管理に用いる評価項目の値に決定する(ステップS108)。つまり、第1の実施形態によれば、各評価項目の値は、評価項目ごとに異なるモデルによって推定された状態量の値によって算出され得る。この場合、各評価項目で算出に用いられた状態量の値が異なり得る。そして管理部409は、評価値決定部408が決定した評価値に基づいて対象装置10を管理する(ステップS109)。
【0034】
《作用・効果》
このように、第2の実施形態によれば、計測値の一部を送信しないことで、管理装置40との通信の量を低減することができる。これにより、第2の実施形態に係る管理システム1は、通信時間による管理の遅れを抑制することができる。
【0035】
なお、送信されなかった状態量の値は、管理装置40の欠落検出部402によって欠落したものとして扱われる。この値は上述したとおり評価項目の値に与える影響が比較的小さいものとなっている。そのため、通信装置30が計測値の一部を送信しなくても、管理装置40は、十分な精度で評価項目の値を得ることができる。
【0036】
〈第3の実施形態〉
第2の実施形態に係る管理システム1は、通信装置30にて送信すべき計測値を抽出する。これに対し、第3の実施形態に係る管理システム1では、管理装置40が受信すべき計測値を特定する。第3の実施形態に係る管理システム1は、第2の実施形態と管理装置40の構成が異なる。
【0037】
《管理装置の構成》
図6は、第3の実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
管理装置40は、第1の実施形態に係る構成に加え、さらに取得決定部410を備える。取得決定部410は、対象装置10の管理に用いる評価項目に基づいて、通信装置30から計測値を受信すべき状態量を特定する。取得決定部410は、通信装置に特定した状態量の情報を通信装置30に通知する。
例えば、取得決定部410は、第2の実施形態と同様に、評価項目の算出において相対的に大きい係数が設定されている状態量の計測値を、優先的に計測値を受信すべき状態量として決定する。また、例えば取得決定部410は、対象装置10の機器構成に基づいて、通信装置30から計測値を受信すべき状態量を特定してもよい。具体的には、取得決定部410は、対象装置10が同種の機器を複数備える場合に、その一部の機器の状態量を受信すべき状態量に決定し、同種の他の機器の状態量を推定すべき状態量に決定してもよい。また、対象装置10が、直列に接続される複数の機器を有する場合に、その一部の機器の状態量を推定すべき状態量に決定し、その前後の機器の状態量を計測値を受信すべき状態量に決定してもよい。これは、ある機器の入力と出力に係る機器の状態量が分かれば、その機器の状態量を精度よく推定できるためである。
【0038】
《管理システムの動作》
図7は、第3の実施形態に係る管理システムの動作を示すシーケンス図である。
管理装置40が対象装置10の管理を開始すると、取得決定部410は、評価項目に基づいて通信装置30から計測値を受信すべき状態量を決定する(ステップS201)。取得決定部410は、決定した状態量の送信要求を通信装置30に送信する(ステップS202)。
【0039】
通信装置30は計測器20から計測値を取得する(ステップS203)。通信装置30が管理装置40から送信要求を受信すると、抽出部302は、取得した計測値から、送信要求が示す状態量の計測値を抽出する(ステップS204)。送信部303は、抽出部302が抽出した計測値を管理装置40に送信する(ステップS205)。
【0040】
管理装置40の計測値取得部401が通信装置30から計測値を受信すると、欠落検出部402は、計測値取得部401が取得した計測値の欠落を検出する(ステップS206)。推定部404は、計測値取得部401が取得した計測値を複数のモデルのそれぞれに適用し、欠落が検出された状態量の推定値をそれぞれ求める(ステップS207)。次に、評価値算出部405は、推定部404が推定した複数の推定値のそれぞれに基づいて、複数の評価項目の値を算出する(ステップS208)。
【0041】
次に、確率特定部407は、確率分布記憶部406が記憶する確率分布情報に基づいて、各評価値の出現確率を特定する(ステップS209)。そして、評価値決定部408は、評価項目ごとに、確率特定部407が特定した確率が最も高い評価値を、対象装置10の管理に用いる評価項目の値に決定する(ステップS210)。そして管理部409は、評価値決定部408が決定した評価値に基づいて対象装置10を管理する(ステップS211)。
【0042】
《作用・効果》
このように、第3の実施形態によれば、管理装置40は、計測値を取得すべき状態量を特定し、その状態量の送信要求を通信装置30に送信する。これにより、第3の実施形態に係る管理システム1は、通信時間による管理の遅れを抑制することができる。
なお、第3の実施形態では、欠落検出部402が計測値の欠落を検出するが、これに限られない。例えば、推定部404は、他の実施形態においては、ステップS201で受信すべき状態量に選ばれなかった残りの状態量の計測値を推定する場合、管理装置40は、必ずしも欠落検出部402を備えないものであってもよい。
【0043】
〈第4の実施形態〉
第2、第3の実施形態に係る管理システム1は、評価項目や機器構成に基づいて状態量の値を計測する必要があるか否かを特定する。これに対し、第4の実施形態に係る管理システム1は、状態量の相関関係に基づいて値を計測すべき状態量を特定する。
管理装置40は、モデルにある状態量の計測値を入力することで、他の状態量の値を推定することができる。ここで、モデルによっては、逆関数が成立するものがある。つまり、第1の状態量の値を入力して第2の状態量の値を出力するモデルの逆関数が成立する場合、当該モデルは、第2の状態量の値から第1の状態量の値を算出することに用いることができる。
【0044】
ここで、第4の実施形態に係る管理システム1は、通信装置30の抽出部302または管理装置40の取得決定部410が、あるモデルの入出力の関係にある2つの状態量の群のうち、一方の状態量の群を説明変数(値を計測すべき状態量)とし、他方の状態量の群を目的変数(値を推定すべき状態量)とする。
【0045】
図8は、第4の実施形態に係る管理システムの動作の一例を示す図である。
図8に示すグラフは、第1の状態量と第2の状態量の関係を説明するモデルの例である。
図8に示すグラフにおいて、横軸は第1の状態量の値を示し、縦軸は第2の状態量の値を示す。
第1の状態量の値がS1aであるとき、第2の状態量の値はS2aとなる。このとき、第1の状態量に対する第2の状態量の変化率は1となる。同様に、第2の状態量に対する第1の状態量の変化率は1となる。すなわち、
図8に示すグラフの座標(S1a,S2a)の微分値は1となる。第1の状態量の値がS1a未満であるとき、第2の状態量の値はS2a未満となる。このとき、第1の状態量に対する第2の状態量の変化率は、1より大きくなる。つまり、第2の状態量に対する第1の状態量の変化率は、1より小さくなる。
第1の状態量の値がS1bであるとき、第2の状態量の値はS2bとなる。このとき、第1の状態量に対する第2の状態量の変化率は1となる。同様に、第2の状態量に対する第1の状態量の変化率は1となる。すなわち、
図8に示すグラフの座標(S1b,S2b)の微分値は1となる。第1の状態量の値がS1a超かつS1b未満であるとき、第2の状態量の値はS2a超かつS2b未満となる。このとき、第1の状態量に対する第2の状態量の変化率は、1より小さくなる。つまり、第2の状態量に対する第1の状態量の変化率は、1より大きくなる。
第1の状態量の値がS1b超であるとき、第2の状態量の値はS2b超となる。このとき、第1の状態量に対する第2の状態量の変化率は、1より大きくなる。つまり、第2の状態量に対する第1の状態量の変化率は、1より小さくなる。
【0046】
図8に示すようなモデルにおいて、第2の状態量の値がS2a超かつS2b未満であるときに、第2の状態量の計測値から第1の状態量の値を推定すると、第2の状態量の計測値に含まれる誤差によって、第1の状態量の値が大きく変動することとなる。これに対し、第1の状態量の計測値から第2の状態量の値を推定すると、第1の状態量の計測値に含まれる誤差による変動は、第2の状態量の値に大きく影響しないことがわかる。これは、第1の状態量に対する第2の状態量の変化率が、第2の状態量に対する第1の状態量の変化率より小さいためである。
【0047】
したがって、
図8に示す例において通信装置30において送信すべき計測値を決定する場合、抽出部302は、例えば、以下のように送信する計測値を決定する。抽出部302は、第1の状態量の計測値がS1a未満である場合、または第1の状態量の計測値がS1b以上である場合に、第2の状態量の計測値を送信し、第1の状態量の計測値を送信しないことを決定する。抽出部302は、第1の状態量の計測値がS1a以上S1b未満である場合に、第1の状態量の計測値を送信し、第2の状態量の計測値を送信しないことを決定する。なお、他の実施形態においては、抽出部302は、第2の状態量の計測値に基づいて送信する計測値を決定してもよいし、第1の状態量の計測値と第2の状態量の計測値の両方に基づいて送信する計測値を決定してもよい。
【0048】
また、
図8に示す例において管理装置40において受信すべき計測値を決定する場合、取得決定部410は、例えば、以下のように送信する計測値を決定する。取得決定部410は、第1の状態量の前回の値がS1a未満である場合、または第1の状態量の前回の値がS1b以上である場合に、第2の状態量の計測値の送信要求を生成する。取得決定部410は、第1の状態量の前回の値がS1a以上S1b未満である場合に、第1の状態量の計測値の送信要求を生成する。なお、他の実施形態においては、取得決定部410は、第2の状態量の前回の値に基づいて受信すべき計測値を決定しても良いし、第1の状態量の前回の値と第2の状態量の前回の値の両方に基づいて受信すべき計測値を決定してもよい。また他の実施形態においては、取得決定部410は、状態量の値の変化速度を鑑みて受信すべき計測値を決定してもよい。
【0049】
このように、第4の実施形態に係る管理システム1は、あるモデルの入出力の関係にある2つの状態量の群のうち、一方の状態量の群の値を計測し、他方の状態量の群の値を推定することを決定する。このとき、判断の基準として、モデルにおける状態量の値の変化率の絶対値が1となる点で、値を計測すべき群と値を推定すべき群とを切り分けることができる。これにより、第4の実施形態に係る管理システム1は、推定値への誤差の影響を小さくすることができる。
【0050】
〈第5の実施形態〉
第1から第4の実施形態によれば、管理装置40は、複数のモデルに基づいて状態量の推定値を生成する。第5の実施形態では、複数のモデルの1つが統計モデルであるときの動作について説明する。
【0051】
《管理装置の構成》
図9は、第5の実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
第5の実施形態に係る管理装置40は、第1の実施形態の構成に加え、さらに状態量記憶部411とモデル更新部412とを備える。モデル更新部412は、モデル記憶部403が記憶する複数のモデルのうち統計モデルを状態量記憶部411が記憶する過去の状態量の値に基づいて更新する。
【0052】
《管理装置の動作》
図10は、第5の実施形態に係る管理システムの動作を示すシーケンス図である。
管理システム1による管理が開始されると、通信装置30は計測器20から計測値を取得する(ステップS301)。通信装置30は、取得した計測値を管理装置40に送信する(ステップS302)。
【0053】
管理装置40の計測値取得部401が通信装置30から計測値を受信すると、欠落検出部402は、計測値取得部401が取得した計測値の欠落を検出する(ステップS303)。推定部404は、計測値取得部401が取得した計測値を統計モデルを含む複数のモデルのそれぞれに適用し、欠落が検出された状態量の推定値をそれぞれ求める(ステップS304)。
【0054】
次に、評価値算出部405は、推定部404が推定した複数の推定値のそれぞれに基づいて、複数の評価項目の値を算出する(ステップS305)。次に、確率特定部407は、確率分布記憶部406が記憶する確率分布情報に基づいて、各評価値の出現確率を特定する(ステップS306)。そして、評価値決定部408は、評価項目ごとに、確率特定部407が特定した確率が最も高い評価値を、対象装置10の管理に用いる評価項目の値に決定する(ステップS307)。そして管理部409は、評価値決定部408が決定した評価値に基づいて対象装置10を管理する(ステップS308)。
【0055】
次に、取得部301および推定部404は、対象装置10の管理に用いた値を、状態量記憶部411に蓄積させる(ステップS309)。そして、モデル更新部412は、モデル記憶部403が記憶する統計モデルを、状態量記憶部411に蓄積された値に基づいて更新する(ステップS310)。
【0056】
《作用・効果》
このように、第5の実施形態によれば、推定部404は、各管理のタイミングにおいて、前回の管理のタイミングにおいて更新された統計モデルを用いて、状態量の値を推定することができる。確率特定部407は、更新された統計モデルによる推定値の各評価項目における出現確率を特定することとなる。つまり、第5の実施形態によれば、各管理のタイミングにおいて統計データだけでなく、統計モデル自体も更新することで、統計推定値をより精度よく推定することができる。
なお、第5の実施形態に係る管理装置40は、統計モデルを過去の状態量の値に基づいて更新するが、これに限られない。例えば他の実施形態においては管理装置40は、状態量記憶部411に状態量を蓄積させる一方で統計モデルの更新をしないものであってもよい。この場合においても、過去の状態量の値が蓄積することにより、統計モデルによる推定の精度が向上し得る。例えば、データの蓄積により「大数の法則」で平均値の推定値が真値に近づくこと、分散の範囲を狭く絞り込むことにより、推定精度の向上が期待できる。
【0057】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態に係る管理システム1における管理装置40は、対象装置10の管理に用いる値の抽出および特定をする機能を有するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る管理システム1においては、管理装置40と別個に対象装置10の管理に用いる値の抽出および特定をする情報処理装置を備え、管理装置40は、情報処理装置が特定した値を用いて対象装置10を管理してもよい。
【0058】
また、上述した実施形態によれば、管理装置40は、欠落が検出された値を推定により求めるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、管理装置40は、欠落の有無に関わらず推定により状態量の値を求め、計測値と推定値のそれぞれについて確率分布に基づいて対象装置10の管理に用いる値を特定してもよい。
【0059】
また、上述した実施形態によれば、管理装置40は、異なるモデルを用いて生成された複数の推定値のそれぞれを用いて複数の評価値を算出した後に、その中から管理に用いる評価値を決定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、管理装置40は、複数の推定値を算出する前に、モデルの特性からいずれの評価項目の算出に適しているかを判断してもよい。この場合、推定部404は、評価項目ごとに適したモデルを用いて推定値を求め、評価値算出部405は当該推定値を用いて評価値を算出する。また、他の実施形態においては、管理装置40は、算出された推定値から、いずれの評価項目の算出に適しているかを判断してもよい。この場合、評価値算出部405は評価項目ごとに適した推定値を用いて評価値を算出する。上記いずれの方法も、評価項目ごとに対象装置10の状態量の値を推定するためのモデルを決定することと等価である。
【0060】
〈コンピュータ構成〉
図11は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、CPU91、主記憶装置92、補助記憶装置93、インタフェース94を備える。
上述の通信装置30および管理装置40は、それぞれコンピュータ90を備える。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置93に記憶されている。CPU91は、プログラムを補助記憶装置93から読み出して主記憶装置92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU91は、プログラムに従って、上述した記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置92に確保する。
【0061】
補助記憶装置93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムを主記憶装置92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0062】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。