(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カムシャフト(102)と、複数の吸気バルブ(122)及び複数の排気バルブ(118)と、前記カムシャフト(102)に設けられた複数のカム(102c,102b)によって揺動されて前記複数の吸気バルブ(122)及び前記複数の排気バルブ(118)を開閉させる吸気側ロッカーアーム(111)及び排気側ロッカーアーム(104)とをシリンダヘッド(32,42)に備える内燃機関の動弁装置において、
前記複数のカム(102c,102b)のうち、前記吸気バルブ(122)及び前記排気バルブ(118)の一方を開閉する第一のカム(102b)が一対離れて前記カムシャフト(102)に設けられ、
前記複数のカム(102c,102b)のうち、単一の第二のカム(102c)が、前記カムシャフト(102)における前記一対の第一のカム(102b,102b)間に設けられ、
前記第二のカム(102c)と、前記吸気バルブ(122)及び前記排気バルブ(118)の他方のバルブステム(122a)とに跨って、前記吸気側ロッカーアーム(111)及び前記排気側ロッカーアーム(104)の一方のロッカーアーム(111)が単一で配置され、
前記一方のロッカーアーム(111)は、前記吸気側ロッカーアーム(111)及び前記排気側ロッカーアーム(104)の他方のロッカーアーム(104)の間に配置され、前記第二のカム(102c)と摺動する単一のカム摺動面(111a)と、前記カム摺動面(111a)の両側方に配置されて前記吸気バルブ(122)及び前記排気バルブ(118)の他方のバルブステム(122a)にそれぞれ当接する複数のバルブステム当接部(111f)とを備え、
前記一方のロッカーアーム(111)は、前記バルブステム当接部(111f)から揺動中心のピボット部(111b)に向けて延びる複数のアーム本体部(111c)と、前記カム摺動面(111a)及び前記バルブステム当接部(111f)のそれぞれを接続する補強部(111e)とを有し、前記補強部(111e)と前記ピボット部(111b)との間に肉抜き部(111h)が設けられることを特徴とする内燃機関の動弁装置。
前記一方のロッカーアーム(111)は、前記第二のカム(102c)側に凸状に湾曲して形成され、前記第一のカム(102b)の最大半径は、前記第二のカム(102c)のベースサークル半径に比べて小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内燃機関の動弁装置。
前記カムシャフト(102)が延びる方向にて、前記第二のカム(102c)の幅は、前記第一のカム(102b)の幅よりも大きく、前記第二のカム(102c)のベースサークル上の摺動部(102f)の幅方向中央部に周方向に延びる周溝(102h)が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の内燃機関の動弁装置。
前記第一のカム(102b)に対応する前記他方のロッカーアーム(104)が、前記吸気バルブ(122)及び前記排気バルブ(118)の一方に向けて直線状に延びていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内燃機関の動弁装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示している。
図1は、本発明に係る動弁装置を備えた内燃機関10の左側面図である。
内燃機関10は、自動二輪車に搭載されるV型で、クランクケース11と、クランクケース11の上部から上方斜め車両前方に延びる前シリンダ部12と、クランクケース11の上部から上方斜め車両後方に延びる後シリンダ部13とを備える。前シリンダ部12と後シリンダ部13とは、V字状に配置されている。
【0021】
また、内燃機関10は、前シリンダ部12の後部と後シリンダ部13の前部とに吸気装置14が接続され、前シリンダ部12の前部と後シリンダ部13の後部とに排気装置(不図示)が接続される。
吸気装置14は、クランクケース11内に収容されたクランク軸16の動力により駆動される過給機18を備える。過給機18は、前シリンダ部12の後面と後シリンダ部13の前面との間に出来た空間19に配置されている。
【0022】
クランクケース11の左側面には、クランク軸16周りに設けられたACゼネレーター(ACG:交流発電機)の側方を覆うACGカバー20が取付けられている。更に、ACGカバー20には、サイドカバー21が取付けられている。サイドカバー21内には、クランク軸16から過給機18に動力を伝達して過給機18を駆動する過給機駆動機構(不図示)が収容されている。
サイドカバー21の上部には、クランクケース11内のブローバイガスが通過するブリーザー室(不図示)を形成するブリーザーカバー22が取付けられている。ブリーザー室では、ブローバイガスから液状のオイルが分離される。
【0023】
クランクケース11の下部には、オイルを貯めるオイルパン24が取付けられている。オイルパン24の側面にはオイルフィルター25が取付けられている。
クランクケース11の後部には、一体的に変速機26が設けられている。変速機26は、クランクケース11の側面から側方に突出する出力軸27と、出力軸27に取付けられたドライブスプロケット28とを備える。ドライブスプロケット28は、自動二輪車の後輪側に設けられたドリブンスプロケットにチェーンを介して連結される。これにより、変速機26から後輪に駆動力が伝達される。
【0024】
前シリンダ部12は,クランクケース11に順に取付けられた前シリンダブロック31、前シリンダヘッド32、前ヘッドカバー33を備える。前シリンダブロック31及び前シリンダヘッド32は、クランクケース11に複数のスタッドボルト36及びナット37で締結されている。前ヘッドカバー33は、複数のボルト38で前シリンダヘッド32に締結されている。
後シリンダ部13は,クランクケース11に順に取付けられた後シリンダブロック41、後シリンダヘッド42、後ヘッドカバー43を備える。後シリンダブロック41及び後シリンダヘッド42は、クランクケース11に複数のスタッドボルト36及びナット37で締結されている。後ヘッドカバー
43は、複数のボルト38で後シリンダヘッド42に締結されている。
吸気装置14は、吸気管51,51、TBW用スロットル装置52、スロットル装置53、コネクティングチューブ57、過給機18を備える。
【0025】
前シリンダヘッド32には吸気管51が設けられ、吸気管51にTBW用スロットル装置52が接続されている。TBW用スロットル装置52は、電動モータ52aと、電動モータ52aで駆動されるスロットルバルブ(不図示)とを備え、下記TBWを構成する一部品である。
TBW(Throttle・by・Wire)は、自動二輪車に設けられたスロットルグリップの回動をセンサで検知し、その検知信号を導線を通じて電動モータ52aに送り、電動モータ52aでスロットルバルブを開閉するシステムである。
【0026】
後シリンダヘッド42には吸気管51が設けられ、吸気管51にスロットル装置53が接続されている。スロットル装置53は、TBW用スロットル装置52のスロットルバルブと連動して開閉されるスロットルバルブ(不図示)を備える。両方のスロットルバルブはロッド55で連結されている。
【0027】
TBW用スロットル装置52及びスロットル装置53には、コネクティングチューブ57の二股状とされた各端部がそれぞれ接続されている。また、コネクティングチューブ57の中間部に設けられた端部には過給機18が接続されている。
また、過給機18には、上流側のコネクティングチューブ(不図示)を介してエアクリーナが接続されている。
【0028】
図2は、
図1の要部拡大図である。
前シリンダブロック31及び後シリンダブロック41は、それぞれ内部に筒状のシリンダ31a,41aを備え、シリンダ31a,41a内にピストンが移動可能に挿入されている。シリンダ31a,41aのそれぞれの中心を通るシリンダ軸線31b,41bの成す角度は90°である。
クランクケース11には、ブリーザーカバー22の内側に位置する一対の中間軸61,62と、クランク軸16の上方に位置する駆動軸63とが回転可能に支持されている。
クランク軸16には主駆動ギア65が設けられている。
【0029】
一方の中間軸61には、主駆動ギア65にかみ合う第1中間ギア67と、第1中間ギア67よりも小径の第2中間ギア68と、第1中間ギア67よりも大径の第3中間ギア69とが設けられている。
他方の中間軸62には、第3中間ギア69にかみ合う第4中間ギア71と、第4中間ギア71よりも小径の第5中間ギア72とが設けられている。
駆動軸63には、第2中間ギア68にかみ合う副駆動ギア74と、一対の第1タイミングスプロケット76及び第2タイミングスプロケット77と、カム78とが設けられている。
前シリンダヘッド32及び後シリンダヘッド42には、それぞれカムシャフト102が回転可能に支持され、前シリンダヘッド32及び後シリンダヘッド42の各カムシャフト102にカムスプロケット82が設けられている。
第1タイミングスプロケット76と前シリンダヘッド32のカムスプロケット82とに第1タイミングチェーン83が掛けられ、第2タイミングスプロケット77と後シリンダヘッド42のカムスプロケット82とに第2タイミングチェーン84が掛けられている。
【0030】
上記した第1タイミングスプロケット76、第2タイミングスプロケット77、カムスプロケット82は、同一歯数にされているので、駆動軸63と一対のカムシャフト102,102との回転数は同一となる。
上記した主駆動ギア65、第1中間ギア67、第2中間ギア68、副駆動ギア74は、クランク軸16の回転を減速して駆動軸63に伝える減速機構87を構成する。
クランク軸16の回転が、減速機構87を介して駆動軸63に伝わるときには、回転数が1/2に減速される。即ち、クランク軸16の回転数に対して、カムシャフト102の回転数は、1/2となる。
例えば、カムシャフト102の回転数を得るために、カムシャフト102の歯数を、第1タイミングスプロケット76及び第2タイミングスプロケット77の歯数の2倍にした場合、カムスプロケット82の外径は、第1タイミングスプロケット76及び第2タイミングスプロケット77の外径よりも大きくなる。これによって、前シリンダ部12及び後シリンダ部13が大型になる。
これに対して本実施形態では、カムスプロケット82の外径を、第1タイミングスプロケット76及び第2タイミングスプロケット77の外径と同一にしている。これにより、カムスプロケット82を小径にでき、前シリンダ部12及び後シリンダ部13の小型化を図ることができる。
【0031】
過給機18は、平行に配置された一対のロータ軸18a,18bを備え、ロータ軸18a,18bにそれぞれロータ(不図示)が取付けられている。一方のロータ軸18aには第5中間ギア72にかみ合うロータ軸ギア18cが設けられている。
ACGカバー20の後部には、駆動軸63の動力を利用して作動する高圧燃料ポンプ86が取付けられている。
高圧燃料ポンプ86は、駆動軸63に設けられたカム78が回転することにより駆動される。高圧燃料ポンプ86で高圧となった燃料は、前シリンダヘッド32及び後シリンダヘッド42にそれぞれ設けられた燃料噴射弁88(一方の燃料噴射弁88のみ図示)を介して前シリンダ部12及び後シリンダ部13の各燃焼室に噴射される。
【0032】
上記したクランク軸16、主駆動ギア65、中間軸61、第1中間ギア67、第2中間ギア68、第3中間ギア69は、主駆動機構70を構成する。
また、駆動軸63、第1タイミングスプロケット76、第2タイミングスプロケット77、第1タイミングチェーン83、第2タイミングチェーン84、一対のカムスプロケット82,82は、前シリンダ部12及び後シリンダ部13の各カムシャフト102を駆動するカムシャフト駆動機構80を構成する。カムシャフト駆動機構80は、主駆動機構70の第2中間ギア68によって駆動され、カムシャフト駆動機構80によって一対のカムシャフト102,102が駆動される。なお、第2中間ギア68は、カムシャフト駆動機構80に含まれていても良い。
【0033】
前シリンダヘッド32及び後シリンダヘッド42は、それぞれロッカーシャフト、ロッカーアーム、バルブスプリング、吸排気バルブ等を備える。カムシャフト102は、ロッカーシャフト、ロッカーアーム、バルブスプリング等と共に、吸排気バルブを開閉する動弁装置(動弁系)100を構成する。
上記したカムシャフト駆動機構80及び動弁装置100は、吸排気バルブを駆動する弁駆動機構89を構成する。
更に、中間軸62、第4中間ギア71、第5中間ギア72は、過給機駆動機構90を構成する。過給機駆動機構90は、主駆動機構70の第3中間ギア69によって駆動され、過給機駆動機構90によって過給機18が駆動される。なお、第3中間ギア69は、過給機駆動機構90に含まれていても良い。
【0034】
図3は、
図2のIII矢視図である。
後ヘッドカバー43は、左右一対のボルト38,38で後シリンダヘッド42に取付けられている。後ヘッドカバー43には、後シリンダヘッド42から延びる筒状のプラグ収容部91が左右のボルト38,38の間に配置され、プラグ収容部91に、後シリンダヘッド42に取付けられた点火プラグ92が収容されている。
後ヘッドカバー43は、後シリンダヘッド42内に設けられたカムシャフトホルダー101、カムシャフト102、排気側ロッカーシャフト103、左右一対の排気側ロッカーアーム104,104等からなる動弁装置100を覆っている。動弁装置100については、次図以降で詳述する。
【0035】
図4は、
図3から後ヘッドカバー43を外して要部を示す図である。
後シリンダヘッド42と後ヘッドカバー43(
図3参照)の周縁部との間は、無端状のヘッドカバーガスケット95によってシールされている。
後シリンダヘッド42は、アルミニウム合金からなるシリンダヘッド本体42Aと、シリンダヘッド本体42Aに組付けられた動弁装置100とを備える。
シリンダヘッド本体42Aには、車幅方向に延びるカムシャフト102を支持するシャフト支持部(不図示)が形成され、シャフト支持部とカムシャフトホルダー101とによってカムシャフト102が回転可能に挟持されている。
カムシャフトホルダー101は、スケルトン(骨組み)構造を有する一体成型品であり、シリンダヘッド本体42Aに複数のボルト106で取付られている。
【0036】
カムシャフトホルダー101は、左右一対の軸受本体101a,101a、前側横ブリッジ101b及び後側横ブリッジ101c、左右一対の縦ブリッジ101d,101dを一体に備える。
軸受本体101aは、前後がそれぞれボルト106でシリンダヘッド本体42Aに締結され、シリンダヘッド本体42Aのシャフト支持部と共にカムシャフト102を支持する。前側横ブリッジ101b及び後側横ブリッジ101cは、左右の軸受本体101a,101aを接続する。縦ブリッジ101dは、前側横ブリッジ101b及び後側横ブリッジ101cのそれぞれに渡されている。
カムシャフト102は、左右一対のカムシャフトジャーナル102a,102a、左右一対の排気側カム102b,102b、吸気側カム102cを備える。
【0037】
左右のカムシャフトジャーナル102a,102aは、シャフト支持部及びカムシャフトホルダー101によって回転可能に支持される。左右の排気側カム102b,102bは、それぞれ左右のカムシャフトジャーナル102a,102a寄りに配置される。吸気側カム102cは、左右の排気側カム102b,102bの間であって、左右のカムシャフトジャーナル102a,102aから等距離に配置される。
シリンダヘッド本体42Aには、排気側ロッカーシャフト103を支持する排気側ロッカーシャフト支持部42cが形成されている。排気側ロッカーシャフト支持部42cは、左右一対の側部支持部42d,42dと、左右の側部支持部42d,42dの間に配置された中央部支持部42eとからなる。
【0038】
排気側ロッカーシャフト103は、円筒状の部材であり、排気側ロッカーシャフト103には、一対の排気側ロッカーアーム104,104が上下揺動可能に支持されている。排気側ロッカーアーム104は、前後方向に直線的に延びている。排気側ロッカーアーム104は、その前端部にカムシャフト102の排気側カム102b,102bに当たって回転するローラー108が回転可能に取付けられている。また、排気側ロッカーアーム104は、その後端部に排気バルブ(不図示)のバルブステム(不図示)の端部に当てられるバルブステム当接部104bが設けられている。
左右の側部支持部42d,42dの車幅方向外側には、ボルト38,38(
図3参照)がねじ込まれる左右一対のねじ穴42k,42kが形成されている。
シリンダヘッド本体42Aの一側部(左側部)には、開口部42fが開けられている。開口部42fには、カムシャフト102の一端部(左端部)に取付けられたカムスプロケット82に掛けられた第2タイミングチェーン84が通されている。
なお、前シリンダヘッド32(
図2参照)は、後シリンダヘッド42と基本構造が同一であり、説明を省略する。
【0039】
以上に示したように、カムシャフト102が延びる方向にて、吸気側カム102cの幅は、排気側カム102bの幅よりも大きく、吸気側カム102cのベースサークル上の摺動部としてのベースサークル部102fの幅方向中央部に周方向に延びる周溝102hが形成されている。
この構成によれば、吸気側カム102cの頂部(カムロブ102g(
図8参照))に比べて高い剛性が要求されないベースサークル部102fで軽量化を図ることができる。
【0040】
図5は、
図4からカムシャフトホルダー101及びカムシャフト102を外した状態を示す図である。
シリンダヘッド本体42Aは、カムシャフト102(
図4参照)を支持する左右一対のシャフト支持部42g,42gを一体に備える。
シャフト支持部42g,42gは、左右のスタッドボルト36,36の車幅方向内側に配置されている。
シャフト支持部42gには、カムシャフトジャーナル102aを受ける凹形状の軸受部42hと、ボルト106をねじ込むために軸受部42hの前後にそれぞれ設けられたねじ穴42j,42jとが形成されている。
左右のシャフト支持部42g,42gの間には、左右一対の吸気バルブ(不図示)を開閉する単一の吸気側ロッカーアーム111が配置されている。吸気側ロッカーアーム111は、その車幅方向中央部にカムシャフト102の吸気側カム102cと摺動するカム摺動面111aを備える。
吸気側ロッカーアーム111は、その後部が左右の排気側ロッカーアーム104,104の下方に重なるように配置されている。
【0041】
以上に示したように、アーム本体部111cの上方に排気側カム102bが配置されるので、吸気側ロッカーアーム111及び排気側ロッカーアーム104の一方の吸気側ロッカーアーム111の大きさの範囲に複数の排気側カム102b,102bが重なることで、複数の排気側カム102b,102bの位置が集約され、カムシャフト102の短縮化を図ることができる。
【0042】
図6は、吸気側ロッカーアーム111を示す図である。
図6(A)は吸気側ロッカーアーム111を
図5と同一方向から見た図、
図6(B)は吸気側ロッカーアーム111の左側面図である。
図6(A)に示すように、吸気側ロッカーアーム111は、軸受部111b、左右一対のアーム本体部111c,111c、被押圧部111d、左右一対の補強アーム111e,111eを備える。
吸気側ロッカーアーム111は、シリンダヘッド本体42A(
図5参照)に取付けられる吸気側ロッカーシャフト112によって回動可能に支持される。吸気側ロッカーアーム111の後部には車幅方向に延びる筒状の軸受部111bが形成され、軸受部111bが、吸気側ロッカーシャフト112と回動可能に嵌合する。
【0043】
軸受部111bの両端部から前側に左右一対のアーム本体部111c,111cが延び、アーム本体部111c,111cの先端部(バルブステム当接部111f,111f)にそれぞれ吸気バルブ(不図示)のバルブステムの端部が当てられる。また、軸受部111bの車幅方向の中央部から前方に延びるようにカムシャフト102(
図4参照)の吸気側カム102c(
図4参照)に押圧される被押圧部111dが設けられている。被押圧部111dの上面にはカム摺動面111aが形成される。被押圧部111dは、左右の補強アーム111e,111eによってアーム本体部111c,111cに接続される。これにより、アーム本体部111c,111c及び被押圧部111dの両方を補強することができる。
軸受部111bと左右の補強アーム111e,111eとの間には、それぞれ肉抜き部111hが形成されている。このように、左右の肉抜き部111hを設けることで、吸気側ロッカーアーム111の軽量化を図ることができる。
【0044】
図6(B)に示すように、吸気側ロッカーアーム111の軸受部111bは、円筒状の部分であり、軸受部11b内に中空の吸気側ロッカーシャフト112が挿入される。
アーム本体部111cは、上方に凸となるように湾曲している。
被押圧部111dは、アーム本体部111cよりも上方に突出し、カム摺動面111aは、上方に凸となるように湾曲した面である。
アーム本体部111cの前端部には、吸気バルブ(不図示)のバルブステムに当接するバルブステム当接部111fが設けられている。バルブステム当接部111fの下面111gは、バルブステムの端面に当たる部分であり、下方に凸となるように湾曲している。
【0045】
以上の
図5及び
図6(A),(B)に示したように、吸気側ロッカーアーム111及び排気側ロッカーアーム104の一方の吸気側ロッカーアーム111は、吸気側ロッカーアーム111及び排気側ロッカーアーム104の他方の排気側ロッカーアーム104,104間に配置され、吸気側カム102cと摺動する単一のカム摺動面111aと、カム摺動面111aの両側方に配置されて吸気バルブ122及び排気バルブ118の他方のバルブステム122aにそれぞれ当接する複数のバルブステム当接部111fとを備える。
この構成によれば、吸気側カム102cによる複数の吸気バルブ122の押込み力の均衡を図ることができる。
【0046】
図7は、
図5から排気側ロッカーアーム104,104及び吸気側ロッカーアーム111を外した状態を示す図である。
排気側ロッカーシャフト103は、排気側ロッカーシャフト支持部42cによって支持されている。排気側ロッカーシャフト支持部42cの中央部支持部42eには、排気側ロッカーシャフト103の車幅方向の位置決めをする位置決めピン115が挿入されている。
位置決めピン115は、中央部支持部42eに形成されたピン挿通穴42mに挿入される。
【0047】
左右のシャフト支持部42g,42gには、その内側面から膨出する左右一対の膨出部42n,42nが形成されている。左右の膨出部42n,42nには、それぞれ凹部42pが形成され、左右の凹部42p,42p内に上方から吸気側ロッカーシャフト112の両端部が挿入されている。左右の凹部42p,42pと吸気側ロッカーシャフト112の両端部とは、車幅方向に隙間が設けられるとともに、図の表面から裏面に向かう方向には吸気側ロッカーシャフト112の移動が規制されている。
吸気側ロッカーシャフト112の車幅方向中央部には、環状溝112aが形成され、環状溝112aに位置決めピン115が係止されている。これにより、位置決めピン115によって吸気側ロッカーシャフト112の車幅方向への移動が規制される。
【0048】
プラグ収容部91よりも後方のシリンダヘッド本体42Aには、左右一対の排気側台座部42q,42qが形成されている。排気側台座部42qの中央部からは、バルブガイド117が突出し、更にバルブガイド117からは排気バルブ118、詳しくは排気バルブ118のバルブステム118aが突出している。
排気側台座部42qは、排気バルブ118を閉じる側に付勢するバルブスプリング(不図示)の端部を支持する部分である。
また、カムシャフト102(
図4参照)の下方のシリンダヘッド本体42Aには、左右一対の吸気側台座部42r,42rが形成されている。吸気側台座部42rの中央部からは、バルブガイド121が突出し、更にバルブガイド121からは吸気バルブ122、詳しくは吸気バルブ122のバルブステム122aが突出している。
吸気側台座部42rは、吸気バルブ122を閉じる側に付勢するバルブスプリング(不図示)の端部を支持する部分である。
【0049】
図4及び
図7に示したように、排気側カム102bに対応する、吸気側ロッカーアーム111及び排気側ロッカーアーム104の他方の排気側ロッカーアーム104が、吸気バルブ122及び排気バルブ118の一方(排気バルブ118)に向けて直線状に延びている。
この構成によれば、吸気側ロッカーアーム111及び排気側ロッカーアーム104の一方の排気側ロッカーアーム104を直線状に形成することで、伝達ロスを少なくして効率良く作動力を伝えることができるとともに、排気側カム102b,102bの間隔を近づけることが可能となり、カムシャフト102を短くして前シリンダヘッド32及び後シリンダヘッド42の小型化・コンパクト化を図ることができる。
【0050】
図8は、
図3のVIII−VIII線断面図である。
カムシャフト102の排気側カム102bは、外径が一定のベースサークル部102dと、ベースサークル部102dよりも半径方向外側に突出するカムロブ(カム山)102eとからなる。
排気側カム102bには、排気側ロッカーアーム104のローラー108が当てられる。排気側ロッカーアーム104のバルブステム当接部104bは、排気バルブ118のバルブステム118aの上端に当てられる。
【0051】
ローラー108がベースサークル部102dに当たっているときには、排気側ロッカーアーム104は静止している。従って、バルブステム当接部104bは、最も上方に位置し、排気バルブ118は、閉じた状態にある。排気バルブ118を閉じた状態とは、排気バルブ118のバルブステム118aの先端に設けられた傘部(不図示)によって、排気ポートの燃焼室へ通じる開口を閉じた状態である。
また、ローラー108がカムロブ102eに当たっているときには、排気側ロッカーアーム104は揺動する。従って、バルブステム当接部104bは、最も上方の位置よりも下降し、排気バルブ118は、バルブスプリング125,126の弾性力に抗して押し下げられ、開いた状態になる。排気バルブ118を開けた状態とは、排気バルブ118の傘部によって排気ポートの開口を開けた状態である。
【0052】
カムシャフト102の吸気側カム102cは、外径が一定で且つ排気側カム102bのカムロブ102eよりも外径が大きなベースサークル部102fと、ベースサークル部102fよりも半径方向外側に突出するカムロブ(カム山)102gとからなる。
カムシャフト102の吸気側カム102cには、吸気側ロッカーアーム111のカム摺動面111aが当てられる。吸気側ロッカーアーム111のバルブステム当接部111fは、吸気バルブ122のバルブステム122aの上端に当てられる。
【0053】
カム摺動面111aがベースサークル部102fに当たっているときには、吸気側ロッカーアーム111は静止している。従って、バルブステム当接部111fは、最も上方に位置し、吸気バルブ122は、閉じた状態にある。吸気バルブ122を閉じた状態とは、吸気バルブ122のバルブステム122aの先端に設けられた傘部(不図示)によって、吸気ポート42sの燃焼室へ通じる開口を閉じた状態である。
また、カム摺動面111aがカムロブ102gに当たっているときには、吸気側ロッカーアーム111は揺動する。従って、バルブステム当接部111fは、最も上方の位置よりも下降し、吸気バルブ122が、バルブスプリング127,128の弾性力に抗して押し下げられ、開いた状態になる。吸気バルブ122を開けた状態とは、吸気バルブ122の傘部によって吸気ポートの開口を開けた状態である。
【0054】
以上の
図4、
図5及び
図8に示したように、内燃機関10(
図1参照)の動弁装置100において、カムシャフト102と、複数の吸気バルブ122及び複数の排気バルブ118と、カムシャフト102に設けられた複数のカムとしての吸気側カム102c及び排気側カム102bによって揺動されて複数の吸気バルブ122及び複数の排気バルブ118を開閉させる吸気側ロッカーアーム111及び排気側ロッカーアーム104とを前シリンダヘッド32及び後シリンダヘッド42に備える。
【0055】
複数の吸気側カム102c及び排気側カム102bのうち、吸気バルブ122及び排気バルブ118の一方を開閉する第一のカムとしての排気側カム102bが一対離れてカムシャフト102に設けられる。複数の吸気側カム102c及び排気側カム102bのうち、単一の第二のカムとしての吸気側カム102cが、カムシャフト102における一対の排気側カム102b,102b間に設けられる。吸気側カム102cと、吸気バルブ122及び排気バルブ118の他方のバルブステム122aとに跨って、吸気側ロッカーアーム111及び排気側ロッカーアーム104の一方の吸気側ロッカーアーム111が単一で配置される。
【0056】
この構成によれば、従来のように、第二のカムを複数設けて、それぞれの第二のカムで機関バルブ(吸気側バルブ、排気側バルブ)を駆動する構造と比較して、本実施形態では、吸気側カム102cによる駆動構造が占める範囲を小さくして、動弁装置100の小型化を図り、ひいてはカムシャフト102の短縮化による内燃機関10の小型化を図ることができる。
【0057】
また、
図6(A),(B)及び
図8に示したように、吸気側ロッカーアーム111及び排気側ロッカーアーム104のうちの一方の吸気側ロッカーアーム111は、バルブステム当接部111fから揺動中心のピボット部としての軸受部111bに向けて延びる複数のアーム本体部111cと、カム摺動面111a及びバルブステム当接部111fのそれぞれを接続する補強部としての補強アーム111eとを有し、補強アーム111eと軸受部111bとの間に肉抜き部111hが設けられる。
この構成によれば、補強アーム111eと肉抜き部111hとにより、吸気側ロッカーアーム111及び排気側ロッカーアーム104の一方の吸気側ロッカーアーム111の剛性の確保と軽量化とを両立できる。
【0058】
また、吸気側ロッカーアーム111及び排気側ロッカーアーム104の一方の吸気側ロッカーアーム111は、吸気側カム102c側に凸状に湾曲して形成され、排気側カム102bの最大半径は、
吸気側カム102cのベースサークル半径(ベースサークル部102f)に比べて小さい。
この構成によれば、排気側カム102bが一方の吸気側ロッカーアーム111に接触することを避けながら、カムシャフト102を吸気バルブ122のバルブステム122a側に近づけることができ、前シリンダヘッド32及び後シリンダヘッド42の高さを低くできる。
【0059】
図9は、
図3のIX−IX線断面図である。
カムシャフト102の吸気側カム102cには、吸気側カム102cの周方向において、カムロブ102gとは反対側のベースサークル部102f上に周方向に延びる周溝102hが形成されている。周溝102hを形成することでカムシャフト102の軽量化を図ることができる。
排気側ロッカーシャフト103は、その車幅方向中央部の外周面に環状溝103aが形成されている。環状溝103aには位置決めピン115が係止され、これによって、排気側ロッカーシャフト103は、車幅方向への移動が規制され、位置決めされる。
【0060】
シリンダヘッド本体42Aは、排気側台座部42q及び吸気側台座部42rが形成された底壁42tよりも高い位置に形成された上壁42uを備える。上壁42uは、シリンダヘッド本体42Aにおいて後ヘッドカバー43が取付けられる環状のヘッドカバー取付部42vの内側に位置する。上壁42uは、シリンダ軸線41b(
図2参照)の延びる方向においてヘッドカバー取付部42vと同一高さに形成されている。
上壁42uには、位置決めピン115の下端部が挿入されるピン挿入穴42wが開けられている。位置決めピン115の上端面115aには、後ヘッドカバー43の内面43aから一体に下方に延びる下方延出部43bの下端が、当てられている又はわずかな隙間を隔てて近接配置されている。これにより、位置決めピン115を簡単に保持することができ、特別に位置決めピン115を保持する部品を設けずに済み、コストを抑えることができる。
【0061】
以上の
図5、
図7及び
図9に示したように、一方の吸気側ロッカーアーム111を揺動可能に支持する一方の吸気側ロッカーシャフト112と、他方の排気側ロッカーアーム104を揺動可能に支持する他方の排気側ロッカーシャフト103とを、一方の吸気側ロッカーアーム111のバルブステム当接部111f及び他方の排気側ロッカーアーム104のバルブステム当接部104bに対して相互に近づく側に配置し、一方の吸気側ロッカーシャフト112及び他方の排気側ロッカーシャフト103の軸方向移動を規制する単一の係止ピンとしての位置決めピン115を前シリンダヘッド32及び後シリンダヘッド42に備え、位置決めピン115は、前シリンダヘッド32及び後シリンダヘッド42に取付けられた前ヘッドカバー33及び後ヘッドカバー43で抜け止めされる。
この構成によれば、部品点数増加を最小限に抑えながらコンパクトで簡素な一方の吸気側ロッカーシャフト112及び他方の排気側ロッカーシャフト103の抜け止め構造を成立させることができる。
【0062】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
本発明は、自動二輪車の内燃機関に適用する場合に限らず、自動二輪車以外も含む鞍乗り型車両の内燃機関にも適用可能である。なお、鞍乗り型車両とは、車体に跨って乗車する車両全般を含み、自動二輪車(原動機付き自転車も含む)のみならず、ATV(不整地走行車両)に分類される三輪車両や四輪車両を含む車両である。