(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した技術では、まず、ヒータに流れる電流とヒータに印加される電圧の測定が必要となる。また、上述した技術では、抵抗値など異常診断のためのパラメータの算出が煩雑である。また、上述した技術では、抵抗値の時間変化を調べるために、経過時間などの測定に時間を要するという問題があった。このように、上述した技術では、異常の判断に至るまでに煩雑な計算と測定が必要であった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、より簡便により迅速にヒータの異常が判断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る劣化診断方法は、劣化診断対象の加熱装置を構成するヒータの正常時の特性を示す基準線を用意する第1工程と、ヒータの劣化診断のための許容範囲を設定する第2工程と、ヒータを制御するための制御値を取得する第3工程と、第3工程で取得された制御値に従ってヒータに供給される電流を測定して測定値を取得する第4工程と、測定値が許容範囲を超えると加熱装置が劣化したものと判定する第5工程とを備え、第1工程では、正常時のヒータにおける制御値と対応する電流との関係を示すヒータ特性を近似線化して基準線を作成し、第2工程では、基準線における制御値に対する電流値の上側許容値および下側許容値から許容範囲を設定する。
【0009】
上記劣化診断方法において、第1工程では、ヒータ特性における制御値の最小値および制御値の最大値に設定点を設定し、設定した設定点を接続する直線による近似線を作成し、近似線とヒータ特性を示す曲線との間のヒータ特性の方が小さい領域とヒータ特性の方が大きい領域との各々において最大偏差を求め、求めた2つの最大偏差が所定の許容偏差より小さい場合、近似線を基準線とし、いずれかの最大偏差が許容偏差より大きい場合、ヒータ特性の2つの最大偏差となる箇所に新たに設定点を設定し、新たに設定した設定点と既に設定してある設定点とにおいて隣り合う設定点どうしを直線で接続した新たな近似線を作成する近似線作成工程と、新たな近似線とヒータ特性を示す曲線との間のヒータ特性の方が小さい領域とヒータ特性の方が大きい領域との各々において新たな最大偏差を求める最大偏差探索工程とを、求めた新たな最大偏差が許容偏差より小さくなるまで繰り返すことで、近似線を基準線とする。
【0010】
上記劣化診断方法において、第1工程では、正常時のヒータにおいて、制御値の最小・最大の範囲内で複数の制御値を設定して設定した各制御値においてヒータ電流値を実測し、実測の結果得られた各制御値と各ヒータ電流値とによる複数の設定点を用い、隣り合う設定点を直線で接続した折れ線を作成し、作成した折れ線をヒータ特性を折れ線近似した基準線とする。
【0011】
上記劣化診断方法において、第2工程では、制御値が大きい値ほど許容範囲を広く設定するとよい。
【0012】
本発明に係る劣化診断装置は、劣化診断対象の加熱装置を構成するヒータの劣化診断のための許容範囲を記憶する基準記憶部と、ヒータを制御するための制御値を取得するように構成された制御値取得部と、制御値取得部で取得された制御値に従ってヒータに供給される電流を測定して測定値を取得するように構成された電流測定部と、電流測定部で取得された測定値が許容範囲を超えると加熱装置が劣化したものと判定するように構成された劣化判定部とを備え、許容範囲は、ヒータの正常時の特性を示す基準線における制御値に対する電流値の上側許容値および下側許容値から設定されたものであり、基準線は、正常時のヒータにおける制御値と対応する電流との関係を示すヒータ特性を近似線化したものである。
【0013】
上記劣化診断装置において、許容範囲は、制御値が大きい値ほど広く設定されているとよい。
【0014】
上記劣化診断装置において、基準線、許容範囲、および制御値取得部で取得された制御値と電流測定部で取得された測定値とによる測定点が、制御値および測定値を軸とする2次元平面の座標上に配置されたグラフが表示されるように構成された表示部を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したことにより、本発明によれば、より簡便により迅速にヒータの異常が判断できるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における劣化診断装置100の構成を示す構成図である。この劣化診断装置100は、基準記憶部101、制御値取得部102、電流測定部103、劣化判定部104を備える。劣化診断装置100は、ヒータ111および操作部112からなる加熱装置の劣化を診断する。
【0018】
基準記憶部101は、ヒータ111および操作部112の劣化診断のための許容範囲(正常範囲)を記憶する。許容範囲は、劣化診断対象の加熱装置を構成するヒータ111の正常時の特性を示す基準線を元に設定されている。この基準線も、基準記憶部101に記憶されている。
【0019】
制御値取得部102は、制御部113が出力するヒータ111(加熱装置)を制御するための制御値を取得する。上記制御値は、温度測定部114で測定された測定値と設定されている設定値とから、制御部113によって算出され、操作部112へ出力される。制御部113は、例えば温度調節計である。操作部112は、例えばよく知られた電力調整器から構成されている。操作部112が、上記制御値により商用の電源から得られる100Vの駆動電流を制御し、ヒータ111による加熱動作を制御する。この制御により、ヒータ111を流れる電流値が決定される。制御値取得部102は、制御部113から出力する上述した制御値を取得する機能部である(特許文献1参照)。
【0020】
電流測定部103は、ヒータ111に供給される電流を測定する。例えば、電流測定部103は、測定値として実効電流値を取得する。電流測定部103は、例えば、よく知られたカレントトランスから構成されている。実施の形態において、電流測定部103は、温度調節計である制御部113における警報出力に用いられる。この場合、電流測定部103は、ヒータ111への駆動電流値を検出して制御部113へ出力し、制御部113は予め設定された警報レベルとその検出値を比較し、検出値が警報レベルを超えたとき、加熱温度の異常を示す警報信号を出力するようになっている。なお、測定値は、平均電流値でもよい。
【0021】
劣化判定部104は、電流測定部103で取得された測定値が許容範囲を超えると、ヒータ111または操作部112(加熱装置)が劣化したものと判定する。例えば、劣化判定部104は、測定値を取得した時に制御値取得部102で取得された制御値における下側許容値と上側許容値の範囲を、測定値が越えていたことによりヒータ111または操作部112の劣化を判断する。許容範囲を超えた場合、ヒータ111の劣化に限らず、操作部112における劣化や故障も判定できる。ヒータ111に異常がない場合であっても操作部112の不調によっても、ヒータ111に供給される電流が異常となる場合もある。
【0022】
また、基準線、許容範囲、および制御値取得部102で取得された制御値と電流測定部103で取得された測定値とによる測定点が、制御値および測定値を軸とする2次元平面の座標上に配置されたグラフが、表示部105に表示される。
【0023】
ここで、基準線は、制御部113が出力する制御値と、この制御値に対応する正常時のヒータ111における電流との関係を示すヒータ特性を近似線化したものである。基準線は、制御値および測定値を軸とする2次元平面の座標上で、1つ以上の線分(1次式)から構成されるものである。
【0024】
例えば、正常時のヒータ111のヒータ特性を測定し、測定したヒータ特性から折れ線近似により基準線を求めればよい。得られたヒータ特性の曲線上に所定の条件で所定数の設定点(折れ点)を設け、設けた設定点を直線(線分)で接続することで基準線とすればよい。また、所定数の測定点で、正常時のヒータ111における制御値に対する電流を測定(実測)して電流値(ヒータ電流値)を取得し、所定数の制御値と電流値とによる設定点を設定し、隣り合う設定点を直線で接続することで基準線とすればよい。
【0025】
また、許容範囲は、基準線における制御値に対する電流値の上側許容値および下側許容値から設定(構成)されたものである。基準線における制御値に対する電流値の上側許容値による上側許容値線と、基準線における制御値に対する電流値の下側許容値による下側許容値線との間の範囲が、ヒータ111または操作部112を正常と見なすことができる許容範囲となる。
【0026】
次に、本発明の実施の形態における劣化診断装置100の動作例(劣化診断方法)について、
図2のフローチャートを用いて説明する。
【0027】
まず、ステップS201で、正常時のヒータ111における制御値と対応する電流との関係(ヒータ特性)を折れ線近似して基準線を作成(用意)して基準記憶部101に記憶する[第1工程]。次に、ステップS202で、ヒータ劣化診断のための許容範囲を設定して基準記憶部101に記憶する[第2工程]。許容範囲は、基準線における制御値に対する電流値の上側許容値および下側許容値から設定する。許容範囲は、判定対象となるヒータや操作部(加熱装置)に合わせて適宜に設定すればよい。ここで、制御値が大きい値ほど許容範囲を広く設定するとよい。一般に制御値が小さいほど電流値の取りうる範囲は小さくなる。したがって、制御値が小さい範囲では、異常と判定する幅も狭くし、制御値が大きい範囲では異常と判定する幅を広くするとよい。
【0028】
次に、ステップS203で、劣化判定部104が、判定の開始を判断する。例えば、判定を実施する指示の入力を受け付けることで判断する。また、例えば、判定周期時間が設定され、判定周期時間の経過により、判定の開始としてもよい。
【0029】
判定の開始を判断すると(ステップS203のyes)、ステップS204で、制御値取得部102が、ヒータ111を制御するための制御値を制御部113から取得する[第3工程]。次に、ステップS205で、電流測定部103が、制御値取得部102で取得された制御値に従ってヒータ111に供給される電流を測定して測定値を取得する[第4工程]。
【0030】
次に、ステップS206で、劣化判定部104が、電流測定部103で取得された測定値が許容範囲を超えたかどうかを判断する。測定値が許容範囲を超えている場合、劣化判定部104は、ヒータ111が劣化したものと判定する。
【0031】
ここで、ヒータ111の特性上、ヒータ111の動作開始時には、制御に対する遅れが発生する。従って、このような応答遅れが発生している状態においては、測定値が許容範囲を超える場合もある。また、瞬時的なノイズなどにより測定値が許容範囲を超える場合もある。従って、第3工程と第4工程とを複数回繰り返し、測定値が許容範囲を越えている状態が、所定の遅延時間(例えば30ms)内で解消された場合、許容範囲を超えていないものと判定するとよい。
【0032】
劣化判定部104は、ヒータ111が劣化したものと判定すると(ステップS206のyes)、ステップS207で、この状態を通知する。例えば、表示部105に、警報を表示することで、ユーザに対してヒータ111の劣化判定を通知する。
【0033】
次に、ステップS201における基準線の用意(作成)について、
図3のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS211で、正常時のヒータ111に与えられた異なる制御値に対するヒータ111に供給された電流を測定することで、ヒータ特性を取得する。このヒータ特性として、例えば、
図4に示すように、制御値および測定値を軸とする2次元の平面上に示される曲線401が取得される。
【0034】
次に、ステップS212で、得られたヒータ特性の曲線上で、一定の間隔で設定点を設定する。両端の設定点以外の設定点は、近似する折れ線における折れ点となる。例えば、
図5に示すように、制御値および測定値を軸とする2次元平面の座標における曲線401の上に、黒丸で示す9個の設定点を設定する。なお、少なくとも、制御値の最小値と、制御値の最大値には、各々設定点を設定する。次に、隣り合う2つの設定点を直線で互いに接続することで、基準線を作成する。例えば、
図5に示すように、9個の設定点を順に接続して基準線501を作成する。基準線501は、8個の線分から構成されたものとなる。
【0035】
以上のように作成した基準線501に対し、上側許容値線502、下側許容値線503を設定し、上側許容値線502、下側許容値線503で挾まれた領域を許容範囲とする。上側許容値線502、下側許容値線503も、複数の直線(線分)から構成されたものとなる。
【0036】
なお、劣化診断装置100は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)と主記憶装置と外部記憶装置とネットワーク接続装置となどを備えたコンピュータ機器である。コンピュータ機器である劣化診断装置100は、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作することで、上述した各機能が実現される。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させるようにしてもよい。
【0037】
ところで、基準線を作成するための設定点は、次に示すように設定してもよい。まず、
図6に示すように、制御値および測定値を軸とする2次元平面の座標において、ヒータ特性を示す曲線401における制御値の最小値および最大値に対応して設定点を配置し、これらを接続する近似線601を設定する。また、近似線601に対し、所定の上側許容値線602および下側許容値線603を設定する。上側許容値線602と下側許容値線603とに挾まれた領域が、許容範囲の候補となる。
【0038】
上述したように2つの設定点により近似線601を決定し、許容範囲の候補を設定した状態で、曲線401が許容範囲の候補内に収まり、近似線601と曲線401との最大偏差が、予め設定されている許容偏差より小さいことを判断する。曲線401が許容範囲内に収まり、最大偏差が許容偏差より小さい場合、近似線601を基準線とする。
図6に示した例では、曲線401が許容範囲を超える領域が発生している。従って、この場合、
図7に示すように、近似線601に対し、測定値の負の方向に曲線401と偏差が最大値となる箇所611、測定値の制の方向に曲線401と偏差が最大値となる箇所612を求める[最大偏差探索工程]。
【0039】
次に、求めた箇所611における曲線401上、および箇所612における曲線401上に新たな設定点を追加する。次に、
図8に示すように、追加したことにより4つとなった制御点を接続する新たな近似線601aを設定する[近似線作成工程]。また、新たな近似線601aに対し、所定の上側許容値線602aおよび下側許容値線603aを設定する。
【0040】
このようにして得られた上側許容値線602aおよび下側許容値線603aによる許容範囲に曲線401が収まり、近似線601aと曲線401との最大偏差が許容偏差より小さくなっていることを確認する。
図8に示した状態では、曲線401が許容範囲に収まり、近似線601aと曲線401との最大偏差が許容偏差より小さいので、近似線601aを基準線とする。
【0041】
上述した基準線の作成方法によれば、最大偏差を適宜に設定することで、実用的な劣化判定が可能な許容範囲を、設定点をむだに増やすことなく設定することができる。なお、許容偏差の設定条件により、許容範囲との比較をすることなく、許容偏差との最大偏差との比較だけで近似曲線を決定することができる。
【0042】
また、次に示すように基準線を作成してもよい。まず、正常時のヒータにおいて、制御値の最小・最大の範囲内で、複数の制御値を設定し、設定した各制御値においてヒータ電流値を測定する。例えば、制御値を0〜100%の範囲で10%幅で変化させ、各制御値においてヒータ電流値を測定する。この測定の結果得られた各制御値と各ヒータ電流値とによる複数の設定点を用い、隣り合う設定点を直線で接続した折れ線を、ヒータ特性を折れ線近似した基準線とする。
【0043】
以上に説明したように、本発明は、まず、正常時のヒータにおける制御値と対応する電流との関係を示すヒータ特性を折れ線近似して基準線を作成する。次に、基準線における制御値に対する電流値の上側許容値および下側許容値から許容範囲を設定する。このように作成した、許容範囲を用い、測定値が許容範囲を超えるとヒータが劣化したものと判定するようにした。この結果、本発明によれば、大きな記憶部を必要とするなど装置規模を大きくすることなくより簡便により迅速にヒータの異常が判断できるようになる。
【0044】
上記発明によれば、折れ線近似した基準線を用いて許容範囲を設定するので、許容範囲として保持するデータ量を非常に少なくすることができる。基準線は、直線(1次式)の組み合わせで構成されるため、許容範囲も直線(1次式)の組み合わせで構成されることになり、データ量が非常に少ない。また、折れ線近似した基準線を元にした許容範囲を用いるので、許容範囲は制御値が取り得る範囲で連続した判定基準となる。このため、本発明によれば、テーブル参照などの場合と異なり、劣化判定時に補間などをする必要が無い。また、ヒータに流れる電流値を測定すればよいので、電圧を測定する必要が無く、また抵抗値をわざわざ求める必要が無い。
【0045】
また、異常の判定は、周期的に取得するヒータ電流値の瞬時値を用いればよく、判定のために、時間的な変化の傾向を求める必要が無く、判定が迅速に実施できる。
【0046】
ところで、次に示すように判定をしてもよい。例えば、許容範囲の設定を広げることで、大きな異常となったときだけ異常と判定するようにしてもよい。また、許容範囲の設定(基準線からの差)を複数段階に分けて判断してもよい。例えば、1段階目は劣化の可能性があると判断する。2段階目は、劣化が進んだ可能性があると判断する。3段階目は、劣化が確実である判断する。これ以上は、故障や断線と判断する。
【0047】
また、どのような制御値に対してもヒータ電流測定値が常時ほぼ0であった場合、ヒータの断線(もしくは電力調整機の故障、その他加熱に関わる装置の完全な故障)として判定してもよい。
【0048】
また、判定に遅延時間を設定する場合、瞬時値の異常が一定の回数以上連続して発生したら、はじめて劣化が確実であると判定してもよい。または、測定値が0に近ければ断線と判定してもよい。これにより、許容範囲を狭くしても正確な判断が可能となる。また、正常範囲から外れる幅によって、異常の進行度を判断することができる。
【0049】
また、時間比例出力やオンオフ制御の場合、制御部の出力はオンまたはオフのいずれかになる。この場合、オン時の電流値だけを測定すれば、この測定値が、許容範囲から低下し、また高くなった場合に、ヒータの劣化や装置の異常、短絡の可能性を判定してもよい。
【0050】
また、PID制御による制御値は0〜100%の連続値であるが、時間比例出力の場合はオンとオフの時間的な割合で操作量(制御値)を表すため、オン時の電流のみが測定される。従って、この場合、中間的な電流値が発生すれば、正常値からの差の程度によって劣化や故障と判断することができる。また、オンオフ制御の場合も、出力としてはオンとオフしかないため、時間比例出力のときと同様に扱うことができる。なお、オンオフ制御では、過渡状態が発生するため、この過渡状態を誤って異常と判断しないように、オン・オフの切り替わりから一定時間は判定を行わないようにすればよい。
【0051】
一方、オンとオフの時間が短い場合に、異常値となっていた場合でも測定がなされず、また、測定されていても、判定に遅延を設定している場合、遅延時間が経過する前にオンオフが切り替わり、結果的に判定することができない状態となる。
【0052】
これに対し、例えば、オン状態での異常が連続していた場合は、オンオフが切り替わっても、遅延を判定するために測定される経過時間を初期化せずに積算する。正常値が現れたときだけ、測定された経過時間をリセットすればよい。
【0053】
また、ヒータ電流値を測定して判定するが、計装上は供給電力の低下や、電力調整機(操作部)の不調により、測定値が許容範囲を超える場合もある。従って、異常と判断されてからヒータを正常品に交換しても、異常の判定が解消しない場合、ヒータ以外の部位に問題があることがわかる。このように、本発明は、いわゆるループ診断として利用することが可能である。
【0054】
また、基準値生成部を設け、基準線を自動生成するようにしてもよい。基準値生成部は、まず、設定されている制御値幅で制御値を変化させて制御部より出力させる。例えば、制御値幅は、10%とすればよい。また、基準値生成部は、各制御値出力に対応してヒータ電流値を取得し、各制御値と各ヒータ電流値とによる複数の設定点を設定する。次に、基準値生成部は、隣り合う設定点を直線で接続した折れ線を、ヒータ特性を折れ線近似した基準線とする。基準値生成部は、例えば、装置に設けられた指示ボタンの押下などによるユーザによる指示入力を受け付けて、上述した動作を開始して基準線を生成する。このようにして生成した基準線を元に許容範囲を設定すればよい。
【0055】
ヒータ電流値の特性として、制御値0%付近の特性において、直線性が極めて低い場合がある。この対策として、制御値を0%から100%の間で測定点を設定する際に1%刻みで変化させてデータを取得し、電流値が0%から立ち上がった部分のみ制御値2%刻みの設定点データとし、10%以上の部分は制御値15%刻みでの設定点データとしてもよい。また測定は1%刻みで取得し、設定点データとして設定する際に、できるだけ演算誤差が少なくなるよう手動で設定点の数を設定してもよい。
【0056】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。