(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800073
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】インターホン装置
(51)【国際特許分類】
H04M 9/00 20060101AFI20201207BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20201207BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
H04M9/00 D
G08B25/04 J
G08B27/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-70254(P2017-70254)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-174396(P2018-174396A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 由晴
【審査官】
田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−126068(JP,A)
【文献】
特開昭55−001740(JP,A)
【文献】
実開昭55−146753(JP,U)
【文献】
特開2008−124696(JP,A)
【文献】
特表2004−532574(JP,A)
【文献】
中国実用新案第203661053(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 9/00− 9/10
G08B 19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
来訪者が居住者を呼び出すために玄関に設置された玄関子機と、前記玄関子機からの呼び出しに居住者が応答するための居室親機とを有するインターホン装置であって、
前記玄関子機は、放送信号を受信するための受信アンテナと、受信した前記放送信号をダウンコンバートするダウンコンバータとを有して、ダウンコンバートされた放送信号が伝送線を介して前記居室親機に伝送される一方、
前記居室親機は、伝送された前記放送信号を直接復調、或いはアップコンバータを介して復調する放送信号処理部と、復調された音声信号を報音する報音部とを有することを特徴とするインターホン装置。
【請求項2】
送信する前記放送信号が音声情報に加えて文字情報も送信するデジタル放送であって、
前記放送信号処理部が、放送信号に緊急情報が付加されている場合にそれを判別する緊急情報判別部を有すると共に、
緊急情報を表示する緊急情報表示部と、緊急情報を受信したことを報知する報知部と、
前記緊急情報判別部が緊急情報を判別したら、前記報知部を報知動作させると共に、前記緊急情報に含まれる文字情報を前記緊急情報表示部に表示させる警報制御部とを有することを特徴とする請求項1に記載のインターホン装置。
【請求項3】
緊急情報の受信状態を確認する状態確認部と、確認結果を表示する状態表示部とを有し、
前記状態確認部は、放送信号に付加される緊急情報のテスト信号及び通常放送信号のうち、少なくともテスト信号により受信状態を確認し、確認結果を前記状態表示部に表示することを特徴とする請求項2記載のインターホン装置。
【請求項4】
呼出動作中及び通話状態中は、前記玄関子機から前記居室親機への放送信号の伝送を停止させる放送信号伝送制御部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のインターホン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、来訪者が居住者を呼び出すためのインターホン装置に関し、特にラジオ放送等の放送電波を受信する機能を備えたインターホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジオ放送等の放送電波を受信する場合は、受信アンテナが必要であるが、室内に設置した場合は電波を安定して受信できない場合があるため、屋外に設置してケーブルでインターホン装置に接続する必要があった。その点、ラジオから情報を得たい場合は、容易に移動でき、外部のアンテナと接続する必要のないポータブルラジオが普及しており、これまでインターホン装置にラジオ受信機能を設ける必要性は大きくなかった。
一方で、家庭に設置された電気機器を利用するインターホン装置があり、例えば特許文献1では家庭に設置されているテレビ放送受信装置を利用し、インターホン装置の玄関に設置された玄関子機のカメラの撮像映像をテレビ放送受信装置の画面に表示させて、来訪者を確認し易くしたものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−150473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年頻発している各種災害に備えて、住民や地域の方々へ必要な情報を速やかに伝達する手段が必要とされ、例えばFM電波を使用した緊急告知放送が注目されているし、文字情報を送信できるデジタル放送により緊急情報を放送するシステムもある。
そのため、このような緊急情報を受信するラジオの機能をインターホン装置に持たせることができれば、ラジオを用意していなくても、リビング等に常時固定設置されているインターホン装置により緊急情報を聞くことができ好ましい。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、受信アンテナを別途接続すること無くラジオ放送等の放送電波を良好に受信できる機能を備えたインターホン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、来訪者が居住者を呼び出すために玄関に設置された玄関子機と、玄関子機からの呼び出しに居住者が応答するための居室親機とを有するインターホン装置であって、玄関子機は、放送信号を受信するための受信アンテナと、受信した放送信号をダウンコンバートするダウンコンバータとを有して、ダウンコンバートされた放送信号が伝送線を介して居室親機に伝送される一方、居室親機は、伝送された放送信号を直接復調、或いはアップコンバータを介して復調する放送信号処理部と、復調された音声信号を報音する報音部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、屋外に設置されている玄関子機に受信アンテナを設けるため、室内に配置される居室親機に設ける場合に比べて放送電波を良好に受信できる。そして、受信した放送信号はダウンコンバートして居室親機へ伝送するため、伝送線が1ペアケーブルであっても放送信号を大きく減衰させることなく伝送することが可能となり、従来のインターホン装置の配線を変更せず使用できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、送信する放送信号が音声情報に加えて文字情報も送信するデジタル放送であって、放送信号処理部が、放送信号に緊急情報が付加されている場合にそれを判別する緊急情報判別部を有すると共に、緊急情報を表示する緊急情報表示部と、緊急情報を受信したことを報知する報知部と、緊急情報判別部が緊急情報を判別したら、報知部を報知動作させると共に、緊急情報に含まれる文字情報を緊急情報表示部に表示させる警報制御部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、緊急情報を受信したらそれを表示し、更に報知部が報知動作するため、居住者はそれを認識し易い。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の構成において、緊急情報の受信状態を確認する状態確認部と、確認結果を表示する状態表示部とを有し、状態確認部は、放送信号に付加される緊急情報のテスト信号及び通常放送信号のうち、少なくともテスト信号により受信状態を確認し、確認結果を状態表示部に表示することを特徴とする。
この構成によれば、受信が正常に行われているか少なくとも緊急情報のテスト信号で定期的に認識でき、居住者は安心できる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、呼出動作中及び通話状態中は、玄関子機から居室親機への放送信号の伝送を停止させる放送信号伝送制御部を有することを特徴とする。
この構成によれば、呼出動作中/通話状態にあるときは放送信号は居室親機に伝送されないため、伝送路が放送信号で塞がれてスムーズな通話が成されなくなる事態を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屋外に設置されている玄関子機に受信アンテナを設けるため、室内に配置される居室親機に設ける場合に比べて放送信号を良好に受信できる。そして、受信した放送信号はダウンコンバートして居室親機へ伝送するため、伝送線が1ペアケーブルであっても放送信号を大きく減衰させることなく伝送することが可能となり、従来のインターホン装置の配線を変更せず使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るインターホン装置の一例を示す構成図であり、個々の機器をブロック図で示している。
【
図2】居室親機の他の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るインターホン装置の一例を示し、各機器をブロック図で示した構成図である。1は来訪者が居住者を呼び出すために玄関に設置された玄関子機、2は玄関子機1からの呼び出しに居住者が応答するための居室親機であり、両者は1ペアの伝送線L1で接続されている。
【0013】
玄関子機1は、通話するためのマイク11及びスピーカ12、音声信号のデジタル/アナログ変換を行うCODEC部13、呼出操作する呼出ボタン14、来訪者を撮像するためのカメラ15、カメラ15の撮像映像信号の変調処理等を行う映像処理部16、放送電波を受信するための受信アンテナ17、受信した放送信号を増幅するローノイズアンプ(LNA)18、ノイズを除去するための帯域通過フィルタ(BPF)19、伝送する周波数を下げるダウンコンバータ20、居室親機2と伝送線L1を介して通信するための子機通信IF21等を備えている。また、ダウンコンバータ20は、発振機20a、ミキサ回路20b、低域通過フィルタ(LPF)20c等で構成されている。
尚、ここでは、音声情報に加えて文字情報も送信されるデジタル放送を受信アンテナ17により受信する場合を説明する。
【0014】
居室親機2は、通話するためのマイク31及びスピーカ32、音声信号のデジタル/アナログ変換を行うCODEC33、通話の切り替え及び通話と放送との切り替えを行う音声信号処理部34、カメラ15の撮像映像や緊急情報を表示するモニタ35、表示映像/画像を処理する映像処理部36、玄関子機1から伝送された放送信号をアップコンバートするアップコンバータ37、放送信号を復調して音声信号と文字情報とに分離する放送信号処理部38、各種操作を行う操作部39、異常発生を通知するための表示灯40、居室親機2を制御する親機CPU41、伝送線L1を介して玄関子機1と通信する親機通信IF42等を備えている。
尚、放送信号処理部38は、受信した放送信号に緊急情報が付加されていたらそれを判別する緊急情報判別部の機能を有している。また、アップコンバータ37は、発振機37a及びミキサ回路37b、信号情報を抽出するための高域通過フィルタ(HPF)37cとで構成されている。
【0015】
上記の如く構成されたインターホン装置の動作は以下の様である。但し、玄関子機1からの呼び出し、呼び出しを受けた居室親機2からの応答に関する動作、更に呼出操作によりカメラ15が起動してその撮像映像が居室親機2のモニタ35に表示される動作は従来と同様であるため説明を省略し、ここでは放送電波の受信、受信後の制御動作について説明する。
受信アンテナ17で受信した放送信号は、増幅された後ダウンコンバータ20でダウンコンバートされ、伝送線L1を介して居室親機2に伝送される。
【0016】
居室親機2では、伝送された放送信号がアップコンバータ37で元の放送信号周波数にアップコンバートされた後、放送信号処理部38にて復調される。その後、親機CPU41の制御により、音声信号は音声信号処理部34を介してスピーカ32から報音され、文字情報は映像処理部36を介してモニタ35で表示される。
【0017】
そして、放送信号に緊急情報が付加されていたら、放送信号処理部38がそれを認識して親機CPU41に通知する。緊急情報受信の通知を受けた親機CPU41は、表示灯40を警報発報動作させ、スピーカ32から警報音を鳴動させる。例えばLEDを点滅させると共にブザー音を鳴動させて、居住者に緊急情報を受信したことを伝達する。その後、緊急情報の内容をスピーカ32から報音させると共に、モニタ35に表示させる。
【0018】
また親機CPU41は、玄関子機1の呼出ボタン14が操作されて呼出信号を受けた場合、加えてその後玄関子機1と居室親機2との間で通話路が形成されている間は、例えばLNA18の動作を停止させて、放送信号の伝送を停止させる。こうすることで、呼出動作中/通話状態にあるときは放送信号は居室親機2に伝送されないため、伝送線L1が放送信号で塞がれてスムーズな通話が成されなくなる事態を防止できる。
【0019】
更に、親機CPU41は、放送電波の受信状態を確認する制御を実施し、定期的に或いは緊急情報送信時に放送信号に付加されるテスト信号を放送信号処理部38が認識したら、その結果を表示灯40或いはモニタ35の表示により居住者に通知する。
尚、受信状態の確認は、通常放送の電波により実施しても良く、RSSIやCNR(C/N比)を利用して確認でき、通常放送を利用して確認する場合は、例えば1週間間隔で確認することもでき、頻繁に確認することで居住者は安心できる。
【0020】
このように、屋外に設置されている玄関子機1に受信アンテナ17を設けるため、室内に配置される居室親機2に設ける場合に比べて放送電波を良好に受信できる。そして、受信した放送信号はダウンコンバートして居室親機2へ伝送するため、伝送線L1が1ペアケーブルであっても放送信号を大きく減衰させることなく伝送でき、従来のインターホン装置の配線を変更せず使用できる。
また、緊急情報を受信したらそれをモニタ35に表示し、更に報知部としての表示灯40及びスピーカ32が報知動作するため、居住者はそれを認識し易い。
更に、放送の受信が正常に行われているか少なくとも緊急情報のテスト信号で定期的に認識でき、居住者は安心できる。加えて、LNA18により受信電波を増幅するため、受信アンテナ17の利得が小さくても良く、受信アンテナ17の小型化が可能となり、玄関子機1に内蔵し易い。
【0021】
図2は、居室親機2の他の構成を示し、上記
図1の構成とはアップコンバータが無い点が相違している。放送信号処理部38はIC化された回路で構成され、ICによっては内部の復調用のローカル周波数の変更により、アップコンバートを必要としないものがある。そのようなICを使用する場合は
図2に示すようにアップコンバータの無い構成にできる。
【0022】
尚、居室親機2に、留守時に訪問を受けた場合に来訪者映像を録画する留守設定機能が設けられている場合は、留守設定時に緊急情報を受けたら文字情報等を保存しておき、帰宅した居住者が確認可能としても良い。
【符号の説明】
【0023】
1・・玄関子機、2・・居室親機、17・・受信アンテナ、18・・LNA、20・・ダウンコンバータ、32・・スピーカ(報音部、報知部)、35・・モニタ(緊急情報表示部、状態表示部)、36・・映像処理部、37・・アップコンバータ、38・・放送信号処理部(緊急情報判別部)、40・・表示灯(報知部、状態表示部)、41・・親機CPU(警報制御部、放送信号伝送制御部、状態確認部)、L1・・伝送線。