(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800077
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 23/04 20060101AFI20201207BHJP
F16H 7/06 20060101ALI20201207BHJP
F16H 55/36 20060101ALI20201207BHJP
F16H 55/46 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
B66B23/04 C
F16H7/06
F16H55/36 A
F16H55/46
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-80212(P2017-80212)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-177472(P2018-177472A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】下村 周平
(72)【発明者】
【氏名】竹本 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 健司
【審査官】
有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−131229(JP,A)
【文献】
特開2008−150138(JP,A)
【文献】
特開2004−352499(JP,A)
【文献】
特開2013−249139(JP,A)
【文献】
実開昭48−108046(JP,U)
【文献】
実開昭54−111252(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0222063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00─31/02
F16H 7/00─ 7/24
F16H 55/32─55/56
F16H 51/00─55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの欄干部に支持された無端状の移動手摺と、前記移動手摺の一部が接触することによる摩擦力で前記移動手摺を駆動走行させるための回転体と、チェーンを介して移動手摺駆動スプロケットが受けたトルクを前記回転体に伝達するための回転体駆動軸と、を備え、
前記回転体は、前記回転体駆動軸に固定された内構造体とそれ以外の外構造体とを含み、前記内構造体と前記外構造体とに設けられ、前記外構造体の前記回転体駆動軸に対して垂直上方向の拘束を解除可能なロック機構とを含むことを特徴とした乗客コンベア。
【請求項2】
前記回転体の内構造体と外構造体が円形状であり、外構造体の内側に開いた穴が円形状であり、内構造体の外周と外構造体の内周に少なくとも一つ以上の凹凸の組み合わせ構造を備える、請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記回転体の内構造体が四角形状であり、外構造体が円形状かつ内側に開いた穴が四角形状であり、内構造体と外構造体を互いに拘束するための留め具と、内構造体の外周と外構造体の内周に少なくとも一つ以上の留め具を嵌め込むための凹形状を備える、請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
乗客コンベアの欄干部に支持された無端状の移動手摺と、前記移動手摺の一部が接触することによる摩擦力で前記移動手摺を駆動走行させるための回転体と、チェーンを介して移動手摺駆動スプロケットが受けたトルクを前記回転体に伝達するための回転体駆動軸と、を備える乗客コンベアにおける、前記回転体駆動軸に固定された内構造体とそれ以外の外構造体とを含む回転体の取外し方法であって、
回転体の前記内構造体と前記外構造体とに設けられるロック機構を解除し、
前記外構造体を前記回転体駆動軸に対して垂直上方向に持ち上げ、
前記外構造体を前記回転体駆動軸方向に移動させる、ことを特徴とした回転体取外し方法。
【請求項5】
前記回転体の内構造体と外構造体を締結しているボルトを取り外し、前記外構造体を前記内構造体に対し半時計周りに凹凸構造がぶつかるまで回転することで解除する請求項4に記載の回転体取外し方法。
【請求項6】
前記回転体の内構造体と外構造体を拘束している留め具を締結しているボルト類を取り外し、前記回転体の内構造体と外構造体を拘束している留め具を取り外すことにより解除する請求項4に記載の回転体取外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗客コンベアの移動手摺駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、従来の手摺駆動装置では、乗客コンベアの欄干部に設けられた無端状の手摺の一部を駆動軸が固定されたシーブに巻きかけ、巻きかけた手摺の一定区間に渡って手摺をシーブに押し付ける複数の押し付けローラを設け、シーブが回転する際にこの押し付けローラを設けた区間でシーブと手摺の間に生じる摩擦力により手摺を駆動するとともにそのたるみを防止するものが提案されている。また、シーブがシーブ駆動軸によって手摺の走行方向とほぼ同一方向に往復動自在に支持されており、手摺駆動時にはシーブの駆動反力により駆動力を増大させるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−219285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エスカレーター等の乗客コンベアは、その本来の機能を維持するために、顧客納入後も継続的なメンテナンスやリニューアルが必要な製品である。乗客コンベアは製品としての安全性、品質に加えて現地での据付・保全性が求められる。据付・保全性の向上は現地工数を低減し、製品コストの低減にも繋がる。乗客コンベアは、現地において移動手摺もしくはその駆動装置もしくはその一部の部品を乗客コンベア内部から取外す必要があり、取外し、取付けを容易にする必要がある。具体的には、移動手摺駆動装置の回転体は、移動手摺によって回転体駆動軸方向に拘束されているため取り外しすることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
乗客コンベアの欄干部に支持された無端状の移動手摺と、この移動手摺の一部が接触しその摩擦力で移動手摺を駆動走行させるための回転体と、チェーンを介して移動手摺駆動スプロケットが受けたトルクを回転体に伝達するための回転体駆動軸を備えた乗客コンベアの移動手摺駆動装置において、回転体を内構造体と外構造体に分割構造とする。内構造体と外構造体には凸と凹の組み合わせ機構を設けることで互いに拘束し、最終的にボルト類によって締結する。メンテナンス時には外構造体のみを取り外すこととし、ボルト類を取り外し内構造体と外構造体の拘束を解いた後、外構造体を持ち上げ移動手摺が干渉しないようにした上で、軸方向に移動し取り外す。
【発明の効果】
【0006】
乗客コンベアの移動手摺駆動装置において、回転体を内構造体と外構造体に分割し、凸と凹の組み合わせ機構を設けることにより、移動手摺駆動時には回転体の内構造体と外構造体は互いに拘束され、取外し時には回転体の内構造体と外構造体の拘束を解き、外構造体を容易に取外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る乗客コンベアの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る移動手摺駆動装置による移動手摺の駆動を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る移動手摺駆動装置の回転体の内構造体、及び外構造体を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る回転体取外し手順を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る移動手摺駆動装置の回転体の内構造体、及び外構造体を示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る回転体取外し手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例を、図を参照し説明する。
【実施例1】
【0009】
乗客コンベアは、
図1に示すように、建屋の乗降口1、2間に架設される本体枠3と、無端状に連結され、乗降口1、2間を循環移動する複数の踏段4と、本体枠3の中に設けられる機械室5に駆動機6を備えている。また、駆動機6はプーリ6aを有し、プーリ6aには駆動チェーン7が巻回される。機械室5は駆動チェーン7が巻回される第1スプロケット8aと、移動手摺駆動チェーン15が巻回される第2スプロケット8bを有してなる駆動スプロケット8を備えている。
【0010】
駆動機6等を制御する制御盤12は、機械室5に設置される。また、乗客コンベアは、本体枠上に踏段4の進行方向に沿って設けられる欄干13と、この欄干13により支持され、踏段4と同期して移動する移動手摺14とを備えている。制御盤12から出力される信号に応じて駆動機6の動力が駆動チェーン7を介して駆動スプロケット8に伝えられ、移動手摺駆動チェーン15を介して移動手摺駆動スプロケット9が固定された回転体駆動軸10に伝達される。回転体駆動軸10には移動手摺14の一部に接触している移動手摺駆動装置の回転体11が固定され、回転体11が回転することにより移動手摺14は乗降口1、2間を循環移動するように駆動する。
【0011】
回転体11は
図2に示すように、軸に固定された内構造体16とそれ以外の17の分割構造からなる。回転体11を内構造体16と外構造体17に分割し、凸と凹の組み合わせ機構を設けることにより、移動手摺駆動時には回転体11の内構造体16と外構造体17は互いに拘束され、取外し時には回転体11の内構造体16と外構造体17の拘束を解き、外構造体17を容易に取外すことができる。
【0012】
本実施例の形態では、移動手摺駆動装置は
図2に示すように移動手摺駆動軸10に拘束した回転体11を移動手摺14に接触させ移動手摺14を駆動する。回転体11は移動手摺駆動軸10に固定された内構造体16とそれ以外の外構造体17の分割構造からなる。回転体11は一般的には分割されておらず、溶接や、焼きばめ等によって回転体11が回転体駆動軸に固定されているため、回転体11を乗客コンベア外へ取外すことができない。回転体11が回転体駆動軸10から取外せる構造であったとしても、乗客コンベア内の他の部品と干渉し、乗客コンベア外に取外すことができないことがある。具体的には、回転体駆動軸10から回転体11を取外す場合、軸方向に移動する必要があるが、回転体は移動手摺14によって回転体駆動軸10方向に拘束され移動することが困難である。
図3に示すように回転体11を分割した、内構造体16と外構造体17に凸凹の組み合わせ構造を設ける。内構造体16は3つの凸形状16a、16b、16cを備える。外構造体17は凸形状17aと凹形状17bを備える。
【0013】
本実施例の形態にあっては、
図4に従ってメンテナンス時に移動手摺駆動装置の回転体11を取外す。以下
図4を参照し、取外し手順について説明する。(A)凸形状16aと凸形状17aによって回転方向の位置決めがなされた上で、凸形状16a、16b、16cによって外構造17は円周方向に拘束され、ボルト類18によって締結されている。つまり、回転体の内構造体と前記外構造体とにロック機構が設けられる。(B)作業者はボルト類18を取外し、外構造体17を内構造体16に対し半時計方向に手回しで回転させる。凸形状16bと凸形状17aによって回転方向の位置決めがなされる。(C)凸形状16cを凹形状17bに嵌め込み、外構造体17を回転体駆動軸10に対して垂直上方向に持ち上げスライドさせる。(D)外構造体17を回転体駆動軸10に対して垂直上方向にスライドさせたことによって、外構造体17は移動手摺14の拘束から外れ、外構造体17を回転体駆動軸10方向に移動し取外すことができる。外構造体17を取外すことにより、回転体と移動手摺の接触面の交換や移動手摺の交換を行うことができる。
【0014】
本実施形態によれば、移動手摺駆動時には、回転体11の内構造体16と外構造体17を互いに拘束し、回転体駆動軸10からの入力トルクを移動手摺に伝達することができる。部品交換やメンテナンス等の際に外構造体17を取り外す場合には、回転体11の内構造体16と外構造体17の拘束を開放し、回転体11の外構造体17を容易に取外すことができる。具体的には、内構造体16と外構造体17の凸形状がぶつかるまで回転方向に回転させることで、寸法等を計測しなくても所定の位置に回転方向の位置決めがなされる。
【0015】
なお、前述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【実施例2】
【0016】
次に、実施例2の移動手摺駆動装置について
図5及び
図6に基づいて説明する。
本実施例と実施例1の異なる点は、実施例1では回転体11を
図3のように内構造体16と外構造体17に分割したが、本実施例2では、
図6、
図7のように内構造体19と外構造体20に分割し、留め具21を用いて拘束する点である。内構造体19と外構造体20には留め具21を嵌め込むための凹形状19a、及び20aが設けてある。
【0017】
本実施例の形態にあっては、
図8に従ってメンテナンス時に移動手摺駆動装置の回転体11を取外す。以下
図8を参照し、取外し手順について説明する。(A)外構造体20の自重によって外構造体20の位置決めがなされた上で、内構造体19の凹形状19aと外構造体20の凹形状20aに留め具21を嵌め込み、ボルト類22によって締結することで内構造体19と外構造体20は互いに回転方向、軸方向、円周方向が拘束されている。(B)作業者はボルト類22を取外し、留め具21を取り外すことで回転体駆動軸10に対し垂直上方向の拘束を解く。(C)外構造体20を回転体駆動軸10に対して垂直上方向に持ち上げスライドさせる。(D)外構造体20を回転体駆動軸10に対して垂直上方向にスライドさせたことによって、外構造体20は移動手摺14の拘束から外れ、外構造体20を回転体駆動軸10方向に移動し取外すことができる。
【符号の説明】
【0018】
1・・・建屋の乗降口、2・・・建屋の乗降口。3・・・本体枠、4・・・踏段5・・・機械室、6・・・駆動機、6a・・・プーリ、7・・・駆動チェーン、8・・・駆動スプロケット、10・・・回転体駆動軸、11・・・回転体、12・・・制御盤、13・・・欄干、14・・・移動手摺、15・・・移動手摺駆動チェーン、16・・・内構造体、17・・・外構造体