(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記合成部は、前記加算における重み付けにおいて、前記平滑化合成比率が大きいほど前記第1の画像に対する重み付けをより大きくし、前記第2の画像に対する重み付けをより小さくすることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る画像合成装置の基本構成を示すブロック図である。
図1に示される画像合成装置10は、同一の被写体を表す、第1の画像D
1と第2の画像D
2を合成して合成画像D
3を出力するものであって、合成比率決定部1と、統計フィルタ2と、合成部3とを有する。
【0015】
合成比率決定部1は、第1の画像D
1及び第2の画像D
2の少なくとも一方の画素値に応じて画素毎に合成比率M
1を決定して出力する。
【0016】
統計フィルタ2は、各画素について当該画素の近傍領域内の画素についての合成比率M
1を重み付けした結果の中から一つの値を抽出することで平滑化合成比率M
2を生成する。
画像の個々の画素についての合成比率M
1を、それぞれ対応する画素の位置に配列することで得られる合成比率の集合を合成比率マップと言い、画像の個々の画素についての平滑化合成比率M
2を、それぞれ対応する画素の位置に配列することで得られる平滑化合成比率M
2の集合を平滑化合成比率マップと言う。
【0017】
合成部3は、平滑化合成比率M
2に応じて第1の画像D
1と第2の画像D
2を重み付けして加算する。重み付け加算で用いられる重み付け係数は、平滑化合成比率M
2によって定められる。例えば、第1の画像D
1の画素値に対する重み付け係数αが平滑化合成比率M
2に等しい値とされ、第2の画像D
2の画素値に対する重み付け係数βが1から平滑化合成比率M
2を引いた値(1−M
2)に等しい値とされる。
【0018】
統計フィルタ2は例えば最大値フィルタ又は最小値フィルタである。最大値フィルタは、各画素について当該画素の近傍領域内の画素についての合成比率M
1を重み付けした結果の最大値を抽出する。最小値フィルタは、各画素について当該画素の近傍領域内の画素についての合成比率M
1を重み付けした結果の最小値を抽出する。
各画素の近傍領域は、例えば当該画素を中心とする矩形の領域である。
各画素についての平滑化合成比率M
2を生成する際の重み付けにおいては、当該画素により近い画素についての合成比率M
1に、より大きい重みが付けられる。
【0019】
合成比率決定部1における合成比率M
1の決定及び統計フィルタ2における平滑化合成比率M
2の生成は画素毎の処理であり、合成比率M
1及び平滑化合成比率M
2は画素毎に生成される。各画素の位置(画像内に位置を表す座標)をxで表し、各画素の合成比率M
1及び平滑化合成比率M
2を、それぞれM
1(x)及びM
2(x)で表す。同様に、合成部3における合成は、画素毎の処理であり、画像D
1及びD
2の各画素の画素値をD
1(x)及びD
2(x)で表し、合成画像D
3の各画素の画素値をD
3(x)で表す。
【0020】
実施の形態1.
図2は本発明の実施の形態1に係る画像処理装置を撮像装置とともに示すブロック図である。
図2に示される画像処理装置は、
図1に示される画像合成装置をHDR合成処理に適用したものである。即ち、
図2の画像処理装置は、
図1の画像合成装置10の具体的な形態である画像合成装置10aと、第1及び第2のレベル正規化部11及び12とを有し、撮像装置14aからの画像D
11及びD
12を受ける。
【0021】
図2に示される撮像装置14aは、同一の被写体を2つの互いに異なる露光条件、例えば、異なる露光時間で撮像し、短露光時間画像D
11及び長露光時間画像D
12を出力する。
例えば、短露光時間画像D
11は、より短い露光時間での撮像で得られた画像であり、長露光時間画像D
12は、より長い露光時間での撮像で得られた画像である。
【0022】
撮像装置14aは、例えば、露光時間を個別に設定可能な複数のセンサを搭載したものであり、複数のセンサの露光時間を異ならせ、略同じ時刻に同一の被写体を撮像することで短露光時間画像D
11及び長露光時間画像D
12を出力する。複数のセンサは、光学系を共有していてもよいし、センサ毎に別個の光学系を有してもよい。いずれの場合にも、複数のセンサ間で光軸が異なっており、その結果、短露光時間画像D
11と長露光時間画像D
12は視差による位置ずれを有する。視差による位置ずれはセンサ間の隔たりと、撮像装置14aから被写体までの奥行き距離とに依存する。
【0023】
短露光時間画像D
11及び長露光時間画像D
12を撮像する撮像装置14aは、上記の構成に限定されるものではない。例えば、同一の光学系を有する単一のセンサで、異なる露光時間の画像対を、相前後して即ち時分割で撮像する装置であってもよい。この場合にも、撮像装置14aが移動している場合には、異なる露光時間の画像を撮像する際の撮像装置14aの位置が異なることになるため、上記と同様の視差が発生し得る。以上のように、実施の形態1に係る画像処理装置は、同一の被写体を異なる露光時間で撮像した二枚の画像を入力とするものであって、この二枚の画像が視差による位置ずれを有する場合を想定する。
但し、本発明は、視差以外の要因によって画像間に位置ずれがある場合、例えば被写体の動きによって位置ずれがある場合にも有効に作用する。
【0024】
第1及び第2のレベル正規化部11及び12は、撮像装置14aから短露光時間画像D
11及び長露光時間画像D
12を受け、短露光時間画像D
11及び長露光時間画像D
12の画素値D
11(x)及びD
12(x)を正規化して、正規化後の画素値D
1(x)及びD
2(x)から成る画像をそれぞれ第1の画像D
1及び第2の画像D
2として出力する。レベル正規化部11及び12は、被写体の同一部分についての正規化後の画素値D
1(x)及びD
2(x)が互いに略同じになるように正規化を行う。正規化は、例えば、短露光時間画像D
11及び長露光時間画像D
12を撮像した撮像装置14aにおける受光素子の感度、アナログゲイン、露光時間等の情報を使って、各画像の画素値を被写体の対応する部分の放射輝度に相当する値に変換することによって行われる。
【0025】
このような正規化は例えば、受光素子の感度、アナログゲイン、露光時間等を考慮に入れた総合ゲイン(画像D
11及びD
12を生成するまでの総合ゲイン)に基づいて行うことができる。例えば、長露光時間画像D
12の総合ゲインが短露光時間画像D
11の総合ゲインのFc倍であれば、短露光時間画像D
11の画素値D
11(x)をFc/Fd倍し、長露光時間画像D
12の画素値D
12(x)を1/Fd倍することで正規化を行うことができる。ここで、Fdは予め定められた調整値である。一例としてFc=4、Fd=2の場合について正規化前の画素値D
11(x)及びD
12(x)と、正規化後の画素値D
1(x)及びD
2(x)を
図3に示す。
図3で横軸は、被写体の放射輝度である。
【0026】
長露光時間画像D
12の総合ゲインは、短露光時間画像D
11の総合ゲインのFc倍であるので、短露光時間画像D
11の画素値D
11(x)が飽和する放射輝度Yaの1/Fcの放射輝度Yb(=Ya/Fc)で、長露光時間画像D
12の画素値D
12(x)が飽和する。ここで飽和するとは、画素値が、取り得る値の範囲の上限値(8ビットであれば255)に達することをいう。正規化の結果得られる画像D
2においても、飽和の影響が残り、該放射輝度Yb以上の範囲では、正規化の結果得られる画像D
2の画素値D
2(x)は一定の値となる。正規化前の画像の飽和により正規化後の画像が一定の値に制限されていることを、正規化後の画像についての飽和と言う。
【0027】
上記の正規化を行うため、レベル正規化部11には、撮像装置14aから総合ゲインの比Fcを示す情報が供給される。一方、調整値Fdを示す情報は、レベル正規化部11及び12内に予め記憶されている。
なお、Fd=1であるのが正規化の計算が容易であるので望ましいが、Fd=1でなくても良い。
なおまた、正規化の結果得られる画像D
1及びD
2の画素値D
1(x)及びD
2(x)は、正規化によって階調が落ちないようにするため、ビット数を拡張したデータ、或いは実数型のデータで表されるのが望ましい。
【0028】
このように、正規化後のデータがビット数を拡張したデータである場合、合成部3でもそのようなデータを用いて合成を行い、合成部3から出力される合成画像も同様のデータで表される。その場合、合成部3の出力側に正規化解除部(図示しない)を設け、該正規化解除部で、データを元のビット数のデータ(レベル正規化部に入力されたデータと同じビット数のデータ)に戻す処理を行うこととしても良い。
【0029】
実施の形態1では、
図1の合成比率決定部1の具体例として、合成比率決定部1aが設けられ、
図1の統計フィルタ2の具体例として、最大値フィルタ2aが設けられている。
【0030】
合成比率決定部1aは、第1の画像D
1の画素値と総合ゲインの比Fcとに基づいて画素毎に合成比率M
1を決定して出力する。合成比率決定部1aは、輝度算出部101と合成比率算出部102とを有する。
【0031】
輝度算出部101は、第1の画像D
1から被写体の輝度に相当する値である輝度参照値D
101を算出する。輝度算出部101は、第1の画像D
1がカラー画像である場合には、カラー画像の各成分(RGB等)から輝度値に相当する成分を抽出し、輝度参照値として出力する。輝度参照値D
101は、例えば8ビットで表され、短露光時間画像D
11の画素値D
11(x)が飽和するとき、輝度参照値D
101はその上限値である255となる。短露光時間画像D
11がモノクロ画像であり、レベル正規化部11による正規化が輝度参照値への変換を含む場合は、輝度算出部101を省略してもよい。
【0032】
合成比率算出部102は、輝度参照値D
101と総合ゲインの比Fcとに応じて、合成比率M
1を算出する。合成比率算出部102は、輝度参照値D
101が小さい(被写体が暗い)ほどより小さくなり、輝度参照値D
101が大きい(被写体が明るい)ほどより大きくなるように合成比率M
1を算出する。
【0033】
次式(1)は、輝度参照値D
101に応じた合成比率M
1の算出例を示す。
【数1】
式(1)でTH
bright及びTH
darkは閾値である。
閾値TH
brightは、後述のように、総合ゲインの比Fcに基づいて定められる。
閾値TH
darkは、後述のようにノイズのレベルに基づいて定められる。
【0034】
図4に、横軸に輝度参照値D
101、縦軸に合成比率M
1をとったグラフを示す。式(1)及び
図4に示す例では、
輝度参照値D
101が閾値TH
bright以上では、合成比率M
1が1となり、
輝度参照値D
101が閾値TH
dark以下では、合成比率M
1が0となり、
輝度参照値D
101が閾値TH
darkよりも大きく閾値TH
brightよりも小さい範囲では、合成比率M
1が輝度参照値D
101に応じて徐々に増加する。
【0035】
後述のように、合成比率M
1に対してフィルタリングを施すことで、平滑化合成比率M
2が得られ、平滑化合成比率M
2が大きいほど、第1の画像に対する重み付けがより大きくなり、第2の画像に対する重み付けがより小さくなる。従って、合成比率M
1は、画像の合成における重み付けを(間接的に)定めるものであると言える。
【0036】
すなわち、最大値フィルタ2aによる平滑化を無視すれば、合成比率M
1が1となると、第1の画像D
1に対する重み付け係数αが1、第2の画像D
2に対する重み付け係数βが0となり、合成比率M
1が0となると、第1の画像D
1に対する重み付け係数αが0、第2の画像D
2に対する重み付け係数βが1となる。
【0037】
従って、輝度参照値D
101が閾値TH
bright以上の明るい被写体部分では、合成比率M
1が1となって、短露光時間画像D
11に由来する第1の画像D
1が採用され、輝度参照値D
101が閾値TH
dark以下の暗い被写体部分では、合成比率M
1が0となって、長露光時間画像D
12に由来する第2の画像D
2が採用され、輝度参照値D
101が閾値TH
darkよりも大きく閾値TH
brightよりも小さい範囲である、中間の明るさの被写体部分では、合成比率M
1が0よりも大きく1よりも小さくなって、短露光時間画像D
11に由来する第1の画像D
1と長露光時間画像D
12に由来する第2の画像D
2とがブレンドされる。
【0038】
閾値TH
brightは、第2の画像D
2の画素値が飽和しているか否かの判断に用いられる閾値であり、当該輝度参照値D
101が当該閾値以上であれば、第2の画像D
2の画素値は飽和していると判断される。閾値TH
brightは、「飽和閾値」と呼ばれるものである。輝度参照値D
101が飽和閾値TH
bright以上となる場合には合成比率M
1が1とされる。
【0039】
例えば、長露光時間画像D
12の総合ゲインが短露光時間画像D
11の総合ゲインのFc倍であれば、短露光時間画像D
11の画素値D
11(x)が飽和する(上限値に達する)ときの輝度参照値D
101の1/Fc又はこれより若干小さい値を飽和閾値TH
brightとすることができる。例えば、短露光時間画像D
11の画素値D
11(x)が飽和するときの輝度参照値D
101の1/Fcの95%以上100%以下の値を、飽和閾値TH
brightとして設定する。以下では、短露光時間画像D
11の画素値D
11(x)が飽和するときの輝度参照値D
101の1/Fcに等しい値が、飽和閾値TH
brightとして設定されているものとする。
【0040】
閾値TH
darkは、閾値TH
brightよりも小さい値で、かつ、短露光時間画像D
11において黒つぶれしている部分の画素値に対応する輝度参照値D
101よりも十分に大きな値となるように定められる。例えば、画像に含まれるノイズのレベルに等しい値を黒つぶれしている部分の画素値I
darkとして特定し、黒つぶれしている部分の画素値に対応する輝度参照値D
101(すなわち、Fc/Fd×I
dark)と閾値TH
brightの中間の値を閾値TH
darkとする。ノイズのレベルとしては、照明条件等の使用環境に応じて予め想定される値を用いても良い。また、撮像された画像から測定することで得られるノイズのレベルを表す値を用いても良い。
【0041】
閾値TH
darkを閾値TH
brightに近づけて大きい値にすると、短露光時間画像D
11と長露光時間画像D
12がブレンドされる領域が減少するので二重像が発生しにくくなる。一方、レベル正規化部による輝度合わせの精度が十分でない場合に、短露光時間画像D
11と長露光時間画像D
12が急に切り替わって階調が不連続となって切り替わり部分で合成画像が不自然となる場合がある。
【0042】
閾値TH
darkを閾値TH
brightから遠ざけて小さい値にすることで、短露光時間画像D
11と長露光時間画像D
12がブレンドされる領域が増加させることで階調が不連続になることを防止できる。本実施の形態においては、レベル正規化部による輝度合わせが十分な精度で行われるものとみなし、かつ、二重像への対策を最大値フィルタ2aにおいて行っているので、閾値TH
darkを大きめの値に設定するのが望ましい。
【0043】
合成比率算出部102は、上記のように定められた閾値TH
bright及びTH
darkを上記の式(1)の計算に用いる。
合成比率決定部1aは、合成比率算出部102で算出された合成比率M
1を出力する。
【0044】
最大値フィルタ2aは、各画素について当該画素の近傍領域内の画素についての合成比率を重み付けした結果の最大値を抽出することで平滑化合成比率M
2を生成する。平滑化合成比率M
2も画素毎に生成される。
【0045】
図5(a)〜(c)及び
図6(a)〜(c)を用いて、
図2の最大値フィルタ2aの動作について説明する。
図5(a)〜(c)は、比較のため、従来の線形フィルタの動作を示し、
図6(a)〜(c)は最大値フィルタ2aの動作を示す。
図5(a)〜(c)及び
図6(a)〜(c)では、簡単のために、入出力値及びフィルタ係数を一次元のデータ列として、即ち、一次元に配列された画素についての値であるものとしている。
【0046】
図5(a)及び
図6(a)に示される入力値は、合成比率M
1を表し、
図5(c)及び
図6(c)に示される出力値は合成比率M
1を平滑化することで得られる平滑化合成比率M
2lin及びM
2を表す。合成比率M
1並びに平滑化合成比率M
2lin及びM
2は、0から1までの範囲内の値であるが、
図5(a)及び(c)並びに
図6(a)及び(c)には、合成比率M
1並びに平滑化合成比率M
2lin及びM
2に1より大きい値、例えば256を掛けた数値を示している。
【0047】
従来の線形フィルタでは、注目画素の近傍領域内の画素についての入力値(合成比率M
1:
図5(a))をフィルタ係数(
図5(b))で乗算したのち、乗算結果の和をとることによって、当該注目画素についてのフィルタの出力値(平滑化合成比率M
2lin:
図5(c))を算出する。フィルタ係数(
図5(b))は、係数の和が1となるように正規化されている。すなわち、線形フィルタの入出力関係は次式(2)により表わされる。
【数2】
【0048】
式(2)で、xは注目画素の位置(座標)、kは注目画素の近傍領域内の画素の、注目画素に対する相対位置(注目画素の位置を基準とする局所座標)、M
1(k)は相対位置kの画素についての入力値(合成比率)である。合成比率M
1(x)のうち、注目画素近傍の領域内の画素についての合成比率M
1(x)が合成比率M
1(k)として用いられる。M
2lin(x)は線形フィルタの出力値(注目画素についての平滑化合成比率)、w(k)は相対位置kの画素についての合成比率M
1(k)に対する重み付けのためのフィルタ係数、N
xは注目画素の近傍領域内の画素の集合を表す。
【0049】
最大値フィルタ2aは、注目画素の近傍領域内の画素についての入力値(合成比率M
1:
図6(a))をフィルタ係数(
図6(b))で乗算する点では線形フィルタと同様であるが、乗算結果の最大値を当該注目画素についてのフィルタの出力値(平滑化合成比率M
2:
図6(c))として採用する点が線形フィルタと異なる。また、フィルタ係数(
図6(b))は、係数の最大値が1となるように正規化されている。すなわち、最大値フィルタ2aの入出力関係は次式(3)により表わされる。
【数3】
【0050】
式(3)で、xは注目画素の位置(座標)、kは注目画素の近傍領域内の画素の、注目画素に対する相対位置(注目画素の位置を基準とする局所座標)、M
1(x)は相対位置kの画素についての入力値(合成比率)である。合成比率M
1(x)のうち、注目画素近傍の領域内の画素についての合成比率M
1(x)が合成比率M
1(k)として用いられる。M
2(x)は最大値フィルタ2aの出力値(注目画素についての平滑化合成比率)、w(k)は相対位置kの画素についての合成比率M
1(k)に対する重み付けのためのフィルタ係数、N
xは注目画素の近傍領域内の画素の集合を表す。
【0051】
フィルタ係数w(k)は、例えば、注目画素により近い画素についての合成比率により大きい重みが付けられ、かつ、注目画素からの距離が大きくなるにつれて当該画素についての合成比率に対する重み付けが徐々に小さくなるように定められる。
【0052】
フィルタ係数w(k)としては、例えば、式(4)に示すようなガウス関数で定められるものを用いても良い。
【数4】
式(4)において、σはガウス関数の標準偏差を表す。σの値は、注目画素の近傍領域のサイズに応じて定められる値であり、例えば、近傍領域のサイズをrとすると、3σ=rとなるように定めることができる。ここで言う「サイズ」は、画素が一次元に配列されたものである場合には、その長さの1/2である。画素が二次元に配列されたものである場合には、その中心からその周縁部までの平均的な距離を、上記のサイズとして用いることができる。
【0053】
フィルタ係数として、式(4)で定められるものの代わりに式(5)で定められるものを用いても良い。
【数5】
式(5)において、r
1、r
2はフィルタ係数の重み係数の分布の広がりを制御する値である。式(5)によれば、注目画素からの距離がr
1より小さい画素については重み付けが1となり、注目画素からの距離がr
1よりも大きい画素については、該距離が大きくなるにつれ徐々に減少し、注目画素からの距離がr
2に達すると重み付けがゼロとなるような特性のフィルタ係数が得られる。
【0054】
近傍領域内の画素の集合N
xに含まれる画素の数(フィルタサイズ)は、合成対象画像間の位置ずれに対する許容量を決定する。例えば、合成処理を行う前に実施する位置合わせ処理の精度や、撮像装置14aを構成する複数のセンサ間の隔たりや時間差(時分割で撮像を行う場合)等の事前に得られる情報から位置ずれ量を予測し、予測される位置ずれが大きいほど、フィルタサイズをより大きく設定し、予測される位置ずれが小さいほど、フィルタサイズをより小さく設定する。位置ずれの要因が合成対象画像間の視差のみであり、かつ、撮像装置14aから被写体までの奥行き距離に関する情報が得られる場合には、該奥行距離に関する情報を使ってフィルタサイズを動的に、即ち撮像装置14aから出力される撮像画像毎に変更しても良い。
【0055】
上記のように、入力値に対してフィルタ係数で重み付けを行った結果の和を出力とする処理を「線形フィルタを適用する」と言い、入力値に対してフィルタ係数で重み付けを行った結果の最大値を出力とする処理を「最大値フィルタを適用する」と言う。
【0056】
なお、
図5(a)〜(c)及び
図6(a)〜(c)ではフィルタ係数を一次元として、一元に配列された画素を用いてフィルタを適用する処理を説明したが、二次元のフィルタ係数を用いる場合であっても上記と同様の効果が得られる。
【0057】
二次元のフィルタ係数が二組の一次元のフィルタ係数の積で表現できる(二次元のフィルタ係数が分離可能である)場合には、一次元のフィルタを二回適用する(水平方向について一次元のフィルタを適用してから、垂直方向について一次元のフィルタを適用する等)ことにより、二次元のフィルタ係数を適用した場合と等価な結果を得ることができる。この場合、最大値フィルタ2aを、二つの一次元フィルタの組み合わせにより構成することができる。
【0058】
また、大きな位置ずれを許容するためにフィルタサイズを大きくする場合、処理時間の増加を抑えるために、合成比率マップを縮小し、縮小マップに対して最大値フィルタを適用した後、拡大して元のサイズに戻すようにしてもよい。
【0059】
以上の合成比率M
1及び平滑化合成比率M
2の算出は、上記のように、画素毎に行われ、その結果、各画素についての平滑化合成比率M
2が算出される。各画素についての平滑化合成比率をM
2(x)で表す。
【0060】
合成部3は、平滑化合成比率M
2で定められる重み付け係数α、βを用いて第1の画像D
1と第2の画像D
2を重み付けして加算する。重み付け加算は、画素毎に行われるものであり、次式(6)により表わされる。
【数6】
【0061】
式(6)で、xは画素位置、D
1(x)は第1の画像D
1の位置xの画素の画素値、D
2(x)は第2の画像D
2の位置xの画素の画素値、α(x)は第1の画像D
1の位置xの画素についての重み付け係数、β(x)は第2の画像D
2の位置xの画素についての重み付け係数、M
2(x)は位置xの画素についての平滑化合成比率を表す。
【0062】
実施の形態1による効果を説明する。実施の形態1に係る画像合成装置では、第1の画像D
1の各画素についての輝度参照値D
101と総合ゲインの比Fcとから定められた合成比率M
1を、最大値フィルタ2aで平滑化し、平滑化合成比率M
2を用いて二画像を合成するようにした。最大値フィルタ2aを用いているので、第1の画像に対する重み付け係数αと第2の画像に対する重み付け係数βのうち、一方がより大きい状態から他方がより大きい状態に移行する部分、即ち、二画像が切り替わる部分が、第1及び第2の画像におけるエッジをまたがない。その結果、位置ずれがあっても二重像が目立たない。この効果について
図7(a)〜(h)を用いて説明する。
【0063】
図7(a)及び(b)は、それぞれ、第1の画像D
1及び第2の画像D
2について、横軸に画素位置、縦軸に画素値をとったラインプロファイルを表しており、同一のステップエッジが画像間でわずかな位置ずれを有している場合を想定する。
【0064】
図7(c)は、第1の画像D
1に基づいて合成比率決定部1aで決定された合成比率M
1のラインプロファイルを表す。合成比率M
1は、第1の画像D
1が明るい箇所で大きくなり、第1の画像D
1が暗い箇所で小さくなる特性を有する。
【0065】
図7(d)及び(e)は、それぞれ、合成比率M
1を線形フィルタ及び最大値フィルタ2aで平滑化した場合の平滑化合成比率のラインプロファイルを実線で表す。従来の線形フィルタによる平滑化合成比率をM
2lin、
図2の最大値フィルタ2aによる平滑化合成比率をM
2で示す。点線は、平滑化する前の合成比率M
1のプロファイルを示す。
【0066】
従来の線形フィルタでは、
図7(d)に示すように、平滑化合成比率M
2linが、合成比率M
1のステップエッジの中心の一方の側と他方の側とで、向きが逆である点を除き、同様に滑らかに変化し、平滑化合成比率M
2linを表す曲線が、合成比率M
1のステップエッジの中心を中心として点対称の滑らかな曲線となる。そして、平滑化合成比率M
2linが変化する部分(変化の開始から終了までの部分)、即ち、二画像の切り替わり部分(ブレンド領域)BL
linがエッジをまたぐことになる。
【0067】
これに対し、
図2の最大値フィルタ2aでは、合成比率M
1の大きい範囲が小さい側へ膨張するように平滑化が行われる。その結果、平滑化合成比率M
2は、
図7(e)に示すように、滑らかに変化するものとなるだけでなく、該変化する部分、即ち、二画像の切り替わり部分(ブレンド領域)BLmaxがステップエッジの中心位置から合成比率M
1の小さい側に移動し、エッジをまたがないようにすることができる。
【0068】
図7(f)、(g)及び(h)は、それぞれ、合成比率M
1、M
2lin及びM
2を用いて第1の画像D
1と第2の画像D
2を合成した合成画像D
3のラインプロファイルを表す。
【0069】
平滑化なしの合成比率M
1を用いて合成した場合には、第1の画像D
1と第2の画像D
2の間でステップエッジがわずかな位置ずれを有しているため、合成画像D
3においては、
図7(f)に示すように、両者の画像のステップエッジが二重に現れる二重像のアーティファクトを生じる。
【0070】
従来の線形フィルタで平滑化した合成比率M
2linを用いて合成した場合には、
図7(g)に示すように、平滑化なしの合成比率M
1を用いて合成した場合に比べると二重像のアーティファクトは緩和されているものの、エッジにおける画素値の遷移が滑らかではなく、合成画像の画質を損ねる原因となる。とくに、従来の線形フィルタでは、二画像の切り替わり部分(ブレンド領域)がエッジをまたいでいるため、エッジ部分が二重像の影響を受けやすい。
【0071】
図2の最大値フィルタ2aで平滑化した合成比率M
2を用いて合成した場合には、
図7(h)に示すように、エッジ部分では第1の画像D
1のエッジが合成画像D
3にそのまま採用されるため、合成による二重像のアーティファクトを回避することができる。
【0072】
以上で説明した最大値フィルタを用いることによる効果は、合成対象画像間の視差が原因である二画像の位置ずれのように、位置ずれによる合成のアーティファクトがエッジの近傍で発生する状況においてとくに有効である。なぜなら、合成対象画像間に視差がある場合には、撮像装置14aから被写体までの奥行き距離に対応して位置ずれが発生するため、異なる奥行き距離にある被写体間の境界、すなわち、奥行きエッジで位置ずれが発生する。このような奥行きエッジは、明暗のコントラストが高い場合が多く、合成により二重像が発生すると目立つ。とくに、暗い背景に対して明るい被写体のエッジが手前にある場合、或いは明るい背景に対して暗い被写体のエッジが手前にある場合、エッジの位置ずれによる二重像の影響が合成画像の暗い側に現れると目障りなアーティファクトとなる。本実施の形態では、最大値フィルタを用いて合成比率を平滑化することにより、エッジの中心位置からフィルタサイズにより決定される位置ずれ許容量までの範囲では二画像の切り替えが起きないようにしたので、このような奥行きエッジも単一画像のエッジと同様に自然に(違和感なく)再現できる。また、二画像の切り替わり部分(ブレンド領域)BLmaxは暗い側に移動しており、比較的コントラストの低い領域で滑らかに切り替えが行われるため目立ちにくい。
【0073】
以上のように、本実施の形態によれば、二画像の切り替わり部分がエッジをまたがないため、合成対象画像間に視差によるエッジの位置ずれがあっても、二重像などの画質劣化を抑えることができる。また、二画像の合成比率を滑らかに変化させることができるので、二画像の切り替わり部分が自然な(違和感のない)合成画像を生成することができる。
【0074】
次に、長露光時間画像D
12乃至第2の画像D
2が飽和画素を含んでいる場合において最大値フィルタを用いることによる、更なる効果を説明する。実施の形態1に係る画像処理装置では、輝度参照値D
101が、飽和閾値TH
bright以上、即ち、第2の画像D
2で飽和している画素の輝度に対応する値以上となる場合には、合成比率M
1を1とし、第1の画像D
1に対する重み付け係数αが1、第2の画像D
2に対する重み付け係数βが0となるようにした。これにより、第2の画像D
2で飽和している画素及びその周辺の画素が混入することによる合成画像の画質劣化を防止することができる。
【0075】
明暗差が大きなシーンの場合には、暗部の視認性を十分に確保するため長露光時間画像D
12の露光時間を長くして撮影することが考えられる。このような場合、長露光時間画像D
12乃至第2の画像D
2は、明部において多くの飽和画素を含んだ画像になる。飽和している画素を含む画像領域は、明るいがディテールの失われた領域である。飽和している画素が合成画像に混入すると、不自然な合成画像になる。一方、合成比率決定部1aで輝度参照値D
101に基づいて決定された合成比率M
1をそのまま用いて画像合成を行うとすれば、第2の画像D
2の位置がずれている場合、飽和している画素が合成画像に混入することがある。
【0076】
また、撮像素子がCCD(Charge Coupled Device)である場合には、飽和画素の周辺の画素が、本来あるべき明るさよりも明るくなる現象が発生することがある(スミアやブルーミング等)。このような飽和画素の周辺の画素の影響も、合成によるアーティファクトの一因となる。
【0077】
図2の最大値フィルタ2aによれば、第1の画像D
1をもとに生成された輝度参照値D
101が、第2の画像D
2において画素値が飽和している画素の輝度以上になったことを検出し、第2の画像D
2において、飽和している画素から、フィルタサイズにより決定される位置ずれ許容量までの範囲では平滑化合成比率M
2を1とし、これにより第2の画像D
2において、飽和している画素の近傍の領域では二画像の切り替えをせず、第1の画像D
1を用いるようにした。そのため、第2の画像D
2の位置ずれや飽和画素の周辺の画素の影響をなくすことができる。これにより、第2の画像D
2で飽和している画素及びその周辺の画素が混入することによる合成画像の画質劣化を防止することができる。
【0078】
なお、実施の形態1に係る画像合成装置においては、レベル正規化部11及び12の少なくとも一方において、係数の乗算により正規化を行なっているが、上記の正規化が、係数の乗算の代わりに、或いはそれに加えてオフセットの加減算及びガンマ補正などの非線形な変換の少なくとも一つを含んでもよい。
この場合には、それらによる影響を考慮に入れて、長露光時間画像D
12が飽和するときの、輝度参照値D
101又はそれよりも若干小さい値を閾値TH
brightとする。
【0079】
また、実施の形態1に係る画像合成装置においては、レベル正規化部11に総合ゲインの比Fcを示す情報が供給されるが、上記の正規化が、係数の乗算の代わりに、或いはそれに加えてオフセットの加減算及びガンマ補正などの非線形な変換の少なくとも一つを含む場合、係数、オフセット、及びガンマ補正の変換特性のうちの上記の正規化に用いられるものを示す情報をレベル正規化部11及び12の少なくとも一方に供給するようにしても良い。
【0080】
また、実施の形態1に係る画像合成装置においては、第1の画像D
1を標準的な露光時間で撮影することで得られた画像D
11に対応するものである場合を想定し、該第1の画像D
1を基準画像として、第1の画像D
1から輝度参照値D
101を求めることとしたが、本発明はこの構成に限るものではない。飽和している画素及びその周辺の画素の混入を回避する観点からは、例えば、輝度参照値D
101を第2の画像D
2から求めてもよいし、第1の画像D
1と第2の画像D
2の組み合わせから求めてもよい。これらの場合であっても、最大値フィルタを用いることによる効果を得ることができる。
【0081】
なおまた、実施の形態1に係る画像合成装置で用いられている最大値フィルタは、フィルタ係数を分離可能である場合に、一次元の最大値フィルタを二回適用する(水平方向について最大値フィルタを適用してから、垂直方向について最大値フィルタを適用する等)ことによって実現できるため、大きな位置ずれを想定してフィルタサイズを大きくする場合であっても、ソフトウェア等で実行する場合の処理時間の増加を抑えることができる。また、LSI等のハードウェアで実行する場合には回路規模の増加を抑えることができる。
【0082】
さらにまた、合成比率マップを縮小し、縮小マップに対して最大値フィルタを適用した後、拡大して元のサイズに戻すようにすれば、大きな位置ずれを想定してフィルタサイズを大きくする場合であっても、ソフトウェア等で実行する場合の処理時間の増加を抑えることができる。しかしながら、合成比率マップの縮小を行う場合、合成比率M
1が大きい値である領域の面積が小さいと、縮小処理により当該領域が収縮し、その結果、合成比率M
1が所望の値より小さい値となり効果を得られなくなる可能性がある。すなわち、長露光時間画像D
12の小さな飽和領域が合成画像D
3に用いられてディテールが失われてしまうことがある。この点を考慮した場合、本実施の形態1では、合成比率マップの縮小を行わずに最大値フィルタを適用することが望ましい。
本実施の形態1では、最大値フィルタにおいて、注目画素により近い画素についての合成比率M
1により大きい重みが付けられた結果の最大値を抽出するようにしている。そのため、合成比率マップの縮小を行わなくても、上記の境界で滑らかに変化する平滑化合成比率M
2を得ることができ、しかもエッジの位置ずれがあっても二重像などの画質劣化を抑えることができる。したがって、長露光時間画像に小さな飽和領域が存在しても合成画像で確実に短露光時間画像が用いられてディテールの喪失を抑制できるとともに、二画像の切り替わり部分が自然な合成画像を生成することができる。
また同時に、上述したように、二次元のフィルタを一次元のフィルタを二回適用することで実現することができ、合成比率マップの縮小を行わなくても、処理時間の増加を抑えることが可能である。
【0083】
以上で説明してきたように、実施の形態1によれば、露光条件、例えば露光時間が異なる複数の画像を合成して、白とびがなく暗部の視認性に優れた、ダイナミックレンジの広い画像を生成することができるとともに、二画像の切り替わり部分が不自然にならず、合成対象画像間に位置ずれがある場合に二重像などの画質劣化を抑えた合成画像を生成することができる。
【0084】
実施の形態2.
図8は本発明の実施の形態2に係る画像処理装置を撮像装置とともに示すブロック図である。
図8に示される画像処理装置は、
図1に示される画像合成装置を、デコンボリューション処理を施した画像を用いた画像の合成に適用したものである。
【0085】
図8に示される撮像装置14bは、
図2に示される撮像装置14aとは異なり、単一の露光条件での撮像で得られた画像を出力する。
【0086】
図8に示される画像処理装置は、
図2の画像処理装置と概して同じであるが、
図2の画像合成装置10aの代わりに画像合成装置10bが設けられ、
図2のレベル正規化部11及び12が設けられておらず、デコンボリューション処理部13が設けられている。画像合成装置10bは
図2の画像合成装置10aと概して同じであるが、
図2の合成比率決定部1aの代わりに、合成比率決定部1bが設けられている。
別の見方をすれば、
図8に示される画像処理装置は、
図1に示す画像合成装置において、合成比率決定部1として、合成比率決定部1bを用い、統計フィルタ2として最大値フィルタ2aを用い、そのような画像合成装置に、デコンボリューション処理部13が追加されたものである。
【0087】
図8に示される画像処理装置は、撮像装置14bから出力される撮像画像を、第1の画像D
1として受け取る。
【0088】
デコンボリューション処理部13は、第1の画像D
1を入力画像とし、入力画像のぼけ及びぶれを補正し、鮮鋭さを向上させた補正画像を第2の画像D
2として出力する。
デコンボリューションとしては公知の種々のデコンボリューション手法のいずれかを適用することができる。PSF(Point Spread Function:点拡がり関数)が既知である場合に単純かつ高速なデコンボリューション手法は、周波数領域でのフィルタリング処理を用いる方法である。この方法では、第1の画像D
1をフーリエ変換し、フーリエ変換の結果に対し、PSFからウィーナーフィルタ等により求められる周波数領域のフィルタ係数を乗算し、乗算結果を逆フーリエ変換することによって第2の画像D
2を得る。
【0089】
合成比率決定部1bは、画素毎に合成比率を決定して出力する点で実施の形態1の合成比率決定部1aと同じである。しかしながら以下の点で異なる。即ち、合成比率決定部1bは、合成比率M
1の決定に総合ゲインの比Fcを用いず、第1の画像D
1の画素値に基づいて合成比率M
1を決定する。合成比率決定部1bは、飽和画素検出部111と合成比率算出部112とを有する。
【0090】
飽和画素検出部111は、第1の画像D
1の画素値に対する閾値処理により飽和している画素を検出し、飽和画素検出結果D
111として出力する。ここで言う閾値処理においては、第1の画像D
1の各画素の画素値が、取り得る値の上限値に近い閾値TH
sat以上であれば、当該画素は飽和していると判断される。上限値に近い閾値TH
satは、例えば、上限値の95%以上100%以下に設定される。
【0091】
合成比率算出部112は、飽和画素検出結果D
111から、合成比率M
1を算出して出力する。具体的には、第1の画像D
1において飽和している画素については合成比率M
1を1にし、そうでない画素については合成比率M
1を0にする。
合成比率決定部1bは、合成比率算出部102で算出された合成比率M
1を出力する。
【0092】
次式(7)は、合成比率決定部1bに入力される第1の画像D
1の画素値D
1(x)と、合成比率決定部1bから出力される合成比率M
1との関係を示す。
【数7】
式(7)でTH
satは、飽和画素検出部111で用いられる閾値である。
【0093】
最大値フィルタ2a及び合成部3の構成及び動作は実施の形態1と同様である。
【0094】
実施の形態2による効果を説明する。
デコンボリューション処理部13において公知のデコンボリューションを行うと、入力画像に飽和画素が含まれる場合に、補正画像においては入力画像における飽和画素に対応する位置の周囲にリンギングと呼ばれる縞状のアーティファクトを生じることがある。これは、飽和という現象が、所定の光量を超えた信号の画素値は上限値にクリップされるという非線形な過程である一方、公知のデコンボリューション手法の多くは、PSFによって画像がぼける線形なモデルに基づく補正をしており、PSFで用いるモデルのぼけ方と異なるぼけ方をしている飽和画素の周辺で補正誤差が現れるためである。リンギングは、飽和画素の近傍で振幅が大きく、飽和画素から離れていくにつれ振幅が減衰していく特性をもつ。
【0095】
実施の形態2に係る画像合成装置では、合成比率決定部1bにおいて、デコンボリューション処理を施す前の第1の画像D
1において飽和している画素を検出し、飽和している画素においては合成比率M
1を1とし、そうでない画素については合成比率M
1を0とし、これにより飽和している画素においては第1の画像(入力画像)D
1が採用され、そうでない画素については第2の画像(補正画像)D
2が採用されるようにした。さらに、合成比率M
1を最大値フィルタ2aにより平滑化し、飽和している画素からフィルタサイズにより決定される位置ずれ許容量までの範囲では第1の画像D
1を採用するようにしつつ、第1の画像D
1と第2の画像D
2の切り替わり部分が滑らかになるようにした。これにより、第2の画像D
2において飽和画素の周囲に発生するリンギングを抑えることができるとともに、二画像の切り替わり部分が自然な(違和感のない)高品質な合成画像を得ることができる。
【0096】
実施の形態2に係る画像合成装置においては、基本構成は実施の形態1と同様であり、最大値フィルタ2aを用いることによる効果は実施の形態1と同様である。
【0097】
また、デコンボリューション処理では、飽和画素が占める領域の面積が小さい(例えば、1画素)場合でもリンギングは発生するため、入力画像における飽和画素とその周辺の領域においては、確実に入力画像が用いられるように合成画像を生成することが望まれる。一方、処理時間の増加を抑えて飽和画素が占める領域とそれ以外の領域との境界で滑らかに変化する平滑化合成比率M
2を得るために、合成比率マップを縮小してから最大値フィルタを適用した後、拡大して元のサイズに戻す構成を採用することが考えられる。しかしながら、合成比率マップの縮小を行う場合、飽和画素の領域の面積が小さいと、縮小処理により当該領域が収縮し、その結果、合成比率M
1が所望の値より小さい値になり、リンギングの発生した補正画像が合成画像として用いられてリンギングの抑制効果が減退することがある。
実施の形態2では、最大値フィルタにおいて、注目画素により近い画素についての合成比率M
1により大きい重みが付けられた結果の最大値を抽出するようにしている。そのため、合成比率マップの縮小を行わなくても、上記の境界で滑らかに変化する平滑化合成比率M
2を得ることができ、しかもエッジの位置ずれがあっても二重像などの画質劣化を抑えることができる。したがって、入力画像に小さな飽和領域が存在しても合成画像で確実に入力画像が用いられてリンギングを抑制できるとともに、二画像の切り替わり部分が自然な(鮮鋭さの急激な変化を抑えた)合成画像を生成することができる。
また同時に、上述したように、二次元のフィルタを一次元のフィルタを二回適用することで実現することができ、合成比率マップの縮小を行わなくても、処理時間の増加を抑えることが可能である。
【0098】
以上のように本発明の画像合成装置は、エッジや飽和画素の周囲にまで影響が及ぶ合成画像のアーティファクトを抑えて、自然な(違和感のない)合成画像を生成することができる。
【0099】
なお、実施の形態1及び実施の形態2では、第1の画像D
1に基づいて合成比率M
1を決定し、合成比率M
1が大きくなるほど第1の画像D
1に対する重み付けがより大きくなるようにし、合成比率M
1を最大値フィルタにより平滑化することで、合成画像D
3において第1の画像D
1の寄与が大きくなる領域を膨張させることで、明暗のエッジや飽和画素の周囲で第2の画像D
2の寄与が大きくなることによる影響を抑圧する効果を得ることができる。しかしながら、本発明の画像合成装置は、必ずしも最大値フィルタを用いる構成だけに限定されない。例えば、合成比率M
1が大きくなるほど第2の画像D
2に対する重み付けが大きくなるようにする場合には、合成比率M
1の増減による作用が逆となるため、同様の効果を得るために、合成画像D
3において第2の画像D
2の寄与が大きい領域を収縮させるようなフィルタを適用してもよい。領域を収縮させるフィルタとは、例えば最小値フィルタである。最小値フィルタでは、各画素について当該画素の近傍領域内の画素についての合成比率M
1を重み付けした結果の最小値を抽出する。これにより、明暗のエッジや飽和画素の周囲で第2の画像D
2の寄与が大きくなることによる影響を抑圧する効果を得ることができる。なお、最大値フィルタ及び最小値フィルタは、統計フィルタの一種である。
【0100】
以上本発明を画像合成装置及び画像処理装置として説明したが、上記の画像合成装置及び画像処理装置で実施される画像合成方法及び画像処理方法も本発明の一部を成す。
【0101】
以上
図1、
図2、及び
図8に示される画像合成装置又は画像処理装置の各部分(機能ブロックとして図示した部分)は、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであっても、プログラムを実行するCPUであっても良い。
例えば、
図1、
図2又は
図8の各部分の機能をそれぞれ処理回路で実現してもよいし、複数の部分の機能をまとめて処理回路で実現しても良い。
【0102】
処理回路がCPUである場合、画像合成装置又は画像処理装置の各部分の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア或いはファームウェアはプログラムとして記述され、記録媒体に格納される。処理回路は、記録媒体に格納されたプログラムをメモリに読み込んで実行することにより、各部の機能を実現する。このプログラムは、画像合成装置又は画像処理装置で実施される画像合成方法又は画像処理方法における処理をコンピュータに実行させるものであると言える。
【0103】
画像合成装置又は画像処理装置の各部分の機能のうち、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしても良い。
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0104】
図9に上記の処理回路がCPUであって、単一のCPUを含むコンピュータ(符号50aで示す)で
図2の画像処理装置のすべての機能を実現する場合の構成の一例を、撮像装置14aとともに示す。コンピュータ50aと撮像装置14aとで撮像システムが構成されている。
図9に示されるコンピュータ50aは、CPU51aと、メモリ52aと、入力インターフェース53aと、出力インターフェース54aとを備え、これらはバス55aで接続されている。
【0105】
入力インターフェース53aには、撮像装置14aからの短露光時間画像D
11及び長露光時間画像D
12、並びに総合ゲインの比Fcを示す情報が入力される。
【0106】
CPU51aは、メモリ52aに記憶されたプログラムに従って動作し、入力インターフェース53aを介して入力された画像D
11及びD
12に対して、実施の形態1の画像処理装置の各部の処理を行って、処理の結果得られた出力信号を出力インターフェース54aから出力する。
【0107】
図10に上記の処理回路がCPUであって、単一のCPUを含むコンピュータ(符号50bで示す)で
図8の画像処理装置のすべての機能を実現する場合の構成の一例を、撮像装置14bとともに示す。コンピュータ50bと撮像装置14bとで撮像システムが構成されている。
図10に示されるコンピュータ50bは、CPU51bと、メモリ52bと、入力インターフェース53bと、出力インターフェース54bとを備え、これらはバス55bで接続されている。
【0108】
入力インターフェース53bには、撮像装置14bからの撮像画像を第1の画像D
1として入力される。
【0109】
CPU51bは、メモリ52bに記憶されたプログラムに従って動作し、入力インターフェース53bを介して入力された画像D
1に対して、実施の形態2の画像処理装置の各部の処理を行って、処理の結果得られた出力信号を出力インターフェース54bから出力する。
【0110】
以上のように、本発明の画像合成装置及び方法、並びに画像処理装置及び方法のいずれかにおける処理の一部または全部をコンピュータに実行させるプログラム、及び該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体もまた本発明の一部を成す。