【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、コーティングされたPVD金属効果顔料からなるパウダーであって、当該コーティングされたPVD金属効果顔料はPVD金属効果顔料及び金属酸化物層を含み、当該金属酸化物層は、コーティングされたPVD金属効果顔料の合計重量に基づいて5〜45wt%であるものに関する。
【0011】
さらにこの目的は、次のステップを含む方法によって達成される:
a)ゾル−ゲルプロセスにおける、PVDプロセスによって製造された金属効果顔料の金属酸化物でのコーティング、当該金属酸化物層は、コーティングされたPVD金属効果顔料の合計重量に基づいて5〜45wt%である
b)反応混合液からの、コーティングされた金属効果顔料の固体−液体分離
c)得られたコーティングされた金属効果顔料の、100℃〜140℃での乾燥、それによりパウダーが得られる。
【0012】
驚くべきことに、PVDによって製造された顔料に、5〜45wt%の範囲の量の金属酸化物コーティングを施し、分離された顔料を100℃から140℃で乾燥することによって、非常に粒度分布が狭く、実質的に凝集フリーであり、非常に自由に流動する粉末が得られうることが示された。驚くべきことに、その表面積の大きさや凝集傾向にも関わらず、金属酸化物コーティング(好ましくはSiO
2コーティング)PVD金属効果顔料は、非常によく乾燥され、それゆえ非常に特性の優れた粉末が得られうる。
【0013】
コーティングされたPVD金属効果顔料からなる本発明のパウダーは、非常に良好な再分散性能によって特徴づけられ、特に高濃縮懸濁液の調製のために明らかに適している。さらに、非常に自由に流動し、実質的に凝集フリーであり、優れた金属光沢のコーティングが得られる。
【0014】
本発明のパウダーや本発明の懸濁液における金属効果顔料は、物理蒸着(PVD)によって製造される金属効果顔料であって、PVD金属効果顔料として本発明の枠内で言及される。金属は、アルミニウム、マグネシウム、クロム、銀、銅、亜鉛、スズ、マンガン、鉄、コバルト、ジルコニウム、金、チタン、鉄、プラチナ、パラジウム、ニッケル、タンタル、モリブデン、またそれらの混合物や合金からなる群から選択されることが好ましい。特に、アルミニウム、チタン、クロム、ジルコニウム、銅、亜鉛、金、銀、スズ、スチール、鉄、またそれらの合金及び/又はそれらの混合物からなる群から選ばれるものであり、より好ましくは、アルミニウム、チタン、クロム、ジルコニウム、銅、亜鉛、金、銀、スズ及びそれらの合金及び/又は混合物である。
【0015】
特に好ましくは、金属効果顔料の金属はアルミニウム及びその合金、また、クロムであり、さらにより好ましくはアルミニウムである。PVD金属効果顔料の製造は、技術分野において通常用いられるもので行われ、例えば、US 2,941,894やUS 4,321,087を参照。また、確立されたPVDプロセスは、“Vakuumbeschichtung Band 1-5” [真空コーティング vol. 1-5](VDI-Verlag, Ed. Kienel)に開示されており、特に、反応性ガスあり又は無しのプロセス、耐熱−、輻射熱プロセス、電子ビーム技術等が開示されている。
【0016】
本発明によれば、コーティングされたPVD金属効果顔料は金属酸化物層を含む、すなわち、PVD金属効果顔料は金属酸化物層でコーティングされている。特にこれは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化鉄、酸化スズ、酸化亜鉛又はそれらの混合物からなる層である。本発明の枠内では金属酸化物は最も広い意味で半金属酸化物も含むため、好ましくは、金属酸化物は、本発明の枠内で金属酸化物に包含される二酸化ケイ素である。異なる酸化物からなる2以上の層が形成されていてもよい。好ましくは、金属酸化物の膜は無色である。金属酸化物層は好ましくは湿式化学的に形成され、特に、ゾル−ゲルプロセスによる。
【0017】
金属酸化物層は、PVD金属効果顔料の製造の後に形成される。つまり、本発明のPVD金属効果顔料はいわゆるアフターコーティングのPVD金属効果顔料である。金属酸化物膜は好ましくは湿式化学的に付与される。本発明のPVD金属効果顔料は、正確には、例えばWO2006/069663に開示されるような、金属層と誘電体層(例えば金属酸化物層)の両方がPVDプロセスの手法によって形成されたマルチレイヤーPVD効果顔料ではない。さらに、本発明のPVD金属効果顔料は、好ましくは次の層構造を有さない:湿式化学酸化によって作成される酸化アルミニウム−又は酸化/水酸化アルミニウム−含有層、屈折率が1.95よりも大きい高屈折率金属カルコゲニド層、及び、任意的にそれらの間に、屈折率が1.8未満の材料からなる酸化物層であって、前記において、酸化アルミニウム−又は酸化/水酸化アルミニウム−含有層及び高屈折率金属カルコゲニド層、又は、酸化アルミニウム−又は酸化/水酸化アルミニウム−含有層及び屈折率が1.8未満の材料からなる酸化物層、又は、3層のすべてが一緒になって、混合層を形成しているもの。
【0018】
これらの層は、腐食防止、また、化学的及び物理的な安定化を提供する。特に好ましくは、ゾル−ゲルプロセスで形成され、特にまた、完全に金属の破砕端を包み込む、二酸化ケイ素層である。このプロセスは、例えばオルトケイ酸テトラエチルなどの金属アルコキシドの溶液(通常は、有機溶媒溶液、又は、低級アルコールなどの有機溶媒を少なくとも50wt%含む有機溶媒と水との混合液の溶液)における金属顔料の分散、及び、金属アルコキシドを加水分解するための弱塩基又は酸の添加を含み、それによって金属酸化物のフィルムが顔料の表面上に形成される。このようなゾル−ゲルプロセスは一般的に公知であり、例えば、シリカの化学, Ralph Iler, Wiley and Sons, 1979, Gerhard Jonschker, Praxis der Sol-Gel-Technologie [ゾル−ゲル技術の実践], Vincnetz Verlag, 2012を参照できる。Decomet(登録商標)顔料1000シリーズが特に好ましく使用される。これらはアルミニウムPVD顔料である。
【0019】
一方では高反応性のPVD金属効果顔料の不動態化に寄与する金属酸化物層は、また一方では、顔料パウダーの良好な乾燥を許容し、コーティングされた金属効果顔料の合計重量に基づいて5〜45wt%、好ましくは30〜44wt%、特に35〜43wt%、特に好ましくは37〜42wt%、またさらに特に好ましくは39〜40wt%である。この金属酸化物層の厚さは、通常2〜100nmである。
【0020】
加えて、金属酸化物層は、例えばシラン、リン酸エステル、チタン酸塩、ホウ酸塩又はカルボン酸などの有機化合物によって修飾されてもよく、これらの有機化合物が金属酸化物層に結合する。これらの有機化合物は好ましくは金属酸化物層に結合しうる機能性シラン化合物である。これらは一官能−又は二官能性の化合物でありえる。二官能性の有機化合物の例は、メタクリロキシプロペニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリ(メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリ(ブトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリ(プロポキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリ(ブトキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルトリ(メトキシエトキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルトリ(ブトキシエトキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルトリ(ブトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、フェニルビニルジエトキシシラン、又は、フェニルアリルジクロロシランである。
【0021】
さらに、特にアルキルシラン又はアリールシランである一官能性シランでも修飾がされうる。これは、アフターコーティングされる金属顔料の表面(すなわち金属酸化物層)、或いは、完全な被覆ではない場合には金属表面に共有結合しうる、一つの官能基を有している。シランの炭化水素基は顔料から離れる方向に向く。シランの炭化水素基のタイプや性質によって、疎水度の度合いが異なる顔料が得られる。このようなシランの例は、ヘキサデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン等である。
【0022】
本発明のパウダー又は本発明の懸濁液において特に好ましくは、一官能性シランで表面が修飾された、二酸化ケイ素でコーティングされたアルミニウム効果顔料である。特に好ましくは、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、また、ヘキサデシルトリエトキシシランである。表面特性/疎水性の変化に関わらず、凝集フリーの乾燥、また、アプリケーションにおける良好な整列が得られる。
【0023】
さらに、コーティングされたPVD金属効果顔料はまたさらなる層でコーティングされていてもよい。好ましくはポリマー層であり、特には(メタ)アクリル酸の層である。好ましくは水及び溶媒への溶解度が低いポリマー層の使用は、顔料の化学的安定性や、必要である場合には塗料における結合性をさらに向上させうる。
【0024】
本発明のコーティングされた金属効果顔料の平均粒径(D50の値)は通常、1〜250μmの範囲であり、好ましくは2〜150μm、また特には5〜50μmである。
【0025】
本発明のコーティングされたPVD金属効果顔料のBET表面積は、従来のシルバーダラータイプ顔料又はコーンフレークタイプ顔料と比較して、非常に大きく、好ましくは15〜90m
2/gの範囲であり、特に18〜40m
2/gであり、より好ましくは22〜35m
2/gである。BET表面積は比表面積であり、BET法(DIN 66132)に従って測定される。従来の顔料に比べてPVD金属効果顔料(VMPとも称される)の非常に大きな表面積ゆえに、VMPパウダーやVMPペーストの製造は、主要な挑戦である。しかしながら、本発明の枠内で、優れた特性を有するPVDパウダーやPVDペースト又は懸濁液を製造することが可能である。
【0026】
コーティングされたPVD金属効果顔料からなる本発明のパウダーは、優れた再分散性能(均一なペースト又は、粒ゲージ(grindometer)によって視覚的に評価される)、及び、自由流動性(バルク密度DIN 53466、DIN EN ISO 3923-1に従う見掛け密度、DIN EN ISO 4490に従う流動度から導出される)によって特徴づけられる。
【0027】
再分散性能は次のように評価される。バインダー(例えばメディウムA)中の乾燥パウダーの再分散が、所定の回転速度(1000rpm10秒;2000rpmで15秒;2500rpmで30秒;2000rpmで10秒;1000rpmで5秒)において80秒間、Speedmixer(装置:DAC 250 SP)にて行われる。処理物は24又は38μmのドクターブレードで広げられ、光学的に凝集が評価される。凝集の形成が少ないほど、再分散性能が高い。加えて、再分散性能が高いほど、観察される光沢も増す。得られるコーティングの光沢は、測定(Byk-Garner社製Tri-Gloss)及びコーティングの直後の乾燥していないスラリーと乾燥された材料との外観比較を通じて、決定される。
【0028】
さらに、得られたパウダーはその粒度分布(例えば、Sympatec社製のレーザー回折を用いたHelos粒径測定装置。湿式測定、d50値が既知、例えば、D10=6.58μm、D50=14.77μm、D90=26.66μm、span=1.36)に関して試験される。実施例の欄でより詳しく説明される塗布が、さらなる評価のために適切であることが証明されている。塗布及び粒径分布において、乾燥したパウダーが凝集フリーであるかどうかが見られうる。コーティングされたPVD金属効果顔料の得られたパウダーの質は、パウダーの分散性からも見られうる。
【0029】
本発明のパウダーは、均一なきめ細かいパウダーである。コーティングされたPVD金属効果顔料からなる本発明のパウダーが、パウダー形態又は懸濁液形態で用いられているコーティングは、非常に優れた金属光沢を示す。本発明はつまり、PVD金属効果顔料の新規な実施態様を提供することを可能にしており、それは、エコ及び製造の関連でいえば、非常に有利なことに低溶剤又は溶剤フリーであり、同じ金属光沢は、低濃度懸濁液からなるPVD金属効果顔料から達成される。
【0030】
上述された特徴や未だ説明されていない下記特徴は、本発明の射程から離れることなく、述べられた組み合わせだけでなく、その他の組み合わせ又は単独でも用いられうることが理解される。特に指摘された金属効果顔料、金属酸化物層、修飾剤、プロセスのパラメータ、また、それぞれの特徴にかかるそれぞれの量について、本発明に従って様々な組み合わせが開示されているものと認められることは事実である。
【0031】
好ましくは本発明のPVD金属効果顔料は粉末塗料中で用いられる。粉末塗料は、有機的な、固形分が100%のほぼ熱硬化性のコーティングパウダーである。粉末塗料には、互いに、又は、分岐した高分子を形成するための架橋剤を通じて架橋を形成しうる、反応性のバインダーポリマーが用いられうる。本発明の枠内では、通常の粉末塗料バインダーが用いられる。特に、エポキシ樹脂、カルボキシル基及び水酸基を含有するポリエステル、OH−及びGMA−アクリル樹脂、また、適用分野に特別である修飾された樹脂である。さらに、例えばレベリング剤、構造化剤、ワックス及びフィラーのような通常の添加剤が用いられうる。コーティングされたPVD金属効果顔料からなる本発明のパウダーの量は、0.01〜2wt%であり、好ましくは0.2〜0.8%である。基材上での粉末塗料のキュアは、焼き付けによって又は、放射エネルギーを用いて、実施されうる。
【0032】
これらの粉末塗料は、特に金属コーティング、家電、クラッディング、家具塗装、及び自動車塗装において使用されうる。
【0033】
コーティングされたPVD金属効果顔料の溶剤(好ましくは医療用ホワイトオイル)懸濁液がまた本発明に属し、当該コーティングされたPVD金属効果顔料は、PVD金属効果顔料と金属酸化物層とを含み、当該金属酸化物層はコーティングされた金属効果顔料の合計重量に基づいて5〜45wt%であって、懸濁液は70wt%以上のコーティングされた金属効果顔料を含む。コーティングされたPVD金属効果顔料の顔料は好ましくは75wt%以上であり、より好ましくは80〜99wt%であり、好ましくは85〜97wt%であり、好ましくは90〜95wt%である。例えば医療用ホワイトオイルのような通常の溶媒(例えばShell Ondinaオイル941)が、懸濁液のための溶媒として使用されうる。驚くべきことに、このような高度に濃縮された懸濁液が、問題なく本発明のパウダーから調製されることが可能で、それらは良好な分散及び安定特性によって特徴づけられ、非常に良好な金属光沢を有するコーティングを生じる。このような高濃縮の懸濁液は、ペーストとも称される。すなわち、本発明の一部は、溶媒(好ましくは医療用ホワイトオイル)中のコーティングされたPVD金属効果顔料のペーストであり、当該コーティングされたPVD金属効果顔料は、PVD金属効果顔料と金属酸化物層とを含み、当該金属酸化物層はコーティングされた金属効果顔料の合計重量に基づいて5〜45wt%であって、ペーストは70wt%以上のコーティングされた金属効果顔料を含む。
【0034】
PVD金属効果顔料懸濁液又はPVD金属効果顔料パウダーのさらに好ましい使用は、ペイント、塗料、マスターバッチ、印刷インク、プラスチック、化粧品、証券類の偽造防止印刷、又は、有価証券印刷におけるものである。その装飾的な金属光沢(クローム様の光沢)ゆえに、特に印刷産業、装飾的な塗料、化粧品、セキュリティの分野が予見される。
【0035】
さらに本発明の一部は、先行する請求項の一つに従うPVD金属効果顔料パウダーを含有する粉末塗料に関する。
【0036】
さらに本発明に従って保護されるものは、先行する請求項の一つに従う、PVD金属効果顔料パウダーを含有するマスターバッチ及びプラスチックである。マスターバッチという用語は、一般的には、最終的なアプリケーションよりも高濃度の色素を含む顆粒形態のプラスチック添加剤を意味する。マスターバッチは、ペースト、パウダーや液体の添加剤と比較してプロセスの信頼性を向上させ、加工性に非常に優れる。それらはプラスチック(原料ポリマー)と着色のために混合される。本発明の枠内で、金属効果顔料と混合可能であるすべての天然又は合成ポリマーが、プラスチックとして好適である。卓越した例は、例えばポリオレフィン、特にPE、PP、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート等である。特に好適にはポリプロピレン(PP)である。このようなマスターバッチは特に、包装材料、例えば化粧品のパッケージに使用され、得られるクローム様の光沢が特に望まれるものである。
【0037】
本発明のマスターバッチにおける、コーティングされたPVD金属効果顔料の量(パウダーの形態、或いは、オイル中の高濃縮懸濁液として)は、固形分に基づいて1.5〜5wt%、好ましくは2.5〜3wt%である。
【0038】
驚くべきことに、コーティングされたPVD金属効果顔料は、プラスチックにおいて予想外に優れた整列を示す。特に、塗料のアプリケーションと比べて、プラスチック中におけるコーティングされたPVD金属効果顔料のカーリング/波立ちは、確認されなかった(TEM測定)。
【0039】
本発明の一部はまたプラスチック材料であって、本発明のパウダー又は本発明の懸濁液(又は本発明のペースト)がプラスチック(原料)中に含有されているものに関する。これは、上述のようにマスターバッチをプラスチックと混合することによって、又は、本発明のパウダー又は本発明の懸濁液をプラスチックと混合することによって、製造されうる。
【0040】
さらに、プラスチック中のコーティングされたPVD金属効果顔料は、レーザーマーキング、特に、コールドマーキングの一種に著しく好適であることが実証されうる。プラスチックとして透明なポリマーを、レーザー官能材料としてコーティングされたPVD金属効果顔料(マスターバッチとして導入される)を使用することによって、レーザー照射によってポリマーマトリクス中に炭化が誘発され、これが一種の発泡を生じて、ガスの気泡が浮かび上がる。こうしてマーキングが起こされるが、表面からは目立たない(一種のコールドマーキング)。ここでは、例えばポリマーとしてPPが好適である。好適なレーザーは当業者には公知であり、例えば、YAGレーザー(1064nm)を含む。
【0041】
すなわち本発明の一部はまた、請求項13又は14に記載のマスターバッチ、又は、プラスチックのレーザーマーキングのための請求項15のプラスチック材料の使用に関する。さらに、プラスチックのレーザーマーキングの方法であって、請求項13又は14のマスターバッチ又は請求項15のプラスチック材料の供給と、プラスチックの選択されたエリアへのレーザー光線の照射とを含み、レーザー官能性のコーティングされたPVD金属効果顔料(好ましくはSiO
2コーティングアルミニウムPVD顔料)がこのエリアで少なくとも部分的に変化を生じる方法、も本発明に属する。本発明のパウダー、本発明の懸濁液、本発明のマスターバッチ、本発明のコーティングされたPVD金属効果顔料の上述の好ましい実施態様は、レーザーマーキングのための使用及びプラスチックのレーザーマーキング方法のために、それぞれの場合において、単独で用いられても組み合わせて用いられてもよい。レーザー官能性のコーティングされたPVD金属効果顔料は、PVD金属効果顔料と金属酸化物層を含むものの一つであり、コーティングされたPVD金属効果顔料の合計重量に基づいて、金属酸化物層は5〜45wt%、好ましくは30〜44wt%である。特に好ましくは、アルミニウムPVD効果顔料が、金属酸化物層としての二酸化ケイ素層と共に用いられ、当該金属酸化物層は、コーティングされたPVD金属効果顔料の合計重量に基づいて5〜45wt%、好ましくは30〜44wt%である。
【0042】
本発明のコーティングされたPVD金属効果顔料、好ましくはSiO
2でコーティングされたアルミニウムPVD顔料は、コーティングされていないAl PVD顔料よりもレーザー加工にはるかに適していることが明らかに実証された。レーザーの照射の場合、SiO
2でコーティングされたアルミニウムPVD顔料から、約5〜150nmのサイズ範囲のいわゆる“溶融ビーズ”がポリプロピレンマトリクス中で形成された。当該ビーズは可視スペクトル範囲において、わずかにのみ散乱を生じた。つまり、例えばレタリングの形状であるマークされた範囲は、おおむね透明に見えた。これと比較して、コーティングされていないAlフレークは、約5〜600nmのサイズ範囲の“溶融ビーズ”を生じ、それは可視スペクトルの範囲でより強い散乱を生じた。この場合レーザーマークされたエリアは、半透明に見える。これに制限される意図ではないが、SiO
2でコーティングされたアルミニウムPVD顔料の“溶融ビーズ”のEDX分析は、“溶融ビーズ”中で、おおむね均一なAl、Si,Ca及びOの分布が生じていることを示唆するように見え、このことは三元又は四元相のA−Si−O−(Ca)の兆候を示唆しうる。さらに、溶融ビーズの大部分は部分的にシェル形態を構成する球状構造であった。付加的に、三元又は四元相のA−Si−O−(Ca)は、より高いエネルギー散逸から粗化の減少を生じ、より小さなビーズサイズの原因となりえる。コーティングされていないAlフレークの場合は、対照的に、EDX分析は、おおむね均一なAl及びOの分布と、Si及びCaのごくわずかな痕跡のみを示す。
【0043】
本発明でコーティングされたアルミニウム顔料は、プラスチックにおけるレーザーマーキングの場合、驚くべき新規な機構を受けているように見える。その利点は、レーザーによって加工されるエリアはおおむね透明であり平滑な表面を有することである。すなわち、その周囲のレーザーマーキングされていないエリアと異なる表面感触を有することがない。プラスチックとしては、ポリオレフィン、特にPE及びPP、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート等であり、また、例えばポリエーテルスルホン、ポリアミド−イミド及びポリエーテルエテールケトン等の高耐熱ポリマーが好ましい。特に好ましくはポリプロピレン(PP)である。プラスチックは、安定化剤、可塑剤、フィラー、補強材やさらなる着色剤、着色顔料等の通常の添加剤を含んでもよい。
【0044】
レタリング、グラフィック又はシンボルマークの形態であるこのようなマーキングは、非常に広い使用範囲に適している。それらは特に、あらゆるタイプのパッケージ、特に、化粧品のためのパッケージや食料品のためのパッケージに適している。マーキングされるプラスチック材料は、例えば、成形体(深絞り、吹込み成形等で得られる)、また、フィルムあるいは塗料であってもよい。プラスチックが、本発明のコーティングされた金属効果顔料に加えてさらなる着色顔料や色素を含んでいる場合、例えば非常に高品質な、着色され艶のある金属的なマーキング物が得られる。
【0045】
すなわち本発明の一部はまた、レーザーマーキングされたプラスチックであり、当該レーザーマーキングされたプラスチックは、本発明のプロセスによって製造されたものであり、任意的に、成形体、フィルム、塗料又はコーティングの形態で存在するものである。
【0046】
さらに本発明の一部は、PVD金属効果顔料パウダーの製造方法であって、次のステップを含む:
a)ゾル−ゲルプロセスにおける、PVDプロセスによって製造された金属効果顔料の金属酸化物でのコーティング、前記金属酸化物層の量はコーティングされたPVD金属効果顔料の合計重量に基づいて5〜45wt%である
b)反応混合物からのコーティングされた金属効果顔料の固体−液体分離
c)得られたコーティングされた金属効果顔料の100〜140℃での乾燥、粉末が得られる
【0047】
ステップa)において、技術分野において知られたプロセスで製造されるPVD金属効果顔料は、ゾル−ゲルプロセスでコーティングされる。好ましくはSiO
2層である。このプロセスは、例えばオルトケイ酸テトラエチルなどの金属アルコキシドの溶液(通常、有機溶剤溶液、又は、低級アルコール等の有機溶剤を少なくとも50wt%含む有機溶剤及び水の混合液)中での金属顔料の分散、及び、金属アルコキシドを加水分解するための弱塩基の添加を含み、それによって、顔料の表面に金属酸化物のフィルムが形成される。ゾル−ゲルプロセスは上述のとおり当業者には公知である。Decomet(登録商標)顔料1000シリーズが特に好ましく用いられる。製品クレームとの関連で上記に列記された好ましい成分、プロセスの改変、及び、重量データは、ここに示されるプロセスについても適用される。
【0048】
本発明のプロセスのステップb)において、コーティングされた顔料粒子は、固体−液体分離を用いて分離される。これは様々な技術を用いて実行されてよく、特に、遠心分離、デカンテーション及び濾別が行われうる。顔料粒子は、好ましくは濾別される。濾別は、好ましくは、吸引濾過(特に、ガラスフィルター)、室温で行われる。真空を適用することで、1分から60分で固形分5〜35wt%(スラリー組成に基づいた固体含有量)が得られる。
【0049】
得られた粒子はさらに、エタノール又は他の溶媒で洗浄されてもよく、或いは直ちに乾燥ステップc)に供されてもよい。
【0050】
乾燥は100〜140℃の温度で行われ、好ましくは110〜130℃、特に好ましくは115〜125℃であり、さらに特に好ましくは120℃である。炉、特に回転式の炉等がが好ましく用いられる。しかしながら、他の乾燥炉や、例えばMemmert社製 Universal Oven UF110plus又はUltramat、Sartorius社製M35等の実験炉も用いられうる。乾燥ステップは、好ましくは6〜18時間、特に10〜14時間行われる。
【0051】
100℃未満での乾燥は、望まない凝集の形成を生じ、一方、140℃を越える乾燥の場合は、PVD効果顔料の製造プロセスからのコーティングリリース物の残渣の接着がまだ生じ、望まない副作用を生じる恐れがあることが確認された。驚くべきことに、その広い表面積と凝集傾向にも関わらず、金属酸化物コーティング(好ましくはSiO
2−コーティング)PVD金属効果顔料は非常によく乾燥され、それゆえ非常に良好な特性を有するパウダーが得られる。
【0052】
コーティングされたPVD金属効果顔料からなる本発明のパウダーは、上述のように、優れた再分散性能と自由流動性で特徴づけられる。
【0053】
続く実施例が発明をさらに説明する。
【0054】
[参考例1]
Schlenk Metallic Pigments GmbH社製 Decomet 1002/10(固形分10%)200gが、イソプロパノール400gに懸濁される。テトラエトキシシラン47gがこの混合物に添加され、この混合物は60℃に加熱される。続いて、水100g、続いてアンモニア6gが添加され、混合物はさらに4時間攪拌される。混合物は続いて、ガラスフィルターを通して濾過される。続いて、得られたフィルターケーキがイソプロパノールで10%に調整される。金属酸化物層の量は、コーティングされたPVD金属効果顔料の合計重量に基づいて、40wt%である。
【0055】
[実施例2]
Schlenk Metallic Pigments GmbH社製 Decomet 1002/10 200gが、イソプロパノール400gに懸濁される。テトラエトキシシラン47gがこの混合物に添加され、この混合物は60℃に加熱される。続いて、水100g、続いて直ちにアンモニア6gが添加され、混合物はさらに4時間攪拌される。混合物は続いて、ガラスフィルターを通して濾過された。得られたフィルターケーキは、続いて、乾燥炉で120℃、12時間乾燥される。金属酸化物層の量は、コーティングされたPVD金属効果顔料の合計重量に基づいて、40wt%である。
【0056】
[実施例3]
Schlenk Metallic Pigments GmbH社製 Decomet 1002/10 200gが、イソプロパノール400gに懸濁される。テトラエトキシシラン47gがこの混合物に添加され、この混合物は60℃に加熱される。続いて、水100g、続いて直ちにアンモニア6gが混合物に添加され、混合物はさらに4時間攪拌される。混合物は続いて、ガラスフィルターを通して濾過される。得られたフィルターケーキは、続いて、乾燥炉で120℃、12時間乾燥される。金属酸化物層の量は、コーティングされたPVD金属効果顔料の合計重量に基づいて、40wt%である。
【0057】
続いて、Speedmixerにおいて、Ondianaオイルで80%懸濁液を形成するようにペースト化が行われる(この高濃縮懸濁液は、ペーストとも称される)。
【0058】
得られたパウダー、高濃縮懸濁液及び低濃縮スラリーが試験された。
【0059】
実施例2及び3から得られたパウダー/懸濁液の塗布の方法:
乾燥されたパウダー0.2gが1.8gイソプロパノールとともに25mLプラスチックビーカーに入れられる。この分散液にバインダーメディウムA(ニトロセルロースベースの塗料)3gが添加される。混合物は、Speedmixer(装置:DAC 250 SP)中で回転速度(1000rpm10秒;2000rpm15秒;2500rpm30秒;2000rpm10秒;1000rpm5秒)で分散され、スパチュラで再度短時間完全に混ぜられる。続いて、24μmスパイラルブレードを用いて、コーティング紙の上の基材上に塗布される。塗布物は5分後室温で乾燥され、続いて反射率計(Byk-Gardner社製Tri-Gloss)で測定される。凝集物の形成は、視覚的に確認される。
【0060】
参考例1の10%スラリーの塗布の方法:
スラリー(10%)2gが、バインダーメディウムA3gに添加される。混合物はSpeedmixer(装置:DAC 250 SP)中で回転速度(1000rpm10秒;2000rpm15秒;2500rpm30秒;2000rpm10秒;1000rpm5秒)で分散され、スパチュラで再度短時間完全に混ぜられる。続いて、24μmスパイラルブレードを用いて、コーティング紙の上の基材上に塗布される。塗布物は5分後室温で乾燥され、続いて反射率計(Byk-Gardner社製Tri-Gloss)で測定される。凝集物の形成は、視覚的に確認される。
【0061】
バルク重量の方法:
既知の体積のアルミニウムパウダーの重量を測定することによって、アルミニウムパウダーのバルク重量又はバルク密度が、g/mL又はg/cm
3の単位で決定される。
真鍮製の測定シリンダ(50mL容量)がスケールに置かれ、0点が調節される。充分量のアルミニウムパウダーがオンス紙(Pergamyn Echo、35 g/m2、未漂白、光沢あり)上に置かれ、スパチュラを用いて注意深く横方向に(3回)延ばされた。パウダーはゆっくりと、紙の上に立っている金属シリンダーの中に導入され、金属のシートで表面を覆われて、重量測定される。
【0062】
評価は次の式を用いて行われる。