(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エポキシ化合物と前記熱可塑性樹脂との重量比、及び所望により前記強靭化剤の量が、引張試験DIN EN ISO 527により測定したときに、破断伸びが少なくとも500%の構造用接着フィルムを提供するように選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の構造用接着フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一態様によれば、本開示は、
a)250g/当量未満の平均エポキシ当量を有するエポキシ化合物と、
b)60℃〜140℃の軟化点を有する熱可塑性樹脂と、
c)エポキシ硬化剤と、
d)所望により、強靭化剤と、を含む、熱硬化性組成物を含む構造用接着フィルムであって、
エポキシ化合物と熱可塑性樹脂との重量比、及び所望により強靭化剤の量が、引張試験DIN EN ISO 527により測定したときに、破断伸びが少なくとも60%の構造用接着フィルムを提供するように選択される、構造用接着フィルムに関する。
【0014】
本明細書全体を通じて用いられる用語「フィルム」は、通常、ストリップ片、箔、帯状物、シート、シーチングなどと称される2次元物品に関する。熱可塑性樹脂の軟化点は、典型的に、例えば示差走査熱量測定法(DSC)で測定されるような、そのTg値(ガラス転移点)と定義される。
【0015】
本開示に照らして、驚くことに、引張試験DIN EN ISO 527により測定したときに、破断伸びが少なくとも60%の未硬化の構造用接着フィルムは、自動化操作及びアプリケーション(具体的には高速ロボティック設備による自動化操作及びアプリケーション)であって、具体的には金属部同士を接合するために、更に具体的には金属部をヘムフランジ接着接合するために使用される場合に特に好適であることが見い出された。有利なことに、本開示の構造用接着フィルムは、高速ロボティックアプリケーションを可能にする。
【0016】
好ましい態様において、本開示は、熱硬化性組成物を含む構造用接着フィルムであって、熱硬化性組成物が、
a)250g/当量未満の平均エポキシ当量を有するエポキシ化合物30〜60重量%、好ましくは40〜60重量%、より好ましくは50〜60重量%と、
b)60℃〜140℃の軟化点を有する熱可塑性樹脂10〜40重量%、好ましくは15〜30重量%、より好ましくは20〜30重量%と、
c)エポキシ硬化剤2〜15重量%、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは2.5〜4重量%と、
d)所望により、強靭化剤と、を含み、
エポキシ化合物と熱可塑性樹脂との重量比が0.8〜4である、構造用接着フィルムに関する。好ましくは、エポキシ化合物と熱可塑性樹脂との重量比は、1〜3、より好ましくは1.5〜2.5、なおより好ましくは1.8〜2.2である。
【0017】
エポキシ化合物
本開示の構造用接着フィルムは、250g/当量未満の平均エポキシ当量を有するエポキシ化合物を含む熱硬化性組成物を含む。本明細書で使用するのに好適なエポキシ化合物は、本明細書を考慮して当業者によって容易に識別されよう。
【0018】
好ましい態様では、本明細書で使用するためのエポキシ化合物の平均エポキシ当量は、230g/当量未満、好ましくは220g/当量未満、より好ましくは200g/当量未満である。好ましくは、本明細書で使用するためのエポキシ化合物の平均エポキシ当量は、100〜200g/当量、好ましくは150〜200g/当量、より好ましくは170〜200g/当量である。なお好ましくは、本明細書で使用するためのエポキシ化合物の重量平均分子量は、700g/モル以下、好ましくは500g/モル以下、より好ましくは400g/モル以下である。有利なことに、本明細書で使用するためのエポキシ化合物の重量平均分子量は、200〜400g/モル、好ましくは300〜400g/モル、より好ましくは350〜400g/モルである。本明細書で使用するためのエポキシ化合物は、好ましくは、少なくとも2、より好ましくは2〜4の平均エポキシ官能価(すなわち、分子1個当たりの重合性エポキシ基の平均数)を有するエポキシ化合物からなる群から選択される。
【0019】
開環反応によって重合可能な少なくとも1個のオキサリン環を有する任意の有機化合物は、平均エポキシ当量が250g/当量未満であれば、本開示の構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中でエポキシ化合物として使用してもよい。このような物質は、広義にエポキシ類と称され、モノマーエポキシ化合物、及びポリマーエポキシ化合物を含み、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式であり得る。有用な物質は、一般に、分子1個当たり少なくとも2個の重合性エポキシ基を有し、より好ましくは分子1個あたり2〜4個の重合性エポキシ基を有する。
【0020】
これらのエポキシ化合物は、一般的に、室温において液体又は半液体であり、また多くの場合において、反応性エポキシシンナー、又は反応性エポキシ希釈剤とも称される。これらの化合物は、好ましくは、ジ及びポリフェノール、又は脂肪族若しくは脂環式ヒドロキシル化合物の、任意に置換されたジ−及びポリ−グリシジルエーテルからなる群から選択される。本明細書で使用するのに好適なエポキシ化合物は、Momentiveから商品名Epikote(商標)828として、Dow Chemical Co.から商品名DER 331、DER 332及びDER 334として、Resolution Performance Productsから商品名Epon(登録商標)828として、Polysciences,Inc.から商品名Epon(登録商標)825/826/830/834/863/824として、Hexionから商品名Bakelite(登録商標)EPR 164として、Huntsmanから商品名Araldite(登録商標)GY 250/260として、又はLeuna Harzeから商品名EPILOX(登録商標)A 1900として市販されている。
【0021】
構造用接着フィルムにおいて有用なエポキシ化合物は、好ましくはビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS、脂肪族及び芳香族アミン、例えば、メチレンジアニリン及びアミノフェノール、ハロゲン置換したビスフェノール樹脂、ノボラック、脂肪族エポキシ、並びにこれらの及び/又はこれらの間での組み合わせに由来するものである。より好ましくは、有機エポキシは、ビスフェノールA及びビスフェノールFのジグリシジルエーテル類、並びにエポキシノボラック類からなる群から選択される。
【0022】
構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中でのエポキシ化合物の量は、典型的に、熱硬化性組成物の総重量に対して30〜60重量%、好ましくは40〜60重量%、より好ましくは50〜60重量%である。
【0023】
熱可塑性樹脂
本開示の構造用接着フィルムの熱硬化性組成物は、更に、60℃〜140℃の軟化点を有する熱可塑性樹脂を含む。本明細書で使用するのに好適な熱可塑性樹脂は、本明細書を考慮して当業者によって容易に識別されよう。熱可塑性樹脂はまた多くの場合、フィルム形成剤と称されることもある。
【0024】
好ましい態様では、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂の軟化点は、70℃〜120℃、好ましくは80℃〜100℃、より好ましくは85℃〜95℃である。
【0025】
本明細書で使用するのに好適な熱可塑性樹脂は、好ましくはポリエーテル熱可塑性樹脂、ポリプロピレン熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル熱可塑性樹脂、ポリエステル熱可塑性樹脂、ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂、ポリスチレン熱可塑性樹脂、ポリカーボネート熱可塑性樹脂、ポリアミド熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物の任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0026】
本明細書で使用するのに好適な熱可塑性樹脂は、有利なことに、ポリエーテル熱可塑性樹脂、好ましくはポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂からなる群から選択されてよい。好ましい態様では、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、ポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂からなる群から選択され、好ましくはフェノキシ樹脂、ポリエーテルジアミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂(具体的にはポリビニルブチラール樹脂)、及びそれらの任意の組み合わせ又は混合物から選択される。本明細書で使用するのに好適なポリビニルアセタール樹脂の例としては、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、カルボキシル変性ビニルコポリマー及びヒドロキシ変性ビニルコポリマーが挙げられ、Dow Chemicalsから市販されている。本開示の極めて好ましい態様では、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂からなる群から選択される。本明細書で使用するのに好適な熱可塑性樹脂は、InChem Corporationから商品名PKHP、PKHH、PKHA、PKHB、PKHC、PKFE、PKHJ、PKHM−30又はPKHM−301として市販されている。
【0027】
構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中の熱可塑性樹脂の量は、典型的に、熱硬化性組成物の総重量に対して10〜50重量%、好ましくは15〜30重量%、より好ましくは20〜30重量%である。
【0028】
エポキシ硬化剤
本開示の構造用接着フィルムの熱硬化性組成物は、更に、エポキシ硬化剤をも含む。任意のエポキシ硬化剤は、当該技術分野で知られており、本開示の構造用接着フィルムの熱硬化性組成物に使用することができる。本明細書で使用するのに好適なエポキシ硬化剤は、有機エポキシドのオキシラン環と反応して、エポキシドの実質的な架橋を生じさせる、材料である。これらの材料は、架橋反応を生じさせる、少なくとも1つの求核的又は求電子的部分(例えば、活性水素原子)を含む。エポキシ硬化剤は、有機エポキシドの鎖の間に主に留まりかつ架橋したとしてもほんの僅かしか架橋を生じないエポキシド鎖拡張剤とは異なる。本明細書で使用するようなエポキシ硬化剤は、当該技術分野ではエポキシ硬化剤(epoxy hardners)、エポキシド硬化剤、触媒、エポキシ硬化剤(epoxycuratives)、及び硬化剤(curatives)としても知られている。
【0029】
エポキシ硬化剤と、エポキシド硬化反応速度を増強するために用いられる促進剤とは、区別されることがある。促進剤は、典型的に多官能性材料であって、エポキシ硬化剤に分類されることもある。したがって、本明細書では、硬化剤と促進剤とは区別しない。
【0030】
本明細書で使用するためのエポキシ硬化剤としては、エポキシ樹脂組成物を硬化し、架橋ポリマーネットワークを形成するために従来使用されるものが挙げられる。好適なエポキシ硬化剤はまた、潜在性硬化剤と称されることもあり、典型的に、適切な処理条件が与えられるまでエポキシ樹脂と反応しないように選択される。このような化合物としてはまた、脂肪族及び芳香族第3級アミン、例えば、実質的な架橋を生じさせる触媒として機能し得る、ジメチルアミノプロピルアミン及びピリジンなども挙げられる。更に、ホウ素錯体、特に、モノエタノールアミン、2−エチル−メチルイミダゾールなどのイミダゾール、テトラメチルグアニジンなどのグアニジン、ジシアノジアミン(DICYと称されることもある)、トルエンジイソシアネート尿素などの置換された尿素、並びに4−メチルテトラヒドロキシフタル酸無水物、3−メチルテトラヒドロキシフタル酸無水物及びメチルノルボルンフタル酸無水物などの酸無水物類とのホウ素錯体も使用され得る。更に別の有用なエポキシ硬化剤としては、ポリアミン、メルカプタン及びフェノールが挙げられる。本明細書で使用するための他のエポキシ硬化剤としては、カプセル化アミン、ルイス酸/塩基、遷移金属錯体及びモレキュラーシーブが挙げられる。好ましくは、エポキシ硬化剤は、アミン、酸無水物、グアニジン、ジシアンジアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、エポキシ硬化剤はジシアンジアミドを含有する。本明細書で使用するのに好適なエポキシ硬化剤は、Air Productsから商品名Amicure(登録商標)CG−1200として市販されている。
【0031】
構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中のエポキシ硬化剤の量は、典型的に、熱硬化性組成物の総重量に対して2〜15重量%、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは2.5〜4重量%である。
【0032】
強靭化剤
特定の態様では、構造用接着フィルムの熱硬化性組成物は、更に、1種以上の強靭化剤を含んでいてよい。任意の強靭化剤は、当該技術分野で一般に知られており、本開示の構造用接着フィルムの熱硬化性組成物に使用することができる。強靭化剤は好ましくは、コア−シェル強靭化剤、CTBN(カルボキシル及び/又はニトリル末端ブタジエン/ニトリルゴム)、及び高分子量のアミン末端ポリテトラメチレンオキシドから選択される。
【0033】
特に好ましいコア−シェル強靭化剤は通常、内側コア区域及び外側シェル区域がそれぞれ異なる材料から構成される。好ましくはコアは、シェルよりも固くてもよいが、これは必須ではない。シェルは、より固い材料を含んでもよく、及び/又はシェルはその構成が層状であってもよい。より好ましくは、内側の硬質コア成分は、周期表の第1、第2及び/若しくは第3遷移系列からの、単一及び/又は複数の有機ポリマー及び無機酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア)、及び/若しくは天然鉱物(例えば、長石、シリケート、アルミネート、ジルコネート)、及び/若しくは他の硬化した材料(例えば、炭化物、窒化物、珪化物、アルミニウム化物)、並びに/又はこれら及びこれらの間のいくつかの組み合わせから構成される。外側の軟質シェル成分は、ゴム、例えば、ジエン、オレフィンゴム、天然ゴム、ポリイソプレン、これらのコポリマー、エチレンプロピレンモノマーゴム、ジエン−アクリロニトリルコポリマー、ビニル芳香族モノマーのコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー(SBRゴムとして既知)、及びジエンとアクリロニトリル又は不飽和エステルとスチレン又はビニルトルエンとのターポリマーから構成されてよい。軟質シェルは、好ましくは、前駆体のエポキシ成分と反応し得るカルボキシル、ヒドロキシル、エポキシ、シアネート、イソシアネート、アミノ及びチオールなどの官能基による修飾物を含む。熱硬化性組成物において有用であるコア−シェル強靭化剤は、例えば、Rohm and Hassから、商品名Paraloid(商標)として市販されている。
【0034】
CTBN強靭化剤は、硬化中に、そのカルボキシル及び/又はニトリル官能基を介して、前駆体のエポキシド成分と反応し、よってこれらのブタジエン/ニトリルゴム部分を、軟質の衝撃吸収区分として、エポキシネットワーク内に導入して、硬質の区分を形成する。本開示において有用なCTBN強靭化剤は、例えば、Hanse Chemie AG(Hamburg、ドイツ)から商品名Albipox(商標)として市販されている。
【0035】
熱硬化性組成物において有用な高分子量のアミン末端ポリテトラメチレンオキシドは、例えば、3M Company(St.Paul/MN、米国)から商品名「3M EPX(商標)ゴム」として市販されている。
【0036】
熱硬化性組成物中に含まれる1種以上の強靭化剤の量は、典型的には熱硬化性組成物の総重量に対して10〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%である。
【0037】
本開示の構造用接着フィルムの特定の態様において、強靭化剤と熱可塑性樹脂との重量比は、有利には1〜4、好ましくは1〜3、より好ましくは1.5〜2.5、なお更に好ましくは1.8〜2.2である。
【0038】
発泡剤
特定の態様では、構造用接着フィルムの熱硬化性組成物は、更に、1種以上の発泡剤を含んでいてもよい。任意の発泡剤は、当該技術分野で一般に知られており、本開示の構造用接着フィルムの熱硬化性組成物に使用することができる。
【0039】
構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中に発泡剤を含むことにより、構造用接着フィルムは、熱により膨張可能となるので、膨張性の構造用接着フィルムと称されることもある。したがって、加熱することにより、例えば、加熱して接着剤シートの熱硬化を生じさせる間に、構造用接着フィルムは膨張して、金属接合部内の空隙を封止するのに役立つ。その結果、耐食性が改善される可能性がある。好ましくは、1種以上の発泡剤は、非カプセル化発泡剤及びカプセル化発泡剤からなる群から選択される。
【0040】
非カプセル化発泡剤は、場合により化学発泡剤とも称され、加熱中に窒素、窒化酸化物、水素、又は二酸化カルボキシド(carboxide dioxide)などの気体化合物を放出する。本開示において有用な化学発泡剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカーボンアミド、カルバジド、ヒドラジド、水素化ホウ素ナトリウム又は重炭酸ナトリウム/クエン酸をベースとした非アゾ系化学発泡剤、及びジニトロソペンタメチレンテトラミンが挙げられる。1種以上の化学発泡剤の量は、典型的には熱硬化性組成物の総重量に対して0.2〜2重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0041】
カプセル化発泡剤は通常、ポリマー熱可塑性シェル内に封入された液化ガス(例えば、トリクロロフルオロメタン、又は炭化水素、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、及び/若しくはイソブタン)を含む。加熱すると、液化ガスは熱可塑性シェルを「マイクロバルーン」の様に膨張させて肥大させるか又は破裂させる。典型的に、1種以上のカプセル化発泡剤の量は、有利には熱硬化性組成物の総重量に対して0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1〜2重量%であってよい。熱可塑性組成物中で有用なカプセル化発泡剤は、例えば、Pierce & Stevens Chemical CorpからMicropearl(商標)として、松本油脂製薬株式会社から商品名Microsphere(商標)として、又はAkzo Nobelから商品名Expancel(商標)として市販されている。
【0042】
特定の態様では、1種以上の発泡剤の量は、構造用接着フィルムを硬化反応の活性化(開始)温度よりも高い硬化温度に置かれたときでかつ自由膨張率を試験法欄に記載されている通りに測定したときに、硬化時の自由膨張率が50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下の構造用接着フィルムを提供するように選択される。より具体的には、1種以上の発泡剤は、硬化時の自由膨張率が10〜40%、好ましくは10〜30%、より好ましくは15〜25%の構造用接着フィルムを提供するように選択される。
【0043】
熱硬化性組成物は、所望により、更なる成分、添加物、及び/又は薬剤を含み得る。熱硬化性組成物に有利に組み込まれ得る他の任意成分としては、湿潤剤、例えばチタネート、シラン、ジルコネート、ジルコアルミネート、ホスホン酸エステル、及びこれらの組み合わせから選択されるものが挙げられる。湿潤剤は、組成物の混合性及び加工性を改善し、また、組成物の取扱適性を向上させることもできる。有用な湿潤剤は、米国特許番号第5,019,605号に開示されている。特に有用な湿潤剤は、Coatex(Gene、フランス)からCoatex DO−UP6Lとして市販されている。
【0044】
使用され得る他の任意成分としては、添加物、薬剤、又は機能調整剤、例えば難燃剤、衝撃改質剤、熱安定剤、着色剤、加工助剤、潤滑剤、及び補強剤が挙げられる。
【0045】
特定の態様において、熱硬化性組成物は、特定の用途に関連するその加工性を改善及び調節するために、前駆体のレオロジー特性を制御しかつその粘度を調整するべく使用され得る、1つ以上の充填剤を含み得る。本明細書で使用するのに好ましい充填剤は、充填剤粒子、ミクロスフィア、使い捨てミクロスフィア、好ましくはペンタンで充填された使い捨てミクロスフィア若しくは中空粒子(gaseous cavities)、ガラスビーズ、ガラスミクロスフィア、疎水性シリカ型充填剤、親水性シリカ型充填剤、繊維、伝導性及び/若しくは熱伝導性粒子、ナノ粒子、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。本明細書で使用するのに好ましい充填剤は、シリカを含む無機充填剤から選択される。本明細書で使用するのに好ましい一つの充填剤は、疎水性ヒュームドシリカであって、DegussaからAerosil(商標)として、又はCabotからCAB−O−SlL(商標)として市販されている。本明細書で使用するのに好ましい別の充填剤は、膨張パーライトであって、Europerl(ドイツ)から商品名Eurocell(登録商標)として市販されている。典型的に、充填剤の量は、有利には熱硬化性組成物の総重量に対して10重量%以下であってよい。
【0046】
別の特定の態様では、熱硬化性組成物は、1種以上の非圧縮性粒子状物質、例えばKominex Mineralmahlwerk,GmbHから市販されている中実のガラスビーズなどを含んでいてよい。本明細書に照らして、非圧縮性粒子状物質が本開示の構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中に含まれている場合、構造用接着フィルムを金属部の接合に使用するときに、硬化前における構造用接着フィルムの望ましくないはみ出しが有利なことに圧縮工程を通して防止できることが分かった。
【0047】
本開示の構造用接着フィルムの好ましい態様において、エポキシ化合物と熱可塑性樹脂との重量比、及び所望により強靭化剤の量は、引張試験DIN EN ISO 527により測定したときに、破断伸びが少なくとも100%、好ましくは少なくとも200%、より好ましくは少なくとも500%、なおより好ましくは少なくとも700%、なお更に好ましくは少なくとも900%の構造用接着フィルムを提供するように選択される。有利なことに、引張試験DIN EN ISO 527により測定したときに、破断伸びが3000%以下、好ましくは2500%以下、より好ましくは2000%以下、特に1500%以下の構造用接着フィルムが提供される。
【0048】
本開示の構造用接着フィルムは、多数の技法によって容易に調製され得る。例えば、様々な成分を周囲条件下で、Mogulミキサーなどの好適な内部混合容器に添加してもよい。混合温度は重要ではなく、第1及び第2エポキシ成分並びに任意の強靭化剤成分の混合は、典型的には80〜85℃の温度で行われる。エポキシ硬化剤成分、及び任意の発泡剤成分が添加されるときに、温度は好ましくは70℃以下まで下げてもよい。前記成分が均一な混合物を形成するまで混合を継続し、その後、熱硬化性組成物をミキサーから取り出す。
【0049】
これらの優れた加工性に起因して、熱硬化性組成物は、押出成形機又はホットメルトコーターなどの、従来の適用装置によってフィルムとして加工され得る。熱硬化性組成物は、自己支持性フィルムとして加工されてもよく、或いは好適なライナー、例えばシリコン処理済ライナーの上に塗布/ラミネートされてもよい。本開示の構造用接着フィルムは、例えば、金属(例えば、Al、Al合金、チタン、若しくはステンレス鋼)などの様々な基材、又は例えば、ガラス、ホウ素、炭素、ケブラー繊維、エポキシ、フェノール、シアネートエステル、及びポリエステルマトリックスなどを含む他の基材に適用されてもよい。
【0050】
本開示の構造用接着フィルムは、典型的に、軟質の適合性を有するフィルムであり、室温において粘着性であっても粘着性でなくてもよい。硬化工程前の構造用接着フィルムは、好ましくは変形可能でかつものに掛けて覆うことができるので、曲面に適用することもでき、また、任意の二次元形状を作ることもできる。構造用接着フィルム材料の厚さは、多種多様であってよい。有用な厚さは、約0.05mm(ミリメートル)〜25ミリメートルの範囲であることが見出された。金属パネルの典型的な接合のため、厚さは、0.1〜5mmまでの範囲、例えば、0.1〜3mm、又は0.3〜1mmまでの範囲であってよい。
【0051】
構造用接着フィルムは、フィルム材料のロール、テープのロール(すなわち、幅の狭い長尺状材料)、又は最終用途にとって望ましい寸法又は形状に切断されたシートの積み重ね体の形態でパッケージ化されてもよい。接着剤フィルムが粘着性である場合、剥離ライナーが、隣接するシート間、又はロールのラップ間に挟まれていてもよい。本開示に照らすと、驚くことに、構造用接着フィルムがフィルム材料のロールの形態でパッケージ化された場合、フィルム材料の対応するロールは、特に、保管時の浸出(すなわち、フィルムのロールの場合にエポキシ樹脂が拡散すること)に耐性があることが分かった。理論に束縛されたくはないが、熱可塑性樹脂中に含まれている長い高分子鎖が、保管時に構造用接着フィルム内へエポキシ樹脂を保持することに関与するものと考えられる。具体的には、本開示の構造用接着フィルムは、長さが100メートル超、好ましくは200メートル超、より好ましくは300メートル超、なおより好ましくは500メートル超、更に好ましくは700メートル超、なお更に好ましくは800メートル超でかつ幅が典型的に5〜40mm、特に10〜30mm、更には10〜20mmのフィルム材料のロールの形態でパッケージ化されたときに浸出耐性が保たれる。
【0052】
本開示の構造用接着フィルムは層を1層以上含んでいてもよい。接着フィルムはまた、網状織物を含んでいてもよい。好適な網状織物としては、ポリマー材料からなる目の粗い生地又は布地が挙げられる。一般的に網状織物は柔軟であり、しかも伸縮性であり得る。特定の例としては、熱処理された、柔軟でかつ伸縮性のある、目の粗いナイロン編地が挙げられる。網状織物は、1〜15g/m
2、例えば、5〜12g/m
2の厚さを有し得る。有用な材料としては、3M Co.から入手可能な3M(商標)Scotch−Weld(商標)3336が挙げられる、構造用接着フィルムは、更に、スクリム等の目の粗い不織層を収容していてもよい。
【0053】
本開示の構造用接着フィルムは、未硬化状態における形状安定性、柔軟性、堅牢性、取扱特性、自動化操作及びアプリケーションへの適格性、温水での洗浄に対する耐性、並びに硬化後の優れた接合及び封止性能、高い機械的強度、遮水特性、間隙充填特性、制御された膨張挙動、及び表面仕上げからなる群から選択される任意の利点を付与するのに好適である。
【0054】
別の態様によれば、本開示は、第1金属部品と第2部品との接合方法であって、前記方法が、
a)金属パネルを含む第1金属部品及び第2部品を提供する工程と、
b)上述のような構造用接着フィルムを供給する工程と、
c)第1金属部品と第2部品とをエポキシ硬化剤の活性化温度未満の温度で接着することにより、金属接合部を形成する工程と、
d)構造用接着フィルムの熱硬化性組成物の熱硬化を生じさせるように、金属接合部をエポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱する工程と、を含む、方法に関する。
【0055】
また別の態様によれば、本開示は、二部分型アセンブリの作製方法であって、前記方法が、
a)金属パネルを含む第1金属部品と第2部品を提供する工程と、
b)上述のような構造用接着フィルムを供給する工程と、
c)第1金属部品と第2部品とを接着することにより、金属接合部を形成する工程と、
d)構造用接着フィルムの熱硬化性組成物の熱硬化が生じるように、金属接合部を加熱する工程と、を含む、方法に関する。
【0056】
本開示の方法の好ましい態様では、部品、具体的には金属部品は、いわゆる折り返し構造又はヘムフランジを形成するように縁部で互いに連結された自動車パネルである。
【0057】
したがって、本開示の方法の好ましい一態様では、第1金属部品と第2部品とのヘムフランジ接着接合方法であって、
−構造用接着フィルムが、当該構造用接着フィルムの第1端部に近い第1部分と、当該構造用接着フィルムの第1端部とは反対側の第2端部に近い第2部分とを有し、
−第1金属部品が、第1本体部分と当該第1本体部分の第1端部と隣接する第1本体部分の縁に沿った第1フランジ部とを有する第1金属パネルを含み、
−第2部品が、第2本体部分と当該第2本体部分の第2端部と隣接する第2本体部分の縁に沿った第2フランジ部とを有する第2パネルを含み、
前記方法が、
a)構造用接着フィルムを第1金属パネル又は第2パネルにエポキシ硬化剤の活性化温度未満の温度で接着させ、接着して折り畳むことにより、金属接合部が形成される工程であって、構造用接着フィルムが、
i.構造用接着フィルムの第1部分が、第2パネルの第2フランジと第1金属パネルの第1本体部分との間に供給され、
ii.構造用接着フィルムの第2部分が、第1金属パネルの第1フランジと第2パネルの第2本体部分との間に供給されるように、折り畳まれている、工程と、
b)構造用接着フィルムの熱硬化性組成物の熱硬化が生じるように、金属接合部をエポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱する工程、を含む、方法が提供される。
【0058】
好ましくは、構造用接着フィルムは、構造用接着フィルムが第2パネルの第2フランジの反対側に接着されるように、構造用接着フィルムが第2金属パネルの第2フランジに接着されかつ第2金属パネルの第2端部の周囲で折り畳まれた状態で、第2パネルに接着される。
【0059】
上述のような第1金属部品と第2部品との接合方法又は二部分型アセンブリの作製方法又は第1金属部品と第2部品とのヘムフランジ接着接合方法のうち好ましい一態様において、第2部品は金属部品であり、第2パネルは金属パネルである。
【0060】
本開示の方法では、当該技術分野で一般に知られている任意の金属を使用してよい。本明細書で使用するのに好適な金属は、本開示を考慮して当業者によって容易に識別され得る。本明細書で使用するための典型的な金属としては、鋼、アルミニウム、マグネシウム、及びこれらの任意の組み合わせ、合金又は混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
上述のような第1金属部品と第2部品との接合方法又は二部分型アセンブリの作製方法又は第1金属部品と第2部品とのヘムフランジ接着接合方法のうち好ましい別の態様において、第2部品は複合部品であり、第2パネルは複合パネルである。
【0062】
本開示の方法では、当該技術分野で一般に知られている任意の複合材料を使用してよい。本明細書で使用するのに好適な複合材料は、本開示を考慮して当業者によって容易に識別され得る。
【0063】
特定の態様において、本明細書で使用するための複合材料は、エポキシ系材料、フェノール系材料、ポリアミド系材料、ポリエチレン系材料、ポリプロピレン系材料、ポリブタジエンテレフタレート系材料、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0064】
別の態様において、複合部品及び/又は複合パネルで使用するための複合材料は、樹脂マトリックス及び強化用繊維を含む。本明細書で使用するための典型的な樹脂マトリックスは、エポキシ系材料、フェノール系材料、ポリアミド系材料、ポリエチレン系材料、ポリプロピレン系材料、ポリブタジエンテレフタレート系材料、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から好ましく選択された基材を含む。特定の態様において、強化用繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0065】
本開示の別の態様によれば、二部分型アセンブリであって、
a)金属パネルを含む第1金属部品及び第2部品、及び
b)構造用接着フィルムの第1端部に近い第1部分と、構造用接着フィルムの第1端部とは反対側の第2端部に近い第2部分とを有する熱硬化された構造用接着フィルム、を備えており、
そうすることで、熱硬化された構造用接着フィルムが、第1金属部品と第2部品との間に設けられ、第1金属部品と第2部品とを互いに接着しており、熱硬化された構造用接着フィルムが、先に定義した通りに熱硬化性組成物を熱硬化することによって得られる、アセンブリが提供される。
【0066】
一つの特定の態様において、二部分型アセンブリは、
−第1金属部品が、第1本体部分と当該第1本体部分の第1端部と隣接する第1本体部分の縁に沿った第1フランジ部とを有する第1金属パネルを含み、
−第2部品が、第2本体部分と当該第2本体部分の第2端部と隣接する第2本体部分の縁に沿った第2フランジ部とを有する第2パネルを含み、
−第2パネルの第2フランジが、第1金属パネルの第1フランジに隣接した第2パネルの第2端部と共に第1金属パネルの第1本体部分一面に広がっており、
−第1金属パネルの第1フランジが、第2パネルの第2フランジの上に折り折り畳まれており、
−構造用接着フィルムの第1部分が、第2パネルの第2フランジと第1金属パネルの第1本体部分との間に設けられて(それらに接着されて)おり、
−構造用接着フィルムの第2部分が、第1金属パネルの第1フランジと第2パネルの第2本体部分との間に設けられて(それらに接着されて)いる、アセンブリが提供される。
【0067】
本開示の二部分型アセンブリの好ましい一態様において、第2部品は金属部品であり、第2パネルは金属パネルであることから、金属アセンブリが形成される。
【0068】
二部分型アセンブリの別の好ましい態様において、第2部品は複合部品であり、第2パネルは複合パネルであることから、いわゆるハイブリッド(金属−複合体)アセンブリが形成される。
【0069】
本開示の二部分型アセンブリにおいて使用するのに好適な複合材料は、第1金属部品と第2部品との接合方法又は二部分型アセンブリの作製方法又は第1金属部品と第2部品とのヘムフランジ接着接合方法に照らして上述の当業者によって容易に識別され得る。
【0070】
特定の態様において、金属部品の一方は屋根パネルであり、他の金属部品は支持構造、例えば、車両のシャーシである。金属部品及びパネルは典型的には鋼部品及びパネルであるが、他の金属部品及びパネル(例えば、アルミニウムパーツ及びパネル)も同様に、本開示に関連して使用され得る。特定の実施形態において、金属部品は塗装されておらず、すなわち金属部品はホワイトパーツ(white parts)(自動車産業において既知であり、このように称される)における本体部分である。
【0071】
典型的には、車両クロージャパネルのための金属パネルの接合部は、製造プロセスにおいて容易に形成されるが、パネルは、例えばグリース又は油により汚染されていることが多い。本方法と関連して使用される構造用接着フィルムは典型的に、金属部品及びパネルを充分な程度まで接合することができると同時に、結合部に良好な封止特性をもたらし、よって腐食耐性が付与される。
【0072】
更に、構造用接着フィルムは、一般的に、例えば油によってある程度汚染されていることがある金属部品及びパネルに適用することも可能であり、一般的に接着剤シートを適用する前に部品又はパネルを洗浄する必要がない。さらに、ロボットヘッドなどの自動化装置によって構造用接着フィルムを塗布することも想定され得る。その上、接合部を更に処理している間又は塗装工程などの製造工程中でかつ熱硬化して最終的で恒久的な接合を形成する前に、保持固定することを必要とせずに、金属部品が一緒に保持されるように充分な強度の初期接着接合を形成することも可能である。
【0073】
最終的な接着剤結合は、有利なことに良好な衝撃耐性を有し、好ましくは接合部において生じ得る応力が接合障害を生じさせることなく吸収され得るように、良好な破断伸びを有する。更に、本開示の構造用接着フィルムは、洗浄に対して充分な耐性を有し、したがって、接着剤シートによって合わさった金属部品接合部は、洗浄操作を(例えば、必要に応じて塗布の前に)行うことができる。
【0074】
以下の概略図を参照して本開示を更に説明するが、本開示はこれらに限定するものではない。
【0075】
図1は、本開示による金属部品アセンブリの断面図である。
【0076】
図2は、接着剤シートが適用された内側パネルと、内側パネルと接合する前の外側パネル10と、からなる断面図を示す実施形態である。
【0077】
図1は、本開示に関する実施形態を示す。
図1に示されるように、外側パネル10は、外側パネル10の端部13に近い本体部分の縁に沿ってフランジ12を有する、本体部分11を備えている。フランジ12は、内側パネル20のフランジ22の上に折り畳まれる。内側パネルのフランジ22は、端部23に近い内側パネルの本体部分21の縁沿いに存する。端部23は、外側パネル10のフランジ12に隣接する。構造用接着フィルム30は、内側パネル20と外側パネル10の間に位置する。構造用接着フィルム30の端部31に近い部分32は、外側パネル10の本体部分11と内側パネル20のフランジ22との間に位置する。構造用接着フィルム30を内側パネル20の上に折り畳むことで、構造用接着フィルム30の端部33に近い部分34は、外側パネル10のフランジ12と内側パネル20のフランジ22との間にある。構造用接着フィルム30は、接合部又はヘムにおいて2つの金属パネル同士を接合する。
【0078】
図2に例示される一態様によれば、例えば、
図1に例示されるような、本開示の金属部品アセンブリは、構造用接着フィルム30を内側金属パネル20に接着させることによって得られる場合がある。しかしながら、代わりに、金属パネル(例示せず)を接合する前に、構造用接着フィルム30を外側パネルに接着させることも可能である。
図2に示されるように、構造用接着フィルム30は、内側パネルのフランジ22の反対側で内側パネル20に接着され、接着シート30は、内側パネルの端部23の周囲で折り畳まれている。一つの特定の態様において、構造用接着フィルム30は、表面が周囲温度、典型的には約20℃で粘着性であり、この粘着性表面を介して内側パネルに接着され得る。典型的に、構造用接着フィルムは、当該構造用接着フィルムの熱硬化性組成物の硬化を必要とせずに、金属部品を金属接合部で一緒に保持するために充分な接着接合の形成を可能にする。
【0079】
外側パネル10はその後、外側パネルのフランジ12が内側パネル20のフランジ22の上でかつ構造用接着フィルム30の部分34の上に折り畳まれるようにして、折り畳まれ得る。したがって、外側パネル10が、2つのパネルの間に位置する構造用接着フィルムと共に内側パネル20の上に折り畳まれて、その結果、金属接合部が形成される。構造用接着フィルム30が内側パネル20の代わりに外側パネル10に接着された場合、構造用接着フィルム30は、外側パネル10を内側パネル20のフランジ22の上に折り畳んでいる間に、パネル同士の間で折り畳まれる。
【0080】
得られた金属接合部をその後加熱して、構造用接着フィルムの熱硬化性組成物の熱硬化を生じさせることで、パネル同士の間に恒久的な接着接合を形成して、接合部を封止する。この加熱工程は、便宜上、通常の車両製造プロセスの一部として、パネルアセンブリが塗装され焼成されるときに行われ得る。しかしながら、所望通りに、金属接合部の別個の加熱又は焼成工程も同様にもたらされ得る。典型的には、金属接合部を加熱して接着及び封止を生じさせるための温度は、60℃〜200℃であり、例えば、100℃〜150℃である。加熱は、1つ以上の工程において実行され得る。例えば、上記の範囲内の異なる温度において2つ以上の加熱周期が実行され得る。例えば、特定の態様において、第1加熱工程は、60℃〜100℃の温度まで金属接合部を加熱してもよく、更なる加熱工程において、より高い80℃〜200℃の温度が使用され得る。加熱時間は変えてもよいが、典型的には5分〜60分、例えば、10〜30分である。いくつかの加熱工程が使用されるときに、加熱工程それぞれの時間は変えてよいが、上記の範囲内にあり得る。
【0081】
別の特定の態様において、第1金属部品又は第2部品のうち一方は屋根パネルであり、他方の部品は支持構造、例えば車両のシャーシである。
【0082】
更に別の特定の態様において、第1金属部品は車体構造、具体的には車両ドアの外側金属構造であり、第2部品は車体構造の内側モジュール(又はパネル)、具体的には車両ドアの内側モジュールである。
【0083】
第2部品が複合材料を含む特定の態様によれば、特に軽量構造、具体的には車体構造、更に具体的には車両ドア構造が形成され得る。
【0084】
更に別の態様によれば、本開示は、先に定義した通りの熱硬化性組成物を熱硬化することにより得られる熱硬化された構造接着フィルムに関し、熱硬化性組成物の熱硬化は140〜200℃の温度において行われる。
【0085】
本開示の更に別の態様において、上述のような構造用接着フィルムは、巻き取ってロールを形成したテープの形状で提供される。一つの特定の態様において、本開示の構造用接着フィルムは、長さが100メートル超、好ましくは200メートル超、より好ましくは300メートル超。更に好ましくは500メートル超、なおより好ましくは700メートル超、なお更に好ましくは800メートル超でかつ幅が典型的に5〜40mm、特に10〜30mm、更には10〜20mmのフィルム材料のロールの形態でパッケージ化される。
【0086】
更に別の態様によれば、本開示は、二部分型アセンブリ、具体的には第1金属部品及び第2部品を備えるアセンブリを製造するための上述のような構造用接着フィルムの使用に関する。
【0087】
本開示は、更に、第1金属部品と第2部品とを接合するための、好ましくは第1金属部品と第2部品とをヘムフランジ接着接合するための上述のような構造用接着フィルムの使用にも関する。
【0088】
本開示による使用の一つの好ましい態様において、第2部品は金属部品であり、第2パネルは金属パネルである。
【0089】
本開示による使用の別の好ましい態様において、第2部品は複合部品であり、第2パネルは複合パネルである。本開示による使用において使用するのに好適な複合材料は、第1金属部品と第2部品との接合方法又は二部分型アセンブリの作製方法又は第1金属部品と第2部品とのヘムフランジ接着接合方法に照らして、上述の当業者によって容易に識別され得る。
【0090】
実施形態例
実施形態1は、熱硬化性組成物を含む構造用接着フィルムであって、
a)250g/当量未満の平均エポキシ当量を有するエポキシ化合物と、
b)60℃〜140℃までの軟化点を有する熱可塑性樹脂と、
c)エポキシ硬化剤と、
d)所望により、強靭化剤と、を含み、
エポキシ化合物と熱可塑性樹脂との重量比、及び所望により強靭化剤の量が、引張試験DIN EN ISO 527により測定したときに、破断伸びが少なくとも60%の構造用接着フィルムを提供するように選択される、構造用接着フィルムである。
【0091】
実施形態2は、実施形態1の構造用接着フィルムであって、熱硬化性組成物が、
a)平均エポキシ当量が250g/当量未満、好ましくは230g/当量未満、より好ましくは220g/当量未満、なお更に好ましくは200g/当量未満のエポキシ化合物30〜60重量%、好ましくは40〜60重量%、より好ましくは50〜60重量%と、
b)60℃〜140℃の軟化点を有する熱可塑性樹脂10〜50重量%、好ましくは15〜30重量%、より好ましくは20〜30重量%と、
c)エポキシ硬化剤2〜15重量%、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは2.5〜4重量%と、
d)所望により、強靭化剤と、を含み、
エポキシ化合物と熱可塑性樹脂との重量比が0.8〜4、好ましくは1〜3、より好ましくは1.5〜2.5である、構造用接着フィルムである。
【0092】
実施形態3は、前述の実施形態のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、エポキシ化合物の重量平均分子量が700g/モル未満、好ましくは500g/モル未満、より好ましくは400g/モル未満である、構造用接着フィルムである。好ましくは、エポキシ化合物の重量平均分子量は、200〜400g/モル、より好ましくは300〜400g/モル、なお更に好ましくは350〜400g/モルである。
【0093】
実施形態4は、前述の実施形態のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、エポキシ化合物の平均エポキシ当量が230g/当量未満、好ましくは220g/当量未満、より好ましくは200g/当量未満である、構造用接着フィルムである。より好ましくは、エポキシ化合物の平均エポキシ当量は、100〜200g/当量、好ましくは150〜200g/当量、より好ましくは170〜200g/当量である。
【0094】
実施形態5は、前述の実施形態のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、熱可塑性樹脂の軟化点が、70℃〜120℃、好ましくは80℃〜100℃、より好ましくは85℃〜95℃である、構造用接着フィルムである。
【0095】
実施形態6は、前述の実施形態のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、熱可塑性樹脂が、ポリエーテル熱可塑性樹脂、ポリプロピレン熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル熱可塑性樹脂、ポリエステル熱可塑性樹脂、ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂、ポリスチレン熱可塑性樹脂、ポリカーボネート熱可塑性樹脂、ポリアミド熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物の任意の組み合わせからなる群から選択される、構造用接着フィルムである。
【0096】
実施形態7は、前述の実施形態のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、熱可塑性樹脂が、ポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂からなる群から選択され、好ましくはフェノキシ樹脂、ポリエーテルジアミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂(具体的にはポリビニルブチラール樹脂)、及びそれらの任意の組み合わせ又は混合物から選択される、構造用接着フィルムである。
【0097】
実施形態8は、前述の実施形態のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂類からなる群から選択される、構造用接着フィルムである。
【0098】
実施形態9は、前述の実施形態のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、熱硬化性組成物がコア−シェル強靭化剤からなる群から好ましく選択される強靭化剤を含む、構造用接着フィルムである。
【0099】
実施形態10は、実施形態9の構造用接着フィルムであって、熱硬化性組成物が強靭化剤を10〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%の量で含む、構造用接着フィルムである。
【0100】
実施形態11は、前述の実施形態のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、熱硬化性組成物が更に、非カプセル化発泡剤及びカプセル化発泡剤からなる群から好ましく選択される発泡剤を含む、構造用接着フィルムである。
【0101】
実施形態12は、実施形態11の構造用接着フィルムであって、熱硬化性組成物が発泡剤を0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1〜2重量%の量で含む、構造用接着フィルムである。
【0102】
実施形態13は、前述の実施形態のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、熱硬化性組成物が更に、充填剤を好ましくは10重量%未満の量で含み、充填剤が、シリカを含む無機充填剤からなる群から好ましく選択される、構造用接着フィルムである。
【0103】
実施形態14は、前述の実施形態のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、エポキシ化合物と熱可塑性樹脂との重量比、及び所望により強靭化剤の量が、引張試験DIN EN ISO 527により測定したときに、破断伸びが少なくとも100%、好ましくは少なくとも200%、より好ましくは少なくとも500%、更に好ましくは少なくとも700%、なお更に好ましくは少なくとも900%の構造用接着フィルムが提供されるように選択される、構造用接着フィルムである。
【0104】
実施形態15は、実施形態11〜14のうちいずれかの構造用接着フィルムであって、発泡剤の量が、構造用接着フィルムを硬化反応の活性化(開始)温度よりも高い硬化温度に置かれたときでかつ自由膨張率を試験法欄に記載されている通りに測定したときに、硬化時の自由膨張率が10〜40%、好ましくは10〜30%、より好ましくは15〜25%の構造用接着フィルムを提供するように選択される、構造用接着フィルムである。
【0105】
実施形態16は、二部分型アセンブリの作製方法であって、前記方法が、
a)金属パネルを含む第1金属部品及び第2部品を提供する工程と
b)実施形態1〜15のうちいずれかの構造用接着フィルムを供給する工程と、
c)第1金属部品と第2部品とを接着することにより、金属接合部を形成する工程と、
d)構造用接着フィルムの熱硬化性組成物の熱硬化が生じるように、金属接合部を加熱する工程と、を含む、方法である。
【0106】
実施形態17は、第1金属部品と第2部品との接合方法であって、前記方法が、
a)金属パネルを含む第1金属部品及び第2部品を提供する工程と、
b)実施形態1〜15のうちいずれかの構造用接着フィルムを供給する工程と、
c)第1金属部品と第2部品とをエポキシ硬化剤の活性化温度未満の温度で接着することにより、金属接合部を形成する工程と、
d)構造用接着フィルムの熱硬化性組成物の熱硬化を生じさせるように、金属接合部をエポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱する工程と、を含む、方法である。
【0107】
実施形態18は、第1金属部品と第2部品とをヘムフランジ接着接合するための実施形態17の方法であって、
−構造用接着フィルムが、当該構造用接着フィルムの第1端部に近い第1部分と、当該構造用接着フィルムの第1端部とは反対側の第2端部に近い第2部分とを有し
−第1金属部品が、第1本体部分と当該第1本体部分の第1端部と隣接する第1本体部分の縁に沿った第1フランジ部とを有する第1金属パネルを含み、
−第2部品が、第2本体部分と当該第2本体部分の第2端部と隣接する第2本体部分の縁に沿った第2フランジ部とを有する第2パネルを含み、
前記方法が、
a)構造用接着フィルムを第1金属パネル又は第2パネルにエポキシ硬化剤の活性化温度未満の温度で接着させ、接着して折り畳むことにより、金属接合部が形成される工程であって、構造用接着フィルムが、
i.構造用接着フィルムの第1部分が、第2パネルの第2フランジと第1金属パネルの第1本体部分との間に供給され、
ii.構造用接着フィルムの第2部分が、第1金属パネルの第1フランジと第2パネルの第2本体部分との間に供給されるように、折り畳まれている、工程と、
b)構造用接着フィルムの熱硬化性組成物の熱硬化を生じさせるように、金属接合部をエポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱する工程、を含む、方法である。
【0108】
実施形態19は、実施形態18の方法であって、構造用接着フィルムは、構造用接着フィルムが第2パネルの第2フランジの反対側に接着されるように、第2パネルの第2フランジに接着されかつ第2パネルの第2端部の周囲で折り畳まれた状態で第2パネルに接着される、方法である。
【0109】
実施形態20は、実施形態16〜19のうちいずれかの方法であって、第2部品が金属部品であり、第2パネルが金属パネルである、方法である。
【0110】
実施形態21は、実施形態16〜19のうちいずれかの方法であって、第2部品が複合部品であり、第2パネルが複合パネルである、方法である。
【0111】
実施形態22は、実施形態21の方法であって、複合部品及び/又は複合パネルが、樹脂マトリックス及び強化用繊維を含む、方法である。
【0112】
実施形態23は、実施形態22の方法であって、樹脂マトリックスが、エポキシ系材料、フェノール系材料、ポリアミド系材料、ポリエチレン系材料、ポリプロピレン系材料、ポリブタジエンテレフタレート系材料、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択された基材を含む、方法である。
【0113】
実施形態24は、実施形態22又は23のいずれかの方法であって、強化用繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される方法である。
【0114】
実施形態25は、二部分型アセンブリであって、
a)金属パネルを含む第1金属部品及び第2部品と、
b)構造用接着フィルムの第1端部に近い第1部分と、構造用接着フィルムの第1端部とは反対側の第2端部に近い第2部分と、を有する、熱硬化された構造用接着フィルムと、を備え、
熱硬化された構造用接着フィルムが、第1金属部品と第2部品との間に設けられ、第1金属部品と第2部品とを互いに接着しており、熱硬化された構造用接着フィルムが、実施形態1〜15のいずれかに定義された熱硬化性組成物を熱硬化することにより得られる、アセンブリである。
【0115】
実施形態26は、実施形態25の金属部品アセンブリであって、
−第1金属部品が、第1本体部分と当該第1本体部分の第1端部と隣接する第1本体部分の縁に沿った第1フランジ部とを有する第1金属パネルを含み、
−第2部品が、第2本体部分と当該第2本体部分の第2端部と隣接する第2本体部分の縁に沿った第2フランジ部とを有する第2パネルを含み、
−第2パネルの第2フランジが、第1金属パネルの第1フランジに隣接した第2パネルの第2端部と共に第1金属パネルの第1本体部分一面に広がっており、
−第1金属パネルの第1フランジが、第2パネルの第2フランジの上に折り畳まれており、
−構造用接着フィルムの第1部分が、第2パネルの第2フランジと第1金属パネルの第1本体部分との間に設けられて(それらに接着されて)おり、
−構造用接着フィルムの第2部分が、第1金属パネルの第1フランジと第2パネルの第2本体部分との間に設けられて(それらに接着されて)いる、アセンブリである。
【0116】
実施形態27は、実施形態25又は26のアセンブリであって、第2部品が金属部品であり、第2パネルが金属パネルである、アセンブリである。
【0117】
実施形態28は、実施形態25又は26のアセンブリであって、第2部品が複合部品であり、第2パネルが複合パネルである、アセンブリである。
【0118】
実施形態29は、実施形態28のアセンブリであって、複合部品及び/又は複合パネルが樹脂マトリックス及び強化用繊維を含む、アセンブリである。
【0119】
実施形態30は、実施形態29のアセンブリであって、樹脂マトリックスが、エポキシ系材料、フェノール系材料、ポリアミド系材料、ポリエチレン系材料、ポリプロピレン系材料、ポリブタジエンテレフタレート系材料、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択された基材を含む、アセンブリである。
【0120】
実施形態31は、実施形態29又は30のアセンブリであって、強化用繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、アセンブリである。
【0121】
実施形態32は、実施形態25〜31のうちのいずれかのアセンブリであって、第1金属部品及び第2部品のうち一方が屋根パネルを含み、他方の部品が支持構造を含む、アセンブリである。
【0122】
実施形態33は、実施形態1〜15のうちいずれかに定義された熱硬化性組成物を熱硬化することによって得られる熱硬化された構造用接着フィルムであって、熱硬化性組成物の熱硬化が140℃〜200℃の温度で行われる、熱硬化された構造用接着フィルムである。
【0123】
実施形態34は、巻き取ってロールを形成したテープの形状の、実施形態1〜15のうちのいずれかの構造用接着フィルムである。
【0124】
実施形態35は、二部分型アセンブリ、具体的には第1金属部品及び第2部品を備えるアセンブリを製造するための、実施形態1〜15のうちのいずれかの構造用接着フィルムの使用である。
【0125】
実施形態36は、第1部品と第2部品とを接合するための、好ましくは第1金属部品と第2部品とのヘムフランジ接着接合するための、実施形態1〜15のうちのいずれかの構造用接着フィルムの使用である。
【0126】
実施形態37は、第2部品が、好ましくは金属パネルを含む金属部品である、実施形態35又は36のいずれかの使用である。
【0127】
実施形態38は、第2部品が、好ましくは複合パネルを含む複合部品である、実施形態35又は36のいずれかの使用である。
【0128】
実施形態39は、複合部品及び/又は複合パネルが樹脂マトリックス及び強化用繊維を含む、実施形態38の使用である。
【0129】
実施形態40は、樹脂マトリックスが、エポキシ系材料、フェノール系材料、ポリアミド系材料、ポリエチレン系材料、ポリプロピレン系材料、ポリブタジエンテレフタレート系材料、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択された基材を含む、実施形態39の使用である。
【0130】
実施形態41は、強化用繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、実施形態38又は39のいずれかの使用である。
【0131】
以下の実施例により本発明を更に説明する。以下の実施例はあくまで例示を目的としたものにすぎず、付属の「特許請求の範囲」に対して限定的であることを意図するものではない。
【実施例】
【0132】
試験方法
1.DIN EN ISO 527(DIN 53 455)による引張試験
未硬化の構造用接着フィルムの破断伸びを決定するための引張試験。
【0133】
試料調製:
接着フィルムを標準状態で24時間にわたって調湿させる。
【0134】
接着フィルムのストリップ片(幅25mm×長さ100mm)を切断する。全長の中央に寸法50mmの固定されていないテープがとれるように、左右をマスキングテープで保護する。保護範囲によって、試料を引張試験機内に取り付けることができる。
【0135】
試料の試験:
試験は、空気圧掴み具が装備された引張試験機、Zwick試験機Z05(200Nの測定ヘッド)で行う。試料を、間隙50mmの引張試験機の掴み具に、先ず上部掴み具、下部掴み具の順に取り付ける。ストリップ片を、慎重に垂直に固定する。試験速度は300mm/分である。検査終点(Audit End)は、F(最大落下)94%に設定する。こうして、試料の破断伸びを測定する。
【0136】
2.DIN EN 1465による重複せん断強度
重複せん断強度は、以下の寸法100mm×25mm×0.8mmを有しかつ3g/m
2の油(Fuchs Petrolub AG(ドイツ)から市販されている、PL 3802−39S)で覆われた、熱浸漬した亜鉛メッキ鋼ストリップ片(Societee Etalon(France)から、Etalon steel(参照記号GC 300500AA)として市販されているもの)について、13mm/分のクロスヘッド速度で動作するZwick Z050引張試験機(Zwick GmbH & Co.KG(Ulm、ドイツ)から市販されているもの)を使用し、DIN EN 1465に従って測定する。重複せん断強度試験アセンブリの準備のため、試験されるエポキシフィルム(0.7mmの厚さを有する)を、第1鋼ストリップ片の一端に適用し、第2鋼ストリップ片で被覆することで、10mmの重複接合部を形成する。重複接合部をその後、2つのバインダークリップを使用して一緒に取り付けて、試験アセンブリを、空気循環炉に180℃で30分間配置した。ここで、試験アセンブリは、3℃/分の勾配を使用して、加熱及び冷却させる。試験アセンブリをその後、試験前に周囲条件23±2℃及び相対湿度50±% %で24時間にわたって調湿する。重複せん断強度を測定するための試験温度は−40℃〜室温〜+80℃まで変化するので、Zwick引張試験で試験する前に試験アセンブリを環境チャンバ(RS Simulatoren(Oberhausen,Germany)により市販)内に配置して、重複せん断強度を−40℃、室温(23℃±2℃)及び+80℃で測定する。各実施例毎に3つの試料を3つの異なる試験温度で測定して、その結果の平均を算出してMPaで記録する。
【0137】
3.DIN EN 1464による接着剥離強度。
接着剥離強度は、以下の寸法150mm×25mm×0.8mmを有しかつ3g/m
2油(Fuchs Petrolub AG(Germany)から市販されているPL 3802−39s)で覆われた、熱浸漬した亜鉛メッキした鋼ストリップ片(Societee Etalon(フランス)からEtalon鋼(参照記号GC 300500AA)として市販されているもの)について、Zwick Z050引張試験機(Zwick GmbH & Co.KG(Ulm、ドイツ)から市販されているもの)を使用し、DIN EN 1464に従って測定する。クロスヘッド速度をすべての試験において100mm/分に設定し、接着剥離強度を23℃±2℃及び相対湿度50±5%で測定する。試験アセンブリを調製するために、マスキングテープ(3M(米国)から市販されているScotch(商標)2610マスキングテープ)を第1鋼ストリップ片に適用する。ここで、マスキングテープは、接合領域を可視化するために適用される。接合領域の寸法は、100mm×25mmである。次いで、試験する実施例材料を、印をつけた接合領域に適用し、第1鋼ストリップ片と同じ寸法の第2鋼ストリップ片で覆う。2つのストリップ片はその後、先ず手で押えてから、試験アセンブリを適所に保持するために、接合ラインに沿って2つの結合クリップを使用して一緒に取り付ける。試験アセンブリを空気循環炉内において180℃で30分にわたって硬化する。ここで、試験アセンブリは、3℃/分の勾配を使用して、加熱及び冷却させる。試験アセンブリをその後、試験前に周囲条件23±2℃及び相対湿度50±5%で24時間にわたって調湿する。実施例材料毎に、3つの接着剥離強度試験アセンブリを調製して、試験結果の平均を算出する。試験結果をN/25mm単位で報告する。
【0138】
4.洗浄試験。
車両のドアを例証するために、小さな寸法のヘムフランジを製造する。
【0139】
ここでヘムフランジは、200mm×200mm×1mmの寸法を有する2つの鋼パネル(Societee Etalon(フランス)からEtalon steel(参照記号GC 300500AA)として市販されているもの)を使用して、第1工程において、第1鋼パネルの縁部に200mm×20mm×0.7mmの寸法を有する実施例フィルムシートを適用することによって形成する。第2工程において、第1鋼パネルの延長縁部(この延長部の長さは7〜8mmであった)を、第2鋼パネルの縁部の上に折り返すことで、実施例フィルムシートをちょうど2つの鋼パネルの間に位置付ける。得られた試験アセンブリをその後、3重量%のクリーナー(Chemische Fabrik Dr.Stocker GmbH(Duisburg、ドイツ)からLKW Reinigerとして市販されているもの)を含む55℃に予熱した水溶液に15分間に浸漬する。その後、どの試験アセンブリも空気循環炉内で180℃において30分間にわたって硬化する。ここで、試験アセンブリは、3℃/分の勾配を使用して、加熱及び冷却させる。次いで、試験アセンブリを、試験前に周囲条件23±2℃及び相対湿度50±5%で24時間にわたって調湿する。その後、全ての試験アセンブリの外観検査を行う。孔の多い硬化した接合ラインをもたらす試験アセンブリは不合格とみなし、また、目に見える気泡を有さずに、良好に封止された接合ラインを示すアセンブリは合格と評価する。
【0140】
5.膨張性の構造用接着フィルムの自由膨張率。
膨張性の構造用接着フィルムの自由膨張率(%)は、EN 2667−3に従って求める。先ず、EN 2090に従って、寸法120mm×120mm及びシート厚さ1〜2mmの正方形のアルミニウム合金シート2024−T3を切断して、検査用サンプルを準備する。次の工程において、寸法100mm×100mmの正方形の接着フィルム試料を切り抜く。次いで、正方形の接着剤をアルミニウム合金シートの中央に付着させる。硬化する前に、未硬化前駆体検査用サンプルを0.01mm精度のフラットエッジマイクロメータにより4℃以下の温度で測定する(測定は、フィルムがべたべたして厚さ計測ツールに付着するのを避けるために周囲よりも低い温度(lower temperature that ambient)で行う)。次に、前駆体検査用サンプルを、MPCから入手可能でかつ3℃/分の昇温速度で動作する加熱空気循環炉を用いて180℃±3℃において30分間にわたって硬化する。硬化後の厚さを測定する前に、検査用サンプルはいずれも、硬化した検査用サンプルが周囲温度に戻るまで、室温23℃±2℃及び相対湿度50±5%で保管する。その後、膨張率を次の式により算出する。
膨張率(%)=((厚さ
硬化−厚さ
未硬化)/厚さ
未硬化)×100
【0141】
【表1】
【0142】
(実施例)
実施例1〜2及び比較例C−1の調製
表1の材料一覧に記載の各成分を高速ミキサー(Hauschild Engineering製のDAC 150 FVZスピードミキサー)で3000rpmで攪拌して混合することによって、本開示のエポキシ系組成物を調製する。表2において、全ての濃度は重量%で表されている。比較例C−1には熱可塑性樹脂が含まれていない。
【0143】
第1工程において、エポキシ樹脂と熱可塑性フェノキシ樹脂とコアシェル強靭化剤を2分間混合する。混合物を、その後、95℃の温度のエアー駆動式炉内に約1時間入れる。高温の混合物を再度高速ミキサー内で3000rpmにおいて2分間撹拌することで、3つの成分を完全に分散させることができる。次いで、ミキサーの温度を60℃まで下げて、2種の硬化剤(Amnicure CG1200及びOmnicure U52M)を物理的発泡剤、及び所望により充填剤材料及び/又はガラスビーズと共に混合物に加えてから、減圧下で更に2分間混合する。得られた混合物は、一様な粘稠性のペーストである。ナイフコーターを用いて混合物を厚さ0.4mmのフィルムに高温被覆する。形成されたフィルムは冷却した際に柔軟かつ均一である。
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【0146】
表3に示す結果から分かるように、本開示の構造用接着フィルムは、本開示にしたがっていない接着フィルムよりもはるかに高い破断時の伸びをもたらす。比較例の接着フィルムC−2は非常に脆弱な材料として得られ、上述のような引張試験には適さない。
【0147】
【表4】