特許第6800243号(P6800243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800243
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20201207BHJP
   H02K 3/38 20060101ALI20201207BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   H02K3/04 J
   H02K3/38 Z
   H02K3/50 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-556128(P2018-556128)
(86)(22)【出願日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2016087416
(87)【国際公開番号】WO2018109909
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2019年3月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 真史
(72)【発明者】
【氏名】荒井 利夫
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−025704(JP,A)
【文献】 特開2000−224794(JP,A)
【文献】 特開平01−186138(JP,A)
【文献】 特開2007−104812(JP,A)
【文献】 特開2008−187875(JP,A)
【文献】 特開2010−063233(JP,A)
【文献】 特開2003−230257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 3/38
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心に設けられた三相巻線と、
前記三相巻線の中性点を収納する中性点収納部と、
を備え、
前記三相巻線の各相は、
銅線からなる第1巻線部と、
アルミニウム線からなる第2巻線部と、を含み、
前記中性点収納部は、
各相の前記第1巻線部の中性点と、各相の前記第2巻線部の中性点と、を収納するものであり、
絶縁性をもつ少なくとも1つの接触防止部と、
前記接触防止部により仕切られた複数の収納部と、を有し、
前記第1巻線部の中性点と、前記第2巻線部の中性点とは、それぞれ異なる前記収納部に収納され
前記三相巻線の各相は、
前記第1巻線部を一又は複数組有すると共に、前記第2巻線部を一又は複数組有し、
前記第1巻線部の中性点および前記第2巻線部の中性点のうちの少なくとも一方は、複数設けられており、
前記第1巻線部の中性点および前記第2巻線部の中性点のうちの少なくとも2つは、1つの前記収納部に収納されている電動機。
【請求項2】
固定子鉄心に設けられた三相巻線と、
前記三相巻線の中性点を収納する中性点収納部と、
を備え、
前記三相巻線の各相は、
銅線からなる第1巻線部と、
アルミニウム線からなる第2巻線部と、を含み、
前記中性点収納部は、
各相の前記第1巻線部の中性点と、各相の前記第2巻線部の中性点と、を収納するものであり、
絶縁性をもつ少なくとも1つの接触防止部と、
前記接触防止部により仕切られた複数の収納部と、を有し、
前記第1巻線部の中性点と、前記第2巻線部の中性点とは、それぞれ異なる前記収納部に収納され、
前記三相巻線の各相は、
前記第1巻線部を一又は複数組有すると共に、前記第2巻線部を一又は複数組有し、
前記第1巻線部の中性点および前記第2巻線部の中性点のうちの少なくとも一方は、複数設けられており、
前記第1巻線部の中性点および前記第2巻線部の中性点のうちの少なくとも2つは、1つの前記収納部に収納され、
前記収納部の数は、前記第1巻線部の中性点の数と前記第2巻線部の中性点の数との和よりも少ない電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動機には、軽量化および原価低減のため、固定子巻線が銅とアルミニウムの両方の導体で構成されたものがある。しかし、アルミニウムは、銅に比べて、水溶液中における陽イオンへのなりやすさの尺度であるイオン化傾向が大きい。このため、Y結線された三相巻線の中性点において、アルミニウムと銅とが直接接触すると、アルミニウムが銅にイオンを放出して電線が腐食することから、接触抵抗の増加等につながり、接続不良を生ずる可能性が高い。こうした電線の腐食は、異種金属腐食、あるいは電食と呼ばれている。
【0003】
この異種金属腐食を回避するため、従来から、中性点の結線方法に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の電動機は、中性点に、アルミニウムよりもイオン化傾向が大きい材料で形成された電食防止部を設け、アルミニウムを含む材料で形成された巻線の代わりに電食防止部を電食させるという構成を採っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−25704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電動機は、Y結線の中性点を構成する中性点用接続部を溶接により形成し、形成した中性点用接続部を電食防止部で覆ったあと、さらに絶縁部材で絶縁する必要がある。すなわち、特許文献1の構成では、電食防止部を設けることで部材の数が増えると共に、電食防止部を設ける手間により電動機の製造作業の効率が低下し、かつ電食防止部の増設費用により材料コストが上昇するという課題がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、中性点における異種金属腐食を、少ない部材数でコストを抑えて効率よく防止する電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電動機は、固定子鉄心に設けられた三相巻線と、三相巻線の中性点を収納する中性点収納部と、を備え、三相巻線の各相は、銅線からなる第1巻線部と、アルミニウム線からなる第2巻線部と、を含み、中性点収納部は、各相の第1巻線部の中性点と、各相の第2巻線部の中性点と、を収納するものであり、絶縁性をもつ少なくとも1つの接触防止部と、接触防止部により仕切られた複数の収納部と、を有し、第1巻線部の中性点と、第2巻線部の中性点とは、それぞれ異なる収納部に収納され、三相巻線の各相は、第1巻線部を一又は複数組有すると共に、第2巻線部を一又は複数組有し、第1巻線部の中性点および第2巻線部の中性点のうちの少なくとも一方は、複数設けられており、第1巻線部の中性点および第2巻線部の中性点のうちの少なくとも2つは、1つの収納部に収納されている
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1巻線部の中性点と、第2巻線部の中性点とが、それぞれ異なる収納部に収納されていることから、絶縁部材のみで異種金属同士の接触を防ぐことができるため、中性点における異種金属腐食を、少ない部材数でコストを抑えて効率よく防止し、信頼性の高い三相電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る電動機の側面を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る電動機のY結線方式を採用した固定子巻線の結線図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る電動機の中性点と中性点収納部とを示す側面図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る電動機のY結線方式を採用した固定子巻線の結線図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る電動機の中性点と中性点収納部とを示す側面図である。
図6】本発明の実施の形態3に係る電動機のY結線方式を採用した固定子巻線の結線図である。
図7】本発明の実施の形態3に係る電動機の中性点と中性点収納部とを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電動機の側面を示す概略図である。図1に示すように、電動機200は、三相交流電源により駆動する三相電動機である。電動機200は、外郭を形成する本体外殻210と、円環状に形成された固定子220と、固定子220の内周側に回転自在に設けられた回転子230と、回転子230に連結されたシャフト240と、を有している。固定子220は、固定子鉄心220aと、Y結線された固定子巻線である三相巻線100(図2参照)と、を有している。三相巻線100は、固定子鉄心220aに巻回されて設けられている。
【0011】
図2は、本発明の実施の形態1に係る電動機のY結線方式を採用した固定子巻線の結線図である。図2に例示するように、電動機200は、三相巻線100の巻線方式として、3本巻のY結線方式を採用している。
【0012】
三相巻線100は、三相交流電源を供給する電源装置又は商用電源(図示せず)に接続されており、3つの独立した巻線の集合体を有している。より具体的に、三相巻線100は、独立した巻線の集合体として、三相交流電源のU相に接続されるU相巻線部10と、三相交流電源のV相に接続されるV相巻線部20と、三相交流電源のW相に接続されるW相巻線部30と、を有している。
【0013】
U相巻線部10、V相巻線部20、およびW相巻線部30は、それぞれ、銅線2本とアルミニウム線1本とによる3本巻である。すなわち、U相巻線部10は、銅線からなるU相銅巻線部11およびU相銅巻線部12と、アルミニウム線からなるU相アルミニウム巻線部13と、を有している。V相巻線部20は、銅線からなるV相銅巻線部21およびV相銅巻線部22と、アルミニウム線からなるV相アルミニウム巻線部23と、を有している。W相巻線部30は、銅線からなるW相銅巻線部31およびW相銅巻線部32と、アルミニウム線からなるW相アルミニウム巻線部33と、を有している。
【0014】
U相銅巻線部11、U相銅巻線部12、V相銅巻線部21、V相銅巻線部22、W相銅巻線部31、およびW相銅巻線部32は、それぞれ、本発明の「第1巻線部」に相当する。U相アルミニウム巻線部13、V相アルミニウム巻線部23、およびW相アルミニウム巻線部33は、それぞれ、本発明の「第2巻線部」に相当する。すなわち、三相巻線100は、各相の第1巻線部の一端同士が接続されてY結線されると共に、各相の第2巻線部の一端同士が接続されてY結線されている。
【0015】
ここで、銅線は、例えば銅合金のような、銅を含む材料で形成された電線を含むものとする。また、アルミニウム線は、例えばアルミニウム合金のような、アルミニウムを含む材料で形成された電線を含むものとする。
【0016】
U相銅巻線部11は、巻線11aと、端末の一方である端末線11bと、端末の他方である端末線11cと、を有している。U相銅巻線部12は、巻線12aと、端末の一方である端末線12bと、端末の他方である端末線12cと、を有している。U相アルミニウム巻線部13は、巻線13aと、端末の一方である端末線13bと、端末の他方である端末線13cと、を有している。
【0017】
V相銅巻線部21は、巻線21aと、端末の一方である端末線21bと、端末の他方である端末線21cと、を有している。V相銅巻線部22は、巻線22aと、端末の一方である端末線22bと、端末の他方である端末線22cと、を有している。V相アルミニウム巻線部23は、巻線23aと、端末の一方である端末線23bと、端末の他方である端末線23cと、を有している。
【0018】
W相銅巻線部31は、巻線31aと、端末の一方である端末線31bと、端末の他方である端末線31cと、を有している。W相銅巻線部32は、巻線32aと、端末の一方である端末線32bと、端末の他方である端末線32cと、を有している。W相アルミニウム巻線部33は、巻線33aと、端末の一方である端末線33bと、端末の他方である端末線33cと、を有している。
【0019】
また、三相巻線100は、銅中性点40と、アルミニウム中性点50と、を有している。銅中性点40は、銅線からなる複数の第1巻線部が接合されて形成された中性点である。より具体的に、銅中性点40は、二組の第1巻線部、すなわち、各相の2つの第1巻線部同士が接合されて形成された中性点である。アルミニウム中性点50は、アルミニウム線からなる複数の第2巻線部が接合されて形成された中性点である。より具体的に、アルミニウム中性点50は、一組の第2巻線部、すなわち、各相の一つの第2巻線部同士が接合されて形成された中性点である。
【0020】
端末線11b、端末線12b、端末線21b、端末線22b、端末線31b、および端末線32bは、銅中性点40において接続されている。端末線13b、端末線23b、および端末線33bは、アルミニウム中性点50において接続されている。すなわち、三相巻線100では、銅線6本が接続された銅中性点40と、アルミニウム線3本が接続されたアルミニウム中性点50とが形成されている。ここで、銅中性点40は、本発明の「第1巻線部の中性点」に相当し、アルミニウム中性点50は、本発明の「第2巻線部の中性点」に相当する。
【0021】
本実施の形態1において、銅中性点40は、端末線11b、端末線12b、端末線21b、端末線22b、端末線31b、および端末線32bを、電線絶縁被覆を除去した状態で束ね、周方向に沿って捩った後に溶接することによって形成されている。アルミニウム中性点50も、銅中性点40と同様、端末線13bと端末線23bと端末線33bとを溶接することによって形成されている。
【0022】
もっとも、銅中性点40およびアルミニウム中性点50を形成する方法としては、上記以外の種々の方法を用いることができる。例えば、電線を接合する方法としては、はんだ付け、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接、ロウ付け溶接、又は圧着端子による連結等の手段を用いることができる。すなわち、銅中性点40およびアルミニウム中性点50の接合部材としては、種々の部材を用いることができる。
【0023】
また、U相巻線部10は、リード線300を介してU相に接続されるU相接続端子110を有している。端末線11cと端末線12cと端末線13cとは、U相接続端子110において連結されている。V相巻線部20は、リード線300を介してV相に接続されるV相接続端子120を有している。端末線21cと端末線22cと端末線23cとは、V相接続端子120において連結されている。W相巻線部30は、リード線300を介してW相に接続されるW相接続端子130を有している。端末線31cと端末線32cと端末線33cとは、W相接続端子130において連結されている。
【0024】
さらに、電動機200は、三相巻線100の中性点、すなわち銅中性点40とアルミニウム中性点50とを収納する中性点収納部60を有している。なお、図2では、便宜上、中性点収納部60を破線で示している。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態1に係る電動機の中性点と中性点収納部とを示す側面図である。図3に示すように、銅中性点40とアルミニウム中性点50とは、絶縁性の中性点収納部60に挿入される。
【0026】
中性点収納部60は、フィルム状の絶縁紙を複数回円筒状に巻くことにより形成された側部61を有している。中性点収納部60において、円筒状の側部61における一端側を閉塞した端部62と、絶縁性をもつ接触防止部64とは、超音波等で溶着されている。また、中性点収納部60において、円筒状の側部61における他端側には、開口部63が形成されている。すなわち、中性点収納部60は、接触防止部64によって仕切られた第1収納部70と第2収納部80とを有している。
【0027】
銅中性点40とアルミニウム中性点50とは、開口部63から挿入され、銅中性点40は第1収納部70に収納され、アルミニウム中性点50は第2収納部80に収納されている。
【0028】
本実施の形態1において、中性点収納部60は、絶縁紙により形成されている。中性点収納部60を構成する絶縁紙は、例えば、厚さ100μm程度の絶縁紙が複数枚積層され、全体の厚さが500μm程度に形成されたものを好適に用いることができる。中性点収納部60を構成する絶縁紙の材質としては、NOMEX、もしくはPET(polyethylene terephthalate)等の溶着可能なものを採用することができる。
【0029】
ところで、アルミニウムは、銅に比べてイオン化傾向が大きい。このため、アルミニウムと銅とが直接接触すると、異種金属接触によりアルミニウムが銅にイオンを放出してアルミニウムが腐食する異種金属腐食が発生する。この点、本実施の形態1の電動機200は、中性点収納部60において接触防止部64が仕切りの役割を果たすことにより、銅中性点40とアルミニウム中性点50との接触、すなわち銅線とアルミニウム線とが接触することを防ぐことができるため、中性点における異種金属腐食を防止することができる。
【0030】
すなわち、電動機200は、三相巻線100における中性点の結線方法を改良したものであり、銅中性点40とアルミニウム中性点50とが、それぞれ第1収納部70と第2収納部80とに収納されている。よって、絶縁部材としての中性点収納部60のみにより、異種金属同士の接触を防ぐことができるため、中性点における異種金属腐食を少ない部材数でコストを抑えて効率よく防止し、信頼性の高い三相電動機を提供することができる。
【0031】
ここで、銅中性点40の接合部材と、アルミニウム中性点50の接合部材とは、同じ種類の金属であってもよく、互いに異なる種類の金属であってもよい。仮に、銅中性点40の接合部材とアルミニウム中性点50の接合部材とが異種金属であり、かつ、銅中性点40の接合部材とアルミニウム中性点50の接合部材とのイオン化傾向の差が大きい場合でも、中性点収納部60の内部では、銅中性点40とアルミニウム中性点50との間に接触防止部64が介在する。よって、銅中性点40の接合部材とアルミニウム中性点50の接合部材とは接触しないため、異種金属腐食を防止することができる。
【0032】
実施の形態2.
本実施の形態2の電動機の全体的な構成は、図1を参照して説明した電動機200と同様であるため、以下では同一の符号を用いるものとする。また、前述した実施の形態1と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態2に係る電動機200のY結線方式を採用した固定子巻線の結線図である。本実施の形態2に係る電動機200は、Y結線され、固定子鉄心220aに設けられた三相巻線100Aを有している。三相巻線100Aは、図4に示すように、銅中性点40aと、銅中性点40bと、アルミニウム中性点50と、を有している。銅中性点40aおよび銅中性点40bは、それぞれ、一組の第1巻線部、すなわち、各相の一つの第1巻線部同士が接合されて形成された中性点である。
【0034】
端末線11b、端末線21b、および端末線31bは、銅中性点40aにおいて接続されている。端末線12b、端末線22b、および端末線32bは、銅中性点40bにおいて接続されている。すなわち、三相巻線100Aでは、銅線3本が接続された銅中性点40aと、銅線3本が接続された銅中性点40bと、アルミニウム線3本が接続されたアルミニウム中性点50とが形成されている。銅中性点40aと銅中性点40bとは、実施の形態1における銅中性点40と同様に形成されている。
【0035】
ここで、銅中性点40aと銅中性点40bとは、それぞれ、本発明の「第1巻線部の中性点」に相当し、アルミニウム中性点50は、本発明の「第2巻線部の中性点」に相当する。
【0036】
上記のとおり、三相巻線100Aでは、銅線の中性点に接続される電線の本数が3本となっており、実施の形態1の三相巻線100における6本よりも減っていることから、接続の困難性を低減することができるため、接続不良をより確実に防止することができる。
【0037】
さらに、本実施の形態2における電動機200は、三相巻線100Aの中性点、すなわち銅中性点40a、銅中性点40b、およびアルミニウム中性点50を収納する中性点収納部60Aを有している。なお、図4では、便宜上、中性点収納部60Aを破線で示している。
【0038】
図5は、本発明の実施の形態2に係る電動機の中性点と中性点収納部とを示す側面図である。中性点収納部60Aは、フィルム状の絶縁紙を複数回円筒状に巻くことにより形成された側部61を有している。中性点収納部60Aにおいて、円筒状の側部61における一端側を閉塞した端部62と、絶縁性をもつ接触防止部64aおよび接触防止部64bとは、超音波等で溶着されている。また、中性点収納部60Aにおいて、円筒状の側部61における他端側には、開口部63が形成されている。すなわち、中性点収納部60Aは、接触防止部64aおよび接触防止部64bによって仕切られた第1収納部70aと、第2収納部80と、第3収納部70bと、を有している。
【0039】
銅中性点40a、銅中性点40b、およびアルミニウム中性点50は、開口部63から挿入され、銅中性点40aは第1収納部70aに収納され、銅中性点40bは第3収納部70bに収納され、アルミニウム中性点50は第2収納部80に収納されている。
【0040】
以上のように、中性点収納部60Aが有する収納部の数は、第1巻線部の中性点の数と第2巻線部の中性点の数との和と等しくなっている。そして、本実施の形態2の電動機200は、銅中性点40aと銅中性点40bとアルミニウム中性点50とが、それぞれ、第1収納部70aと第3収納部70bと第2収納部80とに収納されている。よって、絶縁部材としての中性点収納部60Aのみにより、異種金属同士の接触を防ぐことができるため、中性点における異種金属腐食を少ない部材数でコストを抑えて効率よく防止し、信頼性の高い三相電動機を提供することができる。
【0041】
すなわち、中性点収納部60Aでは、接触防止部64bが、銅巻線部の中性点としての銅中性点40aおよび銅中性点40bと、アルミ巻線部の中性点としてのアルミニウム中性点50との間の仕切りとして機能する。そのため、銅線とアルミニウム線との接触を防ぐことができるため、中性点における異種金属腐食を防止することができる。
【0042】
また、中性点収納部60Aは、銅中性点40aと銅中性点40bとの間に介在する接触防止部64aを有しているため、銅中性点40aとアルミニウム中性点50との接触をより確実に防ぐことができる。そして、例えば、銅中性点40aの接合部材と銅中性点40bの接合部材とが異種金属であり、かつ、銅中性点40の接合部材とアルミニウム中性点50の接合部材とのイオン化傾向の差が大きいような場合であっても、異種金属腐食を有効に防止することができる。
【0043】
さらに、三相巻線100Aでは、各中性点における銅線の接続本数が三相巻線100よりも減っていることから、銅線をより良好に接続することができるため、接続不良をより確実に回避することができる。他の効果については、実施の形態1と同様である。
【0044】
実施の形態3.
本実施の形態3の電動機の全体的な構成は、図1を参照して説明した実施の形態1の電動機200と同様であるため、以下では同一の符号を用いるものとする。また、実施の形態1および2と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
【0045】
図6は、本発明の実施の形態3に係る電動機のY結線方式を採用した固定子巻線の結線図である。本実施の形態3に係る電動機200は、Y結線され、固定子鉄心220aに設けられた三相巻線100Bを有している。また、電動機200は、実施の形態2における中性点収納部60Aではなく、三相巻線100Bの中性点を収納する中性点収納部60Bを有している。すなわち、中性点収納部60Bは、銅中性点40a、銅中性点40b、およびアルミニウム中性点50を収納するものである。三相巻線100Bの他の構成は、実施の形態2における三相巻線100Aと同様である。
【0046】
図7は、本発明の実施の形態3に係る電動機の中性点と中性点収納部とを示す側面図である。中性点収納部60Bは、フィルム状の絶縁紙を複数回円筒状に巻くことにより形成された側部61を有している。中性点収納部60Bにおいて、円筒状の側部61における一端側を閉塞した端部62と、絶縁性をもつ接触防止部64cとは、超音波等で溶着されている。また、中性点収納部60Bにおいて、円筒状の側部61における他端側には、開口部63が形成されている。すなわち、中性点収納部60Bは、接触防止部64cによって仕切られた第1収納部70cと、第2収納部80と、を有している。
【0047】
銅中性点40a、銅中性点40b、およびアルミニウム中性点50は、開口部63から挿入され、銅中性点40aおよび銅中性点40bは第1収納部70cに収納され、アルミニウム中性点50は第2収納部80に収納されている。すなわち、第1巻線部の中性点および第2巻線部の中性点のうちの2つは、1つの収納部に収納されている。
【0048】
以上のように、中性点収納部60Bが有する収納部の数は、第1巻線部の中性点の数と第2巻線部の中性点の数との和よりも少なくなっている。そして、本実施の形態3の電動機200は、銅中性点40aおよび銅中性点40bが第1収納部70aに収納され、アルミニウム中性点50が第2収納部80に収納されている。よって、絶縁部材としての中性点収納部60Bのみにより、異種金属同士の接触を防ぐことができるため、中性点における異種金属腐食を少ない部材数でコストを抑えて効率よく防止し、信頼性の高い三相電動機を提供することができる。
【0049】
また、前述した実施の形態2の中性点収納部60Aは、2つの接触防止部を有しているが、本実施の形態3の中性点収納部60Bは、1つの接触防止部を有している。よって、中性点収納部60Bでは、中性点収納部60Aに比べて、溶着箇所が少なくなり、工数が減少するため、生産性の向上を図ることができる。また、銅中性点40aと銅中性点40bとを異なる収納部に収納する必要がないことから、銅中性点40aおよび銅中性点40bの収納が容易になるため、作業効率の向上を図ることができる。他の効果については、実施の形態1および2と同様である。
【0050】
ここで、上述した各実施の形態は、電動機における好適な具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、実施の形態1〜3では、電動機200が3本巻の固定子巻線を有する場合を例示したが、これに限定されるものではない。すなわち、実施の形態1〜3において、U相巻線部10、V相巻線部20、およびW相巻線部30は、銅線2本とアルミニウム線1本とによる3本巻であったが、銅線1本とアルミニウム線2本とによる3本巻であってもよい。この場合、三相巻線100、100A、又は100Bは、二組の第2巻線部が接合されて形成された中性点を有していてもよく、一組の第2巻線部が接合されて形成された2つの中性点を有していてもよい。
【0051】
また、U相巻線部10、V相巻線部20、およびW相巻線部30が有する巻線の本数は、3本に限らず、銅線とアルミニウム線とが混在していれば、2本であってもよく、4本以上であってもよい。各相の巻線部が有する巻線の本数が4本以上の場合、各相の巻線部における銅巻線部の数とアルミニウム巻線部の数との比率は、任意に変更することができる。また、第1巻線部の中性点の数と、第2巻線部の中性点の数とは、任意に変更することができる。加えて、各収納部に収納される中性点の数は、1つ又は2つに限らず、3つ以上であってもよい。つまり、中性点収納部は、絶縁性をもつ少なくとも1つの接触防止部と、接触防止部により仕切られた複数の収納部と、を有していればよい。
【0052】
すなわち、実施の形態1〜3の電動機200において、第1巻線部の中性点と、第2巻線部の中性点とは、それぞれ異なる収納部に収納されていればよい。また、実施の形態2および3の電動機200において、三相巻線100A及び100Bの各相は、第1巻線部を一つ又は複数有すると共に、第2巻線部を一つ又複数有していればよい。そして、第1巻線部の中性点および第2巻線部の中性点のうちの少なくとも一方が、複数設けられていればよい。
【0053】
さらに、実施の形態2における電動機200において、第1巻線部の中性点および第2巻線部の中性点のうちの少なくとも2つは、1つの収納部に収納されていればよい。ここで、収納部の数が、第1巻線部の中性点の数と第2巻線部の中性点の数との和よりも多くなるようにしてもよいが、中性点が収納されない収納部が存在すれば、その分手間とコストがかかる。よって、中性点収納部は、収納部の数が、第1巻線部の中性点の数と第2巻線部の中性点の数との和と等しくなるようにするとよい。
【0054】
また、実施の形態3における電動機200において、第1巻線部および第2巻線部が有する複数の中性点のうちの少なくとも2つは、1つの収納部に収納されていればよい。ここで、例えば、実施の形態2の中性点収納部60Aを、実施の形態3の電動機200に適用し、各収納部のうちの1つを空きにするといった具合に、多くの収納部を有する中性点収納部を使いまわすようにしてもよいが、中性点が収納されない収納部が存在すれば、その分手間とコストがかかる。よって、中性点収納部は、収納部の数が、第1巻線部の中性点の数と第2巻線部の中性点の数との和よりも少なくなるようにし、必要な数の収納部を有するようにするとよい。
【0055】
以上を換言すれば、U相巻線部10、V相巻線部20、およびW相巻線部30は、それぞれ、少なくとも1つの銅巻線部と、少なくとも1つのアルミニウム巻線部と、を有していればよい。そして、一又は複数の銅中性点と、一又は複数のアルミニウム中性点とは、それぞれ異なる収納部に収納されるようにするとよい。電動機200が、銅中性点およびアルミニウム中性点のうちの少なくとも一方を複数含んでいる場合、収納部の数と中性点の数とを同数にし、複数の中性点が、それぞれ異なる収納部に収納されるようにしてもよい。または、収納部の数を中性点の数よりも少なくし、複数の中性点のうちの少なくとも2つが、1つの収納部に収納されるようにしてもよい。
【0056】
加えて、図3図5、および図7は、各構成部材を模式的に記載したものであり、各構成部材の大きさおよび形状等は、各図の記載に限定されるものではない。例えば、図2の接触防止部64の溶着位置は、端部62の側面視における中央部に限らず、銅中性点40およびアルミニウム中性点50の大きさ等に応じて適宜変更することができる。つまり、中性点収納部60、60A、および60Bが有する各収納部は、均等な大きさでなくてもよく、等しい形状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 U相巻線部、11、12 U相銅巻線部、11a、12a、13a、21a、22a、23a、31a、32a、33a 巻線、11b、11c、12b、12c、13b、13c、21b、21c、22b、22c、23b、23c、31b、31c、32b、32c、33b、33c 端末線、13 U相アルミニウム巻線部、20 V相巻線部、21、22 V相銅巻線部、23 V相アルミニウム巻線部、30 W相巻線部、31、32 W相銅巻線部、33 W相アルミニウム巻線部、40、40a、40b 銅中性点、50 アルミニウム中性点、60、60A、60B 中性点収納部、61 側部、62 端部、63 開口部、64、64a、64b、64c 接触防止部、70、70a、70c 第1収納部、70b 第3収納部、80 第2収納部、100、100A、100B 三相巻線、110 U相接続端子、120 V相接続端子、130 W相接続端子、200 電動機、210 本体外殻、220 固定子、220a 固定子鉄心、230 回転子、240 シャフト、300 リード線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7