特許第6800250号(P6800250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800250高調波抑制装置および高調波抑制システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800250
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】高調波抑制装置および高調波抑制システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/01 20060101AFI20201207BHJP
   H02M 1/42 20070101ALI20201207BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20201207BHJP
【FI】
   H02J3/01
   H02M1/42
   H02M7/48 E
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-565169(P2018-565169)
(86)(22)【出願日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】JP2017003810
(87)【国際公開番号】WO2018142543
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 憲嗣
(72)【発明者】
【氏名】有澤 浩一
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/202859(WO,A1)
【文献】 特表2010−527571(JP,A)
【文献】 特開平11−266536(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0268958(US,A1)
【文献】 特開平10−150778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/01
H02M 1/42
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線に流れる高調波電流を抑制するための電流である高調波抑制電流を生成して前記電力線に出力可能な複数の高調波抑制装置と、前記複数の高調波抑制装置を制御する運転制御装置と、を備え、
前記複数の高調波抑制装置のそれぞれは、負荷と前記電力線の間に流れる電流、電源電圧および電源位相の情報と、前記高調波抑制電流を生成して前記電力線に出力する動作を実行した時間の累積値である累積運転時間の情報とを含んだ運転情報信号、を前記運転制御装置へ送信し、
前記運転制御装置は、前記運転情報信号に基づいて、前記複数の高調波抑制装置のうち、前記動作を実行中の高調波抑制装置のいずれかに前記動作を停止させるとともに、前記動作を停止中の高調波抑制装置のいずれかに前記動作を開始させ、
前記運転制御装置が前記動作を開始させる高調波抑制装置の累積運転時間は、前記動作を停止させる高調波抑制装置の累積運転時間より短い、高調波抑制システム。
【請求項2】
前記高調波抑制装置は、
前記高調波抑制電流を生成して前記電力線に出力する電力変換部と、
前記運転情報信号を生成するとともに、前記運転制御装置から受信した運転指令信号に基づいて前記電力変換部を制御する制御部と、
前記運転情報信号を前記運転制御装置へ送信するとともに、前記運転指令信号を受信する通信部と、
を備え、
前記運転制御装置は、前記運転情報信号に基づいて、前記動作を実行する高調波抑制装置の電力変換部が生成する前記高調波抑制電流の値を決定し、決定した値を示す前記運転指令信号を前記動作を実行する高調波抑制装置へ送信する、
請求項1に記載の高調波抑制システム。
【請求項3】
前記通信部は、前記運転情報信号の送信および前記運転指令信号の受信を前記電力変換部が生成する電流の出力先の電力線を介して行う、
請求項2に記載の高調波抑制システム。
【請求項4】
前記運転情報信号を前記電力変換部が前記電力線に重畳する、
請求項3に記載の高調波抑制システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の高調波抑制システムに備えられた高調波抑制装置。
【請求項6】
他の高調波抑制装置とともに高調波抑制システムを構成する高調波抑制装置であって、 電力線に流れる高調波電流を抑制するための電流である高調波抑制電流を生成して前記電力線に出力する電力変換部と、
負荷と前記電力線の間に流れる電流、電源電圧および電源位相の情報と、前記高調波抑制電流を生成する動作を実行した時間の累積値である累積運転時間の情報とを含んだ運転情報信号、を他の高調波抑制装置から受信するとともに、制御信号を他の高調波抑制装置へ送信する通信部と、
前記通信部が受信した前記運転情報信号に基づいて前記電力変換部および他の高調波抑制装置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記運転情報信号に基づいて、前記高調波抑制システムを構成する高調波抑制装置のうち、前記動作を実行中の高調波抑制装置のいずれかの前記動作を停止させるとともに、前記動作を停止中の高調波抑制装置のいずれかに前記動作を開始させる運転指令信号を前記制御信号として生成し、
前記通信部は、前記運転指令信号を前記他の高調波抑制装置へ送信
前記制御部が前記動作を開始させる高調波抑制装置の累積運転時間は、前記動作を停止させる高調波抑制装置の累積運転時間より短い、
高調波抑制装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記電力変換部が前記電力線へ出力する前記高調波抑制電流の値を、前記運転情報信号に含まれる情報が示す、負荷と前記電力線の間に流れる電流、電源電圧および電源位相に基づいて決定し、決定した値の高調波抑制電流を生成するよう前記電力変換部を制御する、
請求項6に記載の高調波抑制装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記他の高調波抑制装置へ送信する制御信号を前記運転情報信号に含まれる情報に基づいて生成する情報処理部と、
前記電力変換部への動作指令を生成する指令部と、
を含む請求項6または7に記載の高調波抑制装置。
【請求項9】
前記通信部が前記高調波抑制電流の値を示す運転指令信号を受信した場合、
前記制御部は、前記運転指令信号が示す値の高調波抑制電流を生成するよう前記電力変換部を制御する、
請求項6に記載の高調波抑制装置。
【請求項10】
前記制御部は、さらに、負荷と前記電力線の間に流れる電流、電源電圧および電源位相の情報と、前記高調波抑制電流を生成して前記電力線に出力する動作を実行した時間の累積値である累積運転時間の情報とを含んだ運転情報信号を生成し、
前記通信部は、前記制御部が生成した運転情報信号を前記運転指令信号の送信元の高調波抑制装置へ送信する、
請求項9に記載の高調波抑制装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記運転情報信号を生成する情報処理部と、
前記運転指令信号に基づいて前記電力変換部への動作指令を生成する指令部と、
を含む請求項9に記載の高調波抑制装置。
【請求項12】
前記通信部は、前記電力変換部が生成する電流の出力先の電力線を介して前記運転情報信号および前記制御信号を送受信する、
請求項6から11のいずれか一つに記載の高調波抑制装置。
【請求項13】
他の高調波抑制装置へ送信する信号を前記電力変換部が前記電力線に重畳する、
請求項12に記載の高調波抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷から電源に向かって流出する高調波電流を抑制する高調波抑制装置および高調波抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブフィルタとも呼ばれる高調波抑制装置は、電力変換回路を有する負荷で発生する高調波電流を抑制するために電源と負荷との間に設けられる装置である。
【0003】
高調波抑制装置は、電源電流に含まれる高調波成分を抽出し、その逆位相の電流を生成して電源に向かって出力することで高調波電流を抑制する。そのため、高調波抑制装置は、電源線に取り付けられたセンサで電源線に流れる電流の高調波成分を検出し、検出した高調波成分を打ち消すような電流を生成する。センサは、高調波抑制装置を適用する負荷の電源線、すなわち電力供給元に接続された電力線と負荷とを接続する配線に取り付けられるのが一般的である。また、負荷が複数台並列に繋がっている場合、それらの負荷が繋がっている電力線の電力供給元側にセンサを取り付けることで、高調波抑制装置は複数の負荷から電力線に流出する高調波成分をまとめて抑制することもできる。さらに、高調波抑制装置を負荷と同様に複数台並列に取付け、複数台の高調波抑制装置で複数の負荷から電力線に流出する高調波成分を抑制することもできる。
【0004】
高調波抑制装置を適用して高調波電流を抑制する従来のシステムとして、特許文献1に記載の高調波抑制システムが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−274398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高調波抑制装置は、高調波抑制のための電流をパルス幅変調によって生成するため、スイッチング損失が生じる。高調波抑制装置を複数台取り付けた場合、各高調波抑制装置でスイッチング損失が生じるため、システム全体でのスイッチング損失が増大し、省電力化の実現が難しいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、省電力化を実現可能な高調波抑制システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる高調波抑制システムは、電力線に流れる高調波電流を抑制するための電流である高調波抑制電流を生成して電力線に出力可能な複数の高調波抑制装置と、複数の高調波抑制装置を制御する運転制御装置と、を備え、複数の高調波抑制装置のそれぞれは、負荷と前記電力線の間に流れる電流、電源電圧および電源位相の情報と、高調波抑制電流を生成して前記電力線に出力する動作を実行した時間の累積値である累積運転時間の情報とを含んだ運転情報信号、を運転制御装置へ送信する。運転制御装置は、運転情報信号に基づいて、複数の高調波抑制装置のうち、動作を実行中の高調波抑制装置のいずれかに動作を停止させるとともに、動作を停止中の高調波抑制装置のいずれかに動作を開始させる。運転制御装置が動作を開始させる高調波抑制装置の累積運転時間は、動作を停止させる高調波抑制装置の累積運転時間より短い。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる高調波抑制システムは、省電力化を実現できるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる高調波抑制システムの構成例を示す図
図2】実施の形態1にかかる高調波抑制装置の構成例を示す図
図3】実施の形態1にかかる高調波抑制装置がマスタとして動作する場合の動作例を示すフローチャート
図4】実施の形態1にかかるマスタの高調波抑制装置が送信する運転指令信号の構成例を示す図
図5】実施の形態1にかかる高調波抑制装置がスレーブとして動作する場合の動作例を示すフローチャート
図6】実施の形態2にかかる高調波抑制システムの構成例を示す図
図7】実施の形態2にかかる運転制御装置の動作例を示すフローチャート
図8】実施の形態3にかかる高調波抑制装置の構成例を示す図
図9】実施の形態4にかかる高調波抑制装置の構成例を示す図
図10】各実施の形態にかかる高調波抑制装置を構成する制御部のハードウェア構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態にかかる高調波抑制装置および高調波抑制システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる高調波抑制システムの構成例を示す図である。実施の形態1にかかる高調波抑制システム50は、複数の高調波抑制装置11,12,…,1nを備える。高調波抑制装置11,12,…,1nは、電力線9および通信線10に接続され、通信線10を介した通信が可能である。なお、以下の説明では高調波抑制装置11,12,…,1nが有線通信を行う場合の例を説明するが、通信方式をこれに限定するものではない。無線通信を行う構成としてもよい。
【0013】
また、高調波抑制装置11,12,…,1nは、それぞれ、負荷301,302,…,30nと電力線9との間に流れる電流を測定する機能、負荷301,302,…,30nと電力線9との間に流れる電流に含まれる高調波電流成分を抑制するための電流を生成する機能を有する。以下、高調波電流成分を抑制するための電流を高調波抑制電流と称する。高調波抑制装置11,12,…,1nは、インバータを備え、インバータで高調波抑制電流を生成する。図1に示した高調波抑制システム50において、高調波抑制装置11は、負荷301と電力線9との間に流れる電流を測定する。高調波抑制装置12は、負荷302と電力線9との間に流れる電流を測定する。高調波抑制装置1nは、負荷30nと電力線9との間に流れる電流を測定する。以下、高調波抑制装置11,12,…,1nを区別する必要が無い場合、高調波抑制装置1と記載し、負荷301,302,…,30nを区別する必要が無い場合、負荷30と記載する。高調波抑制システム50を構成する高調波抑制装置1の数は2以上であればよい。
【0014】
また、高調波抑制システム50においては、高調波抑制装置11,12,…,1nの中のいずれか1台がマスタとして動作し、残りがスレーブとして動作し、マスタおよびスレーブの高調波抑制装置1の中の一部または全てが高調波抑制電流を生成する。どの高調波抑制装置が高調波抑制電流を生成するかはマスタとして動作する高調波抑制装置1が決定する。具体的には、マスタとして動作する高調波抑制装置1が、スレーブとして動作する高調波抑制装置1の各々から必要な情報を収集し、収集した情報に基づいて、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1を決定する。マスタがスレーブから収集する情報は、スレーブで測定された、負荷電流、電源電圧、電源位相などの情報である。負荷電流は負荷30と電力線9との間に流れる電流、電源電圧は電力線9の電圧、電源位相は電力線9の電圧の位相である。マスタとして動作する高調波抑制装置1は、負荷301,302,…,30nの各々から流出する高調波電流の合計値と同じ値の高調波抑制電流を作成できるよう、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1を決定する。マスタとして動作する高調波抑制装置1は固定としてもよいし、一定時間が経過するごとに変更するなどしてもよい。
【0015】
図2は、実施の形態1にかかる高調波抑制装置の構成例を示す図である。高調波抑制装置1は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により高調波抑制電流を生成する電力変換部2と、電力変換部2を制御する制御部3と、通信線10を介して他の高調波抑制装置1と通信する通信部4とを備える。電力変換部2はインバータで実現することができ、通信部4はモデムで実現することができる。
【0016】
制御部3は、電力変換部2に対する動作指令を生成する指令生成部5と、他の高調波抑制装置1へ送信する情報を生成するとともに、他の高調波抑制装置1から受信した情報に基づいて指令生成部5の動作を指示する情報処理部6と、を備える。
【0017】
通信部4は、他の高調波抑制装置1から送信された情報を受信する受信部7と、情報処理部6から出力された情報を他の高調波抑制装置1へ送信する送信部8と、を備える。
【0018】
つづいて、高調波抑制装置1の動作について説明する。上述したように、高調波抑制システム50においては、複数の高調波抑制装置1の中の1台がマスタとして動作し、残りがスレーブとして動作する。すなわち、高調波抑制装置1は、マスタとして動作する場合とスレーブとして動作する場合とがある。そのため、高調波抑制装置1がマスタとして動作する場合とスレーブとして動作する場合とに分けて説明する。
【0019】
(マスタの高調波抑制装置1の動作)
図3は、実施の形態1にかかる高調波抑制装置1がマスタとして動作する場合の動作例を示すフローチャートである。高調波抑制装置1は、マスタとして動作する場合、まず、スレーブとして動作している他の高調波抑制装置1から運転情報を収集する(ステップS11)。運転情報とは、負荷電流、電源電圧、電源位相、および出力電流の情報を含んだ情報である。出力電流とは、他の高調波抑制装置1が電力線9へ出力している電流すなわち高調波抑制電流である。ステップS11において、マスタの高調波抑制装置1は、他の全ての高調波抑制装置1から運転情報を収集する。運転情報の収集は、マスタの高調波抑制装置1がスレーブの高調波抑制装置1に対して運転情報の送信を要求することにより行ってもよいし、スレーブの高調波抑制装置1の各々が予め決められた周期で自律的にマスタの高調波抑制装置1へ送信することにより行ってもよい。
【0020】
マスタの高調波抑制装置1は、次に、収集した運転情報に基づいて、自装置および他の高調波抑制装置1の運転内容を決定する(ステップS12)。ここでの運転内容とは、自装置および他の高調波抑制装置1が生成する高調波抑制電流の値とする。すなわち、このステップS12では、高調波抑制システム50を構成している高調波抑制装置11〜1nの各々が生成する高調波抑制電流の値を決定する。マスタの高調波抑制装置1においては、制御部3の情報処理部6が、スレーブの高調波抑制装置1から収集した運転情報に基づいて、自装置および他の高調波抑制装置1が生成する高調波抑制電流の値を決定する。情報処理部6は、自装置で測定した負荷電流、電源電圧、および電源位相も使用して、自装置および他の高調波抑制装置1が生成する高調波抑制電流の値を決定する。
【0021】
ステップS12において、情報処理部6は、まず、収集した各運転情報に含まれる電流、電源電圧および電源位相と、自装置で測定した電流、電源電圧および電源位相とに基づいて、負荷301〜30nの各々から電力線9へ流出する高調波電流の合計値、すなわちシステム全体の高調波電流を算出する。情報処理部6は、次に、算出したシステム全体の高調波電流を打ち消すために必要な高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1を決定する。このとき、情報処理部6は、高調波抑制システム50全体の損失が最小となるように、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1を決定する。具体的には、情報処理部6は、高調波抑制システム50を構成する高調波抑制装置1の出力電力と効率との関係を表す効率特性を予め記憶しておき、何台の高調波抑制装置1を最も効率の良い動作点付近で運転させれば必要な高調波抑制電流を生成できるかを計算し、運転させる高調波抑制装置1を決定する。高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1の効率特性と運転する台数とを考慮して高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1を決定することにより、高調波抑制システム50全体としてのスイッチング損失を少なくすることができ、省電力化を実現できる。
【0022】
マスタの高調波抑制装置1は、次に、決定した高調波抑制電流の値を示す運転指令信号を生成して他の高調波抑制装置1へ送信する(ステップS13)。マスタの高調波抑制装置1は、他の全ての高調波抑制装置1に対して運転指令信号を送信する。上記のステップS12で高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1に決定されなかった高調波抑制装置1に対しては、高調波抑制電流の生成動作の停止を指示する内容の運転指令信号を送信する。運転指令信号は、例えば、図4に示した構成の信号とする。図4は、実施の形態1にかかるマスタの高調波抑制装置が送信する運転指令信号の構成例を示す図である。運転指令信号は、信号種別、機器ID(Identification)および出力電力情報からなる信号とする。信号種別は、どのような情報が含まれる信号かを示す情報、機器IDはどの高調波抑制装置1に向けた信号かを示す情報、出力電力情報は高調波抑制電流の値を示す情報とする。「信号種別」は1ビットの信号とすることができ、例えば、運転指令信号の場合は‘0’、後述する運転情報信号の場合は‘1’とする。「機器ID」は高調波抑制装置1の各々に個別に付与された、各高調波抑制装置1を一意に示すビット列とする。出力電力情報のビット列は、高調波抑制装置1が定格出力の何%の出力で運転を行うのかを表すことにより、運転指令信号を受信した高調波抑制装置1が生成する高調波抑制電流の値を指令する。出力電力情報が3ビット信号の場合、0%から100%までの値を14.3%刻みで表すことになる。なお、「0%」は高調波抑制電流の生成を行わない運転停止状態を表す。よって、上記のステップS12で高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1に決定されなかった高調波抑制装置1へ送信する運転指令信号の場合、出力電力情報は「0%」を表す値となる。また、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1は最も効率の良い動作点付近で運転を行うため、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1へ送信する出力電情報は、最も効率の良い動作点付近の出力を表す固定値となる。図4に示した構成は一例であり他の構成としてもよい。例えば、マスタの高調波抑制装置1の識別情報を運転指令信号に含ませるようにしてもよい。
【0023】
マスタの高調波抑制装置1は、次に、上記のステップS12で決定した運転内容に従った動作を開始する(ステップS14)。マスタの高調波抑制装置1は、自装置が高調波抑制電流を生成することに決定した場合は高調波抑制電流の生成動作を開始し、自装置が高調波抑制電流を生成しないことに決定した場合は高調波抑制電流の生成動作を行わない。なお、高調波抑制装置1が高調波抑制電流を生成する動作は従来の高調波抑制装置が行う動作と同様であるため、説明を省略する。
【0024】
マスタの高調波抑制装置1は、上述したステップS11〜S14の処理を一定の周期で繰り返し実行する。
【0025】
(スレーブの高調波抑制装置1の動作)
図5は、実施の形態1にかかる高調波抑制装置1がスレーブとして動作する場合の動作例を示すフローチャートである。高調波抑制装置1は、スレーブとして動作する場合、まず、マスタとして動作している他の高調波抑制装置1に対して、運転情報信号を送信する(ステップS21)。運転情報信号は、上述した運転情報を含んだ信号である。運転情報信号は、図4に示した運転指令信号と同様の構成とする。すなわち、運転情報信号は、信号種別、機器IDおよび運転情報からなる信号とする。上述した運転指令信号の説明において示したように、運転情報信号の場合、「信号種別」を‘1’とする。「機器ID」には自装置すなわち運転情報信号を送信する高調波抑制装置1を示す値を設定する。スレーブの高調波抑制装置1において、運転情報信号の生成は情報処理部6が行い、送信部8が運転情報信号をマスタの高調波抑制装置1へ送信する。
【0026】
スレーブの高調波抑制装置1は、次に、運転指令信号を受信したか否かを確認し(ステップS22)、受信していない場合(ステップS22:No)、ステップS21に戻る。この場合、スレーブの高調波抑制装置1は、予め決められた時間が経過するのを待ち、運転情報信号の送信を再度実行する。スレーブの高調波抑制装置1は、運転指令信号を受信した場合(ステップS22:Yes)、受信した運転指令信号に従った動作を開始する(ステップS23)。スレーブの高調波抑制装置1は、運転指令信号が高調波抑制電流の生成を指令する内容、すなわち、運転指令信号の出力電力情報が0ではない場合、出力電力情報が示す出力での高調波抑制電流の生成動作を開始する。この場合、指令生成部5が、出力電力情報に従った内容の動作指令を生成し、電力変換部2へ出力する。一方、運転指令信号が高調波抑制電流の生成を指令しない内容、すなわち、運転指令信号の出力電力情報が0の場合、スレーブの高調波抑制装置1は、高調波抑制電流の生成動作を行わない。ステップS23を実行して動作を開始した後はステップS21に戻る。
【0027】
以上のように、本実施の形態にかかる高調波抑制システム50においては、複数の高調波抑制装置1の中の1台がマスタとして動作し、スレーブとして動作する高調波抑制装置1から運転情報を収集する。そして、マスタの高調波抑制装置1は、収集した運転情報に基づいて、高調波抑制システム50を構成している高調波抑制装置1の中のどの装置が高調波抑制電流を生成して負荷30から流出する高調波電流を抑制するかを決定する。これにより、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1の台数が必要以上に多くなるのを防止することができ、システム全体でのスイッチング損失を低減することができる。この結果、省電力化を実現できる。
【0028】
なお、本実施の形態にかかる高調波抑制装置1は、他の高調波抑制装置1との間で運転指令信号および運転情報信号を送受信するが、相互通信を行う際には、通信を行う優先順位を決定しなければ信号が競合することになる。順位付けは、各高調波抑制装置1の起動時に機器IDを使用して行うことが考えられる。具体的には、機器IDの大きい順または小さい順とすることが考えられる。なお、各高調波抑制装置1は、高調波抑制システム50を構成している全ての高調波抑制装置1の機器IDを予め保持しているものとする。
【0029】
順位が最上位の高調波抑制装置1はマスタとして動作し、残りの高調波抑制装置1はスレーブとして動作する。マスタの高調波抑制装置1は、順位が最も高いスレーブの高調波抑制装置1と最初に通信を行って運転情報信号を受信し、順位が最も低いスレーブの高調波抑制装置1と最後に通信を行って運転情報信号を受信する。マスタの高調波抑制装置1は、運転指令信号をスレーブの高調波抑制装置1へ送信する場合も同様に、各高調波抑制装置1に付与された順位に従って通信を行う。
【0030】
スレーブの高調波抑制装置1は、マスタの高調波抑制装置1から受信した運転指令信号に従い、電力変換部2の運転と停止の切り替え、運転中の出力調整を行う。スレーブの高調波抑制装置1は、電力変換部2が停止している場合も制御部3および通信部4の動作は継続し、運転情報信号をマスタの高調波抑制装置1へ送信する。
【0031】
各高調波抑制装置1の順位は、一定時間が経過するごとに変更してもよい。順位を変更する場合、マスタの高調波抑制装置1が、各高調波抑制装置1から収集した運転情報に基づいて、新しい順位を決定する。新しい順位の決定方法としては、負荷30と電力線9との間に流れる電流である負荷電流に基づいて決定する方法、出力電流に基づいて決定する方法が考えられるがこれらの方法に限定するものではない。マスタの高調波抑制装置1は、新しい順位を決定した場合、決定した順位を各高調波抑制装置1へ通知する。順位を変更した後は、変更後の新しい順位に従って各高調波抑制装置1が通信を行う。また、順位が最も高い高調波抑制装置1がマスタとして動作する。
【0032】
また、高調波抑制システム50において、マスタの高調波抑制装置1は、各高調波抑制装置1の運転時間が平均化されるよう、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1を決定してもよい。この場合、各高調波抑制装置1は運転時間を計測しておき、スレーブの高調波抑制装置1は、累積運転時間が一定値に達した場合はその旨を示す情報を含んだ運転情報信号をマスタの高調波抑制装置1へ送信する。マスタの高調波抑制装置1は、累積運転時間が一定値に達した高調波抑制装置1の代わりに高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1を決定する。なお、全ての高調波抑制装置1が運転中の場合、累積運転時間が一定値に達した高調波抑制装置1が発生しても運転を続けさせる。また、運転停止の判断に使用する一定値は適宜変更する。一定値の変更方法としては、全ての高調波抑制装置1の累積運転時間が一定値に達した場合に一定値を引き上げる方法が考えられる。全ての高調波抑制装置1の累積運転時間が一定値に達した場合に一定値を引き上げるのではなく、全ての高調波抑制装置1の累積運転時間を初期化する、すなわちゼロに戻すようにしてもよい。
【0033】
また、高調波抑制装置1に取り付けた温度センサの検出値が一定値に達した場合は運転を停止し、他の高調波抑制装置1が代わりに運転を開始するようにしてもよい。この場合、スレーブの高調波抑制装置1は、温度の検出値または温度が一定値達したことを示す情報を運転情報信号に含めてマスタの高調波抑制装置1へ送信し、マスタの高調波抑制装置1が、代わりに運転を行う高調波抑制装置1を決定する。
【0034】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2にかかる高調波抑制システムの構成例を示す図である。実施の形態2にかかる高調波抑制システム51は、複数の高調波抑制装置1aと、運転制御装置13とを備える。高調波抑制装置1aは、実施の形態1にかかる高調波抑制装置1と同様に電力線9および通信線10に接続されている。また、運転制御装置13は通信線10に接続されている。各高調波抑制装置1aと運転制御装置13とは通信線10を介した通信が可能である。なお、図6では、図1に示した負荷301nに相当する負荷の記載を省略している。
【0035】
実施の形態1で説明した高調波抑制システム50では複数の高調波抑制装置1の中の1台がマスタとして動作し、マスタの高調波抑制装置1が、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1を決定することとした。これに対して、本実施の形態にかかる高調波抑制システム51では、運転制御装置13が、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1aを決定する。そのため、運転制御装置13は、実施の形態1で説明した高調波抑制装置1を構成している制御部3および通信部4と同様の制御部および通信部を備える。
【0036】
図7は、実施の形態2にかかる運転制御装置13の動作例を示すフローチャートである。運転制御装置13は、まず、各高調波抑制装置1aから運転情報を収集する(ステップS31)。このステップS31の処理は、実施の形態1にかかる高調波抑制装置1がマスタとして動作する場合に実行する、上述したステップS11(図3参照)と同様の処理である。
【0037】
運転制御装置13は、次に、収集した運転情報に基づいて、各高調波抑制装置1aの運転内容を決定する(ステップS32)。このステップS32の処理は、実施の形態1にかかる高調波抑制装置1がマスタとして動作する場合に実行する、上述したステップS12(図3参照)と同様の処理である。
【0038】
運転制御装置13は、次に、決定した高調波抑制電流の値を示す運転指令信号を生成して各高調波抑制装置1aへ送信する(ステップS33)。このステップS33の処理は、実施の形態1にかかる高調波抑制装置1がマスタとして動作する場合に実行する、上述したステップS13(図3参照)と同様の処理である。
【0039】
運転制御装置13は、上述したステップS31〜S33の処理を一定の周期で繰り返し実行する。
【0040】
高調波抑制装置1aは、実施の形態1にかかる高調波抑制装置1がスレーブとして動作する場合と同様の処理を実行する。すなわち、高調波抑制装置1aは、図5に示したステップS21〜S23に従って動作する。ただし、ステップS21では運転指令信号を運転制御装置13へ送信する。なお、高調波抑制装置1aの構成は実施の形態1にかかる高調波抑制装置1と同様である。
【0041】
以上のように、本実施の形態にかかる高調波抑制システム51においては、運転制御装置13が、各高調波抑制装置1aから運転情報を収集する。そして、運転制御装置13は、収集した運転情報に基づいて、高調波抑制装置1aの中のどの装置が高調波抑制電流を生成するかを決定する。これにより、実施の形態1にかかる高調波抑制システム50と同様の効果を奏することができる。
【0042】
実施の形態3.
つづいて、実施の形態3にかかる高調波抑制システムについて説明する。実施の形態3にかかる高調波抑制システムの構成は、実施の形態1と同様である。すなわち、実施の形態3にかかる高調波抑制システムは、複数の高調波抑制装置を備え、1台の高調波抑制装置がマスタとして動作し、残りがスレーブとして動作する。また、マスタの高調波抑制装置がスレーブの高調波抑制装置から運転情報を収集し、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置を決定する。ただし、実施の形態3にかかる高調波抑制システムの各高調波抑制装置は、電力線を介して相互に通信する。すなわち、実施の形態3にかかる高調波抑制システムの各高調波抑制装置は、信号の送受信を電力線通信により行う。実施の形態1にかかる高調波抑制システムと実施の形態3にかかる高調波抑制システムとの違いは、システムを構成している高調波抑制装置が通信線を介して通信を行うか電力線を介して通信を行うかである。
【0043】
図8は、実施の形態3にかかる高調波抑制装置の構成例を示す図である。実施の形態3にかかる高調波抑制装置1bは、出力部14および信号分離部15からなる電力変換部2bと、指令生成部5bおよび情報処理部6bからなる制御部3bと、通信部4bとを備える。
【0044】
高調波抑制装置1bの各部について説明する。制御部3bの情報処理部6bは、実施の形態1にかかる高調波抑制装置1における制御部3の情報処理部6と同様の処理を行う。すなわち、高調波抑制装置1bがマスタとして動作している場合、情報処理部6bは、他の高調波抑制装置1bから運転情報を収集し、収集した運転情報に基づいて、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1bを決定する。情報処理部6bは、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置1bを決定した場合、決定結果を示す出力電力情報を生成して指令生成部5bへ出力する。一方、高調波抑制装置1bがスレーブとして動作している場合、情報処理部6bは、自装置の運転情報をマスタの高調波抑制装置1bへ送信し、マスタの高調波抑制装置1bから出力電力情報を受信した場合には、出力電力情報を指令生成部5bへ出力する。情報処理部6bは、自装置の運転情報をマスタの高調波抑制装置1bへ送信する際、指令生成部5bへ出力する。指令生成部5bは、情報処理部6bから受け取った情報に従い動作指令を生成し、電力変換部2bへ出力することにより、電力変換部2bを制御する。指令生成部5bは、他の高調波抑制装置1bへ送信する出力電力情報を受け取った場合、運転指令信号が重畳された高調波抑制電流の生成を指示する動作指令を生成して電力変換部2bへ出力し、運転情報を受け取った場合、運転情報信号が重畳された高調波抑制電流の生成を指示する動作指令を生成して電力変換部2bへ出力する。なお、実施の形態1で説明したように、運転指令信号は出力電力情報を含んだ信号(図4参照)、運転情報信号は運転情報を含んだ信号である。
【0045】
電力変換部2bの出力部14はインバータで実現され、制御部3bから受け取った動作指令に従い、パルス幅変調により高調波抑制電流を生成する。出力部14が生成した高調波抑制電流は信号分離部15を介して電力線9に出力される。電力変換部2bの信号分離部15はフィルタで実現され、他の高調波抑制装置1bから送信された信号を電力線9から分離して通信部4bへ出力する。具体的には、高調波抑制装置1bがマスタとして動作している場合、信号分離部15は、スレーブとして動作している他の高調波抑制装置1bから送信された運転情報信号を電力線9から分離して通信部4bへ出力する。高調波抑制装置1bがスレーブとして動作している場合、信号分離部15は、マスタとして動作している他の高調波抑制装置1bから送信された運転指令信号を電力線9から分離して通信部4bへ出力する。
【0046】
通信部4bは、信号分離部15から信号を受け取ると、受け取った信号に含まれる情報を取り出して制御部3bへ出力する。通信部4bは、受け取った信号が運転指令信号の場合、出力電力情報を取り出して制御部3bへ出力し、受け取った信号が運転情報信号の場合、運転情報を取り出して制御部3bへ出力する。
【0047】
以上のように、本実施の形態にかかる高調波抑制装置は、電力線を介して他の高調波抑制装置と通信を行うこととした。これにより、専用の通信線を設けることなく、実施の形態1にかかる高調波抑制装置と同様の効果を得ることができる。
【0048】
なお、本実施の形態では電力変換部2bが信号分離部15を含んだ構成としたが、信号分離部15を電力変換部2bの外部に設けた構成としてもよい。また、実施の形態2にかかる高調波抑制システムにおいて電力線通信を使用する構成とすることも可能である。
【0049】
実施の形態4.
つづいて、実施の形態4にかかる高調波抑制システムについて説明する。実施の形態4にかかる高調波抑制システムの構成は、実施の形態1,3と同様である。すなわち、実施の形態4にかかる高調波抑制システムは、複数の高調波抑制装置を備え、1台の高調波抑制装置がマスタとして動作し、残りがスレーブとして動作する。また、マスタの高調波抑制装置がスレーブの高調波抑制装置から運転情報を収集し、高調波抑制電流を生成する高調波抑制装置を決定する。実施の形態4にかかる高調波抑制システムの各高調波抑制装置は、実施の形態3と同様に、電力線を介して相互に通信する。ただし、実施の形態4にかかる高調波抑制装置と実施の形態3にかかる高調波抑制装置とは内部構成が異なる。
【0050】
図9は、実施の形態4にかかる高調波抑制装置の構成例を示す図である。実施の形態4にかかる高調波抑制装置1cは、出力部14、信号分離部15および信号混合部16からなる電力変換部2cと、指令生成部5および情報処理部6からなる制御部3と、受信部7および送信部8からなる通信部4とを備える。
【0051】
制御部3および通信部4は、実施の形態1で説明した高調波抑制装置1の制御部3および通信部4と同様であるため、説明を省略する。また、電力変換部2cの出力部14および信号分離部15は、実施の形態3で説明した電力変換部2bの出力部14および信号分離部15と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
電力変換部2cの信号混合部16は混合器で実現され、通信部4の送信部8から受け取った信号を電力線9に重畳する。すなわち、信号混合部16は、高調波抑制装置1cがマスタとして動作する場合、送信部8から運転指令信号を受け取り、これを電力線9に重畳する。また、信号混合部16は、高調波抑制装置1cがスレーブとして動作する場合、送信部8から運転情報信号を受け取り、これを電力線9に重畳する。
【0053】
実施の形態3にかかる高調波抑制装置1bと実施の形態4にかかる高調波抑制装置1cとの違いは、運転指令信号および運転情報信号をどのようにして電力線9に重畳させるかである。なお、本実施の形態では電力変換部2cが信号分離部15および信号混合部16を含んだ構成としたが、信号分離部15および信号混合部16を電力変換部2cの外部に設けた構成としてもよい。
【0054】
以上のように、本実施の形態にかかる高調波抑制装置は、実施の形態3にかかる高調波抑制装置と同様に、電力線を介して他の高調波抑制装置と通信を行う。本実施の形態にかかる高調波抑制装置は、実施の形態3にかかる高調波抑制装置と同様の効果を得ることができる。
【0055】
なお、上述した各実施の形態において、高調波抑制装置の制御プログラムの書き換えが必要となった場合、以下の方法で書き換えを行う。制御プログラムとは、各実施の形態の高調波抑制装置の制御部を実現するためのプログラムである。
【0056】
制御プログラムの書き換えが必要な場合、実施の形態2の運転制御装置13に相当する運転制御装置から書き換え準備用の信号を送出し、それを受信した高調波抑制装置は電力変換動作を停止し、書き換え待機状態に移行して待機中を示す信号を送出する。運転制御装置は、書き換え待機状態の高調波抑制装置に対して新しい制御プログラムを送出する。待機中の高調波抑制装置は、新しい制御プログラムを受信した場合に書き換え動作を行い、制御プログラムの書き換えが完了すると完了信号を送出する。書き換えは全ての高調波抑制装置を一旦停止させて行ってもよいし、全体の高調波抑制量が低下しないように、一部ごとに停止させてローテーションで行ってもよい。これらの制御は運転制御装置からの信号で行う。
【0057】
各実施の形態の高調波抑制装置を構成する制御部は、図10に示したプロセッサ101およびメモリ102で実現することができる。すなわち、各実施の形態の高調波抑制装置を構成する制御部は、メモリ102に格納された、制御部としての機能を実現するためのプログラムである上記の制御プログラムをプロセッサ101が読み出して実行することにより実現される。
【0058】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、システムLSI(Large Scale Integration)といった処理回路である。メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)といった、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等である。
【0059】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1〜1n,1,1a,1b,1c 高調波抑制装置、2,2b,2c 電力変換部、3,3b 制御部、4,4b 通信部、5,5b 指令生成部、6,6b 情報処理部、7 受信部、8 送信部、9 電力線、10 通信線、13 運転制御装置、14 出力部、15 信号分離部、16 信号混合部、301〜30n 負荷、50,51 高調波抑制システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10