(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800319
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
H01L23/40 D
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-513201(P2019-513201)
(86)(22)【出願日】2017年4月21日
(86)【国際出願番号】JP2017016072
(87)【国際公開番号】WO2018193625
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2019年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】清家 康平
(72)【発明者】
【氏名】林 亮兵
【審査官】
井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−043863(JP,A)
【文献】
特開2013−026320(JP,A)
【文献】
特開2004−134491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチング素子を有する半導体モジュールと、
前記半導体モジュールの冷却を目的としたヒートシンクと、
前記半導体モジュールを前記ヒートシンクに押さえ付けるためのバネ部材と、
前記半導体モジュールおよび前記バネ部材を収納する筐体と、
前記筐体を前記ヒートシンクに取り付けることで、前記バネ部材を介して前記半導体モジュールを前記ヒートシンクに押さえ付ける橋状構造と
を有し、
前記橋状構造は、締結構造を有しておらず、
前記筐体が前記ヒートシンクに取り付けられることで、前記バネ部材が前記橋状構造によって押し付けられ、前記半導体モジュールが前記ヒートシンクに密着させられる構造を備える
電力変換装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記ヒートシンクに取り付けられる際に、前記ヒートシンクの半導体モジュール搭載面に配置され、前記ヒートシンクの前記半導体モジュール搭載面と逆の面からネジ締結によって固定される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記筐体を覆うカバーをさらに有し、
前記カバーを前記筐体にネジ締結するためのネジ穴と、前記ヒートシンクを前記筐体にネジ締結するためのネジ穴が共通化されている
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記筐体を覆うカバーをさらに有し、
前記筐体および前記カバーは、前記ヒートシンクに対して共締めされる
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記筐体は、収納された前記半導体モジュールおよび前記バネ部材を覆うカバーを有する
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記ヒートシンクと前記筐体との間、および前記筐体と前記カバーとの間に設置されたパッキンをさらに有する
請求項3または4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記橋状構造は、前記ヒートシンクに押さえ付ける前記半導体モジュールの数に応じて、複数個設けられている
請求項1から6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記橋状構造は、前記筐体と一体化して構成されている
請求項1から7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記橋状構造は、前記筐体と別部品として構成されている
請求項1から7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
筐体は、アルミニウム合金または亜鉛合金で形成されている
請求項1から9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
筐体は、樹脂材料で形成されている
請求項1から9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置においては、半導体素子を有する半導体モジュールが用いられている。半導体モジュールは、スイッチングの際に発熱するため、冷却されることが望ましい。半導体モジュールの冷却方法としては、例えば、半導体モジュールをヒートシンクに取付け、ヒートシンクを通して、半導体モジュールを冷却する方法が挙げられる。
【0003】
従来の電力変換装置では、半導体モジュールは、バネ部材によってヒートシンクに押し付けられている。これによって、半導体モジュールとヒートシンクの密着性が向上し、熱伝達率を向上させることが可能となる。すなわち、半導体モジュールは、放熱され易くなる。
【0004】
従来技術においては、ヒートシンクの上面に配置された半導体モジュール上に、バネ部材を配置し、さらに、バネ部材上にバネ部材を補強するための補強梁を配置している。この補強梁には、貫通穴が形成されている。そして、補強梁とバネ部材を重ねた状態で、ネジによって補強梁をヒートシンク側に締め付けることで、半導体モジュールをヒートシンクに密着させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4129027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
このような従来技術では、半導体モジュールをヒートシンクに押し付けるために、バネ部材および補強梁が必要となる。このため、従来の電力変換装置は、部品点数が多くなっていた。さらに、従来の電力変換装置は、部品点数が多くなることによって、筐体内の構造上の制約が生まれる、あるいは組立工数が増加するなどの課題があった。
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、筐体内部の部品点数および組立工程を従来よりも低減させることのできる構造を備えた電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電力変換装置は、半導体スイッチング素子を有する半導体モジュールと、半導体モジュールの冷却を目的としたヒートシンクと、半導体モジュールをヒートシンクに押さえ付けるためのバネ部材と、半導体モジュールおよびバネ部材を収納する筐体と、筐体をヒートシンクに取り付けることで、バネ部材を介して半導体モジュールをヒートシンクに押さえ付ける橋状構造とを有
し、橋状構造は、締結構造を有しておらず、筐体がヒートシンクに取り付けられることで、バネ部材が前記橋状構造によって押し付けられ、半導体モジュールがヒートシンクに密着させられる構造を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体モジュール、通電部品などの発熱部品の冷却を目的としてバネ部材の上部に補強梁を取り付け固定する代わりに、筐体を取り付け固定することでバネ部材を押し付けることのできる構造を設け、筐体の取り付けにより、半導体モジュールをヒートシンクに固定できる構成を備えている。この結果、筐体内部の部品点数および組立工程を従来よりも低減させることのできる構造を備えた電力変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1における電力変換装置の斜視展開図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における
図1の構成を備えた電力変換装置の断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態2における電力変換装置の斜視展開図である。
【
図4】本発明の実施の形態2における
図3の構成を備えた電力変換装置の断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態3における電力変換装置の斜視展開図である。
【
図6】本発明の実施の形態3における
図5の構成を備えた電力変換装置の断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態4における電力変換装置の斜視展開図である。
【
図8】本発明の実施の形態4における
図7の構成を備えた電力変換装置の断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態5における電力変換装置の斜視展開図である。
【
図10】本発明の実施の形態5における
図9の構成を備えた電力変換装置の断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態6における電力変換装置の斜視展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電力変換装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。なお、以下の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における電力変換装置の斜視展開図である。また、
図2は、本発明の実施の形態1における
図1の構成を備えた電力変換装置の断面図である。
【0013】
図1に示した本実施の形態1に係る電力変換装置は、カバー10、回路部20、筐体30、板バネ40、半導体モジュール50、およびヒートシンク60が積層され、ねじ70、71によって固定される構造を備えている。
【0014】
図2に示すように、筐体30には、補強梁の代替となる橋状構造31が設けられている。そして、ねじ71を用い筐体30をヒートシンク60に組付けることによって、同時に、橋状構造31によって板バネ40が押し付けられ、半導体モジュール50がヒートシンク60に密着させられる構造となっている。
【0015】
さらに、ねじ70を用いることで、回路部20を挟みこむようにして、カバー10が筐体30に組付けられている。
【0016】
以上のように、実施の形態1によれば、橋状構造31を備えた筐体30を用いて半導体モジュール50をヒートシンク60に接着させることができる。このため、従来の電力変換装置で必要となっていた補強梁が不要となる。この結果、筐体内部の部品点数および組立工程を従来よりも低減させることのできる構造を備えた電力変換装置を実現することができる。
【0017】
実施の形態2.
図3は、本発明の実施の形態2における電力変換装置の斜視展開図である。また、
図4は、本発明の実施の形態2における
図3の構成を備えた電力変換装置の断面図である。
【0018】
図3に示した本実施の形態2に係る電力変換装置は、先の実施の形態1と同様に、カバー10、回路部20、筐体30、板バネ40、半導体モジュール50、およびヒートシンク60が積層され、ねじ70、71によって固定される構造を備えている。本実施の形態2は、先の実施の形態1と比較すると、ねじ71を用いた固定方法が異なっている。そこで、この相違点を中心に、以下に説明する。
【0019】
先の実施の形態1では、ねじ71を用いてヒートシンク60に対して筐体30をネジ止めした後、上部に回路部20を設置した上で、別のネジ穴を使用して、筐体30のカバー10を設置する構造をとっていた。
【0020】
これに対して、本実施の形態2では、ヒートシンク60に筐体30をねじ止めする際に、筐体30に対してヒートシンク60側からねじ71によってネジ止めする構造となっている。この結果、カバー10を筐体30に取付けるためのネジ70用のねじ穴と、ねじ71用のネジ穴を共通化することができ、ネジ締結点数を削減することができる。
【0021】
以上のように、実施の形態2によれば、先の実施の形態1と同様の効果を実現できる。さらに、実施の形態2によれば、ねじによる固定方法を工夫して、ねじ穴を共通化することで、さらに、ネジ締結点数の削減を図ることができる。
【0022】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3における電力変換装置の斜視展開図である。また、
図6は、本発明の実施の形態3における
図5の構成を備えた電力変換装置の断面図である。
【0023】
図5に示した本実施の形態3に係る電力変換装置は、カバー10、回路部20、筐体30、板バネ40、半導体モジュール50、およびヒートシンク60が積層され、ねじ70のみを用いて固定される構造を備えている。すなわち、本実施の形態3は、先の実施の形態1、2と比較すると、ねじ71を不要とした固定方法が異なっている。そこで、この相違点を中心に、以下に説明する。
【0024】
本実施の形態3では、ヒートシンク60上に筐体30を設置し、上部に回路部20を設置した上で、筐体30のカバー10を設置し、ヒートシンク60、筐体30、カバー10の3部品を、1種類のネジ70でねじ止めする構造をとっている。これによって、ネジを共用とすることができ、ネジ本数・締結点数の削減となる。
【0025】
以上のように、実施の形態3によれば、先の実施の形態1と同様の効果を実現できる。さらに、実施の形態3によれば、ねじによる固定方法を工夫して、ねじ穴を共通化するとともに、ねじ自身も1種類とすることで、さらに、ねじ本数、ネジ締結点数の削減を図ることができる。
【0026】
実施の形態4.
図7は、本発明の実施の形態4における電力変換装置の斜視展開図である。また、
図8は、本発明の実施の形態4における
図7の構成を備えた電力変換装置の断面図である。
【0027】
図7に示した本実施の形態4に係る電力変換装置は、筐体30a、回路部20、板バネ40、半導体モジュール50、およびヒートシンク60が積層され、ねじ70のみを用いて固定される構造を備えている。すなわち、本実施の形態4は、先の実施の形態3と比較すると、筐体30aが、カバー10の機能を有することで、カバー10と筐体30が一体化されている。そこで、この相違点を中心に、以下に説明する。
【0028】
本実施の形態4では、ヒートシンク60上に半導体モジュール50および回路部20を設置した上で、補強梁およびカバーの機能を有する筐体30aを設置した構造を有している。これにより、更なる部品点数の削減を実現している。
【0029】
以上のように、実施の形態4によれば、先の実施の形態1と同様の効果を実現できる。さらに、実施の形態4によれば、カバーと筐体を一体化することで、さらなる部品点数の削減を図ることができる。
【0030】
実施の形態5.
図9は、本発明の実施の形態5における電力変換装置の斜視展開図である。また、
図10は、本発明の実施の形態5における
図9の構成を備えた電力変換装置の断面図である。
【0031】
図9に示した本実施の形態5に係る電力変換装置は、カバー10、回路部20、パッキン80、筐体30、板バネ40、半導体モジュール50、パッキン81、およびヒートシンク60が積層され、ねじ70、71によって固定される構造を備えている。本実施の形態5は、先の実施の形態2と比較すると、パッキン80、81をさらに備えている点が異なっている。そこで、この相違点を中心に、以下に説明する。
【0032】
本実施の形態5による電力変換装置では、カバー10と筐体30との間にパッキン80が設置され、筐体30とヒートシンク60との間にパッキン81が設置されている。このような構造を採用することで、パッキン80、81によって筐体30とヒートシンク60との間の防水・防塵性を持たせることができ、回路部20を外部の水や異物から保護することができる。
【0033】
以上のように、実施の形態5によれば、先の実施の形態2と同様の効果を実現できる。さらに、実施の形態5によれば、パッキンを組み込むことで、さらに、防水・防塵性を備えた電力変換装置を実現することができる。
【0034】
実施の形態6.
図11は、本発明の実施の形態6における電力変換装置の斜視展開図である。本実施の形態6では、筐体30に複数の橋状構造31が設けられている。このような構成を採用することで、半導体モジュール50の配置数を増加させることができる。
【0035】
以上のように、実施の形態6によれば、先の実施の形態1と同様の効果を実現できる。さらに、実施の形態6によれば、補強梁の役目を果たす橋状構造を複数備えた筐体を用いることで、半導体モジュールの配置数を増加させることができ、電量変換装置の設計の自由度を向上させることが可能となる。
【0036】
なお、上述した実施の形態1〜6に係る電力変換装置では、筐体と橋状構造を一体としていたが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。例えば、バネ部材を押さえ付ける際、補強梁の役目を果たす橋状構造を筐体によって固定するなど、筐体と橋状構造を複数の部品に分割した構成を採用することも可能である。このように、筐体と橋状構造を別部材とすることで、筐体の構造を簡易化することができる。
【0037】
また、上述した実施の形態1〜6では、筐体の材料を特に指定していないが、筐体の材料としては、ダイキャスト加工が可能で熱伝導性の高い、アルミニウム合金や亜鉛合金など、融点の低い材料で構成することが望ましい。また、筐体の材料は、熱伝導性の高い材料であれば、金属に限定されることなく、モールド加工可能な樹脂材料を用いても良い。
【符号の説明】
【0038】
10 カバー、20 回路部、30、30a 筐体、31 橋状構造、40 板バネ、50 半導体モジュール、60 ヒートシンク、70、71 ネジ、80、81 パッキン。