(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定時間内の計測時刻間の計測コンデンサ電圧の差の絶対値の積算値と、予め設定された閾値とを比較し、前記制御装置で算出されたコンデンサ容量の値が正しいか否か判定することを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ容量測定装置。
同時刻の前記計測コンデンサ電圧と前記直線上のコンデンサ電圧との差の絶対値を前記所定時間積算し、この積算値と予め設定された閾値とを比較し、前記制御装置で算出されたコンデンサ容量の値が正しいか否か判定することを特徴とする請求項3に記載のコンデンサ容量測定装置。
前記制御装置で算出された前記コンデンサ容量の値が正しいか否か判定した結果が正しい場合、前記正しいと判定されたコンデンサ容量の複数の値の中央値又は平均値により、正コンデンサ容量を算出する正コンデンサ容量計算部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコンデンサ容量測定装置。
前記制御装置で算出された前記コンデンサ容量の値が正しいか否か判定した結果が正しくない場合には設定値を加算し、正しい場合には設定値を減算して誤測定回数とし、前記誤測定回数が予め設定した誤測定規定回数に達したとき、異常と判定する異常判定部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコンデンサ容量測定装置。
前記制御装置で算出された前記正コンデンサ容量が、予め設定したコンデンサ容量閾値未満となった容量不足回数が、予め設定した容量不足規定回数に達したとき、前記コンデンサ容量が不足との警告が必要であると判定するコンデンサ容量不足判定部を有することを特徴とする請求項5に記載のコンデンサ容量測定装置。
前記コンデンサを放電させる所定時間は、前記放電により低下する前記コンデンサの電圧が所定値となる時間以内に設定され、前記所定値は、この値以上で前記電磁操作機構の動作が可能である電圧値であることを特徴とする請求項8に記載の電力用機器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る正誤判定機能を有するコンデンサ容量測定装置及びこのコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器について説明する。
図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るコンデンサ容量測定装置の概略を示す回路構成図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係るコンデンサ容量測定装置の制御装置の機能を説明するブロック図、
図3は、制御装置のハードウエア構成を示す図である。
図4は、コンデンサ容量測定装置におけるコンデンサの放電による電圧の変化を示す図である。
図5は、コンデンサ容量測定装置におけるコンデンサの容量を求める方法を説明する図である。また、
図6は、
図5において、接触不良やサージなどによる異常が発生したことによりコンデンサ電圧に変動が生じた様子を説明する図である。
【0013】
図1において、コンデンサ容量測定装置10は、コンデンサ1及びコンデンサ1に充電する充電回路2に接続される。コンデンサ容量測定装置10は、コンデンサ1に並列に接続され、コンデンサ1の充電エネルギを放電させるための放電スイッチ3と放電抵抗4とが直列に接続された放電回路5と、コンデンサ1に並列接続され、放電時のコンデンサ電圧低下値を計測するための、第一の抵抗6と第二の抵抗7が直列接続された抵抗分圧回路8と、充電回路2にコンデンサ1への充電の停止指令及び放電回路5の放電スイッチ
3に導通指令を出すとともに抵抗分圧回路8の分圧点Aの電圧V
aを計測しコンデンサ1の容量を算出する制御装置9とからなる。
【0014】
なお、制御装置9は、コンデンサ容量を算出するコンデンサ容量算出部901、充電回路2にコンデンサ1への充電の停止指令及び放電回路5の放電スイッチ
3に導通指令等の信号を出す信号指令部902および詳細は後述するが、算出されたコンデンサ容量が正しいか否かの判定を行う測定正誤判定部903の機能を備える。
また、制御装置9の機能は、
図3に示すようなハードウエアによって実現される。すなわち、プロセッサ91と、プロセッサ91で実行されるプログラムやデータの蓄積されるメモリ92と、入出力デバイス93とがデータバス94によって接続されている。プロセッサ91による制御によって、充電回路2にコンデンサ1への充電を停止する指令信号の送信や、コンデンサ1の容量算出等のためのデータ処理やデータ伝送が行われる。
【0015】
[コンデンサ容量の測定:定常動作]
次に、
図1、
図4及び
図5を参照して、実施の形態1におけるコンデンサ容量測定装置10の動作原理について説明する。測定対象であるコンデンサ1は、常時、充電回路2によりその定格電圧まで充電されている。このコンデンサ1の容量変化を経過観測するため、定期的にコンデンサ1に充電されているエネルギを瞬時に放電させる。まず、制御装置9の指令により、時刻t
0に充電回路2にコンデンサ1への充電停止命令が出され、同時に、放電回路5の放電スイッチ3に導通指令が出される。これにより、コンデンサ1に蓄えられたエネルギは、放電電流iとして放電抵抗4を流れ、コンデンサ1の両端の電圧V
cは低下する。この間、コンデンサ1に並列に接続された抵抗分圧回路8の第一の抵抗6及び第二の抵抗7の分圧点Aの電圧V
aが計測され、制御装置9に入力される。所定の導通時間(放電時間T)経過後の時刻t
nで制御装置9の指令により、放電スイッチ3は開放され、放電電流iは停止し、コンデンサ1の充電は充電回路2により再開される。
【0016】
図4は放電回路5の放電スイッチ3のオン時間、充電回路2への充電停止指令の時間及び測定対象のコンデンサ電圧との関係を示したものである。放電時間Tは、このコンデンサ1のエネルギを利用する電力用機器の動作に支障をきたさない1s(秒)未満の極めて短い時間、例えば、200ms程度に設定される。電力用機器の動作に支障をきたさない時間とは、その時間内であれば、低下したコンデンサ電圧でも電力用機器を動作させることができ、それ以上コンデンサ電圧がさらに低下すると電力用機器を動作できなくなる所定の電圧(閾値)に達するまでの時間である。
充電停止指令中の時間すなわちコンデンサ1への充電停止時間と放電回路5の放電スイッチ3をオンしている時間は同じである。この放電回路のスイッチ3がオンしている間、第一の抵抗6、第二の抵抗7の分圧点Aの電圧V
aの変化(電圧低下)が、制御装置9に計測データとして入力される。
【0017】
次に、制御装置9に入力された分圧点Aの電圧V
aからコンデンサ容量Cを算出する方法について
図5を用いて説明する。
図5は、コンデンサ1の充電停止期間Tでのコンデンサ電圧V
cが低下する様子を示したものである。コンデンサ電圧V
0、V
nはそれぞれ、時刻t
0、t
nでの電圧であり、放電前後の電圧である。コンデンサ電圧V
1、V
n−1はそれぞれ、時刻t
1、t
n−1での電圧である。
この期間T中のコンデンサ1の電圧V
cは、第一の抵抗6及び第二の抵抗7の抵抗値をそれぞれR
1、R
2とすると、
V
c=(R
1+R
2)×V
a/R
1 ・・・ 式(1)
と、表わされるから、制御装置9に入力される計測データV
aを用いて、コンデンサ電圧V
cを算出できる。この期間の電圧低下の傾きΔV
cは、
ΔV
c=(V
0−V
n)/T ・・・ 式(2)
と、表される。
【0018】
放電回路5の放電スイッチ3を極めて短い時間導通するため、測定対象のコンデンサ1から放電抵抗4へはほぼ一定の電流で放電すると見做せる。そのため、
図5に示すように直線に近似できる。
式(3)で表されるコンデンサ容量Cとコンデンサ電圧V
cとコンデンサ1に蓄えられた電荷Qの関係式から、式(4)で表される放電前のコンデンサ電圧V
0と放電後のコンデンサ電圧V
nと放電時の電流iと放電する時間Tの関係式を求めることができる。
式(5)は式(4)をコンデンサ容量Cについて解いた式である。式(5)において、放電電流iは、放電中の平均コンデンサ電圧V
c*と放電抵抗4の抵抗値R
dからi=V
c*/R
dとなり、この関係式と式(2)を用いて表記すると式(6)となる。すなわち式(6)を用いることで放電回路
5の
放電スイッチ
3がオンしている間のコンデンサ電圧V
c(平均コンデンサ電圧V
c*)からコンデンサ容量
Cを算出することができる。
C×V
c = Q ・・・ 式(3)
C×(V
0−V
n) = ∫idt = i×T ・・・ 式(4)
C = i×T÷(V
0−V
n) ・・・ 式(5)
C = V
c*/(R
d・ΔV
c) ・・・ 式(6)
なお、平均コンデンサ電圧V
c*は、時間T内に計測されたV
aから式(1)で算出されたV
cの和を測定点数で除することにより算出できる。また、コンデンサ電圧低下の傾きΔV
cは計測されたV
aから算出された計測コンデンサ電圧V
cのデータを用いて算出できる。前述したように、コンデンサ電圧低下の傾きΔV
cは直線に近似できることから、計測コンデンサ電圧V
cのデータを最小二乗法で直線に近似すればよい。あるいは、時間T内の計測コンデンサ電圧V
cのデータの計測点数を例えば2等分し、前半の計測コンデンサ電圧V
cの平均値と後半の計測コンデンサ電圧V
cの平均値との差をT/2で除した移動平均により算出できる。
【0019】
[コンデンサ電圧の変動:異常発生時]
次に、放電回路5の放電スイッチ3を導通してコンデンサ容量を算出している時に、配線接続の接触不良や、サージなどにより、コンデンサ電圧もしくはコンデンサ電圧の計測回路の電圧に一時的に変動が生じた場合(以下異常発生と称す)について説明する。
図6は、
図5と同様コンデンサ1の充電停止期間Tでのコンデンサ電圧V
cが低下する様子を示したものである。図中(a)はコンデンサ容量測定中に配線接続の接触不良や、サージなどの異常が発生していない場合、(b)、(c)は異常が発生した場合のものである。図中グラフのうち点線は計測されたV
aから時刻毎に算出されたコンデンサ電圧V
c(図中では計測値と示す)、実線(図中では算出値と示す)は期間T内のΔV
cを図示したもので、期間T内の計測コンデンサ電圧V
cデータ用い、例えば最小二乗法で直線近似したものである。
【0020】
図6において、異常が発生していない場合(a)では、期間T内における計測時刻毎に算出された計測コンデンサ電圧V
c(計測値)から読み取れる電圧低下である傾きは、算出されたΔV
caと同じである。
【0021】
図6において、異常が発生した(b)では、期間T内における測定時刻毎に算出された計測コンデンサ電圧V
c(計測値)では、時刻t
xで例えばノイズの発生が認められ、V
cは図中Xで示すような挙動を示す。そのため、このノイズ発生部分を考慮して求められたΔV
cb=(V
0−V
n1)/Tは、計測データであるV
cのノイズ部分Xを除いて算出されるΔV
x=(V
0−V
nx)/Tより大きくなる。そのため、コンデンサ容量は本来のコンデンサ容量より小さく算出されることになる。
上述のようなノイズ発生の場合、コンデンサ容量が所定より低下していると判断され、コンデンサ不良やコンデンサ交換時期と誤判断されることになってしまう。
【0022】
また、
図6において、異常が発生した(c)では、期間T内における計測時刻毎に算出された計測コンデンサ電圧V
c(計測値)では、時刻t
yで例えば配線接続の接触不良が生じ、それ以降ではV
cは図中Yで示すような挙動を示す。そのため、この異常発生を考慮して求められたΔV
cc=(V
0−V
n2)/Tは、計測データであるV
cの異常発生がなかったとして時刻t
y以降を無視して算出されるΔV
y=(V
0−V
ny)/Tより大きくなる。そのため、本来のコンデンサ容量より小さく算出されることになる。
この場合も、コンデンサ容量が所定より低下していると判断され、コンデンサ不良やコンデンサ交換時期と誤判断されることになってしまう。
【0023】
[コンデンサ容量測定の正誤判定]
次に、算出されたコンデンサ容量が正しいか否かの判定方法について図を用いて説明する。放電スイッチ3が導通している、コンデンサ1の充電停止期間Tでは
図5で説明したように、コンデンサの電圧は直線的に低下する。このことを利用し、計測コンデンサ電圧のデータの時間差分をチェックすることで、ノイズ発生のような直線状からはずれた現象を確認することができる。
【0024】
図7は、
図6中(b)の例を用いて算出されたコンデンサ容量が正しいか否かを判断する方法を説明する図である。
図7中(a)は、
図6中(b)のコンデンサ1の充電停止期間Tでのコンデンサ電圧V
cが低下する様子を示したもので、領域Xa内部を拡大したのが
図7中(b)である。
図7中(b)において、簡単のため、時間間隔Δtは、
Δt=t
m+1―t
m=t
m+2―t
m+1=t
k+1―t
k=t
k+2―t
k+1
とする。時刻t
mとt
m+1との間でのコンデンサ電圧差はV
m−V
m+1であり、この傾きは、
ΔV
x=(V
m−V
m+1)/Δt
である。次の時間ステップである時刻t
m+2についてみると、時刻t
m+1とt
m+2との間でのコンデンサ電圧差はV
m+1−V
m+2であり、この傾きはΔV
xとほぼ等しくなる。
【0025】
ノイズの発生した時間帯を見ると、時刻t
kとt
k+1との間でのコンデンサ電圧差はV
k−V
k+1であり、この傾きは
ΔV
x<(V
k−V
k+1)/Δt
でΔV
xより大となる。また、同様に次の時間ステップである時刻t
k+2についてみると、時刻t
k+1とt
k+2でのコンデンサ電圧差はV
k+1−V
k+2であり、この傾きの絶対値は、
ΔV
x<|V
k+1−V
k+2|/Δt
となり、ΔV
xより大となる。ある時刻間で計測されたコンデンサ電圧の低下の傾きがΔV
xのより大となるということは、ここで電圧低下の直線からはずれることを意味する。
なお、ここでは簡単のため一定の時間間隔Δtを用いたが、任意の時間間隔を用いて、電圧の時間差分を求めてもよい。
また、ノイズ発生によりコンデンサ電圧の時間変化の大きな図
7中(a)に示す領域Xa内部に着目して説明したが、放電スイッチ3を導通し、コンデンサ1の充電停止期間Tを通して計測時刻間のコンデンサ電圧について順次差分の確認を行う。
【0026】
以上のように、コンデンサ充電停止期間中のコンデンサ電圧の電圧低下は直線で近似でき、その傾きはΔV
xであり、Δtにおける電圧差はV
m−V
m+1であるので、計測時刻間のコンデンサ電圧の差について順次確認を行う。V
m−V
m+1と差異が生じれば、すなわち、直線からはずれるような挙動を示せば、この期間T中に何らかの異常が発生し、この期間での平均コンデンサ電圧を用いて算出されたコンデンサ容量は正しくないと判断できる。
V
m−V
m+1との差異については、予め閾値を決めておけばよい。例えば、5倍までは許容できると閾値を設定しておけば、期間T中に電圧差を計算して閾値と比較し、その最大値がV
m−V
m+1の5倍以上となれば、算出されたコンデンサ容量は正しくないと判断できる。
従って、測定されたコンデンサ容量の値の正誤判定が可能となる。
閾値としてV
m−V
m+1の5倍を例示したが、閾値を小さくすると、コンデンサ容量測定に影響ほとんどない小さなノイズ発生も検知してしまう。測定を重ねた結果、5倍であれば、図
7で示すような、コンデンサ容量測定に影響を及ぼすノイズ発生を明確に判断できる値として有効な閾値であった。
【0027】
本実施の形態1によれば、放電スイッチ3を導通したコンデンサ1の充電停止期間T
では、コンデンサ電圧が直線状に低下することを利用し、この期間中の計測時刻間のコンデンサ電圧の差をチェックし、それが閾値以上か否かにより、異常発生の有無を判断でき、この期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否か判断できる。これにより、コンデンサ容量の算出精度が向上し、誤判断でコンデンサ容量不足と判断されてしまうことがなくなり、不要なコンデンサの交換がなくなるという効果がある。
【0028】
実施の形態2.
実施の形態1では、放電スイッチ3を導通したコンデンサ1の充電停止期間T中の、計測時刻間のコンデンサ電圧の差をチェックし、それが閾値以上か否かにより、異常発生の有無をおよびこの期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否か判定する方法を説明した。本実施の形態2では、放電スイッチ3を導通したコンデンサ1の充電停止期間T中の、計測時刻間のコンデンサ電圧の差を積算し、その和(積算値)が所定の閾値以上か否かにより、異常発生の有無をおよびこの期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否か判定する方法について、
図6、7を用いて説明する。
【0029】
図6において、(a)の異常がない場合は、停止期間をt
0からt
nとすると、その期間の計測時刻毎のコンデンサ電圧の時間差分の絶対値の積算値σaは、
【数1】
となる。
一方、(b)の異常が発生した場合、計測時刻毎のコンデンサ電圧の時間差分の絶対値の積算値σbは、
【数2】
となり、
図7中(b)で示されるように、時刻t
k〜t
k+4でコンデンサ電圧の時間変化が大きくなるため、このノイズ発生の時間域を除いた本来のコンデンサ電圧の時間差分の和n・ΔV
xより大きくなる。ある時刻間で計測されたコンデンサ電圧の低下の傾きの絶対値の和がn・ΔV
xより大となるということは、計測時間域で電圧低下の直線からはずれる箇所が存在することを意味する。
ここで、例えば、3倍までは許容できると予め閾値を設定しておけばよい。期間T中に電圧差の和を計算し、その値が本来生じる差の合計(n・ΔV
x)の3倍以上である場合に、算出されたコンデンサ容量は正しくないと判断できる。
【0030】
本実施の形態2の方法では、
図6中(c)のような、ノイズと違って緩やかな変化を生じるような異常発生についても、異常発生の有無をおよびこの期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否か判断可能となる。
図6中(c)の場合、計測時刻間のコンデンサ電圧の差の絶対値の和σcは次のように表わされる。
【数3】
図6中(c)からわかるように時刻t
yまでは時間毎の電位差はΔV
yから大きな差はないが、t
y以降傾きが大きくなり、結果として本来のコンデンサ電圧の時間差分の絶対値の和(n・ΔV
y)より大きくなる。
そのため、図中6(b)と同様に、例えば、本来のコンデンサ電圧の時間差分の絶対値の和(n・ΔV
y)の3倍までは許容できると予め閾値を設定しておき、期間T中に計測時間毎の計測コンデンサ電圧の時間差分の和を計算し、その積算値と閾値とを比較し、積算値が閾値を超えた場合に、算出されたコンデンサ容量は正しくないと判断できる。
閾値としてn・ΔV
yの3倍を例示したが、閾値を小さくすると、コンデンサ容量測定に影響がほとんどないものも異常として検知してしまう。測定を重ねた結果、3倍であれば、
図6中(c)で示す、コンデンサ容量測定に影響を及ぼす接触不良を90%排除可能な値として有効な閾値であった。
【0031】
上記説明では、計測時刻間の計測コンデンサ電圧の差の絶対値の合計を単純に総和として計算したが、二乗和とすることで計測時刻間の計測コンデンサ電圧の時間差分が強調され、判断をより明確にすることができる。
【0032】
以上のように、本実施の形態2によれば、放電スイッチ3を導通したコンデンサ1の充電停止期間Tでは、コンデンサ電圧が直線的に低下することを利用し、この期間中の計測時刻間の計測コンデンサ電圧の差の絶対値を積算し、その和が閾値以上か否かにより、異常発生の有無を判断でき、この期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否か判断できる。これにより、コンデンサ容量の算出精度が向上し、本来ならば、コンデンサの交換が不要なところ、誤判断でコンデンサ容量不足と判断されて発生していたコンデンサの交換がなくなるという効果がある。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態1、2では、放電スイッチ3を導通したコンデンサ1の充電停止期間T中の、計測時刻毎の計測コンデンサ電圧のデータ自身を用い、計測時刻間の計測コンデンサ電圧の差を確認、あるいは差の絶対値の和を求めて、所定の閾値内か否かにより、異常発生の有無を判断し、この期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否か判断した。実施の形態3では、計測時刻毎の計測コンデンサ電圧のデータと、そのデータを用いて算出されたコンデンサ電圧の傾き(直線)とを用いて、異常発生の有無をおよびこの期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否か判定する方法について説明する。
【0034】
図8は、実施の形態3により、測定されたコンデンサ容量を正誤判定する方法を説明するための図で、放電スイッチ3を導通したコンデンサ1の充電停止期間T中の、計測時刻毎の計測コンデンサ電圧のデータの推移(点線)と、このデータを用いて算出されたコンデンサ電圧低下の傾きΔV
cb(実線)を図示したものある。コンデンサ1の充電停止期間T中には、
図6中(b)と同様に異常が発生(ノイズが発生)した場合の例である。
ΔV
cbは、放電スイッチ3がオンしている期間中は、コンデンサの電圧は直線状に低下するため、実施の形態1で説明したように、計測コンデンサ電圧を用い、最小二乗法や移動平均により直線に近似される。
【0035】
図において、時刻t
mにおける計測コンデンサ電圧V
mとΔV
cb直線上のコンデンサ電圧V
mcとの差を求める。計測時刻毎にこの差を求めていく。時刻t
k+1では、時刻t
mのときよりもその差が大となる。
図6中(a)のように異常がない場合は、この差は、非常に小さく、測定誤差程度となる。従って、コンデンサ1の充電停止期間T中の計測コンデンサ電圧とΔV
cb直線上のコンデンサ電圧との差を計測時刻毎に所定の閾値と比較していく。この差の最大値が所定の閾値以上であれば、この期間T中に異常が発生したと判断する。異常発生であると判断する閾値は、予め決めておけばよい。例えば、測定誤差の5倍までは許容できると閾値を設定しておけば、期間T中に計測コンデンサ電圧とΔV
cb直線上のコンデンサ電圧との
差の最大値が測定誤差の5倍以上となれば、算出されたコンデンサ容量は正しくないと判断できる。
従って、算出されたコンデンサ容量の正誤を判定することができる。
実施の形態1と同様に、閾値として測定誤差の5倍を例示したが、閾値を小さくすると、コンデンサ容量測定に影響ほとんどない小さなノイズ発生も検知してしまう。測定を重ねた結果、5倍であれば、
図7、8で示すような、コンデンサ容量測定に影響を及ぼすノイズ発生を明確に判断できる値として有効な閾値であった。
【0036】
以上のように、本実施の形態3によれば、放電スイッチ3を導通したコンデンサ1の充電停止期間Tでは、コンデンサ電圧が直線的に低下することを利用し、この期間中の計測時刻毎の計測コンデンサ電圧のデータと、これを用いて算出されたコンデンサ電圧の傾き直線上の電圧との差の最大値が閾値以上か否かにより、異常発生の有無を判定でき、この期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否かの判定も行うことができる。これにより、コンデンサ容量の算出精度が向上し、本来ならば、コンデンサの交換が不要なところ、誤判断でコンデンサ容量不足と判断されて発生していたコンデンサの交換がなくなるという効果がある。
【0037】
実施の形態4.
実施の形態3では、放電スイッチ3を導通したコンデンサ1の充電停止期間T中の、計測よる計測コンデンサ電圧と算出されたコンデンサ電圧の傾きΔV
cb直線上のコンデンサ電圧との差の最大値が所定の閾値以上否かにより、異常発生の有無をおよびこの期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否かの判定を行った。本実施の形態4では、放電スイッチ3を導通したコンデンサ1の充電停止期間T中の、計測よるコンデンサ電圧とそれを用いて算出されたコンデンサ電圧の傾きΔV
cb直線上のコンデンサ電圧との差の絶対値を積算し、その和が所定の閾値以上か否かにより、異常発生の有無をおよびこの期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否か判定する方法について、
図8、9を用いて説明する。
【0038】
実施の形態3で説明したように、
図6中(a)のように異常がない場合は、サンプリングによるコンデンサ電圧と算出されたコンデンサ電圧の傾きΔV直線上のコンデンサ電圧との差は測定誤差程度であり、これを期間T中時刻t
0からt
nまでの和は求めても十分小さな値である。この測定誤差の積算値を基準値とし、
図8において、期間T中時刻t
0からt
nまで計測による計測コンデンサ電圧とこの計測コンデンサ電圧を用いて算出されたコンデンサ電圧の傾きΔV
cb直線上のコンデンサ電圧との差の絶対値の和を求める。例えば、基準値の3倍までは許容できると予め閾値を設定しておくと、期間T中の計測による計測コンデンサ電圧と算出されたコンデンサ電圧の傾きΔV
cb直線上のコンデンサ電圧との差の絶対値の積算値と閾値とを比較し、閾値を超えた場合に、算出されたコンデンサ容量は正しくないと判断できる。
【0039】
本実施の形態4の方法では、
図6中(c)のような、ノイズと違って緩やかな変化を生じるような異常発生についても、異常発生の有無をおよびこの期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否かの判定が可能となる。
図9は、
図6中(c)を用いて、本実施の形態4を説明するための図である。図において、計測時刻毎の計測コンデンサ電圧のデータの推移(点線)と、このデータを用いて算出されたコンデンサ電圧低下の傾きΔV
cc(実線)を図示したものある。例えば時刻t
j1における計測による計測コンデンサ電圧V
j1とΔV
cc直線上のコンデンサ電圧V
j1cとの差を求める。同様に、時刻t
j2における計測による計測コンデンサ電圧V
j2とΔV
cc直線上のコンデンサ電圧V
j2cとの差を求める。電圧に緩やかな変化を生じるような異常の場合、実施の形態3ではこのV
j1―V
j1cや|V
j2―V
j2c|のような単純差では異常と判断されない場合が生じる。しかし、本実施の形態では、時間毎のこの差(の絶対値)を積算するので、判定が可能となる。すなわち、
図8と同様に、例えば、基準値の3倍までは許容できると予め閾値を設定しておき、期間T中に計測による計測コンデンサ電圧と算出されたコンデンサ電圧の傾きであるΔV
cc直線上のコンデンサ電圧との差の絶対値の積算値と閾値とを比較し、その積算値が閾値を超えた場合に、算出されたコンデンサ容量は正しくないと判断できる。
【0040】
実施の形態2と同様に、閾値として基準値の3倍を例示したが、閾値を小さくすると、コンデンサ容量測定に影響がほとんどないものも異常として検知してしまう。測定を重ねた結果、3倍であれば、
図6中(c)で示す、コンデンサ容量測定に影響を及ぼす接触不良を90%排除可能な値として有効な閾値であった。
【0041】
上記説明では、計測による計測コンデンサ電圧と算出されたコンデンサ電圧の傾きΔV
cc直線上のコンデンサ電圧との差の絶対値の積算値を単純に総和として計算したが、二乗和とすることで、計測コンデンサ電圧とΔV
cc直線上のコンデンサ電圧との差がより顕著になり判断を明確にすることができる。
【0042】
以上のように、本実施の形態4によれば、放電スイッチ3を導通したコンデンサ1の充電停止期間Tでは、コンデンサ電圧が直線的に低下することを利用し、この期間中の計測時刻毎の計測コンデンサ電圧のデータと、このデータを用い算出されたコンデンサ電圧の傾き上の電圧との差の絶対値を積算し、その積算値が所定の閾値以上か否かにより、異常発生の有無を判定することができる。さらに、この期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否か判定することができる。これにより、コンデンサ容量の算出精度が向上し、本来ならば、コンデンサの交換が不要なところ、誤判断でコンデンサ容量不足と判断されて発生していたコンデンサの交換がなくなるという効果がある。
【0043】
上記実施の形態3、4では、期間Tの算出されたコンデンサ電圧の傾きΔV(
図6、
図7、
図8における実線)は、期間T内の計測コンデンサ電圧V
cデータ用い、最小二乗法で直線近似したものを用いたが別の手法で算出してもよい。例えば、移動平均を用いてもよい。時間T内に計測されたV
aから算出されたV
cの和を測定点数で除することにより算出した平均コンデンサ電圧V
c*を用い、時間Tを二等分し、前半半分の前記コンデンサの電圧の平均値と後半半分の前記コンデンサの電圧の平均値の差を時間Tの2分の1で割った値(移動平均)をコンデンサの電圧の時間変化値ΔVとしてもよい。
いずれのΔVもノイズ等で発生した計測コンデンサ電圧を含むデータで直線近似するため、計測時刻毎に計測コンデンサ電圧と差分を算出すると、異常発生時の差は大きくなるので、コンデンサ容量の正誤判定に用いることができる。
【0044】
また、上記実施の形態態3、4では、算出されたコンデンサ容量が正しいか否か判定する閾値を決める基準値として計測誤差を用いたが、閾値はこれに限るものではない。過去のデータから、決めてもよいし、期間T毎のコンデンサ電圧の変動平均や経過から決めてもよい。
【0045】
実施の形態5.
実施の形態1から4において、制御装置9では、コンデンサ容量が算出され、算出されたコンデンサ容量が正しいか否か、すなわちコンデンサ容量の測定の正誤判定をした。本実施の形態5では、この正誤判定に基づき、さらに正しいコンデンサ容量を算出し、コンデンサ容量不足かどうかの判定を行うようにした。この方法について、
図10、11を用いて説明する。
【0046】
図10は、本発明の実施の形態5に係るコンデンサ容量測定装置の制御装置の機能を説明するブロック図である。図において、制御装置9は、
図2で示した機能に加えて、測定正誤判定部903で誤と判定された場合、異常が発生しているか否か判断する異常判定部910と、測定正誤判定部903で正と判定された場合、さらに、正しいコンデンサ容量を算出する正コンデンサ容量計算部911と、正コンデンサ容量計算部911で算出されたコンデンサ容量に基づき、コンデンサ容量不足か否か判定するコンデンサ容量不足判定部912を備える。コンデンサ容量の低下に伴い、容量不足との警告が必要と判定した場合には、コンデンサ容量測定装置10の表示装置11に表示し告知する。表示装置11が表示するのは、コンデンサ容量不足に限るものではない。
【0047】
図11は、本発明の実施の形態5における動作を示すフローチャートである。
図11において、コンデンサ容量測定装置の制御装置9は、ステップS001からステップS002はコンデンサ容量算出部901が、ステップS003は測定正誤判定部903が、ステップS004からステップS007は異常判定部910が、ステップS008からステップS010は正コンデンサ容量計算部911が、ステップS011からステップS015はコンデンサ容量不足判定部912がそれぞれ処理を実行する。
【0048】
処理工程において、まず、ステップS001で、正測定規定回数n
CC、誤測定規定回数n
CF、コンデンサ容量閾値C
CS、及び容量不足規定回数n
CUが設定される。
【0049】
正測定規定回数n
CCは、コンデンサ容量の中央値又は平均値を計算するための測定回数である。コンデンサ容量は、測定が正しい場合であっても異常値となる可能性があり、それらの影響が少なくなるようn
CC回測定する。ここでは正測定規定回数n
CCを16回とした。
【0050】
誤測定規定回数n
CFは、コンデンサ容量の測定が正しくない場合、その原因が配線接続の接触不良やサージではないと判断される回数である。
コンデンサ容量の測定を1時間に1回実施する場合、コンデンサ容量が正しくない原因が配線接続の接触不良やサージであれば、10日以内に原因が排除されるとし、誤測定規定回数n
CFを240回とした。
【0051】
コンデンサ容量閾値C
CSは、コンデンサ容量の容量不足を警告すべき値であり、その値は、コンデンサが回路で確保すべき最低限の容量により設定される。
【0052】
容量不足規定回数n
CUは、コンデンサ容量がコンデンサ容量閾値C
CS未満となった場合、連続何回であれば容量不足の警告が必要と判定されるかの回数である。
コンデンサ容量は変動を伴い徐々に低下するものであり、確実に容量不足を警告するため、容量不足規定回数n
CUを3回とした。
【0053】
ステップS002では、実施の形態1から4のいずれかの方法で、コンデンサ容量C
0が測定され、測定が正しいか否かの判断がされる。
【0054】
ステップS003では、ステップS002の結果、コンデンサ容量の測定が正しい場合はステップS004、正しくない場合には、ステップS005へ進む。
【0055】
ステップS004では、測定が誤った回数の累計である誤測定回数n
Fから1が減算され、ステップS008へ進む。誤測定回数n
Fから1が減算された結果が負数であれば0とし、ステップS008へ進む。
【0056】
ステップS005では、誤測定回数n
Fに1が加算され、ステップS006へ進む。
【0057】
ステップS006では、誤測定回数n
Fが、誤測定規定回数n
CFに達したかどうかが判定される。達していない場合は、コンデンサ容量測定は継続される(ステップS002に戻る)。達した場合は、異常と判断され、ステップS007に進む。
なお、上述の誤測定回数n
Fの計算は、測定が誤った場合には1(ここでは設定値を1として説明する)が加算され、測定が正しい場合には1が減算される例を示したが、測定が誤った場合のみ1が加算されても良く、又は連続して測定が誤った回数の累計としても良い。
【0058】
ステップS007では、異常を通知するために表示装置11に対して異常である旨の信号を伝送し、表示装置
11は異常である旨の表示を実施し、測定を終了する。
【0059】
ステップS008では、測定が正しい回数の累計である、正測定回数n
Cに1が加算され、ステップS009へ進む。
【0060】
ステップS009では、正測定回数n
Cが正測定規定回数n
CCに達したかどうかが判定され、達していない場合は、コンデンサ容量測定は継続され(ステップS002に戻る)、達した場合は、ステップS010に進む。
なお、上述の正測定回数n
Cの計算は、測定が正しい場合に1が加算される例を示したが、連続して測定が正しい回数の累計としても良い。
【0061】
ステップS010では、正測定規定回数n
CC回の測定を実施した結果として、正測定規定回数n
CC個のコンデンサ容量C
0の中央値が計算され、これを、正コンデンサ容量C
Fとし、ステップS011に進む。
なお、上述の正コンデンサ容量C
Fの計算は、コンデンサ容量C
0の中央値の計算の例を示したが、平均値の計算としても良い。
【0062】
ステップS011では、正コンデンサ容量C
Fと、コンデンサ容量閾値C
CSが比較される。正コンデンサ容量C
Fがコンデンサ容量閾値C
CS以上であれば、コンデンサ容量に不足はないと判定され、ステップS012に進み、コンデンサ容量閾値C
CS未満の場合はステップS013に進む。
【0063】
ステップS013では、正コンデンサ容量C
Fがコンデンサ容量閾値C
CS未満となった連続回数である容量不足回数n
Uに1が加算され、ステップS014に進む。
【0064】
ステップS014で、容量不足回数n
Uが、容量不足規定回数n
CUに達したかどうかが判定される。達した場合は、コンデンサ容量が不足との警告が必要であると判定され、ステップS015に進む。達していない場合は、コンデンサ容量測定は継続される(ステップS002に戻る)。
なお、上述の容量不足回数n
Uの計算は、連続してコンデンサ容量閾値C
CS未満であった場合の回数が累計される例を示したが、連続ではない累計でも良く、又はコンデンサ容量閾値C
CS未満であった場合には1が加算されコンデンサ容量閾値C
CS以上の場合には1が減算される累計としても良い。
【0065】
ステップS015で、表示装置11に対して正コンデンサ容量C
F、及びコンデンサ容量の不足を警告する信号を伝送する。表示装置11は正コンデンサ容量C
F、及びコンデンサ容量が不足の旨の警告表示を実施し、測定を終了する。
【0066】
一方、ステップS011でコンデンサ容量に不足はないと判定されると、ステップS012で、容量不足回数n
Uに、回数リセットのため0が設定され、コンデンサ容量測定は継続される(ステップS002に戻る)。
【0067】
なお、本実施の形態において、異常判定部又は正コンデンサ容量計算部は省略しても良い。正コンデンサ容量計算部を省略した場合、ステップS011では、正コンデンサ容量C
Fの値はコンデンサ容量C
0の値となる。
【0068】
以上のように、本実施の形態によれば、コンデンサ容量測定装置に、正コンデンサ容量を算出する正コンデンサ容量計算部、異常を判定する異常判定部、コンデンサ容量不足の警告の要否を判定するコンデンサ容量不足判定部、及び上述の結果を表示する表示装置を設ける。これらにより、定期的にコンデンサの測定が実施されるだけで、コンデンサ容量が不足との警告表示がなされるため、コンデンサ交換時期の判断が確実にできる。
【0069】
実施の形態6.
実施の形態6では、実施の形態1から5に記載のコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器の例として、真空遮断器(VCB:Vacuum Circuit Breaker)の例について説明する。
【0070】
図12は、本実施の形態6に係る電力用機器であるコンデンサ容量測定装置を備えた真空遮断器100の概略を示す構成図である。真空遮断器100はコンデンサ1に蓄積されたエネルギにより電磁操作機構が動作される。
図において、真空遮断器100は、タンク遮蔽壁101内に設置され、固定接点102と可動軸103に取り付けられた可動接点104とが開閉される真空スイッチ管(VST:Vacuum Switching Tube)105と、タンク遮蔽壁101外に設けられ、固定鉄心111とこの固定鉄心111内に設置された引外し用コイル112及び投入用コイル113と、この引外し用コイル112に電力を供給するコンデンサ1と、コンデンサ1から引外し用コイル112にスイッチ114をオンすることにより通電された場合に電流を計測する計器用変流器(CT:Current Transformer)115と、これらのコイル112、113を貫通するように設置された可動軸116と、この可動軸116に取り付けられた永久磁石117と可動鉄心118と、可動軸116に取り付けられた接圧バネ119により真空スイッチ管105の接点102、104を開閉する機能を持つ電磁操作機構110と、コンデンサ1の充電を行う充電回路2と、コンデンサ1の容量を測定するコンデンサ容量測定装置10とを備える。なお、コンデンサ容量測定装置10の構成は、実施の形態1から5で説明したとおりであり、ここでは説明を省略する。
【0071】
次に、
図12を参照して、実施の形態6における真空遮断器の動作原理について説明する。真空遮断器100の開閉操作は電磁操作機構110の電磁コイル112,113による電磁力で行い、開閉状態は永久磁石117の磁力によって保持される。固定鉄心111に電磁コイルの引外し用コイル112と投入用コイル113が設けられ、可動鉄心118と永久磁石117が取り付けられた可動軸116は、引外し用コイル112と投入用コイル113間を移動できるように設定されている。この可動軸116は接圧バネ119を介して真空スイッチ管105の固定接点102と対抗する可動接点104に繋がっている真空スイッチ管105側の可動軸103に接続されている。
【0072】
真空スイッチ管105の投入状態では、可動鉄心118は固定鉄心111の投入側に永久磁石117により吸着保持されている。真空スイッチ管105を開放状態にするために引外し指令により、引外し用コイル112にコンデンサ1から通電することにより、その磁力により可動鉄心118が開極側に吸引され、永久磁石117により引外し用コイル112への通電停止後も可動鉄心118は開極側に吸着保持される。これにより、可動鉄心118が取り付けられている可動軸116が移動することになり、真空スイッチ管105の接点は開放状態となる。投入用コイル113に通電すれば、逆の動作で真空スイッチ管105は投入状態となる。
【0073】
引外し用コイル112に通電するコンデンサ1は上述した実施の形態1から4に記載のコンデンサ容量測定装置10により定期的に容量が測定され信頼性の維持が図られる。さらに、コンデンサ容量測定中の異常発生の有無を判断でき、この期間に算出されたコンデンサ容量が正しいか否かの判定が可能となる。これにより、コンデンサ容量の算出精度が向上し、本来ならば、コンデンサの交換が不要なところ、誤判断でコンデンサ容量不足と判断されて発生していたコンデンサの交換がなくなるという効果がある。
コンデンサ1により通電された電流をモニタするため計器用変流器115にて計測される。コンデンサ容量測定装置10の動作については、実施の形態1から5で説明したので省略する。
【0074】
真空遮断器100において、例えば、コンデンサ1が電磁操作駆動に支障が生じないよう容量測定時の放電による電圧低下値ΔVが設定される。例えば、本実施の形態6で、DC電圧77.5Vとすると、放電による電圧低下値として1Vあればコンデンサ容量の測定が可能である。したがって、コンデンサ容量測定に必要な放電による電圧低下値ΔVの範囲内となるよう放電スイッチの導通時間Tは決定されるが、上記実施の形態1から4で説明した200msの放電スイッチの導通時間であれば電圧低下値ΔVの範囲内に十分収まる。
【0075】
このように、本発明の実施の形態6におけるコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器である真空遮断器では、コンデンサを取り外すことなく真空遮断器の運用中も定期的に駆動用のコンデンサの容量測定を行い、容量の適否を判定と容量測定時のノイズ等の異常発生に起因する容量適否の誤判断をチェックすることができるので、長期的な電力用機器の信頼性向上が図れるといった顕著な効果を奏するものである。
【0076】
なお、上記実施の形態では電力用機器として真空遮断器の駆動用のコンデンサの容量測定に適用する場合について述べたが、コンデンサを駆動エネルギとして使用する機器であれば他の電力用機器にも適用可能である。また、自動車等、車両用のコンデンサに適用して、運用中にコンデンサ容量の測定を行うことにより信頼性向上を図ることも可能である。
【0077】
なお、上記実施の形態では、コンデンサが定格電圧まで充電されている場合について説明したが、定格電圧より低い電圧でコンデンサが運用されている場合には、上記定格電圧を運用電圧と読み替えてもよい。
【0078】
また、この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態に示した構成要素を自由に組み合わせたり、各実施の形態の任意の構成要素を適宜、変更または省略したりすることが可能である。