特許第6800352号(P6800352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800352キャパシタ診断装置及びキャパシタ診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6800352
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】キャパシタ診断装置及びキャパシタ診断方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20201207BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20201207BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20201207BHJP
   G01R 27/26 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   H02M1/00 C
   H02M7/48 M
   G01R31/00
   G01R27/26 C
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-569496(P2019-569496)
(86)(22)【出願日】2019年7月24日
(86)【国際出願番号】JP2019028983
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】山口 治之
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2019/239511(WO,A1)
【文献】 特開2018−191446(JP,A)
【文献】 特開2007−252057(JP,A)
【文献】 特開2016−019309(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/070402(WO,A1)
【文献】 特開2002−165357(JP,A)
【文献】 特開2005−251185(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0058428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00,7/48
G01R 27/26,31/00
H02P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流リンクに対して並列に接続されるキャパシタによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する電力変換ユニットにおける前記キャパシタに流れる電流によって変化する物理量を検出するセンサと、
前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記センサによって検出された前記物理量に基づいた周波数スペクトルを生成する周波数スペクトル解析部と、
前記電力変換ユニットの構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の成分を、前記周波数スペクトルに基づいて抽出する周波数成分抽出部と、
少なくとも前記抽出された特定周波数帯の成分の大きさに基づいて、前記キャパシタの状態を診断する診断処理部と
を備え
前記電力変換ユニットは、固定のキャリア周波数のキャリア信号を用いたPWM制御によって制御され、
前記周波数成分抽出部は、
前記生成された周波数スペクトルに基づいて、前記キャリア周波数の2以上の整数倍の周波数を基準に規定される周波数帯の成分を、前記特定周波数帯の成分として抽出する、
キャパシタ診断装置。
【請求項2】
直流リンクに対して並列に接続されるキャパシタによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する電力変換ユニットにおける前記キャパシタに流れる電流によって変化する物理量を検出するセンサと、
前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記センサによって検出された前記物理量に基づいた周波数スペクトルを生成する周波数スペクトル解析部と、
前記電力変換ユニットの構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の成分を、前記周波数スペクトルに基づいて抽出する周波数成分抽出部と、
少なくとも前記抽出された特定周波数帯の成分の大きさに基づいて、前記キャパシタの状態を診断する診断処理部と
を備え、
前記キャパシタは、第1キャパシタユニットと第2キャパシタユニットを含み、
前記センサは、前記第1キャパシタユニットに流れる電流を検出する第1電流センサを含み、
前記周波数スペクトル解析部は、
前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記第1電流センサの検出結果に基づいた第1周波数スペクトルを生成する第1周波数スペクトル解析部を含み、
前記周波数スペクトルには、前記第1周波数スペクトルが含まれ、
前記周波数成分抽出部は、
前記特定周波数帯の成分として、前記特定周波数帯の電流成分を、前記第1周波数スペクトルに基づいて抽出し、
前記診断処理部は、
少なくとも前記抽出された特定周波数帯の電流成分の大きさに基づいて、前記第1キャパシタユニットの状態を診断する
ャパシタ診断装置。
【請求項3】
前記電力変換ユニットは、固定のキャリア周波数のキャリア信号を用いたPWM制御によって制御されることにより前記直流電力を前記交流電力に変換する際にスイッチングするスイッチング素子を備えていて、
前記周波数成分抽出部は、
前記生成された第1周波数スペクトルに基づいて、前記キャリア周波数の整数倍の周波数を基準に規定される周波数帯の電流成分を、前記特定周波数帯の電流成分として抽出する、
請求項2に記載のキャパシタ診断装置。
【請求項4】
前記周波数成分抽出部は、
前記キャリア周波数に基づいて決定された前記特定周波数帯の電流成分の大きさを抽出する、
請求項3に記載のキャパシタ診断装置。
【請求項5】
前記診断処理部の判定基準は、
前記特定周波数帯の電流成分の大きさと前記キャパシタの劣化状況との関係に基づいて規定され、
前記診断処理部は、
前記抽出された特定周波数帯の電流成分の大きさを前記判定基準に基づいて判定して、前記判定の結果に基づいて前記第1キャパシタユニットの状態を診断する、
請求項2に記載のキャパシタ診断装置。
【請求項6】
前記直流リンクの第1極からの分岐路と、前記分岐路からさらに分岐された第1分岐路と第2分岐路とが形成されていて、
前記第1分岐路には前記第1キャパシタユニットの第1極端子が接続され、前記第1キャパシタユニットの第2極端子が前記直流リンクの第2極に接続され、
前記第2分岐路には前記第2キャパシタユニットの第1極端子が接続され、前記第2キャパシタユニットの第2極端子が前記直流リンクの第2極に接続され、
前記第1電流センサは、
前記第1分岐路に流れる電流を検出する
請求項2に記載のキャパシタ診断装置。
【請求項7】
前記センサは、
前記第2分岐路に流れる電流を検出する第2電流センサを含み、
前記第1周波数スペクトル解析部は、
前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記第2電流センサの検出結果に基づいた第2周波数スペクトルを生成し、
前記周波数成分抽出部は、
前記特定周波数帯の電流成分を、前記第2周波数スペクトルに基づいて抽出し、
前記診断処理部は、
前記第2周波数スペクトルに基づいて抽出された前記特定周波数帯の電流成分の大きさに基づいて、前記第2キャパシタユニットの状態を診断する
請求項6に記載のキャパシタ診断装置。
【請求項8】
直流リンクに対して並列に接続されるキャパシタによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する電力変換ユニットにおける前記キャパシタに流れる電流によって変化する物理量を検出するセンサと、
前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記センサによって検出された前記物理量に基づいた周波数スペクトルを生成する周波数スペクトル解析部と、
前記電力変換ユニットの構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の成分を、前記周波数スペクトルに基づいて抽出する周波数成分抽出部と、
少なくとも前記抽出された特定周波数帯の成分の大きさに基づいて、前記キャパシタの状態を診断する診断処理部と
を備え、
前記センサは、前記直流リンクの電圧を検出する第1電圧センサを含み、
前記周波数スペクトル解析部は、
前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記第1電圧センサの検出結果に基づいた第3周波数スペクトルを生成する第3周波数スペクトル解析部を含み、
前記周波数スペクトルには、前記第3周波数スペクトルが含まれ、
前記周波数成分抽出部は、
前記特定周波数帯の成分として、前記特定周波数帯の電圧成分を、前記第3周波数スペクトルに基づいて抽出し、
前記診断処理部は、
少なくとも前記抽出された特定周波数帯の電圧成分の大きさに基づいて、前記キャパシタの状態を診断する
キャパシタ診断装置。
【請求項9】
前記電力変換ユニットは、固定のキャリア周波数のキャリア信号を用いたPWM制御によって制御されることにより前記直流電力を前記交流電力に変換するスイッチング素子を備えていて、
前記周波数成分抽出部は、
前記生成された第3周波数スペクトルに基づいて、前記キャリア周波数の整数倍の周波数を基準に規定される周波数帯の電流成分を、前記特定周波数帯の電流成分として抽出する、
請求項8に記載のキャパシタ診断装置。
【請求項10】
前記周波数成分抽出部は、
前記キャリア周波数に基づいて決定された前記特定周波数帯の電圧成分の大きさを抽出する、
請求項9に記載のキャパシタ診断装置。
【請求項11】
前記診断処理部の判定基準は、
前記特定周波数帯の電圧成分の大きさと前記キャパシタの劣化状況との関係に基づいて規定され、
前記診断処理部は、
前記抽出された特定周波数帯の電圧成分の大きさを前記判定基準に基づいて判定して、前記判定の結果に基づいて前記キャパシタの状態を診断する、
請求項8に記載のキャパシタ診断装置。
【請求項12】
前記電力変換ユニットから負荷に流れる交流電流を検出する第2電流センサ
を備え、
前記診断処理部は、
少なくとも前記抽出した特定周波数帯の成分の大きさと、前記交流電流の検出値とに基づいて、前記キャパシタの状態を診断する、
請求項8に記載のキャパシタ診断装置。
【請求項13】
前記診断処理部の判定基準は、
前記電力変換ユニットから前記負荷に流れる電流の大きさと、前記特定周波数帯の電圧成分の大きさと前記キャパシタの劣化状況との関係に基づいて規定され、
前記診断処理部は、
前記判定基準に基づいて、前記抽出された特定周波数帯の電圧成分の大きさを判定して、前記判定の結果に基づいて前記キャパシタの状態を診断する、
請求項12に記載のキャパシタ診断装置。
【請求項14】
直流リンクに対して並列に接続されるキャパシタによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する電力変換ユニットにおける前記キャパシタに流れる電流によって変化する物理量をセンサによって検出し、
前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記センサによって検出された前記物理量に基づいた周波数スペクトルを生成し、
前記電力変換ユニットの構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の成分を、前記周波数スペクトルに基づいて抽出し、
少なくとも前記抽出された特定周波数帯の成分の大きさに基づいて、前記キャパシタの状態を診断するステップ
を含み、
前記電力変換ユニットは、固定のキャリア周波数のキャリア信号を用いたPWM制御によって制御され、
前記生成された周波数スペクトルに基づいて、前記キャリア周波数の2以上の整数倍の周波数を基準に規定される周波数帯の成分を、前記特定周波数帯の成分として抽出する、
キャパシタ診断方法。
【請求項15】
直流リンクに対して並列に接続されるキャパシタであって、第1キャパシタユニットと第2キャパシタユニットを含むキャパシタによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する電力変換ユニットにおける前記第1キャパシタユニットに流れる電流を第1電流センサによって検出し、
前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記第1電流センサによって検出された前記電流に基づいた第1周波数スペクトルを生成し、
前記電力変換ユニットの構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の成分を、前記第1周波数スペクトルに基づいて抽出し、
少なくとも前記抽出された特定周波数帯の成分の大きさに基づいて、前記第1キャパシタユニットの状態を診断するステップ
を含むキャパシタ診断方法。
【請求項16】
直流リンクに対して並列に接続されるキャパシタによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する電力変換ユニットにおける前記キャパシタに流れる電流によって変化する前記直流リンクの電圧を検出する第1電圧センサによって検出し、
前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記第1電圧センサによって検出された前記直流リンクの電圧に基づいた第3周波数スペクトルを生成し、
前記電力変換ユニットの構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の成分を、前記第3周波数スペクトルに基づいて抽出し、
少なくとも前記抽出された特定周波数帯の電圧成分の大きさに基づいて、前記キャパシタの状態を診断するステップ
を含むキャパシタ診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、キャパシタ診断装置及びキャパシタ診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電力に関わる電圧を平滑化するキャパシタ(コンデンサ)を備え、その直流電力に基づいて交流電力に生成する電力変換装置が知られている。キャパシタは、有寿命部品の一つであるが、キャパシタの劣化を容易に検出することができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−191446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、キャパシタの劣化を容易に検出することが可能なキャパシタ診断装置及びキャパシタ診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のキャパシタ診断装置は、センサと、周波数スペクトル解析部と、周波数成分抽出部と、診断処理部とを備える。センサは、直流リンクに対して並列に接続されるキャパシタによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する電力変換ユニットにおける前記キャパシタに流れる電流によって変化する物理量を検出する。周波数スペクトル解析部は、前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記センサの検出結果に基づいた周波数スペクトルを生成する。周波数成分抽出部は、前記電力変換ユニットの構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の成分を、前記周波数スペクトルに基づいて抽出する。診断処理部は、少なくとも前記抽出された特定周波数帯の成分の大きさに基づいて、前記キャパシタの状態を診断する。前記電力変換ユニットは、固定のキャリア周波数のキャリア信号を用いたPWM制御によって制御される。前記周波数成分抽出部は、前記生成された周波数スペクトルに基づいて、前記キャリア周波数の2以上の整数倍の周波数を基準に規定される周波数帯の成分を、前記特定周波数帯の成分として抽出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の電力変換システムの構成図。
図2】第1の実施形態のキャパシタ診断装置の構成図。
図3】第1の実施形態のFFT処理に係る信号のタイミングチャート。
図4】第1の実施形態の各キャパシタユニットの判定基準を説明するための図。
図5】第1の実施形態の各キャパシタユニットの状態を診断する処理のフローチャート。
図6】第2の実施形態の電力変換システムの構成図。
図7】第2の実施形態のキャパシタ診断装置の構成図。
図8】第2の実施形態のキャパシタの第2の判定基準を説明するための図。
図9】第2の実施形態のキャパシタの状態を診断する処理のフローチャート。
図10】第2の実施形態の変形例におけるキャパシタの第3の判定基準を説明するための図。
図11】第3の実施形態の電力変換システムの構成図。
図12】第3の実施形態のキャパシタ診断装置の構成図。
図13】第3の実施形態のキャパシタの状態を診断する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のキャパシタ診断装置及びキャパシタ診断方法を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。
【0008】
明細書で言う「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されず、電気的に接続される場合も含む。本明細書では、交流の基本波の周波数を基本周波数と呼ぶ。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、実施形態のキャパシタ診断装置を含む電力変換システム2について説明する。
図1は、第1の実施形態の電力変換システム2を示す構成図である。図1には、交流電源1、電力変換システム2、及び電動機3が示される。
【0010】
交流電源1は、商用電源系統(PS)や発電機などであり、例えば、3相交流電力を電力変換システム2に供給する。
【0011】
電動機3は、例えば、誘導電動機などの交流可変速電動機(M)である。電動機3は、電力変換システム2から供給された交流電力によって駆動し、回転駆動力を図示しない出力軸に出力し、その回転駆動力により出力軸に連結される負荷を駆動する。
【0012】
電力変換システム2は、交流電源1から供給される交流電力を直流電力に変換して、直流電力を交流電力に逆変換して、逆変換によって得られた単相交流電力を電動機3に供給する。これに制限されることなく、電動機3が3相交流型であれば、電力変換システム2は、3相交流電力を電動機3に供給してもよい。以下の説明では、電動機3が単相交流型の場合を例示して説明する。
【0013】
電力変換システム2は、例えば、順変換装置20、キャパシタ30、キャパシタ診断装置40、逆変換装置50、制御部60、及び負荷電流検出器70を備える。
【0014】
順変換装置20は、交流電源1に接続される交流側端子の他に、正極出力端子20Pと、直流側出力負極端子20Nとを備える。正極出力端子20Pは、正極線80Pの第1の端部に接続される。正極線80Pの第2の端部は、逆変換装置50の正極入力端子50Pに接続される。直流側出力負極端子20Nは、負極線80Nの第1の端部に接続される。負極線80Nの第2の端部は、逆変換装置50の負極入力端子50Nに接続される。
【0015】
例えば、順変換装置20は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの1又は複数のスイッチング素子20Sを含む。スイッチング素子20Sは、順変換装置20の出力側の直流電圧が所望の電圧になるように、制御部60によって制御される。順変換装置20は、変換した直流電力を、正極出力端子20Pと直流側出力負極端子20Nとから、正極線80Pと負極線80Nとに出力する。
【0016】
キャパシタ30は、正極線80Pと負極線80Nとに並列に接続され、順変換装置20が出力する直流電力を平滑化する。キャパシタ30は、直流的に互いに並列に接続される複数のキャパシタユニットを含む。キャパシタユニット31(第1キャパシタユニット)、キャパシタユニット32(第2キャパシタユニット)、及びキャパシタユニット33は、複数のキャパシタユニットの一例である。キャパシタ30は、正極線80Pに接続される正極分岐端子30Pと、負極線80Nに接続される負極分岐端子30Nとを備える。
【0017】
例えば、キャパシタユニット31、32、33の正極側は、正極分岐端子30Pを介して正極線80Pに接続される。同様に、キャパシタユニット31、32、33の負極側は、負極分岐端子30Nを介して負極線80Nに接続される。上記の接続形態は、直流的に互いに並列に接続される形態の一例である。
【0018】
なお、キャパシタ30の種類は、例えば電解コンデンサ、フィルムコンデンサなどであってよい。キャパシタユニット31、32、33の種類と容量は、互いに同じ種類であって、かつ互いに同じ容量のものに揃えるとよい。キャパシタユニット31、32、33を各キャパシタユニットと呼ぶ。
【0019】
キャパシタ診断装置40は、電力変換システム2の力行運転中に各キャパシタユニットに流れる電流を検出し、検出された電流値に基づいた周波数スペクトルから特定周波数帯の電流成分を抽出し、抽出された特定周波数帯の電流成分の大きさに基づいて、各キャパシタユニットの状態を診断する。例えば、上記の特定周波数帯は、後述する逆変換装置50の構成に依存する周波数に係る周波数帯を含む。これについて後述する。
【0020】
逆変換装置50は、例えば、IGBTなどの1又は複数のスイッチング素子50Sを含む単相インバータである。スイッチング素子50Sの種類は、IGBTに制限されることなく、他の種類のものに変更してよい。逆変換装置50のスイッチング素子50Sは、制御部60によってPWM(Pulse Width Modulation)制御される。逆変換装置50は、例えば、順変換装置20から正極線80Pと負極線80Nを介して供給される直流電力を単相交流電力に変換する。逆変換装置50は、変換した単相交流電力を、負荷電力線58を介して電動機3に供給する。
【0021】
負荷電流検出器70は、逆変換装置50から電動機3に電力を供給するための負荷電力線58に流れる電流を検出する。
【0022】
制御部60は、負荷電力線58を流れる負荷電流を検出する負荷電流検出器70の検出値などに基づいたフィードバック制御によって、力行運転時に逆変換装置50のスイッチング素子50SにPWM制御に基づいたゲートパルス信号を出力する。これにより、制御部60は、スイッチング素子50SをPWM制御する。例えば、制御部60は、PWM制御に、特定の周波数に固定されたキャリア周波数のキャリア信号を用いる。
【0023】
制御部60は、キャパシタ診断装置40と通信することにより、例えば、逆変換装置50の運転状態を示す情報、負荷電流検出器70の検出値などをキャパシタ診断装置40に供給してもよい。逆変換装置50の運転状態を示す情報は、例え逆変換装置50が力行運転状態にあることを示す情報、有効電力が流れる方向を示す情報であってよい。
【0024】
図2は、第1の実施形態のキャパシタ診断装置40の構成図である。
キャパシタ診断装置40は、例えば、通信インタフェースユニット41(図2中の記載は通信IFユニット。)と、電流検出器42と、電圧検出器44(第1電圧センサ)と、表示器45と、解析処理ユニット46とを備える。
【0025】
通信インタフェースユニット41は、後述する解析処理ユニット46の制御によりキャパシタ診断装置40の外部の装置と通信する。例えば、通信インタフェースユニット41は、制御部60に通信可能に接続され、後述する解析処理ユニット46の制御により制御部60と通信する。
【0026】
電流検出器42は、複数の電流センサユニットを含む。電流センサユニット421(第1電流センサ)、電流センサユニット422(第2電流センサ)、及び電流センサユニット423は、複数の電流センサユニットの一例である。電流センサユニット421、電流センサユニット422、及び電流センサユニット423を纏めて説明する場合には、電流センサユニット420と呼ぶ。
【0027】
電流センサユニット420は、キャパシタ30の各キャパシタユニットにそれぞれに流れる電流をそれぞれ検出し、それぞれ検出した電流を表す電流検出値を解析処理ユニット46にそれぞれ出力する。
【0028】
例えば、キャパシタユニット31の正極側(第1極端子)は、分岐線31BP(第1分岐路)を介して正極分岐端子30Pに接続される。キャパシタユニット32の正極側は、分岐線32BP(第2分岐路)を介して正極分岐端子30Pに接続される。キャパシタユニット33の正極側は、分岐線33BPを介して正極分岐端子30Pに接続される。同様に、キャパシタユニット31の負極側(第2極端子)は、分岐線31BNを介して負極分岐端子30Nに接続される。キャパシタユニット32の負極側は、分岐線32BNを介して負極分岐端子30Nに接続される。キャパシタユニット33の負極側は、分岐線33BNを介して負極分岐端子30Nに接続される。正極線80P(第1極)から正極分岐端子30Pまでの接続線路と、負極線80N(第2極)から負極分岐端子30Nまでの接続線路は、分岐路の一例である。換言すれば、キャパシタユニット31の正極側に、正極線80P(第1極)から正極分岐端子30Pまでの接続線路と、その接続線路からさらに分岐された分岐線31BPと分岐線32BPと分岐線33BPとが形成されている。
【0029】
上記の場合、電流センサユニット421は、分岐線31BPに設けられ、分岐線31BPに流れる電流を検出する。分岐線31BPに流れる電流は、キャパシタユニット31に流れる電流になる。同様に、電流センサユニット422は、分岐線32BPに設けられ、分岐線32BPに流れる電流を検出する。分岐線32BPに流れる電流は、キャパシタユニット32に流れる電流になる。電流センサユニット423は、分岐線33BPに設けられ、分岐線33BPに流れる電流を検出する。分岐線33BPに流れる電流は、キャパシタユニット33に流れる電流になる。なお、上記の例は各キャパシタユニットの正極側で上記の電流を検出する場合を例示したものであるが、これに代えて各キャパシタユニットの負極側で上記の電流を検出するように、電流センサユニット420を負極側の分岐線に設けてもよい。
【0030】
電流センサユニット420は、例えば、図示しないホール素子を含み、ホール素子によって検出された信号を図示しないAD(Analog to Digital)コンバータによって量子化して、電流値を表す電流検出値として出力するものでよい。
【0031】
電圧検出器44は、正極分岐端子30Pと負極分岐端子30Nの間に掛かる電圧を検出し、この電圧を表す電圧検出値を解析処理ユニット46に出力する。正極分岐端子30Pと負極分岐端子30Nの間に掛かる電圧は、直流リンクを成す正極線80Pと負極線80Nの間に掛かる電圧に等しい。以下、この電圧を直流リンクの電圧という。
【0032】
電圧検出器44は、例えば、入出力が絶縁される直流電圧変換器などを介して、直流リンクの電圧を検出し、図示しないADコンバータによって直流リンクの電圧を量子化して電圧検出値として出力する。
【0033】
なお、制御部60は、直流リンクの電圧を安定化させたり、過電圧にならないように保護したりするために、電圧検出器44による検出結果を利用してもよい。例えば、制御部60は、電圧検出器44から直流リンクの電圧の検出値を取得して、順変換装置20を制御することによって、直流リンクの電圧を調整してもよい。
【0034】
表示器45は、液晶表示器などの表示デバイスを含み、後述する解析処理ユニット46の制御により所望の情報を表示デバイスに表示させる。
【0035】
解析処理ユニット46は、電流検出器42が検出した電流を表す電流検出値と、電圧検出器44が検出した電圧を表す電圧検出値との少なくとも一方を用いて、キャパシタ30の状態を診断する。
【0036】
例えば、解析処理ユニット46は、記憶部461、電流値取得部462、電圧値取得部464、高速フーリエ変換部465、抽出部466、判定部467、表示処理部468及び通信処理部469を備える。
【0037】
記憶部461は、例えば、電流値取得部462によって取得された各キャパシタユニットに流れる電流を表す電流検出値データ、制御部60を介して取得した逆変換装置50と電動機3との間に流れる電流を表す電流値データ、電圧値取得部464によって取得された直流リンクの電圧を表す電圧検出値データ、逆変換装置50の稼働状態データ、高速フーリエ変換部465によって生成された周波数スペクトラムデータ、抽出周波数成分データ、判定基準データテーブル、キャパシタ診断処理のプログラムなどを格納する。上記の電流検出値データ、電流値データ、電圧検出値データ、及び稼働状態データは、時系列データである。上記の各情報の詳細は後述する。
【0038】
電流値取得部462、電圧値取得部464、高速フーリエ変換部465、抽出部466、判定部467、表示処理部468、及び通信処理部469のそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。記憶部461は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はRAM(Random Access Memory)等により実現される。
【0039】
電流値取得部462は、電流センサユニット420によって検出された電流を表す電流検出値を取得し、記憶部461の電流検出値データに追加する。また、記憶部461に格納されている電流検出値データから所定の数の電流検出値を表す検出値を取得して高速フーリエ変換部465に出力する。例えば、電流値取得部462は、稼働状態データを参照し、電流検出値データから取得した電流検出値のうち、逆変換装置50が稼働状態にある期間に対応する期間の所定の数の電流検出値を表す検出値を高速フーリエ変換部465に供給する。なお、電流値取得部462は、電流センサユニット420からの電流検出値の取得と、記憶部461からの電流検出値の読み出しとを並列に行ってもよい。
【0040】
電圧値取得部464は、電圧検出器44によって検出される直流リンクの電圧を表す検出値(電圧検出値)を取得し、記憶部461の電圧検出値データに追加する。また、記憶部461の電圧検出値データに格納されている所定の数の電圧検出値を表す検出値を取得し高速フーリエ変換部465に出力する。例えば、電圧値取得部464は、稼働状態データを参照し、電圧検出値データから取得した電圧検出値のうち、逆変換装置50が稼働状態にある期間に対応する期間の所定の数の電圧検出値を表す検出値を高速フーリエ変換部465に供給する。なお、電圧値取得部464は、電圧検出器44からの電圧検出値の取得と、記憶部461の電圧検出値データからの電圧検出値の読み出しとを並列に行ってもよい。
【0041】
高速フーリエ変換部465は、例えば、電流値取得部462から受け取った所定の数の電流検出値に対するFFT処理(高速フーリエ変換処理)を行うことにより周波数スペクトラムFSiを生成し、生成した周波数スペクトラムFSiを記憶部461の周波数スペクトラムデータに追加する。FFT処理により得られた周波数スペクトラムFSiは、電流値取得部462から受け取った所定の数の電流検出値に基づいた周波数成分を示す。高速フーリエ変換部465がFFT処理のために電流値取得部462から受け取る電流検出値の数は、FFT処理により得られる周波数スペクトラムFSiにおいて、所望の周波数の成分が含まれるように設定するとよい。
【0042】
なお、高速フーリエ変換部465は、電圧値取得部464から受け取った所定の数の電圧検出値にFFT処理を行ってもよい。これについては後述する。
【0043】
抽出部466は、高速フーリエ変換部465が生成して記憶部461の周波数スペクトラムデータに記憶させた周波数スペクトラムFSiから、逆変換装置50の構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の成分を抽出し、抽出した成分を抽出周波数成分Fext1として記憶部461の抽出周波数成分データに追加する。例えば、PWM制御のキャリア周波数fの2倍の周波数である周波数2fの成分は、逆変換装置50の構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の電流成分又は電圧成分の一例である。なお、逆変換装置50が生成する交流の基本波周波数とその高調波が、PWM制御のキャリア周波数fと、キャリア周波数fの偶数倍の周波数(例えば、上記の周波数2f。)に干渉しないように、逆変換装置50の基本波周波数と、キャリア周波数fを規定するとよい。
【0044】
判定部467は、抽出部466が抽出し記憶部461の抽出周波数成分データに記憶させた抽出周波数成分Fext1の大きさを、予め規定された第1の判定基準に基づいて判定する。第1の判定基準について後述する。判定部467による判定の結果には、各キャパシタユニットの劣化が進行した状態か否かの判定の結果が含まれる。
【0045】
表示処理部468は、判定部467による判定の結果を表示器45に表示させる。表示処理部468は、判定部467による判定の結果に、キャパシタ30内に劣化が進行したキャパシタユニットがあると判定された場合には、劣化が進行したキャパシタユニットを含むキャパシタ30について、劣化が進行していることを併せて表示器45に表示させてもよい。
【0046】
通信処理部469は、制御部60と通信することで、制御部60から、力行運転時にあることを示す情報、負荷電流検出器70の検出値などの情報を取得する。通信処理部469は、力行運転時にあることを示す情報を記憶部461の稼働状態データに追加する。通信処理部469は、負荷電流検出器70の検出値を記憶部461の電流値データに追加する。
【0047】
次に、図3を参照して、FFT処理の対象のデータについて説明する。図3は、第1の実施形態のFFT処理に係る信号のタイミングチャートである。
【0048】
図3に示されるタイミングチャートは、上段側から、(a)逆変換装置50の稼働状態、(b)電流センサユニット420によって検出された電流値、(c)電流値取得部462が所得した電流値(標本化されたデータ)、(d)電流値取得部462が高速フーリエ変換部465に供給するデータをそれぞれ示す。
【0049】
この図3に示す初期状態は、図3中の(a)に示されるように逆変換装置50の稼働状態が回生運転状態にある。このとき、回生された電力によってキャパシタ30は充電される。例えば、電流センサユニット421は、キャパシタユニット31を充電する電流を検出する。キャパシタユニット31が放電する電流を正の値で示すとすれば、図3中の(b)に示すように、キャパシタユニット31を充電する電流が負の値になる。逆変換装置50が回生運転状態にあると、電動機3の回生量により、キャパシタユニット31を充電する電流の大きさが変化する。図3中の(c)に、電流値取得部462が所得した電流値として標本化されたデータをモデル化して示しているが、図3中の(b)と同様に負の値になる。
【0050】
時刻t1になると、制御部60は、逆変換装置50の稼働状態を力行運転状態に遷移させて、逆変換装置50をPWM制御によって制御する。例えば、制御部60は、逆変換装置50が力行運転状態にあるときには、電動機3を指令値に従い駆動させるように逆変換装置50を制御する。
【0051】
これにより、上記の力行運転状態になると、キャパシタ30に放電電流が流れる。例えば、電流センサユニット421は、キャパシタユニット31からの放電電流を検出する。この図3中の(b)に、キャパシタユニット31の放電電流を正の値で示す。同様に、図3中の(c)に示す、電流値取得部462が所得した電流値のデータも、正の値になる。なお、データを標本化する間隔は、PWM制御による電流値の変動を検出できる程度に十分に短く規定されている。
【0052】
この逆変換装置50の力行運転状態は時刻t4まで継続し、その後、逆変換装置50の稼働状態が回生運転状態に遷移する。
【0053】
電圧値取得部464は、逆変換装置50の稼働状態の情報に基づいて、逆変換装置50が力行運転状態にある時刻t1から時刻t4までの期間の中から、予め定められた所定の長さの期間Tを選択する。選択された期間Tの始点を時刻t2で示し、終点を時刻t3で示す。期間Tが、FFT処理の対象期間になる。
【0054】
図3中の(d)に示すように、電圧値取得部464が時刻t2から時刻t3までのデータを高速フーリエ変換部465に供給することで、高速フーリエ変換部465は、逆変換装置50の稼働状態の期間に対応する電流検出値についてFFT処理を実施することができる。
【0055】
なお、指令値に従って制御される逆変換装置50が電動機3に供給する電流の変化量は、電動機3の負荷変動が小さければ比較的少なくなる。その結果、キャパシタユニット31からの放電電流に、電動機3の負荷変動による影響が生じにくい。そこで、電圧値取得部464は、所望の電流量が検出されている範囲のデータを選択してもよい。
【0056】
なお、上記のタイミングチャートでは、時刻t1から時刻t4までの間に、FFT処理の対象期間を1つ設ける場合を例示したが、これに制限されることなくFFT処理の対象期間を複数設けてもよい。この場合、判定部467は、各期間のFFT処理の結果をそれぞれ判定に用いてもよく、判定の前に平均化処理などの統計的処理を行って、偶発的な成分を抑圧してもよい。
【0057】
次に、図4を参照して、キャパシタユニットの第1の判定基準について説明する。図4は、第1の実施形態の各キャパシタユニットの第1の判定基準を説明するための図である。図4に示すグラフは、キャパシタユニットの容量(横軸)に対するキャパシタ30の各キャパシタユニットに流れる特定の周波数成分の電流(縦軸)の関係を示す。
【0058】
図4に示すグラフには、各キャパシタユニットの容量が約10%から100%までの範囲で、右肩上がりの直線GI1が描かれている。この直線GI1は、キャパシタの容量が100%よりも少ないときに検出され得る各キャパシタユニットに流れる電流成分の大きさを示している。このグラフに示された直線GI1を用いて、各キャパシタユニットの判定基準を、下記のように規定する。
【0059】
・各キャパシタユニットの劣化が進行していない初期状態時の電流検出値に基づいて、特定周波数成分の大きさ(最大値)を規定する。例えば、その大きさを100%で示す。各キャパシタユニットの状態を判定するための第1の判定基準の基準値は、各キャパシタユニットの容量が定格容量のときの値を基準に規定される。なお、各キャパシタユニットの容量が定格容量のときとは、各キャパシタユニットの劣化が進行していない初期状態にあるときのことである。各キャパシタユニット実際の容量が定格容量とみなせる状態であれば、各キャパシタユニットの容量は必ずしも100%でなくてもよい。
【0060】
・上記の第1の判定基準の値は、キャパシタユニットの劣化状態に対応させて、上記の第1の判定基準の基準値(100%)よりも小さな値に決定される。例えば、各キャパシタユニットの劣化が進行するほど、各キャパシタユニットの容量が大きく減少した状態になる。これにつれて電流検出器42によって検出される電流検出値の大きさが小さくなる。
【0061】
このような事象が生じる要因として下記の要因が挙げられる。例えば、キャパシタユニット31の劣化が進行して容量が期待値よりも少なくなった仮定し、これを劣化キャパシタユニットと呼ぶ。これに対し、キャパシタユニット32は、健全な状態が保たれていて容量が期待値を満たしていると仮定し、これを健全キャパシタユニットと呼ぶ。劣化キャパシタユニットと健全キャパシタユニットとが並列に接続されている状態になっても、並列に接続された各キャパシタユニットの端子電圧が等しくなるから、劣化キャパシタユニットに蓄えることができる電力量は、健全キャパシタユニットに蓄えることができる電力量よりも少なくなる。
【0062】
上記の劣化キャパシタユニットと健全キャパシタユニットとが、並列に接続されている状態で並行してそれぞれ放電して、直流リンクの電圧が放電前の電圧V1から電圧V2まで低下したとすると、劣化キャパシタユニットが失った電荷量は、健全キャパシタユニットが失った電荷量よりも少ない。そのため、劣化キャパシタユニットから流れる電流は、健全キャパシタユニットから流れる電流よりも少なくなる。実施形態の第1の判断基準は、この傾向に基づいて規定されている。
【0063】
判定部467が用いる第1の判定基準は、上記の特定周波数帯の電流成分の大きさとキャパシタユニットの劣化状況との関係に基づいて規定され、記憶部461の判定基準データテーブルに格納されている。例えば、判定部467は、抽出された特定周波数帯の電流成分の大きさを、判定基準データテーブルに格納された第1の判定基準(判定基準情報)に基づいて判定して、判定の結果に基づいてキャパシタユニット31の状態を診断する場合について説明する。
【0064】
例えば、劣化していない初期状態のキャパシタユニット31の容量を100%としたときに、キャリア周波数fの2倍の周波数帯域(周波数2f帯域という。)の電流成分がキャパシタユニット31に流れていて、その電流成分の大きさを100%とする。さらに、劣化によって容量が低下したときのその容量の下限許容値を閾値電流ITHと規定する。ここでは、閾値電流ITHの具体的な値を40%と規定する。キャパシタユニット31の劣化が進行して、周波数2f帯域の電流成分が50%であると仮定すると、劣化が進行しているものの周波数2f帯域の電流成分の下限許容値の40%を満たしているから、キャパシタユニット31の交換をすぐに実施する必要がないと診断してもよい。図4に示す例であれば、周波数2f帯域の電流成分が50%であるときのキャパシタユニット31の容量は、約50%であるから、上記の診断は妥当である。
【0065】
さらに、キャパシタユニット31の劣化が進行して、周波数2f帯域の電流成分が30%になっていると仮定すると、周波数2f帯域の電流成分の限界許容値の40%を満たさない状態まで劣化が進行しているため、キャパシタユニット31の交換をすぐに実施することが必要と診断してもよい。図4に示す例であれば、周波数2f帯域の電流成分が30%であるときのキャパシタユニット31の容量は、約30%であるから、上記の診断は妥当である。
【0066】
これにより、判定部467は、特定周波数帯の電流成分の大きさとキャパシタユニット31の劣化状況との関係に基づいて規定された第1の判定基準として閾値電流ITHを利用することで、キャパシタユニット31の状況を判定することができる。
【0067】
次に、キャパシタ30の第1の診断処理における解析対象の周波数帯の定め方について説明する。本実施形態では、力行状態にある逆変換装置50から電動機3に供給される電力量が、PWM制御のキャリア周波数fに同期して変化することに着目する。例えば、フルブリッジ型の単相インバータを、所望の変調率でPWM制御する場合には、PWM制御に用いられるキャリア周波数fの2倍の周波数(周波数2fという。)を中心周波数とする所定の周波数範囲に、PWM制御の被変調信号に基づいたサブバンド成分が生じる。そのため、解析対象の周波数帯に上記のサブバンド成分が含まれるように、周波数2fを中心周波数とする所定の周波数範囲を、解析対象の周波数帯として決定するとよい。この周波数範囲に含まれる信号成分のことを、単に周波数2f成分と呼ぶ。周波数2f成分は、キャリア周波数fの2倍の周波数成分に相当する。
【0068】
キャパシタ診断装置40は、フルブリッジ型の単相インバータの逆変換装置50に適用されるキャパシタ30の状態を診断することができる。
【0069】
次に、図5を参照して、キャパシタユニットの状態の診断手順について説明する。図5は、第1の実施形態の各キャパシタユニットの状態を診断する処理のフローチャートである。
【0070】
なお、上記フローチャートには示されないものの、図5に示す処理と並列に、電圧検出器44が直流リンクの電圧を表す検出値を検出して取得部404が検出値を取得し記憶部461に記憶させる電圧取得処理が行われるものとする。
【0071】
電力変換システム2は、システム稼働中常時、又は特定のイベントが発生した場合に、キャパシタユニットの状態を診断するための処理(診断処理という。)を実行する。システム稼働中常時とは、継続的に診断処理を行うものであり、例えば、順に実施される第1と第2のFFT処理の対象期間が連続する場合、順に実施される第1と第2のFFT処理の対象期間が重複する場合、順に実施される第1と第2のFFT処理の切替に係る時間を除いて対象期間が連続する場合、などが含まれる。特定のイベントが発生した場合には、所定時間間隔ごとのタイミング、特定の条件が満たされたときなどが含まれる。特定の条件が満たされた場合とは、例えば、制御部60から診断要求を受信したときであってよい。その際に、制御部60は、逆変換装置50が力行状態にあるときに、上記の診断要求を通知してもよい。
【0072】
診断処理について以下説明する。まず、取得部404は、記憶部461に記憶された電流検出値のデータの中から、逆変換装置50が力行状態にあるときの所定の数の電流検出値のデータを取得し高速フーリエ変換部465に出力する(ステップS100)。次に、高速フーリエ変換部465は、取得部404から受け取った所定の数の電流検出値のデータにFFT処理を行い、周波数スペクトラムFSiを生成し、生成した周波数スペクトラムFSiを記憶部461に記憶させる(ステップS110)。次に、抽出部466は、記憶部461に記憶させた周波数スペクトラムFSiから、特定の周波数成分、例えば、周波数2fの成分を抽出し、抽出した成分を抽出周波数成分Fext1として記憶部461に記憶させる(ステップS120)。
【0073】
次に、判定部467は、記憶部461に記憶させた抽出周波数成分Fext1の電流IFextが、予め定められた閾値電流ITHよりも大きいか否か判定する(ステップS130)。電流IFextが閾値電流ITHよりも大きい場合は、判定部467は、当該キャパシタユニットの劣化は許容範囲にあると判定し、判定結果を抽出周波数成分Fext1の電流IFextに対応付けて記憶部461に格納する(ステップS140)。
【0074】
電流IFextが閾値電流ITH以下である場合は、判定部467は、当該キャパシタユニットの劣化は許容範囲から逸脱していると判定し、判定結果を抽出周波数成分Fext1の電流IFextに対応付けて記憶部461に格納する(ステップS150)。
【0075】
次に、ステップS140又はステップS150の処理を終えると、表示処理部468は、キャパシタユニットごとの判定結果を、表示器45に表示させて(ステップS160)、一連の処理を終了させる。
【0076】
以上の処理により、キャパシタ診断装置40はキャパシタユニットごとの状態を判定することができる。
【0077】
第1の実施形態によれば、キャパシタ診断装置40は、直流リンクに対して互いに並列に接続されるキャパシタユニット31(第1キャパシタユニット)と、キャパシタユニット32(第2キャパシタユニット)とによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する逆変換装置50について診断する。キャパシタ診断装置40は、電流センサユニット421と、高速フーリエ変換部465(第1周波数スペクトル解析部)と、抽出部466と、判定部467とを備える。電流センサユニット421は、キャパシタユニット31に流れる電流を検出する。高速フーリエ変換部465は、逆変換装置50の力行運転中に検出された電流センサユニット421の検出結果に基づいた周波数スペクトルFSi(第1周波数スペクトル)を生成する。抽出部466は、逆変換装置50の構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の電流成分を、周波数スペクトルFSiに基づいて抽出する。判定部467は、少なくとも抽出された特定周波数帯の電流成分の大きさに基づいて、キャパシタユニット31の状態を診断することにより、キャパシタユニット31の劣化を容易に検出することができる。なお、キャパシタユニット31、32、33は、キャパシタの一例である。電流センサユニット420は、センサの一例である。電流センサユニット420によって検出される電流値は、物理量の一例である。
【0078】
キャパシタユニット32とキャパシタユニット33についても同様である。例えば、キャパシタユニット32の場合には、電流センサユニット422は、キャパシタユニット32に流れる電流を検出する。高速フーリエ変換部465は、逆変換装置50の力行運転中に検出された電流センサユニット422の検出結果に基づいた周波数スペクトルFSi2(第2周波数スペクトル)を生成する。抽出部466は、上記と同様に特定周波数帯の電流成分を、周波数スペクトルFSi2に基づいて抽出する。判定部467は、少なくとも抽出された特定周波数帯の電流成分の大きさに基づいて、キャパシタユニット32の状態を診断するとよい。
【0079】
第1の実施形態によれば、電力変換システム2は、少なくともキャパシタ30、キャパシタ診断装置40、逆変換装置50、及び制御部60を備える。逆変換装置50は、スイッチング素子50Sを備え、スイッチング素子50Sをスイッチングさせる力行運転によって、キャパシタユニット31、32、33等を含むキャパシタ30によって平滑化された直流電力を交流電力に変換する。その際に、キャパシタ診断装置40は、逆変換装置50の力行運転中に検出された電流センサユニット421の検出結果に基づいて生成した第1周波数スペクトルを、キャパシタユニット31、32、33等の劣化の診断に用いる。これにより電力変換システム2は、キャパシタユニット31、32、33等の劣化を容易に検出することができる。
【0080】
第1の実施形態によれば、逆変換装置50のスイッチング素子50Sは、固定のキャリア周波数のキャリア信号を用いたPWM制御によって制御される。抽出部466は、生成された第1周波数スペクトルに基づいて、キャリア周波数の整数倍の周波数を基準に規定される周波数帯の電流成分を、特定周波数帯の電流成分として抽出してもよい。これによれば、キャリア周波数に基づいて規定される周波数帯の電流成分を、特定周波数帯の電流成分として抽出することができる。例えば、上記の周波数帯を規定するキャリア周波数に対する倍率は、逆変換装置50の構成(仕様)に基づいて規定する。上記の倍率は、逆変換装置50が単相フルブリッジインバータであれば2倍に規定され、3相フルブリッジインバータであれば6倍に規定されるとよい。なお、上記のように逆変換装置50がフルブリッジインバータの場合、上記の倍率は、逆変換装置50の相数によらずに偶数になる。
【0081】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の電力変換システム2Aについて説明する。
第1の実施形態の電力変換システム2は、各キャパシタユニットに流れる電流の特定周波数成分の大きさに基づいて、個々のキャパシタユニットの状態を診断する。これに代わり、電力変換システム2Aは、複数のキャパシタユニットを含むキャパシタ30の状態を診断する。以下これについて説明する。
【0082】
図6は、第2の実施形態の電力変換システム2Aの構成図である。
図6に示された電力変換システム2Aは、前述の電力変換システム2におけるキャパシタ診断装置40に代えてキャパシタ診断装置40Aを備える。
【0083】
図7は、第2の実施形態のキャパシタ診断装置40Aの構成図である。
図7に示されたキャパシタ診断装置40Aは、キャパシタ診断装置40の電流検出器42を備えず、かつ解析処理ユニット46に代えて解析処理ユニット46Aを備える。
解析処理ユニット46Aは、電流値取得部462を備えず、解析処理ユニット46の高速フーリエ変換部465、抽出部466、判定部467に代えて、高速フーリエ変換部465A、抽出部466A、判定部467Aを備える。解析処理ユニット46Aは、電流値取得部462から受け取った所定の数の電流検出値に対するFFT処理を行う代わりに、電圧値取得部464から受け取った所定の数の電圧検出値に対するFFT処理を行う。以下、これについて説明する。
【0084】
高速フーリエ変換部465A(第3周波数スペクトル解析部)は、電圧値取得部464から受け取った所定の数の電圧検出値にFFT処理を行うことにより周波数スペクトラムFSvを生成し、生成した周波数スペクトラムFSvを記憶部461に記憶させる。これの他、前述の高速フーリエ変換部465に関する説明中の電流検出値を、電圧検出値に読み替える。
【0085】
抽出部466Aは、高速フーリエ変換部465が生成して記憶部461に記憶させた周波数スペクトラムFSvから、逆変換装置50の構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の電圧成分を抽出し、抽出した成分を抽出周波数成分Fext2として記憶部461の抽出周波数成分データに追加する。
【0086】
判定部467Aは、抽出部466が抽出し記憶部461に記憶させた抽出周波数成分Fext2の大きさを、予め規定された第2の判定基準に基づいて判定する。
【0087】
次に、図8を参照して、キャパシタ30の第2の判定基準について説明する。図8は、第2の実施形態のキャパシタ30の第2の判定基準を説明するための図である。図8に示すグラフは、キャパシタ30の容量(横軸)に対する直流リンクの特定の周波数成分の電圧(縦軸)の関係を示す。
【0088】
図8に示すグラフには、キャパシタ30の容量が約10%から100%までの範囲で、右肩下がりの直線GV1が描かれている。この直線GV1は、キャパシタ30の容量が100%よりも少ないときに検出され得る直流リンクの電圧成分(リプル電圧成分)の大きさを示している。このグラフに示されたGV1を用いて、キャパシタ30の第2の判定基準を、下記のように規定する。
【0089】
・キャパシタ30の劣化が進行していない初期状態時の電圧検出値に基づいて、特定周波数成分の大きさ(最小値)を規定する。例えば、その大きさを100%で示す。
【0090】
・上記の判定基準の値は、キャパシタ30の劣化状態に対応させて、上記の判定基準の基準値(100%)よりも大きな値に決定される。例えば、キャパシタ30の劣化が進行するほど、キャパシタ30の容量がより少なくなり、これにつれて電圧検出器44によって検出される電圧検出値が大きくなる。第2の判定基準は、これを識別できるように規定されたものであるとよい。
【0091】
このような事象が生じる要因として下記の要因が挙げられる。例えば、並列に接続されているキャパシタ30の中に劣化キャパシタユニットが発生すると、並列に接続されたキャパシタユニットの容量の総和が少なくなるから、平滑化しきれない成分がリプル電圧として生じることによる。
【0092】
判定部467Aが用いる第2の判定基準は、上記の特定周波数帯の電圧成分の大きさとキャパシタ30の劣化状況との関係に基づいて規定され、記憶部461の判定基準データテーブルに格納されている。判定部467Aは、抽出された特定周波数帯の電流成分の大きさを、判定基準データテーブルに格納された第2の判定基準に基づいて判定して、判定の結果に基づいてキャパシタ30の状態を診断する。
【0093】
例えば、劣化していない初期状態のキャパシタ30の容量を100%としたときに、周波数2f帯域の電流成分がキャパシタ30に流れていて、その場合の直流リンクの電圧成分(リプル電圧成分)の大きさを100%とする。さらに、劣化によって容量が低下したときのその容量の上限許容値を閾値電圧VTHと規定する。ここでは、閾値電圧VTHの具体的な値を160%と規定する。キャパシタ30の劣化が進行して、周波数2f帯域の電圧成分が150%であれば、劣化が進行しているものの上限許容値の160%を超えるものではないから、キャパシタ30の交換をすぐに実施する必要がないと診断してもよい。図8に示す例であれば、周波数2f帯域の電流成分が150%であるときのキャパシタ30の容量は、約50%であるから、上記の診断は妥当である。
【0094】
さらに、周波数2f帯域の電流成分が170%であれば、限界許容値の160%を超える状態まで劣化が進行しているため、キャパシタ30の交換をすぐに実施することが必要と診断してもよい。図8に示す例であれば、周波数2f帯域の電流成分が170%であるときのキャパシタ30の容量は、約30%であるから、上記の診断は妥当である。
【0095】
上記のように、第2の判断基準は、キャパシタ30における各キャパシタユニットの容量の総和を判定の対象にするものであり、第2の判断基準を用いた判定の判定結果だけで劣化キャパシタユニットを特定することはできないが、並列接続されたキャパシタユニットを纏めて診断することにより、劣化キャパシタユニットが発生している可能性があるキャパシタ30を特定することができる。上記の方法であれば、キャパシタユニットを個別に診断する方法よりも容易に劣化キャパシタユニットが発生している可能性があるキャパシタ30を特定することができる。
【0096】
特に、キャパシタ30単位で新たなキャパシタ30に交換する保守方法をとる場合には、本実施形態による判定の単位と一致するため、本実施形態の診断方法は、解析処理の負荷軽減に有効である。
【0097】
これにより、判定部467Aは、特定周波数帯の電流成分の大きさとキャパシタ30の劣化状況との関係に基づいて規定された第2の判定基準を利用することができ、さらには、劣化キャパシタユニットの有無を上記の第2の判定基準を利用して診断することができる。
【0098】
次に、図9を参照して、キャパシタ30の状態の診断手順について説明する。図9は、第2の実施形態のキャパシタ30の状態を診断する処理のフローチャートである。
【0099】
なお、上記フローチャートには示されないものの、図9に示す処理と並列に、電圧検出器44が直流リンクの電圧を表す検出値を検出して電圧値取得部464が検出値を取得し記憶部461に記憶させる電圧取得処理が行われるものとする。
【0100】
電力変換システム2Aは、システム稼働中常時、又は特定のイベントが発生した場合に、キャパシタ30の状態を診断するための処理(診断処理という。)を実行する。システム稼働中常時とは、継続的に診断処理を行うものであり、例えば、順に実施される第1と第2のFFT処理の対象期間が連続する場合、順に実施される第1と第2のFFT処理の対象期間が重複する場合、順に実施される第1と第2のFFT処理の切替に係る時間を除いて対象期間が連続する場合、などが含まれる。特定のイベントが発生した場合には、所定時間間隔ごとのタイミング、特定の条件が満たされたときなどが含まれる。特定の条件が満たされた場合とは、例えば、制御部60から診断要求を受信したときであってよい。その際に、制御部60は、逆変換装置50が力行状態にあるときに、上記の診断要求を通知してもよい。
【0101】
診断処理について以下説明する。まず、電圧値取得部464は、記憶部461に記憶された電圧検出値のデータの中から、逆変換装置50が力行状態にあるときの所定の数の電圧検出値のデータを取得し高速フーリエ変換部465Aに出力する(ステップS200)。次に、高速フーリエ変換部465Aは、電圧値取得部464から受け取った所定の数の電圧検出値のデータにFFT処理を行い、周波数スペクトラムFSvを生成し、生成した周波数スペクトラムFSvを記憶部461に記憶させる(ステップS210)。次に、抽出部466Aは、記憶部461に記憶させた周波数スペクトラムFSvから、例えば、周波数2fの成分を抽出し、抽出した成分を抽出周波数成分Fext2として記憶部461に記憶させる(ステップS220)。
【0102】
次に、判定部467Aは、記憶部461に記憶させた抽出周波数成分Fext2の電圧VFextが、予め定められた閾値電圧VTHより小さいか否か判定する(ステップS230)。電圧VFextが閾値電圧VTHより小さい場合は、判定部467Aは、当該キャパシタ30の劣化は許容範囲にあると判定し、判定結果を抽出周波数成分Fext2の電圧VFextに対応付けて記憶部461に格納する(ステップS240)。
【0103】
電圧VFextが閾値電圧VTH以上である場合は、判定部467Aは、当該キャパシタ30の劣化は許容範囲から逸脱していると判定し、判定結果を抽出周波数成分Fext2の電圧VFextに対応付けて記憶部461に格納する(ステップS250)。
【0104】
次に、ステップS240又はステップS250の処理を終えると、表示処理部468は、キャパシタ30の判定結果を、表示器45に表示させて(ステップS260)、一連の処理を終了させる。
【0105】
以上の処理により、キャパシタ診断装置40Aはキャパシタ30の状態を判定することができる。
【0106】
第2の実施形態によれば、直流リンクに対して並列に接続されるキャパシタユニット31と、キャパシタユニット32とによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する逆変換装置50について診断する。キャパシタ診断装置40Aは、電圧検出器44と、高速フーリエ変換部465Aと、抽出部466Aと、判定部467Aとを備える。電圧検出器44は、直流リンクの電圧を検出する。高速フーリエ変換部465Aは、逆変換装置50の力行運転中に検出された電圧検出器44の検出結果に基づいた周波数スペクトルFSv(第3周波数スペクトル)を生成する。抽出部466Aは、逆変換装置50の構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の電圧成分を、周波数スペクトルFSvに基づいて抽出する。判定部467Aは、少なくとも抽出された特定周波数帯の電流成分の大きさに基づいて、キャパシタ30の状態を診断することにより、キャパシタ30の劣化を容易に検出することができる。電圧検出器44は、センサの一例である。電圧検出器44によって検出される電圧値は、物理量の一例である。
【0107】
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態の変形例について説明する。
第2の実施形態において、図8に示す1つの判定基準を有する第2の判定基準を用いて判定する事例について説明した。本変形例では、図10を参照して、複数の判定基準を含む第3の判定基準を用いて判定する事例について説明する。図10は、第2の実施形態の変形例におけるキャパシタ30の第3の判定基準を説明するための図である。図10に示すグラフには、図8に示したグラフと同様に各キャパシタユニットの容量が約10%から100%までの範囲で、右肩下がりの直線GV1と直線GV2とが描かれている。直線GV2は、直線GV1に比べて傾きが緩やかである。
【0108】
電動機3の消費電力が変動すると、電動機3に流れる電流が変化する。また、これに伴い、直流リンクのリプル電圧の大きさも変化する。そこで、本変形例における第3の判定基準は、負荷電流検出器70によって検出された電動機3に流れる交流電流(交流負荷電流)の検出値の大きさに対応付けられた交流負荷電流依存の判定基準にする。その場合、電動機3に流れる交流電流の検出値が大きいほど、閾値電圧VTHを大きくするとよい。例えば、電動機3に流れる電流が比較的多いときに直線GV1を利用して、電動機3に流れる電流が比較的少ないときに直線GV2を利用する。
例えば、判定部467Aは、電動機3に流れる電流の大きさに基づいて、選択可能な特性値の中から適した特性値を選択して、これを判定基準に定める。例えば、第3の判定基準は、閾値電圧VTH1と、閾値電圧VTH2とを閾値として用いる。なお、閾値電圧VTH1は、閾値電圧VTHと同じである。
【0109】
上記のように規定された閾値電圧VTH1と閾値電圧VTH2とを利用することで、判定部467Aは、少なくとも抽出した特定周波数帯の成分の大きさと、電動機3に流れる交流電流の検出値とに基づいて、キャパシタ30の状態を診断することができる。
【0110】
これにより、電動機3の消費電力の変動に伴って直流リンクのリプル電圧の大きさが変動する場合であっても、電動機3の消費電力の変動に影響されずに、キャパシタ30の状態を診断できる。
【0111】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の電力変換システム2Bについて説明する。
第3の実施形態の電力変換システム2Bは、劣化状態にあるキャパシタ30を特定して、その後、キャパシタ30内の各キャパシタユニットの状態を診断する。以下、これについて説明する。
【0112】
図11は、第3の実施形態の電力変換システム2Bの構成図である。
図11に示された電力変換システム2Bは、前述の電力変換システム2におけるキャパシタ診断装置40に代えてキャパシタ診断装置40Bを備える。
【0113】
図12は、第3の実施形態のキャパシタ診断装置40Bの構成図である。
図12に示されたキャパシタ診断装置40Bは、キャパシタ診断装置40の解析処理ユニット46に代えて解析処理ユニット46Bを備える。
【0114】
解析処理ユニット46Bは、解析処理ユニット46の高速フーリエ変換部465、抽出部466、判定部467に代えて、高速フーリエ変換部465B、抽出部466B、判定部467Bを備える。
【0115】
高速フーリエ変換部465Bは、前述の高速フーリエ変換部465と高速フーリエ変換部465Aの処理を実施する。前述した高速フーリエ変換部465と高速フーリエ変換部465Aの説明中の高速フーリエ変換部465と高速フーリエ変換部465Aの表記を高速フーリエ変換部465Bと読み替える。
【0116】
抽出部466Bは、前述の抽出部466と抽出部466Aの処理を実施する。前述した抽出部466と抽出部466Aの説明中の抽出部466と抽出部466Aの表記を抽出部466Bと読み替える。
【0117】
判定部467Bは、前述の判定部467と判定部467Aの処理を実施する。前述した判定部467と判定部467Aの説明中の判定部467と判定部467Aの表記を判定部467Bと読み替える。
【0118】
解析処理ユニット46Bは、上記の構成を有することにより、電圧値取得部464から受け取った所定の数の電圧検出値に対するFFT処理を行い、所定の条件を満たす場合に、電流値取得部462から受け取った所定の数の電流検出値に対するFFT処理を行う。
【0119】
図13は、第3の実施形態のキャパシタの状態を診断する処理のフローチャートである。
【0120】
すでに、第1の実施形態において、各キャパシタユニットに流れる電流の特定周波数成分の大きさに基づいて、各キャパシタユニットの状態を診断する電力変換システム2について説明した。また、第2の実施形態において、複数のキャパシタユニットを含むキャパシタ30の状態を診断する電力変換システム2Aについて説明した。本実施形態では、第1の実施形態と第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0121】
まず、キャパシタ診断装置40Bの解析処理ユニット46Bは、ステップS200からS220までの処理を実施する。
【0122】
次に、判定部467Bは、記憶部461に記憶させた抽出周波数成分Fext2の電圧VFextが、予め定められた閾値電圧VTHよりも小さいか否か判定する(ステップS230)。電圧VFextが閾値電圧VTHよりも小さい場合は、判定部467Bは、当該キャパシタ30の劣化は許容範囲にあると判定し、判定結果を抽出周波数成分Fext2の電圧VFextに対応付けて記憶部461に格納する(ステップS240)。
一方、電圧VFextが閾値電圧VTH以上である場合は、判定部467Bは、当該キャパシタ30の劣化は許容範囲から逸脱していると判定し、判定結果を抽出周波数成分Fext2の電圧VFextに対応付けて記憶部461に格納する(ステップS250)。
【0123】
次に、解析処理ユニット46Bは、当該キャパシタ30内のキャパシタユニットごとの判定処理を実施する(ステップS270)。このキャパシタユニットごとの判定処理は、当該キャパシタ30内のキャパシタユニットごとに、前述の図5のステップS100からS150までの処理を実施するものである。この判定処理により、当該キャパシタ30内の劣化キャパシタユニットと健全キャパシタユニットが識別される。
【0124】
次に、ステップS240又はステップS270の処理を終えると、表示処理部468は、キャパシタ30ごとの判定結果と、キャパシタユニットごとの判定結果とを、表示器45に表示させて(ステップS260A)、一連の処理を終了させる。
【0125】
上記の実施形態によれば、解析処理ユニット46Bは、逆変換装置50の力行運転中に検出された電圧検出器44の検出結果に基づいた周波数スペクトルFSv(第3周波数スペクトル)を生成して、キャパシタ30の劣化の状態を判定する。さらに、周波数スペクトルFSvに基づいた判定の結果においてキャパシタ30の劣化が検出された場合には、逆変換装置50の力行運転中に検出された電流検出器42の検出結果に基づいた周波数スペクトルFSi(第1周波数スペクトルと第2周波数スペクトル)を生成し、各キャパシタユニットの状態を判定する。これにより、キャパシタ30レベルの判定と、各キャパシタユニットレベルの判定を分けて実施することができることから、判定に係る処理を簡素化することが可能になる。
【0126】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、キャパシタ診断装置は、センサと、周波数スペクトル解析部と、周波数成分抽出部と、診断処理部とを備える。センサは、直流リンクに対して並列に接続されるキャパシタによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する電力変換ユニットにおける前記キャパシタに流れる電流を検出する。周波数スペクトル解析部は、電力変換ユニットの力行運転中に検出されたセンサの検出結果に基づいた周波数スペクトルを生成する。周波数成分抽出部は、前記電力変換ユニットの構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の成分を、前記第1周波数スペクトルに基づいて抽出する。診断処理部は、少なくとも前記抽出された特定周波数帯の成分の大きさに基づいて、前記キャパシタの状態を診断する。これにより、キャパシタ診断装置は、キャパシタの劣化を容易に検出することができる。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0128】
上記に説明した実施形態においては、逆変換装置50の交流出力の基本周波数は、所定の値に固定されていてもよく、電動機3を加減速するなどのために逆変換装置50の交流出力の基本周波数がリアルタイムに変更されてもよい。この場合、キャパシタ診断装置40は、逆変換装置50の交流出力の基本周波数が、キャパシタ診断装置40が検出する周波数帯に干渉しないときに、所定の診断処理を実施するとよい。
【符号の説明】
【0129】
1…交流電源、2、2A、2B…電力変換システム、3…電動機、20…順変換装置、30…キャパシタ、31、32、33…キャパシタユニット、40、40A、40B…キャパシタ診断装置、50…逆変換装置、60…制御部、70…負荷電流検出器、42…電流検出器、420、423…電流センサユニット、421…電流センサユニット(第1電流センサ)、422…電流センサユニット(第2電流センサ)、44…電圧検出器、46、46A、46B…解析処理ユニット、465、465A、465B…高速フーリエ変換部、466、466A,466B…抽出部、467、467A,467B…判定部
【要約】
実施形態のキャパシタ診断装置は、センサと、周波数スペクトル解析部と、周波数成分抽出部と、診断処理部とを備える。センサは、直流リンクに対して並列に接続されるキャパシタによって平滑化された直流電力を力行運転によって交流電力に変換する電力変換ユニットにおける前記キャパシタに流れる電流によって変化する物理量を検出する。周波数スペクトル解析部は、前記電力変換ユニットの前記力行運転中に検出された前記センサの検出結果に基づいた周波数スペクトルを生成する。周波数成分抽出部は、前記電力変換ユニットの構成に依存する周波数に係る特定周波数帯の成分を、前記周波数スペクトルに基づいて抽出する。診断処理部は、少なくとも前記抽出された特定周波数帯の成分の大きさに基づいて、前記キャパシタの状態を診断する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13