【0020】
本願発明の自律神経調節剤は、交感神経系を活性化させることから、交感神経活性化、特に寝起きの倦怠感の予防及び又は改善、めまい、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状の予防及び又は改善、鬱症状の予防及び又は改善、時差ぼけの予防及び又は改善等を目的として、動物あるいはヒトに与えることができる。
また、自律神経の調節を通じて、生活リズムを整えることが可能となり、体温上昇作用、低体温改善作用又はダイエット作用をともなう場合もある。
なお、本願発明とは逆に副交感神経を活性化する物質としては、例えば塩酸ピロカルピンが、副交感神経興奮薬として老眼の治療に有効であること(特表2010−513454号公報)、フェニル乳酸が、高血圧の治療又は改善に有効であること(WO2008/120713)、γ−アミノ酪酸やグリシンが、睡眠改善に有効であること(WO2007/125883)などが知られており、副交感神経を活性化することは、交感神経の活性化とは異なる作用を示すことが知られている。
【実施例】
【0030】
次に、本願発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本願発明はこれに限定される
ものではない。
【0031】
(試験物質)
実施例として化合物1である2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オンを、また比較例として2−(3,4−ジメトキシフェニル)−3,5,7−トリメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(以下、「化合物2」とも言う)を、それぞれ市販されている試薬を用いて、交感神経活動評価試験を行った。化合物2は、化合物1とメトキシ基(−OCH
3)の数が異なる化合物である。
【0032】
(交感神経活動評価試験)
12時間毎の明暗周期(8時〜20時まで点灯)下に24℃の恒温動物室にて1週間以上飼育した体重約300gのWistar系雄ラット(約9週齢)を使用した。実験当日は3時間絶食させた後ウレタン麻酔し、十二指腸投与用のカニューレを挿入し、その後、肩甲間褐色脂肪組織交感神経の遠心枝を銀電極で吊り上げ、神経の電気活動を測定した。これらの測定値が落ち着いた時期に、実施例1として化合物1を30mg/mlの濃度で含む水懸濁液1mlを十二指腸に投与して自律神経活動の変化を電気生理学的に測定した。対照実験としては、コントロールとして水1mlを、あるいは比較例1として化合物2を30mg/mlの濃度で含む水懸濁液1mlをそれぞれ十二指腸に投与して、実施例1と同様に自律神経活動の変化を電気生理学的に測定した。尚、各試験区共に、手術開始から測定終了までチューブを気管に挿入して気道を確保し、保温装置にて体温(ラット直腸温)を35.0±0.5℃に保つようにした。各試験区の自律神経活動のデータは10分間毎の5秒あたりの発火頻度(pulse/5s)の平均値にて解析し、刺激開始前の値(0分値)を0としてその変化値を表した。
【0033】
図1に、60%エタノールで100倍、1000倍、10000倍に希釈した液によるマウスの肩甲間褐色脂肪組織交感神経活動(BAT−SNA)の経時変化を示す。
図1は実施例1、コントロール及び比較例1の褐色脂肪組織交感神経活動(brown adipose tissue sympathetic nerve activity、BAT−SNA)のデータを十二指腸投与前(0分)の値を0としてその変化値を表したものである。
【0034】
図1において、実施例1では、BAT−SNAは徐々に上昇し、投与60分後にBAT−SNAの変化値が最高値+15.37となった。これに対して、コントロールでは測定期間中BAT−SNAが殆ど変化せず、比較例1では、投与後の測定期間中すべてでBAT−SNAの変化値がマイナスとなり、投与後60分後にBAT−SNAの変化値は最低値の−15.74となった。
【0035】
以上の実験から、化合物1を30mg/mlの濃度で含む水懸濁液1mlを十二指腸に投与すると、BAT−SNAを上昇する作用があることが明らかとなった。一方で、化合物2を30mg/mlの濃度で含む水懸濁液1mlを十二指腸に投与すると、交感神経活動を抑制する作用があることが明らかとなった。以上より、化合物1は自律神経を調節することが可能であり、交感神経活性化作用により、特に寝起きの倦怠感を予防及び又は改善し、めまい、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を予防及び又は改善し、鬱症状を予防及び又は改善し、時差ぼけを予防及び又は改善する作用を有することが示唆された。
【0036】
以下、本願発明の組成物の具体的態様に係る配合例を示すが、本願発明はこれら配合例に限定されるものではなく、本願発明の課題を解決し得る限り、本願発明は種々の態様をとることができる。
【0037】
(配合例1:化粧水)
全体を100質量部として、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン 0.01質量部、グリセリン 10質量部、ジグリセリン 3質量部、1,3−ブチレングリコール 12質量部、ペンチレングリコール 3質量部、ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量部、クエン酸 0.01質量部、クエン酸ナトリウム 0.02質量部、キサンタンガム 0.1質量部、メチルパラベン 0.15質量部、カルボマー 0.2質量部、水酸化ナトリウム 0.03質量部及び水 残部を混合して、化粧水の態様で本願発明の組成物を調製した。
【0038】
(配合例2:シャンプー)
全体を100質量部として、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン 0.01質量部、ラウレス硫酸ナトリウム 7.5質量部、コカミドプロピルベタイン 4.2質量部、コカミドDEA 3質量部、1,3−ブチレングリコール 0.1質量部、ポリクオタニウム−10 0.225質量部、クエン酸 0.15質量部、クエン酸ナトリウム 0.05質量部、フェノキシエタノール 0.9質量部及び水 残部を混合して、シャンプーの態様で本願発明の組成物を調製した。
【0039】
(配合例3:石鹸)
全体を100質量部として、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン 0.5質量部、エラスチン 0.1質量部、グリセリン 2質量部、オリーブ油 1質量部、EDTA−4ナトリウム 0.1質量部、エチドロン酸4ナトリウム 0.2質量部及び石ケン素地 残部を混合及び固化することにより、石鹸の態様で本願発明の組成物を調製した。
【0040】
(配合例4:乳液)
全体を100質量部として、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン 0.1質量部、アラニン 0.1質量部、アルギニン 0.1質量部、ショ糖脂肪酸エステル 3質量部、グリセリン 12質量部、スクワラン 6質量部、ジメチルシリコーンオイル 24質量部、ポリプロピレングリコール 1質量部、増粘剤 0.06質量部、フェノキシエタノール 0.2質量部、エタノール 5質量部、水酸化ナトリウム 0.01質量部及び精製水 残部を混合して、乳液の態様で本願発明の組成物を調製した。
【0041】
(配合例5:化粧クリーム)
全体を100質量部として、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン 0.005質量部、スクワラン 15.0質量部、ミリスチン酸オクチルドデシル 4.0質量部、水素添加大豆リン脂質 0.2質量部、ブチルアルコール 2.4質量部、硬化油 1.5質量部、ステアリン酸 1.5質量部、親油型モノステアリン酸グリセリン 1.5質量部、モノステアリン酸ポリグリセリル 0.5質量部、ベヘニルアルコール 0.8質量部、モノミリスチン酸ポリグリセリル 0.7質量部、サラシミツロウ 0.3質量部、d−δ−トコフェロール 0.1質量部、メチルパラベン 0.3質量部、C10〜30アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.2質量部、カルボキシビニルポリマー 0.1質量部、1,3−ブタンジオール 18.0質量部、水酸化ナトリウム 0.1質量部及び精製水 残部を混合して、化粧クリームの態様で本願発明の組成物を調製した。
【0042】
(配合例6:パック剤)
全体を100質量部として、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン 0.1質量部、没食子酸 0.01質量部、ポリビニルアルコール 20.0質量部、グリセリン 5.0質量部、エタノール 20.0質量部、カオリン 6.0質量部、防腐剤 0.2質量部、香料 0.1質量部及び精製水 残部を混合して、パック剤の態様で本願発明の組成物を調製した。
【0043】
(配合例7:錠剤1)
全体を100質量部として、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン 0.1質量部、ショウガ抽出物 8質量部、カフェイン5質量部、結晶性セルロース 20質量部、乳糖 50質量部、ステアリン酸マグネシウム 4質量部及びコーンスターチ 残部を混合及び打錠することにより、錠剤の態様で本願発明の組成物を調製した。
【0044】
(配合例8:顆粒剤)
全体を100質量部として、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン 0.5質量部、乳糖 10質量部、ステアリン酸カルシウム 1質量部及び結晶性セルロース 残部を混合及び顆粒化することにより、顆粒剤の態様で本願発明の組成物を調製した。
【0045】
(配合例9:カプセル剤)
全体を100質量部として、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン 5質量部、生姜抽出物 20質量部、エラスチン5質量部、レシチン 8質量部及びオリーブ油 残部を混合して調製したものを内容液として、これをカプセル殻に内包することにより、カプセル剤の態様で本願発明の組成物を調製した。
【0046】
(配合例10:液剤)
全体を100質量部として、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7−ジメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン 0.005質量部、アルギニン 1質量部、アラニン 1質量部、果糖ブドウ糖液糖 10質量部、クエン酸 1質量部、安息香酸ナトリウム 0.02質量部、香料製剤 2質量部、スクラロース 0.05質量部、アセスルファムカリウム 0.03質量部、及び精製水 残部を混合して、液剤の態様で本願発明の組成物を調製した。