特許第6800417号(P6800417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧
特許6800417リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池
<>
  • 特許6800417-リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池 図000003
  • 特許6800417-リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800417
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20201207BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20201207BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20201207BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20201207BHJP
【FI】
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/36 C
   H01M4/48
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-201135(P2016-201135)
(22)【出願日】2016年10月12日
(65)【公開番号】特開2018-63835(P2018-63835A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】592197418
【氏名又は名称】株式会社田中化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】河野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 宜之
(72)【発明者】
【氏名】田渕 光春
(72)【発明者】
【氏名】堂前 京介
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 英香
【審査官】 福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−511129(JP,A)
【文献】 特表2014−502006(JP,A)
【文献】 特開2014−116308(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/025844(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/132963(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/196615(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0253042(US,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1523081(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状岩塩型構造を有し、下記式(1)
LiM1(y−p)MnM2(z−q)Fe(2−δ) (1)
(式(1)において、1.050≦x≦1.320、0.330≦y≦0.630、0.060≦z≦0.500、0<p≦0.630、0.060≦q≦0.500、0≦δ≦0.800、y≧p、z≧qであり、M1はTiおよびZrの少なくとも一方の元素であり、M2はCo、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種の元素である)
で示されるリチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面の少なくとも一部が、MgFおよびKFからなる群から選択される少なくとも一種のフッ化物により被覆されたリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項2】
前記リチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面の少なくとも一部が、さらに、Na、Ca、Al、Sn、Zn、Co、Pb、Ni、Fe、Cr、Bi、MnおよびSmからなる群から選択される少なくとも一種の元素のフッ化物により被覆されている請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項3】
前記フッ化物が被覆された前記リチウム鉄マンガン系複合酸化物に対する、前記フッ化物の割合が0.1質量%以上15.0質量%以下である請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料を含むリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項5】
請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極とを備えるリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記負極が、負極材料としてSiOを含む請求項5に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム鉄マンガン系複合酸化物を正極材料として含む正極と、リチウムイオンを吸蔵可能な化合物を負極材料として含む負極とを備えるリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度の二次電池として期待されている。例えば、特許文献1では、リチウム鉄マンガン系複合酸化物Li1+x(FeMn1−y1−xを正極材料に用いたリチウムイオン二次電池が開示されている。リチウム鉄マンガン系複合化合物は、遷移金属のレドックスに加えて、酸素のレドックスが可能であるため、リチウム鉄マンガン系複合酸化物を用いた二次電池は、高いエネルギー密度を有することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−154256号公報
【特許文献2】国際公開第2015/025844号
【特許文献3】特表2012−505520号公報
【特許文献4】特開2000−173663号公報
【特許文献5】特表2014−531718号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y.−K. Sun et al., Advanced Materials. 24 (2012) 1192
【非特許文献2】G.R. Li, Electrochimica Acta. 78 (2012) 308
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているリチウム鉄マンガン系複合酸化物は、充放電の際に大量のガスが発生する課題がある。これに対し、ガス発生量を低減する方法として、Al等の無機物やAlF等を被覆した正極材料が提案されている(特許文献2〜5、並びに非特許文献1および2)。しかしながら、AlやAlFをリチウム鉄マンガン系複合酸化物に被覆しても、ガス発生量の低減効果が不十分であり、更なる改良が望まれている。一方で、充放電サイクル後も高い容量維持率を示すことも要求されている。
【0006】
本実施形態は、ガス発生量が少なく、充放電サイクル後も高い容量維持率を示すリチウムイオン二次電池を提供可能なリチウムイオン二次電池用正極材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極材料は、層状岩塩型構造を有し、下記式(1)
LiM1(y−p)MnM2(z−q)Fe(2−δ) (1)
(式(1)において、1.050≦x≦1.320、0.330≦y≦0.630、0.060≦z≦0.500、0<p≦0.630、0.060≦q≦0.500、0≦δ≦0.800、y≧p、z≧qであり、M1はTiおよびZrの少なくとも一方の元素であり、M2はCo、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種の元素である)
で示されるリチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面の少なくとも一部が、MgFおよびKFからなる群から選択される少なくとも一種のフッ化物により被覆されたリチウムイオン二次電池用正極材料である。
【0008】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極は、前記リチウムイオン二次電池用正極材料を含む。
【0009】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、前記リチウムイオン二次電池用正極と、負極とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態によれば、ガス発生量が少なく、充放電サイクル後も高い容量維持率を示すリチウムイオン二次電池を提供可能なリチウムイオン二次電池用正極材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るフッ化物により被覆されたリチウム鉄マンガン系複合酸化物の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[リチウムイオン二次電池用正極材料]
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極材料は、層状岩塩型構造を有し、下記式(1)
LiM1(y−p)MnM2(z−q)Fe(2−δ) (1)
(式(1)において、1.050≦x≦1.320、0.330≦y≦0.630、0.060≦z≦0.500、0<p≦0.630、0.060≦q≦0.500、0≦δ≦0.800、y≧p、z≧qであり、M1はTiおよびZrの少なくとも一方の元素であり、M2はCo、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種の元素である)
で示されるリチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面の少なくとも一部が、MgFおよびKFからなる群から選択される少なくとも一種のフッ化物により被覆されたリチウムイオン二次電池用正極材料である。
【0013】
リチウム鉄マンガン系複合酸化物が充放電の際にガスを発生するメカニズムについて、詳細を検討した結果、リチウム鉄マンガン系複合酸化物表面の鉄の近傍で電解液溶媒が分解されるため、ガスが発生することを見出した。ここで、AlF等によりリチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面を被覆すると、未被覆のリチウム鉄マンガン系複合酸化物と比べてガス発生量は低減するが、その効果は小さい。これに対し、MgFおよび/またはKFによりリチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面を被覆すると、AlF等により被覆するよりもガス発生量の低減効果が大きいことを見出した。この理由としては、MgFおよび/またはKFによりリチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面を被覆する方が、AlF等により被覆するよりも、リチウム鉄マンガン系複合酸化物表面の鉄の近傍に、より緻密な保護膜を形成できるためと考えられる。また、MgFおよび/またはKFにより被覆されたリチウム鉄マンガン系複合酸化物をリチウムイオン二次電池用正極材料として用いることにより、充放電サイクル後も高い容量維持率を示し、高エネルギー密度、高出力特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することができる。以下、本実施形態の詳細について述べる。
【0014】
(リチウム鉄マンガン系複合酸化物)
前記式(1)で示されるリチウム鉄マンガン系複合酸化物(以下、複合酸化物とも示す)は、少なくともMnを含む。Mnの組成pは0<p≦0.630である。0<pであることにより、リチウムを余剰に含むことができる。また、p≦0.630であることにより、LiMe1O(Me1はMnを少なくとも含む)とLiMe2O(Me2はFeを少なくとも含む)とが固溶した状態を取ることができる。pは0.100≦p≦0.600であることが好ましく、0.200≦p≦0.550であることがより好ましく、0.300≦p≦0.500であることがさらに好ましい。
【0015】
前記式(1)において、M1はTiおよびZrの少なくとも一種の元素である。M1の組成y−pのyは0.330≦y≦0.630である。0.330≦yであることにより、リチウムを余剰に含むことができる。また、y≦0.630であることにより、LiMe1O(Me1はMnを少なくとも含む)とLiMe2O(Me2はFeを少なくとも含む)とが固溶した状態を取ることができる。yは0.350≦y≦0.600であることが好ましく、0.400≦y≦0.550であることがより好ましく、0.450≦y≦0.500であることがさらに好ましい。なお、前記式(1)はy≧pを満たす。また、M1の組成y−pは0であってもよい。すなわち、前記式(1)で示される複合酸化物はM1を含まなくてもよい。前記式(1)におけるMnおよびM1は、前記LiMe1OのMe1に相当する。
【0016】
前記式(1)で示される複合酸化物は、少なくともFeを含む。Feの組成qは0.060≦q≦0.500である。0.060≦qであることにより、リチウム鉄マンガン系複合酸化物を活性化させることができる。また、q≦0.500であることにより、容量を大きく保つことができる。qは0.070≦q≦0.400であることが好ましく、0.080≦q≦0.300であることがより好ましく、0.100≦q≦0.200であることがさらに好ましい。
【0017】
前記式(1)において、M2はCo、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。M2の組成z−qのzは0.060≦z≦0.500である。0.060≦zであることにより、リチウム鉄マンガン系複合酸化物を活性化させることができる。また、z≦0.500であることにより、リチウムを余剰に含むことができる。zは0.080≦z≦0.450であることが好ましく、0.100≦z≦0.400であることがより好ましく、0.120≦z≦0.300であることがさらに好ましい。なお、前記式(1)はz≧qを満たす。また、M2の組成z−qは0であってもよい。すなわち、前記式(1)で示される複合酸化物はM2を含まなくてもよい。前記式(1)におけるFeおよびM2は、前記LiMe2OのMe2に相当する。
【0018】
前記式(1)において、Liの組成xは、1.050≦x≦1.320である。1.050≦xであることにより、容量を大きくすることができる。また、x≦1.320であることにより、LiMe1O(Me1はMnを少なくとも含む)とLiMe2O(Me2はFeを少なくとも含む)とが固溶した状態を取ることができる。xは1.080≦x≦1.300であることが好ましく、1.120≦x≦1.280であることがより好ましく、1.160≦x≦1.260であることがさらに好ましい。
【0019】
前記式(1)において、酸素原子の組成2−δにおけるδは酸素欠損を示すパラメータであり、0≦δ≦0.800である。0≦δであることにより、容量を大きくすることができる。また、δ≦0.800であることにより、結晶構造を安定化させることができる。δは0.020≦δ≦0.500であることが好ましく、0.040≦δ≦0.300であることがより好ましく、0.060≦δ≦0.200であることがさらに好ましい。酸素欠損パラメータδは、燃焼赤外線吸収法や蛍光X線分光法によって判断することができる。なお、δはMe1とMe2の配合比のみならず該複合酸化物の合成方法によって変動する。
【0020】
なお、前記式(1)における各元素の組成は、Liについては誘導結合プラズマ発光分光分析により、それ以外の元素については誘導結合プラズマ質量分析により測定した値である。また、前記式(1)における各元素の組成は、表面被覆に用いられるフッ化物を含まない。
【0021】
前記式(1)で示される複合酸化物は、層状岩塩型構造を有する。該複合酸化物が層状岩塩型構造を有することにより、安定に充放電を繰り返すことができる。なお、層状岩塩型構造を有するか否かはX線回折分析により判断することができる。また、該複合酸化物の全体が層状岩塩型構造を有している必要はなく、該複合酸化物の少なくとも一部が層状岩塩型構造を有していればよい。
【0022】
(フッ化物)
本実施形態に係るリチウム鉄マンガン系複合酸化物は、その表面の少なくとも一部が、MgFおよびKFからなる群から選択される少なくとも一種のフッ化物により被覆されている。これにより、リチウム鉄マンガン系複合酸化物の粒子表面の鉄の近傍に緻密な保護膜が形成され、ガス発生量が低減される。本実施形態では、図1に示されるようにリチウム鉄マンガン系複合酸化物5の表面の全部がフッ化物6により被覆されていてもよく、リチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面の一部がフッ化物により被覆されていてもよい。リチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面の少なくとも一部がMgFまたはKFで被覆されているか否かは、走査型電子顕微鏡観察(エネルギー分散型X線分析)、透過型電子顕微鏡観察、X線光電子分光分析、オージェ電子分光分析、電子エネルギー損失分光法分析によって判断することができる。
【0023】
前記リチウム鉄マンガン系複合酸化物は、その表面の少なくとも一部が、MgFおよびKFからなる群から選択される少なくとも一種のフッ化物により少なくとも被覆されていればよいが、さらに、Na、Ca、Al、Sn、Zn、Co、Pb、Ni、Fe、Cr、Bi、MnおよびSmからなる群から選択される少なくとも一種の元素のフッ化物により被覆されていることが、容量維持率の観点から好ましい。
【0024】
前記フッ化物が被覆された前記リチウム鉄マンガン系複合酸化物に対する、前記フッ化物の割合(以下、被覆量とも示す)は、0.1質量%以上、15.0質量%以下であることが好ましい。該被覆量が0.1質量%以上であることにより、充放電サイクルにおける酸素の外部への脱離を十分に抑制することができる。また、該被覆量が15.0質量%以下であることにより、Liの吸蔵、放出が妨げられない。該被覆量は0.2質量%以上、10.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上、5.0質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以上、3.0質量%以下であることが特に好ましい。なお、該被覆量は、Na、Ca、Al、Sn、Zn、Co、Pb、Ni、Fe、Cr、Bi、MnおよびSmからなる群から選択される少なくとも一種の元素のフッ化物を用いる場合には、該フッ化物も含む被覆量である。この場合、全被覆量に対するMgFおよびKFからなる群から選択される少なくとも一種のフッ化物由来の被覆量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0025】
(リチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法)
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法は、層状岩塩型構造を有し、前記式(1)を満たすリチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面の少なくとも一部が、MgFおよびKFからなる群から選択される少なくとも一種のフッ化物により被覆されていれば特に限定されない。例えば、層状岩塩型構造を有し、前記式(1)を満たすリチウム鉄マンガン系複合酸化物と、MgFおよび/またはKFとを混合した後、熱処理することにより、該リチウム鉄マンガン系複合酸化物の表面の少なくとも一部にMgFおよび/またはKFを被覆させることができる。具体的には、以下に示す方法が挙げられる。
【0026】
フッ化物による被覆前のリチウム鉄マンガン系複合酸化物の製造方法は特に限定されず、少なくともリチウム、マンガンおよび鉄を含む金属原料に対して焼成や水熱処理などの加熱処理を行うことで製造することができる。一方、より電気化学的特性に優れたリチウム鉄マンガン系複合酸化物を得るためには、リチウム以外の構成金属元素をより均一に混合することが好ましい。この観点から、例えば液相から鉄、マンガン等の複合水酸化物を得て、それをリチウム化合物とともに焼成する方法が好ましい。この方法は、リチウム以外の構成金属を含む複合水酸化物を製造する複合水酸化物製造工程と、該複合水酸化物をリチウム共存下で焼成する焼成工程とに大きく分けられる。
【0027】
<複合水酸化物製造工程>
複合水酸化物は、構成金属の水溶性塩をアルカリ水溶液中に滴下することにより析出させ、必要に応じて空気酸化を行い、水酸化物を熟成することによって作製することができる。構成金属の水溶性塩としては、特に限定されず、構成金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩などの無水塩や水和物等が挙げられる。アルカリ源も特に限定されず、水酸化リチウムおよびその水和物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。複合水酸化物は、アルカリ水溶液に対して、構成金属の水溶性塩を数時間程度かけて徐々に滴下することで得られる。構成金属の水溶性塩を滴下する温度は、スピネルフェライトなどの不純物生成を抑制する観点から、60℃以下で行うことが好ましい。また0℃以下で構成金属の水溶性塩の滴下を行う場合には、アルカリ水溶液に不凍液としてエタノール等を加えて溶液の固化を防ぐことが好ましい。滴下後得られる水酸化物に対して、室温で数時間以上空気を吹き込むことにより水酸化物を湿式酸化して熟成することが好ましい。得られた熟成物を水洗、濾過することにより、目的の複合水酸化物が得られる。
【0028】
<焼成工程>
前記複合水酸化物に対して、組成式に従い所定のリチウム化合物を加えて混合した後、所定の雰囲気下で焼成を行う。その後、必要に応じて余剰のリチウム化合物を除去するために水洗処理、濾過、乾燥を行うことにより、目的の組成式を有するリチウム鉄マンガン系複合酸化物が得られる。リチウム化合物は特に限定されず、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム等の無水物または水和物を用いることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。焼成温度はLiの揮発を防ぐ観点から1000℃以下が好ましい。焼成雰囲気としては、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気、窒素雰囲気、酸素雰囲気などを用いることができる。このような工程を経て、目的の組成を有するフッ化物による被覆前のリチウム鉄マンガン系複合酸化物が得られる。
【0029】
<被覆工程>
被覆用のフッ化物の金属源としては、Mgおよび/またはKを含有する塩化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、アルコラート等が好ましい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。金属源がフッ化物の場合は、乾式混合、湿式混合のどちらでもよい。金属源がフッ化物以外の場合は、フッ化アンモニウム等のフッ化物源を併用することができる。MgFおよびKF以外のフッ化物として、Na、Ca、Al、Sn、Zn、Co、Pb、Ni、Fe、Cr、Bi、MnおよびSmからなる群から選択される少なくとも一種の元素のフッ化物を含める場合には、二種類以上の金属源を同時に混合することができる。
【0030】
溶媒に金属源および必要に応じてフッ化物源を添加して混合溶液を調製する場合には、混合溶液中における金属源と任意のフッ化物源の濃度は特に限定されないが、0.002〜0.050質量%が好ましい。該濃度が0.002質量%以上であることにより、水やアルコール等の溶媒の蒸発に要する時間が短くなるため、製造効率が向上する。また、該濃度が0.050質量%以下であることにより、原料が十分に溶解し、均質な混合溶液が得られる。
【0031】
例えば、前記混合溶液に前記リチウム鉄マンガン系複合酸化物を添加して混合した後、溶媒を蒸発させ、乾燥して得られる乾燥物を焼成することにより、フッ化物により表面の少なくとも一部が被覆されたリチウム鉄マンガン系複合酸化物が得られる。乾燥方法は特に制限されず、通常の乾燥方法の他にロータリーエバポレーター、スプレードライヤー等による乾燥方法が挙げられる。前記焼成は、真空中、大気雰囲気中、不活性雰囲気中、水素、窒素中又はこれらの混合雰囲気中で行うことができるが、低コスト化の観点から、大気雰囲気中で行うことが好ましい。焼成温度は350〜800℃であることが好ましい。焼成温度が350℃以上であることにより、反応が完結し、反応不純物等が残存しない。また、焼成温度が800℃以下であることにより、リチウム鉄マンガン系複合酸化物中のリチウムの反応を抑制でき、不純物としてのリチウム化合物の混在を防ぐことができる。
【0032】
[リチウムイオン二次電池用正極]
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極(以下、正極とも示す)は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極材料を含む。
【0033】
前記正極は、本実施形態に係る正極材料を正極集電体上に付与することで作製することができる。例えば、本実施形態に係る正極材料と、導電性付与剤と、結着剤と、溶媒とを混合し、混合物を正極集電体上に塗布し、乾燥することで作製することができる。該導電性付与剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素材料、Al等の金属材料、導電性酸化物等を用いることができる。該結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等を用いることができる。溶媒としては、N−メチルピロリドン等を用いることができる。正極集電体としては、アルミニウム等を主に含む金属薄膜を用いることができる。正極集電体の厚みは特に限定されないが、例えば5〜50μmにすることができる。
【0034】
前記正極材料は、本実施形態に係る正極材料以外の正極材料を含むこともできる。しかしながら、前記正極材料に含まれる、本実施形態に係る正極材料の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。該割合は100質量%、即ち前記正極材料は本実施形態に係る正極材料からなることが特に好ましい。
【0035】
前記導電性付与剤の添加量は1〜10質量%が好ましく、2〜7質量%であることがより好ましい。該添加量が1質量%以上であることにより、十分な導電性を保つことができる。また、該添加量が10質量%以下であることにより、正極材料質量の割合を大きくすることができるため、質量あたりの容量を大きくすることができる。前記結着剤の添加量は1〜10質量%が好ましく、2〜7質量%であることがより好ましい。該添加量が1質量%以上であることにより、正極剥離の発生を防ぐことができる。また、該添加量が10質量%以下であることにより、正極材料質量の割合を大きくすることができるため、質量あたりの容量を大きくすることができる。
【0036】
正極の厚みは特に限定されないが、例えば50〜500μmであることが好ましく、100〜400μmであることがより好ましい。
【0037】
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極と、負極とを備える。
【0038】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の一例を図2に示す。図2に示されるリチウムイオン二次電池では、正極集電体1A上に本実施形態に係る正極材料を含む正極材料層1が形成されることにより、正極が構成されている。また、負極集電体2A上に負極材料層2が形成されることにより、負極が構成されている。これらの正極と負極とは、電解液に浸漬された状態でセパレータ3を介して対向配置され、積層されている。また、正極は正極タブ1Bと、負極は負極タブ2Bとそれぞれ接続されている。この発電要素は外装体4内に収容されており、正極タブ1Bおよび負極タブ2Bは外部に露出している。
【0039】
正極と負極とに電圧を印加することにより、正極材料からリチウムイオンが脱離し、負極材料にリチウムイオンが吸蔵されるため、充電が生じる。また、正極と負極との電気的接触を二次電池外部で起こすことにより、充電時とは逆に負極材料からリチウムイオンが放出され、正極材料にリチウムイオンが吸蔵されるため、放電が起こる。
【0040】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池に用いられる電解液としては、溶媒に支持塩としてのリチウム塩を溶解させた溶液を用いることができる。該溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル類、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル等の非プロトン性有機溶媒等を用いることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、高電圧での安定性や、溶媒の粘度の観点から、溶媒としては環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との混合溶液を使用することが好ましい。
【0041】
リチウム塩としては、例えばLiPF、LiAsF、LiAlCl、LiClO、LiBF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI、LiSCN、LiCl、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のイミド類等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0042】
支持塩であるリチウム塩の濃度は、例えば0.5〜3.0mol/Lであることができ、0.7〜2.0mol/Lであることが好ましい。リチウム塩の濃度が0.5mol/L以上であることにより、十分な電気伝導率を得ることができる。また、リチウム塩の濃度が3.0mol/L以下であることにより、密度と粘度の増加を抑制することができる。
【0043】
なお、電解液の溶媒にポリマー等を添加した電解液をゲル状に固化したポリマー電解質を用いてもよい。
【0044】
負極材料としては、リチウムを吸蔵放出可能な材料を用いることができる。例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、非晶質炭素等の炭素材料、Li金属、Si、Sn、Al、SiO等のSi酸化物、Sn酸化物、LiTi12、TiO等のTi酸化物、V含有酸化物、Sb含有酸化物、Fe含有酸化物、Co含有酸化物等を用いることができる。これらの負極材料は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。特に、本実施形態に係る二次電池においては、本実施形態に係る正極材料との関係で不可逆容量が相殺される観点から、負極材料としてはSiOを用いることが好ましい。
【0045】
負極は、例えば前記負極材料と、導電性付与剤と、結着剤と、溶媒とを混合し、混合物を負極集電体上に塗布し、乾燥することで作製することができる。導電性付与剤としては、例えば炭素材料、導電性酸化物等を用いることができる。結着剤としてはポリフッ化ビニリデン、アクリル系樹脂、スチレンブタジエンゴム、イミド系樹脂、イミドアミド系樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリアミック酸等を用いることができる。溶媒としては、N−メチルピロリドン等を用いることができる。負極集電体としてはアルミニウム、銅等を主に含む金属薄膜を用いることができる。負極集電体の厚みは特に限定されないが、例えば5〜50μmであることができ、10〜40μmであることが好ましい。また、負極の厚みは特に限定されないが、例えば10〜100μmであることができ、20〜70μmであることが好ましい。
【0046】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、本実施形態に係る正極を用いて組み立てることで製造することができる。例えば、乾燥空気又は不活性ガス雰囲気下において、本実施形態に係る正極と負極とを、セパレータを介して電気的接触がない状態で対向配置させる。セパレータとしてはポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ポリアミド等を含む多孔質のフィルムを用いることができる。
【0047】
前記正極と負極とをセパレータを挟んで対向配置させたものを、円筒状又は積層状にして、外装体内に収納する。外装体としては、電池缶、合成樹脂と金属箔との積層体であるラミネートフィルム等を用いることができる。正極に正極タブを、負極に負極タブをそれぞれ接続し、これらの電極タブが外装体外部に露出するようにする。一部を残して外装体を封止し、その一部から電解液を注入し、外装体を密閉することでリチウムイオン二次電池を作製することができる。また、該リチウムイオン二次電池の使用前に活性化処理を行ってもよい。
【0048】
前記正極と負極とをセパレータを挟んで対向配置させたものの形状は特に制限されず、巻回型、積層型等であることができる。また、リチウムイオン二次電池の形式はコイン型、ラミネート型等であることができる。リチウムイオン二次電池の形状は、角型、円筒型等であることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本実施形態の実施例を示すが、本実施形態はこれらの実施例に限定されない。
【0050】
[実施例1]
<リチウム鉄マンガン系複合酸化物の合成>
所定原子比となるように秤量した硝酸鉄(III)、塩化マンガン(II)、および硝酸ニッケル(II)を蒸留水に溶解させ、金属塩水溶液(全量0.25mol/バッチ)を作製した。これとは別に、1.25mol/Lの水酸化リチウム水溶液を調製し、エタノールを加えて不凍化した後、恒温槽にて−10℃に冷却した。このアルカリ溶液に前記金属塩水溶液を2時間以上かけて徐々に滴下することにより、複合水酸化物を作製した。滴下後の複合水酸化物を含むアルカリ溶液を恒温槽より取り出し、該溶液に空気を吹き込んで2日間湿式酸化を行った後、複合水酸化物を室温にて熟成させた。
【0051】
熟成後の複合水酸化物を水洗および濾過した後、仕込みモル量と等モルの炭酸リチウムを加えて850℃にて5時間大気中で焼成した。焼成後、生成物を粉砕し、蒸留水で数回洗浄した後、濾過し、100℃で乾燥することにより、リチウム鉄マンガン系複合酸化物Li1.200Mn0.490Ni0.105Fe0.1051.890を得た。
【0052】
<MgFによる被覆>
前記リチウム鉄マンガン系複合酸化物に、MgFを添加した試料について乾式ミリング処理を3分間行った。その後、窒素中雰囲気下で400℃5時間焼成することで、表面の一部が1.0質量%のMgFにより被覆されたリチウム鉄マンガン系複合酸化物を得た。
【0053】
<正極の作製>
正極材料として、前記表面の一部が1.0質量%のMgFにより被覆されたリチウム鉄マンガン系複合酸化物を92質量%、ケッチェンブラックを4質量%、ポリフッ化ビニリデンを4質量%含む混合物を、溶媒に混合してスラリーを調製した。該スラリーを厚み20μmのアルミニウム箔である正極集電体上に塗布し、該スラリーを乾燥させて、厚み175μmの正極を作製した。
【0054】
<負極の作製>
平均粒子径が15μmのSiOを85質量%、ポリアミック酸を15質量%含む混合物を、溶媒に混合してスラリーを調製した。該スラリーを厚み10μmの銅箔である負極集電体上に塗布し、該スラリーを乾燥させて、厚み46μmの負極を作製した。作製した負極を窒素雰囲気下350℃で3時間アニールし、ポリアミック酸を硬化させた。
【0055】
<リチウムイオン二次電池の作製>
前記正極および前記負極を成形した後、多孔質のフィルムセパレータを挟んで積層した。その後、該正極および該負極にそれぞれ正極タブおよび負極タブを溶接し、発電要素を作製した。該発電要素をアルミニウムラミネートフィルムである外装体で包み、該外装体の3辺を熱融着により封止した。その後、適度な真空度にて、該外装体内に1mol/LのLiPFを含むEC/DEC電解液を注入した。その後、減圧下にて該外装体の残りの1辺を熱融着して封止し、活性化処理前のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0056】
<活性化処理>
前記活性化処理前のリチウムイオン二次電池について、正極材料あたり20mA/gの電流で4.5Vまで充電した後、正極材料あたり20mA/gの電流で1.5Vまで放電するサイクルを2回繰り返した。その後、一旦外装体の封止部を破り、減圧することで二次電池内部のガスを抜き、再封止することによりリチウムイオン二次電池を作製した。
【0057】
<リチウムイオン二次電池の評価>
前記リチウムイオン二次電池を、45℃の恒温槽中で、0.1Cの定電流で4.5Vまで充電し、さらに0.25Cの電流になるまで4.5Vの定電圧で充電した。その後、該リチウム二次電池を0.1Cの電流で1.5Vまで放電した。この充放電サイクルを10サイクル繰り返し、ガス発生量及び容量維持率を測定した。なお、充放電サイクル前後のリチウムイオン二次電池のガス発生量については、水中でのリチウムイオン二次電池の質量を充放電サイクル前後で測定し、充放電サイクル前後の質量差から算出した。初期容量、10サイクル後のガス発生量および容量維持率を表1に示す。
【0058】
[実施例2]
MgFの被覆量を3.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例3]
前記リチウム鉄マンガン系複合酸化物に、KFを添加した試料について蒸留水100ml中で撹拌後、100℃で粉末を乾燥させた。その後、窒素中雰囲気下で400℃5時間焼成することで、表面の一部が1.0質量%のKFにより被覆されたリチウム鉄マンガン系複合酸化物を得た。それ以降は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0060】
[比較例1]
正極材料として、フッ化物により被覆されていないリチウム鉄マンガン系複合酸化物(Li1.200Mn0.490Ni0.105Fe0.1051.890)を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
前記リチウム鉄マンガン系複合酸化物に、AlFを添加した試料について蒸留水100ml中で撹拌後、100℃で粉末を乾燥させた。その後、窒素中雰囲気下で400℃5時間焼成することで、表面の一部が1.0質量%のAlFにより被覆されたリチウム鉄マンガン系複合酸化物を得た。それ以降は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0062】
[比較例3]
AlFの被覆量を3.0質量%に変更した以外は、比較例2と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示すように、本実施形態に係る前記式(1)で示されるリチウム鉄マンガン系複合酸化物にMgFまたはKFを被覆させた正極材料は、未被覆またはAlFを被覆させた正極材料に比べて、ガス発生量を大幅に低減させることができ、かつ高い容量維持率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有し、さらに高出力特性、高サイクル特性にも優れるため、電子機器、電気自動車、一般家庭や施設の電力貯蔵用蓄電池等として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 正極材料層
1A 正極集電体
1B 正極タブ
2 負極材料層
2A 負極集電体
2B 負極タブ
3 セパレータ
4 外装体
5 リチウム鉄マンガン系複合酸化物
6 フッ化物
図1
図2