特許第6800498号(P6800498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800498新規な化合物及びそれを含む洗浄剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6800498
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】新規な化合物及びそれを含む洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/13 20060101AFI20201207BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20201207BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20201207BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   C07C43/13 DCSP
   C11D1/72
   C11D1/22
   C11D1/29
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-210838(P2019-210838)
(22)【出願日】2019年11月21日
【審査請求日】2020年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 信臣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 朋子
(72)【発明者】
【氏名】小林 峻久
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−161651(JP,A)
【文献】 特開2007−131594(JP,A)
【文献】 特許第4401419(JP,B2)
【文献】 特開2005−206713(JP,A)
【文献】 特開2004−067943(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/076747(WO,A1)
【文献】 米国特許第02407205(US,A)
【文献】 阿部芳郎他,グリコールのあわ消し性(第3報),油化学,1979年,Vol.28, No.11,pp.842-846
【文献】 ALVAREZ-MUNOZ,D. et al,Global Metabolite Profiling Reveals Transformation Pathways and Novel Metabolomic Responses in Solea senegalensis after Exposure to a Non-ionic Surfactant,Environmental Science & Technology,2014年,Vol.48, No.9,pp.5203-5210
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
C07B 31/00− 61/00
C11D 1/00− 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
HO−R−O−A−H (1)
(式中、R、下記式(5)〜(7)のいずれかから選ばれる分岐状のアルキレン基であり、Aは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sはの整数であり、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含有することを特徴とする低泡性洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に、アニオン性界面活性剤及びキレート剤を含有する請求項2に記載の低泡性洗浄剤組成物。
【請求項4】
下記一般式(11)で表される化合物と、アニオン性界面活性剤と、キレート剤とを含有する低泡性洗浄剤組成物であって、前記アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸の塩、及び、ポリオキシエチレン又はポリオキシアルキレンのアルキルエーテル硫酸塩を含むことを特徴とする低泡性洗浄剤組成物
HO−R−O−A−H (11)
(式中、Rは炭素原子数が8〜12のアルキレン基であり、Aは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sは3〜6の整数であり、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物及びそれを含み洗浄性に優れた洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両末端にヒドロキシ基を有し、その間に複数の−RO−基(Rはエチレン基又はアルキレン基)を有するジオール化合物は、洗浄剤組成物、農薬組成物等の原料成分の1つとして用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、下記式で表されるジオール化合物を含む水面浮遊型農薬組成物用拡展剤が開示されている。
HO−A−O−R−O−A−OH
(Rは炭素数6〜14のアルカンジオールから全ての水酸基を除いた残基であり、A,Aは1〜7個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)アルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である)
【0004】
また、特許文献2には、下記式で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤を含む、ボディーシャンプー、洗顔料、毛髪用シャンプー等に用いられる液体洗浄剤組成物が開示されている。
−O−(CHCHO)−H
(Rは炭素数10〜14の、直鎖または分岐鎖の、アルキル基またはアルケニル基を示し、nは85〜150の数を示す)
【0005】
ところで、食器洗い機や、洗濯機等により、食器、衣料等の物品に付着した汚れを落とすために、界面活性剤を主とする洗浄剤組成物が用いられている。洗浄剤組成物の中には、多くの泡を発生させるものがあり、洗浄機器の内部に泡が溢れると洗浄性が低下する等の不具合をまねくことがあった。そのため、消泡剤等の添加剤を併用することなく、低起泡性(以下、「低泡性」という)を有する洗浄剤組成物が検討されてきた。
特許文献3には、2種の特定のスルホン酸塩からなる陰イオン界面活性剤と、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸塩、及び炭素数2〜4のアルコールからなる群より選択される少なくとも一種とを含有し、低温安定性が良好であるとともに、泡立ちが早い効果を有する液体洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−39344号公報
【特許文献2】特開2016−193979号公報
【特許文献3】特開2012−233077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、物品に付着した汚れを落とすために用いられ、洗浄性及びすすぎ性が良好な洗浄剤組成物及びそれを与える低泡性に優れた化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の化合物(以下、「ジオール化合物」という)は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
HO−R−O−A−H (1)
(式中、R、下記式(5)〜(7)のいずれかから選ばれる分岐状のアルキレン基であり、Aは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sはの整数であり、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【化1】
【0009】
本発明の洗浄剤組成物は、上記本発明のジオール化合物を含有することを特徴とする。
また、本発明の洗浄剤組成物としては、以下の態様も挙げられる。
下記一般式(11)で表される化合物と、アニオン性界面活性剤と、キレート剤とを含有する低泡性洗浄剤組成物であって、前記アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸の塩、及び、ポリオキシエチレン又はポリオキシアルキレンのアルキルエーテル硫酸塩を含むことを特徴とする洗浄剤組成物
HO−R−O−A−H (11)
(式中、Rは炭素原子数が8〜12のアルキレン基であり、Aは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sは3〜6の整数であり、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0010】
本発明のジオール化合物は、低起泡性に優れ、物品に付着した汚れを落とす洗浄剤組成物の原料成分として好適である。本発明の洗浄剤組成物は、物品に付着した汚れを好適に落とすだけでなく、洗浄後のすすぎ性に優れ、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】合成例1により得られたジオール化合物のLC−MSスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を含むジオール化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物であり、片末端側のみに、オキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位の(ポリ)オキシアルキレン基を有する化合物が挙げられる
HO−R−O−A−H (1)
(式中、Rは炭素原子数が6〜14のアルキレン基であり、Aは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sは1〜10の整数であり、sが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【0013】
本発明では、上記一般式(1)における、アルキレン基Rの構造は、以下に示される、下記式(5)〜(7)のいずれかから選ばれる分岐状のアルキレン基である
【化1】
【0014】
また、上記一般式(1)において、Aを構成するアルキレン基Rは、炭素原子数2又は3のアルキレン基、即ち、エチレン基又は直鎖状若しくは分岐状のプロピレン基である。従って、Aはオキシエチレン基(−CO−)又はオキシプロピレン基(−CO−)を含む。
本発明のジオール化合物において、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基の合計数であるsは、であり、好ましくは3〜5である。−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよいが、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の両方を含む場合、これらの基が規則的あるいは不規則的に連なって結合した構造を有する。
【0015】
従来、公知の洗浄剤組成物に含まれる界面活性剤において、その水溶液を起泡させた場合の破泡性の程度は、様々である。本発明のジオール化合物において、その水溶液として、表面張力がほぼ平衡に達した静的領域にあるものと、動的領域にあるものとの間で表面張力の差を算出した場合、計算値が小さくなる傾向にある。これは、動的領域において、ジオール化合物が水と外界との界面に多く配向しているためであり、その結果、低起泡性に優れるものと推測している。
【0016】
本発明を含むジオール化合物を製造する方法は、特に限定されない。好ましい製造方法は、触媒の存在下、炭素原子数が6〜14のアルカンジオールと、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれた少なくとも一方とを反応させる工程(以下、「反応工程」という)を備える製造方法(以下、「第1製造方法」という)である。以下、この第1製造方法について、説明する。
【0017】
上記アルカンジオールとしては、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール等の直鎖アルカンジオール;2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の分岐アルカンジオール等が挙げられる。上記反応工程で用いるアルカンジオールは、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。本願発明に用いるアルカンジオールとしては、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールの分岐アルカンジオールが好ましい。
【0018】
上記反応工程では、触媒が用いられる。この触媒は、特に限定されないが、所望の生成物が効率よく得られることから、好ましくは塩基性化合物である。この塩基性化合物は、無機化合物及び有機化合物のいずれでもよく、無機化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等が挙げられる。有機化合物としては、CHONa、CONa、CHOLi、COLi、CHOK、COK等が挙げられる。上記触媒の使用量は、上記アルカンジオール1モルに対して、好ましくは0.1〜10ミリモル当量である。
【0019】
上記反応工程は、オートクレーブ等の圧力反応器内において、反応系の温度を、好ましくは100℃〜170℃、より好ましくは130℃〜150℃として、原料を撹拌しながら進められる。エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドは、所望の構造を有するジオール化合物とするために、順序、割合等を変化させながら添加することができる。
【0020】
上記第1製造方法において、反応工程の後に、必要に応じて、精製工程を備えることができる。この精製工程は、一般的な有機化合物の合成で行われる、従来、公知の、クロマト分離、濃縮等の操作を含むことができる。
【0021】
本発明の洗浄剤組成物は、上記本発明のジオール化合物を含有する。
また、上述の通り、本発明の洗浄剤組成物としては、以下の態様も挙げられる。
下記一般式(11)で表される化合物と、アニオン性界面活性剤と、キレート剤とを含有する低泡性洗浄剤組成物であって、前記アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸の塩、及び、ポリオキシエチレン又はポリオキシアルキレンのアルキルエーテル硫酸塩を含むことを特徴とする
HO−R−O−A−H (11)
(式中、Rは炭素原子数が8〜12のアルキレン基であり、Aは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sは3〜6の整数であり、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
洗浄剤組成物は、必要に応じて、他の成分を含有することができる。他の成分としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、キレート剤、酸化防止剤、香料、防菌剤、防黴剤、水、有機溶剤等が挙げられる。水及び有機溶剤を除く他の成分の合計量の含有割合は、上記ジオール化合物(本発明のジオール化合物又は一般式(11)で表される化合物)の含有量を100質量部とした場合に、物品に付着した汚れに対する洗浄性の観点から、好ましくは10〜1600質量部、より好ましくは100〜700質量部である。
【0022】
アニオン性界面活性剤としては、直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、α−オレフィンスルホン酸塩、直鎖状又は分岐状のアルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシアルキレンのアルキルエーテル硫酸塩、アルキル基を有するアルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、アルキルアミドエーテルカルボン酸塩又はアルケニルアミドエーテルカルボン酸塩、アシルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸型、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
カチオン性界面活性剤としては、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルトリエチルアンモニウム塩、アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0024】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0025】
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドヒドロキシエチルアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルイミノジ酢酸塩等が挙げられる。
【0026】
キレート剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、メチルグリシン二酢酸、グルタミン酸二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、ニトリロ三酢酸、1,3−プロパンジアミン三酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、及びヒドロキシエチルエチレンジアミンジカルボキシメチルグルタミン酸等のポリカルボン酸又はその塩、トリポリリン酸又はその塩等が挙げられる。
【0027】
有機溶剤は、水と混和性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール;プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリグリコール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキルエーテル等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の洗浄剤組成物は、上記本発明のジオール化合物と、アニオン性界面活性剤と、キレート剤とを含有することが好ましい。
また、本発明の洗浄剤組成物としては、以下の態様も挙げられる。
下記一般式(11)で表される化合物と、アニオン性界面活性剤と、キレート剤とを含有する低泡性洗浄剤組成物であって、前記アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸の塩、及び、ポリオキシエチレン又はポリオキシアルキレンのアルキルエーテル硫酸塩を含む洗浄剤組成物とすることができる
HO−R−O−A−H (11)
(式中、Rは炭素原子数が8〜12のアルキレン基であり、Aは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sは3〜6の整数であり、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
アニオン性界面活性剤及びキレート剤の含有割合は、上記ジオール化合物(本発明のジオール化合物又は一般式(11)で表される化合物)の含有量を100質量部とした場合、それぞれ、好ましくは3〜400質量部及び3〜200質量部、より好ましくは5〜150質量部及び5〜100質量部である。
【0029】
また、本発明の洗浄剤組成物は、水、有機溶剤等の液状媒体を含有する液状物であることが好ましい。この場合、ジオール化合物の含有割合の下限は、好ましくは5質量%、より好ましくは10質量%である。尚、上限は、通常、30質量%である。
【0030】
本発明の洗浄剤組成物は、物品に付着した汚れを落とす、即ち、洗浄するために用いるものであるが、この組成物をそのまま用いてよいし、更に水で希釈した希釈物を用いてもよい。希釈物を洗浄に用いる場合、希釈物におけるジオール化合物の含有割合の下限は、洗浄性の観点から、好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.5質量%である。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物は、食器洗い機や、洗濯機等と併用した、食器、衣料等の洗浄に好適である。また、これらの機器の洗浄槽や、特殊な液体により物品を処理するための浸漬槽の内壁面に付着した汚れの洗浄にも好適である。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物を用いた洗浄方法は、特に限定されず、物品の汚染状況に応じて、適宜、選択することができる。一般的な洗浄方法の一例は、少なくとも、汚染箇所に組成物を接触させて、ブラシ等の洗浄具を用いて汚れを落とす方法である。本発明の洗浄剤組成物は、低起泡性に優れたジオール化合物を含有するため、汚れを落とした後に水ですすぎを行う場合の水の使用量を低減することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、下記の記載において、「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0034】
1.ジオール化合物の合成
合成例1(化合物X−1の合成)
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール160.3g(1モル)をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、エチレンオキサイド176g(4モル)を圧入して付加重合反応を開始した。そして、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。その後、反応系の触媒をリン酸で中和し、次いで、液体クロマトグラフにより反応生成物を分離回収した。得られた反応生成物を下記条件によるLC−MS分析に供したところ、下記式(3)で表される化合物であることが分かった(図1参照)。以下、この化合物をX−1として示す(表1参照)。
ESI−MS:m/z=337(M+H)
【化2】
【0035】
(LC−MS分析条件)
測定機器:LC/Ultimate3000 (Thermo Fisher Scientific社製)
:MS/maXis(Bruker社製)
LC使用カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7um 2.1mm×150mm(Waters社製)
イオン化方法:ESI(positive)
イオン源温度:200℃
MS検出器 :TOF
測定レンジ :70m/z〜1550m/z
【0036】
合成例2
エチレンオキサイド4モルに代えて、プロピレンオキサイド4モルを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−2を得た(表1参照)。
【0037】
合成例3
エチレンオキサイド4モルに代えて、エチレンオキサイド2モル及びプロピレンオキサイド2モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−3を得た(表1参照)。
【0038】
合成例4
エチレンオキサイド(4モル)を圧入して、同温度で1時間熟成させる付加重合反応に代えて、130℃〜150℃にてエチレンオキサイド2モルを圧入して、同温度で1時間熟成させた後、130℃〜150℃にてプロピレンオキサイド2モルを圧入して、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。反応終了以降は合成例1と同様の操作を行い、化合物X−4を得た(表1参照)。
【0039】
合成例5
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから3モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−5を得た(表1参照)。
【0040】
合成例6
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−メチル−1,8−オクタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから5モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−6を得た(表1参照)。
【0041】
合成例7
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,12−ドデカンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−7を得た(表1参照)。
【0042】
合成例8
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,6−ヘキサンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−8を得た(表1参照)。
【0043】
合成例9
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,14−テトラデカンジオールを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−9を得た(表1参照)。
【0044】
合成例10
エチレンオキサイドの使用量を4モルから12モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物Y−1を得た(表1参照)。
【0045】
合成例11
エチレンオキサイドの使用量を4モルから16モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物Y−2を得た(表1参照)。
【0046】
【表1】
【0047】
後述する評価実験のため、従来、公知の界面活性剤として、合成例12及び13で得られた化合物を用いた。
【0048】
合成例12
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、ラウリルアルコールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから5モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、下記式で表される化合物Z−1を得た。
1225−O−(CH−CH−O)−H
【0049】
合成例13
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、ラウリルアルコール及びトリデシルアルコールを用い、エチレンオキサイド4モルに代えて、エチレンオキサイド6モル及びプロピレンオキサイド1モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、複数種のポリオキシエチレンポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる混合物Z−2を得た。
【0050】
2.動的表面張力の測定
例1−1〜1−9及び比較例1−1〜1−4
合成例1〜13で得られたジオール化合物等について、動的表面張力を測定するため、各化合物を0.1質量%の濃度で含む水溶液を調製し、Chem-Dyne Research Corporation社製泡圧法式動的表面張力計「SENSA DYNE」(商品名)を用いて、20℃にて、1、3、5泡/秒の動的表面張力を測定した。測定プローブ径は0.5mmである。1泡/秒の水溶液は、表面張力がほぼ平衡に達した静的領域にあると仮定し、5泡/秒の水溶液は、動的領域にあると仮定し、5泡/秒の動的表面張力及び1泡/秒の動的表面張力の差(ΔT)を求めた。その結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
一般に、界面活性剤の水溶液において、界面活性剤が水と大気との界面に多く存在するとΔTが小さくなる傾向にある。表3の実例1−1〜1−9における化合物X−1〜X−9の水溶液は、ΔTが2.0以下であるため、これらの水溶液を泡立たせた後には泡切れが良好になると推測される。
【0053】
3.洗浄剤組成物の製造及び評価
例2−1〜2−11及び比較例2−1〜2−4
表2に示す化合物X−1〜X−9、Y−1、Y−2、Z−1及びZ−2を、アルキル基の炭素原子数が12のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、単に、「アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム」という)、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(以下、単に、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム」という)、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム、クエン酸及び水とともに、表3に記載の割合で混合し、洗浄剤組成物を製造した。
次いで、下記に示す方法により、起泡性、すすぎ性及び洗浄性の評価を行った。その結果を表3に併記した。
【0054】
(1)起泡性
各洗浄剤組成物をイオン交換水により100倍に希釈した。その後、希釈液の50mLを容積200mLの共栓付きメスシリンダーに秤取して密栓した。次いで、1回/秒にて10回転倒させ振り混ぜて泡立たせた。その後、直ちにメスシリンダーを静置して泡の容量(mL)を測定した。また、1分経過した後にも泡の容量(mL)を測定した。これらの測定値から、下記基準で起泡性を判定した。
【0055】
<起泡性の判定基準>
(泡立ち直後)
◎:泡の容量が20mL未満であった
〇:泡の容量が20mL以上50mL未満であった
△:泡の容量が50mL以上100mL未満であった
×:泡の容量が100mL以上であった
(泡立ち1分後)
◎:泡の容量が20mL未満であった
〇:泡の容量が20mL以上50mL未満であった
△:泡の容量が50mL以上100mL未満であった
×:泡の容量が100mL以上であった
【0056】
(2)すすぎ性及び洗浄性
直径25cmの陶器皿5枚すべてに、局方豚油、局方ゴマ油及び赤色染料が、それぞれ、800部、200部及び0.1部で混合されてなる汚れ物質3gを塗布し、20℃〜30℃の条件下、12時間放置した。次いで、表3に示す洗浄剤組成物を水で100倍に希釈した洗浄液洗浄液(温度:40℃、使用量:3.5L)中にて汚れた皿を1分間ブラシ洗浄した。その後、30℃の水で、5枚すべての皿の表面に泡がなくなるまですすぎ洗いし、泡が完全になくなるまでに使用した水の合計量にて、すすぎ性を評価した。そして、水切りをした後、皿の表面に汚れ物質が残存しているか否かを目視観察し、洗浄性を評価した。
【0057】
<すすぎ性の判定基準>
◎:使用した水の合計量が1000mL以下であった
〇:使用した水の合計量が1500〜2000mLであった
△:使用した水の合計量が2500〜4000mLであった
×:使用した水の合計量が4500mL以上であった
【0058】
<洗浄性の判定基準>
○:5枚の皿すべてに汚れは全く残留しておらず、皿の表面を触ってもぬるつき等の違和感が全くなかった
△:一部の皿に汚れが観察された、あるいは、汚れの残留は認められないが、手で触ると若干のぬるつき等の違和感があった
×:5枚の皿すべてに汚れの残留が認められた
【0059】
【表3】
【0060】
表3によれば、本発明のジオール化合物であるX−1〜X−9を用いた洗浄剤組成物の実例2−1〜2−11は、低起泡性、すすぎ性及び洗浄性に優れていた。一方、本発明に含まれないジオール化合物Y−1又はY−2を用いた洗浄剤組成物の比較例2−1及び2−2は、低起泡性が十分ではなく、また、皿を洗浄した後のすすぎに大量の水を必要とする等、経済的ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の洗浄剤組成物を用いると、物品に付着した汚れを効率よく落とすことができる。また、低起泡性に優れるジオール化合物を含有するため、すすぎの際の水の使用量を低減することができ、経済的である。
【要約】
【課題】物品に付着した汚れを落とすために用いられ、洗浄性及びすすぎ性が良好な洗浄剤組成物及びそれを与える低泡性に優れた化合物を提供する。
【解決手段】本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される。
HO−R−O−A−H (1)
(式中、Rは炭素原子数が6〜14のアルキレン基であり、Aは−(RO)−で表される2価の基であり、Rは炭素原子数が2又は3のアルキレン基であり、sは1〜10の整数であり、sが2以上の場合、−(RO)−におけるRは全て同一であっても、異なっていてもよい。)
【選択図】図1
図1