【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、下記の記載において、「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0034】
1.ジオール化合物の合成
合成例1(化合物X−1の合成)
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール160.3g(1モル)をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム粉末0.3g(原料に対して6ミリモル当量)を加えた後、オートクレーブ内を窒素ガスにより十分に置換した。次いで、これらを撹拌しながら、反応系の温度を130℃〜150℃に維持しつつ、エチレンオキサイド176g(4モル)を圧入して付加重合反応を開始した。そして、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。その後、反応系の触媒をリン酸で中和し、次いで、液体クロマトグラフにより反応生成物を分離回収した。得られた反応生成物を下記条件によるLC−MS分析に供したところ、下記式(3)で表される化合物であることが分かった(
図1参照)。以下、この化合物をX−1として示す(表1参照)。
ESI−MS:m/z=337(M+H)
+
【化2】
【0035】
(LC−MS分析条件)
測定機器:LC/Ultimate3000 (Thermo Fisher Scientific社製)
:MS/maXis(Bruker社製)
LC使用カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7um 2.1mm×150mm(Waters社製)
イオン化方法:ESI(positive)
イオン源温度:200℃
MS検出器 :TOF
測定レンジ :70m/z〜1550m/z
【0036】
合成例2
エチレンオキサイド4モルに代えて、プロピレンオキサイド4モルを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−2を得た(表1参照)。
【0037】
合成例3
エチレンオキサイド4モルに代えて、エチレンオキサイド2モル及びプロピレンオキサイド2モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−3を得た(表1参照)。
【0038】
合成例4
エチレンオキサイド(4モル)を圧入して、同温度で1時間熟成させる付加重合反応に代えて、130℃〜150℃にてエチレンオキサイド2モルを圧入して、同温度で1時間熟成させた後、130℃〜150℃にてプロピレンオキサイド2モルを圧入して、同温度で1時間熟成させて付加重合反応を終了した。反応終了以降は合成例1と同様の操作を行い、化合物X−4を得た(表1参照)。
【0039】
合成例5
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから3モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−5を得た(表1参照)。
【0040】
合成例6
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、2−メチル−1,8−オクタンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから5モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−6を得た(表1参照)。
【0041】
合成例7
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,12−ドデカンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−7を得た(表1参照)。
【0042】
合成例8
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,6−ヘキサンジオールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから6モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−8を得た(表1参照)。
【0043】
合成例9
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、1,14−テトラデカンジオールを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物X−9を得た(表1参照)。
【0044】
合成例10
エチレンオキサイドの使用量を4モルから12モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物Y−1を得た(表1参照)。
【0045】
合成例11
エチレンオキサイドの使用量を4モルから16モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物Y−2を得た(表1参照)。
【0046】
【表1】
【0047】
後述する評価実験のため、従来、公知の界面活性剤として、合成例12及び13で得られた化合物を用いた。
【0048】
合成例12
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、ラウリルアルコールを用い、エチレンオキサイドの使用量を4モルから5モルに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、下記式で表される化合物Z−1を得た。
C
12H
25−O−(CH
2−CH
2−O)
5−H
【0049】
合成例13
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに代えて、ラウリルアルコール及びトリデシルアルコールを用い、エチレンオキサイド4モルに代えて、エチレンオキサイド6モル及びプロピレンオキサイド1モルの混合物を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、複数種のポリオキシエチレンポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる混合物Z−2を得た。
【0050】
2.動的表面張力の測定
実
験例1−1〜1−9及び比較例1−1〜1−4
合成例1〜13で得られたジオール化合物等について、動的表面張力を測定するため、各化合物を0.1質量%の濃度で含む水溶液を調製し、Chem-Dyne Research Corporation社製泡圧法式動的表面張力計「SENSA DYNE」(商品名)を用いて、20℃にて、1、3、5泡/秒の動的表面張力を測定した。測定プローブ径は0.5mmである。1泡/秒の水溶液は、表面張力がほぼ平衡に達した静的領域にあると仮定し、5泡/秒の水溶液は、動的領域にあると仮定し、5泡/秒の動的表面張力及び1泡/秒の動的表面張力の差(ΔT)を求めた。その結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
一般に、界面活性剤の水溶液において、界面活性剤が水と大気との界面に多く存在するとΔTが小さくなる傾向にある。表3の実
験例1−1〜1−9における化合物X−1〜X−9の水溶液は、ΔTが2.0以下であるため、これらの水溶液を泡立たせた後には泡切れが良好になると推測される。
【0053】
3.洗浄剤組成物の製造及び評価
実
験例2−1〜2−11及び比較例2−1〜2−4
表2に示す化合物X−1〜X−9、Y−1、Y−2、Z−1及びZ−2を、アルキル基の炭素原子数が12のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、単に、「アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム」という)、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(以下、単に、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム」という)、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム、クエン酸及び水とともに、表3に記載の割合で混合し、洗浄剤組成物を製造した。
次いで、下記に示す方法により、起泡性、すすぎ性及び洗浄性の評価を行った。その結果を表3に併記した。
【0054】
(1)起泡性
各洗浄剤組成物をイオン交換水により100倍に希釈した。その後、希釈液の50mLを容積200mLの共栓付きメスシリンダーに秤取して密栓した。次いで、1回/秒にて10回転倒させ振り混ぜて泡立たせた。その後、直ちにメスシリンダーを静置して泡の容量(mL)を測定した。また、1分経過した後にも泡の容量(mL)を測定した。これらの測定値から、下記基準で起泡性を判定した。
【0055】
<起泡性の判定基準>
(泡立ち直後)
◎:泡の容量が20mL未満であった
〇:泡の容量が20mL以上50mL未満であった
△:泡の容量が50mL以上100mL未満であった
×:泡の容量が100mL以上であった
(泡立ち1分後)
◎:泡の容量が20mL未満であった
〇:泡の容量が20mL以上50mL未満であった
△:泡の容量が50mL以上100mL未満であった
×:泡の容量が100mL以上であった
【0056】
(2)すすぎ性及び洗浄性
直径25cmの陶器皿5枚すべてに、局方豚油、局方ゴマ油及び赤色染料が、それぞれ、800部、200部及び0.1部で混合されてなる汚れ物質3gを塗布し、20℃〜30℃の条件下、12時間放置した。次いで、表3に示す洗浄剤組成物を水で100倍に希釈した洗浄液洗浄液(温度:40℃、使用量:3.5L)中にて汚れた皿を1分間ブラシ洗浄した。その後、30℃の水で、5枚すべての皿の表面に泡がなくなるまですすぎ洗いし、泡が完全になくなるまでに使用した水の合計量にて、すすぎ性を評価した。そして、水切りをした後、皿の表面に汚れ物質が残存しているか否かを目視観察し、洗浄性を評価した。
【0057】
<すすぎ性の判定基準>
◎:使用した水の合計量が1000mL以下であった
〇:使用した水の合計量が1500〜2000mLであった
△:使用した水の合計量が2500〜4000mLであった
×:使用した水の合計量が4500mL以上であった
【0058】
<洗浄性の判定基準>
○:5枚の皿すべてに汚れは全く残留しておらず、皿の表面を触ってもぬるつき等の違和感が全くなかった
△:一部の皿に汚れが観察された、あるいは、汚れの残留は認められないが、手で触ると若干のぬるつき等の違和感があった
×:5枚の皿すべてに汚れの残留が認められた
【0059】
【表3】
【0060】
表3によれば、本発明のジオール化合物であるX−1〜X−9を用いた洗浄剤組成物の実
験例2−1〜2−11は、低起泡性、すすぎ性及び洗浄性に優れていた。一方、本発明に含まれないジオール化合物Y−1又はY−2を用いた洗浄剤組成物の比較例2−1及び2−2は、低起泡性が十分ではなく、また、皿を洗浄した後のすすぎに大量の水を必要とする等、経済的ではなかった。