(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800537
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】調理補助装置及び調理補助装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
A47J37/12 331
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-116661(P2017-116661)
(22)【出願日】2017年6月14日
(65)【公開番号】特開2019-288(P2019-288A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】樋口 広海
【審査官】
河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第5180600(US,A)
【文献】
特開平9−196383(JP,A)
【文献】
特開平7−204090(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0086479(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/10−37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の油から発せられる泡音を収集する泡音収集手段と、
前記泡音収集手段により収集された泡音の周波数分析を行う周波数分析手段と、
前記周波数分析の結果に基づき、周波数を横軸にとり、パワースペクトル密度を縦軸にとったパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを作成するグラフ作成手段と、
前記グラフにおけるパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化に基づき調理タイミングを検出する調理タイミング検出手段と
を具備することを特徴とする調理補助装置。
【請求項2】
前記調理タイミング検出手段は、パワースペクトル密度−周波数曲線に現れる2大凸部のうち周波数が高い方の凸部における最大点の周波数が第1の所定値以下になるときに揚物の揚げ上がりの調理タイミングを検出することを特徴とする請求項1に記載の調理補助装置。
【請求項3】
前記調理タイミング検出手段は、パワースペクトル密度−周波数曲線に現れる2大凸部のうち周波数が低い方の凸部における最大点のパワースペクトル密度が第2の所定値以上になるときに具材投入の調理タイミングを検出することを特徴とする請求項1または2に記載の調理補助装置。
【請求項4】
前記調理タイミング検出手段による調理タイミングの検出に対応する所要の通知内容を出力手段から報知する報知制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の調理補助装置。
【請求項5】
調理の具材情報毎にパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化情報の履歴情報を蓄積する履歴情報蓄積手段と、
前記調理の具材情報毎に履歴情報を用いて統計処理を行って、報知タイミング値を算出する報知タイミング値算出手段と
を備え、
前記報知制御手段は、この報知タイミング値算出手段により算出された報知タイミング値に基づき報知を行うことを特徴とする請求項4に記載の調理補助装置。
【請求項6】
調理の具材が二度揚げの場合には、前記報知タイミング値算出手段は、一度目の調理タイミングに対応する第1の報知タイミング値と、二度目の調理タイミングに対応する第2の報知タイミング値とを算出することを特徴とする請求項5に記載の調理補助装置。
【請求項7】
前記出力手段は、音声により報知を行う手段、光により報知を行う手段、文字を表示して報知を行う手段、サイレン吹鳴により報知を行う手段、携帯端末へ電子メールを送信して報知を行う手段、の少なくとも1つであることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の調理補助装置。
【請求項8】
容器の油から発せられる泡音を収集する泡音収集手段と、コンピュータとを備える調理補助装置に用いられる調理補助装置用プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記泡音収集手段により収集された泡音の周波数分析を行う周波数分析手段、
前記周波数分析の結果に基づき、周波数を横軸にとり、パワースペクトル密度を縦軸にとったパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを作成するグラフ作成手段、
前記グラフにおけるパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化に基づき調理タイミングを検出する調理タイミング検出手段
として機能させることを特徴とする調理補助装置用プログラム。
【請求項9】
前記調理タイミング検出手段は、パワースペクトル密度−周波数曲線に現れる2大凸部のうち周波数が高い方の凸部における最大点の周波数が第1の所定値以下になるときに揚物の揚げ上がりの調理タイミングを検出することを特徴とする請求項8に記載の調理補助装置用プログラム。
【請求項10】
前記調理タイミング検出手段は、パワースペクトル密度−周波数曲線に現れる2大凸部のうち周波数が低い方の凸部における最大点のパワースペクトル密度が第2の所定値以上になるときに具材投入の調理タイミングを検出することを特徴とする請求項8または9に記載の調理補助装置用プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータを更に、
前記調理タイミング検出手段による調理タイミングの検出に対応する所要の通知内容を出力手段から報知する報知制御手段として機能させることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の調理補助装置用プログラム。
【請求項12】
前記コンピュータを更に、
調理の具材情報毎にパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化情報の履歴情報を蓄積する履歴情報蓄積手段、
前記調理の具材情報毎に履歴情報を用いて統計処理を行って、報知タイミング値を算出する報知タイミング値算出手段
として機能させ、
前記報知制御手段は、この報知タイミング値算出手段により算出された報知タイミング値に基づき報知を行うことを特徴とする請求項11に記載の調理補助装置用プログラム。
【請求項13】
調理の具材が二度揚げの場合には、前記報知タイミング値算出手段は、一度目の調理タイミングに対応する第1の報知タイミング値と、二度目の調理タイミングに対応する第2の報知タイミング値とを算出することを特徴とする請求項12に記載の調理補助装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、てんぷらやフライなどの揚げ物に係る調理を補助する調理補助装置と、この調理補助装置に用いる調理補助装置用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
てんぷらに関しては、衣のサクサクした感覚を実現するために特定の成分を含むてんぷら用衣ミックスを用いることが特許文献1に記載されている。また、特許文献2には、衣が付けられた具材を油の中で保持し移動させる具材支持部材を備え、この具材支持部材に支持された具材へ油面上方から花咲き用衣液を滴下させ、また、花咲き用衣液が滴下された具材へ向けて加熱油を噴射させて万遍なく花咲き衣が形成されたてんぷらを提供することが開示されている。
【0003】
更に、特許文献3には、所定温の油が入ったフライヤ内に、周囲に複数の窓穴を有する筒状の囲い部材を入れ、筒状の囲い部材の内側にフライヤの油面より高い高さの内筒を挿入して上記窓を遮蔽した状態で内筒の中に具材を投入する工程と、内筒の具材を油内において攪拌する工程と、内筒を抜き取って、筒状の囲い部材の窓から加熱油を具材側に流入させ加熱形成した具材を加熱油揚げする工程とを実行することにより、衣が鳥の巣のようにこんもりと盛り上がり、乱れた凹凸や空洞空間を形成した蜂の巣形態のかき揚げてんぷらを製造することが開示されている。
【0004】
上記のようにてんぷら等を揚げる場合には、形状や食感という要素の他に、挙げるタイミングが重要である。特許文献4には、同時に異なる材料の揚げ物を揚げる場合に、タイマをそれぞれの材料毎に設定し、揚げ作業か支持にタイマのスタートを操作することにより、それぞれの揚げ物に適する時間が経過した時点で順次に知らせるようにし、食材毎に取り出しのタイミングが分かるようにした業務用フライヤが開示されている。
【0005】
更に、特許文献5には、誘導加熱周波数の略2倍の周波数成分の振動波形を抽出して非加熱物の状態を正確に検知する誘導加熱調理器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−25678号公報
【特許文献2】特開平6−335354号公報
【特許文献3】特開2004−97073号公報
【特許文献4】特開平10−248724号公報
【特許文献5】特許第5043833号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のとおり、揚げ物を調理する場合に調理が適切になされるようにする各種の発明がなされている。しかしながら、揚げ物の調理において最も難しいのは揚げ物を油から揚げるタイミング、或いは、具材を油の中に投入するタイミングであろうと思われる。
【0008】
上記の問題に対処するものとしては、特許文献4に示すものを挙げることができるが、タイマの時間設定は使用者が行わなくてはならず、素人が適切な時間を設定することは困難であろうと思われる。本発明はこのような揚げ物の調理における現状に鑑みてなされたもので、その目的は、特に調理に関する経験や知識がなくとも、また、揚げ物の具材の種類や大きさに関係なく、揚げ物の揚げタイミングや具材投入タイミングを検出して知らせることが可能であり、失敗なく適切な揚げ上がりの揚げ物を提供することができる調理補助装置及び調理補助装置用プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る調理補助装置は、容器の油から発せられる泡音を収集する泡音収集手段と、前記泡音収集手段により収集された泡音の周波数分析を行う周波数分析手段と、前記周波数分析の結果に基づき、周波数を横軸にとり、パワースペクトル密度を縦軸にとったパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを作成するグラフ作成手段と、前記グラフにおけるパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化に基づき調理タイミングを検出する調理タイミング検出手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る調理補助装置では、前記調理タイミング検出手段は、パワースペクトル密度−周波数曲線に現れる2大凸部のうち周波数が高い方の凸部における最大点の周波数が第1の所定値以下になるときに揚物の揚げ上がりの調理タイミングを検出することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る調理補助装置では、前記調理タイミング検出手段は、パワースペクトル密度−周波数曲線に現れる2大凸部のうち周波数が低い方の凸部における最大点のパワースペクトル密度が第2の所定値以上になるときに具材投入の調理タイミングを検出することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る調理補助装置では、前記調理タイミング検出手段による調理タイミングの検出に対応する所要の通知内容を出力手段から報知する報知制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る調理補助装置では、調理の具材情報毎にパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化情報の履歴情報を蓄積する履歴情報蓄積手段と、前記調理の具材情報毎に履歴情報を用いて統計処理を行って、報知タイミング値を算出する報知タイミング値算出手段とを備え、前記報知制御手段は、この報知タイミング値算出手段により算出された報知タイミング値に基づき報知を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る調理補助装置では、調理の具材が二度揚げの場合には、前記報知タイミング値算出手段は、一度目の調理タイミングに対応する第1の報知タイミング値と、二度目の調理タイミングに対応する第2の報知タイミング値とを算出することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る調理補助装置では、前記出力手段は、音声により報知を行う手段、光により報知を行う手段、文字を表示して報知を行う手段、サイレン吹鳴により報知を行う手段、携帯端末へ電子メールを送信して報知を行う手段、の少なくとも1つであることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る調理補助装置用プログラムは、容器の油から発せられる泡音を収集する泡音収集手段と、コンピュータとを備える調理補助装置に用いられる調理補助装置用プログラムであって、前記コンピュータを、前記泡音収集手段により収集された泡音の周波数分析を行う周波数分析手段、前記周波数分析の結果に基づき、周波数を横軸にとり、パワースペクトル密度を縦軸にとったパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを作成するグラフ作成手段、前記グラフにおけるパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化に基づき調理タイミングを検出する調理タイミング検出手段として機能させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る調理補助装置用プログラムでは、前記調理タイミング検出手段は、パワースペクトル密度−周波数曲線に現れる2大凸部のうち周波数が高い方の凸部における最大点の周波数が第1の所定値以下になるときに揚物の揚げ上がりの調理タイミングを検出することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る調理補助装置用プログラムでは、前記調理タイミング検出手段は、パワースペクトル密度−周波数曲線に現れる2大凸部のうち周波数が低い方の凸部における最大点のパワースペクトル密度が第2の所定値以上になるときに具材投入の調理タイミングを検出することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る調理補助装置用プログラムでは、前記コンピュータを更に、前記調理タイミング検出手段による調理タイミングの検出に対応する所要の通知内容を出力手段から報知する報知制御手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る調理補助装置用プログラムでは、前記コンピュータを更に、調理の具材情報毎にパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化情報の履歴情報を蓄積する履歴情報蓄積手段、前記調理の具材情報毎に履歴情報を用いて統計処理を行って、報知タイミング値を算出する報知タイミング値算出手段として機能させ、前記報知制御手段は、この報知タイミング値算出手段により算出された報知タイミング値に基づき報知を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る調理補助装置用プログラムでは、調理の具材が二度揚げの場合には、前記報知タイミング値算出手段は、一度目の調理タイミングに対応する第1の報知タイミング値と、二度目の調理タイミングに対応する第2の報知タイミング値とを算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
揚げ物においては、当初は泡が小さく、揚げ上がりに近付くと泡が大きくなるため、泡周波数を分析し、周波数を横軸にとり、パワースペクトル密度を縦軸にとったパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを作成すると、このグラフの曲線に凸部が現れ、この位置や大きさが経時的に変化することが確かめられた。本発明はこのグラフの凸部の変化に基づき調理タイミングを検出するので、調理の具材の種類や大きさなどに関係なく、揚げ上がりや具材投入のタイミングを適切に検出可能となる。従って、特に調理に関する経験や知識がなくとも失敗なく適切な揚げ上がりの揚げ物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】揚げ物調理における揚げ始めに近いときのパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを示す図。
【
図2】揚げ物調理における揚げ上がりに近付いたときのパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを示す図。
【
図3】揚げ物調理における具材投入のタイミングとなるまでのパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフ要部の変化を示す図。
【
図4】本発明に係る調理補助装置の実施形態の構成を示すブロック図。
【
図5】本発明に係る調理補助装置の実施形態における具材投入となるまでの動作を示すフローチャート。
【
図6】本発明に係る調理補助装置の実施形態における具材揚げ上がりとなるまでの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下添付図面を参照して、本発明に係る調理補助装置及び調理補助装置用プログラムの実施形態を説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
まず、本発明の基本的な発想について説明する。流体内に含まれる気泡が表面に達するまでに発する音は、大きく分けて2種類存在している。その第1は、流体内における気泡変形により生じるマイクロ振動波である。その第2は、表面張力を破ったときに生じる破裂音である。一般的に知られている研究においても、ニードルバルブの直径(気泡の大きさ)を変えた実験が行われており、周波数が数百Hzの周波数帯と、数千Hzの周波数帯とに分けて計測が行われている。前者は音のパワーに依存する周波数帯であり、後者は気泡の径に依存する周波数帯である。
【0026】
上記流体内に含まれる気泡が表面に達するまでに発する音に対して、周波数を横軸にとり、パワースペクトル密度を縦軸にとったパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを作成する。揚げ物の場合には、揚げ始めに近いときには、泡の大きさが小さく、パワースペクトル密度−周波数曲線は、
図1に示す如くになる。揚げ上がりに近付くにつれて泡の大きさが大きくなり、パワースペクトル密度−周波数曲線は、
図2に示す如くになる。
【0027】
図1と
図2から明らかなように、パワースペクトル密度−周波数曲線には、2大凸部が現れる。2大凸部のうち、周波数が低い方を凸部Lとし、周波数が高い方を凸部Hとする。凸部Lの最大点は、概ね350Hz程度であり周波数の移動はない。凸部Hの最大点は、上げ始めにおいて1200Hz〜1300Hz程度である。揚げ上がりに近付くにつれて凸部Hの最大点が低周波数側へ移動する。揚げ上がりの場合には、凸部Hの最大点は、概ね900Hz〜1000Hzとなる。この移動が概ね停止したときを揚げ上がりの調理タイミングとすることができる。
【0028】
また、例えば常温から油の温度を上昇させた場合には、凸部Lのパワースペクトル密度が上昇する。予め、油の温度により具材投入の調理タイミングのときに、パン粉やてんぷらの衣液を用いた実験により、その時における凸部Lのパワースペクトル密度を得ておくことができる。つまり、凸部Lの変化が
図3のようであり、温度が低いときにパワースペクトル密度の値がAである。具材投入の調理タイミングのときにパワースペクトル密度の値が上昇しBとなると、これを得て記憶しておく。この値は、後述する演算処理部20Aが保持しておくことができる。
【0029】
以上のような揚げ物における油の泡によるパワースペクトル密度−周波数曲線に生じる現象を前提に本発明に係る調理補助装置の実施形態は、
図4に示すように構成することができる。この実施形態には、マイクロフォンなどにより構成される泡音収集手段11が備えられる。また、揚げ物の具材名称を入力するための入力手段12が備えられる。入力手段12は、キーボードやタッチパネルなどにより構成することができる。
【0030】
本実施形態に係る調理補助装置には、ハードディスク装置などの外部記憶装置13が備えられる。また、この調理補助装置には、出力手段14が備えられている。出力手段14は、音声により報知を行う手段(スピーカなど)、光により報知を行う手段(発光素子など)、文字を表示して報知を行う手段(ディスプレイ装置)、サイレン吹鳴により報知を行う手段(サイレン吹鳴装置)、携帯端末へ電子メールを送信して報知を行う手段(メール送信部)、の少なくとも1つを有するように構成することができる。
【0031】
本実施形態に係る調理補助装置には、CPUと主メモリとインタフェースなどのコンピュータにより構成される中央制御部20が備えられている。中央制御部20にはCPUと主メモリなどにより構成され、調理補助に関する処理を行い、各部を統括制御する演算処理部20Aと、インタフェースに相当するコントローラ21〜24が備えられている。
【0032】
コントローラ21は、泡音収集手段11から泡音信号を所定のサンプリング速度により取り込み、A/D変換して演算処理部20Aへ送出する。コントローラ22は、入力手段12により出力される具材の名称などの情報を取り込み演算処理部20Aへ送出する。
【0033】
コントローラ23は、演算処理部20Aの制御により外部記憶装置13から情報を読み出し、また、演算処理部20Aの制御により書き込みを指示された情報を外部記憶装置13へ書き込む。コントローラ24は、演算処理部20Aの制御により出力手段14から調理タイミングの検出に対応する所要の通知内容を出力させるように動作する。
【0034】
演算処理部20Aには、プログラムにより実現される、周波数分析手段31、グラフ作成手段32、調理タイミング検出手段33、報知制御手段34、履歴情報蓄積手段35、報知タイミング値算出手段36が備えられている。周波数分析手段31は、泡音収集手段11により収集された泡音の周波数分析を行うものである。グラフ作成手段32は、上記周波数分析の結果に基づき、周波数を横軸にとり、パワースペクトル密度を縦軸にとったパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを作成するものである。
【0035】
調理タイミング検出手段33は、上記グラフにおけるパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化に基づき調理タイミングを検出するものである。調理タイミング検出手段33は、パワースペクトル密度−周波数曲線に現れる2大凸部のうち周波数が高い方の凸部における最大点の周波数が第1の所定値以下になるときに揚物の揚げ上がりの調理タイミングを検出する。調理タイミング検出手段33は、パワースペクトル密度−周波数曲線に現れる2大凸部のうち周波数が低い方の凸部における最大点のパワースペクトル密度が第2の所定値以上になるときに具材投入の調理タイミングを検出する。
【0036】
報知制御手段34は、上記調理タイミング検出手段33による調理タイミングの検出に対応する所要の通知内容を出力手段14から報知するものである。履歴情報蓄積手段35は、調理の具材情報毎にパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化情報の履歴情報を外部記憶装置13へ蓄積するものである。
【0037】
報知タイミング値算出手段36は、上記調理の具材情報毎に履歴情報を用いて統計処理を行って、上記報知タイミング値を算出する。報知制御手段34は、この報知タイミング値算出手段36により算出された報知タイミング値に基づき報知を行うものである。調理の材料が二度揚げの場合には、上記報知タイミング値算出手段36は、一度目の調理タイミングに対応する第1の報知タイミング値と、二度目の調理タイミングに対応する第2の報知タイミング値とを算出する。演算処理部20Aは具材名と、その具材が2度揚げするものであるかの情報を保持しているものとする。
【0038】
以上のように構成された本実施形態に係る調理補助装置は、
図5、
図6に示すフローチャートに対応するプログラムにより動作を行う。油の入った揚げ物の容器に加熱を開始し、調理人がパン粉などを投入する(N11)。泡音収集手段11により泡音の収集が行われ(S11)、コントローラ21がA/D変換した情報を得て、演算処理部20Aが周波数分析手段31として収集された泡音の周波数分析を行う(S12)。
【0039】
更に、演算処理部20Aはグラフ作成手段32として、周波数分析の結果に基づき、周波数を横軸にとり、パワースペクトル密度を縦軸にとったパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを作成する(S13)。グラフの凸部Lの変化において、パワースペクトル密度の値が具材投入の調理タイミングを示す例えば
図3のB(第2の所定値)となったかを検出する(S14)。
【0040】
上記ステップS14においてNOとなると、調理人による処理N11へ戻ってステップS11〜S14の処理が繰り返される。ステップS14においてYESへ分岐すると、具材投入の調理タイミングであることを知らせるアナウンスなどの出力を行う(S15)。
図5により示した以上の処理が、具材投入の調理タイミングであることを知らせるまでの処理である。
【0041】
具材投入の調理タイミングであることが知らされると、
図6に示されるフローチャートの処理が実行される。調理人等により揚げ物の具材名や2度上げの第1回目か第2回目かなどが入力手段12から入力され、具材の投入が行われる(N21)。泡音収集手段11により泡音の収集が行われ(S21)、コントローラ21がA/D変換した情報を得て、演算処理部20Aが周波数分析手段31として収集された泡音の周波数分析を行う(S22)。
【0042】
更に、演算処理部20Aはグラフ作成手段32として、周波数分析の結果に基づき、周波数を横軸にとり、パワースペクトル密度を縦軸にとったパワースペクトル密度−周波数曲線のグラフを作成する(S23)。演算処理部20Aは履歴情報蓄積手段35として、調理の具材情報毎にパワースペクトル密度−周波数曲線に現れる凸部の経時的変化情報の履歴情報を外部記憶装置13へ蓄積する(S24)。
【0043】
更に、演算処理部20Aは報知タイミング値算出手段36として、調理の具材情報毎に履歴情報を用いて統計処理を行って、報知タイミング値を算出する(S25)。この場合、調理の具材が二度揚げの場合には、演算処理部20Aは報知タイミング値算出手段36として、一度目の調理タイミングに対応する第1の報知タイミング値と、二度目の調理タイミングに対応する第2の報知タイミング値とを算出する。
【0044】
上記の統計処理とは、例えば、サンプリングが1/1000秒であるとして、パワースペクトル密度−周波数曲線を1/1000秒毎に作成して、凸部Hの最大点が低周波数側へ移動する移動量(周波数の差)を求め、隣接するN(例えば50)点の移動平均を求める処理である。或いは、上記凸部Hの最大点が低周波数側へ移動する移動量(周波数の差)から平均値と標準偏差を求める処理である。
【0045】
そして、移動平均の値の変化を比べて、所定値以下になったときの凸部Hの最大点の周波数を報知タイミング値とする。また、統計処理が平均値と標準偏差を求める処理である場合には、凸部Hの最大点が低周波数側へ移動する移動量(周波数の差)が、平均値から標準偏差を引いた値が所定値以下になったときの凸部Hの最大点の周波数を報知タイミング値とする。これは、例示に過ぎず、揚げ上がりに近付くにつれて凸部Hの最大点が低周波数側へ移動するが、この移動が概ね停止したときを揚げ上がりの調理タイミング値とすることができる。
【0046】
上記所定値を予め定めておくことにより、1回目の調理のときから報知タイミング値を求めることができる。2回目以降となると、1回目から2回目以降までの報知タイミング値の平均を求めるようにしても良い。1回目の調理のときから以降の調理のときのパワースペクトル密度−周波数曲線を蓄積しておき、統計処理を行っても良いが、各回目の調理のときの報知タイミング値を蓄積しておくだけで好適な統計処理を行うことができる。
【0047】
ステップS25に続いて、報知タイミング値(第1の所定値)となったか否かを検出し(S26)、YESへ分岐すると、具材の揚げ時の調理タイミングであることを知らせるアナウンスなど、所要の出力を行う(S27)。この場合、2度揚げの具材である時には、1度揚げ目の揚げ上がりであるか2度揚げ目の揚げ上がりであるかを区別するアナウンスなどの出力を行う。
【0048】
以上のように本実施形態によれば、パワースペクトル密度−周波数曲線のグラフの凸部の変化に基づき調理タイミングを検出するので、調理の具材の種類や大きさなどに関係なく、揚げ上がりや具材投入のタイミングを適切に検出可能である。従って、特に調理に関する経験や知識がなくとも、失敗なく適切な具材の投入が可能であり、揚げ上がりの揚げ物を提供することができる。
【0049】
なお、具材投入のタイミングは、通常単純に温度により決まるものと言われているので、油の温度を計測する温度計を設け、その温度が所定値となることを演算処理部20Aにおいて検出し、その旨を出力手段14から出力するようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
11 泡音収集手段
12 入力手段
13 外部記憶装置
14 出力手段
20 中央制御部
20A 演算処理部
21〜24 コントローラ
31 周波数分析手段
32 グラフ作成手段
33 調理タイミング検出手段
34 報知制御手段
35 履歴情報蓄積手段
36 報知タイミング値算出手段