特許第6800545号(P6800545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝情報システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6800545-AD変換装置及びAD変換方法 図000002
  • 特許6800545-AD変換装置及びAD変換方法 図000003
  • 特許6800545-AD変換装置及びAD変換方法 図000004
  • 特許6800545-AD変換装置及びAD変換方法 図000005
  • 特許6800545-AD変換装置及びAD変換方法 図000006
  • 特許6800545-AD変換装置及びAD変換方法 図000007
  • 特許6800545-AD変換装置及びAD変換方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800545
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】AD変換装置及びAD変換方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/38 20060101AFI20201207BHJP
   H04N 5/378 20110101ALI20201207BHJP
【FI】
   H03M1/38
   H04N5/378
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-75380(P2018-75380)
(22)【出願日】2018年4月10日
(65)【公開番号】特開2019-186746(P2019-186746A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】永田 真一
(72)【発明者】
【氏名】花田 正亮
【審査官】 竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−503253(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/075772(WO,A1)
【文献】 特開2014−107769(JP,A)
【文献】 特開2008−042885(JP,A)
【文献】 特開2011−259219(JP,A)
【文献】 実開昭62−071928(JP,U)
【文献】 特開2015−106810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00−1/88
H04N 5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号を逐次比較方式のADコンバータの参照電圧と比較する1つのコンパレータと、
前記コンパレータの全判定範囲を複数の区分判定範囲に区分する境界の電圧に基づいて前記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を、前記区分判定範囲の数である区分数に応じた比較器を用いて検出する区分検出手段と、
前記区分検出手段が検出した前記区分判定範囲に対応して、複数に区分した区分参照電圧から所要の1つの区分参照電圧を選択して前記コンパレータの参照電圧に設定する参照電圧選択手段と、
前記コンパレータの出力を受けて、AD変換のスタートから当該コンパレータの出力が変化するまでの間において、与えられるクロックに基づきディジタル値を得るディジタル値出力手段と、
を具備し、
前記コンパレータの参照電圧に設定する前記区分参照電圧は、区分判定範囲の境界において隣接する区分参照電圧と重複する領域を有していることを特徴とするAD変換装置。
【請求項2】
前記区分検出手段は、設定される区分数に応じて区分した境界の電圧に基づいて前記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を検出することを特徴とする請求項1に記載のAD変換装置。
【請求項3】
前記区分検出手段は、設定される境界の電圧に基づいて区分し、この電圧に基づいて前記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を検出することを特徴とする請求項1または2に記載のAD変換装置。
【請求項4】
前記ディジタル値出力手段に与えるクロックの周波数が変更可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のAD変換装置。
【請求項5】
1つのコンパレータが、アナログ信号を逐次比較方式のADコンバータの参照電圧と比較し、
区分検出手段が、前記コンパレータの全判定範囲を複数の区分判定範囲に区分する境界の電圧に基づいて前記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を、前記区分判定範囲の数である区分数に応じた比較器を用いて検出し、
参照電圧選択手段が、前記区分検出手段が検出した前記区分判定範囲に対応して、複数に区分した区分参照電圧から所要の1つの区分参照電圧を選択して前記コンパレータの参照電圧に設定し、
ディジタル値出力手段が、前記コンパレータの出力を受けて、AD変換のスタートから当該コンパレータの出力が変化するまでの間において、与えられるクロックに基づきディジタル値を得るAD変換方法であって、
前記コンパレータの参照電圧に設定する前記区分参照電圧は、区分判定範囲の境界において隣接する区分参照電圧と重複する領域を有していることを特徴とするAD変換方法。
【請求項6】
前記区分判定範囲の検出の際には、設定される区分数に応じて区分した境界の電圧に基づいて前記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を検出することを特徴とする請求項5に記載のAD変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、逐次比較方式のAD変換装置及びAD変換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、デルタシグマ型AD変換装置と呼ばれるADCの構成例を示すブロック図である。このデルタシグマ型AD変換装置は、アナログ積分器101と、量子化器102と、DAコンバータ(DAC)103と、加算器104とを備え、入力端子に入力されるアナログ信号SAをディジタル信号に変換して出力端子からディジタル信号SBとして出力するものである。
【0003】
アナログ積分器101は、入力端子に入力されたアナログ信号SAと、DAコンバータ103から出力されたアナログ信号とを加算した信号を積分して出力する。アナログ積分器101の出力は、量子化器102へ与えられる。この量子化器102は、アナログ積分器101で積分され、出力された積分電圧を1ビットのディジタル信号SBに変換して出力する。DAコンバータ103は、量子化器102から出力される信号をDA変換してアナログ信号を得て、このアナログ信号を加算器104へ出力する。加算器104は、入力されるアナログ信号SAと、DAコンバータ103でDA変換された信号とを加算してアナログ積分器101へ出力するものである。
【0004】
ここで、加算器104における加算は、アナログ信号SAと、DAコンバータ103でDA変換された信号との差分を得るものである。この求められた差分がアナログ積分器101で積分される。そして、この積分された信号が量子化器102において、1つの閾値(比較電圧)と比較されて、1ビットのディジタル信号SBに変換される。
【0005】
このデルタシグマ型AD変換装置は、多ビットの出力を得るためには多くの閾値を出力する回路及びその閾値を用いた比較を行う比較器が必要であり、回路構成が複雑化する問題があった。
【0006】
図2に示す逐次比較型AD変換装置は、アナログ入力信号をサンプルホールドアンプ201によってサンプルホールドし、コンパレータ202へ与えるように構成されている。コンパレータ202は、サンプルホールドされたアナログ信号を参照電圧と比較し、例えば、参照電圧がサンプルホールドされたアナログ信号より小さければHレベルの信号を出力し、参照電圧がサンプルホールドされたアナログ信号より大きければLレベルの信号を出力する。
【0007】
コンパレータ202の出力は逐次比較レジスタ203へ送られる。逐次比較レジスタ203は、送られたコンパレータ202の出力からあるビットのディジタル値を得る。
逐次比較レジスタ203の出力は、DAコンバータ204によってディジタルデータからアナログ信号へ変換されてコンパレータ202の参照電圧とされる。コンパレータ202、逐次比較レジスタ203、DAコンバータ204のループにおいてMSBからLSBまで各ビットを順に変えて行き、ビット数分だけ繰り返すことで全ビットの比較が完了する。タイミングコントロール部205は、サンプルホールドアンプ201によるサンプルホールドのタイミング制御や逐次比較レジスタ203におけるタイミング制御やビット制御を行う。
【0008】
図2に示す逐次比較型AD変換装置によればコンパレータは1つで済むが、ビットを順番に比較して行くため、そのシーケンスの最中にサンプリングした入力電圧信号をサンプルホールドアンプによって保持しておく必要があり、保持した入力電圧値が動くことで正しい変換値が得られないといった問題点がある。また、このAD変換装置では、逐次比較を行うためにD/A変換が必要であり、分解能を高めることでD/A変換部の規模が大きくなり、素子のプロセスばらつきが問題となる。
【0009】
また、逐次比較型AD装置では、参照電圧として図3に示すようなRAMP波の電圧を用いるものもある。このRAMP波の電圧が入力アナログ信号のレベル以下となると、コンパレータが出力OUTを反転させる(図3のt1)。この装置では、RAMP波による階段制御が開始されてから、コンパレータが反転するまでの時間から使用したクロック数を逆算してディジタル値を割り出す。
【0010】
上記の手法によれば、出力結果として得るディジタル信号を多ビット化すると、RAMP波の段数が増え比較する時間(応答時間)が増える。そのため応答時間を変えずにディジタル信号のビット数を増やす場合は、クロックの高速化が必要となる。ただしアナログ回路(例えば電流源)のスイッチング速度の限界があるため、クロックの高速化には限界がある。
【0011】
このように、従来技術では「クロックの高速化」、「ディジタル化(ADC)の応答時間」、「ディジタル信号の多ビット化」のそれぞれでトレードオフの関係がある。更に、ディジタル信号の多ビット化については、1ビット増やす毎に2倍のRAMP波が必要となるため、増やすビット数の増加に応じて非常に時間を要する装置となってしまう問題がある。
【0012】
特許文献1には、変換速度が遅くなりがちであるという問題に対応するAD変換装置が示されている。この装置では、入力電圧範囲を分割した第1分解能より粗い第2分解能に対応したステップで、信号レベルが順次変化していく参照信号を生成する参照信号生成回路を用いる。更に、アナログ信号と参照信号生成回路により生成された参照信号とを比較する比較回路CPと、比較回路による比較結果が変化するまでの時間に応じて、ディジタル信号を生成するディジタル信号生成回路を備える。参照信号生成回路は、比較回路の比較結果が変化すると、ディジタル信号生成回路に保持されているディジタル信号の分解能を第1分解能にするため、または第1分解能に近づけるため、別の参照信号を比較回路に供給する。
【0013】
また、特許文献2には、電圧変動の小さなアナログ信号に対する分解能を充分に向上させることができるA/D装置が開示されている。このA/D装置、入力アナログ電圧と比較電圧の大小を判定する比較回路CMPと、該比較回路の判定結果を順次取り込むレジスタSARと、該レジスタの値を電圧に変換し前記比較電圧とするローカルDA装置とを備えた逐次比較型AD装置である。更に、第1の電圧群の中から一つを選択してA/D変換可能な電圧範囲の上限値を与える第1基準電圧としてローカルDA装置へ供給する選択手段SEL1、電圧値の低い第2の電圧群の中から一つを選択して電圧範囲の下限値を与える第2基準電圧として供給する選択手段SEL2、前記第1選択手段と第2選択手段における選択状態を決定する値を設定するレジスタREG1を設けている。
【0014】
更に、特許文献3には、アナログ/ディジタル変換を高速に行うADCが開示されている。このADCでは、アナログ/ディジタル変換器が、第1の変換部と、選択器と、第2の変換部とを備える。第1の変換部は、第1の期間にアナログ信号をアナログ/ディジタル変換することによって上位ビットディジタル信号を生成する。選択器は、上位ビットディジタル信号に基づいて1以上の参照電圧を選択することによって、フルスケールに比べて電圧範囲の狭い選択参照電圧群を得る。第2の変換部は、選択参照電圧群を用いてアナログ信号をアナログ/ディジタル変換することによって下位ビットディジタル信号を生成する。このADCでは、第1の期間を、アナログ信号が第1の変換部及び第2の変換部の合計の分解能に対応する精度までセットリングするよりも前に開始するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−54256号公報
【特許文献2】特開2010−109963号公報
【特許文献3】特開2015−103820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記のようなAD変換装置の現状に鑑みてなされたもので、その目的は、多ビットのディジタル信号が必要になったときに、RAMP波のターゲットを絞って比較することが可能であり、これによって高速化を図ることが可能なAD変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るAD変換装置は、アナログ信号を逐次比較方式のADコンバータの参照電圧と比較する1つのコンパレータと、前記コンパレータの全判定範囲を複数の区分判定範囲に区分する境界の電圧に基づいて前記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を、前記区分判定範囲の数である区分数に応じた比較器を用いて検出する区分検出手段と、前記区分検出手段が検出した前記区分判定範囲に対応して、複数に区分した区分参照電圧から所要の1つの区分参照電圧を選択して前記コンパレータの参照電圧に設定する参照電圧選択手段と、前記コンパレータの出力を受けて、AD変換のスタートから当該コンパレータの出力が変化するまでの間において、与えられるクロックに基づきディジタル値を得るディジタル値出力手段とを具備し、前記コンパレータの参照電圧に設定する前記区分参照電圧は、区分判定範囲の境界において隣接する区分参照電圧と重複する領域を有していることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るAD変換装置では、前記区分検出手段は、設定される区分数に応じて区分した境界の電圧に基づいて前記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を検出することを特徴とする。
【0020】
本発明に係るAD変換装置では、前記区分検出手段は、設定される境界の電圧に基づいて区分し、この電圧に基づいて前記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を検出することを特徴とする。
【0022】
本発明に係るAD変換装置では、前記ディジタル値出力手段に与えるクロックの周波数が変更可能であることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るAD変換方法は、1つのコンパレータが、アナログ信号を逐次比較方式のADコンバータの参照電圧と比較し、区分検出手段が、前記コンパレータの全判定範囲を複数の区分判定範囲に区分する境界の電圧に基づいて前記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を、前記区分判定範囲の数である区分数に応じた比較器を用いて検出し、参照電圧選択手段が、前記区分検出手段が検出した前記区分判定範囲に対応して、複数に区分した区分参照電圧から所要の1つの区分参照電圧を選択して前記コンパレータの参照電圧に設定し、ディジタル値出力手段が、前記コンパレータの出力を受けて、AD変換のスタートから当該コンパレータの出力が変化するまでの間において、与えられるクロックに基づきディジタル値を得るAD変換方法あって、前記コンパレータの参照電圧に設定する前記区分参照電圧は、区分判定範囲の境界において隣接する区分参照電圧と重複する領域を有していることを特徴とする。
【0024】
本発明に係るAD変換方法では、前記区分判定範囲の検出の際には、設定される区分数に応じて区分した境界の電圧に基づいて前記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、多ビットのディジタル信号が必要になったときにも高速化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来例に係るデルタシグマAD変換装置の構成を示すブロック図。
図2】従来例に係る逐次比較型AD変換装置の構成を示すブロック図。
図3】RAMP波の電圧を用いる逐次比較型AD装置の動作を説明する波形図。
図4】本発明の第1の実施形態に係るAD変換装置の構成を示すブロック図。
図5】本発明の実施形態に係るAD変換装置の動作を説明する波形図。
図6】本発明の実施形態に係るAD変換装置の変形例の要部を示すブロック図。
図7】本発明の第2の実施形態に係るAD変換装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下添付図面を参照して、本発明に係るAD変換装置の実施形態を説明する。各図において、同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図4に第1の実施形態に係るAD変換装置の構成図を示す。本実施形態は、コンパレータ10と区分検出手段20と参照電圧選択手段30とディジタル値出力手段40とを具備している。
【0028】
コンパレータ10は、入力端子11から到来するアナログ信号を逐次比較方式のADコンバータの参照電圧と比較するものである。参照電圧は、参照電圧選択手段30により与えられる。
【0029】
区分検出手段20は、上記コンパレータ10の全判定範囲を複数の区分判定範囲に区分する境界の電圧に基づいて上記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を検出するものである。この区分検出手段20は、2つの比較器21、22を備え、比較器21は、入力端子11から到来するアナログ信号の電圧と閾値VthLを比較し、比較器22は、入力端子11から到来するアナログ信号の電圧と閾値VthHを比較する。閾値VthLと閾値VthHは、2つの抵抗R1、R2により定電流源の出力電圧を分割してコンパレータ10へ与える閾値供給源23より与えられる。
【0030】
図5(a)に示すように、コンパレータ10の判定上限電圧をVchとし、コンパレータ10の判定下限電圧をVclとするとき、閾値VthHと閾値VthLにより、コンパレータ10の全判定範囲(判定上限電圧をVchと判定下限電圧をVclの間)を3つの区分判定範囲に区分する。区分は3等分であっても良いし、3等分でなくとも良い。
【0031】
上記の閾値VthHと閾値VthLを変化させるために、抵抗R1、R2を可変抵抗により構成し、この可変抵抗をコントロールするコントローラおよびコントローラに抵抗値を与える抵抗設定部を設けても良い。これによって、上記区分検出手段20は、設定される境界の電圧に基づいて区分し、この電圧に基づいて上記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を検出することになる。
【0032】
区分検出手段20Aは、全判定範囲を区分する区分数に応じた比較器を用いて検出を行うようにしても良い。例えば、図6に示されるようにN個の比較器21、22、・・・、2Nと、この比較器21、22、・・・、2Nに閾値を与える閾値供給源23−1〜23−Nと、セレクタ24を備えた区分比較器を用意し、区分数をセレクタ24に与えて必要数の比較器を比較器21、22、・・・、2Nを選択し、選択された比較器の出力を出力端子25から出力するように構成する。また、前述の通り、抵抗設定部により閾値供給源23−1〜23−Nの抵抗を変化させて所要の閾値を上記セレクタ24が選択する比較器へ与えて区分数に応じた比較器を用いて検出を行うように構成することができる。この場合には、区分検出手段20Aは、設定される区分数に応じて区分した境界の電圧に基づいて上記アナログ信号の電圧が属する区分判定範囲を検出することになる。
【0033】
図4の参照電圧選択手段30は、上記区分検出手段20が検出した上記区分判定範囲に対応して、複数に区分した区分参照電圧から所要の1つの区分参照電圧を選択して上記コンパレータ10の参照電圧に設定するものである。図4の実施形態では、区分数が3であるため、従来は図3に示されるようなコンパレータ10の全判定範囲に亘って1本であった参照電圧としてのRAMP波を3区割して、RAMP波・高(区分参照電圧A)と、RAMP波・中(区分参照電圧B)と、RAMP波・低(区分参照電圧C)とを、RAMP波出力部33において作成出力可能である。区分判定範囲の境界において隣接する区分参照電圧と重複する領域を有している(図5(b))。これによって、それぞれの境界においてディジタル値を得て行くときの直線性を確保し、この境界部にアナログ信号の電圧が位置しているときにも精度良くディジタルデータを得ることができる。
【0034】
参照電圧選択手段30のRAMP波選択部31は、比較器21、22の出力を受けて上記3つのRAMP波のいずれかを選択することを決定する。比較器21において入力アナログ信号が閾値VthL以下であればLレベルを出力し、閾値VthLを超えるとHレベルを出力し、比較器22において入力アナログ信号が閾値VthH以下であればLレベルを出力し、閾値VthHを超えるとHレベルを出力するものとする。この2つの出力の組合せで上記3つのRAMP波のいずれかを選択することを決定する。
【0035】
ここでは図5(b)に示すように、入力アナログ信号が閾値VthHと閾値VthHの間にあり、比較器21、22の出力が(H,L)であるから、RAMP波・中(区分参照電圧B)が選択される。つまり、参照電圧選択手段30のRAMP波制御部32は、RAMP波選択部31からRAMP波・中(区分参照電圧B)を指示する信号を受けて、RAMP波・中(区分参照電圧B)の最上位電圧に対応するディジタル値をRAMP波出力部33へ与える。
【0036】
RAMP波制御部32は所定周波数のクロックを受けての最上位電圧に対応するディジタル値からカウントダウンするカウンタとすることができる。そして、RAMP波出力部33は、RAMP波制御部32から送られるディジタル値に対応するアナログ信号を区分参照電圧としてコンパレータ10へ与える。そのため、RAMP波制御部32とRAMP波出力部33は、ディジタル値をアナログ信号に変換するAD変換器とすることができる。この結果、コンパレータ10には、図5(b)に示したRAMP波・中(区分参照電圧B)が区分参照電圧として与えられることになる。
【0037】
コンパレータ10の出力には、コンパレータ10の出力が反転するまでカウントアップするカウンタなどにより構成されるディジタル値出力手段40が接続されている。このディジタル値出力手段40に与えるクロックの周波数が変更可能である。このディジタル値出力手段40には、RAMP波・高(区分参照電圧A)と、RAMP波・中(区分参照電圧B)と、RAMP波・低(区分参照電圧C)とのいずれが選択されたかに応じてディジタル値がプリセットされることができる。
【0038】
本実施形態によって、多ビットのディジタル出力が必要な装置においても、区分参照電圧の範囲を狭くしてディジタル化が可能であるので、高速なディジタル変換が可能である。また、局所性が高い(変動範囲が狭い)アナログデータについては、区分検出手段20の区分判定範囲を狭くして区分参照電圧の範囲を狭めることができ、この場合にも極めて早く精度の高いディジタル値を得ることができる。
【0039】
図7に、第2の実施形態に係るAD変換装置の構成を示す。この実施形態は、例えばRAMP波・高(区分参照電圧A)と、RAMP波・中(区分参照電圧B)と、RAMP波・低(区分参照電圧C)の区分範囲の長さが同じに設定した場合に対応する。この実施形態は、参照電圧選択手段30Aが第1の実施形態と異なっている。参照電圧選択手段30AのRAMP波制御部32Aは、例えば1から所定値までのディジタル値をクロックに応じて出力する。この出力を受けたRAMP波出力部33AはRAMP波制御部32Aから出力されたディジタル値をアナログ信号へ変換して、抵抗RA、抵抗RB、抵抗RCへ出力する。
【0040】
RAMP波出力部33Aの出力端子の電位は、抵抗RA、抵抗RB、抵抗RCに応じてオフセット値が与えられた状態のアナログ信号とされる。抵抗RAの上端側から出力される電圧はRAMP波・高(区分参照電圧A)に対応しており、抵抗RBの上端側から出力される電圧はRAMP波・中(区分参照電圧B)に対応しており、抵抗RCの上端側から出力される電圧はRAMP波・低(区分参照電圧C)に対応しており、RAMP波制御部32Aのディジタル値が変化されることに応じてRAMP波・高(区分参照電圧A)、RAMP波・中(区分参照電圧B)、RAMP波・低(区分参照電圧C)の変化をする。
【0041】
上記RAMP波・高(区分参照電圧A)、RAMP波・中(区分参照電圧B)、RAMP波・低(区分参照電圧C)はセレクタ35において、RAMP波選択部31から出力される指示信号により何れかが選択される。
【0042】
この第2の実施形態も第1の実施形態と同様に、多ビットのディジタル出力が必要な装置においても、区分参照電圧の範囲を狭くしてディジタル化が可能で、高速なディジタル変換が可能であり、更に、局所性が高い(変動範囲が狭い)アナログデータについては、区分検出手段20の区分判定範囲を狭くして区分参照電圧の範囲を狭めることができ、この場合にも極めて早く精度の高いディジタル値を得ることができる、という効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 コンパレータ
11 入力端子
20 区分検出手段
20A 区分検出手段
21 比較器
22 比較器
23 閾値供給源
24 セレクタ
25 出力端子
30 参照電圧選択手段
30A 参照電圧選択手段
31 RAMP波選択部
32 RAMP波制御部
32A RAMP波制御部
33 RAMP波出力部
33A RAMP波出力部
35 セレクタ
40 ディジタル値出力手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7