(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
センサデータから広域的シーンコンテクストを推定する前記ステップでは、前記少なくとも一つのセンサが他の乗り物の挙動及び又は状態を記録することにより前記広域的シーンコンテクストデータが生成され、該記録された挙動からの交通状態の判定が実行される、
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
前記処理手段は、前記乗り物に搭載された少なくとも一つの局所センサによって取得されるセンサデータから広域的シーンコンテクストを推定すること、および、前記乗り物の外部から受け取られたデータから前記広域的シーンコンテクストを推定すること、のうちの少なくとも一つを実行することによって広域的シーンコンテクストデータを生成するよう構成された広域的シーンコンテクスト推定ユニットを備える、
ことを特徴とする、請求項4に記載の、乗り物のドライバを支援するためのシステム。
前記広域的シーンコンテクスト推定ユニットは、前記少なくとも一つのセンサが他の乗り物の挙動及び又は状態を記録することにより前記広域的シーンコンテクストデータを生成するよう構成され、該記録された挙動からの交通状態の判定が実行される、
ことを特徴とする、請求項5に記載の、乗り物のドライバを支援するためのシステム。
コンピュータまたはディジタル信号プロセッサ上で実行されたときに、請求項1から3のいずれか1項に記載のステップを実行するプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
コンピュータまたはディジタル信号プロセッサ上で実行されたときに、請求項1から3のいずれか1項に記載のステップを実行するプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムを格納している機械読み取り可能な媒体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物のための自動化されコンピュータ化されたドライバ支援の分野に関する。本発明は、特に広域(グローバル)シーンのコンテクスト(context、状況)を考慮してターゲット乗り物の未来の動き挙動を計算により予測する方法および対応するプログラム、そのようなシステムを装備した乗り物およびシステムそのものに関係する。
【0002】
乗り物における自動化ドライバ支援システムは多くの場合乗り物の環境を物理的に感知するセンサおよび計算ユニットを備え、計算ユニットはセンサ出力信号を受け取り、ドライバを支援して乗り物をガイドする出力信号を計算する。この出力信号は光学的または音響的な表示手段および/またはこの乗り物のアクチュエータ(actuator、作動装置)を制御するためのコントローラユニットに供給されることができる。この乗り物のアクチュエータはたとえばエアバッグシステムのインフレータのような安全装置の一部であることができ、またはたとえばブレーキ、アクセル、ハンドルのような乗り物の動きに影響するアクチュエータであることができる。
【0003】
「適応性クルーズコントロール」(ACC)システム(たとえばISO―Norm 15622:2010に記載されている)のようなドライバ支援システムは、ドライバの快適性および安全性を向上させる。ACCシステムは特にホスト乗り物の長軸方向の制御を行うのに使用され、たとえばドライバによって示されたターゲット速度に関して使用され、たとえば車、モーターバイク、バイク、トラックのような他の乗り物または歩行者などの他の交通オブジェクトに及ぶ。ドライバ支援システム、たとえばレーン(車線)変更支援は、予測システムの支援を有する乗り物の交通環境における他の参加者の未来の挙動の予測をベースとする。
【0004】
「ホスト乗り物」という用語は、以下の記述において、本発明に従う予測システムを搭載し、交通関係のデータを取得するためのセンサおよび/またはさらなる手段、並びに少なくとも一つの他の交通乗り物がとりうるまたはとりそうな未来の挙動を計算することができる計算システムを装備した交通状況における乗り物に使用する。ホスト乗り物は、エゴ乗り物(自乗り物、自車)と呼ばれることもある。
【0005】
センサは、ホスト乗り物の環境を感知することにより、ある時点での交通シーンを表現するに適した情報を提供することができる任意の手段でありうる。そのようなセンサはカメラ、レーダ、ライダ(lidar)のようなものであることができる。データ取得手段は、一つまたは複数のセンサその他のデータ源によって提供される交通シーンを表現する任意の種類の情報を取得するためのドライバ支援システムの一部分を構成する。
【0006】
ターゲットオブジェクトまたはターゲット乗り物は未来の挙動を予測すべきオブジェクトまたは乗り物である。ターゲットオブジェクトはセンサによって観察されることができ、またはターゲットオブジェクト/乗り物に関する情報はデータ取得手段によって他のデータ源から得ることもできる。
【0007】
よく知られているドライバ支援システムの一つの問題は、物理的な予測によって認識される他の交通乗り物の挙動だけをシステムが考慮に入れることである。たとえばもしターゲットオブジェクト(ホスト乗り物の環境内の乗り物で、ホスト乗り物の一つまたは複数のセンサによって物理的に感知される)の一つがレーンを変更しホスト乗り物のレーンを切るか切って他のレーンに移るならば、他の交通オブジェクトを観察しているホスト乗り物はそのようなレーン変更が確実になった後でのみ反応する。その結果、ホスト乗り物の反応が遅れ交通の流れ、特にホスト乗り物のドライバの快適性にマイナスの影響を与える。
【0008】
物理的予測は、変数を提供する直接的なインジケータに依拠し、これらは検出すべき挙動が既に開始しておりさえすれば観察することができる。たとえばレーン変更を予測するためには直接的なインジケータは、軸方向の速度、レーンに対する横位置、レーンに対して変化する方位、または他の交通参加者に対する変化する方位である。
【0009】
EP 2 562 060 A1は、そのような物理的予測プロセスに加えて、いわゆるコンテクストベースの予測を提案する。コンテクストベースの予測では、ターゲットオブジェクトの未来の動き挙動の確率が計算される。この未来の挙動は物理的予測の結果によって確認されるか棄却される。ありうる未来の動き挙動の確率を計算するためには、間接的なインジケータが使用され、これらはターゲットオブジェクトの挙動が開始してしまっているときに挙動の観察を可能にするばかりでなく、未来の動き挙動が予測される交通シーンについての情報を与える。
【0010】
間接的インジケータは、予測されるべき未来の動き挙動が始まる前に観察可能な変数を提供する。ここでは間接的インジケータを直接的インジケータの集合を含まないすべてのありうるインジケータの集合と定義する。
【0011】
ターゲットオブジェクトの未来の動き挙動に対する計算された確率から、ターゲットオブジェクトの特定の挙動を生じさせそうな交通状況を認識することが可能である。
【0012】
IEEEインテリジェント交通システムのトランザクション(IEEE transactions on intelligent transportation systems) ボリュームPP、99号、1〜11ページ、「シナリオ特定モデルの組み合わせによる広域的挙動予測」著者:S.ボーニン、T.ヴァイスワング、F.クメリッヒ、およびJ.シュムードリッヒ、IEEE 2014、ISSN 1524-9050は、高速道路シナリオにおいてレーン変更予測のための完全な実施に基づく品質および範囲を向上させるための全体的な特定の分類標識(クラシファイア、classifiers)の組み合わせを論じている。
【0013】
このような手法はEP 2 562 060 A1でも引き継がれているが、一つの問題点は、コンテクストベースの予測ではホスト乗り物の交通状況の現在の状況だけが考慮されることである。したがって、特定の時点においてコンテクストベースの予測は、たとえば、隣のレーン上にあるターゲット乗り物がターゲット乗り物と同じレーンを移動する先行乗り物に素早く近づくので、隣のレーン上のターゲット乗り物がホスト乗り物のレーンに割り込む(cut-in、進入する)であろうという結果を与える。EP 2 562 060 A1によると、そのような状況ではターゲット乗り物は割り込んで低速の先行乗り物を追い越すと思われるので、ホスト乗り物の減速をもたらす。
【0014】
しかしそのような予測の基礎になる交通シーンはさらなる特徴によって特徴付けられることができる。ターゲット乗り物およびホスト乗り物が通行する道路は、同じ方向に最小の車間距離でクルーズする多くの乗り物によって混雑しているか、大きな車間距離でクルーズする少数の乗り物だけが存在するかもしれない。
【0015】
既知のコンテクストベースの予測は、交通の密度とは独立に結果を提供する。
【0016】
この既知のコンテクストベースの予測が限界に達する状況の例を
図1Aおよび1Bを参照して説明する。
【0017】
図1Aおよび1Bではターゲット乗り物としての乗り物Aの挙動が予測される。乗り物Aは、複数のレーンをもつ道路の中央レーンを走行しており、同じレーン上を乗り物Aの速度よりも低速でクルーズしている乗り物Bに近づく。すべての図では実線の矢印の長さがそれぞれの乗り物の現在速度を示す。図の先行乗り物に近づきつつある状況においてターゲット乗り物Aの挙動を予測するため、3レーンの道路の左レーン上のギャップを求めるが、このギャップはあまり適切でない。なぜなら、ギャップの後端にいる乗り物E(ホスト乗り物)がターゲット乗り物Aの速度よりもかなり速い速度で近づきつつあるからである。
【0018】
図1Aにおいて道路は、小さな車間距離で乗り物Aと同じ方向に移動する多くの乗り物によって混雑している。図で乗り物Aは、求められたギャップが比較的小さいにもかかわらず、ホスト乗り物Eの前でレーン変更しようとしている。乗り物Aのドライバにとって減速するのではなく左レーンに変わるよりよいチャンスはおそらく来ないので、ギャップが比較的小さくてもこのギャップに割り込んでレーン変更する確率が増大する。
【0019】
図1Bの交通シーンは、概して大きな車間距離のいくつかの乗り物だけを示し、乗り物は乗り物Aと同じ方向に移動している。乗り物Aはホスト乗り物Eの後ろでレーンを変えようとしているが、
図1Aに描いたシーンとは異なり道路がすいているので図に描いたように進むことができる。
【0020】
従来技術の予測システムでは、交通状況の局所コンテクストが異なるとき、ターゲット乗り物の予測挙動が異なると推定される。少なくとも一つの他の交通参加者(ホスト乗り物Eまたはターゲット乗り物A以外を意味する)または自己乗り物のすぐ近くで認識されるインフラストラクチャが異なるなら、局所コンテクストが異なる。たとえば、先行乗り物のような他の交通参加者が異なるか、高速道路が環境に入り口または出口をもつことが考慮される。従って、コンテクストベースの予測のための使用可能な状況モデルは、たとえば次のものに基づく。
【0021】
・「割り込み」、「転出(cut-out)」のような検出されたシーンに適用可能な予測挙動、または
・交通参加者の検出されたコンステレーション(constellation、配置)、たとえば隣接レーン上の2つの乗り物、または
・認識されたインフラストラクチャ要素、たとえば走行方向にある高速道路入り口
【0022】
しかし、認識された要素が同じ状況を規定していても、ターゲット乗り物の実際のドライバの運転挙動は異なるかもしれない。
図1Aでは、ドライバがひどく混雑した高速道路状況を知っており、よりよい進入ギャップが生じる可能性が低いことを知っているので、ギャップが適切でなくてもターゲット乗り物Aが中央レーンから左レーンに移る。もし高速道路がほとんど空で、乗り物A、EおよびBが
図1Bに示すような速度および空間分布の同じ交通状況にあるならば、乗り物Aのドライバはより適当なギャップが生じるのを待ってからレーンを変更するであろう。しかし、伝統的な予測的動き挙動法を考慮に入れるとき、両方のケースで乗り物Aの挙動予測の局所コンテクストが同じなので、
図1Aおよび1Bのどちらのケースでも割り込み(進入)のありなしのどちらかが予測される。しかし、ターゲット乗り物Aは
図1Aおよび
図1Bに描かれる状況では異なる行動をとるであろう。
【0023】
交通密度および挙動予測に関して記述したのと同様の問題が国ごとの広域速度制限または道路が凍っているなどの道路の状態に関して生じる。
図2A、2B、3A、3Bに関してその影響をより詳細に説明する。
【0024】
したがって、従来技術のコンテクストベースの予測システムに本来的なターゲット乗り物の挙動予測が不正確であることを説明する。
【0025】
既存の提案によると、ターゲットオブジェクトの未来の挙動を判断するとき、実際の交通状況の局所コンテクストだけが考慮される。したがって、予測システムの予測から推奨される行動の品質が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
したがって、本発明の一つの目的は、予測システムの予測結果の品質を向上させることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明はこの課題を特許請求の範囲の独立請求項に記載される方法、システム、乗り物およびプログラムによって解決する。
【0028】
技術問題を解決する乗り物ドライバ支援方法は、少なくとも一つのデータ取得手段および処理手段を有する乗り物を使用し、この方法は、データ取得手段によってターゲット乗り物の交通環境を表現するデータを取得するステップ、取得したデータに基づいて予測情報を発生するステップ、およびこの予測情報を出力するステップを含む。この発明の方法は、交通環境を表現するデータから広域的シーンコンテクストのデータを生成することおよび予測適合化情報を発生するためにこの広域的シーンコンテクストのデータを処理することをさらに含むことを特徴とし、予測情報を発生するステップでは予測適合化情報に基づいて予測情報が適応される。
【0029】
この方法は、直接インジケータおよび/または間接インジケータに基づく予測を交通状況の広域的シーンコンテクストの判断と組み合わせた、ターゲット乗り物についての予測情報を出力する効果を提供する。広域的シーンコンテクストは挙動予測の基礎を形成する交通シーンにおけるすべての交通参加者について有効なコンテクストとして定義される。従来技術による交通シーンは交通参加者の配置を分析し、広域的な制約による交通シーンを区別しない。これと対照的にこの発明の方法は、予測システムによって取得されたデータをさらに処理して適合化された予測情報を発生するための予測適合化情報を生成し、その際にすべての交通参加者について広域的に有効なパラメータをも考慮に入れ、異なる交通シーンにおける交通状況をさらに区別する能力を用いてターゲット乗り物について未来の動き挙動予測を発生する。従来技術による手法は、広域的基準に基づいて状況または状況モデルの間を区別する能力を欠いている。したがって、挙動予測の品質は本願の請求項に記載される方法において向上する。
【0030】
ホスト乗り物のドライバを支援するこの方法は、好ましい実施例では、広域的シーンコンテクストのデータを発生するステップにおいて、次のステップのうち少なくとも一つが実行される。すなわち、この乗り物に搭載された少なくとも一つの局所的センサによって取得されたセンサデータから広域的シーンコンテクストを判断するステップ、外的に受け取られたデータから広域的シーンコンテクストを判断するステップ、および交通ブロードキャスト(放送、同報通信)サービスを介して受け取られたデータから広域的シーンコンテクストを判断するステップのうち少なくとも一つが実行される。
【0031】
シーンコンテクストデータの導入およびこれに基づく予測適合化情報の生成は予測のためのデータ基盤を大きく向上させ、予測計算および予測結果の判定に対する大まかな観点および大まかな制約に関して予測システムの認識を有利に導入することを可能にする。したがって、交通ブロードキャストサービス、車対車、および車対インフラストラクチャの通信からの情報コンテントは挙動予測および拡張された予測決定のためのデータベースに統合される。
【0032】
センサデータから広域的シーンコンテクストを推定するステップにおいて、広域的シーンコンテクストデータは他の乗り物の挙動の少なくとも一つにログする少なくとも一つのセンサによって発生されるのが有利であり、ログされた挙動ならびに平均速度、乗り物の数などの乗り物状態から交通状態の判定が行われる。したがって、たとえばホスト乗り物に搭載されたカメラによって取得されるセンサデータから最大の利益が得られ、予測計算の品質および予測結果の信頼性が向上する。
【0033】
広域的シーンコンテクストデータを処理するステップにおけるこの方法の実施例では、コンテクストベースの予測の状況モデルにおける予測計算を変更するよう構成された予測適合化情報を発生すること、ならびにコンテクストベースの予測および物理的予測のうち少なくとも一つからの結果における確率を修正するよう構成された予測適合化情報を発生することの少なくとも一つが実行される。この実施例による予測適合化情報は、処理、処理ステップ、コンテクストベースの予測の処理結果、物理的予測の処理結果のそれぞれまたはこれらの組み合わせに影響するパラメータを適応させるのに有利に適している。したがって、予測システムは、考慮すべき広域的コンテクストデータに関する予測処理の最も効率的な方法を実施することを可能にする。
【0034】
予測適合化情報を発生するために広域的シーンコンテクストデータを処理するステップでは、コンテクストベースの予測システムの状況モデルにおけるインジケータの少なくとも一つのインジケータ値を修正するための少なくとも一つのスケーリング(変倍)パラメータ、ここで各スケーリングパラメータは広域的シーンコンテクストデータに基づくちょうど一つのインジケータに対応する、を発生すること、およびコンテクストベースの予測システムの結果を直接的に適応させるよう構成された予測適合化情報を発生することの少なくとも一つが実施される。
【0035】
特許請求の範囲に記載される方法の好ましい実施例では、予測情報を発生するステップにおいて、間接的インジケータを使用するコンテクストベースの予測ステップ、およびコンテクストベースの予測の結果が正しいことを確認するため直接的インジケータを使用する物理的予測ステップが実行される。
【0036】
前記の技術的問題は乗り物のドライバ支援システムによっても解決され、このシステムは交通環境を表現するデータを取得するよう構成されたデータ取得手段、および取得されたデータに基づいて予測情報を発生しこの予測情報を出力するよう構成された処理手段を備える。このシステムは、その処理手段が交通環境を表現するデータから広域的シーンコンテクストデータを生成するよう構成されていること、およびその処理手段が予測適合化情報を発生するために広域的シーンコンテクストデータを処理するよう構成されていること、を特徴とする。この処理手段は、予測適合化情報にも基づいて予測情報を適応させるよう構成されている。
【0037】
乗り物のドライバを支援するシステムは、広域的シーンコンテクスト推定ユニットを有する処理手段を備え、この推定ユニットは、この乗り物に搭載された少なくとも一つの局所的センサによって取得されるセンサデータから広域的シーンコンテクストを推定すること、外部から受け取られたデータからこの広域的シーンコンテクストを推定すること、および交通ブロードキャストサービスを介して受け取られたデータからこの広域的シーンコンテクストを予測すること、の少なくとも一つを実行することによって広域的シーンコンテクストデータを生成するよう構成されている。
【0038】
一実施例では、乗り物のドライバを支援するシステムは、すくなとも一つのセンサが他の乗り物の挙動状態を記録(ログ)し記録されたデータから交通状態を判断することによって広域的シーンコンテクストデータを生成するよう構成された広域的シーンコンテクスト推定ユニットをさらに備える。
【0039】
さらに、乗り物のドライバを支援するためのシステムは、広域的シーンコンテクスト情報を予測適合化情報に変換するよう構成された変換ユニットを有する処理手段を備えると有利であり、この変換ユニットは、コンテクストベースの予測の状況モデルにおける予測計算を変えるよう構成された予測適合化情報を生成すること、並びにコンテクストベースの予測および物理的予測の少なくとも一つからの結果における確率を修正するよう構成された予測適合化情報を生成すること、の少なくとも一つによって上記の変換を行う。
【0040】
乗り物のドライバを支援するためのシステムの一実施例は、広域的シーンコンテクスト情報を予測適合化情報に変換する変換ユニットを有する処理手段を特徴とし、この変換ユニットは、コンテクストベースの予測システムの状況モデルにおけるインジケータの少なくとも一つのインジケータ値を修正するため少なくとも一つのスケーリング(変倍)パラメータ、ここで各スケーリングパラメータは広域的シーンコンテクストデータにも基づく一つのインジケータにぴったり対応する、を生成すること、およびコンテクストベースの予測システムの結果を直接的に適応させるよう構成された予測適合化情報を生成すること、の少なくとも一つを実行することによって上記の変換を行う。
【0041】
乗り物のドライバを支援するためのシステムの有利な一実施例は、予測情報を生成するよう構成された予測システムを有する処理手段を備え、この予測システムは、間接的インジケータに基づいてコンテクストベースの予測情報を生成するよう構成されたコンテクストベースの予測ユニット、およびこのコンテクストベースの予測情報が正しいことを確かめるために直接的インジケータに基づいて予測情報を生成するよう構成された物理的予測ユニット、を備える。
【0042】
技術的問題は、上に述べた特徴を有するドライバ支援システムを備えた乗り物によって解決され、このドライバ支援システムは、該システムの出力信号に基づいて乗り物の制御に影響するよう構成されている。
【0043】
この方法は、本発明の任意の実施例による方法ステップを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムとして有利に実施することができ、このプログラムはコンピュータまたはディジタル信号プロセッサ上で実行される。本発明は、コンピュータプログラム製品としても実施することができ、このプログラムは機械読込み可能な媒体に格納され、プログラムがコンピュータまたはディジタル信号プロセッサで実行されるとき、本発明の実施例の任意の一つによる方法ステップを実行する。
【0044】
本発明の方法およびシステムを添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面で同じ番号が同じエレメントを示すのに使われ、同じエレメントの説明は後続の図面の説明では必ずしも反復しない。
【0047】
本発明による方法は、ホスト乗り物またはホスト乗り物の取得手段にデータを提供する一つまたは複数のセンサを備えたホスト乗り物に搭載された計算システムによって実行されることを前提としている。
【0048】
この計算システムは、必要な計算作業を実行するシステムである。このシステムはこの目的のために特別に作成されていてもよく、または汎用コンピュータを用い、この汎用コンピュータをこのコンピュータに格納されたコンピュータプログラムによって選択的に作動しまたは再構成することができる。この計算システムは、それぞれのタスクを実行するため同じプロセッサまたは異なるプロセッサのネットワークで構成することもできる。
【0049】
その実行に必要なコンピュータプログラムおよびデータはコンピュータ読み込み可能な媒体に格納することができ、これには、限定的ではないが、フロッピィディスクを含む任意のタイプのディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気または光学カード、特定用途集積回路(ASIC)、または電子命令を格納するに適した任意のタイプの媒体が含まれ、それぞれコンピュータシステムのバスに結合される。さらに参照したコンピュータは、一つのプロセッサを有してもよく、または計算能力を増大させるため複数のプロセッサ設計、信号プロセッサなどを採用する構造であってもよい。
【0050】
この計算システムは少なくとも一つのセンサに機能的に接続されている。本発明の方法は、コンピュータプログラムの形で実施することができる。コンピュータプログラムはコンピュータ読み出し可能な媒体に格納され、計算システム上で走るときに実行される。
【0051】
センサは、たとえばカメラ、レーザスキャナ、赤外線カメラ、または超音波センサのような音響センサでありうる。このセンサは、また有効範囲を感知するための電磁波を使用するレーダであってもよい。一つまたは複数のセンサの組み合わせをホスト乗り物に搭載して有利に使用することもできる。
【0052】
さらにセンサは交通信号、標識、および道路/レーンのマーキングのような道路インフラストラクチャを検出するよう構成することができる。少なくとも一つのセンサはその一および状態を推定するよう構成することもでき、ここで状態の定義はインフラストラクチャエレメントのタイプによる。カメラ像および/ナビゲーションデータに基づいて交通標識などを検出するための既知の手法が当業者のために存在する。
【0053】
本発明を簡単に理解するためにセンサという用語が明細書全体にわたって使われるが、このセンサに関係する任意の情報は関連情報をシステムの取得手段に提供することができる任意のタイプのデータソースにも関係することが明らかである。そのような取得手段は、一つまたは複数のセンサ、乗り物間通信(車対車、車間通信)からメッセージを受け取るよう構成された任意のエレメントまたはユニット、インフラストラクチャ(車対X、車対インフラストラクチャ通信)からデータを取得し、他の乗り物の位置、速度、加速、およびさらなる状態パラメータを推定することができる。取得手段は、インフラストラクチャ通信からメッセージを受け取り道路環境の位置および状態を推定することができる。
【0054】
少なくとも一つのセンサがターゲット乗り物の位置、速度および加速を推定するよう特別に構成されている。
【0055】
もちろん、上述のタスクのいくつかまたはすべてのために様々な特定のセンサを使用することも可能で、たとえば広域ナビゲーション衛生システム(GNSS)を使用して位置情報を取得し、加速度計を使用して加速についての情報を取得することができる。また、複数のビジュアルおよび/または音響センサを使用してホスト乗り物の環境についての情報を取得することができ、たとえば他の交通参加者の位置、および/または道路のインフラストラクチャエレメントの状態を求めることができる。
【0056】
位置描画(レンダリング)システムの例としてはGALILEO、GPS(グローバル位置システム)、GLONASS、COMPASSがある。他のナビゲーションシステムは慣性ナビゲーション(デッドレコニング、相対的自己位置推定法)に基づき、ホスト乗り物の現在位置を先に求めた位置を使用して計算し、経過時間にわたっての既知のまたは推定される速度および運転方向に基づいてその位置を前進させる。
【0057】
広域的シーンコンテクストの推定も車対車または車対Xの通信から得られるデータに基づくことができる。
【0058】
交通ブロードキャストサービスは価値ある入力データを提供するのに適しており、たとえば交通密度、および事故についての種々の情報源からの広域(グローバル)データ、交通の流れに影響ししたがって広域的シーンコンテクストにも影響する道路工事その他の潜在的交通障害などのデータが得られる。
【0059】
搭載されているデータベースまたは搭載されていないデータベースおよびナビゲーション支援からさらなる情報が得られる。道路マップのような地図作成情報、または位置情報および位置軌跡情報に組み合わせた天気情報も交通環境情報の価値ある情報源である。
【0060】
交通環境の個々の要素が交通密度についての情報も含むことができる。それらは、無線データサービス(RDS)を使ってコード化された交通情報を提供する専用の交通メッセージチャンネル(TMC)、または携帯移動通信システムなどを介したGMS/GPRS/3Gデータ伝送から得ることができる。TMCは自動車のドライバに交通および旅行情報を配信する技術である。情報は、従来のFM無線ブロードキャスト上の無線データシステムを使ってディジタルコード化されている。情報は、ディジタルオーディオ・ブロードキャスティング(DAB)または衛星無線上で伝送することもできる。
【0061】
本発明は、ホスト乗り物の全体的問題を扱い、このホスト乗り物はそれを取り巻く交通環境における他の関連する交通参加者の未来の挙動の予測を必要とする。
【0062】
ターゲットオブジェクトの未来の挙動を推定するために、ターゲット乗り物が1組のありうる未来の動き挙動の一つを行う確率が下に述べるようにコンテクストベースの予測によって推定される。もちろん、このような推定は任意の交通オブジェクトをターゲットオブジェクトとして実行することができ、このオブジェクトに対して十分なデータベースが少なくとも一つのセンサによって得られる。
【0063】
図4は先進的なドライバ支援システム1の全体的構成を示し、このシステムは、少なくとも一つのターゲットオブジェクトの未来の動き挙動を予測するために使用される予測ユニット2を備え、本発明による広域的シーンコンテクスト(GSC)ユニット3を有する。先進的なドライバ支援システム1は、データ取得手段4を備える。
図4に示すようにデータ取得手段4は一つまたは複数のセンサ6.1、6.2、6.3、・・・からホスト乗り物の交通環境に関係する(または表現する)データ10を取得する。このセンサ6.1、6.2、6.3、・・・はさまざまなタイプのものであることも同じタイプのものであることもでき、ホスト乗り物に搭載され、特にホスト乗り物の運転方向を観察することができる。センサ6.1、6.2、6.3、・・・は、相対的な速度、位置、その他の変数を計測することができ、これにより交通参加者間の関係を求めることができるよう構成されており、または道路インフラストラクチャを検出するように構成されることができる。
【0064】
データ取得手段4は、車対車、車対インフラストラクチャの通信手段7、無線交通サービス受信機8、カーナビゲーション手段9、GNSS受信機5などのソース、その他、ホスト乗り物の交通環境の個々の情報エレメントの外部または内部の(搭載された)ソースへのインターフェイスからも交通環境に関するデータを取得することができる。
【0065】
交通環境を表現する取得されたデータが予測システムユニット2に提供される。予測システムユニット2を
図5を参照して詳細に説明する。
【0066】
予測システムユニット2は、予測情報15を乗り物作動手段17に提供し、予測情報15に基づいて直接的な作動を生じさせるか、または
図4に示していない制御手段によって作動を生じさせる。典型的には、予測情報に基づいて発生された作動信号がスロットル制御および/またはブレーキ制御を行うために使用される。また、追加的または代替的に、この作動信号は、たとえば一番簡単なケースとしては信号灯(方向指示器)であることができるそれぞれのドライバ警告手段16において情報のためのドライバ警告が実行されるようにする。
【0067】
図5に示すような予測システムユニット2は、データ取得手段4によって取得される交通環境10に関するデータに基づいて直接的インジケータを計算するための直接的インジケータ計算ユニット18を備える。交通環境10を表現するデータは、データ取得ユニット4によって取得される位置、速度、・・・などについての情報を含んでおり、間接的インジケータ計算ユニット19に提供され、コンテクストベースの予測のための間接的インジケータが計算される。間接的インジケータは、従来手法で計算された間接的インジケータからなることができ、これは間接的インジケータ計算ユニット19においてセンサ6.1、6.2、6.3の信号から計算される。インジケータ計算の説明および交通オブジェクトの挙動予測の実行のため、EP 2 562 060 A1を参照し、その内容は参照によりここに取り込まれる。
【0068】
直接的インジケータは物理的予測ユニット21に供給され、間接的インジケータがコンテクストベースの予測ユニット20に供給される。コンテクストベースの予測計算の結果は次いでたとえば有効性の確認および真実性のチェックのために物理的予測計算ユニット21に供給され、これはここで参照するEP 2 562 060 A1に詳しく記載されている。最後に予測情報15が予測システムユニット2によって出力され、各ドライバ警告ユニット16において情報のためのドライバ警告も実行されるようにする。また、追加的または代替的に、この信号は乗り物作動ユニット17に供給され、これはこの信号に基づいて直接的に作動されるかまたは予測システムユニット2から供給される信号を入力として受け取る制御ユニットによって作動される。典型的には出力信号がスロットル制御および/またはブレーキ制御に使用される。
【0069】
本発明の詳細を説明する前に、コンテクストベースの予測を本発明を理解するために必要と思われる限度で説明する。
【0070】
コンテクストベースの予測は、1組の
分類器からなる。
【数1】
【0071】
ここで各
分類器
【数2】
は次の式で表される、ターゲット乗り物
【数3】
が時間 t + Δt で挙動 b ∈B を実行する、次の式で表される確率を推定する。
【数4】
【0072】
各挙動 b について異なる組の
分類器を使用することができる。ここで B は、たとえば次の挙動を含む。
B = {レーン − 変更 − 左、レーン − 変更 − 右、追従 − レーン} (3)
【0073】
フィーチャーベクトル
【数5】
が間接的インジケータに基づいて各
【数6】
および各
分類器
【数7】
について計算される。ここで、
【数8】
ここで、
【数9】
【数10】
が時間 t + Δt で挙動 b を実行する確率が次式で推定される:
【数11】
【0074】
式(7)、(8)は各挙動について、重み付けられた組み合わせの1組の複数の
分類器によって推定され、各
分類器が異なる組のインジケータを使用することを規定する。
【0075】
挙動の開始前に早期の予測を可能にするために直接的インジケータは使用する必要がない。
【0076】
したがって、コンテクストベースの予測は未来の挙動のクラスを決めることができるが、
【数12】
の動きの時間および空間の面で完全な実行はできない。言い換えると、コンテクストベースの予測は、各挙動
【数13】
が時間
【数14】
の辺りで生じる確率を推定するが、
【数15】
の時間
【数16】
における正確な
【数17】
および位置
【数18】
はわからない。
【0077】
上述のように直接的インジケータを使用しないコンテクストベースの予測に加えてまたはこれと代替的に、予測時間
【数19】
に基づく直接的および間接的インジケータを動的に含む
分類器を使うことができる。たとえば、
分類器は
【数20】
に対して間接的インジケータを使用し、
【数21】
について直接的インジケータにフェード(徐々に移行)することができる。
【0078】
既知のコンテクストベースの予測がその限界に達する状況の例を説明する。
【0079】
図1Aおよび1Bの乗り物Aは、その未来の動き挙動を推定すべきターゲット乗り物を表すとする。乗り物Aは高速道路の同じく中央レーンを走る乗り物Bに近づき、乗り物Bは乗り物Aよりも低速でクルーズ(走行)している。コンテクストベースの挙動予測は、複数レーンの道路の左レーン上のギャップを求めるが、このギャップは乗り物Aによく適合しない、なぜならホスト乗り物Eがターゲット乗り物Aよりもはるかに高速で近づきつつあるからである。
【0080】
図1Aでは、乗り物Aと同じ方向に走る短距離間隔の多くの乗り物で道路が混雑している。乗り物Aはホスト乗り物Eの前方でレーンを変更しようとしているが、求められたギャップは全く満足できるものではなく、レーン変更(車線変更)にはあまり適していない。
【0081】
図1Bでは乗り物Aと同じ方向に走る乗り物はわずかで乗り物間の距離は概して大きい。乗り物Aはホスト乗り物Eが通過した後でレーン変更しようとしているが、道路がすいているので図に描いたような進行が可能である。
【0082】
しかし従来の動き挙動予測法に基づくと、
図1Aおよび1Bのどちらのケースでも乗り物Aの同じ挙動が予測される。これは、どちらのケースでもターゲット乗り物としての乗り物Aの挙動の予測の局所的コンテクストは同じだからである。したがって、従来のコンテクストベースの予測は両方のケースを同じと考え、
図1Aおよび1B弐描かれる状況に対し同じ挙動予測を提供する。しかし、
図1Aおよび
図1Bに描かれる状況ではターゲット乗り物Aは異なる行動をとる可能性が高い。したがって、従来のコンテクストベースの予測システムに本来的なターゲット乗り物の挙動予測における不正確さが問題となる。
【0083】
図2Aおよび2Bは、既知のコンテクストベースの予測の限界が明らかとなる他の例を示す。ターゲット乗り物としての乗り物Aが乗り物Bに近づく。乗り物AおよびBは両方とも多数レーン(車線)の道路の中央レーンc上を走っている。乗り物Aが中央レーンから左レーンに変更するかもしれない。左レーン上で乗り物Aの前方に適切なギャップがあることが判定される。
【0084】
しかし
図2Aに描かれる状況では広域速度制限がないので、乗り物Aは乗り物Eが高速で走行しているかもしれないことを考慮してレーンcからレーンlへの変更を行わない。
【0085】
図2Bに描かれている状況は、
図2Aに描かれているのと同じ局所的な交通配置を示している。状況の相違点は、
図2Bに速度制限ラベル“130”で示す広域的速度制限および乗り物Aがこの速度制限を超えているという事実である。
図2Bの状況では、乗り物Bの速度V
Bを超えているターゲット乗り物Aの速度V
Aに応答してコンテクストベースの予測システムがターゲット乗り物Aのレーン変更操作を予測する。ここでターゲット乗り物Aのドライバは、乗り物Eも速度制限を遵守しなければならないから、後方からそんなに速く近づいてこないと考えるであろう。
【0086】
従来のコンテクストベースの予測システムは、
図2Aおよび
図2Bのそれぞれのシーンの間での相違点を検出するに適しておらず、両シーンについてターゲット乗り物Aの割り込み(カットイン)を予測するか、または
図2Aおよび2Bの状況について割り込みなしを予測するかのどちらかであろう。従来の手法は同じ状況について決定するからである。
【0087】
図3Aおよび3Bは既知のコンテクストベース予測の限界が含まれるさらなる例を示す。
【0088】
図3Aおよび3Bの状況は、乗り物Aが複数レーンの道路の中央レーンc上を、この道路の同じレーンcを速度V
Bでクルーズしている乗り物Bより速い速度V
Aで走行しているので、乗り物Bに近づきつつあることを示している。左レーンl上にほぼ適当なギャップが存在することが判断される。
【0089】
乗り物の同じ配置を示す
図3Aおよび3Bの両ケースで、コンテクストベース予測の周知の手法は、交通環境10を表現するデータのエレメントの値および挙動予測のために考慮すべきしきい値に依存して、割り込みありまたは割り込みなしを予測するであろう。
図3Bでは道路面が平坦で乾燥しているのに対し
図3Aでは道路面が凍っていても、従来技術では
図3Aと
図3Bとの間には相違がないであろう。
【0090】
本発明による広域コンテクストを考慮すると、
図3Aにおいては乗り物Aは矢印で示すようにレーンcからレーンlに変更することはないと予測されなければならない。なぜなら、横方向の加速は乗り物のコントロールを失う確率を増加させるからである。一方、
図3Bでは、良好な道路条件を考慮に入れて、乗り物Bのドライバは高い確率でレーン変更操作を始めるので、ホスト乗り物Eについて割り込み状況が生じる。
【0091】
したがって、
図3Aおよび3Bに示す例としての状況でも既知のコンテクストベース予測システムによる挙動予測の限界が強く見られる。
図3Aの状況は凍った路面について説明したが、雨、雪、泥、こぼれたオイルまたは路面の全体的な相違のようなその他の特定の路面特性が同様の結果を導くであろう。
【0092】
次ぎに、広域的シーンのコンテクスト情報を本発明による予測システムに統合することについて
図4から6を参照して説明する。
【0093】
図4でデータ取得手段4が交通環境を表現するデータを取得する。ホスト乗り物の交通環境10を表現するデータを予測システムユニット2に供給するばかりでなく、交通環境を表現するデータは広域的シーンコンテクスト推定ユニット(GSC推定ユニット)11にも提供される。GSC推定ユニット11は交通環境10を表現するデータに基づいてデータを処理し広域的シーンコンテクスト情報12を発生する。
【0094】
一実施例のGSC推定ユニット11は、広域的シーンコンテクストを求めるため交通環境10を表現する入力データの個々のエレメントを分析するよう構成されている。たとえばGSC推定ユニット11はセンサ6.1、6.2、・・・によって認識されるすべての交通参加者の速度を分析し、乗り物に対する広域速度制限を求めることができるかどうか決定することができる。たとえば、GSC推定ユニット11は、GNSSによって取得されたホスト乗り物の位置情報、搭載され格納されている地図情報、ブロードキャストサービスを介して取得される天気情報を組み合わせて悪天候による悪い道路状況について決定することができる。車対インフラストラクチャの通信受信機7から取得されたデータを介してターゲット乗り物の前方の道路の氷で覆われた帯状領域が識別されることもあり、このときGSC情報12のエレメント「氷状の道路」がGSC推定ユニット11によって発生され出力される。
【0095】
GSC情報12は、予測システムユニット2のための予測適合化情報14を処理し発生するために広域的シーンコンテクストコンバータユニット(GSCコンバータユニット)13に供給される。
【0096】
GSCコンバータユニット13は、GSC推定ユニット11から受け取った推定されたGSC情報12から、予測情報をどのように修正するか、および/または予測システムユニット2における予測情報の発生をどのように修正するか、について特定の情報を抽出するよう構成されている。GSC推定ユニット11によって推定された広域的シーンコンテクストは、GSC情報12に入れられる。GSCコンバータユニット13によって出力される予測適合化情報14は、たとえば予測システムユニット2における挙動予測ステップの結果を直接的に修正するためのパラメータを含む。特に、コンテクストベースの予測ステップの結果が広域的シーンコンテクストに適合化されることができる。予測適合化情報14は、物理的予測ステップの結果を広域的シーンコンテクストに適合化させる情報を含むこともできる。結果を適合化させることは、たとえば予測結果に含まれる確率値を予測適合化情報に含められて予測システムに送られる乗数とかけ算することによって行うことができる。挙動予測の適合化は、予測適合化情報に含めて伝送された値に従って、コンテクストベースの予測で使われた状況モデルにおけるインジケータ値を修正することをも含むことができる。
【0097】
図5および6は、間接インジケータ計算ユニット19における間接インジケータのインジケータ値を適合化する見込みを表している。
図6はインジケータ値を適合化する(または調整する)2つの処理を示しており、間接インジケータ計算ユニット19でインジケータの計算に使われるパラメータを適合化するか、または適合化されたインジケータを組み合わせる前に間接インジケータ計算ユニット19によるインジケータ値出力を直接的に変倍し、適合化され組み合わされたインジケータ値をコンテクストベースの予測計算ユニット20に提供する。
【0098】
図7A、7B、8および9は、本発明の一実施例による交通乗り物の動き挙動を予測するためのシステムにおける広域的シーンコンテクスト推定の例を示す。
図7Aおよび7Bの状況は複数レーンを有する高速道路の2つのレーン上の道路シーンを描いている。
図7Aのシーンは
図7Bのシーンと異なって大きい交通密度であり、
図7Bのシーンは軽度の交通で特徴付けられる。乗り物A、BおよびEのそれぞれの速度はV
A、V
BおよびV
Eであり、その配置は
図1Aおよび1Bのシーンに対応する。
【0099】
図7Aについての本発明の実施例による動き挙動予測の方法が
図8に描かれている。
図8において無線交通サービス8からのメッセージが受信され処理のためにデータ取得ユニット4に送られる。このメッセージは公衆高速道路の特定の区間における交通渋滞に言及するものとする。この道路区間は
図7Aのシーンを含むものとする。
【0100】
データ取得ユニット4はさらに地図情報を含むナビゲーション情報および位置情報を取得し、交通環境10を表現する取得されたデータのエレメントをGSC推定ユニット11に提供する。GSC推定ユニット11は交通環境10を表現する取得データを処理し、交通環境10を表現するデータの個々のエレメントである、「無線交通メッセージ」、「位置情報」および「ナビゲーション情報」をリンクすることによってターゲット乗り物の現在位置に対する大きい交通密度を示唆する広域的シーンコンテクストを推定する(求める)。一実施例の広域的シーンコンテクスト推定ユニット11は、さらにターゲット乗り物を取り巻く他の交通参加者の数および速度を示すセンサデータをセンサ6.1、6.2、6.3から取得する。一実施例ではセンサデータは、処理された交通データの有意性を増すために処理ステップにおいて時間にわたって平均されることができる。したがって、GSC推定ユニットは、ターゲット乗り物の周囲をモニタすることによって示唆された大きい交通密度が正しいことを確認することができ、大きい交通密度を報告する確認された広域的シーンコンテクスト情報11をGSCコンバータユニット13に提供することができる。
【0101】
GSCコンバータユニット13は、大きい交通密度を表すGSC情報12を処理して1組の変倍値を生成し予測適合化情報14に含める。この実施例での予測適合化情報14は、1組の変倍値(変倍パラメータ)を含み、各変倍値は
図6に示すコンテクストベースの予測ステップで求められた真に一つのインジケータ19.1、19.2、・・・、19.Nに対応する。
図8では広域的シーンコンテクスト推定「高交通密度」の結果が変倍値“m1=1,5”および“m2=1,0”および“m5=1,5”となり、GSCコンバータユニット13から予測システムユニット2に提供される。
【0102】
図9に描かれるように、予測システムユニット2の間接インジケータ計算ユニット19が予測適合化情報14を取得し間接インジケータ「近づきつつある先行車」19.1および「適切な左ギャップ」19.5のためのそれぞれの変倍パラメータをそれぞれの乗数1,5に設定する。間接インジケータ「強く加速」19.2は、予測適合化信号に含まれている変倍値m2=1,0に従って変えられないままになる。それぞれの適合化された(変倍された)出力値が合成器(コンバイナ)24で連結されてからコンテクストベースの予測ユニット20に供給され、物理的予測計算ユニット21においてさらに処理され最終的に予測情報15が生成される。
【0103】
間接インジケータ「近づきつつある先行車」19.1および「適切な左ギャップ」19.5を増幅し、広域コンテクストとして高交通密度の場合その他の間接インジケータを維持すると、
図7Aの状況において左レーンlへのレーン変更を予測する可能性が増すことになり、したがってターゲット乗り物Aにとって比較的小さなギャップしかないときでもターゲット乗り物Aに関し割り込み挙動を予測する確率が高くなる。
【0104】
図7Bのシーンでは議論が逆になる。
図8においてGSC推定ユニット11が緩い交通密度を推定する。この広域コンテクスト推定は、GSC推定ユニット11が、ターゲット乗り物の実際の位置についてのそれぞれの交通メッセージが有効でなく、センサ6.1、6.2、6.3、・・・からの信号に基づいて高交通密度が判定されておらず、近隣の乗り物によって高交通密度が通信されていないことを確認するプロセスの結果として得られる。交通環境10を表現するデータのこれらのエレメントの一つを処理することによって、またはGSC推定ユニット11で実行される広域的シーンコンテクスト推定の信頼性を高めるためにこれらのエレメントの組み合わせを処理することによって、「緩い交通」という広域的シーンコンテクストが求められる。GSCコンバータユニット13がそれぞれのGSC情報12を受け取りコンテクストベースの予測システム2における間接インジケータ19.1、19.2、・・・のための適当な変倍値を設定して、予測適合化情報13を生成する。
図7Bの状況を例として参照すると、これは間接インジケータ「近づきつつある先行車」19.1および「適切な左ギャップ」19.5の相対的重みを他の間接インジケータ、「強く加速」19.2に関して低減することを意味する。したがって、コンテクストベースの予測計算ユニット20の出力および予測システムユニット2による予測情報15出力は、広域的シーンコンテクストとして緩い交通密度について割り込み挙動の予測をもたらす。なぜなら、間接インジケータ19.2、19.2、・・・19.Nの出力値は大きなギャップだけが求められるように変倍され、乗り物の高い相対速度は予測された割り込み挙動の確信を高める結果となるからである。
【0105】
図7A、7B、8および9を参照して説明した広域的シーンコンテクスト推定を有するコンテクストベースの予測の実施例は、したがって、コンテクストベースの予測と物理的予測との組み合わせだけに依存する従来の手法に比べて予測品質の向上を呈する。
【0106】
GSC推定ユニット11の実施例においては、広域的シーンコンテクストの推定は交通環境10を表現する取得データに含まれる一つのエレメントに基づく。広域的シーンコンテクストの推定は交通環境10を表現するデータにも基づくことができ、これにより本発明から逸脱することなく推定された広域的シーンコンテクストの信頼度を向上させることができる。
【0107】
図10A、10B、11および12は、ターゲット乗り物の動き挙動を予測するための本発明の方法の一実施例によって扱われるさらなるシーンを表現する。乗り物A、乗り物Bおよびホスト乗り物Eの全体的な配置は
図2A、2Bに関連してこれまでに説明した状況に対応するので、さらなる説明は省略する。
【0108】
センサユニット6.1、6.2、6.3が複数の乗り物、好ましくはセンサのレンジ内にあるすべての乗り物、の速度を測定し、GSC推定ユニット11は広域速度誠意源の存在を推測するよう構成されている。GSC推定ユニットは、速度制限の存在およびその値を判定する時点で終わる予め定めた時間間隔中に測定された乗り物速度を使用するのが好ましい。広域速度制限の存在についてのそれぞれの情報は位置情報と組み合わせてマップ情報を調べることによっても発生することができる。
【0109】
図10Aの状況においてGSC推定ユニット11は、複数の乗り物の測定された速度の分布から上限が設定できないので、広域速度制限が存在しないと結論する。
【0110】
図10Bの状況においてGSC推定ユニット11は、乗り物のいくつかだけがより速い速度で走っていることが速度分布からわかり、速度の上限を設定することができ、130 km/h の広域速度制限が存在すると判断する。
【0111】
図11は、ターゲット乗り物の動き挙動を予測するための本発明の方法の一実施例を示し、関係する情報フローが表現されている。ターゲット乗り物の交通環境10を表現するデータは、ターゲット乗り物A、乗り物Bおよびホスト乗り物Eについて測定その他の方法により取得した速度V
A、V
B、V
Eを含むものとして示されている。GSC推定ユニット11はターゲット乗り物の周囲の乗り物の挙動を、それらの位置およびそれらの速度に関する値を取得することにより継続的にログ(記録)する。乗り物A、Bおよびホスト乗り物Eの位置および速度を表現する取得された値が統合され、交通環境を表現するデータにおける取得された値から交通状態が推定される。
【0112】
たとえば、追いついてきているレーンの位置または方向は交通の方向を求めることを可能にする。一例では、知覚される最大速度を使って速度制限の存在および許される最高速度の推定値についての提案を提供することができる。GSCコンバータユニット13が130 km/h という広域的な速度制限への言及を含むGSC情報12を処理し、交通状態「130 km/h という広域速度制限」を予測システムユニット2における予測計算を変えるよう構成された1組のパラメータへと変換し、これにより 130 km/h という求められた広域速度制限が考慮に入れられる。
【0113】
図10Bの 130 km/h という求められた広域速度制限の場合、ターゲット乗り物が推定された広域速度制限を超える速度で走っておりギャップの後方境界に対する相対的距離および/または相対的速度の作用を弱めるならば、割り込み(カットイン)挙動予測を導くよう間接インジケータ計算ユニット19における間接インジケータ「左ギャップ合わせ」のインジケータ値を変えることができる。GSCコンバータユニット13は、たとえば重み付け値などの対応する予測適合化情報14を生成し、生成された余録適合化情報を予測システムユニット2に提供する。
【0114】
図12は、広域速度制限を求めるための、予測システムユニット2の間接インジケータ計算ユニット19におけるパラメータ22.1、22.2、・・・、22.5を使った間接インジケータ19.1、19.2、19.Nのそれぞれの計算を描く。予測システムユニット2への予測適合化情報14入力は、間接インジケータ「左ギャップ合わせ」19.5を計算するための情報を含み、ターゲット乗り物Aが広域速度制限を超える速度で走っているならば、高いインジケータ値が計算されるようになっている。この高い値は、ギャップの後方境界への接触までの時間(TTC、time-to-contact)が低い場合にも計算される。上に説明した実施例の例において、このTTC値が6秒を超えるならばギャップはよく適合していると通常考えられる。広域速度制限の場合、間接インジケータ「左ギャップ合わせ」19.5の計算に使用するパラメータ22.5は、ターゲット乗り物が広域制限速度を超えて走行しているならば、TTC値を4秒という値に減らすよう変更されることができる。
【0115】
図10Aに示すように広域速度制限が存在しないと推定するとき、GSCコンバータユニット13は、間接的インジケータ「左ギャップ合わせ」19.5のインジケータ値を割り込み挙動予測を避けるに適すように低減させる予測適合化情報14を発生するか、またはシステムをその通常動作にリセットするよう構成されている。
【0116】
図13Aおよび13Bは、本発明のさらなる実施例を説明するための交通配置を示す。
【0117】
図13Aの場合、データ取得手段4によって取得された交通環境10を表現するデータは、ターゲット乗り物の走行方向の前方の道路についての情報を含む。道路についてのデータは道路の特定の状態として凍結道路を示す。この種の情報は、たとえば先行する乗り物の車輪スリップの検出から推論することができ、車対インフラストラクチャ通信を介して通信され、影響する領域を走行中の他の乗り物に配信されることができる。
【0118】
図13Aではターゲット乗り物の前方の道路についての情報が凍結道路についての情報を含む。GSC推定ユニット11において生成されたGSC情報12は、したがって道路状態が「凍結」であることの識別子を含む。GSCコンバータユニット13は予測適合化信号を生成するよう構成されており、この信号によりターゲット乗り物Aのレーン変更挙動の確率が抑えられることになる。
【0119】
図14の情報フローはデータ取得手段4によって取得された1 km 先の乗り物のタイヤがスリップしている交通環境を表現するデータを示す。GSC情報12におけるそれぞれの道路状況は広域コンテクストとして凍結した道路状況を規定している。GSCコンバータユニット13がGSC情報12を処理する。レーン変更(車線変更)の確率の広域的な抑制は、
図14の実施例ではGSCコンバータユニット13における「道路状況=凍結」という用語をパラメータ“C = 0,5”からなる予測適合化情報14に変換することによって達成され、この予測適合化情報は予測システムユニット2に転送される。
【0120】
図15は、凍結道路という広域的シーンコンテクストを含むGSC情報12に反応して生成される予測適合化信号14に反応する予測システムユニット2での処理のより詳細を示す。レーン変更の確率は、コンテクストベースの予測および/または物理的予測におけるレーン変更挙動の計算された確率を直接的に低減させることによって低減される。このような確率の低減は、物理的予測計算ユニット21およびコンテクストベースの予測計算ユニット20による確率出力に予め定めた定数値を乗算することによって行うことができる。
【0121】
予測適合化情報14は、間接インジケータ19.1、19.2、・・・、19.N、間接インジケータ計算ユニット19で間接インジケータ19.1、19.2、・・・、19.Nの計算に使われるパラメータ22.1、22.2、・・・、22.Nのため、および予測システムユニット2による予測情報15出力のための、少なくとも一つの変倍値を含むことができる。特に
図15に示す実施例は例示のためのものであり、本発明から逸脱することなく、予測計算の出力のためおよび予測確率の適合化のための変倍パラメータを組み合わせることもできる。もちろん、予測適合化情報のさまざまの可能性およびその使用は、本発明を説明するための例として使用した交通シーンに限られない。
【0122】
図16は本発明の一実施例で実行される方法ステップのシーケンスを描くフローチャートである。ホスト乗り物のドライバを支援する方法は、データ取得手段4がホスト乗り物の交通環境10を表現するデータを取得する第1ステップS1を含む。次のステップS2では、交通環境10を表現する取得されたデータに基づいて広域的シーンコンテクスト情報12が生成される。後にステップS3において、GSC情報12が処理され、GSC情報12に基づいて予測適合化情報14が生成される。次のステップS4は、適合化された予測情報15を生成することを含み、この予測情報はGSCコンバータユニット13によって提供される予測適合化情報14に基づいて適合化される。次のステップS5では適合化された予測情報15がたとえば作動手段17または警告手段16に出力される。
【0123】
まとめると、本発明の方法、システム、乗り物およびプログラムによると、ターゲット乗り物が1組のあり得る未来の動き挙動の一つを実行する確率の計算が実行される。動き挙動予測は予測システムによって計算されるのが好ましいが、コンテクストベースの予測システムおよび交通環境の広域コンテクストを考慮しての計算に限定される訳ではない。上に説明した実施例のすべての単一のフィーチャーを適切かつ有利に組み合わせることも可能である。