(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光学要素と前記光学要素を駆動するソレノイドとを有する光学ユニットと、前記ソレノイドに対し直流電源からの電圧を受けて駆動電圧を印加する駆動回路と、を備え、車両の前端部における左右何れかに配置される車両用灯具であって、
前記光学ユニットを複数備え、
前記駆動回路は、
複数の前記光学ユニットが有する前記ソレノイドの断線検知を行う断線検知部と、
前記ソレノイドの断線有無を表す通知信号を生成する信号生成回路と、を備え、
前記信号生成回路は、
前記ソレノイドが正常な場合は前記通知信号として第一信号を生成し、
前記ソレノイドの断線が検知された場合の前記通知信号が前記第一信号とは異なる第二信号とされ、
前記信号生成回路は、前記通知信号として、
前記ソレノイドの断線が検知されず且つ前記信号生成回路に異常がない状態である第一状態と、前記ソレノイドの断線が検知された状態又は前記信号生成回路に異常がある状態である第二状態との何れの状態であるかを車両側に通知可能な信号を生成する
車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のようなロービーム/ハイビームの切り替えが可能な車両用灯具において、ソレノイドに断線が生じた場合には、ロービーム/ハイビーム切り替えのための光学要素が本来の動作状態とはならず、車両用灯具の配光状態が所期の配光状態とは異なってしまう。例えば、ソレノイドがオン時にハイビーム照射、オフ時にロービーム照射を行う構成においては、本来のハイビーム照射状態ではなくロービーム照射状態となってしまう。
【0005】
このとき、いわゆる多眼のヘッドランプとして、ロービーム/ハイビームの切り替え機能を有する光学ユニットを複数備えた構成を採ることが考えられる。この場合、何れかの光学ユニットにソレノイドの断線が生じたとすると、本来は全ての光学ユニットをハイビーム照射状態とすべきところ、一部の光学ユニットのみがロービーム照射状態となって、車両用灯具全体の配光状態としては不完全なハイビーム配光状態とされてしまう。
このような不完全なハイビーム配光状態は、夜間を快適に走行する上で望ましくないため、上記のケースにおいては、全ての光学ユニットをロービーム照射状態とすることが要請される。このとき、光学ユニットにおけるソレノイドのON/OFF制御は、車両側のECU(Electronic Control Unit)により行われるため、車両用灯具としてはソレノイドの断線検知結果を車両側に通知する機能を有することが要請される。
【0006】
また、この際、通知機能を実現したとしても通知に係る回路が故障等による異常を来すことも考えられる。その場合には、車両側に断線有無を適切に通知できず、上記のような不完全なハイビーム照射状態からロービーム照射状態へと切り替える制御を適切に実現することができなくなってしまう。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑み為されたものであり、ソレノイドの断線有無の通知を、通知のための回路が異常を来すことも考慮して適切に行うことのできる車両用灯具を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用灯具は、光学要素と前記光学要素を駆動するソレノイドとを有する光学ユニットと、前記ソレノイドに対し直流電源からの電圧を受けて駆動電圧を印加する駆動回路と、を備え、車両の前端部における左右何れかに配置される車両用灯具であって、前記光学ユニットを複数備え、前記駆動回路は、複数の前記光学ユニットが有する前記ソレノイドの断線検知を行う断線検知部と、前記ソレノイドの断線有無を表す通知信号を生成する信号生成回路と、を備え、前記信号生成回路は、前記ソレノイドが正常な場合は前記通知信号として第一信号を生成し、前記ソレノイドの断線が検知された場合の前記通知信号が前記第一信号とは異なる第二信号とされ
、前記信号生成回路は、前記通知信号として、前記ソレノイドの断線が検知されず且つ前記信号生成回路に異常がない状態である第一状態と、前記ソレノイドの断線が検知された状態又は前記信号生成回路に異常がある状態である第二状態との何れの状態であるかを車両側に通知可能な信号を生成するものである。
【0009】
上記のような第一信号と第二信号の使い分けにより、第一信号によっては、ソレノイドの断線が無い旨と共に、断線通知のための回路に異常が生じていないこと、つまりは故障等がなく該第一信号を生成可能な正常状態にあることを車両側に通知可能となる。換言すれば、一方の第二信号によれば、ソレノイドの断線が検知されたか、或いは通知のための回路に異常が生じて断線有無の適正な通知が不能な状態の何れかである旨を車両側に通知可能となる。
【0010】
上記した本発明に係る車両用灯具においては、前記第一信号が所定周期で発振する発振信号とされ、前記第二信号が非発振信号とされることが可能である。
【0011】
これにより、ソレノイドの断線が検知されたか、或いは通知のための回路に異常が生じて断線有無の適正な通知が不能な状態の何れかである旨を通知するための構成を、発振回路を設けるという比較的簡易な構成で実現可能となる。
【0012】
上記した本発明に係る車両用灯具においては、前記光学ユニットを複数備え、前記駆動回路は、複数の前記ソレノイドに対し前記駆動電圧を印加するための共通の給電ラインを有し、前記共通の給電ラインの給電状態に基づき複数の前記ソレノイドの断線検知を行うことが可能である。
【0013】
これにより、ソレノイドごとに断線検知のための回路を設けずに済む。
【0014】
上記した本発明に係る車両用灯具においては、前記駆動回路は、複数の前記ソレノイドに対し並列接続された共通のサージ吸収素子と、複数の前記ソレノイドに共通の給電ラインに対して挿入された逆接停止回路とを備えることが可能である。
【0015】
これにより、ソレノイドごとにサージ吸収素子及び逆接停止回路を設けずに済む。
【0016】
上記した本発明に係る車両用灯具においては、ロービームよりも上方の領域に光を照射する追加ビーム照射ユニットを備えることが可能である。
【0017】
光学ユニットとは別途の追加ビーム照射ユニットを備えることで、所望のビーム配光パターンを実現する上での設計自由度の向上が図られる。
【0018】
上記した本発明に係る車両用灯具においては、前記光学ユニットは、前記光学要素の駆動/非駆動によりハイビーム照射状態/ロービーム照射状態の切り替えが行われることが可能である。
【0019】
これにより、ハイビーム/ロービームの切り替え照射機能を有する車両用灯具として、ソレノイドの断線有無の通知を、通知のための回路が異常を来すことも考慮して適切に行うことのできる車両用灯具を実現可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ソレノイドの断線有無の通知を、通知のための回路が異常を来すことも考慮して適切に行うことのできる車両用灯具を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態としての車両用灯具1について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、車両用灯具1の概略構成を示したブロック図である。
車両用灯具1は、車両の前端部に左右一対の計二つが配置されるヘッドランプとされている。車両用灯具1には、ロービーム/ハイビームの切り替えが可能とされた複数の光学ユニット2と、ロービームよりも上方の領域に光を照射する追加ビーム照射ユニット3と、不図示の車載バッテリーを供給源とする電源電圧VB2に基づき光学ユニット2、追加ビーム照射ユニット3がそれぞれ備える光源部(後述する光源部21、追加光源部31)を発光駆動する光源駆動回路4と、光学ユニット2が備える後述するソレノイド24を駆動するソレノイド駆動回路5と、スイッチSW1とが備えられている。
スイッチSW1は、上記の車載バッテリーからのバッテリー電圧Bを車両側に設けられたECU(Electronic Control Unit)100からの制御信号Sswに基づきON/OFFする。スイッチSW1がONされることで、バッテリー電圧Bに基づく電源電圧VB1がソレノイド駆動回路5に供給される。なお、ソレノイド駆動回路5からECU100に対しては、後述する異常通知信号Sdが出力される。
ここで、本例ではECU100は車両側に設けられた例を示しているが、ECU100は車両用灯具1側に設けてもよい。
【0023】
本例では、光学ユニット2の数は三つとされ、以下ではそれぞれ光学ユニット2−1、2−2、2−3と表記する。
各光学ユニット2は、それぞれ光源部21と、光源部21より発せられた光を車両前方に照射するための光学系22と、光学系22に配置された可動シェード23を駆動するソレノイド24とを備えている。図中では、光学ユニット2−1、2−2、2−3が備える光源部21、光学系22、可動シェード23、ソレノイド24については、末尾に対応する数値を付してそれぞれ光源部21−1、21−2、21−3、光学系22−1、22−2、22−3、可動シェード23−1、23−2、23−3、ソレノイド24−1、24−2、24−3と表記している。以下、これら光源部21、光学系22、可動シェード23、ソレノイド24については、必要に応じて符号末尾の数値を付して表記し分ける。
【0024】
各光学ユニット2において、光源部21は、例えばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等による光源を1又は複数備えている。
光学系22は、例えば光源部21より発せられた光を反射するリフレクタや投射レンズ等を備え、リフレクタによる反射光を含む光源部21からの光を投射レンズを介して車両前方に投射(照射)する。可動シェード23は、このような光学系22における光路中に配置され、光源部21からの光の一部を遮光する第一状態と遮光しない第二状態との間で変位自在となるように構成されている。
本例では、可動シェード23が第一状態時にロービーム照射状態が、第二状態時にハイビーム照射状態が得られるように光学系22が構成されている。
可動シェード23は、本例においては第一状態側に付勢されており、従ってソレノイド24が非駆動状態ではロービーム照射状態、駆動状態ではハイビーム照射状態が得られる。
【0025】
ソレノイド24は、コイル(後述するソレノイドコイル24−1a〜24−3a)と該コイルに生じる磁界に応じた磁力に基づき変位される可動鉄芯(プランジャー)とを備えている。可動シェード23は、可動鉄芯が変位することにより得られる動力に基づき上記の第一状態から第二状態へと変位する。
【0026】
追加ビーム照射ユニット3は、例えばLED等の光源を1又は複数有する追加光源部31と、追加光源部31より発せられた光を車両前方に照射するための追加光学系32とを備えている。追加ビーム照射ユニット3は、本例ではハイビームを照射するハイビーム照射ユニットとされている。
【0027】
ここで、車両においては、運転者等の操作者による操作に基づき、ロービームの点灯指示、ハイビームの点灯指示が行われる。ロービーム点灯指示に応じては、ECU100が、上述した制御信号SswによりスイッチSWをOFF状態とし、ソレノイド駆動回路5に対する電源電圧VB1の供給を停止状態とすることで、ソレノイド24−1〜24−3を非駆動状態とし、可動シェード23−1〜23−3を第一状態とさせる。またこの際、ECU100は、図中の制御信号Scによって、光源駆動回路4に各光学ユニット2における光源部21−1〜21−3を点灯させ且つ追加ビーム照射ユニット3における追加光源部31を消灯状態とさせる指示を行う。
ハイビーム点灯指示に応じては、ECU100は、制御信号SswによりスイッチSWをON状態としてソレノイド駆動回路5に電源電圧VB1を供給させる。これにより、ソレノイド24−1〜24−3を駆動状態とし、可動シェード23−1〜23−3を第二状態とさせる。さらに、ECU100は、制御信号Scによって、光源駆動回路4に各光学ユニット2における光源部21−1〜21−3及び追加ビーム照射ユニット3における追加光源部31を点灯させる指示を行う。
【0028】
図2は、車両用灯具1の回路構成を示した図である。
なお、
図2では、車両用灯具1の回路構成のうち主としてソレノイド24の駆動に係る構成、具体的にはソレノイド24−1〜24−3が有するソレノイドコイル24−1a〜24−3aとソレノイド駆動回路5、及びソレノイド駆動回路5に対する電源電圧VB1の供給制御を行うスイッチSW1を抽出して示している。
【0029】
図2において、ソレノイド駆動回路5は、端子部51、電源フィルタ52、駆動IC(Integrated Circuit)53、及び通知信号生成回路54を備えている。
端子部51は、電源電圧VB1の入力端子として機能する正極側入力端子T1及び負極側入力端子T2と、後述する異常通知信号Sdを車両側(上述した車載ECU)に出力するための通知信号出力端子T3と、ソレノイド24−1〜24−3を駆動するための駆動電圧Vdを出力するための正極側出力端子T4及び負極側出力端子T5とを備えている。
図示するように負極側入力端子T2及び負極側出力端子T5は接地されている。
【0030】
電源フィルタ52は、電源電圧VB1の正極側ライン(正極側入力端子T1との接続ライン)とアースとの間に挿入されたコンデンサC1と、例えばPチャンネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を有して構成された逆接停止回路52aと、抵抗R1、コンデンサC3、及びツェナーダイオードZD1と、コンデンサC4とを備えている。
コンデンサC1は、正極端子が正極側入力端子T1と接続され、負極端子が接地されており、静電対策用のノイズフィルタとして機能する。
【0031】
逆接停止回路52aにおいて、MOSFETは、ドレインがコンデンサC1の正極端子と正極側入力端子T1との接続点に接続され、ソースが負荷側に接続され、ゲートが抵抗R1を介して接地されている。MOSFETのゲート−ソース間には、ツェナーダイオードZD2とツェナーダイオードZD3とが逆向きに接続された(カソード同士が接続された)逆接続回路、及びコンデンサC3がそれぞれ並列接続されている。
ツェナーダイオードZD2とツェナーダイオードZD3の逆接続回路は、MOSFETと共に逆接停止回路52aを構成している。
なお、図中では、MOSFETのドレイン−ソース間に生じる寄生ダイオード(ボディダイオード)を示している。
【0032】
逆接停止回路52aにおいて、車載バッテリーが正常に接続されている場合には、MOSFETのゲート電位がソース電位よりも低くなるので、MOSFETがON状態となる。すなわち、これにより電源電圧VB1(バッテリー電圧B)に基づく負荷側への電力供給が可能な状態となる。一方、車載バッテリーが逆接続された場合には、MOSFETのゲート電位がソース電位よりも高くなるので、MOSFETがOFF状態となる。またこのとき、寄生ダイオードも非導通状態となる。これにより、電源の逆接続に対する回路保護が図られる。
【0033】
なお、逆接停止回路52aの構成は上記に限定されず、例えば電源電圧VB1の正極側ラインにダイオードをアノードが正極側入力端子T1側に接続される向きに挿入する構成とするなど、他の構成を採ることもできる。
上記のようなMOSFETを用いた逆接停止回路52aは、正常時における電力損失をダイオードを用いた場合よりも低減できる点で有利である。
【0034】
ツェナーダイオードZD1は、カソードがMOSFETのソースとコンデンサC3との接続点に接続され、アノードが接地されており、MOSFETの電圧保護機能を有する。
【0035】
コンデンサC4は、上記したMOSFETのソースとコンデンサC3との接続点とツェナーダイオードZD1のカソードとの接続点とアースとの間に挿入され、平滑コンデンサとして機能する。該コンデンサC4の両端間電圧として、電源フィルタ52の出力電圧Voutが得られる。本例の場合、出力電圧Voutは例えば12V系とされている。
【0036】
駆動IC53は、電源フィルタ52の出力電圧Voutに基づきソレノイド24−1〜24−3を駆動するための駆動電圧Vdを出力すると共に、ソレノイド24−1〜24−3の断線(負荷側の断線)や負荷短絡等の異常を検知する異常検知機能を有する。
駆動IC53は、電源入力端子tv、入力端子ti、出力端子to、接地端子tg、及び検知信号端子tsを有している。なお、接地端子tgは接地されている。
電源入力端子tvは、駆動IC53が動作電源を入力するための入力端子であり、前述したコンデンサC4の正極端子と接続されて、出力電圧Voutが入力される。なお、電源入力端子tvとアースとの間にはコンデンサC6が挿入されている。
【0037】
入力端子tiは、抵抗R2を介して上述したコンデンサC4と接続され、これによりツェナーダイオードZD4(入力端子tiと抵抗R2との接続点とアースとの間にアノード側を接地する向きで挿入されている)によるツェナ電圧(例えば5V系)が入力される。以下、該ツェナ電圧を電圧Vccと表記する。
【0038】
出力端子toは、端子部51における正極側出力端子T4と接続されている。正極側出力端子T4とアースとの間にはコンデンサC7が挿入されている。
駆動IC53は、電源入力端子tvから入力された出力電圧Vout(直流電圧)を出力端子toから出力する。これにより、端子部51における正極側出力端子T4と負極側出力端子T5との間にソレノイド24−1〜24−3を駆動するための駆動電圧Vdが生じる。
【0039】
ソレノイド24−1〜24−3は、それぞれ異なる光学ユニット2内に設けられるが(
図1参照)、これらソレノイド24−1〜24−3に設けられるソレノイドコイル24−1a〜24−3aは、回路上では図のように並列接続されている。具体的に、ソレノイドコイル24−1a〜24−3aは、それぞれ一端が正極側出力端子T4に接続された共通のラインに対して接続され、他端が負極側出力端子T5に接続された共通のラインに対して接続されている。
これにより、ソレノイドコイル24−1a〜24−3aのそれぞれに駆動電圧Vdを印加可能とされている。
【0040】
ここで、本例のソレノイド駆動回路5においては、駆動IC53の出力端子toとアースとの間に、ダイオードD1をアノード側を接地する向きで挿入している。つまりダイオードD1は、ソレノイドコイル24−1a〜24−3aのそれぞれに対して並列の関係に接続されている。
このダイオードD1は、電源OFF時におけるサージ吸収のためのダイオードとして機能する。
本例では、上記のようにソレノイドコイル24−1a〜24−3aを並列接続していることから、サージ吸収素子としてのダイオードD1をソレノイドコイル24−1a〜24−3aごとに設ける必要がなく、一つのみとすることができる。
【0041】
また、駆動IC53は、上記のようなソレノイドコイル24−1a〜24−3aの並列接続回路を有する負荷側の異常検知を行う。具体的に、該異常検知としては、駆動電圧Vdの電圧値が所定の第一閾値以下に低下したか否か(対短絡)、及び所定の第二閾値(>第一閾値)以上に上昇したか否か(対断線)を判別し、何れかの判別において肯定結果が得られた場合は異常ありとの判定結果を得、何れの判別においても否定結果が得られた場合は異常なしとの判定結果を得る。
なお、上記の異常検知手法はあくまで一例であり、異常検知としては駆動電圧Vdを印加するための給電ラインの給電状態に基づき行うものであればよい。
【0042】
駆動IC53は、上記のような異常検知の結果を表す検知結果信号Snを検知信号端子tsを介して通知信号生成回路54に出力する。
【0043】
通知信号生成回路54は、車両側に出力すべきソレノイド24−1〜24−3の断線有無を表す通知信号(本例では異常通知信号Sd)を生成する。
通知信号生成回路54は、抵抗R3、抵抗R4、抵抗R5、トランジスタQ1、発振回路54a、抵抗R10、ダイオードD2、コンデンサC10、抵抗R11、抵抗R12、トランジスタQ4、抵抗R13、インダクタL1、及びコンデンサC11を備えている。
【0044】
トランジスタQ1は、例えばNPN型のバイポーラトランジスタとされ、ベースが抵抗R4を介して駆動IC53における検知信号端子tsに接続され、エミッタが接地され、ベース−エミッタ間に抵抗R5が挿入されている。また、トランジスタQ1のベースは、抵抗R4と抵抗R3との直列接続回路を介して電圧Vccに接続されている。抵抗R3は、一端が抵抗R4と検知信号端子tsとの接続点に対して接続され、他端が電圧Vccに接続されている。
後述するように、トランジスタQ1のコレクタは、発振回路54aの動作をON/OFFするための制御端子として機能する。
【0045】
発振回路54aは、本例では2石のトランジスタQ2、Q3を有するマルチバイブレータで構成している。
トランジスタQ2、Q3は、本例ではPNP型のバイポーラトランジスタを用いている。トランジスタQ2、Q3は、それぞれエミッタが前述したツェナーダイオードZD4のカソードに接続され、トランジスタQ2のコレクタは抵抗R6を介して接地され、トランジスタQ3のコレクタは抵抗R9を介して接地されている。トランジスタQ2のベースは、抵抗R8を介して接地され、トランジスタQ3のベースは抵抗R7を介して上述したトランジスタQ1のコレクタに接続されている。
トランジスタQ2のコレクタと抵抗R6との接続点とトランジスタQ3のベースと抵抗R7との接続点との間には、コンデンサC8が挿入され、トランジスタQ3のコレクタと抵抗R9との接続点とトランジスタQ2のベースと抵抗R8との接続点との間には、コンデンサC9が挿入されている。
【0046】
本例では、上記の発振回路54aにおけるトランジスタQ3のコレクタが発振信号の出力端子として機能する。
トランジスタQ3のコレクタは、抵抗R10と抵抗R11による直列接続回路を介して例えばNPN型のバイポーラトランジスタで構成されたトランジスタQ4のベースに接続されている。抵抗R10に対しては、ダイオードD2がカソード側をトランジスタQ3のコレクタに接続する向きに並列接続され、また抵抗R10と抵抗R11との接続点とアースとの間にはコンデンサC10が挿入されている。
【0047】
トランジスタQ4は、エミッタが接地されていると共に、ベース−エミッタ間に抵抗R12が挿入されている。トランジスタQ4のコレクタは抵抗R13とインダクタL1による直列接続回路を介して端子部51における通知信号出力端子T3に接続されている。
通知信号出力端子T3とアースとの間には、コンデンサC11が挿入されている。
【0048】
上記構成による通知信号生成回路54の動作について説明する。
先ず、本例において、駆動IC53は検知結果信号Snとして、異常なしとの判定結果が得られた場合はHレベルを出力し、異常有りとの判定結果が得られた場合はLレベルを出力する。
このため、異常なしと判定された正常時には、検知結果信号SnがHレベルであることに応じてトランジスタQ1がON状態とされる。トランジスタQ1がONされると、発振回路54aにおいてトランジスタQ3がONとされ、トランジスタQ3とトランジスタQ2とが交互に所定周期でON/OFFを繰り返す発振動作が開始される。これにより、トランジスタQ3のコレクタに上記所定周期に応じた発振信号が得られる。
この発振信号に応じてトランジスタQ4がON/OFFを繰り返し、これにより通知信号出力端子T3を介して出力される異常通知信号Sdは、所定周期で発振する発振信号とされる。この場合の発振信号は、GND電位(Low電位)とハイインピーダンスとを周期的に繰り返す信号とされる。
【0049】
一方、異常時(ソレノイド側の異常時)においては、検知結果信号SnがLレベルであることに応じてトランジスタQ1がOFFとされ、これに伴い、発振回路54aによる上記の発振動作がOFFとされる。この結果、異常通知信号Sdはハイインピーダンス状態を維持する信号とされる。
【0050】
なお、異常としては、ソレノイド側の異常のみでなく、通知信号生成回路54側の異常も生じ得る。故障等の何らかの要因で通信信号生成回路54が動作停止となる異常が生じた場合、異常通知信号Sdは、上記のソレノイド側の異常時と同様、トランジスタQ1がOFFとなるためハイインピーダンス状態を維持する信号とされる。
【0051】
さらに、異常通知信号SdのECU100への供給経路全体で生じ得る異常としては、通知信号出力端子T3が地絡する(GND電位となる)異常も生じ得る。この場合、異常通知信号SdはGND電位(Low電位)を維持する信号となる。
【0052】
ECU100は、上記のような異常通知信号Sdの信号態様の相違に基づき、ソレノイド24−1〜24−3の異常有無を判定できる。具体的には、異常通知信号Sdが上記の発振状態となっていない場合に異常有りとの判定結果を得る。ECU100は、ソレノイド24−1〜24−3の異常有りと判定した場合には、ソレノイド駆動回路5への電源電圧VB1の供給をOFFとし、ソレノイドコイル24−1a〜24−3aに対する駆動電圧Vdの印加を停止させることで、光学ユニット2−1〜2−3それぞれをロービーム照射状態に遷移させる。また、これと共にECU100は、ソレノイド24−1〜24−3の異常有りと判定した場合には、光源駆動回路4に対して追加ビーム照射ユニット3における追加光源部31をOFFする指示を行う。
これにより、車両用灯具1においては、ソレノイド24−1〜24−3の少なくとも何れかの断線によって不完全な配光状態によるハイビーム照射が行われてしまうことの防止が図られる。
なお、ECU100は、上記の異常通知信号Sdに基づき、正常状態と、ソレノイド側又は通知信号生成回路54側何れかの異常状態と、通知信号供給経路の異常状態(前述した通知信号出力端子T3の地絡異常)との3状態について判定を行うこともできる。
【0053】
図3は、変形例としての車両用灯具1Aの回路構成を示した図である。なお
図3では、スイッチSW1の図示は省略している。
変形例としての車両用灯具1Aは、ソレノイドコイル24−1a〜24−3aごとに駆動IC53を個別に設けたものである。
図示するように車両用灯具1Aは、ソレノイド駆動回路5に代えてソレノイド駆動回路5Aが設けられている。ソレノイド駆動回路5Aにおいて、個別に設けられた駆動IC53はそれぞれ末尾の数値を対応するソレノイドコイル24と一致させて駆動IC53−1、53−2、53−3と表記する。
【0054】
この場合、駆動IC53−1、53−2、53−3それぞれの入力端子tiは、それぞれアースとの間に対応するツェナーダイオードZD4が挿入され、また入力端子tiとツェナーダイオードZD4との接続点とコンデンサC4との間には抵抗R2がそれぞれ挿入されている。これにより、各入力端子tiにはそれぞれ対応するツェナーダイオードZD4によるツェナ電圧(Vcc)が入力される。
また、駆動IC53−1〜53−3における電源入力端子tvには、
図2に示した駆動IC53の場合と同様に出力電圧Voutが入力されている(コンデンサC6の接続形態も同様)。
【0055】
また、この場合、端子部51に代えて端子部51Aが設けられる。端子部51Aは、端子部51との比較で、正極側出力端子T4に代えて正極側出力端子T4−1、T4−2、T4−3が設けられた点が異なる。
この場合、ソレノイドコイル24−1aは、一端が正極側出力端子T4−1に接続され、他端が負極側出力端子T5に接続されている。ソレノイドコイル24−2aは、一端が正極側出力端子T4−2に接続され、他端が負極側出力端子T5に接続され、ソレノイドコイル24−3aは一端が正極側出力端子T4−3に接続され他端が負極側出力端子T5に接続されている。
【0056】
正極側出力端子T4−1、T4−2、T4−3は、それぞれアースとの間にコンデンサC7とサージ吸収のためのダイオードD1との並列接続回路が挿入されている。
【0057】
駆動IC53−1は、出力電圧Voutに基づく駆動電圧Vd−1を正極側出力端子T4−1を介してソレノイドコイル24−1aに印加する。同様に、駆動IC53−2は出力電圧Voutに基づく駆動電圧Vd−2を正極側出力端子T4−2を介してソレノイドコイル24−2aに印加し、駆動IC53−3は出力電圧Voutに基づく駆動電圧Vd−3を正極側出力端子T4−3を介してソレノイドコイル24−3aに印加する。
【0058】
また、駆動IC53−1〜53−3それぞれの検知信号端子tsは、通知信号生成回路54における抵抗R3と抵抗R4との接続点に接続されている。
つまりこの場合、異常通知信号Sdとしては、車両用灯具1の場合と同様にソレノイドコイル24−1〜24−3の正常時には所定周期による発振信号が出力され、何れかに断線等の異常が生じた場合には該発振信号と異なる信号(本例ではハイインピーダンス状態を維持する信号)が出力される。
【0059】
上記のような変形例としての車両用灯具1Aは、駆動IC53をソレノイドコイル24−1a〜24−3aごとに個別に設けたことで、ソレノイドコイル24−1a〜24−3aを個別の駆動電圧により駆動することができる。これは、例えばソレノイドコイル24−1a〜24−3aに異なる電圧値による駆動電圧を印加することが要請される場合等に有利である。
また、駆動IC53をソレノイドコイル24−1a〜24−3aごとに個別に設けたことで、ソレノイドコイル24−1a〜24−3aごとに断線検知を個別に行うことができる。
【0060】
上記のように実施の形態の車両用灯具(同1又は1A)は、光学要素(可動シェード23)と光学要素を駆動するソレノイド(同24)とを有する光学ユニット(同2)と、ソレノイドに対し直流電源からの電圧を受けて駆動電圧を印加する駆動回路(ソレノイド駆動回路5、5A)と、を備えた車両用灯具であって、駆動回路は、ソレノイドの断線有無を表す通知信号を生成する信号生成回路(同54)を備え、信号生成回路は、ソレノイドが正常な場合は通知信号として第一信号を生成し、ソレノイドの断線が検知された場合の通知信号が第一信号とは異なる第二信号とされたものである。
【0061】
上記のような第一信号と第二信号の使い分けにより、第一信号によっては、ソレノイドの断線が無い旨と共に、断線通知のための回路に異常が生じていないこと、つまりは故障等がなく該第一信号を生成可能な正常状態にあることを車両側に通知可能となる。換言すれば、一方の第二信号によれば、ソレノイドの断線が検知されたか、或いは通知のための回路に異常が生じて断線有無の適正な通知が不能な状態の何れかである旨を車両側に通知可能となる。
従って、ソレノイドの断線有無の通知を、通知のための回路が異常を来すことも考慮して適切に行うことのできる車両用灯具を実現できる。
【0062】
また、実施の形態の車両用灯具は、第一信号が所定周期で発振する発振信号とされ、第二信号が非発振信号とされたものである。
これにより、ソレノイドの断線が検知されたか、或いは通知のための回路に異常が生じて断線有無の適正な通知が不能な状態の何れかである旨を通知するための構成を、発振回路を設けるという比較的簡易な構成で実現可能となる。
従って、上記の通知を実現するにあたっての回路部品点数の削減、回路の大型化の防止、及びコスト削減を図ることができる。
【0063】
さらに、実施の形態の車両用灯具(同5)は、光学ユニットを複数備え、駆動回路は、複数のソレノイドに対し駆動電圧を印加するための共通の給電ラインを有し、共通の給電ラインの給電状態に基づき複数のソレノイドの断線検知を行っている。
これにより、ソレノイドごとに断線検知のための回路を設けずに済む。
従って、部品点数削減による回路の大型化の防止、及びコスト削減を図ることができる。
【0064】
さらにまた、実施の形態の車両用灯具(同5)においては、駆動回路は、複数のソレノイドに対し並列接続された共通のサージ吸収素子(ダイオードD1)と、複数のソレノイドに共通の給電ラインに対して挿入された逆接停止回路(同52a)とを備えている。
これにより、ソレノイドごとにサージ吸収素子及び逆接停止回路を設けずに済む。
従って、部品点数削減による回路の大型化の防止、及びコスト削減を図ることができる。
【0065】
また、実施の形態の車両用灯具は、ロービームよりも上方の領域に光を照射する追加ビーム照射ユニット(同3)を備えるものである。
光学ユニットとは別途の追加ビーム照射ユニットを備えることで、所望のビーム配光パターンを実現する上での設計自由度の向上を図ることができる。
【0066】
さらにまた、実施の形態の車両用灯具においては、光学ユニットは、光学要素の駆動/非駆動によりハイビーム照射状態/ロービーム照射状態の切り替えが行われるものである。
これにより、ハイビーム/ロービームの切り替え照射機能を有する車両用灯具として、ソレノイドの断線有無の通知を、通知のための回路が異常を来すことも考慮して適切に行うことのできる車両用灯具を実現できる。
【0067】
なお、先の
図2では、複数のソレノイドコイル24aの接続回路に共通の駆動電圧Vdを出力する構成を採る場合において、複数のソレノイドコイル24aを並列接続する場合を例示したが、複数のソレノイドコイル24aについては、並列接続ではなく直列接続することも考えられる。直列接続とすれば、1個のソレノイド24の断線に応じて他のソレノイド24も自動的にOFFするため、断線検知の必要性を無くすことが可能である。 しかしながら、直列接続とした場合は、接続するソレノイドコイル24aの数に応じて個々のソレノイドコイル24aに印加される電圧がまちまちとなるため、車両用灯具1に設ける光学ユニット2の数に応じて異なる仕様のソレノイド24を用いる必要が出てきてしまう。
これに対し、並列接続とすれば、ソレノイドコイル24aの数に依らず各ソレノイドコイル24aに印加される電圧は一定とできるため、車両用灯具1に設ける光学ユニット2の数に依らず共通仕様のソレノイド24を用いることができる。
【0068】
なお、本発明は上記により説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、上記では、本発明が車両用のヘッドランプに適用される場合を例示したが、本発明はヘッドランプ以外の他の車両用の灯具にも好適に適用できる。
【0069】
また、上記では、光学要素がロービーム照射状態/ハイビーム照射状態の切り替えを可能とするための可動シェードである場合を例示したが、光学要素としては、例えば配光状態を所定の第一状態と第二状態とに切り替え可能とするもの等、他の形態も採り得るものである。