特許第6800595号(P6800595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800595マンホール蓋の固着方法及び当該方法に使用する誘導加熱器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800595
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】マンホール蓋の固着方法及び当該方法に使用する誘導加熱器
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/14 20060101AFI20201207BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   E02D29/14 Z
   H05B6/10 331
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-64515(P2016-64515)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-179746(P2017-179746A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋
(72)【発明者】
【氏名】北田 慎
(72)【発明者】
【氏名】成川 正信
(72)【発明者】
【氏名】岡 信哉
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104805867(CN,A)
【文献】 特開平07−185677(JP,A)
【文献】 特公昭49−039068(JP,B1)
【文献】 特開2016−006766(JP,A)
【文献】 特開2012−228633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
E02D 29/14
E03F 5/00−5/16
H05B 6/00−6/10
H05B 6/14−6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの開口受枠に被せられた金属製のマンホール蓋を開放し、その後当該マンホール蓋を上記マンホールの開口受枠に被せて閉鎖して当該マンホール蓋を固着させる作業において、
可搬式の誘導加熱器を設け、当該誘導加熱器は支持部材によりマンホール蓋上面から離れて当該マンホール蓋面に対向して加熱面を設け、上記支持部材により上記マンホール蓋面上及び当該マンホール蓋付近を移動自在に支持されるものであり、
上記マンホールの開口受枠とマンホール蓋の隙間に固着剤を流し込み、当該固着剤を流し込んだ位置の直上から前記可搬式の誘導加熱器で上記マンホール蓋を加熱して、当該マンホール蓋の側面に位置する上記固着剤を固化させることを特徴とする、マンホール蓋の固着方法。
【請求項2】
マンホールの開口受枠に被せる金属製のマンホール蓋をマンホールの開口受枠に固着剤により固着させる作業において使用する誘導加熱器であって、
当該誘導加熱器は支持部材によりマンホール蓋上面から離れて当該マンホール蓋面に対向して加熱面を設け、上記支持部材により上記マンホール蓋面上及び当該マンホール蓋付近を移動自在に支持されることを特徴とする、可搬式の誘導加熱器。
【請求項3】
マンホールの開口受枠に被せる金属製のマンホール蓋をマンホールの開口受枠に固着剤により固着させる作業において使用する誘導加熱器であって、
当該誘導加熱器は、支柱を立設し、当該支柱を中心として当該支柱から複数の脚を放射状に伸縮自在に延ばし、かつ当該各脚は折り畳み自在に設け、当該各脚の先端に夫々誘導加熱部を設け、当該各誘導加熱部は支持部材によりマンホール蓋面上から離れて当該マンホール蓋面に対向して加熱面を設け、上記支持部材により当該マンホール蓋面上及び当該マンホール蓋付近を移動自在に支持されることを特徴とする、可搬式の誘導加熱器。
【請求項4】
上記誘導加熱器及び上記誘導加熱部の支持部材は車輪又はローラーであることを特徴とする、上記請求項2又は3に記載の可搬式の誘導加熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に敷設されたマンホールの蓋の固着方法及び当該方法に使用する誘導加熱器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路下等の地中には、送電線や情報通信ケーブルなど各種の社会基盤整備のための設備が敷設されている。この様な送電線や情報通信ケーブルの取替等の作業は道路を封鎖して行われるため夜間に実施されることが多い。これらの作業の最後にマンホールに蓋をして当該蓋が動かない様に固着剤を塗布して当該固着剤が固化した後、上記道路の封鎖が解除されるようになっている。
【0003】
上記固着剤の固化については、図14に示す様に、気温30℃の時、5分程度で固化するが、気温が低い時、例えば気温0℃の時では30〜40分もかかってしまう。そのため、夏季においてはすぐに固化するため支障はないが、特に冬季の寒冷な時期においては固化に時間がかかる。よって、道路の封鎖時間が長くなり、道路交通に支障を来たすこととなっている。
【0004】
そこで、現場において常用されている投光器やハロゲン灯を使用して、上記マンホール蓋とマンホールの開口受枠との間に流し込まれた固着剤を照射してその熱を利用して早く固化させている。この様な投光器やハロゲン灯としては、以下の特許文献1及び特許文献2に示す様なものがある。
【特許文献1】実公平6−28721公報
【特許文献2】特開平7−130203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載されたような投光器やハロゲン灯を使用した場合でも、上記固着剤が固化するまでにかかる時間は少なくなく、その間、作業員はただ固着剤が固化するのを待つしかなく、固着剤のもっと早い固化方法が求められている。また、上記の様な作業現場においては、可燃物が多くあり、火気厳禁となっている。
【0006】
一方、加熱の際、実際に炎が出ないIH(Induction Heating、電磁誘導加熱、以下、同じ)クッキングが一般の家庭等においても使用されている。このIHクッキングは、実際に炎が出ないので炎の立ち消え、炎の燃え移り、不完全燃焼や酸素欠乏等のおそれが無く、安心安全である。また、使用後の後片付けも容易である。
【0007】
また、上記マンホール蓋及びマンホールの開口受枠は、当該マンホール蓋等の上を車両等が通過しても壊れたり、外れたりしないように強固で十分な重さを有する金属を使用して形成されている。これらのことから、上記IHクッキング等の誘導加熱は上記現場作業に有効と考えられる。
【0008】
この発明は、これらの点に鑑みて為されたもので、真冬の夜の寒冷時であっても、固着剤を短時間で効率的に固化出来るマンホール蓋の固着方法及び当該方法に使用する誘導加熱器を提供して上記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、路上に設置されたマンホールの開口受枠に被せられた金属製のマンホール蓋を開放し、その後当該マンホール蓋を上記マンホールの開口受枠に被せて閉鎖して当該マンホール蓋を固着させる作業において、可搬式の誘導加熱器を設け、当該誘導加熱器は支持部材によりマンホール蓋上面から離れて当該マンホール蓋面に対向して加熱面を設け、上記支持部材により上記マンホール蓋面上及び当該マンホール蓋付近を移動自在に支持されるものであり、上記マンホールの開口受枠とマンホール蓋の隙間に固着剤を流し込み、当該固着剤を流し込んだ位置の直上から前記可搬式の誘導加熱器で上記マンホール蓋を加熱して、当該マンホール蓋の側面に位置する上記固着剤を固化させる、マンホール蓋の固着方法とした。
【0010】
請求項2の発明は、マンホールの開口受枠に被せる金属製のマンホール蓋をマンホールの開口受枠に固着剤により固着させる作業において使用する誘導加熱器であって、当該誘導加熱器は支持部材によりマンホール蓋上面から離れて当該マンホール蓋面に対向して加熱面を設け、上記支持部材により上記マンホール蓋面上及び当該マンホール蓋付近を移動自在に支持される、可搬式の誘導加熱器とした。
【0011】
請求項3の発明は、マンホールの開口受枠に被せる金属製のマンホール蓋をマンホールの開口受枠に固着剤により固着させる作業において使用する誘導加熱器であって、当該誘導加熱器は、支柱を立設し、当該支柱を中心として当該支柱から複数の脚を放射状に伸縮自在に延ばし、かつ当該各脚は折り畳み自在に設け、当該各脚の先端に夫々誘導加熱部を設け、当該各誘導加熱部は支持部材によりマンホール蓋面上から離れて当該マンホール蓋面に対向して加熱面を設け、上記支持部材により当該マンホール蓋面上及び当該マンホール蓋付近を移動自在に支持される、可搬式の誘導加熱器とした。
【0012】
請求項4の発明は、上記誘導加熱器及び上記誘導加熱部の支持部材は車輪又はローラーである、上記請求項2又は3に記載の可搬式の誘導加熱器。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、誘導加熱器でマンホール蓋を加熱し、電磁誘導によりマンホール蓋自体を発熱させるので、真冬の夜の寒冷時であっても、マンホール蓋とマンホールの開口受枠の間に流し込まれた固着剤を短時間で効率的に固化させることが出来る。これにより、作業時間を短くすることが出来、道路封鎖の時間も短縮することが出来、公共の利益にも寄与するものである。また、マンホール蓋が金属製であることに着目して誘導加熱器を用いるもので工事現場等で炎を出さずに効率的にマンホール蓋を温め固着剤を固化出来、安心安全である。
【0014】
請求項2、3及び4の各発明によれば、車輪等の支持部材により、誘導加熱器等をマンホール蓋面から離して当該マンホール蓋面に対向して温めることが出来るため、当該誘導加熱器等を移動自在に出来、マンホール蓋面上等の最適な位置に容易に設置することが出来、使い勝手が良い。これにより、本願発明のマンホール蓋の固着方法の実施を促進出来ものである。
【0015】
また、請求項3の発明によれば、立設された支柱を中心として当該支柱から複数の脚を放射状に伸縮自在に延ばし、かつ折り畳み自在に設け、当該各脚の先端に夫々誘導加熱部を設け、上記マンホール蓋面上及び当該マンホール蓋付近を移動自在に支持されるようにしたので、上記誘導加熱部を最適な位置に移動させることが出来、マンホール蓋の複数箇所に流し込まれた固着剤を1度に速やかにかつ確実に固化出来るものであり、さらに、作業効率を上げることが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施の形態例1のマンホール蓋の固着方法において、誘導加熱器をマンホール蓋上に設置した状態の一部断面図である。
図2】この発明の実施の形態例1のマンホール蓋の固着方法において、誘導加熱器、ハロゲン灯及び投光器を夫々使用してマンホール蓋の温度上昇具合を比較する実験を示す平面図である。
図3】マンホール蓋を開放した後、当該マンホール蓋を閉じた際、マンホール蓋とマンホールの開口受枠の間に固着剤を流し込む位置を示す斜視図である。
図4】この発明の実施の形態例1のマンホール蓋の固着方法の上記図2の実験において、マンホール蓋上及び同マンホール蓋側面の2箇所で温度を測定する様子を示す説明図である。
図5】上記図2の実験結果を示すグラフ図である。
図6】この発明の実施の形態例1のマンホール蓋の固着方法おいて、当該マンホール蓋における誘導加熱器の熱伝達状況を確認する実験を示す平面図である。
図7】上記図6の実験結果を示すグラフ図である。
図8】この発明の実施の形態例1のマンホール蓋の固着方法において、マンホール蓋の面上6mmの位置に上記誘導加熱器は配置し、この位置から加熱してマンホール蓋の温度上昇具合を実験し、測定している様子を示す平面図である。
図9】この発明の実施の形態例1のマンホール蓋の固着方法において、マンホール蓋の面上6mmの位置に上記誘導加熱器は配置し、この位置から加熱してマンホール蓋の温度上昇具合を実験し、測定している様子を示す側面図である。
図10】上記図8及び図9の実験結果を示すグラフ図である。
図11】この発明の実施の形態例2の誘導加熱器の三面図(正面図、平面図、右側面図)である。
図12】この発明の実施の形態例3の誘導加熱器をマンホール蓋上に設置した状態の平面図である。
図13】この発明の実施の形態例3の誘導加熱器をマンホール蓋上に載置した状態の一部省略断面図である。
図14】マンホール蓋用の固着剤の固化時間と気温との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態例1)
以下、この発明の実施の形態例1のマンホール蓋の固着方法(以下、単に「固着方法」と言う。)を説明する。
【0018】
このマンホール蓋Aの固着方法は、図1に示す様に、路上に設置されたマンホールの鉄製の開口受枠Bに被せられた鉄製のマンホール蓋Aを開放し、作業を行い、その後、このマンホール蓋Aを上記マンホールの開口受枠Bに被せて閉鎖してこのマンホール蓋Aを固着させる作業において採用されるものである。
【0019】
上記マンホールの開口受枠Bとマンホール蓋Aの隙間に固着剤Cを流し込み、この固着剤Cを流し込んだ位置の直上から可搬式の誘導加熱器Dで上記マンホール蓋Aを加熱して、当該マンホール蓋Aの側面に位置する上記固着剤Cを固化させると言うものである。
【0020】
まず、図2に示すように、実施の形態例1の誘導加熱器、従来例の投光器E及びハロゲン灯Fを夫々使用して加熱し、マンホール蓋Aの温度上昇具合を比較する実験を行った。この実験では、上記可搬式の誘導加熱器Dとしては、IHコンロ(東京衡機株式会社製、PLM297000 定格消費電力1300W 定格電圧100V)を使用した。
【0021】
マンホール蓋Aを固着する作業において、固着剤Cを流し込む位置は、図3に示す様に、通常、マンホール蓋Aを平面視三等分した位置となっている(図3において楕円で囲んだ3箇所)。ここでは固着剤Cとして、NSG11(商標、株式会社ニシヤマ製)を使用する。
【0022】
これらの3箇所の位置の直上に、上記誘導加熱器D、投光器E、ハロゲン灯Fを夫々配置する。また、ここでは、上記3箇所において、図2及び図4に示す様に、マンホール蓋A上面の位置に熱電対CH1(誘導加熱器Dで加熱)、CH3(投光器Eで加熱)、CH5(ハロゲン灯Fで加熱)とマンホール蓋A側面の位置に熱電対CH2(誘導加熱器Dで加熱)、CH4(投光器Eで加熱)、CH6(ハロゲン灯Fで加熱)及び外気温測定位置に熱電対CH7を設置し、上記各加熱器による加熱温度の測定箇所とした。ここでは、加熱後、5分以内に30℃に到達した場合を有効とした。
【0023】
その結果は図5に示すように、誘導加熱器Dの熱電対CH1、CH2については、加熱開始から4分ほどで40℃になっており、マンホール蓋A上面のみならず、側面でも良好な温度上昇が見られ、有効であることが分かった。また、投光器Eの熱電対CH3、CH4及びハロゲン灯Fの熱電対CH5、CH6は、加熱開始から8分程度で20度前後になっているが、それ以降温度は下がり、30分以上経過しても30℃には至らなかった。つまり、固着剤の固化に時間がかかる。これらにより、誘導加熱器Dを使用した場合は、投光器E、ハロゲン灯Fを使用した場合よりも格段に効果が有ることが分かった。
【0024】
続いて、マンホール蓋Aにおける誘導加熱器Dの熱伝達状況を確認する実験を行った。この実験では、図6に示す様に、マンホール蓋Aの中心より外縁に向けて、10cm間隔に熱電対CH8(マンホール蓋中心の位置)、CH9、CH10、CH11、CH12、及びCH7(外気温測定用)を設置し、上記誘導加熱器Dを上記マンホール蓋Aの中心の位置より加熱し、温度変化を確認した。ここでも、加熱後、5分以内に30℃に到達した場合を有効とした。
【0025】
その結果は図7に示すように、誘導加熱器Dの真下の熱電対CH8、上記熱電対CH8から10cm離れた箇所に位置する熱電対CH9については、加熱開始から4分ほどで33〜45℃になっており有効であることが分かり、その他上記熱電対CH8から20cm離れた熱電対CH10、同30cm離れた熱電対CH11、同40cm離れた熱電対CH12については、加熱開始から30分以上経過しても30℃には至らなかった。これらにより、誘導加熱器Dを使用した場合、誘導加熱部に直接対向する位置では有効に昇温しているが、誘導加熱部に直接対向する位置から外れれば効果的な昇温は無く、短時間での熱の伝達は見られなかった。
【0026】
続いて、図8に示すように、実施の形態例1の誘導加熱器Dをマンホール蓋A上に配置する際に、図9に示す様に、このマンホール蓋Aの面上6mmの位置で対向させて上記誘導加熱器Dを配置し、この位置から加熱してマンホール蓋Aの温度上昇具合を実験し、測定した。これは、実際に作業においては、誘導加熱器Dをマンホール蓋A上に配置する際、上記固着剤Cと接触しない様にマンホール蓋Aを少し離した状態で配置することから、この様に距離を設けた場合でも良好な温度上昇が得られるか否かを実験した。
【0027】
その結果は、図10に示すように、誘導加熱器Dの真下の熱電対CH8、この熱電対CH8から10cm離れた個所に位置する熱電対CH9についても、加熱開始から2分ほどで30℃を越えており有効であることが分かった。これらにより、誘導加熱器Dをマンホール蓋A上に配置する際、流し込まれた上記固着剤Cと接触しないように、少し離した状態で配置しても良好な温度上昇が得られることが分かった。
【0028】
以上の3つの実験においては、誘導加熱器Dによってマンホール蓋Aからやや離した状態で、直上からマンホール蓋Aを直接加熱することにより、電磁誘導のうず電流による発熱現象がマンホール蓋Aにおいても生じ、これによりマンホール蓋A自身が発熱し、接触する固着剤Cを速やかかつ充分に固化出来ることが分かった。
【0029】
(実施の形態例2)
次に、上記実施の形態例1のマンホール蓋Aの固着方法に使用する誘導加熱器の具体例の1つを実施の形態例2として説明する。図11に示す様に、上記可搬式の誘導加熱器Gとしては、ボックス型の本体1の下面に加熱面を設け、上面には作業員が手で持ち運び出来るように湾曲した把手部2を設けたものとなっている。
【0030】
また、この本体1の一側面には車輪3を軸支し、他側面には球状のローラー4を2個設けて、この誘導加熱器Gをマンホール蓋A上に載置した場合、上記加熱面がマンホール蓋Aの上面より少し上方に位置して対向するように支持し、また、当該マンホール蓋A上及びマンホール蓋A付近上を移動し易い様になっている。また、この誘導加熱器Gの上面には電源コード8用の差し込み部9を設けている。
【0031】
(実施の形態例3)
さらに、上記実施の形態例1のマンホール蓋の固着方法に使用する誘導加熱器の具体例の他の例を実施の形態例3として説明する。ここで説明する誘導加熱器Hとしては、図12及び図13に示す様に、上記マンホール蓋Aの3箇所に流し込まれた固着剤Cを1度に固化出来るように、これらの固着剤Cが流し込まれた位置に対向する位置に誘導加熱部7を夫々備えたものとなっている(都合3個)。ここでは、支柱5を立設し、当該支柱5を中心として当該支柱5の中部から三方へ伸縮自在に延び、かつ折り畳み自在に設けた三脚6の先端に、上記誘導加熱部7を設け、これらの誘導加熱部7の夫々の下面に加熱面を設け、上記マンホール蓋A面上から一定距離離れて支持されるようになっている。
【0032】
また、各誘導加熱部7の内側面には車輪3を軸支し、同外側面には球状のローラー4を2個設けて、この誘導加熱器Hをマンホール蓋A上に載置した場合、上記加熱面がマンホール蓋Aの上面より少し上方に位置して対向するように支持し、また、当該マンホール蓋A上及び当該マンホール蓋A付近上を移動し易い様になっている。また、各誘導加熱部7の上面には電源コード8用の差し込み部9を設けている。
【0033】
また、マンホール蓋Aとマンホールの開口受枠Bの隙間に固着剤Cを流し込む場所は、通常3個所となっているが、これらの場所は寸法を測って厳密に決められたものでは無く、多くは作業員の目分量で決められたものであり、大まかな配置となっている。
【0034】
しかし、この誘導加熱器Hの三脚6は三方へ伸縮自在であり、また、誘導加熱部7は折り畳み自在であるので、各誘導加熱部7の加熱面は最適な位置に設置することが出来、マンホール蓋Aにおける3個所の固着剤Cの固化が1度に速やかかつ確実に行われ、より効率的な作業が出来る。
【0035】
この実施の形態例1において、誘導加熱としては、高周波誘導加熱を含み、当該誘導加熱の対象の被加熱部材としては、鉄に限らず、誘導加熱が行える金属、例えば、ステンレス、銅又はアルミニウムなども含むものである。また、鉄製のマンホール蓋A及び鉄製のマンホールの開口受枠Bを使って説明したが、ここで言う鉄製とは、鋳鉄製やその他の鉄製のものを含む概念である。
【0036】
また、実施の形態例2の誘導加熱器G及び実施の形態例3の誘導加熱部7では、これらの誘導加熱器G等の一側面に車輪3を設け、他側面に球状のローラー4を2個設けたものを使って説明したが、これらの誘導加熱器G及び誘導加熱部7を移動自在に設ける構成としてはこれらのものに限るわけでは無く、マンホール蓋A面上及びマンホール蓋A付近を当該マンホール蓋の上面からやや離れて対向する加熱面を移動自在に支持出来る支持部材ならもちろん他の構成でも良い。
【0037】
また、実施の形態例3の誘導加熱器Hにおいて、三脚を使用したが、脚としては三脚に限るものでは無く作業において最適な脚数のものを選択すれば良い。
【符号の説明】
【0038】
A マンホール蓋 B 開口受枠 C 固着剤
D 誘導加熱器 E 投光器 F ハロゲン灯
G 誘導加熱器 H 誘導加熱器
1 本体 2 把手部 3 車輪
4 ローラー 5 支柱 6 三脚
7 誘導加熱部 8 電源コード 9 差し込み部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14