特許第6800622号(P6800622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800622精製ガスの製造方法および精製ガスの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800622
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】精製ガスの製造方法および精製ガスの製造装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20201207BHJP
   F25J 3/08 20060101ALI20201207BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20201207BHJP
   C01B 21/04 20060101ALI20201207BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20201207BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   F25J3/04 103
   F25J3/08ZAB
   B01D53/047
   C01B21/04 Z
   C01B21/04 B
   B01J23/44 M
   B01J23/42 M
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-120023(P2016-120023)
(22)【出願日】2016年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-223417(P2017-223417A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504226456
【氏名又は名称】エア・ウォーター・クライオプラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】末長 純也
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕治
(72)【発明者】
【氏名】嶺山 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和之
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−310509(JP,A)
【文献】 特開平06−304432(JP,A)
【文献】 特開2001−033156(JP,A)
【文献】 特開2012−189254(JP,A)
【文献】 特開平11−037643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 3/00
B01D 53/007
B01J 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガス中の少なくとも水分を吸着除去する第1吸着工程と、
前記第1吸着工程後の原料ガス中の少なくともメタンおよび亜酸化窒素を触媒反応に供し、精製ガスを得る触媒反応工程と、を備えた精製ガスの製造方法であって、
前記触媒反応工程における触媒反応の温度が250℃未満である精製ガスの製造方法。
【請求項2】
前記触媒反応で用いる触媒がパラジウム系触媒を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記触媒がさらに白金系触媒を含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により精製ガスを得る工程と、
前記精製ガス中の少なくとも水分および二酸化炭素を吸着除去し、清浄乾燥ガスを得る第2吸着工程と、を備えた清浄乾燥ガスの製造方法。
【請求項5】
前記原料ガスが空気である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記原料ガスが空気であり、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により精製空気を得る工程と、
前記精製空気を精留することにより窒素を得る精留工程と、を備えた窒素の製造方法。
【請求項7】
前記精留工程が、
第1精留塔での精留により、前記精製空気から中圧窒素と酸素富化液化空気を分離する第1精留工程と、
第2精留塔での精留により、前記酸素富化液化空気の少なくとも一部から低圧窒素を分離する第2精留工程と、を備えた、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記原料ガスが空気であり、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により精製空気を得る工程と、
前記精製空気から圧力スイング吸着法により窒素を分離する工程と、を備えた窒素の製造方法。
【請求項9】
原料ガス中の少なくとも水分を吸着除去するための第1吸着塔と、
前記第1吸着塔を経た原料ガス中の少なくともメタンおよび亜酸化窒素を触媒反応に供し、精製ガスを得るための触媒塔と、を備えた精製ガスの製造装置であって、
前記触媒塔は、250℃未満の温度で触媒反応を行うための触媒塔である精製ガスの製造装置。
【請求項10】
前記触媒塔に充填される触媒がパラジウム系触媒を含む、請求項9に記載の製造装置。
【請求項11】
前記触媒がさらに白金系触媒を含む、請求項10に記載の製造装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造装置と、
前記精製ガス中の少なくとも水分および二酸化炭素を吸着除去し、清浄乾燥ガスを得るための第2吸着塔と、を備えた清浄乾燥ガスの製造装置。
【請求項13】
前記原料ガスが空気である、請求項12に記載の製造装置。
【請求項14】
前記原料ガスが空気であり、
前記空気から精製空気を製造するための請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造装置と、
前記精製空気を精留することにより窒素を得るための精留部と、を備えた窒素の製造装置。
【請求項15】
前記精留部が、
前記精製空気から中圧窒素と酸素富化液化空気を分離するための第1精留塔と、
前記酸素富化液化空気の少なくとも一部から低圧窒素を分離するための第2精留塔と、
を備えた請求項14に記載の製造装置。
【請求項16】
前記原料ガスが空気であり、
前記空気から精製空気を製造するための請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造装置と、
前記精製空気から窒素を分離するための吸着塔と、を備えた窒素の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製ガスの製造方法および精製ガスの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気中に典型的にはメタンは約2ppm、亜酸化窒素は約500ppb含まれている。これらの成分は、例えば深冷分離方式により窒素等を製造する空気分離装置においては、低圧精留塔の液体酸素に濃縮されて高濃度となる。安全性の観点から、空気分離装置の運転管理においてメタンおよび亜酸化窒素の液体酸素中の許容される最大の濃度は、メタン468ppmおよび亜酸化窒素100ppmと非特許文献1にて規定されており、一般的には空気分離装置に貯液される液体酸素の一部を空気分離装置系外へとパージ(以下、濃縮防止パージという)することにより、液体酸素中のメタンおよび亜酸化窒素の濃度は前記規定値以下に保たれる。しかし、濃縮防止パージの量が多ければ寒冷のロスとなり、空気分離装置のエネルギー効率が悪化する。係る問題の解決策として、メタンおよび亜酸化窒素の含有量が低減された空気(精製空気)を空気分離装置に導入することが検討されている。
【0003】
特許文献1には、原料空気中の一酸化炭素、水素およびメタンを、触媒を用いた反応温度250℃以上の酸化反応により除去し、精製空気を得る方法が示唆されている。しかし、該方法ではメタンを除去するために原料空気を250℃以上とすることを要するため、電力コスト面で改善の余地がある。
【0004】
精製空気は、例えば半導体製造に用いるガスの原料となりうる。半導体製造の工程において、各工程における清浄用あるいはパージ用のガスとして、高純度窒素が一般的に使用されている。しかし、高純度窒素を全ての清浄あるいはパージ工程に用いると半導体製造のコストが高くなるという問題があった。そのため、近年高純度窒素に代わり、水分、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、メタンおよび亜酸化窒素等が除去された、クリーン・ドライ・エア(CDA:Clean Dry Air)の利用が増加している。
【0005】
CDAを製造する手段として、触媒を用いた触媒反応により原料空気中の炭化水素、水素および一酸化窒素等の不純物を除去し、精製空気を製造した後、精製空気中の水分、炭酸ガス等の不純物を吸着除去することによりCDAを得ることが特許文献2に提案されている。しかしながら、該方法では亜酸化窒素が除去されるのかが不明であるため、CDAの純度面で懸念があり、さらには精製空気を得るために、約350℃〜450℃まで原料空気を昇温する必要があり、電力コストの面でも改善の余地がある。
【0006】
前述の深冷分離方式の空気分離方法に加えて、空気から窒素を分離する手段として、圧力スイング吸着方式を利用した分離方法がある。圧力スイング吸着方式を利用した装置においては、吸着剤が充填された吸着塔に加圧した空気を供給し、空気中の酸素分子を吸着剤に吸着させ、吸着されなかった窒素を吸着塔から導出することにより窒素を得ることが特許文献3に示されている。しかし、メタン濃度が低い窒素を得ることが困難なため、導出された窒素から、250〜400℃の酸化反応によりメタンを除去する必要がある。したがって、電力面で改善の余地があり、精製空気を圧力スイング吸着方式を利用した窒素発生装置に導入することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−033156号公報
【特許文献2】特開2002−346330号公報
【特許文献3】特開平08−217422号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】空気分離装置におけるリボイラ/コンデンサの安全な運転管理指針 有限責任中間法人日本産業・医療ガス協会出版、平成20年6月、p.31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、メタンおよび亜酸化窒素の含有量が低減された精製ガスを得るために好適な精製ガスの製造方法および精製ガスの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に示す精製ガス製造方法および精製ガス製造装置、ならびに該精製ガスを用いたCDA製造方法および窒素製造方法、さらには該精製ガス製造装置を備えたCDA製造装置および窒素製造装置を提供する。
【0011】
[1] 原料ガス中の少なくとも水分を吸着除去する第1吸着工程と、前記第1吸着工程後の原料ガス中の少なくともメタンおよび亜酸化窒素を触媒反応に供し、精製ガスを得る触媒反応工程と、を備えた精製ガスの製造方法。
【0012】
[2] 前記触媒反応工程における触媒反応の温度が250℃未満である[1]に記載の製造方法。
【0013】
[3] 前記触媒反応で用いる触媒がパラジウム系触媒を含む、[1]または[2]に記載の製造方法。
【0014】
[4] 前記触媒がさらに白金系触媒を含む、[3]に記載の製造方法。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法により精製ガスを得る工程と、前記精製ガス中の少なくとも水分および二酸化炭素を吸着除去し、清浄乾燥ガスを得る第2吸着工程と、を備えた清浄乾燥ガスの製造方法。
【0015】
[6] 前記原料ガスが空気である、[5]に記載の製造方法。
[7] 前記原料ガスが空気であり、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法により精製空気を得る工程と、前記精製空気を精留することにより窒素を得る精留工程と、を備えた窒素の製造方法。
【0016】
[8] 前記精留工程が、第1精留塔での精留により、前記精製空気から中圧窒素と酸素富化液化空気を分離する第1精留工程と、第2精留塔での精留により、前記酸素富化液化空気の少なくとも一部から低圧窒素を分離する第2精留工程と、を備えた、[7]に記載の製造方法。
【0017】
[9] 前記原料ガスが空気であり、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法により精製空気を得る工程と、前記精製空気から圧力スイング吸着法により窒素を分離する工程と、を備えた窒素の製造方法。
【0018】
[10] 原料ガス中の少なくとも水分を吸着除去するための第1吸着塔と、前記第1吸着塔を経た原料ガス中の少なくともメタンおよび亜酸化窒素を触媒反応に供し、精製ガスを得るための触媒塔と、を備えた精製ガスの製造装置。
【0019】
[11] 前記触媒塔は、250℃未満の温度で触媒反応を行うための触媒塔である[10]に記載の製造装置。
【0020】
[12] 前記触媒がパラジウム系触媒を含む、[10]または[11]に記載の製造装置。
【0021】
[13] 前記触媒がさらに白金系触媒を含む、[12]に記載の製造装置。
[14] [10]〜[13]のいずれかに記載の製造装置と、前記精製ガス中の少なくとも水分および二酸化炭素を吸着除去し、清浄乾燥ガスを得るための第2吸着塔と、を備えた清浄乾燥ガスの製造装置。
【0022】
[15] 前記原料ガスが空気である、[14]に記載の製造装置。
[16] 前記原料ガスが空気であり、前記空気から精製空気を製造するための[10]〜[13]のいずれかに記載の製造装置と、前記精製空気を精留することにより窒素を得るための精留部と、を備えた窒素の製造装置。
【0023】
[17] 前記精留部が、前記精製空気から中圧窒素と酸素富化液化空気を分離するための第1精留塔と、前記酸素富化液化空気の少なくとも一部から低圧窒素を分離するための第2精留塔と、を備えた[16]に記載の製造装置。
【0024】
[18] 前記原料ガスが空気であり、前記空気から精製空気を製造するための[10]〜[13]のいずれかに記載の製造装置と、前記精製空気から窒素を分離するための吸着塔と、を備えた窒素の製造装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、メタンおよび亜酸化窒素の含有量が低減された精製ガスを提供することができ、かつ、該精製ガスを原料とすることにより、メタンおよび亜酸化窒素の含有量が低減されたCDAおよび窒素を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る、原料ガスを精製するための装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】本発明に係る、深冷分離装置の構成の一例を示す概略図である。
図3】本発明に係る、圧力スイング吸着式の窒素分離装置の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施の形態を示しながら、本発明について詳細に説明する。
<精製ガスの製造方法>
本発明に係る精製ガスの製造方法は、原料ガス中の少なくとも水分を吸着除去する第1吸着工程と、第1吸着工程後の原料ガス中の少なくともメタンおよび亜酸化窒素を触媒反応に供する触媒反応工程とを含む。
【0028】
図1は、本発明に係る原料ガスを精製するための装置の構成の一例を示す概略図である。図1に示される装置は、外部から取り入れられた原料ガス中の少なくとも水分を吸着除去するための第1吸着塔7および8から構成される第1吸着塔ユニットAと、第1吸着塔ユニットAを経た原料ガス中の少なくともメタンおよび亜酸化窒素を触媒反応に供するための触媒塔11とを含む。図1に示される装置は、上記第1吸着工程、触媒反応工程および後述する清浄乾燥ガスの製造方法における第2吸着工程を実施するための装置である。
【0029】
以下、精製ガスの製造方法の各工程について詳細に説明する。
(1)第1吸着工程
本工程は、原料ガス中の少なくとも水分を吸着除去する工程である。図1を参照して、本工程は、水分を除去するための吸着剤が充填された塔である、第1吸着塔7または8に原料ガスを導入する操作により実施することができる。なお、使用される原料ガスに特に制限は無いが、一例として、プラント等から排出される廃ガス、オフガス、および空気を用いることができる。これらの原料ガスは、例えば外部から取り入れられ、フィルター1を介して清浄化され、圧縮機2により圧縮された後に第1吸着塔7または8へと導入される。
【0030】
第1吸着塔7および8には、少なくとも原料ガスに含まれる水分を除去するための吸着剤が充填される。吸着剤としては、例えば、アルミナゲル、合成ゼオライト(モレキュラシーブス)等が挙げられる。吸着剤としては原料ガス中の水分を吸着できればよく、アルミナゲルや合成ゼオライト(モレキュラシーブス)以外の充填剤を用いることもできる。合成ゼオライト(モレキュラシーブス)を吸着剤として用いた場合には、触媒塔11に充填される触媒の触媒毒となる酸化硫黄も除去することができる。例えばアルミナゲルと合成ゼオライト(モレキュラシーブス)を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
第1吸着塔ユニットAは、少なくとも第1吸着塔7および8から構成されることが好ましい。第1吸着塔7および8の2塔を備えることにより、一塔を第1吸着工程に使用し、その間他の塔を後述する再生ガスを用いて、吸着剤に吸着した水分および酸化硫黄を脱着する工程(再生工程)により再生することができる。再生工程が終了した塔は第1吸着工程に使用され、第1吸着工程に使用された塔は再生工程により再生される。このように第1吸着工程に用いられる塔を切り替えることが可能なため、第1吸着工程を連続して行うことが可能となる。第1吸着塔ユニットAは3塔以上の吸着塔で構成されても良い。
【0032】
図1に示されるように、原料ガスは、降温され、原料ガス中の凝縮水が凝縮水分離器6により除去された後に第1吸着塔7または8に導入されることが好ましい。原料ガスが降温されることにより、原料ガス中の水分の分圧が下がるため、第1吸着塔7および8のサイズダウン、ならびに第1吸着塔7および8に充填される吸着剤の量を減少させることが可能となる。原料ガスの冷却手段としては特に制限はないが、原料ガスの熱エネルギーを回収するために、排熱回収器3において後述する再生ガスと間接熱交換させることが好ましい。排熱回収器3出口の原料ガス温度に応じて、冷媒との間接熱交換により原料ガスを降温させるアフタークーラー4または冷却水との間接熱交換により原料ガスを降温させる第1原料ガス冷却器5のいずれか、あるいは両方をさらに備えることもできる。第1吸着工程は、好ましくは10℃以上40℃以下で行われる。
【0033】
(2)触媒反応工程
本工程は、第1吸着工程後の原料ガス中の少なくともメタンおよび亜酸化窒素を触媒反応に供する触媒反応を行う工程である。図1を参照して、本工程は、例えば第1吸着工程後の原料ガスを昇温手段10にて所定の温度まで昇温した後、触媒塔11に導入し、第1吸着工程後の原料ガス中に含まれる少なくともメタンおよび亜酸化窒素を触媒反応させる操作により実施することができる。
【0034】
触媒塔11における触媒反応の温度は、250℃未満の温度とすることができる。本発明では、上記第1吸着工程によって、原料ガス中の水分が除去されており、原料ガスは反応活性の高い乾燥状態であるため、触媒塔11での触媒反応温度を250℃未満という低い温度設定とすることができる。なお、250℃を超えると昇温手段10の負担を大きくするか、あるいは原料ガス熱交換器9を、さらに1基用意する必要があるため、設備のメンテナンスや耐久性、コスト面および電力消費量の面等において、改善の余地が生じる。原料ガスを250℃未満まで昇温する手段としては特に制限はないが、昇温手段10としてヒーターを用いることができる。また触媒塔11を経た原料ガス(精製ガス)の熱エネルギーを回収するために、昇温手段としてさらに原料ガス熱交換器9を設け、原料ガス熱交換器9において、第1吸着工程を経た原料ガスと、触媒塔11を経た原料ガス(精製ガス)とを間接熱交換させることにより熱回収を行うことが好ましい。原料ガス熱交換器9の出口温度(すなわち、昇温手段10に導入される原料ガスの温度)が高くなれば、原料ガス熱交換器9を経た原料ガスを250℃未満の反応温度まで昇温するための昇温手段10(ヒーター)が要する電力を削減することができる。
【0035】
上記触媒反応において用いられる触媒としては、パラジウム系触媒を用いることができる。パラジウム系触媒を用いることにより、効率的にメタンおよび亜酸化窒素を転化することができる。また触媒として、さらに白金系触媒を用いることができる。原料ガス中に水素および一酸化炭素が含まれている場合には、水素および一酸化炭素は白金系触媒により転化されるため、パラジウム系触媒が一酸化炭素および水素の触媒反応に用いられることを軽減でき、これによりパラジウム系触媒によるメタン、あるいは、さらに亜酸化窒素の転化率を高めることができる。
【0036】
上記触媒反応において、メタンは、原料ガス中に含まれる酸素と反応することにより二酸化炭素と水に転化される。亜酸化窒素は、熱分解反応により窒素と酸素に転化される。該触媒反応により、メタンと亜酸化窒素の含有量が少ない精製ガスが生成される。また、原料ガス中に水素および一酸化炭素が含まれている場合は、水素は水に転化され、一酸化炭素は二酸化炭素に転化される。該触媒反応により、メタン、亜酸化窒素、水素および一酸化炭素の含有量が少ない精製ガスが生成される。また、原料ガス中に含まれるエタン、アセチレン、エチレン、プロパン、プロピレンおよびC4以上の炭化水素も、該触媒反応により原料ガス中に含まれる酸素と反応することにより二酸化炭素と水に転化される。
【0037】
<清浄乾燥ガスの製造方法>
本発明に係る清浄乾燥ガスの製造方法は、上述の精製ガスの製造方法によって精製ガスを得る工程と、該精製ガス中の少なくとも水分および二酸化炭素を吸着除去する第2吸着工程とを含む。清浄乾燥ガスは、図1と同様の装置を用いて製造することができる。
【0038】
(1)第2吸着工程
本工程は、水分および二酸化炭素の含有量が少ない精製ガス(清浄乾燥ガス)を得るために、触媒塔11を経た精製ガス中の少なくとも水分および二酸化炭素を吸着除去する工程である。触媒塔11を経た精製ガスは、通常メタン等の転化により生じた水分および二酸化炭素を含有している。図1を参照して、本工程は、水分および二酸化炭素を除去するための吸着剤が充填された塔である第2吸着塔13および14から構成される第2吸着塔ユニットBに、触媒塔11を経た精製ガスを導入する操作により実施することができる。
【0039】
第2吸着塔13および14には、少なくとも触媒塔11を経た精製ガスに含まれる水分および二酸化炭素を除去するための吸着剤が充填される。吸着剤としては、例えば、合成ゼオライト(モレキュラシーブス)が挙げられる。吸着剤としては触媒塔11を経た精製ガスに含まれる水分および二酸化炭素を吸着できればよく、合成ゼオライト(モレキュラシーブス)以外の充填剤を用いることもできる。例えばアルミナゲルと合成ゼオライト(モレキュラシーブス)を組み合わせて用いることもできる。
【0040】
第2吸着塔ユニットBは、少なくとも第2吸着塔13および14から構成されることが好ましい。第2吸着塔13および14の2塔を備えることにより、一塔を水分および二酸化炭素吸着の工程に使用し、その間他の塔を、再生ガスを用いて吸着剤に吸着した水分および二酸化炭素を脱着する再生工程により再生することができる。再生工程が終了した塔は、水分および二酸化炭素吸着の工程に使用され、水分および二酸化炭素吸着の工程に使用された塔は再生工程により再生される。このように精製ガス中の水分および二酸化炭素の吸着の工程に用いられる塔を切り替えることが可能なため、該水分および二酸化炭素の吸着の工程を連続して行うことが可能となり、精製ガス中の水分および二酸化炭素が除去された清浄乾燥ガスを確実に継続して提供することができる。第2吸着塔ユニットBは3塔以上の吸着塔で構成されても良い。
【0041】
触媒塔11を経た精製ガスは、原料ガス熱交換器9において、第1吸着工程を経た原料ガスと間接熱交換させることにより降温させた後に第2吸着塔ユニットBに導入されることが好ましい。原料ガス熱交換器9出口における精製ガスの温度に応じて、原料ガス熱交換器9を経た精製ガスを第2原料ガス冷却器12へと導入し、冷却水と間接熱交換することによりさらに降温させた後、第2吸着塔ユニットBに導入することもできる。精製ガスが降温されることにより、精製ガス中の水分の分圧が下がり、かつ、吸着剤の二酸化炭素の吸着容量が増加するため、第2吸着塔13および14のサイズダウン、ならびに第2吸着塔13および14に充填される吸着剤の量を減少させることが可能となる。第2の吸着工程は、好ましくは10℃以上40℃以下で行われる。
【0042】
(2)その他の工程(再生ガス供給工程)
本工程は、例えば他の製造プロセスで生じた廃ガス等を、第1吸着塔ユニットAおよび第2吸着塔ユニットBの再生工程に用いる再生ガス(図1参照)として供給する工程である。上記廃ガスとしては、後述する窒素の製造方法で生じる廃ガスが挙げられる(図2における経路59を介して導出される廃ガス)。再生ガスは、好ましくは排熱回収器3に導入され、圧縮機2により圧縮されたガスと間接熱交換されることにより昇温される。排熱回収器3を経た再生ガスは、第2再生ヒーター15によりさらに昇温され、第2吸着塔ユニットBへと供給され、第2吸着塔13または14の再生工程に用いられる。第2吸着塔ユニットBを経た再生ガスは、必要に応じて第1再生ヒーター16によりさらに昇温された後、第1吸着塔ユニットAに供給され、第1吸着塔ユニットAにおいて第1吸着塔7または8の再生工程に用いられる。
【0043】
<CDAの製造方法>
原料ガスが空気である場合において、上述の清浄乾燥ガスの製造方法を用いることにより、本発明に係るCDAを製造することができる。
【0044】
<精留による窒素の製造方法>
本発明に係る精留による窒素の製造方法は、原料ガスが空気である場合において、上述の精製ガスの製造方法によって精製空気を得る工程と、該精製空気を精留することにより窒素を得る精留工程とを含む。
【0045】
図2は、本発明に係る、深冷分離方式による空気分離装置の構成の一例を示す概略図である。図2に示す装置は、触媒塔11を経た精製ガスを精留するための、第1精留塔41および第2精留塔42から構成される精留部を含む。図2に示される装置は、上記精留工程を実施するための装置である。
【0046】
(1)精留工程
本工程は、触媒反応工程を経た精製空気を精留することにより窒素を得る工程である。図2を参照して、本工程は、例えば精製空気を第1精留塔41および第2精留塔42から構成される精留部に導入する操作により実施することができる。第1精留塔41は、精製空気から精留により中圧窒素と酸素富化液化空気とを分離する第1精留工程を行うための精留塔であり、第2精留塔42は、酸素富化液化空気の少なくとも一部から精留により低圧窒素を分離する第2精留工程を行うための精留塔である。なお、精留工程は、前述の第2吸着工程を経た後に実施されることが好ましい。
【0047】
第1精留工程において、精製空気を第1精留塔41に導入することにより、精製空気を低沸点成分である窒素と高沸点成分である酸素富化液化空気とに分離することができる。本実施形態においては、第1精留塔41の運転圧力は、圧縮機2の出口における原料空気の圧力に依存しており、通常、圧縮機2の出口圧力から第1精留塔41に至るまでの各機器および配管等において生じる圧力損失を差し引いた圧力となる。酸素富化液化空気とは、大気中における酸素濃度20.95vol.%と比較して酸素成分が富んだ空気(酸素富化空気)が液化したものをいう。
【0048】
第1精留工程においては、第1精留塔41の塔上段部の窒素ガスの少なくとも一部を、経路46を介して導出した後、第2精留塔42内に配設されたコンデンサ43に導入することができる。コンデンサ43において、第2精留塔42の塔底部に貯液された液化酸素と経路46を介して導入される窒素ガスとが間接熱交換され、液化酸素の一部が気化して酸素ガスになると共に、窒素ガスの少なくとも一部が液化されて液化窒素となる。該液化窒素は、例えば経路47を介してコンデンサ43から導出された後、一部が経路48を介して第1精留塔41に還流液として供給され、残部が経路49を介して第2精留塔42の上段部に還流液として供給される。なお、コンデンサ43から導出された液化窒素の一部を、製品液化窒素として導出することも可能である。
【0049】
精製空気は、経路31を介して主熱交換器40に導入し、主熱交換器40において対向する低温の窒素等との間接熱交換により液化温度付近まで冷却された後、経路32を介して第1精留塔41に導入することができる。第1精留塔41に導入された精製空気の少なくとも一部は上昇ガスとなり、第1精留塔41の精留部44において経路48を介して供給される還流液と向流接触する。これにより、低沸点成分である窒素は第1精留塔41の上段部へと分離され、高沸点成分である酸素富化液化空気は第1精留塔41の下段部へと分離される。
【0050】
第2精留工程において、第1精留塔41の下段部に貯液された酸素富化液化空気の少なくとも一部を、経路50を介して導出した後、第2精留塔42へと導入することにより、上記酸素富化液化空気を低沸点成分である窒素と高沸点成分である酸素とに分離することができる。第2精留塔42の運転圧力は、第1精留塔41の運転圧力と比較して低く制御されており、好ましくは0.05MPaG以上0.5MPaG以下の圧力にて制御され、より好ましくは0.1MPaG以上0.4MPaG以下の圧力にて制御される。
【0051】
第2精留工程に用いる還流液として、液化窒素タンク51に貯液された液化窒素や、タービンを搭載した窒素液化装置(図示せず)により製造された液化窒素を用いることができる。この還流液は、経路52を介して第2精留塔42に導入することができる。経路50を介して第2精留塔42に導入された酸素富化液化空気のうち少なくとも一部は上昇ガスとなり、第2精留塔42の精留部45A、45Bおよび45Cにおいて、経路49および経路52を介して供給される還流液と向流接触する。これにより、低沸点成分である窒素は第2精留塔42の上段部へと分離され、高沸点成分である酸素は第2精留塔42の下段部に分離され、第2精留塔42の塔底には液化酸素が貯液される。貯液された液化酸素の一部は、液化酸素中にメタンおよび亜酸化窒素等が濃縮することを防止するために、経路53を介して濃縮防止パージとして排出される。濃縮防止パージの量は、一般的に液化酸素中のメタンおよび亜酸化窒素濃度が高い場合には安全の観点から増加させることが求められるが、液化酸素中のメタンおよび亜酸化窒素濃度が低い場合には、濃縮防止パージ量は減少させることができる。なお、第2精留塔42の塔底に貯液された液化酸素の一部を、製品液化酸素として導出することも可能である。
【0052】
第1精留塔41の上段部から、中圧窒素を導出することができる(図示せず)。該中圧窒素を、主熱交換器40において精製空気と間接熱交換することにより昇温した後、中圧製品窒素として導出することができる(図示せず)。ここでいう中圧とは、第2精留塔42の運転圧力よりも高い圧力をいう。
【0053】
第2精留塔42の塔頂部から、経路54を介して低圧窒素を導出することができる。該低圧窒素を、主熱交換器40において精製空気と間接熱交換することにより昇温した後、経路60を介して低圧製品窒素として導出することができる。必要に応じて、液化窒素タンク51から液体窒素を導出し、蒸発器61で気化した後に経路62を介して低圧製品窒素として導出することもできる。ここでいう低圧とは、第2精留塔42の運転圧力以下の圧力のことをいう。必要に応じて低圧製品窒素を圧縮機等の昇圧手段(図示せず)により昇圧し、昇圧された低圧製品窒素(高圧製品窒素)として導出することもできる。
【0054】
第1精留塔41としては、その精留部44に一般的な精留板、規則充填物、不規則充填物等を備えた一般的な低温精留のための精留塔を使用することができる。
【0055】
第2精留塔42は、精留塔内に第1精留塔41から経路46を介して導入される窒素ガスと第2精留塔42塔底部に貯液された液化酸素との間の熱交換を行い、該窒素ガスを液化窒素へと凝縮し、該液化酸素を酸素ガスへと蒸発させるコンデンサ43と、精留部45A、45Bおよび45Cに一般的な精留板、規則充填物、不規則充填物等とを備えた、一般的な低温精留のための精留塔を使用することができる。
【0056】
主熱交換器40は、精製空気と第1精留塔41および第2精留塔42から導出される低温のガスとを間接熱交換するためのものであり、例えばプレートフィン型の熱交換器を用いることができる。
【0057】
(2)その他の工程1(寒冷発生工程1)
本工程は、第2精留工程において生成した廃ガスを、例えば膨張タービン等の寒冷発生手段に導入することにより、空気分離装置へ補給する寒冷を発生させる工程である。上記廃ガスとしては、経路55を介して低圧塔から導出される廃ガスを用いることができる。該廃ガスは、主熱交換器40において精製空気と間接熱交換することにより昇温された後、経路57を介して膨張タービン70に導入され、断熱膨張されることにより降温され、空気分離装置へ補給する寒冷を発生させる。膨張タービン70により降温された廃ガスは、経路58を介して再度主熱交換器40に導入され、精製空気と間接熱交換することにより昇温された後、経路59を介して導出される。膨張タービン70にて寒冷を発生させることにより、外部からの液体窒素等の寒冷補給量を減少させることができる。
【0058】
(3)その他の工程2(寒冷発生工程2)
本工程は、精製空気の一部を、例えば圧縮機等の昇圧手段で昇圧した後、例えば膨張タービン等の寒冷発生手段に導入することにより、空気分離装置へ補給する寒冷を発生させる工程である。精製空気の一部は、第2圧縮機(図示せず)に導入され、さらに昇圧された後、主熱交換器40に導入され(図示せず)、主熱交換器40において対向する低温の窒素等との間接熱交換により冷却された後、膨張タービン(図示せず)に導入され、断熱膨張されることによりさらに降温され、空気分離装置へ補給する寒冷を発生させる。降温された精製空気は、寒冷源として低圧塔へと導入される(図示せず)。なお、本工程には、膨張タービンのシャフトに第2圧縮機を連結させた、コンパンダーを用いることもできる。
【0059】
(4)その他の工程3(アルゴン製造工程)
本工程は、第2精留塔42の中段部からアルゴンを含んだ酸素富化ガスを導出し、該酸素富化ガスをアルゴン精留塔(図示せず)に導入し、深冷液化分離を行うことにより、該酸素富化ガスに含まれるアルゴンを分離し、製品液化アルゴンとして導出する工程である。なお、液化アルゴンを製造しつつ、コンデンサ43から導出された液化窒素の一部を製品液化窒素として導出し、かつ、第2精留塔42の塔底に貯液された液化酸素の一部を製品液化酸素として導出することも可能である。また、第2精留塔42の塔底の貯液槽のガス相から酸素ガスの一部を製品酸素ガスとして導出することも可能である。
【0060】
<圧力スイング吸着法を用いた窒素の製造方法>
本発明に係る圧力スイング吸着法を用いた窒素の製造方法は、原料ガスが空気である場合において、上述の精製ガスの製造方法によって精製空気を得る工程と、該精製空気中の酸素を圧力スイング吸着法により吸着除去し、窒素を分離する吸着工程とを含む。
【0061】
図3は、本発明に係る、圧力スイング吸着式による窒素発生装置の構成の一例を示す概略図である。図3に示す装置は、触媒塔11を経た精製空気中に含まれる酸素を吸着するための、吸着塔(A)101および吸着塔(B)102から構成される。図3に示される装置は、上記圧力スイング吸着法により窒素を分離する吸着工程を実施するための装置である。
【0062】
(1)吸着工程
本工程は、原料ガスが空気である場合において、触媒反応工程後の精製空気から、圧力スイング吸着法により窒素を得る工程である。図3を参照して、本工程は、例えば精製空気を経路100を介して、吸着塔(A)101または吸着塔(B)102に導入する操作により実施することができる。吸着塔(A)および吸着塔(B)は、精製空気中に含有される酸素を吸着除去するための吸着塔である。吸着工程により酸素が除去され、窒素の濃度が高まった精製空気は、例えば製品貯槽105を経て経路103を介して製品窒素として導出される。
【0063】
吸着塔(A)101および吸着塔(B)102には、少なくとも精製空気中に含まれる酸素を吸着除去するための吸着剤が充填されている。吸着剤としては、例えば、分子篩炭素が挙げられる。吸着剤としては触媒塔11を経た精製空気に含まれる酸素を吸着できればよく、分子篩炭素以外の充填剤を用いることもできる。例えば合成ゼオライト(モレキュラシーブス)、活性アルミナ、活性炭と分子篩炭素を組み合わせて用いることもできる。
【0064】
精製空気は、分子篩炭素等が充填された吸着塔に導入され、分子径の小さい酸素分子が分子篩炭素等の吸着剤の細孔に吸着されることにより原料空気から酸素成分が除去され、吸着塔から製品窒素が導出される。なお、吸着塔の吸着圧力は圧縮機2の出口における原料ガス(原料空気)の圧力に依存しているが、例えば0.5〜1.0MPa(G)の圧力で吸着を行うことが好ましい。
【0065】
(2)その他の工程(吸着剤再生工程)
本工程は、吸着塔(A)101または吸着塔(B)102に吸着されている吸着剤を再生する工程である。図3を参照して、例えば経路107を介して製品窒素の一部を吸着塔(A)101または吸着塔(B)102へ洗浄ガスとして導入することができる(図示せず)。経路107にはオリフィス106などの流量調節機構を設置することが望ましい。脱着された酸素は経路104を介して、廃ガスとして系外に排出される。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。
【0067】
〔1〕精製空気の製造
原料ガスとして空気を用い、図1に記載の構成を有する装置を用いて、下記の条件にて第1吸着工程を経た精製空気中に含まれるメタンおよび亜酸化窒素の転化率の検証実験を行い、転化率について評価した。なお、[NL]は、標準状態に換算したガスの体積[L]を表している。
【0068】
<転化率の検証実験条件>
(実施例1に係る精製空気製造のシミュレーション条件)
原料空気流量:150NL/min、
原料空気圧力:0.785MPaG、
原料空気中のメタン濃度:2.0vol.ppm、
原料空気中の亜酸化窒素濃度:500vol.ppb、
触媒塔11に用いた触媒:パラジウム系触媒および白金系触媒、
パラジウム系触媒の空間速度:13780h−1
白金系触媒の空間速度:13780h−1
触媒塔11における酸化温度:247℃。
【0069】
(実施例2〜4に係る精製空気製造のシミュレーション条件)
実施例2については、酸化温度を230℃としたこと以外は実施例1と同じ条件であり、実施例3については、酸化温度を210℃としたこと以外は実施例1と同じ条件であり、実施例4については、酸化温度を190℃としたこと以外は実施例1と同じ条件でシミュレーションを行った。
【0070】
(比較例1および2に係る精製空気製造のシミュレーション条件)
比較例1については、酸化温度を170℃としたこと以外は実施例1と同じ条件であり、比較例2については、酸化温度を150℃としたこと以外は実施例1と同じ条件でシミュレーションを行った。
【0071】
(メタンおよび亜酸化窒素の転化率の評価基準)
◎:メタンの転化率が99.5%以上、かつ、亜酸化窒素の転化率が65%以上である、
○:メタンの転化率が90%以上99.5%未満、かつ、亜酸化窒素の転化率が40%以上65%未満である、
△:メタンの転化率が90%未満、かつ、亜酸化窒素の転化率が40%未満である。
【0072】
シミュレーションの結果を以下の表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示す通り、実施例1〜3においてメタンは99.5%以上が水と二酸化炭素へと転化することが確認された。亜酸化窒素についても、実施例1〜3において65%以上が転化することが確認された。実施例4においても、96%のメタンの転化率および60%の亜酸化窒素の転化率を得られることが確認された。一方、反応温度が低い比較例1および2では、十分なメタンおよび亜酸化窒素の転化率は得られなかった。この結果から、触媒塔11における好適な反応温度は、好ましくは約190℃以上、より好ましくは約210℃以上であり、触媒塔11における反応温度を250℃未満とすることができることが示された。したがって、設備のメンテナンスや耐久性、コスト面および電力消費量の面等で優れた、メタンおよび亜酸化窒素の含有量が低減された、精製空気製造方法および装置が提供されることが示された。
【0075】
〔2〕CDAの製造
原料ガスとして空気を用い、図1に記載の構成を有する装置を用いて、精製空気を製造し、該精製空気を第2吸着塔ユニットBに導入することによりCDAを製造した際の、CDA中のメタンおよび亜酸化窒素濃度のシミュレーションを下記の条件において行い、評価した。
【0076】
(実施例5に係るCDA製造の条件)
原料空気流量:150NL/min、
精製空気圧力:0.785MPaG、
製品CDA流量:149NL/min、
原料空気中のメタン濃度:2.0vol.ppm、
原料空気中の亜酸化窒素濃度:500vol.ppb、
触媒塔11に用いた触媒:パラジウム系触媒および白金系触媒、
触媒塔11における触媒反応温度:247℃、
第2吸着塔ユニットBに充填した吸着剤:ゼオライトおよびアルミナゲル。
【0077】
(実施例6〜8に係るCDA製造の条件)
実施例6については、触媒塔11における触媒反応温度を230℃としたこと以外は実施例5と同じ条件であり、実施例7については、触媒塔11における触媒反応温度を210℃としたこと以外は実施例5と同じ条件であり、実施例8については、触媒塔11における触媒反応温度を190℃としたこと以外は実施例5と同じ条件でシミュレーションを行った。
【0078】
(メタンおよび亜酸化窒素の濃度の評価基準)
◎:メタン濃度が0.01vol.ppm未満、かつ、亜酸化窒素濃度が200vol.ppb未満である、
○:メタン濃度が0.01vol.ppm以上、かつ、亜酸化窒素濃度が200vol.ppb以上である。
【0079】
シミュレーションの結果を以下の表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2に示す通り、実施例5〜7において、製品CDA中のメタン濃度は0.01vol.ppm未満であり、かつ亜酸化窒素濃度も、200vol.ppb未満であった。実施例8においても製品CDA中のメタン濃度は0.08vol.ppmであり、亜酸化窒素濃度についても200vol.ppbであり、低減された値であった。したがって、上述の精製空気製造方法および装置にて製造された、メタンおよび亜酸化窒素の含有量が低減された精製空気を第2吸着塔ユニットBに導入することにより、メタンおよび亜酸化窒素の含有量が低く、かつ、精製空気を製造するための触媒反応が250℃未満であるため、設備のメンテナンスや耐久性、コスト面および電力消費量の面等で優れたCDA製造方法および製造装置が提供されることが示された。
【0082】
〔3〕精留による窒素の製造
原料ガスとして空気を用い、図1の構成を有する装置を用いて精製空気を製造し、該精製空気から、図2に記載の構成を有する装置を用いて窒素を分離した。第2精留塔42の塔底に貯液される液体酸素中のメタンおよび亜酸化窒素の含有量を測定したところ、メタンおよび亜酸化窒素の含有量が、低減された値であることが確認された。したがって、上述の精製空気製造方法および装置にて製造された、メタンおよび亜酸化窒素の含有量が低減された精製空気を空気分離装置に導入することにより、第2精留塔42の塔底に貯液される液体酸素中のメタンおよび亜酸化窒素の含有量が低減され、かつ、経路53を介して導出される濃縮防止パージの量を削減できる、安全性およびエネルギー効率が改善された、深冷分離方式による窒素製造方法および空気分離装置が提供されることが確認された。
【0083】
〔4〕圧力スイング吸着法を用いた窒素の製造
原料ガスとして空気を用い、図1の構成を有する装置を用いて精製空気を製造し、該精製空気から、図3に記載の構成を有する装置を用いて窒素を分離した際の、製品窒素中のメタンおよび亜酸化窒素濃度の測定を下記の条件において行い、評価した。
【0084】
(実施例9に係る窒素製造の条件)
原料空気流量:72NL/min、
精製空気圧力:0.68MPaG、
製品窒素流量:20NL/min、
原料空気中のメタン濃度:2.0vol.ppm、
原料空気中の亜酸化窒素濃度:500vol.ppb、
吸着塔(A)101および吸着塔(B)102に充填した吸着剤:分子篩炭素、
触媒塔11における触媒反応温度:247℃。
【0085】
(実施例10〜12に係る窒素製造の条件)
実施例10については、触媒塔11における触媒反応温度を230℃としたこと以外は実施例9と同じ条件であり、実施例11については、触媒塔11における触媒反応温度を210℃としたこと以外は実施例9と同じ条件であり、実施例12については、触媒塔11における触媒反応温度を190℃としたこと以外は実施例9と同じ条件で測定を行った。
【0086】
(比較例3に係る窒素製造の測定条件)
メタンおよび亜酸化窒素の触媒反応を行わない以外は、実施例9と同じ条件で測定を行った。
【0087】
(製品窒素中のメタンおよび亜酸化窒素濃度の評価基準)
◎:メタン濃度が0.02vol.ppm未満、かつ、亜酸化窒素濃度が12vol.ppb未満である、
○:メタン濃度が0.02vol.ppm以上0.2vol.ppm未満、かつ、亜酸化窒素濃度が12vol.ppb以上15vol.ppb未満である、
△:メタン濃度が0.2vol.以上、かつ、亜酸化窒素濃度が15vol.ppb以上である。
【0088】
測定結果を以下の表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
表3に示す通り、実施例9〜11において、製品窒素中のメタン濃度は0.02vol.ppm未満であり、かつ亜酸化窒素濃度も、12vol.ppb未満であった。実施例12においても製品窒素中のメタン濃度は0.14vol.ppmであり、亜酸化窒素濃度についても13vol.ppbであり、低減された値であった。一方、触媒反応工程を有しない比較例3については、メタン濃度および亜酸化窒素濃度ともに高い値であった。したがって、上述の精製空気製造方法および装置にて製造された、メタンおよび亜酸化窒素の含有量が低減された精製空気を圧力スイング吸着方式を用いた窒素発生装置に導入することにより、製品窒素中のメタンおよび亜酸化窒素の含有量が低減され、かつ、精製空気を製造するための触媒反応が250℃未満であるため、設備のメンテナンスや耐久性、コスト面および電力消費量の面等で優れた、圧力スイング吸着法を用いた窒素分離方法および窒素発生装置が提供されることが示された。
【符号の説明】
【0091】
1: フィルター
2: 圧縮機
3: 排熱回収器
4: アフタークーラー
5: 第1原料ガス冷却器
6: 凝縮水分離器
7,8: 第1吸着塔
9: 原料ガス熱交換器
10: 昇温手段
11: 触媒塔
12: 第2原料ガス冷却器
13,14: 第2吸着塔
15: 第2再生ヒーター
16: 第1再生ヒーター
31,32,46,47,48,49,50,52,53,54,55,57,58,59,60,62,100,103,104,107: 経路
40: 主熱交換器
41: 第1精留塔
42: 第2精留塔
43: コンデンサ
44: 第1精留塔41の精留部
45A,45B,45C: 第2精留塔42の精留部
51: 液化窒素タンク
61: 蒸発器
70: 膨張タービン
101: 吸着塔(A)
102: 吸着塔(B)
105: 製品貯槽
106: オリフィス
A: 第1吸着塔ユニット
B: 第2吸着塔ユニット
図1
図2
図3