(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ユニットを開ける動作に伴って、前記カバーの一部が前記給紙トレイの表面または前記給紙トレイに載置されたシートの表面に触れながら移動して前記カバーが連動して開くことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
前記情報設定は、ユーザに用紙情報を入力させるもしくはセンサを用いて用紙情報を取得して、情報設定するものであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態として、プリンタ部とイメージスキャナ部を一体化した画像形成装置(複合機)について説明する。なお本明細書では、装置が水平面に設置されることを想定し、ユーザが向き合う方向に沿って、手前(または前方)、奥(または後方)と定義し、重力方向に沿って上、下と定義する。
【0010】
<装置全体構成>
図1は実施形態の画像形成装置の外観を示す斜視図である。画像形成装置は大きくは、装置本体の筐体の中に内蔵されるプリンタ部Pと、プリンタ部Pの上に設けられ、載置した原稿を原稿圧板で押さえて読み取るスキャナ部Sを備える。操作部1は表示器11や入力キーを有し、装置筐体の前面にユーザに向き合うように設けられている。
【0011】
装置の奥側には、後述する給紙口を覆うように、給紙トレイ3が設けられている。
図1(a)では給紙トレイ3は装置の奥側に垂直に収納されており、給紙トレイの一部を構成する給紙フラップ3bだけが装置上面に外カバーとして露出している。ユーザが給紙フラップ3bを起して給紙トレイを上に引き出して斜め後方に倒すと、
図1(b)のようにトレイ本体3aが露出して、水平に対して傾斜したシート載置面が形成される。トレイ本体3aはスライド伸張させシート積載面を広げること可能である。また収納状態では外カバーとなっていた給紙フラップ3bは、トレイ本体3aに対して回動してシート積載面に連続する拡張トレイ面を形成する。
図1(b)はトレイ本体3aを伸張させ且つ給紙フラップ3bによりさらに拡張した状態を示す。この給紙トレイ3の傾斜したシート積載面の上にプリンタ部で印刷されるシートを複数枚重ねて載置することができ、シートは1枚ずつ給紙口からプリンタ部に給紙される。
【0012】
図4に示すように、給紙口の奥には、セットされたシート6を1枚ずつ分離してプリンタ部の印刷領域に給送するためのピックアップローラ21、分離ローラ対22a、22bが設けられている。給紙トレイ3の上には用紙サイズや用紙種類が異なる種々のシートを置くことができ、画像生成装置は使用する用紙サイズや用紙種類に適したプリントを行う。プリンタ部はインクジェット方式、電子写真方式、サーマル方式、その他プリント方式、いずれであってもよい。
【0013】
スキャナ部2(スキャナ部S)はフラットベッド型のスキャナであり、原稿台(透明ガラス板)に置かれた原稿を、原稿圧板2aで押さえるようになっている。原稿台の下には光学的に原稿を読み取るためのセンサやキャリッジを含むスキャナ部が設けられている。原稿圧板2aは原稿台に対して開閉することができる。ここで、
図1(a)に示すように原稿圧板2aおよび給紙フラップ3bを共に閉じた状態では、原稿圧板2aの表面と給紙フラップ3bの表面はほぼ同じ高さとなる。そして、給紙フラップ3bの前側端部と原稿圧板2aの後端との間には、ユーザが指を入れることができる凹部が形成される。ユーザはこの凹部に指を挿しこんで給紙フラップ3bを容易に起すことができる。なお、スキャナ部2の開閉動作を手動ではなく、駆動源を用いて電動で行うように構成してもよい。
【0014】
図1(b)、
図2に示すように、スキャナ部S(スキャナ部2)は装置奥側のヒンジ部(第1ヒンジ部)を中心に、装置下部のプリンタ部Pに対し回動して装置手前側を開けることができる構成となっている。このヒンジ部の回転軸(回動中心)は、
図5において支軸2dとして示す位置になる。ヒンジ部は、支軸2に実際に回転軸部材が存在するヒンジ構造、支軸2の位置が仮想的な回転軸であるヒンジ構造、いずれであってもよい。また支軸2が回動に伴って変位するようなヒンジ構造であってもよい。メンテナンス作業の際、ユーザは装置筐体の左右両側面に設けられた凹部である手掛かり部2eを持ってスキャナ部2を上方に持ち上げて回動させる。本実施形態では30度の角度までスキャナ部2を開けることができる。ヒンジ部のフリーストップ機構により、ユーザが途中で手を離してもスキャナ部2はその位置を維持する。スキャナ部2を開けると、装置本体の中のプリンタ部の一部が露出して、ユーザはインクタンクの交換や紙ジャムで詰まった紙の取り除き作業などメンテナンス作業を行うことができる。
【0015】
<内カバー>
図1(b)、
図2〜
図9において、給紙トレイ3のシート積載面3a下方には、閉じたときに給紙口を覆うことが可能な開閉自在な内カバー4が設けられている。内カバー4はスキャナ部2に設けた支軸4a(第2ヒンジ部)を回転軸(回動中心)として回動自在となっている。支軸4aはスキャナ部2を基準に給紙口よりも手前側に設けられ、内カバー4は装置奥側が給紙口に対して開閉する。このように、内カバー4は給紙口に対して開閉自在に設けられている。
【0016】
内カバー4は回動する外側の端部には回転自在なコロ5を有している。コロ5は内カバー4の一部と見做す。この例では1個のコロ5を中央に設けているが、複数個のコロをシート幅方向に分散して設けるようにしてもよい。ここで、装置奥行き方向において、上述のスキャナ部2のヒンジ部(第1ヒンジ部)の回転軸は、内カバー4のヒンジ部(第2ヒンジ部)の回転軸よりも装置奥側に位置している。この回転軸(回動中心)の配置関係により装置の奥行き方向に小型化に寄与する。なお、それぞれのヒンジ部は、その回転軸が回動に伴って変位するようなヒンジ構造であってもよい。その場合、回転軸が変位する領域を回転軸と見做して、第1ヒンジ部と第2ヒンジ部の回転軸の位置関係が上述の関係を満たすようにする。
【0017】
図1(a)、
図4(断面図)、
図7(断面斜視図)は、給紙トレイ3が収納され且つ内カバー4が閉じている状態を示す。この状態では、内カバー4は水平状態であり給紙口を覆っている。給紙口を塞ぐ内カバー4の上をさらに給紙フラップ3bが外カバーとして覆っており、給紙フラップ3bと内カバー4の二重の封止構造で給紙口を塞いでいる。
【0018】
図1(b)、
図2(a)、
図5(a)は、ユーザによって給紙トレイ3が引き出され、且つ内カバー4は閉じている状態(シートは載置されていない)を示す。この状態では、内カバー4は水平状態であり給紙口を覆っている。内カバー4の先端(コロ5)給紙トレイにはぎりぎり触れていない。
【0019】
図2(b)、
図8(a)は給紙トレイが引き出され且つユーザが内カバー4を開けた状態を示す。内カバー4を開けると、それまで隠れていた給紙口(
図2(b)の符号O)が現れる。そしてユーザが給紙トレイ3にシート束を置くと、シートの先端(下端)が給紙口に差し込まれた状態でセットされる。
【0020】
そして内カバー4を閉じる方向に戻すと、セットされたシート束の最上位のシート表面に内カバー4の先端(コロ5)が接触する。
図3(a)、
図6(a)、
図8(b)はその状態を示す。内カバー4は水平に対して装置奥側が持ち上がって傾斜した状態、すなわちシート表面に内カバー4がもたれかかった状態となる。積載されるシートの枚数(シート束の厚み)に応じて内カバー4がもたれかかる角度が変化する。給紙口は挿し込まれたシート束で一部が塞がれ、且つもたれかかった内カバー4により給紙口の露出した部分が覆われるので、給紙口の中に異物の落ち込むことが抑制される。
【0021】
<原稿圧板>
図3(b)はユーザが原稿圧板2aを開けた状態を示す。原稿圧板2aは、給紙口および内カバー4を挟んだ左右両側2カ所に奥側に細長く延びたアーム部を有し、それぞれのアーム部の先端付近にヒンジ部2b(第3ヒンジ部)が設けられている。原稿圧板2aのヒンジ部2b(第3ヒンジ部)の回転軸は、内カバー4のヒンジ部4a(第2ヒンジ部)の回転軸よりもよりも装置奥側に位置している。
【0022】
原稿圧板2aは2カ所のアーム部で支持されているので、原稿圧板2aを原稿台に対して開閉する際、内カバー4、給紙フラップ3aあるいは給紙トレイ3に載置されているシートと物理的に干渉することが無い。逆に、給紙フラップ3bや内カバー4の開閉の際、あるいは給紙トレイ3にシートをセットする際にも原稿圧板2aと干渉することはない。さらに、
図3(b)のごとく、原稿圧板2aは給紙トレイおよび給紙トレイに置かれたシートには衝突しない位置までしか開かないように、原稿圧板2aのヒンジ部が構成されている。
【0023】
<2つの開閉センサ>
ここで、内カバー4の開閉を検知するカバーセンサ(第1センサ)について説明する。このセンサによる内カバー4の開閉を検知することで、装置はユーザがシートを給紙トレイにシートを装填したと推定する。後述するように、この推定に基づいて用紙サイズや用紙種類などの用紙情報の再設定をユーザに促すようになっている。
【0024】
図7〜
図9において、内カバー4の下にはカバー開閉を検知するためのカバーセンサ7(メカニカルスイッチ)が設けられている。内カバー4の下面の一端には位置を保持するためのアーム4bが設けられ、その外側には円弧形状の接触子4cが設けられている。内カバー4を開けた状態では、接触子4cとカバーセンサ7のレバー7aは離れており、スイッチはオフである(
図8(a)参照)。ここで内カバー4を閉じると、カバーセンサ7のレバー7aを接触子4cが押圧してメカニカルスイッチがオンとなり、内カバー4が開(オープン)から閉(クローズ)になったことが検知される(
図8(b)参照)。なお、給紙トレイ3の上に置いたシートがトレイに置くことが可能な最大積載枚数であっても、内カバー4を戻すとスイッチがオフになるように、センサの感帯が設定されている。カバーセンサ7はメカニカルスイッチに限らず、光学センサ(フォトインタラプタ)や磁気センサを用いて接触子の近接を検知するようにしてもよい。
【0025】
次いで、スキャナ部2の開閉を検知するスキャナ部センサ(第2センサ)について説明する。このセンサによりスキャナ部2の開閉を検知することで、装置はユーザがメンテナンスを行うと推定する。この推定はプリントや読取動作を中断する判断のために用いられる。
【0026】
図10において、プリンタ部2の装置本体の手前には、スキャナ部2の開閉を検知するためのスキャナ部センサ8(メカニカルスイッチ)が設けられている。スキャナ部2の下面の前端には下方に突出する棒状の接触子2fが設けられている。スキャナ部2を開けた状態では、接触子2fとスキャナ部センサ8のレバー8aは離れており、スイッチはオフである(
図10(a)参照)。ここでスキャナ部2を閉じると、スキャナ部センサ8のレバー8aを接触子2fが押圧してメカニカルスイッチがオンとなり、スキャナ部2が開(オープン)から閉(クローズ)になったことが検知される(
図10(b)参照)。なお、スキャナ部センサ8はメカニカルスイッチに限らず、光学センサ(フォトインタラプタ)や磁気センサを用いて接触子の近接を検知するようにしてもよい。スキャナ部センサ8を装置手前に設けたのは、スキャナ部2を僅かに開けた時点で速やかに検知するとともに完全に閉じたことを確実に検知するためである。
【0027】
図9に示すように、スキャナ部2を徐々に開けていくと内カバー4の接触子4cはカバーセンサ7のレバー部7aから離間して、内カバー4が開いたことが検知される。一方、スキャナ部2のスキャナ部センサ8はスキャナ部2の手前側に配置されており、この内カバー4の開検知よりも先にスキャナ部2が開いたことが検知される。逆に、開状態にあるスキャナ部2を徐々に閉じていくときには、まず内カバー4が閉じたことが検知され、次いでスキャナ部2が閉じたことが検知される。このように、ユーザがスキャナ部2を開閉すると内カバー4も連動して開閉し、且つこれらの開閉検知のタイミングは僅かな時間差をもって所定の順序となっている。この順序は後述する開閉判定のアルゴリズムにおいて利用される。
【0028】
<制御システムブロック>
図11は、これら2つのセンサを含む画像形成装置全体の制御システムブロック図である。画像形成装置1700(プリント装置)は、大きくは制御部1701、プリンタ部1710(スキャナ部含む)、操作部1、センサ部1711を有し、制御部1701はホストコンピュータ1712と接続されている。制御部1701は、中央演算処理部(CPU)1702、書き換え可能なROM1703で、RAM1704、および各種インターフェースからなる。インターフェースは、プリンタI/F1705、操作部I/F1706、センサI/F1707,USBI/F1708、ネットワークI/F1709などを備え、システムバス1713によりCPU1702と接続されている。センサ部1711は、上述したカバーセンサ7、スキャナ部センサ8、そのセンサなどである。制御部1701は、画像形成装置1700全体の動作を司る。
【0029】
<作用効果1>
上述したように本実施形態の装置は、装置奥行き方向において、スキャナ部2の回転軸2b(第1ヒンジ部)は、内カバー4の回転軸4a(第2ヒンジ部)よりも装置奥側に位置している。重力方向においては回転軸4aの方が回転軸2dよりも高い位置に設けられている。この2つの回転軸の配置関係により装置の小型化を実現している。
【0030】
ここで、ヒンジ部4aはスキャナ部2の奥側に取り付けられ且つヒンジ部2bよりも装置手前側に位置しているので、スキャナ部2を開けると回転軸4aが上方且つ奥側に周を描くように移動して給紙トレイ3により近づく。これによる内カバー4が給紙トレイを押す力を逃がすため、スキャナ部の開き角度が大きくなるに従って内カバー4が給紙トレイ3の傾斜面に倣って開き角度が大きくなるように構成している(
図5、
図6参照)。
【0031】
この際、内カバー4の一部(本例ではコロ5)が給紙トレイの表面または給紙トレイに載置されたシートの表面に触れながら移動する。
図1(b)、
図5(b)はシートが積載されていない状態でスキャナ部2を開けた状態、
図6(b)、
図9はシートが積載されている状態でスキャナ部2を開けた状態を示す。前者ではコロ5が給紙トレイ3aの表面に触れて回転しながら上方向に移動し、後者ではコロ5がシート表面に触れて回転しながら上方向に移動する。接触するのが回転するコロであるためシート6の印刷面に摺動の傷が付くことが抑制される。なお、内カバー4のシートに接触する部分がコロであることは必須ではなく、内カバーのシートに触れる部分の材質や表面仕上げの工夫により摺動抵抗を小さくすれば印刷面への傷付与は緩和される。
【0032】
さらに本実施形態の装置は、
図5、
図6に示すように、スキャナ部2の原稿圧板2aの回転軸2b(第3ヒンジ部)は内カバー4の回転軸4a(第2ヒンジ部)よりも装置奥側で且つ両者はほぼ同じ高さに位置している。スキャナ部2の回転軸2dと原稿圧板2aの回転軸2bはほぼ同じに奥行き位置しており、重力方向では回転軸2bの方が回転軸2dよりも高い位置に設けられている。この配置関係により、画像形成装置のとくに奥行き方向におけるより一層の小型化が実現する。
【0033】
図3(b)に示すように、原稿圧板2aは、給紙口および内カバー4を挟んだ両側2カ所の細いアーム部を有し、それぞれのアーム部の先端付近に回転軸2bが設けられている。このため、原稿圧板2aの開閉と内カバー4の開閉は独立して相互干渉なく行うことができる。また給紙トレイ3を装置内に収納した状態で給紙フラップ3をフラップ開閉しても原稿圧板2aと干渉しない。さらに原稿圧板2aは、引き出された状態の給紙トレイ3および給紙トレイに置かれたシートには衝突しない位置までしか開かないので、原稿圧板2aを開けた際に、シートに傷が付いたり給紙トレイ3が破損したりすることが無い。
【0034】
さらに、
図1(a)、
図4のように、給紙フラップ3bに閉じると、内カバー4が給紙口の一部または大半を覆って塞ぎ、給紙フラップ3bがその上を覆う外カバーとなる。つまり、内カバー4と給紙フラップ3b(外カバー)により給紙口を塞ぐ二重の封止構造となる。この構造により装置の非使用時に給紙口の中に異物が落ち込むことが効果的に防止される。さらにこの構造は装置全体の高さ方向における小型化にも寄与する。そして装置の使用時にも、
図3(a)、
図6のように、内カバー4が給紙トレイ3上のシート表面にもたれかかり、それは積載のシート枚数の大小に関わらず変わらない。したがって装置の使用時にも給紙口の露出が少なく異物の落下は効果的に抑制される。
【0035】
<内カバー開閉をトリガにしたシート情報設定>
ユーザが給紙トレイにシートをセットする際には、まず内カバー4を開けて給紙トレイ3にシート束を置いて給紙口にシート下端を挿し込む。そして内カバー4を閉じる。このような内カバー4の開閉があった場合には、シートが新たに装填された可能性が高い。用紙に合わせたプリントサイズや印刷品質とするため、そのシートに関する情報、例えば用紙サイズ(A4,B5など)、用紙種類(普通紙、光沢紙など)として制御部に記憶されている内容を更新する必要ある。そこで、内カバー4の開閉状態をカバーセンサ7で検知して、開閉状態が変化したら給紙トレイに載置されたシートに関する情報設定を行う。本実施形態では、操作部のUI表示を通じてユーザに再設定を促し、これを見たユーザはUIを通じて用紙情報を入力する。そして制御部はユーザにより入力された用紙情報を設定する。
【0036】
なお情報設定は、ユーザに情報入力させる形態には限らず、装置内のメディアセンサや紙幅センサを用いて情報を取得して自動的に情報設定を行うようにしてもよい。紙種についてはメディアセンサを用いて紙表面の反射率などから判別することができる。紙サイズについては給紙口に置かれたシートの両端部を、キャリッジに搭載されたまたは装置内に固定された紙幅センサで検知することでサイズを判別することができる。このように、本明細書における情報設定とは、ユーザに情報入力を促して入力させる形態、装置が自動的に情報取得して設定する形態の両方を包含する。
【0037】
ところで上述したように、ユーザがスキャナ部2を開閉すると内カバー4も連動して開閉する。そのため、メンテナンス作業のためにスキャナ部2を開閉させた場合にも内カバー4を開閉したことが検知される。これをユーザがシートを新たにセットしたと誤認して、不要な情報設定を行ってしまう可能性がある。そこで、カバーセンサ7だけでなくスキャナ部センサ8の検知も利用することで誤認を無くすことができる。
【0038】
基本的な考え方は、内カバーの開閉状態が変化したら、それをトリガにして給紙トレイに載置されたシートに関する情報設定を行う。この際、内カバーが閉から開に変化した場合に、スキャナ部が閉のままであるなら情報設定を実行し、もしスキャナ部が開いたらなら情報設定を実行しない。これにより、ユーザに情報入力させる形態、装置が自動的に情報取得して設定する形態のいずれにおいても、無駄な情報設定を行わずに済む。より詳細な手順およびその実現手段について以下説明する。
【0039】
図12(a)〜(d)は、スキャナ部2と内カバー4の2つの開閉タイミングを4つのケースに場合分けして説明するための図である。図中のタイミングチャートにおいて、縦軸はカバーセンサ7、スキャナ部開閉センサ8それぞれの検知状態を表しており、ONとOFFの2状態のいずれかをとる。内カバー/スキャナ部を開けると対応するセンサが“ON”となり、内カバー/スキャナ部を閉じると対応するセンサが“OFF”となる。タイミングチャートの横軸は時間(単位は100msec)を表す。なお、このタイミングチャートは判定手順の理解を容易にするため模式化したものであり、実際の時間はこの限りではない。
【0040】
図12(a)は、ユーザがスキャナ部2は開けずに内カバー4のみを開けて次いで閉じたときの、各センサの出力の変化を示すタイミングチャートである。これは、ユーザが給紙トレイ3に新しくシートをセットするときの典型的な操作である。ユーザはシートセットのため内カバー4を開ける(
図2(b)、
図8(a)参照)。するとカバーセンサ7の検知出力がOFFからONに変化する(この例では時間3のタイミング)。ユーザは給紙トレイにシート束を置いて給紙口にシート下端を挿し込む。次いでユーザは内カバー4を閉じる(
図3(a)、
図6(a)、
図8(b)参照)。すると、カバーセンサ7の検知出力がONからOFFに変化する(この例では時間8のタイミング)。この期間中、スキャナ部センサ8の検知出力はOFFのまま変化することはない。
【0041】
図中の判定区間Aは、スキャナ部2と内カバー4が連動してほぼ同時に開いたことを判定するための期間である。判定区間Aは、カバーセンサ7がONに変化したタイミングを起点として所定の長さの期間(100msec)として設定されている。この期間内にスキャナ部センサ8がONであるか否かにより、ONであれば連動、OFFであれば非連動であると判定する。この例では、判定区間Aの中ではスキャナ部センサ8はOFFのまま変化はない。よってユーザによる意図的なカバー操作によるものと判断できるので、給紙トレイにシート装填があったと推定される。
【0042】
このように、カバーセンサ7だけが出力変化した場合には、給紙トレイにシートが新たにセットされた可能性が高く、そのシートに関する情報(用紙サイズ、用紙種類など)を装置が更新する必要ある。このため、給紙トレイに載置されたシートに関する情報設定を行う。具体的には、
図12(a)のようにカバーセンサ7だけON、OFFの順に変化したケース(ON,OFFに変化したタイミングやその時間間隔は問わない)では、制御部(CPU1702)は、シートに関する情報設定のためのシーケンスを実行する。この例では、ユーザにセットしたシートの情報として「用紙サイズ」と「用紙種類」の入力設定を促すため、
図15のような情報入力画面を、操作部1の表示部11に表示させる。なお、この情報入力は画像形成装置に接続されたホストPCのUIにて行うようにしてもよい。
図15(a)は現在設定されている情報として用紙サイズ:A4。用紙種類:普通紙が表されている。これを見たユーザが設定し直したい情報を選ぶと、
図15(b)のようにプルダウンメニューが現れて情報を更新することができる。ここでは用紙サイズをB5に設定し直そうとメニュー内から選んでいる。そして登録のボタンを押すと情報が更新設定される。もし、新たにセットしたシートがこれまでと同じ用紙であれば、ユーザは内容を変えずにそのまま登録のボタンを押す。この用紙情報は制御部のメモリに記憶され、プリント実行の際に利用される。
【0043】
図12(b)は、ユーザがスキャナ部2を開けて再び閉じたときの、各センサの出力の変化を示すタイミングチャートである。これはユーザがプリント部のメンテナンスのためにスキャナ部2を開けるときの典型的な操作である。ユーザは内カバー4を開けることは意図していないが、スキャナ部2を開けるのに連動して内カバーも開いてしまう。このケースでは、ユーザはインク交換やジャム処理のためスキャナ部2を開ける(
図1(b)、
図5(b)、
図6(b)参照)。するとスキャナ部センサ8がOFFからONに変化する(この例では時間3のタイミング)。その直後にカバーセンサ7の検知出力がOFFからONに変化する(この例では時間3から数十msec遅れのタイミング)。ユーザはプリント部のメンテナンス作業を行い、作業が済んだらスキャナ部2を閉じる。すると、先にカバーセンサ7がONからOFFに変化する(この例では時間8のタイミング)。その直後にスキャナ部センサ8がONからOFFに変化する(この例では時間8から数十msec遅れのタイミング)。上述したように、スキャナ部2の開閉に連動して内カバー4も開閉し、且つ2つのセンサの開閉検出は若干のタイムラグがある。そのため、スキャナ部センサ8の検知出力に伴ってカバーセンサ7の検知出力も若干のタイムラグをもって変化する。
【0044】
上述したように、判定区間Aは、スキャナ部2と内カバー4が連動してほぼ同時に開いたことを判定するための期間である。この例では判定区間Aの中でスキャナ部センサ8の出力がONであるので、スキャナ部2に連動して内カバー4も開いたと判断される。
【0045】
一方、判定区間Bは、スキャナ部とカバーセンサがほぼ同時に閉じたことを判定するための期間である。判定区間Bは、スキャナ部センサ8がONからOFFに変化したタイミングを起点として所定の長さの期間(100msec)として設定されたものである。この期間内にカバーセンサ7がOFFであるか否かを判定する。この例ではOFFなのでスキャナ部2を閉じるのに連動して内カバー4も閉じたと判断される。判定区間A、判定区間Bともに連動があったとの判定になる。制御部は、判定区間A(開動作)と判定区間B(閉動作)のうち少なくとも一方で連動がない(ユーザが個別操作した)との判定があれば、情報設定シーケンスを実行するアルゴリズムで制御を行なう。このケースは開閉いずれも連動がないので、制御部は上述のシートに関する情報設定シーケンスは実行しないようにする。このように、カバーセンサ7とスキャナ部センサ8の両方の出力変化が僅かなタイムラグをもって生じた場合には、ユーザがメンテナンスのためにスキャナ部2を開閉した可能性が高く、制御部は上述のシートに関する情報設定シーケンスは実行しないようにする。
【0046】
以上、
図12(a)と
図12(b)のように場合に応じて、内カバー4だけユーザが開閉操作を行ったときだけシートに関する情報設定がなされる。すなわち、内カバーが閉から開に変化した場合に、スキャナ部が閉じたままなら情報設定のシーケンスを実行し、もしスキャナ部も開いたら情報設定のシーケンスを実行しない。現実には、
図12(a)と
図12(b)のケースが大半であるが、本実施形態ではさらに以下に示す稀なケースについても考慮している。
【0047】
図12(c)は、ユーザが内カバー4とスキャナ部2の両方を順に開ける場合のタイミングチャートである。このケースは、先に内カバー4を開け、その後スキャナ部2を開けるユーザ操作を想定したものである。ユーザは給紙トレイにシート装填のため内カバー4を開け、開けたままユーザはさらにプリンタ部のメンテナンスのためスキャナ部2を開けるものとする。この場合、時間3にてカバーセンサ7がOFFからONに変化し、そこからかなり遅れて時間5にてスキャナ部センサ8がOFFからONに変化する。このようにカバーセンサ7のONを起点とする判定区間Aの外でスキャナ部センサ8のONに変化した場合は、ユーザによる意図的なカバー操作によるものと判断できるので、シート装填があったと推定される。シート装填を終えたユーザは内カバー4を閉じる。しかし、スキャナ部2が開いているため、内カバー4を閉じたとしても、カバーセンサ7はONを維持したままOFFにはならない(
図9参照)。その後、ユーザはプリンタメンテナンス(インクタンク交換など)を終え、スキャナ部2を閉じる。ここで初めてカバーセンサ7がONからOFFに変化する。その後、数十msec遅れて、判定区間Bの中でスキャナ部センサ8がONからOFFに変化する。すなわち、判定区間Aでは連動がないとの判定になり、判定区間Bでは連動あったとの判定になる。このケースでは、給紙トレイへのシート装填とメンテナンスの両方がなされるので、シートに関する情報設定が必要である。上述したように制御部は、判定区間Aと判定区間Bの少なくとも一方で連動がないとの判定があれば、情報設定シーケンスを実行するアルゴリズムで制御を行なう。よってこのケースでは、制御部は判定区間Aにおける連動がないとの判定を優先して、
図15に示す情報設定画面で用紙情報を入力させるシーケンスを実行する。
【0048】
図12(d)は、ユーザがスキャナ部2と内カバー4を順に閉じる場合のタイミングチャートである。このケースは、ユーザが
図12(c)と逆の手順で操作したケースを想定したものである。ユーザは最初にスキャナ部2を開ける。スキャナ部センサ8がOFFからONに変化する(時間3)。これに伴って内カバーセンサ7が僅かに遅れてOFFからONに変化する。判定区間Aでは連動があったとの判定になる。次いで、ユーザはシート装填のため内カバー4を開ける。すでにONとなっているカバーセンサ7はそのままONを維持して変化は生じない。次いで、ユーザはプリンタメンテナンスを終えてスキャナ部2を閉じる。スキャナ部センサ8の検知はONからOFFに変化する(時間8)が、内カバー4は開いたままなのでカバーセンサ7はONを維持する。したがって判定区間Bでは連動がないとの判定になる。この後、ユーザはシート装填を行って、内カバー4を閉じる。ここでやっとカバーセンサ7がONからOFFに変化する(時間10)。このケースも
図12(c)のケースと同様、給紙トレイへのシート装填とメンテナンスの両方がなされるので、シートに関する情報設定が必要である。上述したように制御部は、判定区間Aと判定区間Bの少なくとも一方で連動がないとの判定があれば、情報設定シーケンスを実行するアルゴリズムで制御を行なう。よってこのケースでは、制御部は判定区間Bにおける連動がないとの判定を優先して、
図15に示す情報設定画面で用紙情報を入力させるシーケンスを実行する。
【0049】
なお本例では、判定区間A、判定区間Bともに所定期間(100msec)としているが、この数値はセンサの検知タイミングや精度に応じて設定すればよい。所定期間の時間計測は種々の手法があり得る。例えば、制御部が持つカウンタを一定間隔でカウントアップまたはカウントダウンして時間を計測する手法、所定期間をタイマで計時して割り込みを発生させる手法が挙げられる。更なる別法として、カウンタの更新中もしくはタイマ割り込み待ちの時にONとなるフラグを用意してフラグ情報を参照する方法もある。
【0050】
なお、
図12のタイミングチャートは、スキャナ部3を開けると先にスキャナ部センサ8がONになり、僅かに遅れてカバーセンサ7がONになる順番でセンシングされることを前提にしたものである。2つのセンサの配置関係によっては2つの検知が同時になる場合や順番が逆になる場合もある。このような形態合わせて、
図12(a)〜12(d)の判定順序や、判定区間の長さを変えるようにしてもよい。
【0051】
<具体的な処理手順>
上述した制御部の判定アルゴリズムは具体的には以下に説明する処理手順にて実現される。
図13のフローチャートは、カバーセンサ7がONからOFFに変化したときに実行する処理手順であり、この手順により情報設定を行うか否かを決定する。これは、
図12(a)〜
図12(c)のケースではいずれも時間8において実行され、
図12(d)のケースでは時間10において実行される。
【0052】
図13において、ステップS2001では、「連動フラグ」がONであるか否かを判定する。連動フラグとは、内カバー4がスキャナ部2を開けるのに連動して開いたのか、ユーザの操作により非連動で独立して開いたのかを示すフラグである。前者の場合はフラグ値はON(1)となり、後者の場合はフラグ値はOFF(0)と設定される。連動フラグは初期値としてOFFが設定されている。
【0053】
ステップS2001の判断がYes(連動フラグON)の場合はステップS2003に移行し、判断がNo(連動フラグOFF)の場合はステップS2002に移行する。ステップS2001からステップS2002に移行するのは、内カバーはユーザ操作により開けられたとみなし場合(
図12(a)、
図12(c)のケース)である。ステップS2002では、制御部は
図15に示す情報入力画面を操作部に表示させ、ユーザに対してシートに関する情報の入力を促す。制御部はユーザ入力に基づいて情報設定を行う。
【0054】
一方、ステップS2003では、スキャナ部センサ8がOFFであるか否を判断する。判断がYesの場合はステップS2004に移行する。判断がNoの場合は連動があった(
図12(b)のケース)とみなしてシート情報設定を行うことなくシーケンスを終了する。ステップS2004では、スキャナ部センサOFFが判定区間Aの範囲内(100msec)で生じたか否かを判断する。これは上述した判定区間Aにおける判定である。ステップS2004の判断がYes(範囲内)の場合は連動があったとしてシーケンスを終了する。ステップS2004の判断がNoの場合(
図12(d)のケース)は連動がなかったとして、ステップS2002に移行して情報設定を行う。
【0055】
図14のフローチャートは、スキャナ部センサ8がOFFからONに変化したときに実行する処理手順であり、この手順により上述の「連動フラグ」(
図13のステップS2001)のフラグ値を事前に決定する。これは、
図12(a)のケースでは実行されず、
図12(b)のケースでは時間3に、
図12(c)のケースでは時間5に、
図12(d)のケースでは時間3にそれぞれ実行される。
【0056】
図14において、ステップS2101では、連動フラグのフラグ値をOFF(0)に初期化する。続くステップS2102では、カバーセンサ4がONであるか否かを判断する。ステップS2102の判断がYes(カバーセンサON)の場合はステップS2104に移行し、判断がNo(カバーセンサOFF)の場合はステップS2103に移行する。ステップS2103では連動がなかったと判定して連動フラグのフラグ値をOFF(0)に設定し、シーケンスを終了する。一方、ステップS2104では、カバーセンサONが判定区間Bの範囲内(100msec)で生じたか否かを判断する。これは上述した判定区間Bにおける判定である。ステップS2104の判断がYes(範囲内)の場合はステップS2103に移行して、連動があったと判定して連動フラグのフラグ値をON(1)に設定し、シーケンスを終了する。ステップS2104の判断がNoの場合はステップS2105に移行して、連動がなかったと判定して連動フラグのフラグ値をOFF(0)に設定し、シーケンスを終了する。
【0057】
以上説明してきたように、内カバー4の開動作(判定区間A)と閉動作(判定区間B)の少なくとも一方が、スキャナ部2の開閉に連動してものでないと判定したら、給紙トレイ3に載置されたシートに関する情報設定を行うことができる。逆に言えば、内カバー4の開閉ともにスキャナ部2の開閉に連動したと判定したら情報設定を行わない。
【0058】
なお、
図12(c)、
図12(d)のケースは稀であるのでこれらを想定せず、より簡略なアルゴリズムで
図12(a)と
図12(b)を区別するようにしてもよい。例えば、内カバー4の開動作(判定区間A)だけで判断する、または閉動作(判定区間B)だけで判断して、情報設定の有無を決定することができる。この場合、内カバー4の開動作(判定区間A)または閉動作(判定区間B)が連動でなければ情報設定を行い、連動であれば情報設定を行わない、というアルゴリズムになる。
【0059】
<作用効果2>
本実施形態によれば、ユーザが内カバーの開けたことをトリガとして、給紙トレイにセットするシートの情報設定を促すので、装置は用紙サイズや用紙種類に適した印刷を行うことができる。そして、ユーザが給紙トレイにシートセットする意図がないときに情報設定を促すことがなくなり、ユーザの混乱が生じないので使い勝手の良い画像形成装置が実現する。また、装置が自動的に情報取得して設定する形態であっても、無駄な自動設定動作による装置スループットの低下を防ぐことがでる。このように、給紙トレイの給紙口を覆うカバーが開閉されたことをトリガにシートの情報設定を行うことができ、使い勝手に優れた装置が実現する。
【0060】
なお、以上説明してきた実施形態において、スキャナ部はフラットベッド型であることは必須ではなく、原稿圧板を持たないシートスルー型のスキャナユニットであってもよい。また、本発明はスキャナ部を開くことで内カバーも連動して開く構成に限らず、プリント装置の筐体に対して開閉する何らかのユニットを有し、それに連動して内カバーが連動して開く構成においても有効である。また、装置に強い振動が加わったときに内カバーが動いてしまう可能性がある構成においても誤判定防止として有効である。