特許第6800664号(P6800664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800664
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20201207BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20201207BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   A61B1/06 611
   A61B1/00 513
   A61B1/04 531
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-175337(P2016-175337)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-38637(P2018-38637A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】長岡 英之
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−061569(JP,A)
【文献】 特開2015−119765(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0087903(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0278613(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 −1/32
G02B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を照明する照明光を出力する光源装置と、
2次元配列された複数色のカラーフィルタを含むカラーフィルタアレイを有し、前記照明光によって照明された前記被写体を撮影する撮像素子とを備え、
前記光源装置が、
紫色の波長領域にピーク強度を有する光を発する第1の固体照明素子と、
青色の波長領域にピーク強度を有する光を発する第2の固体照明素子と、
緑色の波長領域にピーク強度を有する光を発する第3の固体照明素子と、
前記第1の固体照明素子、前記第2の固体照明素子および前記第3の固体照明素子の点灯および消灯を制御する制御部とを備え、
前記カラーフィルタアレイが、シアン色のカラーフィルタおよび青色のカラーフィルタを含むとともに、前記シアン色のカラーフィルタが、緑色、青色および紫色の光を透過させる光学特性を有し、
前記制御部が、
第1の観察モードでは、前記第1の固体照明素子および前記第3の固体照明素子を同時に点灯させ、前記第2の固体照明素子を消灯させ、
第2の観察モードでは、前記第2の固体照明素子および前記第3の固体照明素子を順番に点灯させる内視鏡装置。
【請求項2】
前記光源装置が、580nm〜700nmの波長領域にピーク強度を有する光を発する第4の固体照明素子を備える請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記カラーフィルタアレイが、赤色のカラーフィルタを含む請求項1または請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記カラーフィルタアレイが、マゼンダ色のカラーフィルタを含む請求項1または請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記カラーフィルタアレイにおける前記シアン色のカラーフィルタの数の割合が、4分の1以上である請求項1から請求項4のいずれかに記載の内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、NBI(Narrow Band Imaging)またはBLI(Blue Laser Imaging)のような、狭帯域光を被観察部位に照射し、その反射光を画像化する特殊光観察が用いられており(例えば、特許文献1および2参照。)、病変部の発見を容易にすることができる。一方、白色光観察において良好な色再現を得ながら同時観察が行えるように、RGBのベイヤ配列のカラーフィルタが設けられた撮像素子が用いられている。
【0003】
特殊光観察において、粘膜表層の毛細血管等の画像は紫色から青色の反射光の情報(B情報)が大きく寄与するため、B情報が重要である。しかし、RGBのベイヤ配列においては、紫色から青色の反射光を検出するB画素が全画素の4分の1しかないため、毛細血管等の解像度が不足してしまう。特許文献1および2は、このような課題の解決を図っている。
【0004】
特許文献1では、紫色の波長領域に副感度領域を有するG画素によって、G画素でもB情報を取得し、G画素の信号とR画素の信号の相関演算をすることによってG画素の信号からB情報を抽出している。特許文献2では、補色系撮像素子を用いた内視鏡で狭帯域光観察をする際に、B情報とG情報の分離性を向上するために、青色狭帯域光および緑色狭帯域光を面順次方式で発光させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−170639号公報
【特許文献2】特開2015−66062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の場合、白色光画像取得時に、G画素の信号とR画素の信号の相関が低い領域では、B情報の抽出精度が低くなってしまうという問題がある。また、画像処理によってG画素の信号からB情報を抽出する際に、ゲインが画像信号にかけられる。このゲインによって画像のノイズが増大するという問題がある。特許文献2の面順次方式を用いた場合、狭帯域光画像に色ずれが起きてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、画質の良好な狭帯域光画像と白色光画像とを取得することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、被写体を照明する照明光を出力する光源装置と、2次元配列された複数色のカラーフィルタを含むカラーフィルタアレイを有し、前記照明光によって照明された前記被写体を撮影する撮像素子とを備え、前記光源装置が、紫色の波長領域にピーク強度を有する光を発する第1の固体照明素子と、青色の波長領域にピーク強度を有する光を発する第2の固体照明素子と、緑色の波長領域にピーク強度を有する光を発する第3の固体照明素子と、前記第1の固体照明素子、前記第2の固体照明素子および前記第3の固体照明素子の点灯および消灯を制御する制御部とを備え、前記カラーフィルタアレイが、シアン色のカラーフィルタおよび青色のカラーフィルタを含むとともに、前記シアン色のカラーフィルタが、緑色、青色および紫色の光を透過させる光学特性を有し、前記制御部が、第1の観察モードでは、前記第1の固体照明素子および前記第3の固体照明素子を同時に点灯させ、前記第2の固体照明素子を消灯させ、第2の観察モードでは、前記第2の固体照明素子および前記第3の固体照明素子を順番に点灯させる内視鏡装置である。
【0009】
本発明の一態様によれば、紫色、青色および緑色の光を含む照明光が被写体に照射されると、被写体から撮像素子に入射した紫色、青色および緑色の反射光が、カラーフィルタアレイを透過して撮像素子の画素によって検出される。
【0010】
狭帯域光画像を取得する場合には、波長が互いに離れている紫色の光および緑色の光のみを被写体に照射する。このときには、紫色の光および緑色の光が同時に照射されるように、制御部が第1および第3の固体照明素子を制御する。毛細血管の情報を含む紫色の反射光は、青色のカラーフィルタ(Bフィルタ)に対応するB画素に加えて、シアン色のカラーフィルタ(Cyフィルタ)に対応するCy画素によっても検出される。これにより、毛細血管の情報を多く含む紫色の反射光の情報量が増大するので、高い解像度を有する高画質の狭帯域光画像を取得することができる。
【0011】
Cy画素は、紫色の反射光に加えて緑色の反射光も検出するため、色分離を良くするためにはCy画素から緑色の反射光の情報を精度高く抽出する必要がある。B画素の信号に含まれる情報は、紫色の反射光の情報が支配的であるので、Cy画素とその近傍に位置するB画素の信号とから予測されるB情報をCy画素の信号から差し引くことによって、緑色の反射光の情報を精度高く抽出することができる。
【0012】
一方、白色光画像を取得する場合には、紫色、青色および緑色の光が被写体に照射される。このときには、波長が互いに近接している青色の光および緑色の光が順番に照射されるように、制御部が第1、第2および第3の固体照明素子を制御する。これにより、青色の反射光と緑色の反射光とが時分割でCy画素によって検出されるので、青色の反射光の情報と緑色の反射光の情報とが混ざらずに別々に取得される。したがって、画像処理によって信号にゲインをかけて青色および緑色の反射光の情報を分離する必要がない。これにより、ノイズの増大を抑えつつ色再現が良好な白色光画像を取得することができる。
【0013】
上記態様においては、前記光源装置が、580nm〜700nmの波長領域にピーク強度を有する光を発する第4の固体照明素子を備えていてもよい。
このようにすることで、第4の固体照明素子が発する橙色から赤色の光により、赤色の反射光の情報が適切な強さで取得される。これにより、白色光画像のホワイトバランスの調整のために赤色の反射光の信号にかけるゲインを抑えて、ノイズが低減された白色光画像を得ることができる。
【0014】
上記態様においては、前記カラーフィルタアレイが、赤色のカラーフィルタを含んでいてもよい。
このようにすることで、赤色のカラーフィルタに対応する画素によって被写体からの赤色の反射光を検出することにより、白色光画像の色再現性を向上することができる。
【0015】
上記態様においては、前記カラーフィルタアレイが、マゼンダ色のカラーフィルタを含んでいてもよい。
このようにすることで、マゼンダ色のカラーフィルタに対応する画素によって、赤色の反射光に加えて、紫色から青色の反射光が検出される。これにより、白色光画像の色再現性を向上させながら、紫色から青色の反射光の情報量を増大し、狭帯域光画像の解像度をさらに向上することができる。
【0016】
上記態様においては、前記カラーフィルタアレイにおける前記シアン色のカラーフィルタの数の割合が、4分の1以上であってもよい。
このようにすることで、Cy画素の数が撮像素子の全画素の4分の1以上となる。これにより、白色光画像の画質を維持しながら、狭帯域光画像における表層の毛細血管の解像度を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、画質の良好な狭帯域光画像と白色光画像とを取得することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡装置の全体構成図である。
図2図1の内視鏡装置の撮像素子が有するカラーフィルタアレイを示す図である。
図3図2のカラーフィルタアレイを有する撮像素子の分光感度特性を示す図である。
図4図1の内視鏡装置の白色光観察モードにおいて、(a)第1の期間および(c)第2の期間に光源装置から出力される光の分光特性と、(b)第1の期間および(d)第2の期間での撮像素子から出力される信号に含まれる分光特性とを示す図である。
図5図1の内視鏡装置の狭帯域光観察モードにおいて、(a)光源装置から出力される光の分光特性と(b)撮像素子から出力される信号に含まれる分光特性とを示す図である。
図6図1の内視鏡装置の第1の変形例の全体構成図である。
図7図6の内視鏡装置の白色光観察モードにおいて、(a)第1の期間および(c)第2の期間に光源装置から出力される光の分光特性と、(b)第1の期間および(d)第2の期間での撮像素子から出力される信号に含まれる分光特性とを示す図である。
図8図1の内視鏡装置の第2の変形例におけるカラーフィルタアレイを示す図である。
図9図8のカラーフィルタアレイを備える撮像素子の分光感度特性を示す図である。
図10図8のカラーフィルタアレイを備える内視鏡装置の白色光観察モードにおいて、(a)第1の期間および(c)第2の期間に光源装置から出力される光の分光特性と、(b)第1の期間および(d)第2の期間での撮像素子から出力される信号に含まれる分光特性とを示す図である。
図11図8のカラーフィルタアレイを備える内視鏡装置の狭帯域光観察モードにおいて、(a)光源装置から出力される光の分光特性と(b)撮像素子から出力される信号に含まれる分光特性とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態に係る内視鏡装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡装置1は、図1に示されるように、体内に挿入され被写体への照明光の照射および画像信号の取得を行う細長いスコープ2と、該スコープ2の基端に接続されスコープ2への照明光の供給および画像の生成を行う駆動制御装置3と、該駆動制御装置3に接続されたモニタ4とを備えている。
【0020】
スコープ2は、被写体に照明光を照射する照明光学系5と、被写体からの照明光の反射光を受光し被写体の画像信号を得る撮像光学系6とを備えている。
照明光学系5は、スコープ2内に長手方向に沿って配置され基端から先端へ照明光を導光する導光部材7と、スコープ2の先端に設けられ導光部材7の先端から射出された照明光をスコープ2の先端前方に向かって射出する照明レンズ8とを備えている。
【0021】
撮像光学系6は、スコープ2の先端に設けられ被写体からの反射光を集光する対物レンズ9と、該対物レンズ9によって結ばれた被写体の像を撮影して画像信号を取得する撮像素子10と、該撮像素子10から出力された画像信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル(AD)変換器11とを備えている。
【0022】
図2は、撮像素子10の撮像面に設けられ、2次元配列された多数のカラーフィルタからなるカラーフィルタアレイ12の一部を示している。図2に示されるように、カラーフィルタアレイ12は、いわゆるベイヤ配列においてGフィルタをCyフィルタに置き換えたものである。具体的には、カラーフィルタアレイ12は、赤色のカラーフィルタ(Rフィルタ)、シアン色のカラーフィルタ(Cyフィルタ)および青色のカラーフィルタ(Bフィルタ)を備える。正方配列された1個のRフィルタ、1個のBフィルタおよび2個のCyフィルタから1つの単位配列が構成され、単位配列が行方向および列方向に配列されている。
【0023】
各カラーフィルタは、撮像素子10の1個の画素に対応している。以下、Rフィルタ、CyフィルタおよびBフィルタに対応する画素を、R画素、Cy画素およびB画素とそれぞれ言う。したがって、撮像素子10の全画素数に対するCy画素の数の比率は、2分の1となる。R画素、Cy画素およびB画素は、Rフィルタ、CyフィルタおよびBフィルタを透過した光をそれぞれ検出してR信号、Cy信号およびB信号をそれぞれ取得する。R信号、Cy信号およびB信号は、AD変換器11を介して駆動制御装置3内の画像処理装置14に送信される。
【0024】
図3は、撮像素子10のR画素、Cy画素およびB画素の分光感度特性を示している。R画素、Cy画素およびB画素の分光感度特性はそれぞれ、Rフィルタ、CyフィルタおよびBフィルタの透過率特性と受光部となる半導体の分光感度特性とを掛け合わせたものである。図3に示されるように、Rフィルタは、赤色の光を選択的に透過させるので、R画素は、赤色の波長領域(R領域)に高い感度を有する。Cyフィルタは、緑色、青色および紫色の光を選択的に透過させるので、Cy画素は、緑色、青色および紫色の波長領域(G領域、B領域、V領域)に高い感度を有する。Bフィルタは、青色および紫色の光を選択的に透過させるので、B画素は、B領域およびV領域に高い感度を有する。
【0025】
駆動制御装置3は、照明光を生成する光源装置13と、撮像光学系6から受信した画像信号を処理して画像を生成する画像処理装置14とを備えている。
光源装置13は、3色のLED15V,15B,15Gと、可動式の狭帯域フィルタ16と、LED15V,15B,15Gの点灯および消灯を制御する光源制御部(制御部)17と、狭帯域フィルタ16の移動を制御するフィルタ制御部18とを備えている。
【0026】
V−LED(第1の固体照明素子)15Vは、V領域(例えば、380nm〜430nm)にピーク強度を有する紫色狭帯域光(V光)を発する。B−LED(第2の固体照明素子)15Bは、B領域(例えば、430nm〜480nm)にピーク強度を有する青色狭帯域光(B光)を発する。G−LED(第3の固体照明素子)15Gは、蛍光体を利用し、G領域(例えば、480nm〜580nm)にピーク強度を有する緑色広帯域光(G光)を発する。G光は、V光およびB光に比べて広いスペクトル幅を有し、R領域にも強度を有している。
【0027】
LED15V,15B,15Gから発せられたV光、B光およびG光は、合波光学系19によって互いに合波され、単一の光軸に沿って集光レンズ20に入射し、集光レンズ20によって導光部材7の基端面に集光される。合波光学系19は、例えば、複数個のダイクロイックミラーの組み合わせからなる。
【0028】
狭帯域フィルタ16は、G−LED15Gと合波光学系19との間のG光の光路上の第1の位置(図1の実線参照。)と、G光の光路から外れた第2の位置(図1の二点鎖線参照。)との間で移動可能に設けられている。狭帯域フィルタ16は、緑色の狭い波長領域の光のみを透過させる。
【0029】
光源制御部17、フィルタ制御部18および画像処理装置14は、白色光画像を取得する白色光観察モードおよびNBI画像を取得するNBI観察モード(狭帯域光観察モード)のそれぞれに対して動作するようになっている。
【0030】
白色光観察モードにおいて、光源制御部17は、V−LED15V、B−LED15BおよびG−LED15Gを点灯させ、フィルタ制御部18は、狭帯域フィルタ16を第2の位置に配置する。このときに、光源制御部17は、図4(a)に示されるようにV−LED15VおよびB−LED15Bのみを点灯させる第1の期間と、図4(c)に示されるようにG−LED15Gのみを点灯させる第2の期間とを交互に繰り返す。
【0031】
したがって、第1の期間においては、図4(a)に示されるように、V光LvおよびB光Lbのみが被写体に照射される。そして、図4(b)に示されるように、V光LvおよびB光Lbの反射光が、Cy画素およびB画素によって検出される。第2の期間においては、図4(c)に示されるように、G光Lgのみが被写体に照射される。そして、図4(d)に示されるように、G光Lgの反射光のうち、G領域の成分がCy画素によって検出され、R領域の成分がR画素によって検出される。
【0032】
白色光観察モードにおいて、画像処理装置14は、第1の期間に取得されたCy信号およびB信号をBチャネルに割り当て、第2の期間に取得されたCy信号をGチャネルに割り当て、第2の期間に取得されたR信号をRチャネルに割り当て、さらにその他の処理を加えることによって、白色光画像を生成する。なお、第1の期間に取得されたCy信号をBチャネルに割り当てず、B信号のみをBチャネルに割り当ててもよい。
【0033】
NBI観察モードにおいて、光源制御部17は、V−LED15VおよびG−LED15Gを点灯させるとともにB−LED15Bを消灯させ、フィルタ制御部18は、狭帯域フィルタ16を第1の位置に配置する。このときに、光源制御部17は、図5(a)に示されるように、V−LED15VおよびG−LED15Gを同時に点灯させる。
【0034】
したがって、図5(a)に示されるように、V光Lvおよび狭帯域フィルタ16を透過した緑色狭帯域光(G’光)Lg’のみが被写体に照射される。そして、図5(b)に示されるように、V光Lvの反射光がB画素およびCy画素によって検出され、G’光Lg’の反射光がCy画素によって検出される。すなわち、Cy画素は、V光LvおよびG’光Lg’の両方の反射光を同時に検出して、V光LvおよびG’光Lg’の両方の反射光の情報を含むCy信号を取得する。
【0035】
NBI観察モードにおいて、画像処理装置14は、B信号とCy信号とから予測されるB情報をBチャネルおよびGチャネルに割り当て、Cy信号からB情報を差し引いた差をRチャネルに割り当て、さらにその他の処理を加えることによって、NBI画像を生成する。
【0036】
Cy信号には、上述したようにV光LvおよびG’光Lg’の両方の反射光の情報が含まれる。さらに、B信号はV光LvおよびG’光Lg’の両方の情報を含むが、B画素のG領域における感度はV領域における感度に比べて十分に低いため、V光Lvの反射光の情報を純度高く取得することができる。したがって、Cy信号とB信号からB情報を予測し、Cy信号からB情報を差し引くことによって、G’光Lg’の反射光の情報を精度良く抽出することができる。
【0037】
画像処理装置14は、生成した白色光画像またはNBI画像をモニタ4に送信する。
モニタ4は、受信した白色光画像またはNBI画像を表示する。
【0038】
白色光観察およびNBI観察のいずれを実行するかは、スコープ2に設けられた観察モード切替スイッチ21をユーザが操作することによって決定される。観察モード切替スイッチ21は、白色光観察モードおよびNBI観察モードのうち一方をユーザが選択することができるようになっている。選択されたモードの情報は、観察モード切替スイッチ21から光源制御部17、フィルタ制御部18および画像処理装置14に送信される。光源制御部17およびフィルタ制御部18は、受信したモードの情報に従って上述した制御を実行し、画像処理装置14は、受信したモードの情報に従って、白色光画像またはNBI画像を生成する。
【0039】
次に、このように構成された内視鏡装置1の作用について説明する。
ユーザが観察モード切替スイッチ21によって白色光観察モードを選択すると、光源制御部17およびフィルタ制御部18が白色光観察モードでLED15V,15B,15Gおよび狭帯域フィルタ16を制御することによって、V光およびB光と、G光とが交互に被写体に照射される。そして、V光およびB光の反射光とG光の反射光とが交互に撮像素子10によって検出され、V光およびB光の反射光の情報を含むB信号およびCy信号と、G光の反射光の情報を含むCy信号およびR信号とが、交互に画像処理装置14に送信される。画像処理装置14において、第1の期間のB信号およびCy信号がBチャネルに割り当てられ、第2の期間のCy信号およびR信号がGチャネルおよびRチャネルにそれぞれ割り当てられ、さらにその他画像処理を加えることによって、白色光画像が生成され、モニタ4に表示される。
【0040】
一方、ユーザが観察モード切替スイッチ21によってNBI観察モードを選択すると、光源制御部17およびフィルタ制御部18がNBI観察モードでLED15V,15B,15Gおよび狭帯域フィルタ16を制御することによって、V光およびG’光が同時に被写体に照射される。そして、V光およびG’光の反射光が撮像素子10によって検出され、V光およびG’光の反射光の情報を含むCy信号と、V光Lvの反射光の情報を含むB信号とが画像処理装置14に送信される。画像処理装置14において、B信号とCy信号から予測されるB情報がBチャネルおよびGチャネルに割り当てられ、Cy信号からB情報を差し引いて得られたG情報がRチャネルに割り当てられ、さらにその他画像処理を加えることによって、NBI画像が生成され、モニタ4に表示される。
【0041】
このように、本実施形態によれば、G、BおよびV領域の光を透過させるCyフィルタを撮像素子10に設けることによって、生体組織の表層の毛細血管の情報を含むV光の反射光が、B画素に加えてCy画素によっても検出される。したがって、NBI画像の生成に用いられるV光Lvの反射光の情報が増大する。これにより、高解像度のNBI画像を取得することができるという利点がある。
【0042】
また、白色光観察時には、R領域にも強度を有する広帯域のG光Lgを用い、R画素によってR領域の反射光を検出することによって、色再現性の高い白色光画像を取得することができるという利点がある。さらに、V−LED15VおよびB−LED15Bのみを点灯させる第1の期間と、G−LED15Gのみを点灯させる第2の期間とを交互に繰り返してV光およびB光とG光とを面順次方式で被写体に照射することによって、Cy画素が、V領域の反射光およびB領域の反射光とG領域の反射光とを時分割で検出する。これにより、画像信号にゲインをかけることなくBおよびV領域の情報とG領域の情報とを分離することができ、ノイズの低減された白色光画像を取得することができるという利点がある。
【0043】
仮に、V−LED15VおよびB−LED15BとG−LED15Gとを同時に点灯させた場合、B画素はG領域にも感度を有するため、B信号にはG光Lgの反射光の情報も多く含まれる。そのため、Cy画素の信号からVおよびB領域の情報とG領域の情報とを分離する精度が下がり、色再現性が低下する。また、VおよびB領域の情報とG領域の情報の分離の際に高いゲインを画像信号にかける必要が生じ、ノイズの多い白色光画像となる。
【0044】
本実施形態においては、カラーフィルタアレイ12が、正方配列された4つのカラーフィルタからなる単位配列を有することとしたが、カラーフィルタアレイ12のカラーフィルタの配列パターンはこれに限定されるものではない。
例えば、2×2の単位配列において、Cyフィルタの数を1個とし、RフィルタまたはBフィルタの数を2個にしてもよい。あるいは、単位配列が、3×3の9個のカラーフィルタまたは4×4の16個のカラーフィルタから構成されていてもよい。いずれの配列パターンにおいても、カラーフィルタアレイのカラーフィルタの全数に対するCyフィルタの数の割合が4分の1以上であることが好ましい。
【0045】
本実施形態においては、狭帯域光画像としてNBI画像を取得する場合について説明したが、NBI画像以外の狭帯域光画像、例えばBLI画像を取得することとしてもよい。
【0046】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
本実施形態の第1の変形例に係る内視鏡装置100において、光源装置131が、図6に示されるように、R−LED(第4の固体照明素子)15Rをさらに備える。R−LED15Rは、橙色から赤色の波長領域(例えば、580nm〜700nm)にピーク強度を有する赤色狭帯域光(R光)を発する。
本変形例において、NBI観察モードでの光源制御部17による制御は、上述した実施形態と同一であるが、白色光観察モードでの光源制御部17による制御が、上述した実施形態と異なる。
【0047】
白色光観察モードにおいて、光源制御部17は、図7(a)に示されるように第1の期間にV−LED15VおよびB−LED15Bのみを点灯させ、図7(c)に示されるように第2の期間にG−LED15GおよびR−LED15Rのみを点灯させる。第1の期間には、図7(b)に示されるように、Bチャネルに割り当てられるB信号およびCy信号が取得される。なお、第1の期間に取得されたCy信号をBチャネルに割り当てず、B信号のみをBチャネルに割り当ててもよい。第2の期間には、図7(d)に示されるように、Gチャネルに割り当てられるCy信号と、Rチャネルに割り当てられる、より大きなR信号が取得される。
このように、R信号は、BチャネルおよびGチャネルに割り当てられる信号に対して適切な大きさを有するので、ホワイトバランスの調整のためにR信号にかけるゲインを抑えることができ、白色光画像のノイズをさらに低減することができる。
【0048】
本実施形態の第2の変形例に係る内視鏡装置において、カラーフィルタアレイ121が、図8に示されるように、Rフィルタに代えて、マゼンダ色のカラーフィルタ(Mgフィルタ)を有する。図9は、撮像素子10のMg画素、Cy画素およびB画素の分光感度特性を示している。Mg画素は、Mgフィルタに対応する画素である。Mgフィルタは、BおよびV領域とR領域に2つの透過帯域を有し、青色および紫色の光と赤色の光を選択的に透過させる。
【0049】
本変形例において、光源装置131は、上述した4個のLED15V,15B,15G,15Rを備える。光源制御部17によるLED15V,15B,15G,15Rの制御は、図10(a),(c)および図11(a)に示されるように、第1の変形例と同一である。
【0050】
白色光画像の生成において、第1の期間に取得されたB信号、Cy信号およびMg信号が、Bチャネルに割り当てられる。なお、第1の期間に取得されたCy信号およびMg信号をBチャネルに割り当てず、B信号のみをBチャネルに割り当ててもよい。また、第2の期間に取得されたCy信号がGチャネルに割り当てられ、第2の期間に取得されたMg信号がRチャネルに割り当てられる。
一方、NBI画像の生成において、B信号およびCy信号に加えてMg信号がBチャネルおよびGチャネルに割り当てられる。このように、V光Lvの反射光が、さらにMg画素によっても検出され、NBI画像におけるV光Lvの反射光の情報量がさらに増大するので、毛細血管のさらに高解像度のNBI画像を取得することができる。
【0051】
本変形例においては、光源装置131に代えて、R−LED15Rを含まない光源装置13を用いてもよい。この場合にも、NBI画像の解像度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1,100 内視鏡装置
10 撮像素子
12,121 カラーフィルタアレイ
13,131 光源装置
15V V−LED(第1の固体照明素子)
15B B−LED(第2の固体照明素子)
15G G−LED(第3の固体照明素子)
15R R−LED(第4の固体照明素子)
17 光源制御部(制御部)
図1
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図11