(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平坦化手段は、少なくとも一部の前記層の形成時において、それぞれの前記層を形成するために行う複数回の前記主走査動作のうちの少なくとも最後の主走査動作において、前記層を平坦化することを特徴とする請求項1に記載の造形装置。
少なくとも一部の前記層の形成時において、それぞれの前記層を形成するために行う複数回の前記主走査動作のうちの少なくとも最後から2番目の前記主走査動作における前記単位面積光量を、前記最後の主走査動作における前記単位面積光量よりも少なくすることを特徴とする請求項2に記載の造形装置。
少なくとも一部の前記層の形成時において、それぞれの前記層を形成するために行う複数回の前記主走査動作のうちの最初の前記主走査動作における前記単位面積光量を、前記最後の主走査動作における前記単位面積光量よりも少なくすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の造形装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す。
図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。
【0025】
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置10は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下の説明をする点を除き、造形装置10は、例えば、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置10は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形や着色等に必要な各種構成を更に備えてよい。
【0026】
本例において、造形装置10は、積層造形法により造形物50を造形する装置である。この場合、積層造形法とは、例えば、造形の材料で形成される層を複数積層することで造形物50を造形する方法である。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。また、本例において、造形装置10は、ヘッド部12、造形台14、主走査駆動部16、副走査駆動部18、積層方向駆動部20、及び制御部30を備える。
【0027】
ヘッド部12は、造形物50の材料となるインクの液滴(インク滴)を吐出する部分であり、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出し、硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式でインク滴を吐出する吐出ヘッドのことである。
【0028】
また、本例において、ヘッド部12は、少なくとも、複数のインクジェットヘッドと、紫外線光源とを有する。また、ヘッド部12は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。この場合、サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。また、ヘッド部12のより具体的な構成については、後に詳しく説明をする。
【0029】
造形台14は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台14は、少なくとも上面が積層方向へ移動可能な構成を有しており、積層方向駆動部20に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面が移動する。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、造形装置10において予め設定される主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向(図中のZ方向)である。
【0030】
主走査駆動部16は、ヘッド部12に主走査動作(Y走査)を行わせる駆動部である。この場合、ヘッド部12に主走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに主走査動作を行わせることである。また、主走査動作とは、例えば、造形の材料であるインクを主走査方向へ移動しつつ吐出する動作のことである。
【0031】
また、本例において、主走査駆動部16は、主走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることにより、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。また、主走査動作におけるヘッド部12の移動は、造形物50に対する相対的な移動であってもよい。そのため、造形装置10の構成の変形例においては、例えば、ヘッド部12の位置を固定して、例えば造形台14を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
【0032】
また、本例の主走査動作時において、主走査駆動部16は、ヘッド部12における紫外線光源の駆動を更に行う。より具体的に、主走査駆動部16は、例えば、主走査動作時に紫外線光源を点灯させることにより、造形物50の被造形面に着弾したインクを硬化させる。造形物50の被造形面とは、例えば、ヘッド部12により次のインクの層が形成される面のことである。
【0033】
副走査駆動部18は、ヘッド部12に副走査動作(X走査)を行わせる駆動部である。この場合、ヘッド部12に副走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに副走査動作を行わせることである。副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作のことである。また、より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作である。
【0034】
また、本例において、副走査駆動部18は、主走査動作の合間に、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。この場合、副走査駆動部18は、例えば、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。また、副走査駆動部18は、副走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせてもよい。
【0035】
積層方向駆動部20は、積層方向(Z方向)へヘッド部12又は造形台14の少なくとも一方を移動させる駆動部である。この場合、積層方向へヘッド部12を移動させるとは、例えば、ヘッド部12における少なくともインクジェットヘッドを積層方向へ移動させることである。また、積層方向へ造形台14を移動させるとは、例えば、造形台14における少なくとも上面の位置を移動させることである。また、積層方向駆動部20は、積層方向へヘッド部12又は造形台14の少なくとも一方を移動させることにより、Z方向への走査(Z走査)をインクジェットヘッドに行わせ、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例において、積層方向駆動部20は、例えば、積層方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させる。また、積層方向駆動部20は、積層方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させてもよい。
【0036】
制御部30は、例えば造形装置10のCPUであり、造形装置10の各部を制御することにより、造形装置10に造形物50の造形の動作を実行させる。この場合、造形物50の造形の動作とは、例えば、積層方向へ造形の材料を積層して行う造形の動作のことである。また、この場合、制御部30は、例えば造形しようとする造形物50の形状情報や、カラー画像情報等に基づき、造形装置10の各部を制御する。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。
【0037】
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、説明をする。
図1(b)は、ヘッド部12の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドを有する。それぞれのインクジェットヘッドは、造形台14と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、造形装置10は、ヘッド部12における複数のノズル列から材料を吐出することにより、造形物50を造形する。
【0038】
また、より具体的に、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。また、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線光源104、及び平坦化ローラ106を有する。また、複数のインクジェットヘッドとして、
図1(b)に示すように、インクジェットヘッド102s、インクジェットヘッド102mo、インクジェットヘッド102w、インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102k、及びインクジェットヘッド102tを有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
【0039】
インクジェットヘッド102sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。本例において、サポート層52の材料としては、造形物50の材料よりも紫外線による硬化度が弱い紫外線硬化型インクを用いる。これにより、インクジェットヘッド102sは、サポート層52の材料となる紫外線硬化型インクを、ノズル列における各ノズルから吐出する。サポート層52の材料としては、造形物50の造形後に水で溶解可能な水溶性の材料を用いることが好ましい。また、サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。
【0040】
インクジェットヘッド102moは、造形材インク(Moインク)を吐出するインクジェットヘッドであり、造形材インクを、ノズル列における各ノズルから吐出する。この場合、造形材インクとは、例えば、造形物50の内部(内部領域)の造形に用いる造形専用のインクである。
【0041】
尚、造形物50の内部については、造形材インクに限らず、他の色のインクを更に用いて形成してもよい。また、例えば、造形材インクを用いずに、他の色のインク(例えば白色のインク等)のみで造形物50の内部を形成することも考えられる。この場合、ヘッド部12において、インクジェットヘッド102moを省略してもよい。
【0042】
インクジェットヘッド102wは、白色(W)のインクを吐出するインクジェットヘッドであり、白色のインクを、ノズル列における各ノズルから吐出する。また、本例において、白色のインクは、光反射性のインクの一例であり、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。この光反射領域は、例えば、造形物50表面に対して減法混色によるカラー表現での着色を行う場合に、造形物50の外部から入射する光を反射する。
【0043】
インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102k(以下、インクジェットヘッド102y〜kという)は、着色された造形物50の造形時に用いる着色用のインクジェットヘッドであり、着色に用いる複数色のインク(加飾インク)のそれぞれのインクを、ノズル列における各ノズルからそれぞれ吐出する。より具体的に、インクジェットヘッド102yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド102kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、この場合、YMCKの各色は、カラー表現に用いるプロセスカラーの一例である。また、インクジェットヘッド102tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドであり、クリアインクを、ノズル列における各ノズルから吐出する。クリアインクとは、例えば、無色の透明色(T)であるクリア色のインクのことである。
【0044】
複数の紫外線光源104は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源104のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源104としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源104として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。
【0045】
平坦化ローラ106は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化する平坦化手段であり、例えば主走査動作時にインクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。この場合、硬化前のインクの一部を除去するとは、例えば、平坦化ローラ106の回転により硬化前のインクの一部をかき取ることである。
【0046】
以上のような構成のヘッド部12を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。
【0047】
尚、ヘッド部12の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部12は、着色用のインクジェットヘッドとして、インクジェットヘッド102y〜kに加え、各色の淡色、R(赤)G(緑)B(青)やオレンジ等の色用のインクジェットヘッド等を更に有してもよい。また、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
【0048】
また、図中に示すように、本例において、ヘッド部12は、インクジェットヘッド102s〜tの並びの一方側のみに平坦化ローラ106を有する。この場合、平坦化ローラ106は、例えば、インクジェットヘッド102s〜tよりも平坦化ローラ106が後方側になって移動する主走査動作時のみに、インクの層を平坦化する。また、より具体的に、本例において、主走査駆動部16は、ヘッド部12に、往復の主走査動作を行わせる。この場合、往復の主走査動作を行わせるとは、主走査方向における一方の向きにヘッド部12が移動する往路の主走査動作と、他方の向きへヘッド部12が移動する復路の主走査動作とをヘッド部12に行わせることである。また、この場合、平坦化ローラ106は、往路及び復路の一方の主走査動作時に、インクの層を平坦化する。また、この場合、平坦化ローラ106は、例えば、平坦化を行う主走査動作中に吐出されたインクの一部をかき取ることにより、層の平坦化を行う。また、この場合、積層されるインクの高さに応じて、一部の回の主走査動作時にのみインクの層を平坦化してもよい。
【0049】
続いて、本例において造形物50を造形する動作について、更に詳しく説明をする。
図1(c)は、本例において造形装置10が造形する造形物50の構成の一例をサポート層52と共に示す図である。
【0050】
上記においても説明をしたように、本例において、造形装置10は、造形の材料であるインクで形成されるインクの層60を複数層積層することにより、積層造形法で造形物50を造形する。また、この場合、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッド102s〜tを用いて、造形物50及びサポート層52の各領域に対応する部分を含む層60を形成する。
【0051】
尚、
図1(c)においては、図示の便宜上、造形物50及びサポート層52を構成する層60の層数を少なくして、造形物50及びサポート層52の構成を模式的に示している。実際の構成において、造形装置10は、例えば、厚さが100μm以下程度の薄い層60を多数重ねて造形物50及びサポート層52を形成する。この場合、層60の厚さとは、積層方向における厚さのことである。また、より具体的に、それぞれの層60の厚さは、例えば10〜100μm程度、好ましくは、20〜50μm程度である。
【0052】
また、この場合、層60とは、造形物50の断面を構成する部分であり、例えば、造形しようとする造形物50の断面形状を示すスライスデータに基づいて形成される。また、この場合、一つの層60は、一つのスライスデータに基づいて形成される。また、それぞれの層60は、互いに異なるスライスデータに基づいて形成される。
【0053】
また、層60の形成時には、主走査方向及び副走査方向と平行な面内(XY面内)に造形の解像度に応じて設定されるインクの吐出位置へヘッド部12における複数のインクジェットヘッド102s〜tからインクを吐出する。また、この場合、層60について、例えば、造形物50の断面における全ての吐出位置へ所定量のインクを吐出することで形成される部分と考えることもできる。全ての吐出位置へ所定量のインクを吐出するとは、例えば、設定された造形の解像度に対応する全ての点の位置へインクを吐出することである。また、この場合、必ずしも全ての吐出位置へインクを吐出しなくても、全ての吐出位置のうちの予め設定された割合の位置へインクを吐出した状態について、層60が形成された状態と考えてもよい。この場合、予め設定された割合とは、例えば、層60を形成する領域を埋めるだけの十分な量のインクを吐出できる割合のことである。
【0054】
また、本例において、造形装置10は、それぞれの層60を、マルチパス方式で形成する。この場合、マルチパス方式で層60を形成するとは、例えば、それぞれの層60について、複数回の主走査動作で形成することである。また、層60を複数回の主走査動作で形成するとは、例えば、一つの層60を形成する動作において、造形物50の被造形面の各位置に対し、複数回の主走査動作を行うことである。この場合、制御部30は、例えば、積層方向と直交する面内の各位置に対し、ヘッド部12に、複数回の主走査動作を行わせる。
【0055】
図2は、本例においてマルチパス方式でインクの層を形成する動作について説明をする図である。
図2(a)は、各回のパスに対応してインクジェットヘッド102に設定される領域の一例を示す図である。この場合、各回のパスに対応してインクジェットヘッド102に設定される領域とは、各回のパスでインクを吐出するノズルが並ぶ領域のことである。
【0056】
また、
図2(a)においては、パス数を4にした場合(4パスの場合)について、インクジェットヘッド102に設定されている複数の領域202a〜dを示している。複数の領域202a〜dのそれぞれは、1〜4回目のそれぞれのパスに対応する領域である。また、本例において、複数の領域202a〜dのそれぞれは、副走査方向における幅が等しい領域であり、同数のノズルをそれぞれ含む。
【0057】
ここで、
図2において、インクジェットヘッド102は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102s〜tを代表して示したインクジェットヘッドである。この場合、インクジェットヘッド102s〜tのそれぞれにおいては、図示したインクジェットヘッド102と同様に、複数の領域202a〜dが設定される。
【0058】
また、本例においては、図中に示すように、インクジェットヘッド102の領域202a〜dに合わせて、紫外線光源104にも、複数の領域204a〜dが設定される。この場合、紫外線光源104における複数の領域204a〜dのそれぞれは、インクジェットヘッド102における複数の領域202a〜dと副走査方向における位置が重なる領域である。また、各回の主走査動作において、紫外線光源104の複数の領域204a〜dのそれぞれは、インクジェットヘッド102の複数の領域202a〜dのそれぞれに含まれるノズルから吐出され、被造形面に着弾したインクに対し、紫外線を照射する。そのため、複数の領域204a〜dのそれぞれについては、紫外線光源104において各回のパスに対応して設定される領域と考えることができる。
【0059】
尚、
図1に関連して上記においても説明をしたように、本例において、ヘッド部12は、複数の紫外線光源104を有する。また、複数の紫外線光源104のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。そのため、本例において、主走査動作時に着弾したインクに対して複数の領域204a〜dのそれぞれから紫外線を照射するとは、主走査動作時の移動方向においてインクジェットヘッドよりも後方側になる紫外線光源104の各領域から紫外線を照射することである。
【0060】
また、図示した場合において、紫外線光源104の副走査方向における幅は、インクジェットヘッド102よりもわずかに大きくなっている。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッド102の端のノズルから吐出されたインクに対しても、より確実に紫外線を照射できる。また、この場合、図中に示すように、紫外線光源104は、領域204a〜dの外側に、インクジェットヘッド102の領域202a〜dと副走査方向における位置が重ならない領域を更に有する。
【0061】
図2(b)は、マルチパス方式で一つのインクの層を形成する動作を示す図であり、矢印402で示した領域に対して行う1〜4回目のパス(1〜4パス目)のそれぞれに対応する主走査動作時について、副走査方向におけるインクジェットヘッド102の位置の例を示す。この場合、矢印402で示した領域とは、例えば、矢印402で示す位置と副走査方向における位置が重なる領域のことである。また、図示及び説明の便宜上、
図2(b)では、一つのインクジェットヘッド102に着目して、マルチパス方式の動作の一例を示している。
【0062】
図中に示すようなマルチパス方式でインクの層を形成する場合、造形装置10における副走査駆動部18(
図1参照)は、例えば、副走査動作時の送り量をパス数に応じた幅に設定して、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。この場合、送り量について、パス数に応じた幅とは、例えば、インクジェットヘッド102のノズル列長をパス数で除した距離に等しい幅のことである。また、ノズル列長とは、例えば、副走査方向におけるノズル列の長さである。ノズル列長は、副走査方向における実質的なノズル列の長さであってよい。また、より具体的に、図示した場合において、送り量は、ノズル列長の1/4になっている。また、この場合、副走査駆動部18は、各回の主走査動作の合間に、パス幅分の送り量での副走査動作をヘッド部12に行わせる。また、これにより、造形中の造形物50の各位置と対向するインクジェットヘッド102における領域を順次変更する。
【0063】
また、上記においても説明をしたように、本例において、主走査駆動部16(
図1参照)は、ヘッド部12に、往復の主走査動作を行わせる。そして、平坦化ローラ106(
図1参照)は、往路及び復路の一方の主走査動作時に、インクの層を平坦化する。また、より具体的に、
図2(b)に図示した場合においては、1パス目及び3パス目が、往路の主走査動作になる。また、2パス目及び4パス目が、復路の主走査動作になる。そして、平坦化ローラ106は、復路の主走査動作時に、インクの層を平坦化する。
【0064】
但し、実際の造形の動作時において、平坦化ローラ106は、インクの層を構成するインクと接触した場合にのみ、インクの層を平坦化する。また、設計上、積層方向駆動部20(
図1参照)により行う積層方向への移動量については、例えば、それぞれのインクの層の形成時に行う最後のパスで吐出したインクのみが平坦化ローラ106と接触するように設定する。
【0065】
また、より具体的に、積層方向駆動部20は、例えば、一つのインクの層が形成される毎に、一つの層の厚さ分だけ、インクジェットヘッドと造形台14(
図1参照)との間の距離を大きくする。そのため、それぞれの層の形成時において、初期のパスで吐出したインクは、通常、平坦化ローラ106と接触しない。また、この場合、積層方向への移動量について、パス数分の主走査動作を行った時点では層の厚さが十分に厚くなり、インクと平坦化ローラ106とが接触するようにする。また、これにより、平坦化ローラ106は、それぞれの層を形成するために行う複数回のパス(主走査動作)のうちの少なくとも最後のパスにおいて、層を平坦化する。また、本例においては、一つのインクの層を形成する毎に行う積層方向への移動量について、設計上、最後のパスでのみインクが平坦化ローラ106と接触するように設定する。そのため、例えば図中に示した動作の場合、設計上、4パス目に吐出したインクのみが平坦化ローラ106と接触する。
【0066】
図2(c)は、インクの層を平坦化する様子を示す図であり、各回のパスで近接した位置に吐出されるインクのドット302の重なり方と、平坦化を行う高さ(平坦化ライン)の一例とを模式的に示す。この場合、平坦化ラインとは、例えば、平坦化ローラ106の下端の位置である。また、平坦化ローラ106の下端とは、例えば、平坦化ローラ106において最も造形台14に近い部分のことである。
【0067】
造形物の造形時において、インクジェットヘッドの各ノズルから吐出するインクの量が少ないと、積層に要する時間が増大することになる。また、その結果、造形物の造形速度が大きく低下することになる。そのため、造形物の造形時には、通常、1回の吐出でノズルから吐出するインクの量をある程度以上に大きくする。より具体的には、例えば、積層方向と直交する面内において着弾後に形成されるインクのドット302の直径(ドットゲイン)が造形の解像度に応じた間隔(ドットピッチ)よりも大きくなるように、1回の吐出でノズルから吐出するインクの量を設定することが考えられる。そして、この場合、ドットゲインが大きくなることで、他の回のパスで近接した位置に形成されるドット302との間で、重なり合いが生じることになる。そのため、この場合、各回のパスで形成されるインクのドットは、例えば、図中に示すように、順次重なるように形成される。
【0068】
また、この場合、平坦化ラインの設定は、例えば、形成しようとするインクの層の設計上の厚さに合わせて行うことになる。より具体的に、平坦化後のインクの層の厚さを所定の厚さdにしようとする場合、下の層の形成後、積層方向駆動部20により、インクジェットヘッドと造形台14との間の距離がdだけ大きくなるように、造形台14に対して相対的にヘッド部12を移動させる。また、これにより、ヘッド部12における平坦化ローラ106の下端が通過する高さについて、下の層から距離dだけ離れた位置に設定する。このように構成すれば、例えば図中に示すように、平坦化ラインを適切に設定できる。
【0069】
また、この場合、形成中のインクの層の高さは、各回のパスでインクを吐出する毎に、徐々に高くなる。そして、この場合、平坦化後のインクの層の厚さdについては、設計上、仮に平坦化を行わないとした場合に各回のパスで達するインクの高さを想定して、最後の直前のパスまでに達する想定高さよりも高く、かつ、最後のパスの完了後に達する想定高さよりも低くなるように設定する。このように構成すれば、例えば、設計上、最後のパスで吐出したインクのみを平坦化ローラ106と接触させることができる。そのため、このように構成すれば、少なくとも設計上、インクの層の平坦化を適切に行うことができる。
【0070】
しかし、実際の造形時において、それぞれのインクのドットの位置を局所的に見た場合、インクの層の各位置の高さは、必ずしも設計上の高さに一致しない。そのため、従来の方法で造形を行う場合、例えば最後の直前のパスまでを行った段階で、インクの層の一部において局所的に、インクの層の高さが平坦化ラインに達する場合もある。また、特に、高い解像度で造形を行う場合、高い密度でインクのドットを形成することになるため、このような高さのずれが生じやすくなると考えられる。
【0071】
図2(d)は、形成中のインクの層において高さのずれが生じた状態を示す図であり、平坦化を行う4パス目の主走査動作を行う前の3パス目までにいずれかの位置で設計上の高さとずれが生じた状態の一例を模式的に示す。また、より具体的に、図中に示した場合、3パス目が完了した時点で、インクの高さが平坦化ラインを超えている。
【0072】
ここで、マルチパス方式で造形を行う場合、通常、各回のパスで吐出されたインクのドットについて、主走査動作中に紫外線を照射して、硬化させる。そのため、このような高さのずれが生じた場合、平坦化を行う最後のパスにおいて、硬化済みのインクのドットと平坦化ローラ106との意図しない接触が生じることになる。より具体的に、
図2(d)に示した状態の場合、平坦化を行う4パス目において、3パス目に形成した硬化済みのインクのドット302と平坦化ローラ106との接触が生じることになる。
【0073】
そして、このような接触が生じると、インクの層の平坦化を適切に行えなくなる場合がある。より具体的には、例えば硬化済みのインクが削れ、余分な削りカス等が発生する場合がある。この場合、カス等が造形中の造形物に付着して、造形の精度が低下すること等が考えられる。また、カス等が粉塵となり、造形の環境を悪化させるおそれもある。また、接触により平坦化ローラ106が振動し、平坦化の動作に影響が生じること等も考えられる。そして、これらの結果、高い精度で適切に平坦化を行うことが困難になる場合がある。
【0074】
これに対し、本例においては、各回のパスにおいて照射する紫外線の光量の設定を調整することにより、このような問題の発生を抑えている。そこで、以下、本例における各回のパスでの紫外線の照射の仕方について、説明をする。
【0075】
従来の構成のマルチパス方式で造形を行う場合、通常、各回のパスで照射する紫外線の光量については、全てのパスで同じに設定する。これに対し、本例においては、上記のように、各回のパスで照射する紫外線の光量の調整を行う。また、より具体的に、この場合、一部のパスで照射する紫外線の光量を、他の回のパスで照射する紫外線の光量と異ならせる。
【0076】
尚、この場合、光量とは、例えば、積層方向と直交する面内における単位面積の領域に照射される紫外線の積算光量のことである。また、主走査動作時に照射される紫外線の積算光量は、例えば、紫外線の照射強度や、主走査動作時の紫外線光源104の移動速度等に応じて決まる。そして、主走査動作時の紫外線光源104の移動速度は、通常、予め設定された一定の速度である。そのため、各回のパスにおいて照射する紫外線の光量は、紫外線の照射強度に応じて変化することになる。
【0077】
図3は、各回のパスにおいて照射する紫外線の光量について説明をする図である。
図3(a)は、本例において各回のパスで照射する紫外線の光量の設定の一例を示す。図中に示すように、本例においては、紫外線光源104において各回のパスに対応して設定される複数の領域204a〜dの照射強度を変化させることにより、各回のパスで照射する紫外線の光量の調整を行う。
【0078】
また、より具体的に、本例においては、少なくとも、最後のパスに対応する領域204dから照射する紫外線の強度を強くして、最後から2番目のパスに対応する領域204cから照射する紫外線の強度を弱くする。この場合、領域204dから照射する強い強度の紫外線は、例えば、紫外線光源104において通常の設定で照射する強度の紫外線である。また、紫外線光源104において通常の設定で照射する強度とは、例えば、予め設定された標準の強度のことである。また、領域204cから照射する弱い強度の紫外線は、例えば、領域204dから照射する紫外線よりも弱い強度の紫外線である。また、この場合、紫外線光源104における他の領域204a及び領域204bから照射する紫外線の強度については、例えば、領域204dと同様に、標準の強い強度に設定する。
【0079】
このように構成すれば、例えば、一つのインクの層を形成するために行う複数のパスのうち、最後のパスでの紫外線の照射強度を通常の強い強度にした上で、その直前である最後から2番目のパスでの紫外線強度を弱い強度に設定することができる。また、これにより、例えば、最後のパスで照射する紫外線の光量と比べ、最後から2番目のパスで照射する紫外線の光量を少なくできる。
【0080】
また、この場合、最後から2番目のパスで照射する紫外線の光量については、その回のパスで吐出したインクの状態が、平坦化ローラ106(
図1参照)と接触した場合に形状が変化する状態になる光量に設定することが好ましい。平坦化ローラ106と接触した場合に形状が変化する状態とは、例えば、接触により変形が可能な状態のことである。また、変形が可能な程度にインクを硬化させるとは、例えば、平坦化ローラ106でのかき取りが可能な程度の流動性を有する仮硬化(半硬化)の状態にまでインクを硬化させることである。また、この状態は、例えば、粘度が高い液体の状態である。
【0081】
このように構成した場合、例えば、4パス目に平坦化を行うタイミングにおいて、3パス目に吐出したインクについて、完全に硬化していない状態を維持することができる。そのため、4パス目の実行時において、その回のパスで吐出した未硬化のインク以外に、3パス目で吐出したインクについても、平坦化ローラ106でのかき取りが可能な状態になっている。
【0082】
そして、この場合、例えば
図2(d)に関連して上記において説明をしたようなインクの高さのずれが発生し、3パス目が完了した時点でいずれかの位置でインクの高さが平坦化ラインを超えた場合にも、完全に硬化したインクと平坦化ローラ106とが接触することはない。また、3パス目で吐出したインクが仮に平坦化ローラ106と接触したとしても、4パス目に吐出したインクと同時に平坦化ローラ106でかき取ることが可能である。そのため、このように構成すれば、例えば、硬化済みのインクと平坦化ローラ106との接触により削りカスが発生することや、接触により平坦化ローラ106が振動し、平坦化の動作に影響が生じること等を適切に防ぐことができる。
【0083】
また、この場合、3パス目に吐出したインクについて、平坦化ローラ106と接触した場合に変形が可能な程度に硬化させることで、4パス目に平坦化ローラ106で平坦化を行うまでの時間の経過により、インクのドットゲインを大きくし、その分だけインクの高さを低くすること等も考えられる。また、この場合、例えば、既に高くなっている位置に着弾したインクの少なくとも一部がより低い位置へ移動することで、4パス目に平坦化を行うまでの間に、インクの高さが着弾直後よりも低くなること等も考えられる。そして、これらの場合、3パス目でインクを吐出した直後においてインクの高さが高い場合にも、平坦化を行う時点において、3パス目に吐出したインクと平坦化ローラ106とを接触し難くできる。
【0084】
以上のように、本例によれば、例えば、平坦化を行う前のパスで吐出したインクの高さが高くなることで生じる問題の発生を適切に抑えることができる。また、これにより、平坦化ローラ106による平坦化をより高い精度で適切に行い、造形物をより高い精度でより適切に造形できる。
【0085】
ここで、上記のように、本例においては、一つのインクの層を形成するために行う4回のパスのうち、3回目のパスで照射する紫外線の光量を他の回のパスよりも少なくしている。そして、このような特徴について、より一般化して考えた場合、各回のパスで照射する紫外線の光量の比較について、紫外線の単位面積光量を比較することで考えることもできる。この場合、単位面積光量とは、例えば、造形の材料となる紫外線硬化型インクが吐出される領域に対して一回の主走査動作で単位面積あたりに紫外線光源104から照射する紫外線の積算光量のことである。また、本例のように、インクジェットヘッドの並びに対して主走査方向の両側に紫外線光源104を配設する場合、紫外線の積算光量は、各回の主走査動作で、インクジェットヘッドの移動方向においてインクジェットヘッドの並びよりも後ろ側にある紫外線光源104から照射する紫外線の積算光量である。
【0086】
また、このようにして単位面積光量を考えた場合、本例の特徴について、例えば、積層方向と直交する面内の各位置に対して行う複数回の主走査動作のうち、一部の回の主走査動作における単位面積光量を、他の回の主走査動作における単位面積光量よりも少なくする構成と考えることもできる。この場合、例えば、一部の回の主走査動作において、紫外線の照射量を少なくすることで、紫外線硬化型インクを完全には硬化させないことが考えられる。また、この場合、主走査動作における単位面積光量を少なくするとは、例えば、その回の主走査動作で各位置へ照射する紫外線を他の回よりも弱くすることである。また、主走査動作における単位面積光量を少なくするとは、例えば、その回の主走査動作では各位置へ紫外線を照射しないことであってもよい。
【0087】
また、この場合、マルチパス方式で一つのインクの層を形成するために行う複数回のパスのうち、一部の回のパスにおける単位面積光量を、他の回のパスにおける単位面積光量よりも少なくすることが考えられる。この場合、平坦化ローラ106は、例えば、それぞれの層を形成するために行う複数回のパスのうちの少なくとも最後のパスにおいて、層の平坦化を行う。
【0088】
また、この場合、少なくとも一部の層の形成時において、
図3(a)を用いて上記においても説明をしたように、それぞれの層を形成するために行う複数回のパスのうちの少なくとも最後から2番目のパスにおける単位面積光量について、最後のパスにおける単位面積光量よりも少なくすることが考えられる。この場合、例えば、少なくとも最後のパスにおける単位面積光量については、インクの層を十分に硬化できるように、十分に多くすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、平坦化後の層をより確実に硬化させることができる。また、この場合、最後から2番目のパスにおいては、上記においても説明をしたように、平坦化ローラ106と接触した場合に変形が可能な程度にインクを硬化させることが考えられる。このように構成すれば、例えば、上記においても説明をしたように、硬化済みのインクが削られてカス等が発生すること等を適切に防ぐことができる。
【0089】
また、紫外線の照射の仕方の変形例においては、最後から2番目以外のパスで単位面積光量を少なくすることも考えられる。この場合、例えば、一部の回のパスにおいてインクを完全には硬化させないことにより、その回のパスで形成するインクのドットについて、ドットゲインを大きくし、その分だけインクの高さを低くすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、積層方向における高さが局所的に高くなる部分の発生を適切に防ぐことができる。
【0090】
また、この場合、例えば、平坦化を行うパス以外のいずれかの一部のパスにおいて、インクを完全には硬化させないことで、着弾後にもある程度移動可能な流動性を残した状態にすること等も考えられる。このように構成した場合、例えば、局所的に高くなっている位置に着弾したインクは、重力によってより低い位置へ移動しやすくなると考えられる。また、その結果、局所的に高い位置に更に重なるインクの量を減らすことができる。そのため、この場合も、例えば、設計上の高さを超えて局所的に高くなる領域を発生し難くできる。また、これにより、例えば、硬化済みのインクと平坦化ローラ106との間での接触を適切に防ぐことができる。
【0091】
また、この場合、それぞれの層を形成するために行う複数回のパスのうち、最初のパスにおいて、最後のパスよりも単位面積光量を少なくすることが考えられる。この場合、最初のパスとは、一つの層を形成する動作における最初のパスのことである。また、一つの層を形成する動作における最初のパスとは、一つ下の層の形成時に平坦化を行うパスの直後のパスである。また、最後のパスとは、その層を形成する動作における最後のパスである。また、この場合、最後のパスは、その層の形成時に平坦化を行うパスである。
【0092】
図3(b)は、紫外線の照射の仕方の変形例を示す図であり、少なくとも一部のインクの層の形成時において最初のパスでの単位面積光量を少なくする場合について、各回のパスで照射する紫外線の光量の設定の一例を示す。図中に示すように、この場合、例えば、紫外線光源104において各回のパスに対応する領域204a〜dのうち、最初のパス(1パス目)に対応する領域204aから照射する紫外線の強度を弱くする。また、これにより、例えば、最初のパスで照射する紫外線の単位面積光量を少なくする。
【0093】
この場合、領域204aから照射する紫外線の強度を弱くするとは、例えば、領域204aから照射する紫外線の強度について、少なくとも領域204dから照射する紫外線の強度よりも弱くすることである。また、この場合、例えば、領域204aからの紫外線の照射を行わず、オフ(OFF)の状態にすることで、最初のパスで照射する紫外線の単位面積光量を少なくしてもよい。また、図中に示すように、この場合、例えば、他の領域204b〜dからは強い強度の紫外線を照射する。
【0094】
図3(c)は、1パス目の単位面積光量を少なくした場合に各回のパスで形成されるインクのドット302の様子の一例を模式的に示す。この場合、1パス目で照射する紫外線を弱くすることにより、一パス目で形成するインクのドット302は、例えば強い紫外線を照射する場合と比べ、ぬれた状態のグロス状になり、より広がった状態になると考えられる。そして、この場合、ドット302がより広がることで、ドット302の高さは、より低くなる。また、その結果、2パス目以降で形成するインクのドット302の高さについても、下にある1パス目のドット302が低くなった分だけ、低くなる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクの層において局所的に高くなる領域の発生を適切に抑えることができる。
【0095】
また、より具体的に、この場合、例えば平坦化を行う直前のパスである3パス目に形成するドット302の高さについても、全てのパスで強い紫外線を照射する場合と比べて低くなる。そのため、このように構成すれば、例えば、平坦化を行う直前のパスで形成したインクのドット302の高さが平坦化ラインを超えることを適切に防ぐことができる。また、これにより、硬化済みのインクと平坦化ローラ106とが接触すること等を適切に防ぐことができる。
【0096】
また、この場合、それぞれの層の形成時に行う1パス目は、下の層の平坦化を行った直後に行うパスである。そのため、1パス目では、平坦な領域上にインクを着弾させることになる。そして、このような平坦な領域上にインクのドットを形成する場合、インクのドットをより適切に広げることが可能になる。そのため、1パス目で照射する紫外線を弱くした場合、例えば他の回のパスで紫外線を弱くする場合と比べ、インクのドット302をより適切に広げ、インクの高さをより適切に低くすることができる。
【0097】
ここで、紫外線を弱くすることでインクのドット302の高さを低くする点に着目した場合、必ずしも最初のパスに限らず、他の回のパスで紫外線を弱くしてもよい。また、この場合、平坦化ローラ106で平坦化を行うパス以外のパスの中から、単位面積光量を少なくするパスを選ぶことが好ましい。また、この場合、上記においても説明をしたように、単位面積光量を少なくするパスにおいては、紫外線の単位面積光量を0にしてもよい。
【0098】
また、平坦化を行う前のパスで形成するインクの高さのずれをより生じ難くするという観点のみで考えた場合、例えば、より多くのパスで紫外線を弱くすればよいようにも思われる。しかし、照射する紫外線を弱くするパスの数を多くし過ぎると、例えばインクの層の全体や造形物の全体として、インクの硬化が不十分になるおそれもある。そのため、照射する紫外線を弱くするパスの割合は、多くし過ぎないことが好ましい。より具体的には、例えば、それぞれの層を形成するために行う複数回のパスのうち、1回のパスのみにすることが好ましい。すなわち、この場合、例えば、少なくとも一部の層の形成時において、それぞれの層を形成するために行う複数回のパスのうちの1回のパスのみにおける単位面積光量を、他の複数回のパスにおける単位面積光量よりも少なくすることが好ましい。また、この場合、他の複数回のパスについては、例えば、単位面積光量を同じにすることが好ましい。
【0099】
尚、他の複数回のパスについて、単位面積光量を同じにするとは、例えば、紫外線光源104の動作の精度等に応じて、実質的に単位面積光量を同じにすることである。また、この場合、他の複数回のパスでの単位面積光量について、標準の強い紫外線を照射した場合の単位面積光量に設定することが好ましい。このように構成すれば、例えば、層の全体や形物の全体としてインクの硬化が不十分になることを適切に防ぐことができる。
【0100】
また、上記においても説明をしたように、単位面積光量を少なくするパスにおいては、紫外線の単位面積光量を0にしてもよい。この場合、副走査方向において紫外線光源104の位置とインクジェットヘッド102の位置とをずらし、インクジェットヘッド102の一部の領域と主走査方向において隣接する位置を避けて紫外線光源104を配設することも考えられる。
【0101】
図3(d)は、副走査方向において紫外線光源104の位置とインクジェットヘッド102の位置とをずらす場合のヘッド部12の構成について説明をする図であり、1パス目には紫外線を照射せずに紫外線の単位面積光量を0にする場合について、ヘッド部12の構成の一例を示す。この場合、例えば、インクジェットヘッド102における1パス目に対応する領域202aと副走査方向において重なる位置を避けるように紫外線光源104を配設することが考えられる。
【0102】
また、より具体的に、図示した構成において、紫外線光源104は、インクジェットヘッド102の領域202aと副走査方向において重なる領域を有していない。また、紫外線光源104には、インクジェットヘッド102における2〜4パス目に対応する領域202b〜dと副走査方向において重なる位置に複数の領域204b〜dが設定され、その外側に領域204eが更に設定されている。この場合、各回の主走査動作において、複数の領域204b〜dのそれぞれは、インクジェットヘッド102における複数の領域20ba〜dのそれぞれに含まれるノズルから吐出され、被造形面に着弾したインクに対し、紫外線を照射する。また、領域204eは、4パス目の後に更に仕上げの紫外線照射を行うための領域であり、造形物の被造形面において4パス目までの主走査動作が完了した部分に対し、次の回の主走査動作において、更に紫外線を照射する。
【0103】
このように構成した場合、例えば、1パス目での単位面積光量を0にすることで、インクの層において局所的に高くなる領域の発生を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、硬化済みのインクと平坦化ローラ106とが接触すること等を適切に防ぐことができる。また、この場合、紫外線光源104の領域204eからの紫外線の照射を行うことにより、インクの層をより確実に硬化させることもできる。
【0104】
続いて、本例における特徴に関する補足説明や、更なる変形例について、説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、紫外線光源104としては、UVLEDを好適に用いることができる。また、この場合、紫外線光源104における複数の領域204a〜dのそれぞれに少なくとも一つ以上のUVLEDを配設することが好ましい。このように構成すれば、例えば、各領域のUVLEDへ供給する電力を調整することにより、領域204a〜dのそれぞれから照射される紫外線の強度を適切に調整できる。また、この場合、UVLEDを用いることにより、例えば、紫外線の強度をより容易かつ適切に調整できる。
【0105】
また、上記においては、マルチパス方式の動作について、
図2等を用いて、主に、インクジェットヘッドのノズル列長をパス数で除した距離を副走査動作での送り量に設定する場合について、説明をした。しかし、マルチパス方式の動作については、上記において説明をした以外の動作を用いてもよい。より具体的には、例えば、パス数分の主走査動作を行う間の副走査動作における送り量を小さなピッチに設定する方式である小ピッチマルチパス方式の動作を用いること等も考えられる。
【0106】
図4は、小ピッチマルチパス方式の動作の一例を示す図であり、パス数を4(4パス)にした場合の動作の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、
図4において、
図1〜3と同じ符号を付した構成は、
図1〜3における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0107】
図4(a)は、小ピッチマルチパス方式の各回のパスにおけるインクジェットヘッド102の位置について説明をする図であり、4パスでの小ピッチマルチパス方式の動作を行う場合について、各回のパスでの一つのインクジェットヘッド102の副走査方向における位置の一例を示す。4パスでの小ピッチマルチパス方式の動作を行う場合、図中に示すように、一つのインクの層の形成時において、各位置に対してパス数分である4回の主走査動作(パス)を行う。また、この場合、矢印402で示すように、インクジェットヘッド102の全体に対応する領域に対して同時に、1〜4パス目の主走査動作を行う。また、1〜4パス目の各回の主走査動作の合間において、小さなピッチの送り量での副走査動作を行う。
【0108】
この場合、小さなピッチとは、例えば、インクジェットヘッド102のノズル列長をパス数で除した距離よりも小さな距離である。また、より具体的に、この小さなピッチについては、例えば、インクジェットヘッドのノズル列におけるノズル間隔(ノズルピッチ)の数倍程度以下(例えば、ノズル間隔の10倍以下)にすること等が考えられる。また、この小さなピッチは、例えば、ノズル間隔未満の距離(例えば、ノズル間隔の1/2)であってもよい。また、この小さなピッチについて、ノズルピッチの整数倍(例えば、ノズルピッチの1〜10倍)と、ノズル間隔未満の距離(例えば、ノズル間隔の1/2)とを足した距離に設定すること等も考えられる。
【0109】
また、小ピッチマルチパス方式において、パス数分の主走査動作を行った後には、必要に応じて、より大きな送り量での副走査動作を行う。より具体的には、例えば、造形しようとする造形物の副走査方向における幅がインクジェットヘッドのノズル列長よりも大きい場合に、このような大きな送り量での副走査動作を行うことが考えられる。
【0110】
また、大きな送り量での副走査動作では、例えば、直前にパス数分の主走査動作を行った位置から副走査方向におけるインクジェットヘッド102の位置をノズル列長分だけずらすように、送り量を設定する。この場合、例えば、直前に行ったパス数分の主走査動作における1パス目以降に行った副走査動作での送り量の合計がノズル列長と等しくなるように、大きな送り量を設定することが考えられる。直前に行ったパス数分の主走査動作における1パス目とは、前回の大きな送り量での副走査動作の直後に行った主走査動作のことである。また、大きな送り量の設定については、例えば、造形物に対する副走査方向における相対位置について、前回の1パス目におけるインクジェットヘッドの位置と、次に行う1パス目におけるインクジェットヘッドの位置との差がノズル列長と等しくなるように設定すると考えることもできる。以上のように構成した場合も、例えば、マルチパス方式での造形を適切に行うことができる。
【0111】
図4(b)は、小ピッチマルチパス方式で造形を行う場合の紫外線の照射の仕方について説明をする図であり、ヘッド部12の構成の一例を簡略化して示す。小ピッチマルチパス方式で造形物の造形を行う場合も、ヘッド部12としては、
図1〜3を用いて説明をした場合と同じ構成のヘッド部12を用いることができる。より具体的に、この場合も、
図1(b)等を用いて説明をした場合と同様に、ヘッド部12は、複数の紫外線光源104を有する。また、複数の紫外線光源104のそれぞれは、間にインクジェットヘッド102の並びを挟むように、ヘッド部12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。また、ヘッド部12は、インクジェットヘッド102の並びの一方側において、インクジェットヘッド102と紫外線光源104との間に、平坦化ローラ106を有する。
【0112】
そして、この場合、紫外線光源104の全体から照射する紫外線の強さが、各回のパスで照射する紫外線の強さになる。すなわち、この場合、各回のパスで照射する紫外線の単位面積光量については、インクジェットヘッドのノズル列の領域毎に設定するのではなく、ノズル列の全体に対して共通に設定する。このように構成すれば、例えば、小ピッチマルチパス方式を用いる場合において、各回のパスで照射する紫外線の単位面積光量を適切に設定できる。
【0113】
また、この場合も、紫外線光源104の全体から照射する紫外線の強さをパス毎に設定することにより、一部の回のパスについて、単位面積光量を少なく設定できる。より具体的には、例えば、
図1〜3を用いて説明をした場合と同様に、3パス目の単位面積光量を少なくすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、硬化済みの紫外線硬化型インクが削られてカス等が発生すること等を適切に防ぐことができる。また、3パス目に限らず、1〜3回目のうちのいずれかのパスでの単位面積光量を少なくすることにより、インクの層において局所的に高くなる領域の発生を適切に抑えること等もできる。そのため、小ピッチマルチパス方式を用いる場合においても、一部の回のパスで単位面積光量を少なくすることにより、造形物をより高い精度でより適切に造形できる。
【0114】
ここで、上記において説明をした各構成においては、各回のパスでの紫外線の照射の仕方を制御することで、一つの層を形成するための最後のパスで平坦化を行うタイミングにおいて、それ以前のパスで吐出したインクの硬化状態を制御している。また、これにより、例えば、硬化済みのインクと平坦化ローラ106との接触により生じる問題の発生を抑えている。
【0115】
これに対し、このような特徴について、より一般化して考えた場合、例えば、造形物の各位置に対して行う複数回の主走査動作のうち、一部の回の主走査動作におけるインクのドットの形成の仕方について、他の回の主走査動作におけるドットの形成の仕方と異ならせる構成と考えることもできる。この場合、例えば、一部の回の主走査動作でドットの形成の仕方を異ならせることで、特定の同じ状態のドットが過度に重なって形成されることを防ぐことができるといえる。そのため、このように構成すれば、例えば、同じ条件での主走査動作を行うのみでは生じる問題の発生を適切に抑えることができる。また、これにより、造形物をより高い精度でより適切に造形できる。
【0116】
また、この場合、各回のパスでの紫外線の照射の仕方を制御する方法以外に、例えば、一部の回の主走査動作において、一回の主走査動作で単位面積あたりに吐出するインクの量を他の回の主走査動作よりも少なくすること等が考えられる。このように構成した場合、例えば、一部の回の主走査動作において、他の回の主走査動作時よりも低い密度でインクのドットを形成することで、より安定した状態でインクのドットを形成できる。そのため、このように構成すれば、例えば、一部の回の主走査動作において、インクの層の状態を適切に整えることができる。また、これにより、特定の同じ状態のドットが過度に重なって形成されることを適切に防ぐことができる。
【0117】
また、ドットの形成の仕方と異ならせる方法については、一部の回の主走査動作において、形成するインクのドットの直径(ドットサイズ)を他の回の主走査動作と異ならせること等も考えられる。この場合、例えば、1回の吐出の動作でノズルから吐出するインクの容量(吐出ボリューム)を異ならせることが考えられる。また、被造形面に着弾してから紫外線を照射するまでの時間(ディレイ時間)を変化させることにより、ドットの直径を異ならせること等も考えられる。
【0118】
また、ドットの形成の仕方と異ならせる方法として、個々のドット自体の特徴ではなく、ドットの並び方の特徴を異ならせること等も考えられる。この場合、例えば、一部の回の主走査動作において、形成するドットの密度を他の回の主走査動作と異ならせる。また、より具体的に、この場合、一部の回の主走査動作において、その回の主走査動作で形成されるドットの間隔を他の回の主走査動作と異ならせること等が考えられる。
【0119】
また、各回のパスでの紫外線の照射の仕方を制御する方法についても、上記において説明をした方法に限らず、様々な方法を用いることが考えられる。この場合、例えば、一部の回の主走査動作において、紫外線の照射時間を他の回の主走査動作と異ならせる。また、より具体的に、この場合、例えば、主走査方向へ並ぶ複数列の光源を用いて、点灯させる列数を変化させることで、紫外線の照射時間を調整することが考えられる。また、例えば、主走査動作時の移動速度(スキャンスピード)を変化させることで、紫外線の照射時間を調整すること等も考えられる。
【0120】
また、UVLED等の光源に対して供給する電力(例えば、入力電流)を変化させることで、各回のパスでの紫外線の照射の仕方を制御すること等も考えられる。また、紫外線の照射距離を変化させることで、各回のパスでの紫外線の照射の仕方を制御すること等も考えられる。この場合、例えば、積層方向において紫外線の光源を上下させる機構を用いて、被造形面と光源との間の間隔を変化させること等が考えられる。