特許第6800742号(P6800742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800742マスターバッチの製造方法およびタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800742
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】マスターバッチの製造方法およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20201207BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20201207BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20201207BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20201207BHJP
   B29D 30/00 20060101ALI20201207BHJP
   B60C 1/00 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   C08J3/22CEQ
   C08J3/20 C
   C08K3/04
   C08L21/00
   B29D30/00
   !B60C1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-252617(P2016-252617)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-104557(P2018-104557A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 亮人
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−54870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/22
B29D 30/00
C08J 3/20
C08K 3/04
C08L 21/00
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体にカーボンブラックを添加し、撹拌機で撹拌し、カーボンブラックスラリーを得る工程と、
前記カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとを混合し、凝固処理前ゴムラテックスを得る工程と、
前記凝固処理前ゴムラテックスを凝固する工程とを含み、
前記カーボンブラックスラリーを得る工程では、撹拌開始から撹拌終了までの分散処理時間が、粒径減少緩和時間vの5倍以上40倍以下であり、
vは、撹拌開始からの経過時間t(分)を横軸に、前記カーボンブラックの粒径f(μm)を縦軸にとった平面に測定値をプロットし、式Iでフィッティングすることによって求められ、前記カーボンブラックの粒径fが、90体積%粒径(μm)であり、前記測定値が、2分毎に測定された値で構成され、
前記式Iは、
【数1】
であり、
前記式Iにおいて、Aは定数であり、Aは定数であり、
前記撹拌機は、ローターとステーターとを備え、前記ローターは、回転軸とブレードとを備え、前記ステーターには無数の開口部が設けられており、前記ブレードと前記ステーターとの間のクリアランスは0.1mm〜0.3mmであり、
前記カーボンブラックスラリーを得る工程における攪拌では、前記ローターが、1000rpm〜10000rpmで回転する、
マスターバッチの製造方法。
【請求項2】
前記液体に添加される前記カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量が130cm/100g以上である、請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマスターバッチの製造方法を含む、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスターバッチの製造方法およびタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエットマスターバッチは、たとえば、水などの液体にカーボンブラックを添加し撹拌することによってカーボンブラックスラリーを作製し、カーボンブラックスラリーと天然ゴムラテックスとを混合し、凝固させ、凝固物を脱水し、乾燥させながら可塑化させるという手順で製造される。
【0003】
このような手順で製造されたウエットマスターバッチは、ドライマスターバッチと比べて、加硫ゴムの低発熱性に優れる。ドライマスターバッチとは、ゴムにカーボンブラックを乾式で練り込んだものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−44889号公報
【特許文献1】特開2015−54870号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、液体にカーボンブラックを添加し、撹拌し、カーボンブラックスラリーを得る工程と、カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとを混合し、凝固処理前ゴムラテックスを得る工程と、凝固処理前ゴムラテックスを凝固する工程とを含み、カーボンブラックスラリーを得る工程では、撹拌開始から撹拌終了までの分散処理時間が、粒径減少緩和時間vの5倍以上40倍以下である。vは、撹拌開始からの経過時間t(分)を横軸に、カーボンブラックの粒径f(μm)を縦軸にとった平面に測定値をプロットし、式Iでフィッティングすることによって求められる。
式Iは、
【数1】
であり、式Iにおいて、Aは定数であり、Aは定数である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態1における粒径減少緩和時間の算出方法を説明するための図である。
図2】実施形態1で使用する撹拌機におけるローター・ステーター構造の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、加硫ゴムの低発熱性・耐摩耗性に優れたマスターバッチの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、液体にカーボンブラックを添加し、撹拌し、カーボンブラックスラリーを得る工程と、カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとを混合し、凝固処理前ゴムラテックスを得る工程と、凝固処理前ゴムラテックスを凝固する工程とを含み、カーボンブラックスラリーを得る工程では、撹拌開始から撹拌終了までの分散処理時間が、粒径減少緩和時間vの5倍以上40倍以下である。vは、撹拌開始からの経過時間t(分)を横軸に、カーボンブラックの粒径f(μm)を縦軸にとった平面に測定値をプロットし、式Iでフィッティングすることによって求められる。
式Iは、
【数2】
であり、式Iにおいて、Aは定数であり、Aは定数である。
【0009】
カーボンブラック添加後の液体の撹拌において、過度の撹拌は、カーボンブラック ストラクチャーを崩壊させ、分散性を悪化させ、低発熱性・耐摩耗性の改善効果を目減りさせる。
【0010】
本開示の方法は、分散処理時間がvの40倍以下であるため、カーボンブラックにおけるストラクチャーの崩壊をある程度にとどめ、分散性を確保し、低発熱性・耐摩耗性の改善効果の目減りを抑制できる。さらに、本開示の方法は、分散処理時間がvの5倍以上であるため、カーボンブラックの粒径を撹拌である程度小さくすることが可能であり、耐疲労性を確保することができる。
【0011】
液体に添加されるカーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は130cm/100g以上が好ましい。130cm/100g以上である場合、分散処理時間のvに対する比が5〜40であることの意義が大きい。
【0012】
本開示におけるマスターバッチの製造方法を、本開示におけるタイヤの製造方法は含む。
【0013】
実施形態1
ここからは、実施形態1で本開示を説明する。
【0014】
実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、液体にカーボンブラックを添加し、撹拌し、カーボンブラックスラリーを得る工程を含む。液体としては、たとえば水、ゴムラテックスなどを挙げることができる。なかでも、ゴムラテックスが好ましい。ゴムラテックスとカーボンブラックとを混合することによって、カーボンブラックの再凝集を防止できる。これは、カーボンブラックの表面の一部または全部に極薄いラテックス相が生成するからだと考えられる。カーボンブラックスラリーをつくる工程のゴムラテックスは、たとえば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスなどである。天然ゴムラテックス中の天然ゴムの数平均分子量は、たとえば200万以上である。合成ゴムラテックスは、たとえばスチレン−ブタジエンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスである。ゴムラテックスの固形分(ゴム)濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。固形分濃度の上限は、たとえば5質量%、好ましくは2質量%、さらに好ましくは1質量%である。液体に添加されるカーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、好ましくは130cm/100g以上、より好ましくは140cm/100g以上である。DBP吸収量の上限は、たとえば170cm/100gである。DBP吸収量は、JIS K 6217−4:2008に準じて測定される。
【0015】
カーボンブラックスラリーを得る工程では、撹拌開始から撹拌終了までの分散処理時間が、粒径減少緩和時間vの5倍以上40倍以下である。分散処理時間が短すぎると、カーボンブラック粒径が充分に小さくならず、加硫ゴムの耐疲労性が悪化する傾向がある。いっぽう、分散処理時間が長すぎると、カーボンブラックのストラクチャー崩壊で分散性が悪化し、低発熱性・耐摩耗性の改善効果が目減りする傾向がある。
【0016】
図1に示すように、vは、撹拌開始からの経過時間t(分)を横軸に、カーボンブラックの粒径f(μm)を縦軸にとった平面に測定値をプロットし、式Iでフィッティングすることによって求められる。式Iを次に示す。
【数3】
式Iにおいて、Aは定数であり、Aは定数である。fは、90体積%粒径であり、実施例に記載の方法で測定される。
【0017】
図2に示す撹拌機4で撹拌をおこなうことができる。撹拌機4は、ローター41とステーター42とを備える。ローター41は、回転軸411とブレード412とを備える。ステーター42には無数の開口部(図示せず)が設けられている。撹拌機4は、カーボンブラック添加後の液体をローター41の回転によって呼び込み、ローター41とステーター42との間のクリアランスを通過させる。さらに、撹拌機4は、クリアランス通過後の液体を、ローター41の回転によってステーター42に設けられた開口部に導き、通過させる。ブレード412とステーター42との間のクリアランスはたとえば0.1mm〜0.3mmである。ローター41は、たとえば1000rpm〜10000rpmで回転することができる。
【0018】
このようにして得られたカーボンブラックスラリーでは、カーボンブラックが水中に分散している。カーボンブラックスラリーにおけるカーボンブラックの量は、カーボンブラックスラリー100質量%において、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。カーボンブラックスラリーにおけるカーボンブラック量の上限は、好ましくは15質量%、より好ましくは10質量%である。
【0019】
カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとを混合し、凝固処理前ゴムラテックスを得る工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスは、たとえば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスなどである。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスの固形分濃度は、カーボンブラックスラリーをつくる工程におけるゴムラテックスの固形分濃度よりも高いことが好ましい。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスの固形分濃度は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。ゴムラテックスにおける固形分濃度の上限は、たとえば60質量%、好ましくは40質量%、さらに好ましくは30質量%である。カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとは、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機で混合できる。凝固処理前ゴムラテックスでは、ゴム粒子、カーボンブラックなどが水中に分散している。
【0020】
凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。凝固を起こすために、凝固処理前ゴムラテックスに凝固剤を添加できる。凝固剤は、たとえば酸である。酸としてギ酸、硫酸などを挙げることができる。凝固処理前ゴムラテックスを凝固することで得られた凝固物は、水を含む。
【0021】
凝固物を脱水し、乾燥させながら可塑化する工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。
【0022】
可塑化後の凝固物を必要に応じて成型し、マスターバッチを得る工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。
【0023】
マスターバッチは、ゴムを含む。ゴムは、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどである。マスターバッチにおける天然ゴムの量は、ゴム100質量%において、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0024】
マスターバッチは、カーボンブラックをさらに含む。カーボンブラックの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。カーボンブラックの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
【0025】
マスターバッチと、配合剤と、必要に応じてマスターバッチ由来のゴム以外のゴムとを混合機で乾式混合し、混合物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。配合剤は、たとえばステアリン酸、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤などである。老化防止剤として、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などを挙げることができる。マスターバッチ由来のゴム以外のゴムとして、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができる。混合機として密閉式混合機、オープンロールなどを挙げることができる。密閉式混合機としてバンバリーミキサー、ニーダーなどを挙げることができる。
【0026】
混合物に加硫系配合剤を添加し、加硫系配合剤を混合物に練り込み、ゴム組成物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。加硫系配合剤として硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などを挙げることができる。硫黄として粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを挙げることができる。加硫促進剤としてスルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などを挙げることができる。
【0027】
ゴム組成物はゴム成分を含む。ゴム成分として、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができる。天然ゴムの量は、ゴム成分100質量%において、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。天然ゴム量の上限は、たとえば100質量%である。
【0028】
ゴム組成物は、カーボンブラックをさらに含む。カーボンブラックの量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。カーボンブラックの量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
【0029】
ゴム組成物は、ステアリン酸、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤などをさらに含むことができる。硫黄の量は、ゴム成分100質量部に対して、硫黄分換算で好ましくは0.5質量部〜5質量部である。加硫促進剤の量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜5質量部である。
【0030】
ゴム組成物の用途は、トレッド、サイドウォール、チェーハー、ビードフィラーなどのタイヤ部材用途である。なかでも、トレッドが好ましい。
【0031】
ゴム組成物からなるタイヤ部材を備える生タイヤをつくる工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法は含む。生タイヤを加熱する工程を実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。実施形態1の方法で得られたタイヤは、空気入りタイヤであることができる。
【実施例】
【0032】
以下に、本開示の実施例を説明する。
【0033】
原料・薬品を次に示す。
天然ゴムラテックス(Dry Rubber Content=31.2% Mw=23.2万) Golden Hope社製
凝固剤 ギ酸(一級85%)ナカライテスク社製 (10%溶液を希釈し、pH1.2に調整し、使用した)
カーボンブラックA 「シースト3」(DBP吸収量101cm/100g)東海カーボン社製
カーボンブラックB 「シーストKH」(DBP吸収量119cm/100g)東海カーボン社製
カーボンブラックC 「N358」(DBP吸収量150cm/100g)
天然ゴム 「RSS#3」タイ製
亜鉛華 「1号亜鉛華」三井金属社製
ステアリン酸 「ルナックS−20」花王社製
ワックス 「OZOACE0355」日本精蝋社製
老化防止剤A 「ノクラック6C」大内新興化学工業社製
老化防止剤B 「RD」大内新興化学工業社製
硫黄 「粉末硫黄」鶴見化学工業社製
加硫促進剤 「ノクセラーNS−P」大内新興化学工業社製
【0034】
実施例1〜6と比較例2・3・5・6・8・9とにおけるマスターバッチの作製
Golden Hope社製の天然ゴムラテックスに25℃で水を加え、固形分(ゴム)濃度0.5質量%の希薄天然ゴムラテックスと、固形分(ゴム)濃度25質量%の天然ゴムラテックスとを得た。希薄天然ゴムラテックスにカーボンブラックを添加し、シルバーソン社製の攪拌機「フラッシュブレンド」を用いて、表1〜3に示す分散処理時間だけ3600rpmで撹拌し、カーボンブラックスラリーを得た。カーボンブラックスラリーを、固形分(ゴム)濃度25質量%の天然ゴムラテックスに表1〜3にしたがって加え、カワタ社製の混合器(スーパーミキサーSMV‐20)で撹拌し、凝固剤をpH4になるまで添加し、凝固物を得た。凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機(スエヒロEPM社製スクリュープレスV−02型)で160℃で脱水し、乾燥させながら可塑化し、マスターバッチを得た。
【0035】
比較例1・4・7におけるマスターバッチの作製
天然ゴムにカーボンブラックを表1〜3にしたがって添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、マスターバッチを得た。
【0036】
各例における未加硫ゴムの作製
硫黄と加硫促進剤とを除く配合剤を表1〜3にしたがってマスターバッチに添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、ゴム混合物を排出した。ゴム混合物と硫黄と加硫促進剤とをB型バンバリーミキサーで混練りし、未加硫ゴムを得た。
【0037】
粒径減少緩和時間の算出
撹拌開始から撹拌終了まで2分毎にカーボンブラックの粒径を測定し、測定値を、撹拌開始からの経過時間(分)を横軸に、カーボンブラックの90体積%粒径(μm)を縦軸にとった平面にプロットし、式Iでフィッティングし、粒径減少緩和時間を求めた。カーボンブラックの90体積%粒径は、吸光度を0.01〜0.1に設定し、「SALD2200」島津製作所製(CBの屈折率:2.0−0.10i)で測定した。
【0038】
損失正接tanδ
未加硫ゴムを150℃で30分間加硫し、加硫ゴムの発熱性を、JIS K−6394に準じてtanδで評価した。tanδは、UBM社製レオスペクトロメーターE4000使用し、50Hz、80℃、動的歪2%の試験で求めた。表1では、比較例1のtanδを100とした指数で、各例のtanδを表示した。表2では、比較例4のtanδを100とした指数で、各例のtanδを表示した。表3では、比較例7のtanδを100とした指数で、各例のtanδを表示した。指数が小さいほど発熱性が低く、良好である。
【0039】
耐摩耗性
未加硫ゴムを150℃で30分間加硫し、加硫ゴムの摩耗量を、岩本製作所製のランボーン摩耗試験機を用いてJIS K6264に準じて荷重3kg、スリップ率20%、温度23℃で測定した。表1では、比較例1の摩耗量を100とした指数で、各例の摩耗量を表示した。表2では、比較例4の摩耗量を100とした指数で、各例の摩耗量を表示した。表3では、比較例7の摩耗量を100とした指数で、各例の摩耗量を表示した。指数が小さいほど耐摩耗性に優れることを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
分散処理時間の粒径減少飽和時間に対する比を5〜40に収めることで、低発熱性・耐摩耗性の改善効果の目減りを抑え、これらの性能を確保することができた。たとえば、比0.6では、tanδの改善は10ポイントにとどまり、耐摩耗性の改善はなかった(比較例1・2参照)。比63では、tanδの改善は4ポイントにとどまり、耐摩耗性は1ポイント悪化した(比較例1・3参照)。いっぽう、比8では、tanδが15ポイント改善し、耐摩耗性が3ポイント改善した(比較例1・実施例1参照)。比38では、tanδが13ポイント改善し、耐摩耗性が4ポイント改善した(比較例1・実施例2参照)。
【0044】
ストラクチャーの発達度合が高いほど、これらの性能の目減りを抑えることができた。たとえば、カーボンブラックAでは、tanδが15ポイント改善し、耐摩耗性が3ポイント改善した(比較例1・実施例1参照)。これに対して、カーボンブラックBでは、tanδが17ポイント改善し、耐摩耗性が4ポイント改善した(比較例4・実施例3参照)。カーボンブラックCでは、tanδが18ポイント改善し、耐摩耗性が9ポイント改善した(比較例7・実施例5参照)。
【0045】
実施例7〜8と比較例11・12とにおけるマスターバッチの作製
水にカーボンブラックを添加し、シルバーソン社製の攪拌機「フラッシュブレンド」を用いて、表4に示す分散処理時間だけ3600rpmで撹拌し、カーボンブラックスラリーを得た。カーボンブラックスラリーを、固形分(ゴム)濃度25質量%の天然ゴムラテックスに表4にしたがって加え、カワタ社製の混合器(スーパーミキサーSMV‐20)で撹拌し、凝固剤をpH4になるまで添加し、凝固物を得た。凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機(スエヒロEPM社製スクリュープレスV−02型)で160℃で脱水し、乾燥させながら可塑化し、マスターバッチを得た。
【0046】
比較例10におけるマスターバッチの作製
天然ゴムにカーボンブラックを表4にしたがって添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、マスターバッチを得た。
【0047】
各例における未加硫ゴムの作製
硫黄と加硫促進剤とを除く配合剤を表4にしたがってマスターバッチに添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、ゴム混合物を排出した。ゴム混合物と硫黄と加硫促進剤とをB型バンバリーミキサーで混練りし、未加硫ゴムを得た。
【0048】
損失正接tanδ
比較例10のtanδを100とした指数で、各例のtanδを表示した。指数が小さいほど発熱性が低く、良好である。
【0049】
耐摩耗性
比較例10の摩耗量を100とした指数で、各例の摩耗量を表示した。指数が小さいほど耐摩耗性に優れることを示す。
【0050】
【表4】
図1
図2