【実施例】
【0010】
図1は、実施例に係る半田付け装置の断面図である。
図1に示すように、実施例に係る半田付け装置100は、複数本の半田片誘導管10と、半田片誘導管10を保持する第一保持部20とを有している。
【0011】
半田片誘導管10は、両端が開口しており、半田片供給口101から供給された糸半田片50を通過させる空間を有する筒状体である。第一保持部20は金属製の板状体であり、
図2Aに示すように、複数の孔部201を有している。半田片誘導管10は、それぞれ、半田付けする側の先端部102(以下、単に半田片誘導管10の先端部102という)側の部位が、第一保持部20の孔部201に挿入されて保持されている。半田片誘導管10は、その外周面が、第一保持部20の孔部201の内周面と接している。また、半田片誘導管10の先端部102は、第一保持部20の内側に配設されている。
図1に示す例では、半田片誘導管10の先端部102は、第一保持部20の下端面202と同一面上に配置されている。
【0012】
第一保持部20の両側面には、第一保持部20を加熱する加熱部40が設置されている。加熱部40は、通電によって発熱するヒータ41を備えている。
【0013】
半田片誘導管10は、半田片供給口101側の部位が、第二保持部30により保持されている。第二保持部30は、複数の孔部を有する樹脂製の板状体であり、この孔部に半田片誘導管10が挿入されている。
【0014】
第一保持部20及び加熱部40の上面には、これらの上面一帯を覆う面積を有する支持板81aが設置されており、支持板81aと略同面積の支持板81bが、第二保持部30の上面に設置されている。支持板81a、81b間には、その四隅に支柱82が設置されている。第二保持部30上には、支持板81bを介して、半田片誘導管10の半田片供給口101を固定するための固定部90が設置されている。なお、支持板81a、81b、固定部90には、それぞれ、第一保持部20、第二保持部30と同様の配列で孔部が形成されており、それぞれの孔部に半田片誘導管10が挿入されている。
【0015】
半田片誘導管10は、支持板81a、81b間において、第一保持部20により保持されている部位と、第二保持部30により保持されている部位との間の領域Pが、外部空間に露出している。
【0016】
半田付け装置100の下方には、配線基板60が配置される。配線基板60の各スルーホール内には、挿入型実装部品70のハウジング72に固定された端子71が挿入される。なお、各スルーホールには、内壁から基板表面にかけて、スルーホールランド(図示省略)が形成されている。配線基板60は、各スルーホール内に挿入された端子71の
図1の上側の突出部が、半田付け装置100の各半田片誘導管10内に入るように配置される。上記のように配置した配線基板60の表面には、第一保持部20の下端面202が当接される。
【0017】
半田片誘導管10としては、600℃程度の温度に耐える耐熱性を有し、かつ少なくともその内周面が、半田材料に対して濡れにくい性質を有する材料により形成されているものであればよい。半田片誘導管10は、単一の材料で形成されていてもよく、複数の材料の組み合わせにより形成されていてもよい。
【0018】
半田片誘導管10は、上記した耐熱性を有しかつ半田材料に対して濡れにくい性質を得る観点から、例えばガラス、セラミック等の無機材料や、アルミニウム、ステンレス、チタン等の非ぬれ性金属により形成することが望ましい。また、半田片誘導管10は、これらの材料の組み合わせにより形成することも可能である。例えばガラスは、耐熱性を有し、半田材料に対して濡れにくく、かつ低コストであるため、好適に用いることができる。
【0019】
第一保持部20は、600℃程度の温度に耐える耐熱性を有し、かつ少なくともその下端面が、半田材料に対して濡れにくい性質を有する金属材料により形成されているものであればよい。第一保持部20は、上記した耐熱性を有しかつ熱伝導性に優れた材料により形成されていることが望ましく、具体的には、アルミニウムやステンレスにより形成されていることが望ましい。
【0020】
第二保持部30は、100℃程度の温度に対する耐熱性を有する樹脂材料を用いることができる。第二保持部30としては、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を用いることが望ましい。
【0021】
次に、
図1に示す半田付け装置100を用いた半田付けの動作について説明する。まず、加熱部40のヒータ41に通電すると、ヒータ41の熱が第一保持部20に伝わり、第一保持部20が加熱される。
【0022】
上記したように、実施例に係る半田付け装置100は、半田片誘導管10の先端部102を第一保持部20から突出させず、第一保持部20内に配設されるようにしているため、配線基板60の表面には、金属製の板状体である第一保持部20の下端面202全体が当接される。これにより、第一保持部20に伝えられた熱は、半田片誘導管10に伝えられるとともに、配線基板60に伝えられる。
【0023】
次いで、半田片誘導管10の半田片供給口101から、フラックスを内包した糸半田片50を供給する。糸半田片50投入時には、不図示の気体流入手段により、不図示のガイド管を通じて、半田片誘導管10内にアシスト気体8を流入させることがよい。糸半田片50投入時にアシスト気体8を流入させることにより、半田材料や端子71の酸化を防止することができ、また、アシスト気体8が半田片誘導管10内を通過する際に、半田片誘導管10内部の空間を高温化し、配線基板60と端子71とを熱対流により加熱することができる。
【0024】
アシスト気体8としては、糸半田50や端子71の酸化防止の観点からは、不活性ガスである窒素やアルゴン等が適している。また、配線基板60及び端子71の加熱の観点からは、気体の種類は特に限定されず、例えば安価である空気が適している。
【0025】
半田片供給口101から投入された糸半田は、アシスト気体8とともに半田片誘導管101内を落下し、端子71上に到達した時点で、第一保持部20、半田片誘導管10及び配線基板60の熱により溶融する。溶融した半田により、端子71がスルーホール内に半田付けされる。
【0026】
糸半田50の投入時には、糸半田片誘導管101の外部空間に露出されている領域、即ち、第一保持部20により保持されている部位と第二保持部30により保持されている部位との間の領域Pの周辺に、外気を対流させて、半田片誘導管10の領域Pを冷却することが好ましい。
【0027】
例えば、支持板81a、81bの間の領域に向けて、冷却ファンにより冷却風を送風することにより、半田片誘導管10の領域Pの周辺に外気を対流させる。これにより、半田片誘導管10の領域Pが冷却されるため、糸半田50が端子71上に到達する前に溶融して、半田片誘導管10の内壁に付着する等の不具合を防止することができる。
【0028】
なお、
図1に示す例では、半田片誘導管10の領域Pを外部空間に露出させて、この領域Pの周辺に外気を対流させる形態を示したが、必ずしもこれに限定されない。例えば、半田片誘導管10の領域Pの周辺を筐体で囲み、筐体内に冷却風を供給するようにしてもよい。
【0029】
糸半田片50の直径及び長さは、半田付けに必要な半田量に応じて適宜定めればよい。例えば、端子71の外径が0.6mmである場合には、糸半田片50の直径を0.8mm、半田片誘導管10の内径を1.3mm、糸半田片50の長さを6mmに設定することで、半田片誘導管10内において、糸半田片50が端子71と隣接しながら起立する状態とすることができる。これにより、糸半田片50が速やかにかつ均等に加熱される。
【0030】
なお、第一保持部20における孔部201の配列は、挿入型実装部品70と接続された配線基板60の端子71の配列に応じて、適宜定めることができる。第一保持部20は、例えば、
図2Aに示すように、孔部201が縦方向、横方向共に一直線上に並んで配列された形態でもよいし、
図2Bに示すように、孔部201が千鳥状に配列された形態であってもよい。
【0031】
以上説明した実施例に係る半田付け装置100によれば、半田片誘導管10を複数備えているため、複数の端子71を、一度の作業により半田付けすることができる。従って、筒状の半田鏝を用いて一端子ずつ半田付けを行っていた従来の半田付け装置と比較して、半田付け作業に要する時間を短縮することができる。
【0032】
また、実施例に係る半田付け装置100によれば、半田片誘導管10の先端部102を、第一保持部20の外側に突出させず、第一保持部20の内側に配設しているため、半田付けを行う配線基板60の表面に、第一保持部20を当接させることができる。これにより、加熱部40の熱が、第一保持部20により配線基板60に伝えられるため、例えば筒状の半田鏝を用いる場合と比較して、配線基板60との接触面積を増大させることができる。従って、配線基板60の裏面まで熱が伝わり易くなる。このため、スルーホールランドに接続する内層や引出線の熱容量が大きい場合でも、半田材料が配線基板60の裏面に到達する前に固まる、所謂半田未濡れの発生を抑制することができる。
【0033】
また、実施例に係る半田付け装置100は、加熱部40により加熱される第一保持部20と、半田片誘導管10とを別部材としているため、第一保持部20、半田片誘導管10を、それぞれに適した材料を用いて形成することができる。即ち、第一保持部20により、加熱部40の熱を配線基板60に伝えることができるため、半田片誘導管10の材質に拠らずに、半田の未濡れを抑制することができる。例えば、第一保持部20を、熱伝導性の良好なアルミニウム等の金属材料により形成し、半田片誘導管10を、ガラス管により形成することで、半田の未濡れの発生を抑制し、かつ製造コストや、半田片誘導管10の交換に伴うコストが低減された半田付け装置100とすることができる。
【0034】
また、実施例に係る半田付け装置100によれば、加熱部40の熱が、第一保持部20を介して、各半田片誘導管10や配線基板60に伝えられるため、加熱部40から離れた位置に設置された半田片誘導管10や、加熱部40から離れた配線基板60の領域にも、加熱部40の熱が略均等に伝えられる。このため、複数の端子71を一度に半田付けする場合においても、半田の未濡れの発生を抑制することができる。
【0035】
また、
図1に示す半田付け装置100では、半田片誘導管10の先端部102が、第一保持部20の下端面202と同一面上に形成されているため、仮に配線基板60に凹凸があったり、半田付け時に配線基板60に反りが生じた場合においても、各スルーホールランドから隣接するスルーホールランドへの半田材料の漏れを抑制することができる。
【0036】
なお、
図3に示すように、半田片誘導管10の先端部102は、第一保持部20の下端面202よりも、半田片供給口101側の位置に配置されていてもよいが、少なくとも端子71上に落下する糸半田片50の上端よりも第一保持部20の下端面202側に配設されていることが好ましい。これにより、加熱された糸半田片50内のフラックスが、第一保持部20の孔部201の内周面に付着した場合でも、容易に清掃することができる。
【0037】
図4に、半田付け装置による加熱時における、配線基板の裏面側のランド温度の測定結果を示す。
図4では、筒状の半田鏝を備えた従来の半田付け装置を用いた場合と、
図1に示す半田付け装置100を用いた場合それぞれについての、ランド温度の測定結果を示す。なお、従来の半田付け装置は、具体的には、単体のセラミック製の筒状半田鏝を、その外周に設置したヒータにより加熱する構成のものを使用した。また、
図1に示す半田付け装置100は、第一保持部20としてアルミニウム製の板状体を用い、半田片誘導管10としてガラス管を用いたものを使用した。
【0038】
温度測定は、配線基板60の裏面のランドに熱電対を接触させて行った。
図5に、ランド温度の測定時における、配線基板の加熱温度(℃)、加熱時間(秒)及び基板オフセット量(mm)を示す。
【0039】
図4には、配線基板のランドに接続する内層や引出線の熱容量が大きい場合、小さい場合それぞれについての温度測定を行った結果を示す。
図4に示すように、従来の半田付け装置を用いた場合、熱容量が大きい配線基板では、熱容量が小さい配線基板と比較して、基板裏面のランド温度が約1/2以下程度であった。
【0040】
一方、
図1に示す半田付け装置100を用いた場合には、熱容量が大きい配線基板60の基板裏面のランドの温度は、熱容量が小さい配線基板60と略同程度の温度が得られた。
【0041】
次に、配線基板の裏面側のランドの半田未ぬれを抑制するために行う、アシスト加熱の要否を比較した。
図6に、比較検討結果を示す。
図6においても、
図4の検証と同様、従来の半田付け装置を用いた場合と
図1に示す半田付け装置100を用いた場合との比較検証を行った。
【0042】
図6では、
図4の検証で用いた配線基板のうち熱容量が大きい配線基板について、アシスト加熱を行った場合、アシスト加熱を行わなかった場合のそれぞれについて、半田付けを行ったときの半田未ぬれの発生の有無を検証した。
【0043】
なお、アシスト加熱は、配線基板の近傍に設置した熱源の熱を、配線基板の半田付けを行う領域に向けて送ることにより行った。半田付け時の条件は、
図4の検証と同様、
図5の表に示す条件で行った。なお、半田未ぬれの発生の有無は、配線基板の裏面側のランドを目視で観察することにより行った。
【0044】
図6の表に示すように、従来の半田付け装置を用いた場合には、熱容量の大きい配線基板においてアシスト加熱を行わなかった場合、配線基板の裏面側のランドに半田の未ぬれが発生しており、未ぬれ防止には、アシスト加熱が必要であった。
【0045】
一方、
図1に示す半田付け装置100では、熱容量の大きい配線基板において、アシスト加熱を行わなくても、基板裏面側のランドにおける半田未濡れが抑制されていた。なお、
図6の表中、「○」は半田未濡れが発生しなかったことを示し、「×」は半田未濡れが発生したことを示す。