(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800775
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】煙感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 23/00 20060101AFI20201207BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20201207BHJP
G08B 17/103 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
G08B23/00 520D
G08B17/00 A
G08B17/103 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-31705(P2017-31705)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-136808(P2018-136808A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】岡戸 朋紘
【審査官】
大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−003165(JP,A)
【文献】
特開2008−310740(JP,A)
【文献】
特開2009−146233(JP,A)
【文献】
特開2002−074568(JP,A)
【文献】
特開2008−310757(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0339896(US,A1)
【文献】
中国実用新案第205680237(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 23/00
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ベースと該本体ベースの上側を覆うカバー部材とからなる筐体の内部に、監視対象の変化を検出する素子および該素子からの信号に基づいて煙濃度に関連する物理量を測定する測定回路および制御回路が実装された回路基板が収納され、前記カバー部材に鳴動手段が設けられてなる煙感知器において、
前記回路基板には、前記鳴動手段を駆動する駆動回路および外部の所定の装置との間で情報を伝送可能な伝送回路が設けられ、
前記複数の音節のうち少なくともいずれか2つの音節間に、最も短い音節の鳴動時間よりも短い無鳴動期間が設定され、
前記制御回路は、記憶装置を備え、外部からの鳴動要求に応じて前記駆動回路を制御して複数の音節に従って前記鳴動手段を鳴動させる一方、前記無鳴動期間に前記測定回路を制御して測定を実行させて得られた測定値を前記記憶装置に記憶し、測定値送信要求に応じて前記伝送回路を動作させて前記記憶装置に記憶されている前記測定値を送信するように構成されていることを特徴とする煙感知器。
【請求項2】
前記複数の音節は、第1の周波数の音節と前記第1の周波数の音節とは異なる第2の周波数の音節とを含むフレーズからなり、
前記制御回路は前記鳴動手段が前記フレーズを繰り返すように前記駆動回路を制御し、
前記第1の周波数の音節と前記第2の周波数の音節とは連続し、前記フレーズ間に前記無鳴動期間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の煙感知器。
【請求項3】
前記無鳴動期間は100ミリ秒以下に設定され、前記第1の周波数の音節と前記第2の周波数の音節はそれぞれ前記無鳴動期間の10倍以上に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の煙感知器。
【請求項4】
前記鳴動手段は圧電素子を備えた圧電サウンダーであり、
前記カバー部材は、中央に開口部を備え前記本体ベースに結合されるドーム状のケースと、前記開口部に係合するようにして前記ケースに取り付けられるヘッドカバーと、を備え、
前記圧電サウンダーは、前記ヘッドカバーの内側に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の煙感知器。
【請求項5】
前記回路基板は前記本体ベースに固定され、
前記ドーム状のケースの内側であって前記回路基板と前記ヘッドカバーと間に前記監視対象の変化を検出する素子が収納された箱体が配置され、
前記鳴動手段と前記駆動回路が実装された回路基板と前記鳴動手段とを電気的に接続するリード線が、前記箱体を貫通するように配設されていることを特徴とする請求項4に記載の煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知システム等に用いられる感知器に関し、特に鳴動器を備えた煙感知器に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内部に設けられている火災報知システムには、火災感知器として光電式の煙感知器等があり、感知器の火災検出信号は火災受信機へ伝達され、火災受信機が警報用のベルを鳴動させて火災の発生を報知したり、排煙装置等へ信号を送信して動作させたりするように構成されている。
従来の火災報知システムにおける感知器は、一般にブザーのような鳴動器は設けられていないが、感知器の取付けベース内にスピーカを内蔵したものや感知器のハウジングケース内にブザーを内蔵させるようにした発明も提案されている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
感知器に鳴動器(ブザー)を設けない理由は、鳴動器の振動による本来の感知機能の低下や、耐久性の低下が考えられる。
例えば特許文献1に記載されている煙感知器の発明は、感知器のハウジングケース内にブザーを設ける場合、ブザー音が外部で明瞭に聞こえるようにするためケースに通気孔を形成することとなるが、ケースに通気孔を形成した場合には、その通気孔からケース内に煙の一部が流入することで煙感知部へ流入する煙の量が減少して検出感度が低下することとなるので、それを防止するために、通気孔の感知部から遠い側の縁部に下向きに突出した防煙用の突片を設けるようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2に記載されている発明は、ハウジングケースの内面に圧電ブザーの周面に当接する複数の押さえリブを設けて、この押さえリブによって圧電ブザーの動きを規制するように構成したものである。
なお、ケース内にサウンドジェネレータを内蔵した感知器に関する発明として、特許文献3に記載されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−333182号公報
【特許文献2】特開平08−124058号公報
【特許文献3】国際特許出願WO2015032417(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、圧電素子をアクチュエータとする鳴動器(圧電サウンダー)を、検出回路が実装された回路基板が収納される感知器のハウジングケース内ではなくヘッド部に設けることを検討した。その結果、圧電サウンダーをヘッド部に設けた煙感知器においても、圧電サウンダーの動作中に煙濃度の測定を実行すると、非鳴動中に測定を実行した場合の測定値からずれが発生してしまうという課題があることが明らかとなった。
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、圧電サウンダーを設けた場合にも測定値の誤差が発生しないようにすることができる煙感知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
本体ベースと該本体ベースの上側を覆うカバー部材とからなる筐体の内部に、監視対象の変化を検出する素子および該素子からの信号に基づいて煙濃度に関連する物理量を測定する測定回路および制御回路が実装された回路基板が収納され、前記カバー部材に鳴動手段が設けられてなる煙感知器において、
前記回路基板には、前記鳴動手段を駆動する駆動回路および外部の所定の装置との間で情報を伝送可能な伝送回路が設けられ、
前記複数の音節のうち少なくともいずれか2つの音節間に、最も短い音節の鳴動時間よりも短い無鳴動期間が設定され、
前記制御回路は、記憶装置を備え、外部からの鳴動要求に応じて前記駆動回路を制御して複数の音節に従って前記鳴動手段を鳴動させる一方、前記無鳴動期間に前記測定回路を制御して測定を実行させて得られた測定値を前記記憶装置に記憶し、測定値送信要求に応じて前記伝送回路を動作させて前記記憶装置に記憶されている前記測定値を送信するように構成したものである。
【0008】
上記構成によれば、複数の音節のうち少なくともいずれか2つの音節間に短い無鳴動期間が設けられ、制御回路は、無鳴動期間に測定を実行させて得られた測定値を記憶装置に記憶し、測定値送信要求に応じて測定値を送信するので、煙感知器に圧電サウンダーのような鳴動手段を設けた場合に、鳴動中に煙濃度の測定を実施するのを回避することができ、圧電サウンダーの振動が測定回路や増幅回路に伝わって測定値に誤差を生じさせるのを防止することができる。
【0009】
ここで、望ましくは、前記複数の音節は、第1の周波数の音節と前記第1の周波数の音節とは異なる第2の周波数の音節とを含むフレーズからなり、前記制御回路は前記鳴動手段が前記フレーズを繰り返すように前記駆動回路を制御し、前記第1の周波数の音節と前記第2の周波数の音節とは連続し、前記フレーズ間に前記無鳴動期間が設けられているように構成する。
【0010】
かかる構成によれば、鳴動手段が2つの周波数の音節を含むフレーズの繰り返しで鳴動するため明快な警報音を発することができるとともに、フレーズ間に無鳴動期間が設けられているため、警報音に違和感を生じさせることなく鳴動中に精度の高い煙濃度測定を実施する時間を確保することができる。
【0011】
さらに、望ましくは、前記無鳴動期間は100ミリ秒以下に設定され、前記第1の周波数の音節と前記第2の周波数の音節はそれぞれ前記無鳴動期間の10倍以上に設定されているようにする。
無鳴動期間が100ミリ秒以下であれば、人間の耳にはほとんど途切れのないメロディとして聞こえるようにすることができる。ここで、より望ましくは無鳴動期間を50ミリ秒以下とする。
【0012】
また、望ましくは、前記鳴動手段は圧電素子を備えた圧電サウンダーであり、
前記カバー部材は、中央に開口部を備え前記本体ベースに結合されるドーム状のケースと、前記開口部に係合するようにして前記ケースに取り付けられるヘッドカバーと、を備え、前記圧電サウンダーは、前記ヘッドカバーの内側に設けられている構成とする。
かかる構成によれば、圧電サウンダーが感知器の先端であるヘッド部に設けられるため、比較的小さなパワーで大きな振動音を発することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記回路基板は前記本体ベースに固定され、
前記ドーム状のケースの内側であって前記回路基板と前記ヘッドカバーと間に前記監視対象の変化を検出する素子が収納された箱体が配置され、
前記鳴動手段と前記駆動回路が実装された回路基板と前記鳴動手段とを電気的に接続するリード線が、前記箱体を貫通するように配設された構成とする。
かかる構成によれば、回路基板をカバー側に配設する場合に比べて、暗箱を貫通する配線の数を少なくすることができ、これによって感知器全体をコンパクトに構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圧電サウンダーを設けた場合にも測定値の誤差が発生しないようにすることができる煙感知器を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る煙感知器の一例としての光電式煙感知器の一実施形態を示すもので、(A)は平面図、(B)は断面正面図である。
【
図2】
図1に示す煙感知器の電気的な構成例を示す機能ブロック図である。
【
図3】実施形態の煙感知器の煙濃度測定動作のタイミングを示すもので、(A)は、本発明を適用しない場合の煙濃度の測定および測定値の収集タイミングチャート、(B)は実施形態の煙感知器における煙濃度の測定および測定値の収集タイミングチャートである。
【
図4】
図3(B)に示すタイミングに従って煙濃度を測定して火災受信機へ送信する場合の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図4のフローチャートにおける煙濃度測定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を適用した煙感知器の一例としての光電式煙感知器の一実施形態について説明する。
本実施形態の光電式煙感知器(以下、単に感知器と記す)10は、火災に伴い発生した煙を感知可能な感知器であり、建造物の天井面などに設置されて使用されるように構成されている。なお、以下の説明では、感知器10を建造物の天井面に設置した状態で上になる側を下側、下になる側を上側とする。
【0017】
本実施形態の感知器10は、
図1に示すように、感知部を収容するための収容凹部11Aを有し建造物の天井面に取り付けるための円筒状の本体ベース11と、ドーム状をなし前記本体ベース11の上側全体を覆う感知器カバー12と、感知器カバー12の中央に形成されている開口部を覆うヘッドカバー21とを備え、本体ベース11と感知器カバー12とにより内部に収容空間を有する筐体が形成される。
【0018】
また、感知器10は、前記本体ベース11と感知器カバー12とにより形成される収容空間内に収容され固定される回路基板13と、ラビリンス構造の遮光壁を有し前記回路基板13に搭載される暗箱基台14と、該暗箱基台14に係合し暗箱を形成する暗箱カバー15とを備え、これらの構成部材が、上記筐体内に収納され本体ベース11と感知器カバー12とが結合されることで感知器が構成される。
【0019】
本体ベース11は感知器10の下側筐体壁を構成するもので、本体ベース11の下面には、予め天井面に設置された取付基台(図示省略)と連結し、当該感知器10を天井面に固定するための3個の連結金具17が設けられている(
図1ではこのうち2個が見えている)。また、本体ベース11には、収容凹部11A内に収容された回路基板13を固定するネジ18が挿通されるボス部11bが設けられている(
図1ではこのうち1個が見えている)。
【0020】
暗箱基台14には、LED(発光ダイオード)のような発光素子19Aを収納する収納部と、フォトダイオードのような受光素子19Bを収納する収納部が設けられるとともに、該収納部の底壁には、発光素子19Aと受光素子19Bのリード端子19aと19bが挿通可能な細孔(図示省略)がそれぞれ形成されており、暗箱基台14の下面より突出した各素子のリード端子の先端が回路基板13を貫通し、フロー半田付け等によって接続される。
【0021】
回路基板13は、上面および下面に火災感知のための電子回路を構成する抵抗や容量、IC(半導体集積回路)などの電子部品が実装されるプリント配線基板により構成され、該基板にはネジ挿通穴が形成されており、連結金具17のネジ穴および本体ベース11の底壁のボス部11bを貫通して回路基板13のネジ挿通穴に挿通されたネジ18によって本体ベース11の底壁に固定される。
【0022】
一方、感知器カバー12のドーム状の周壁部には、
図1(A)に示すように、暗箱内の煙検知部に連通する開口12Bが円周方向に沿って複数個形成され、該開口12Bが外部の煙をケース内部に流入可能にする煙流入口として機能するように構成されている。また、
図1(B)に示すように、感知器カバー12の中央には、暗箱の上部が露出可能な円形状の開口部12Aが形成されるとともに、該開口部12Aより露出した暗箱カバー16の円板状の蓋部の縁部にヘッドカバー21が係合されている。
【0023】
また、感知器カバー12の中央の上記開口部12Aの縁には、リング状に形成された透明部材からなる光放出部材23が嵌合されるように構成されている。そして、この光放出部材23には、下方へ向かって垂下するように形成された一対の棒状の光ガイド部(図示省略)が結合されており、該光ガイド部のうち一方の先端(下端)の光入射部(端面)が、回路基板13上に実装される図示しない動作状態報知用の発光ダイオード(LED)と対向するように構成されている。この発光ダイオードと光放出部材23とにより、後述の表示灯22が構成される。
【0024】
さらに、ヘッドカバー21には、圧電素子からなる円板上の圧電サウンダー24が設けられているとともに、暗箱基台14の中央には上方へ向って突出する遮光壁部14Aが形成され、該遮光壁部14Aの内側に、上記回路基板13から延設されたリード線25Aおよび圧電サウンダー24から延設されたリード線25Bと、これらのリード線同士を接続するためのコネクタ26とが収納され、リード線25A,25Bを介して回路基板13から圧電サウンダー24の駆動信号が伝送され、圧電サウンダー24が鳴動されるように構成されている。また、上記ヘッドカバー21と感知器カバー12の上壁との間に音孔21Aが設けられ、圧電サウンダー24の鳴動音が外部へ広がり易くなるように構成されている。
【0025】
図2には、上記回路基板13上に実装されるICなどの電子部品により構成される煙感知器の機能ブロック図が示されている。
図2に示すように、煙感知器は、CPU(中央処理装置)とROMやRAMなどのメモリおよび発振器を内蔵しROMに格納されているプログラムに従って動作するMCU(マイクロコンピュータユニット)などからなる制御回路31と、図示しない火災受信機から延設された伝送線40からの電圧を受けて制御回路31を含む内部回路の動作電圧を生成する電源回路としての定電圧回路(電圧レギュレータ)32と、暗箱内に配設された上記受光素子19Bの信号に基づいて煙濃度を測定する煙濃度測定回路33と、該煙濃度測定回路33の出力信号を増幅する増幅回路34と、伝送線40を介して火災受信機との間で信号の送受信を行う伝送回路(I/F)35を備える。
【0026】
制御回路31は、周期的に煙濃度測定回路33と増幅回路34を動作させて増幅回路34からの信号に基づいて煙濃度値を演算しデジタル値に変換してメモリに記憶し、記憶した煙濃度値を火災受信機から要求に応じて伝送回路(I/F)35より火災受信機へ送信する。
また、本実施形態の煙感知器は、発光ダイオードと光放出部材23とからなる表示灯22を点灯駆動する表示灯駆動回路36と、スピーカ(SP)としての圧電サウンダー24を鳴動駆動するサウンダー駆動回路37と、圧電サウンダー24から発音する音色を外部から選択する音色選択回路38を備えている。
【0027】
音色選択回路38は、抵抗を実装するか非実装にするかで選択を行うように構成されている。制御回路31は、火災受信機は伝送線40を介して鳴動コマンドを受信すると、サウンダー駆動回路37を動作させて圧電サウンダー24を鳴動させるように構成されている。
なお、伝送線40は2本の配線で構成され、伝送線40を介して火災受信機から動作電圧が供給される。1本の伝送線40には、複数(例えば255個)の感知器が接続可能であり、各感知器には重複しないようにアドレスが付与され、火災受信機はそのアドレスを使用してポーリング方式で各感知器から煙濃度測定値を順次取得する。また、火災受信機は伝送線40を介して各感知器へコマンドを送信することで、圧電サウンダー24を鳴動させたり、停止させたりすることができる。
【0028】
火災受信機は感知器から煙濃度測定値を受信すると、煙濃度値またはその変化率が予め設定しておいたしきい値を超える場合に火災発生と判断して、警告表示処理やサウンダー鳴動処理、連動処理を実行して火災発生を報知する。
さらに、伝送線40には上記実施形態の煙感知器とは形態の異なる火災感知器の他、伝送線が短絡した際に短絡を検出して下流側の伝送線を電気的に切り離すSCI(ショートサーキットアイソレータ)や、ベル、排煙装置等の周辺機器が接続される中継器が接続されることもある。
【0029】
次に、上記制御回路31による煙濃度測定動作について、
図3のタイミングチャートおよび
図4のフローチャートを用いて説明する。
図3(A)は、本発明を適用しない場合の煙濃度測定値の収集タイミングを示す。
図3(A)では、タイミングt1で煙感知器がサウンダーの鳴動コマンドを受信すると、制御回路31よりサウンダー駆動回路37へ鳴動制御信号が出力される。これにより、圧電サウンダー24は例えば677Hzの周波数で500ms(ミリ秒)間鳴動した後、938Hzの周波数で500ms間鳴動する動作を繰り返す。また、上記サウンダーの鳴動制御とは全く非同期に、タイマー割込みで濃度測定要求が発生すると制御回路31から煙濃度測定回路33へ測定制御信号が送信され、そのタイミング(t2)で煙濃度測定が実施される。
【0030】
ところが、前述したように、圧電素子をアクチュエータとする圧電サウンダーをヘッド部に設けた煙感知器において、圧電サウンダーの鳴動中に煙濃度の測定を実行すると、非鳴動中に測定を実行した場合の測定値からずれが発生してしまうという問題がある。そこで、本実施形態の煙感知器においては、
図3(B)に示すように、圧電サウンダーの鳴動中は、音の周波数切り替え時に例えば30msのような無音期間T1,T2……を設け、そのタイミングで制御回路31から煙濃度測定回路33へ濃度測定指令を出力して濃度測定を実施させ、測定した濃度値を内部メモリに記憶して、煙濃度(測定)要求に応じて受信機へ送信するように構成されている。
【0031】
測定した濃度値を送信するタイミングは、火災受信機から送信要求を受けたタイミングでも良いし、タイマー割込みによる周期的な送信でも良い。また、特に限定されるものでないが、本実施例においては、30msのような無音期間T1,T2……を設けたのに伴い、各周波数の鳴動期間を500msから485msに短縮している。
図4には、制御回路31が
図3(B)に示すようなタイミングに従って煙濃度を測定して火災受信機へ送信する制御を実施する場合の手順の一例が示されている。以下、
図4のフローチャートに従って制御手順について説明する。
【0032】
本実施例においては、煙感知器はコマンド処理でサウンダーの鳴動制御を実行する。具体的には、先ず火災受信機からコマンドを受信したか否か判定する(ステップS1)。ここで、コマンドを受信した(Yes)と判定するとステップS2へ進み、サウンダー鳴動コマンドを受信したか否か判定し、サウンダー鳴動コマンドを受信した(Yes)と判定するとステップS3へ進み、煙濃度測定回路33による煙濃度の測定中であるか否か判定する。
【0033】
そして、煙濃度の測定中でない(No)と判定するとステップS4へ進み、音色選択回路38の選択設定状態を読込み、例えばトーン1が選択されていれば、先ずサウンダー駆動回路37に対して677Hzの周波数で鳴動させる指令を出力するとともに、煙濃度測定回路33に対して測定禁止を指令し、タイマーを起動する(ステップS5)。音色選択回路38により他のトーンが選択されていれば、それに応じた鳴動指令を出力する。
【0034】
次に、タイマーが485msを計時したかしたか否か判定し(ステップS6)、485msを計時した(Yes)と判定するとステップS7へ進み、サウンダー駆動回路37に対して677Hzの周波数で鳴動させる指令を出力するとともに、タイマーを再起動する。続いて、タイマーが485msを計時したかしたか否か判定し(ステップS8)、485msを計時した(Yes)と判定するとステップS9へ進み、サウンダー駆動回路37に対して鳴動を停止させる指令を出力するとともに、煙濃度測定回路33に対して測定を許可する指令を出力する。その後、タイマーを30msにセットして煙濃度測定回路33による煙濃度測定(ステップS10)を実施してステップS11へ進む。
【0035】
ステップS11では、サウンダー鳴動停止コマンドを受信したか否か判定し、受信していない(No)と判定するとステップS3へ戻り、上記動作を繰り返す。一方、ステップS11でサウンダー鳴動停止コマンドを受信した(Yes)と判定するとステップS12へ進み、サウンダー駆動回路37に対して鳴動を禁止する指令を出力するとともに、煙濃度測定回路33に対して測定を許可する指令を出力してコマンド処理を終了する。
【0036】
一方、上記ステップS2で、受信コマンドがサウンダー鳴動コマンドでない(No)と判定するとステップS13へ進み、測定値要求コマンドであるか否か判定する。そして、測定値要求コマンドである(Yes)と判定するとステップS14へ進み、ステップS10で測定し記憶していた煙濃度測定値を受信機へ送信してコマンド処理を終了する。また、ステップS13測定値要求コマンドでない(No)と判定すると、ステップS15へ移行してその他のコマンド処理を実行する。
【0037】
図5には、
図4のフローチャートにおけるステップS10で実行される煙濃度測定処理の具体的な手順の一例が示されている。
この煙濃度測定においては、先ずサウンダー駆動回路37に対して鳴動を禁止する指令を出力する(ステップS21)。続いて、煙濃度測定回路33に対して測定を実施する指令を出力した後、測定された濃度値をメモリに記憶する(ステップS22,S23)。その後、サウンダー駆動回路37に対して鳴動を許可する指令を出力する(ステップS24)。
【0038】
一方、実施例の煙感知器においては、上記コマンド処理とは別個に、タイマー割込みで煙濃度測定回路33による測定が実施されるように構成されており、煙濃度測定の割込みが入ると、制御回路31は、サウンダーが鳴動中であるか否か判定し(ステップS25)、鳴動中であれば何もせず、鳴動中でなければステップS21へ進み、上記動作S21〜S24を実行するように構成されている。
【0039】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態の煙感知器においては、鳴動手段として圧電サウンダーを使用したものを示したが、ブザーやスピーカを使用したものに適用しても良い。
また、上記実施形態では、本発明を、発光素子と受光素子を有する煙感知器に適用したものを説明したが、本発明はそれに限定されず、赤外線を検知する焦電素子、サーミスタのような感熱素子あるいはCOなどの有害ガスを検知するガスセンサ等の素子およびこれらの素子からの信号を増幅する増幅回路が実装された煙感知器にサウンダーを設ける場合に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 煙感知器(光電式煙感知器)
11 本体ベース
12 感知器カバー
13 回路基板
14 暗箱基台
16 暗箱カバー
19A 発光素子
19B 受光素子
21 ヘッドカバー
24 圧電サウンダー(鳴動手段)
25A,25B リード線
26 コネクタ