【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)水上の吊り下げ手段により吊り下げられる吊荷を、水面上或いは水中に解き放つための切離装置であって、前記吊り下げ手段と前記吊荷との双方に取り付けられる連結部と、該連結部へ圧縮空気を供給するための圧縮空気供給部と、該圧縮空気供給部からの圧縮空気の供給を制御するための制御信号を無線で送信するための操作部と、該操作部から受信する制御信号に応じて、前記圧縮空気供給部から前記連結部への圧縮空気の供給を制御する制御手段と、前記吊り下げ手段と前記連結部との間に連結され、前記圧縮空気供給部及び前記制御手段を搭載するベース部と、を含み、前記連結部に、前記吊り下げ手段による前記吊荷の吊り下げ方向と平行な方向へと分離可能な雌雄一対の連結機構と、該連結機構に含まれ、前記圧縮空気供給部から供給される圧縮空気を受けて前記連結機構を分離させる分離動作部と、が設けられている切離装置(請求項1)。
【0008】
本項に記載の切離装置は、連結部、圧縮空気供給部、操作部、制御手段及びベース部を含み、連結部は、クレーン等の吊り下げ手段と吊荷との双方に取り付けられ、吊り下げ手段と連結部との間にはベース部が連結される。すなわち、吊り下げ手段、ベース部、連結部及び吊荷は、この順序で直列に連結される。又、圧縮空気供給部は、ベース部に搭載され、ベース部に連結されている連結部に対して、圧縮空気を供給するように構成される。同じくベース部に搭載される制御手段は、操作部から無線で送信される制御信号を受信し、この制御信号に応じて、圧縮空気供給部から連結部への圧縮空気の供給、例えば供給の可否を制御する。又、操作部は、上述したように、制御手段に対して無線で制御信号を送信するためのものであり、例えば、吊り下げ手段が設置されている船上や陸上等から、作業員により操作される。
【0009】
更に、連結部には、連結機構と、連結機構に含まれる分離動作部とが設けられており、連結機構は、吊り下げ手段による吊荷の吊り下げ方向と平行な方向、すなわち、吊荷を投入する方向へと分離可能な雌雄一対の構造を備えている。分離動作部は、圧縮空気供給部から供給される圧縮空気を受けて、連結機構を分離させるものである。
上記のような構成により、本項に記載の切離装置は、例えば作業員により操作部に対して圧縮空気を供給するための操作がなされると、そのための制御信号が、船上や陸上の操作部から吊り下げ手段に連結されたベース部上の制御手段へと、無線で送信される。制御手段は、その制御信号を受信すると、ベース部上の圧縮空気供給部からベース部に連結された連結部に対する圧縮空気の供給を許可する。そして、圧縮空気供給部から連結部に圧縮空気が供給されると、連結部の分離動作部により連結機構が分離され、連結部に取り付けられていた吊荷が、水面上や水中に解き放たれることとなる。
【0010】
このように、本項に記載の切離装置は、船上や陸上に配置される操作部から、遠隔操作によって吊荷の投入が行われるため、吊荷と船体や岸壁等との距離が十分にあけられ、吊荷と船体や岸壁等との接触が防止される。又、潜水士による吊荷の玉外し作業が不要となるため、潜水士の吊荷や船体等への接触が発生することはない。更に、構造が単純であり、又、圧縮空気の供給経路が、ベース部上の圧縮空気供給部からベース部に連結された連結部までの長さであるため、切り離しの操作が行われると迅速に吊荷が投入されるものである。加えて、連結部に対して圧縮空気が供給されると分離可能な状態になるものであるため、例えば、空気漏れ等によって圧縮空気の供給に弊害が生じた場合であっても、連結部が分離されることはなく、フェールセーフが図られている。又、分離動作の駆動力として、油圧ではなく圧縮空気を利用するため、油漏れ等によって水中を汚すことがないものである。
【0011】
(2)上記(1)項において、前記連結部の連結機構は、前記ベース部に連結されるソケット部と、前記吊荷に固定されるプラグ部とで構成され、前記ソケット部は、前記圧縮空気供給部から供給される圧縮空気を取り込むための取込部と、前記プラグ部との結合状態を維持するためのロック機構とを含み、該ロック機構は、前記取込部を介した圧縮空気の供給を受けて、前記ソケット部と前記プラグ部との分離方向と平行に移動するリニアスライド部と、該リニアスライド部の移動を受けて前記プラグ部との結合状態を維持又は解除する施錠子とを備える切離装置(請求項2)。
【0012】
本項に記載の切離装置は、連結部の連結機構が、ベース部に連結されるソケット部と、吊荷に固定されるプラグ部とで構成されている。すなわち、ベース部に連結される雌型のソケット部と、吊荷に固定される雄型のプラグ部とが、吊り下げ手段による吊荷の吊り下げ方向と平行な方向へ分離可能に結合された構造を有している。ソケット部は、圧縮空気供給部から供給される圧縮空気を取り込むための取込部と、ソケット部とプラグ部との結合状態を維持するためのロック機構とを含んでおり、このロック機構は、リニアスライド部と施錠子とを備えている。リニアスライド部は、取込部から取り込まれた圧縮空気を受けて、ソケット部とプラグ部との分離方向と平行に移動するものであり、圧縮空気の供給が停止すると、供給時とは反対の方向へ移動する。そして、施錠子は、そのようなリニアスライド部の移動を受けて、ソケット部とプラグ部との結合状態を維持又は解除するものである。このような構成により、圧縮空気を利用して、連結部の連結機構を確実かつ迅速に分離させるものである。
【0013】
(3)上記(2)項において、前記プラグ部は、外周に溝が設けられた円筒状部を有し、前記ソケット部は、円筒状の外筒部と、該外筒部の内側に配置される円筒状の内筒部と、該内筒部の内側に形成され、前記プラグ部の前記円筒状部が挿入される挿入穴と、を含み、前記ロック機構は、前記内筒部の円周側に該内筒部を貫通する態様で、該内筒部の円周方向に間隔を空けて設けられる複数の施錠子保持孔と、該複数の施錠子保持孔の各々の内部に各施錠子保持孔の貫通方向へと変位可能に配置され、前記内筒部の各施錠子保持孔が形成された部分の肉厚よりも大きい直径を有し、前記挿入穴に挿入された状態の前記プラグ部の円筒状部の溝に係合可能な、前記施錠子を成す複数の球体と、前記外筒部と前記内筒部との間に摺動可能に設置され、前記リニアスライド部を成す円筒状のスリーブと、前記取込部から圧縮空気が取り込まれていない状態において、前記複数の施錠子保持孔を覆う位置に前記スリーブを変位させ、前記取込部から圧縮空気が取り込まれている状態において、前記複数の施錠子保持孔を覆わない位置に前記スリーブを変位させる変位手段と、で構成されている切離装置。
【0014】
本項に記載の切離装置は、プラグ部に、外周に溝が設けられた円筒状部が形成され、ソケット部に、円筒状の外筒部と、その内側に配置される円筒状の内筒部とが設けられ、更に内筒部の内側に、プラグ部の円筒状部が挿入される挿入穴が形成されている。そして、ソケット部のロック機構が、複数の施錠子保持孔と、施錠子を成す複数の球体と、リニアスライド部を成す円筒状のスリーブと、変位手段とで構成されているものである。
複数の施錠子保持孔の各々は、内筒部の円周側に内筒部を貫通する態様で設けられ、内筒部内側の挿入穴と連通する状態となる。又、複数の施錠子保持孔は、内筒部の円周方向に間隔を空けて設けられ、例えば、90度の等間隔で設けられる場合は、4つの施錠子保持孔が内筒部に設けられることになる。
【0015】
施錠子を成す複数の球体の各々は、各施錠子保持孔の内部に、各施錠子保持孔の貫通方向に変位可能に配置されるものである。例えば複数の施錠子保持孔が、上述したように、内筒部の円周側に90度の等間隔で設けられている場合には、合計で4つの球体が配置されることになる。更に、複数の球体の各々は、内筒部の各施錠子保持孔が形成された部分の肉厚(施錠子保持孔の貫通方向の深さ)よりも大きい直径を有している。
【0016】
リニアスライド部を成すスリーブは、円筒状を成し、外筒部と内筒部との間に、ソケット部とプラグ部との分離方向と平行に摺動可能に設置される。そして、このスリーブを摺動させて変位させるものが変位手段であり、変位手段は、取込部から圧縮空気が取り込まれていない状態において、内筒部の外側から複数の施錠子保持孔を覆う位置にスリーブを変位させる。すなわち、この状態では、各施錠子保持孔の外筒部側の開口がスリーブにより覆われるため、各施錠子保持孔内部に配置された球体は、内筒部の各施錠子保持孔が形成された部分の肉厚(施錠子保持孔の貫通方向の深さ)より大きい直径を有していることから、各施錠子保持孔から内筒部内側の挿入穴へ突出した状態になる。一方、取込部から圧縮空気が取り込まれている状態において、変位手段は、内筒部の外側から複数の施錠子保持孔を覆わない位置にスリーブを変位させる。すなわち、この状態では、各施錠子保持孔の外筒部側の開口がスリーブにより覆われていないため、各施錠子保持孔内部に配置された球体は、各施錠子保持孔の外筒部側の開口から外筒部側に突出可能な状態になる。
【0017】
上記のような構成により、本項に記載の切離装置は、ソケット部の挿入穴にプラグ部の円筒状部が挿入された状態、かつ、圧縮空気が圧縮空気供給部から供給されずに取込部から取り込まれない状態では、各施錠子保持孔から挿入穴へ突出した球体が、円筒状部に設けられた溝に係合して、ソケット部とプラグ部との結合状態が維持される。そして、そのような状態から、圧縮空気供給部から供給される圧縮空気が取込部から取り込まれ、変位手段によってスリーブが変位されると、各施錠子保持孔の外筒部側の開口から球体が突出可能な状態になる。この状態で、吊荷に連結機構の分離方向と平行な力が加わると、各施錠子保持孔の外筒部側の開口から突出するように球体が変位して、円筒状部の溝に対する各球体の係合状態が解除されるため、ソケット部とプラグ部とが瞬時に分離される。これにより、例えば、水面上に吊荷を解き放つ場合に、上下動する水面に吊荷を浮かばせ、水面が上昇して下降し始める直前のタイミングで、吊荷を投入する操作が行われることで、吊荷が損傷を受けることなく瞬時に投入されることとなる。
【0018】
(4)上記(1)から(3)項において、前記制御手段は、前記圧縮空気供給部から前記連結部への圧縮空気供給路上に設置されるソレノイドバルブと、前記操作部から受信する制御信号に応じて前記ソレノイドバルブへ開閉信号を送信する受信部と、前記ソレノイドバルブ及び前記受信部へ電力を供給する電力供給部と、を含む切離装置(請求項3)。
本項に記載の切離装置は、制御手段が、ソレノイドバルブ、受信部及び電力供給部を備えるものである。ソレノイドバルブは、圧縮空気供給部から連結部への圧縮空気供給路上に設置され、その開閉動作によって圧縮空気の供給を開始及び停止させる。受信部は、操作部から無線で送信される制御信号を受信して、受信した制御信号に応じてソレノイドバルブへ開閉制御信号を送信する。又、電力供給部は、ソレノイドバルブと受信部とへ電力を供給するものである。これにより、無線の制御信号の受信から圧縮空気供給路の開閉動作までが、ベース部に搭載される電気回路のみで行われることになるため、信頼性及び応答性が高められることになる。
【0019】
(5)上記(4)項において、前記圧縮空気供給部がエアタンクであり、前記電
力供給部がバッテリーである切離装置(請求項4)。
本項に記載の切離装置は、圧縮空気供給部がエアタンクであり、電
力供給部がバッテリーであることで、小型軽量化が図られるものである。特に、ベース部に搭載される部材の中でも、比較的大きくなることが懸念されるこれらの部材が、小型軽量化されることで、ベース部の小型軽量化が図られることになる。このため、ベース部に必要な強度や、吊り下げ手段にかかる荷重が低減される。
【0020】
(6)上記(1)から(5)項において、前記ベース部が水上に配置される切離装置(請求項5)。
本項に記載の切離装置は、吊り下げ手段と連結部との間に連結されたベース部が水上に配置されることで、ベース部に搭載される圧縮空気供給部及び制御手段(ソレノイドバルブ、受信部、電力供給部)が、水上に配置されるものである。すなわち、圧縮空気の供給源である圧縮空気供給部と、圧縮空気供給の制御を行う制御手段との双方が、圧縮空気の供給先である連結部と可能な限り近接されながらも、水上に配置される。これにより、圧縮空気の供給と供給制御とを水上で行うことになるため、圧縮空気を利用した切り離し動作の信頼性が向上される。又、吊荷を水面上に投入する場合には、連結部も水上に配置されることになるため、圧縮空気供給部から連結部への圧縮空気の供給配管が、可能な限り短く構成されるものとなる。
【0021】
(7)水上の吊り下げ手段により吊り下げられる吊荷を、水面上或いは水中に解き放つための切離方法であって、前記吊り下げ手段に、圧縮空気供給部及び制御手段を搭載したベース部と、分離可能な雌雄一対の連結機構及び該連結機構に含まれ該連結機構を分離させる分離動作部を設けた連結部と、前記吊荷とを、この順序で直列に連結し、前記制御手段により、操作部から無線で送信される制御信号に応じて、前記圧縮空気供給部から前記連結部への圧縮空気の供給を制御し、前記圧縮空気供給部から前記連結部の分離動作部へ圧縮空気を供給することによって、前記連結機構を前記吊り下げ手段による前記吊荷の吊り下げ方向と平行な方向に分離させる切離方法(請求項6)。
【0022】
(8)上記(7)項において、前記連結部の連結機構を、前記ベース部に連結するソケット部と、前記吊荷に固定するプラグ部とで構成し、前記ソケット部に、前記圧縮空気供給部から供給される圧縮空気を取り込むための取込部と、リニアスライド部及び施錠子を備え、前記プラグ部との結合状態を維持するためのロック機構とを設け、前記取込部を介して前記ロック機構に圧縮空気を供給して、前記ソケット部と前記プラグ部との分離方向と平行に前記リニアスライド部を移動させることで、前記施錠子により前記プラグ部との結合状態を維持又は解除する切離方法(請求項7)。
【0023】
(9)上記(8)項において、前記プラグ部に、外周に溝を設けた円筒状部を形成し、前記ソケット部に、円筒状の外筒部と、該外筒部の内側に配置する円筒状の内筒部とを設け、該内筒部の内側に前記プラグ部の前記円筒状部を挿入するための挿入穴を形成し、前記内筒部の円周側に該内筒部を貫通する態様で、該内筒部の円周方向に間隔を空けて複数の施錠子保持孔を設け、前記内筒部の前記複数の施錠子保持孔の各々が形成された部分の肉厚よりも大きい直径を有し、前記挿入穴に挿入された状態の前記プラグ部の円筒状部の溝に係合可能な、前記施錠子を成す複数の球体の各々を、前記複数の施錠子保持孔の各々の内部に各施錠子保持孔の貫通方向へと変位可能に配置し、前記外筒部と前記内筒部との間に、前記リニアスライド部を成す円筒状のスリーブを摺動可能に設置し、前記取込部から圧縮空気が取り込まれていない状態において、前記複数の施錠子保持孔を覆う位置に前記スリーブを変位させ、前記取込部から圧縮空気が取り込まれている状態において、前記複数の施錠子保持孔を覆わない位置に前記スリーブを変位させる変位手段を設ける切離方法。
【0024】
(10)上記(7)から(9)項において、前記制御手段を、前記圧縮空気供給部から前記連結部への圧縮空気供給路上に設置するソレノイドバルブと、前記操作部から受信する制御信号に応じて前記ソレノイドバルブへ開閉信号を送信する受信部と、前記ソレノイドバルブ及び前記受信部へ電力を供給する電力供給部と、で構成する切離方法(請求項8)。
(11)上記(10)項において、前記圧縮空気供給部をエアタンクによって構成し、前記電
力供給部をバッテリーによって構成する切離方法(請求項9)。
【0025】
(12)上記(7)から(11)項において、前記ベース部を常に水上に配置する切離方法(請求項10)。
そして、(7)から(12)項に記載の切離方法は、各々、上記(1)から(6)項の切離装置を利用して実行されるものであり、上記(1)から(6)項の切離装置と同等の作用を奏するものである。