特許第6800816号(P6800816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800816希土類金属ドープされた石英ガラス、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800816
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】希土類金属ドープされた石英ガラス、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20201207BHJP
   C03C 3/06 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   C03B20/00 E
   C03C3/06
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-126465(P2017-126465)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-27882(P2018-27882A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2020年1月31日
(31)【優先権主張番号】16176590.4
(32)【優先日】2016年6月28日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハーディ バイアール
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン グリム
(72)【発明者】
【氏名】カイ シュースター
(72)【発明者】
【氏名】ヤン デリト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ラングナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート シェッツ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター レーマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス カイザー
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−230814(JP,A)
【文献】 特開平08−026758(JP,A)
【文献】 特開2015−127290(JP,A)
【文献】 特開2008−273798(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0115075(US,A1)
【文献】 特表2007−520408(JP,A)
【文献】 特開2012−140301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00−5/44
C03B 8/00−8/04
C03B 19/12−20/00
C03B 23/00−35/26
C03B 40/00−40/04
C03C 1/00−14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法工程:
(a)希土類金属でドープされた石英ガラスからなるブランク(1)を準備すること、および
(b)前記ブランク(1)を加熱区域(2)中で区域ごとに軟化させ、かつその際、軟化した区域(9)を回転軸(10)に沿ってねじることにより、前記ブランク(1)を均質化すること
を含む、希土類金属ドープされた石英ガラスの製造方法において、
前記ブランク(1)を、方法工程(b)による均質化の際に、酸素および/または塩素および/またはフッ素を含有する、酸化作用するプラズマ(5)を作用させながら軟化させることを特徴とする、希土類金属ドープされた石英ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記プラズマ(5)に酸素含有ガスを供給することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
マイクロ波大気圧プラズマまたは誘導結合プラズマを生成することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記プラズマ(5)に、水素不含および水素含有化合物不含であるプラズマガスを供給することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ブランク(1)の均質化は、前記ブランク(1)を互いに垂直に交わる2つの方向にねじる2つの均質化工程を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
希土類金属酸化物を0.002〜10mol%の濃度で含む希土類金属ドープされた石英ガラスにおいて、前記石英ガラスが、半径rを有する円柱形の測定試料で1/3×r〜1/2×rの測定長さにわたって、かつr=0から外側に向かって測定して、ドープされていない石英ガラスに関する平均屈折率差Δnを基準として、10%未満である屈折率における変動δΔnを示し、かつ前記石英ガラスは、10未満のTBCS値により表される気泡性を示し、かつ
前記石英ガラスは、300〜3000質量ppmの範囲の平均塩素含有率を示し、ここで、TBCS値は、100cm3の単位体積を基準として、全ての気泡の横断面積(mm2)の合計を表すことを特徴とする、希土類金属ドープされた石英ガラス。
【請求項7】
前記石英ガラスは、0.1〜100質量ppmの平均ヒドロキシル基含有率を示すことを特徴とする、請求項6記載の希土類金属ドープされた石英ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方法工程:
(a)希土類金属でドープされた石英ガラスからなるブランクを準備すること、および
(b)このブランクを加熱区域中で区域ごとに軟化させ、かつ軟化した区域を回転軸に沿ってねじることによりブランクを均質化すること
を含む、希土類金属ドープされた石英ガラスの製造方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、希土類金属酸化物を0.002〜10mol%の濃度で含む、希土類金属ドープされた石英ガラスに関する。
【0003】
希土類金属ドープされた石英ガラスは、例えば、半導体製造用の装備および部材、またはレーザ技術におけるファイバ増幅器またはファイバレーザの製造のために使用される。最初に挙げた使用分野においては、このドーパントは、ガラス素材のドライエッチング耐久性の改善を引き起こし、次に挙げた使用分野においては、ホスト材料の石英ガラス中でレーザビームの増幅の発生を引き起こす。
【0004】
希土類金属には、スカンジウム、イットリウム、およびランタン、およびランタノイドの元素が属する。
【0005】
先行技術
希土類金属または遷移金属でドープされたレーザ能動性の石英ガラスの製造は、独国特許出願公開第102004006017号明細書(DE 10 2004 006 017 A1)に記載されている。この場合、沈降反応によって作製されたナノスケールのSiO2粒子、および水溶性水和化合物の形の、ドーパント用の出発化合物を含む水性スラリーから出発する。造粒後に、まだ多孔質のドープされたSiO2顆粒を黒鉛型に注ぎ込み、ガス圧焼結によりガラス化して、ドープされた石英ガラスからなるブランクにする。黒鉛型を、まず減圧を保持しながら1600℃の焼結温度に加熱する。焼結温度に達した後に、炉内に5barの過圧を調節し、型をこの温度で約30分間保持する。引き続き室温に冷却する際に、この過圧を、400℃の温度までさらに維持する。
【0006】
こうして得られたSiO2ブランクを、引き続き三次元的に均質化する。この均質化は、複数の方向でのSiO2ブランクの混合により行われる。それにより、脈理フリー、および三次元で均質な屈折率の分布が達成される。
【0007】
特開2007−230814号公報(JP 2007-230814 A)は、粉末混合物を真空下またはホットプレスにより石英ガラスブランクに焼結し、引き続きこの石英ガラスブランクをねじりにより均質化する、希土類金属ドープされた石英ガラスの製造を記載している。1.2〜5質量%の希土類金属濃度、低い気泡含有率および低いOH含有率を示す希土類金属ドープされた石英ガラスが得られる。屈折率分布については、<5×10-6の範囲が挙げられている。
【0008】
国際公開第2005/054139号(WO 2005/054139 A1)には、希土類金属ドープされた、10ppm未満のOH含有率を示すレーザ能動性の石英ガラスからなるブランクを準備し、かつSiO2ブランクを三次元的に均質化することによる、レーザ能動性の石英ガラスからなる部材用のブランクの製造方法が記載されている。この均質化は、複数の方向でのSiO2ブランクの混合により行われる。それにより、脈理フリー、および三次元で均質な屈折率の分布が達成される。
【0009】
欧州特許出願公開第1894896号明細書(EP 1 894 896 A1)からは、混合粉末を含む石英粉末および合計で1〜20質量%の量の2種以上のドーピング元素の使用下で、レーザ能動性の、希土類金属でドープされた石英ガラスを製造し、ここで、このドーピング元素は、N、CおよびFからなる群から選択される第1のドーパントと、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、ランタノイドおよびアクチノイドからなる群から選択される第2のドーパントとを含むことは公知である。この混合粉末は、ヴェルヌーイ法を用いて還元作用する雰囲気下で溶融させて、石英ガラスブランクにされる。視覚的に、ガラス100cm3の体積中で、5mm2の合計断面積を示す気泡が確認でき、かつ可視光についての内部透過率は80%/cmである。
【0010】
米国特許出願公開第2005/0272588号明細書(US 2005/0272588 A1)には、ウェハホルダ用の石英ガラスが挙げられている。フッ素含有のエッチングガスに対するプラズマ耐久性を高めるために、石英ガラスを金属酸化物で0.1〜20質量%の濃度でドーピングすることが提案され、ここで、第1のドーパントは、周期表の3B族から選択されていて、かつ第2のドーパントは、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、ランタニドまたはアクチノイドの群から選択されている。アルゴン雰囲気下でのホットプレスによって、気泡含有率を低減することができるため、ガラス100cm3当たり100mm2未満の合計断面積が生じる。
【0011】
技術的課題設定
熱間均質化は、通常では、ドープされた石英ガラスをガラス旋盤でねじることにより行われ、ここで、石英ガラス体が取り付けられている主軸台を異なる速度で回転させる。過去には、この均質化は、ドープされた石英ガラスを酸素過剰下に水素酸素バーナーを用いて均質化するかまたはねじるように実施し、ここで、ドープされた石英ガラスがよく混合された。
【0012】
しかしながら、いくつかの希土類金属の場合、石英ガラスの変色が観察され、これは、化学組成の予見不能でかつ望ましくない変化、または場合によってはドーパントの不均一な分布を示唆する。
【0013】
したがって、本発明の基礎となる課題は、再現可能な特性を示す希土類金属ドープされた石英ガラスの製造を保証する、改良した方法を提供することである。
【0014】
さらに、本発明の基礎となる課題は、屈折率において僅かな変動を示し、さらに化学特性および電気特性の高い均一性により優れている、希土類金属ドープされた石英ガラスを提供することである。
【0015】
発明の一般的な記載
方法に関して、この課題は、冒頭に挙げられた種類の方法を基準として、本発明により、ブランクを、方法工程(b)による均質化の際に、酸化作用するプラズマまたは中性のプラズマを作用させながら軟化させることにより解決される。
【0016】
本発明による方法は、天然由来の、好ましくは合成により製造したSiO2原料を、ドーパントによりドープされている粉末の形で、またはドーパントの微粉末と混合された粉末の形で使用して希土類金属ドープされた石英ガラスを製造するために利用する。ドーパント濃度は、一般に、0.01〜10mol%の範囲にある。
【0017】
希土類金属でドープされたSiO2原料は、多孔質の中間生成物に加工され、この場合、機械的または熱的に予備緻密化された圧粉体またはグリーンボディとして存在する;しかしながらこのSiO2原料は、SiO2原料の粒子または顆粒からなる緩い床(lose Schuettung)を形成してもよい。
【0018】
多孔質の予備緻密化されたまたは粒子状の中間生成物の焼結は、例えば、被覆管中での焼結によるかまたは例えば焼結型中でのガス圧焼結によって行われる。ガス圧焼結型は、通常では、黒鉛からなる部分を含むか、または黒鉛からなり、これは、ガス圧焼結の際に、希土類金属およびケイ素に対して還元作用する溶融雰囲気を引き起こす。この焼結プロセスの成果物は、程度に差はあるが透明なドープされた石英ガラスからなるブランクである。焼結雰囲気の「還元作用」は、化学量論により定義された酸化状態の場合よりも酸素含有率が低いブランクを生じることに現れる。この酸素含有率を、以後、「化学量論的に不足する酸素含有率」といい、かつドープされた石英ガラスの対応する酸化状態を「還元された酸化度」という。
【0019】
還元作用する焼結条件のために化学反応が生じ、かつ還元された酸化度を示す成分の領域的な富化が生じ、かつ屈折率変動が生じ、これが石英ガラス中の高められた散乱を引き起こしかつそれにより透過率を低下させる。
【0020】
還元作用する雰囲気は、殊に希土類イオンの原子価(Valenz)に影響を及ぼすことができる。例えば、Ybによるドーピングの際に、イッテルビウムイオンの原子価は、Yb3+の有意な割合がYb2+に還元されていてよい。Yb2+割合により、ガラスは黄色がかった変色が現れる。
【0021】
希土類ドープされた石英ガラスからなるブランクは、引き続き、酸化作用するプラズマの作用下で熱的機械的負荷にかけられる。この処理を、以後、「プラズマ均質化」ともいう。このために、ブランクを、熱プラズマを生成するために少なくとも1つのプラズマ加熱装置が備え付けられている回転装置、例えばガラス旋盤に取り付ける。このプラズマ加熱装置に、希土類金属およびケイ素に対して酸化作用するプラズマを生成するために適しているプラズマガスを供給される。両側のブランクホルダの互いに異なる回転速度により、プラズマの作用領域内で、ねじれ領域が生じ、このねじれ領域内でガラスの混合が行われる。
【0022】
プラズマの「酸化作用」は、ドープされた石英ガラスの酸化度が、均質化プロセスの後に全体で、均質化プロセス以前よりも高くなることを生じさせる。この酸化作用は、希土類金属およびケイ素に対して酸化作用する1種の成分により、または複数種の酸化作用する成分によりプラズマガス中で作り出される。酸化作用する成分には、酸素、塩素およびフッ素が属する。最も簡単でかつ好ましい場合には、プラズマに酸素含有ガスまたは、例えば酸素または空気のようなガス混合物が供給される。
【0023】
「中性のプラズマ」は、ブランクに酸化作用も還元作用もしない。この中性のプラズマは、ドープされた石英ガラスの酸化度が、均質化の後に、均質化以前と同じであることを生じさせる。希土類金属およびケイ素に対して酸化作用も還元作用も発揮しない中性プラズマガスには、窒素およびアルゴンおよびヘリウムが属することができる。
【0024】
酸化作用するプラズマまたは中性のプラズマの作用下での本発明による均質化により、次の作用が同時に達成される:
1. ガス圧焼結後にブランク中に存在する屈折率変動は、ガラスの機械的混合により軽減される。ドープされた石英ガラス中の、屈折率の相違による散乱中心は最小化され、かつ光学的透過率が高められる。
【0025】
2. 希土類金属の場合に、通常では、少なくとも2の酸化数が出現することができる。この種の「多価イオン」は、頻繁に、可視波長領域およびUV波長領域において強い吸収帯を示す。
【0026】
最も高い酸化数で存在しない希土類金属は、以後、「還元された化学種」の概念でまとめられる。
【0027】
プラズマは、部分的にまたは完全に、極めて反応性の、遊離した正または負に帯電した粒子(イオン、電子、ラジカル)からなる。ねじることにより、継続的に新たな表面が生じるため、ガラスバルクは次第にプラズマの酸化作用に曝される。その結果、還元された化学種は、少なくとも部分的に酸化される。したがって、この種のプラズマガスは、均質化後の石英ガラスの酸化度および電子工学特性に影響を及ぼす。還元された化学種の場合による望ましくない電子工学特性は、低減されるかまたは排除される。例えば、二価の形のイッテルビウムイオン(Yb2+)は、レーザプロセスに寄与しないので、このイッテルビウムイオンはこの状態で、イッテルビウムイオンの励起された寿命の低減、またはレーザガラスのレーザ効率の減少を引き起こす。三価の状態(Yb3+)に酸化させることにより、この欠点は排除される。
【0028】
還元された化学種は、ガラスの屈折率に作用することができる。場合により、この酸化処理により、屈折率の相違の割合も、それに伴って生じる散乱作用も排除または低減される。
【0029】
3. 合成石英の製造の場合に、一般的に、塩素含有出発物質、例えばクロロシランまたはクロロアルキルシランが使用される。沈降によって生じるケイ酸の場合であっても、その溶解度のために、頻繁に塩素含有の出発物質が使用される。さらに、石英ガラスブランクの製造用のSiO2出発材料および粒子状のまたは多孔質の半製品は、通常では、不純物およびヒドロキシル基を排除するために、塩素またはHClの使用下で処理される。したがって、合成により製造された石英ガラスは、頻繁に一定量の塩素を含有する。この塩素不純物は、ブランク中で、および引き続く熱間プロセスにおいて、気泡形成を引き起こし、希土類ドープされた石英ガラスのいくつかの適用の場合に望ましくない作用を及ぼす。塩素不純物の一部は、塩素がガラス構造内に化学結合している場合であっても、酸化作用するプラズマ中での熱的機械的混合により排除されることが判明した。殊に、塩素集中先端部は排除され、かつ部材バルクにわたる塩素濃度の均一化が達成される。
【0030】
プラズマ加熱装置として、例えばアークバーナーが挙げられる。しかしながら、マイクロ波大気圧プラズマまたは誘導結合プラズマを生成する場合が特別であることが実証された。
【0031】
大気圧プラズマは大気圧で点火され、したがって、低圧プラズマまたは高圧プラズマとは反対に、設定された圧力水準を維持するための耐圧容器を必要としない。マイクロ波誘導プラズマのための発生装置は、コンパクトでありかつ低コストである。それに対して、誘導結合プラズマを用いて、比較的高い加熱出力が達成可能である。
【0032】
好ましくは、プラズマに、水素および水素含有化合物を含んでいないプラズマガスが供給される。
【0033】
水素は、希土類金属に対して還元性に作用し、かつ中性の作用を妨げるか、またはプラズマの望ましい酸化作用を低減させる。したがって、理想的な場合に、プラズマに供給されるプラズマガスは、水素についての名目上の供給源を含まない。
【0034】
屈折率分布の特に高い均質性および還元した化学種の排除に関して、ブランクの均質化が、ブランクを互いに垂直に交わる2つの方向にねじる2つの均質化工程を含む変法が好ましい。
【0035】
互いに垂直に交わる2つの方向へのブランクの2つの連続する混合により、全ての空間方向で均質化が達成される。この「三次元的均質化」により、脈理フリーおよび屈折率の均質な分布が全ての方向で達成される。
【0036】
石英ガラス体の三次元的均質化は、欧州特許第0673888号明細書(EP 0 673 888 B1)に記載されている。これは、均質性、気泡不含および酸化度に関して特に高い基準値に役立つが、しかしながら高い時間消費および高いエネルギーコストを必要とする。
【0037】
希土類金属酸化物を0.002〜10mol%の濃度で含み、ドープされていない石英ガラスに関する平均屈折率差Δnを基準として、10%未満の屈折率における変動δΔnを示し、かつ10未満のTBCS値により表される気泡性(Blasigkeit)を示す希土類金属ドープされた石英ガラスを作製する方法様式が好ましく、この場合、さらに、特に好ましくは300〜3000質量ppmの範囲内の平均塩素含有率を示す希土類金属ドープされた石英ガラスが作製される。
【0038】
この方法様式は、次に、本発明による希土類金属ドープされた石英ガラスを参照して詳細に説明される。
【0039】
希土類金属ドープされた石英ガラスに関して、上述の課題は、冒頭に記載された種類のガラスから出発して本発明の場合に、希土類金属ドープされた石英ガラスが、ドープされていない石英ガラスに関する平均屈折率差Δnを基準として、10%未満の範囲内にある屈折率における変動δΔnを示し、かつ10未満のTBCS値(total bubble cross section)により表される気泡性を示すことにより解決される。
【0040】
本発明による希土類金属ドープされた石英ガラスは、屈折率の均質な分布および同時に僅かな気泡性により優れている。屈折率の均質な分布は、尺度数δΔn/Δnについての低い値で現れ、この場合、最大屈折率差δΔnを、測定長さにわたり、ドープされていない石英ガラスに関する平均屈折率Δnに対して標準化されている。この尺度数は、10%未満である。
【0041】
希土類金属ドープされた石英ガラスの気泡性についての尺度として、いわゆるTBCS値が参照される。このTBCS値は、100cm3の単位体積を基準とした全ての気泡の横断面積(mm2)の合計を表す。0.5未満のTBCS値の場合、ガラスは、ほぼ「気泡不含」である。
【0042】
希土類金属ドープされた石英ガラスは、本発明による上述の方法により製造可能である。
【0043】
この希土類金属ドープされた石英ガラスは、好ましくは0.1〜100質量ppmの平均ヒドロキシル基含有率を示し、かつ好ましくは300〜3000質量ppmの範囲の平均塩素含有率を示す。
【0044】
希土類金属ドープされた石英ガラスからなる部材は、例えばレーザ能動性またはレーザ受動性であり、レーザ技術において使用されるか、またはこの部材は、半導体製造において、腐食作用する環境中での使用が予定されている。これらの適用の多くにとって、極めて低いヒドロキシル基含有率が望ましく;好ましくはこのヒドロキシル基含有率は、本発明による希土類金属ドープされた石英ガラスの場合、3質量ppm未満である。
【0045】
塩素は、石英ガラスの屈折率を低減する。光ファイバのコア用に希土類金属ドープされた石英ガラスを使用する場合、低減された屈折率が、ファイバの比較的小さな開口数(NA)を生じさせ、これは多くのレーザ適用のために望ましい、というのもこれによりファイバの入射特性および出射特性、ならびにビーム品質が改善されるためである。殊に、レーザビームは、より良好に集束することができ、これはレーザと照射されるべき物品との間のより大きな作業距離を可能にする。このことから、平均塩素含有率について、300質量ppmの下限が生じる。他方で、塩素は、後続する熱間プロセス工程で気泡形成を引き起こしかねない。石英ガラス中の塩素は、ガラス構造の欠陥形成に寄与することがあることも公知であり、この欠陥形成は、殊に高エネルギーUV線を伴う使用の場合に時間と共に増大する吸収で現れ、かつこれは「ソラリゼーション」ともいわれる。このことから、平均塩素含有率について、3000質量ppmの上限が生じる。
【0046】
合成により製造された石英ガラス中の300〜3000質量ppmの平均塩素含有率は、例えばおよび好ましくは、合成石英ガラスの製造時に塩素含有出発物質、例えばクロロシランまたはクロロアルキルシランを使用することにより、ならびに/または、不純物およびヒドロキシル基を排除するために合成により製造された石英ガラスからなる多孔質の半製品を塩素またはHClの使用下で処理することにより生じる。この場合、合成により製造された石英ガラス中に、3000質量ppmを超える平均塩素含有率が生じ;例えば5000質量ppm以上の平均塩素含有率が生じる。この塩素処理は、酸化作用するプラズマ中での上述の熱的機械的混合による、プラズマ使用下での均質化により、300〜3000質量ppmの範囲の平均値に低減され、かつこの場合に同時に混合されたガラスバルクにわたる塩素濃度の均一化が達成される。
【0047】
定義および測定方法
先の記載ならびに測定方法の個別の方法工程および概念を、次に補足的に定義する。この定義は、本発明の明細書の構成要素である。次の定義の1つと、残りの記載との間に内容的な矛盾がある場合には、明細書内での言及が優先される。
【0048】
石英ガラス
石英ガラスとは、ここでは、少なくとも90mol%のSiO2割合を示す、高ケイ酸含有ガラスであると解釈される。
【0049】
顆粒
構造化造粒と、圧縮造粒と、かつ方法技術的に湿式造粒法と、乾式造粒法と、凍結造粒法とに区別される。公知の方法は、造粒皿中での転動造粒、噴霧造粒、遠心霧化、流動層造粒、造粒ミルを使用した造粒法、圧縮、ロールプレス、ブリケット化、フレーク製造または押出である。
【0050】
造粒の際に、SiO2一次粒子の集合による、離散した大きな凝集体が形成され、ここで、この凝集体は、「SiO2造粒粒子」または単に「造粒粒子」ともいわれる。この全体で、この造粒粒子は、「SiO2顆粒」を形成する。
【0051】
清浄化
この顆粒または顆粒から製造された圧粉体は、一般に、焼結の前に清浄化される。主要な不純物は、残留水(OH基)、炭素含有化合物、遷移金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属であり、これら不純物は投入材料に由来するかまたは加工により導入される。純粋な投入材料の使用により既に、およびクリーンルーム環境下での相応する装置および加工により、より低い不純物含有率を達成することができる。純度に関するさらに高い要求を満たすために、顆粒または圧粉体を、高い温度(1200℃まで)で、塩素含有および酸素含有の雰囲気下で処理することができる。この場合、残留する水は蒸発され、有機材料はCOおよびCO2に還元され、多くの金属(例えば鉄および銅)は、揮発性の塩素含有化合物に変換することができる。
【0052】
焼結/圧縮およびガラス化/溶融
「焼結」または「圧縮」によって、ここでは、SiO2顆粒を1100℃より高い高めた温度で、動的炉(例えば回転管炉)中でまたは静的炉中で処理する方法工程が表される。この場合、比表面積(BET)は低減されるが、それに対して嵩密度および粒子サイズは、造粒粒子の凝集によって増大することができる。
【0053】
「ガラス化」または「溶融」の間に、この予備圧縮され、焼結されたSiO2顆粒は、石英ガラス体の形成下にガラス化される。
【0054】
真空/減圧
ガス圧焼結プロセスは、中間生成物を「真空」下で加熱する減圧期間を含む。減圧は、ガスの絶対圧として述べられる。真空とは、2mbar未満のガスの絶対圧であると解釈される。
【0055】
ヒドロキシル基(OH基)の濃度の測定
この測定は、D.M. DoddおよびD.B. Fraser, 「Optical determination of OH in fused silica」, Journal of Applied Physics, Vol. 37(1966), p. 3911の方法に基づき行われる。
【0056】
成分の半径方向の濃度プロファイルの測定および塩素濃度の平均値の算出
希土類金属ドープされた石英ガラスの成分、特にその中に含まれる希土類金属および塩素についての濃度プロファイルの測定は、電子線微小分析(ESMA)と組み合わせた波長分散型蛍光X線分析(RDX)により測定試料で2mmの長さにわたり、0.01mmの測定間隔で行われる。この場合、測定値は、測定長さ=1mmで、できる限り正確に測定試料の中心点におかれる。塩素濃度の平均値は、全ての測定値の算術平均として得られる。
【0057】
屈折率の変動(δΔn)の測定
屈折率プロファイルの測定は、York社の市販のプロファイルアナライザ「P104」により行われる。屈折率プロファイルから、平均屈折率Δnを、ドープされていない石英ガラスの屈折率差として算出する。最大屈折率変動δΔnおよび屈折率変動についての尺度数δΔn/Δnの測定の際のフリンジ効果を最小化するために、屈折率プロファイルの評価は、1/3×r〜1/2×rの測定長さにわたり行われ、ここでr=円柱形の測定試料の半径(試料中心のゼロ点から外側に測定)である。屈折率変動についての尺度数δΔn/Δnは、ドープされていない石英ガラスに関する平均屈折率差Δnを基準として、測定長さにわたる最大屈折率差δΔnとして得られる。Δnに関する標準化は、最大屈折率変動δΔnが、一般に、平均屈折率Δnと共に増加するという状況が考慮される。
【0058】
気泡性の測定
TBCS値(英語:Total Bubble Cross Section)は、100cm3の単位体積を基準として、試料内の全ての気泡の全体横断面積(mm2)を表す。この値は、気泡を視覚的に検知し、その気泡横断面積を加算することにより算出され、この場合、0.08mm未満の直径を示す気泡は検知されない。
【0059】
実施例
次に、本発明を、実施例および図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】プラズマ均質化のための熱的機械的負荷プロセスを図式的に示す図。
図2】均質化前および後のYb−Al−Fドープされた石英ガラス試料の屈折率プロファイルを示すグラフ。
図3図4の両方の減衰スペクトルが測定された円板状試料の写真。
図4図2に示した部分均質化された試料の減衰スペクトルを示すグラフ。
図5】プラズマ均質化前および後の酸化アルミニウムについてのWDX分布プロファイルの比較のためのグラフ。
図6】プラズマ均質化前および後の酸化イットリウムについてのWDX分布プロファイルの比較のためのグラフ。
図7】プラズマ均質化前および後の酸化ケイ素についてのWDX分布プロファイルの比較のためのグラフ。
図8】プラズマ均質化前および後の塩素についてのWDX分布プロファイルの比較のためのグラフ。
【0061】
ドープされた石英ガラスからのロッド状の半製品の製造
10μmの平均粒子サイズを示す、離散した、合成により製造されたSiO2粒子からなる純水中のスラリーを製造する。37.4%の残留水分を示すスラリー285.7gの量を、純水1000mlで希釈する。75mlの量での濃アンモニア溶液の添加により、14のpH値を調節する。このアルカリ性懸濁液を均質化した。Yb23およびAl23でドープされた石英ガラスの製造のために、純水400ml中のAlCl3およびYbCl3(モル比4:1)からなるドーパント水溶液を並行して製造する。これらの塩化物の代わりに、例えば有機化合物、窒化物またはフッ化物のような他の出発物質を使用してもよい。
【0062】
攪拌により運動させた懸濁液に、ドーパント溶液を、噴霧の形で、65分間の期間の間に供給する。噴霧を作り出すために、ドーパント溶液を噴霧ノズルで霧化し、この場合、2barの作動圧および0.8l/hの流量を調節する。こうして作り出された噴霧は、10μm〜40μmの平均直径を示す液滴を含む。懸濁液の高いpH値のために、両方のドーパントの、Al(OH)3およびYb(OH)3の形の水酸化物の直接の混合沈殿が生じる。こうして形成された固体粒子は、SiO2粒子の存在する表面に吸着し、かつそれにより固定されて、固体粒子の凝結または堆積を妨げる。このようにして、スラリー中に、2mol%のAlおよび0.5mol%のYb(懸濁液のSi含有率を基準として)のドーパント濃度が調節される。引き続き、ドーパントが添加されたスラリーを、さらに2時間攪拌により均質化する。この手順によって、最適に均質にドープされたSiO2スラリーを得ることが保証される。
【0063】
ドープされたSiO2スラリーを凍結させ、いわゆる凍結造粒によりさらに顆粒に加工する。この場合、融解後に得られる顆粒スラッジは、複数回純水で洗浄し、それぞれ余剰の水を傾瀉する。
【0064】
引き続き、アンモニアを除去しかつ清浄化した顆粒スラッジを400℃の温度で6時間乾燥させる。乾燥した顆粒を、プラスチック型内に溶封し、400barでアイソスタティックプレスする。
【0065】
こうして製造された顆粒圧粉体を、ヘリウムパージしながら加熱し、その後約8時間、塩素含有雰囲気中で約900℃で処理する。それにより、不純物は圧粉体から除去され、かつヒドロキシル基含有率は、約3質量ppmに低減される。塩素含有率は、高温での酸素含有雰囲気下での後処理により低下させることができる。ヒドロキシル基および塩素に関する低い濃度は、気泡不含の焼結を容易にする。
【0066】
清浄化された顆粒圧粉体は、直径30mmおよび長さ100mmを示す円柱形を示す。この平均密度は、ドープされた石英ガラスの密度の約45%である。この圧粉体は中間製品であり、かつガス圧焼結プロセスで溶融して、ドープされた透明な石英ガラスからなる部材にされる。
【0067】
ガス圧焼結プロセスは、黒鉛からなる排気可能な焼結型を備えたガス圧焼結炉中で実施される。焼結型の内部空間は、円柱形に形成されていて、かつ底および断面が環状の側壁により区切られている。
【0068】
部分圧縮された焼結体を、ガス圧焼結により黒鉛型中で1700℃でガラス化する。この場合、この型を、まず減圧を維持しながら1700℃の焼結温度に加熱する。この焼結温度に達した後に、炉内に15barの加圧を調節し、型をこの温度で約30分間保持する。引き続く室温への冷却の際に、400℃の温度まで加圧をさらに維持する。室温に冷却した後、石英ガラスブロックを取り出し、長さ20cmおよび直径15mmを示すロッドをくり抜く。
【0069】
酸化作用するプラズマを用いた熱的機械的均質化
ロッド状の半製品を、引き続き熱的機械的均質化(ねじり)および希土類金属ドープされた石英ガラスからなる円柱の形成により均質化する。この加工プロセスは、図1に図式的に示されている。このため、ロッド状の半製品1の端面側の端部に、ドープされていない石英ガラスからなる2つの保持ロッド3をプラズマバーナーで溶接する。この保持ロッド3を、ガラス旋盤の主軸6、7に取り付ける。このガラス旋盤にはプラズマバーナー2を備え付けられていて、このプラズマバーナー2に、プラズマガスとして純酸素が供給される。プラズマバーナー2は、大気圧下で点火され、かつケイ素および希土類金属に対して酸化作用するプラズマ火炎5を形成する。プラズマは、2.45GHzの周波数のマイクロ波励起により、6000ワットの出力で励起される。
【0070】
プラズマ火炎5は、ガラス旋盤に取り付けられた半製品1に沿って案内され、かつここでこの半製品1は、局所的に2,000℃を超えるまで加熱される。ガラス旋盤の両方の主軸9、10の回転速度(ω1、ω2)が等しくないことにより、ねじり範囲9が生じ、このねじり範囲9はプラズマ火炎5の加熱領域内に存在する。このねじり範囲9内で、ガラスの混合、およびそれにより均質化が行われる。プラズマバーナー2は、半製品1に沿って低速で逆方向に運動し(例えば方向矢印8により示唆されている)、かつこの場合、ロッド状の半製品1は領域ごとにその長軸10を中心としてねじられ、かつそれにより軟化したガラス材料は半製品の全体の長さにわたって集中的に混合される。このようにして、直径約15mmおよび長さ約100mmを示すガラス円柱が得られる。
【0071】
酸化作用するマイクロ波酸素大気圧プラズマ5により、希土類金属ドープされた石英ガラス中の塩素および還元された化学種の割合は低減される。これは、ガラスの脱色によって現れる。
【0072】
均質化された石英ガラスからなるロッドは、レーザファイバ用のプリフォームの製造のためのコアロッドとして使用された。このために、プラズマ被覆プロセスによって、HF溶液中でのエッチングによって予め清浄化されたコアロッド上にフッ素ドープされた石英ガラスをクラッドガラスとして施し、こうしてレーザファイバプリフォームを製造した。このプリフォームを、引き続き、線引き塔内でレーザファイバに後続加工した。こうして得られたレーザファイバは、レーザ能動性を示した。
【0073】
屈折率の変動を測定するために、均質化されたガラス円柱から、10mmの厚みを示す円板状の測定試料を切り出す。
【0074】
図2は、Yb−Al−Fドープされた石英ガラス試料の、均質化前(A1)および均質化後(A2)の典型的な屈折率プロファイルを示す。y軸には屈折率差Δn(×10-3)(ドープされていない石英ガラスに対する差の値として)が、半径r(mmで表す;同じ半径に標準化)に対してプロットされている。均質化前(屈折率プロファイルA1)では、明らかな屈折率変動が示されている。均質化後(屈折率プロファイルA2)では、屈折率変動は明らかに低減されていることが確認可能である。1/3×r〜1/2×r(試料中心の点0から外側に向かって測定)の測定長さにわたる屈折率プロファイル(Δn)の評価は、0.43×10-3の最大屈折率差をもたらし、これは同時に屈折率変動δΔnに相当する。Δnに関して標準化された比の値δΔn/Δnは、ここでは7%である。これと比べて、均質化前の比の値δΔn/Δnは、20%である。これは、均質化された試料の改善された透明性および低減された散乱により視覚的にも現れる。
【0075】
試料の縁部領域でそれぞれ観察された屈折率プロファイルの丸みは、プロファイルを算定するアルゴリズムのアーティファクトによるものである。この丸みは、現実のものではない。中心領域において増大する屈折率変動も同様に、アーティファクトによるものである。このアーティファクトがあまり優位を占めていない領域では、均質化されたロッド内のプロファイル測定に基づき、短走行距離で(ここでは、半径方向位置−3mmから−2mmまで測定して)、0.3×10-3(標準偏差0.1×10-3)の屈折率変動δΔnが達成される。
【0076】
図3の測定試料の写真は、試料の縁部領域がより高い剪断のため試料中心よりも外側で既により強く均質化されていて、試料中心は比較的不均一であり、かつ高められた黄色の色調を示す。このプラズマ均質化は、この場合、時間に依存する拡散プロセスによって共に決定されるプラズマの酸化作用がねじり領域の中心に到達する前に中断された。
【0077】
図4のグラフは、部分的に均質化されただけのYb−Alドープされた石英ガラス試料について測定した250〜3500nmの波長領域でのスペクトル吸収の推移を示す。y軸には、吸収A(標準化された単位で)がプロットされている。吸収の推移B1は、測定試料のまだ均質化されていない中心に分類され、吸収の推移B2は、均質化された縁部領域に分類される。縁部領域において散乱中心の有意な低減によりおよび材料均質性の改善により、均質化された試料領域の所属する吸収スペクトルB2中で、基礎減衰(散乱割合)は低下し、ここで、スペクトル中の散乱割合を取り去る場合には、個々の試料領域の間でのイッテルビウム濃度の有意な変化はない。したがって、プラズマ均質化により、Yb3+/Yb2+平衡は、Yb3+が優位になるようにシフトする。レーザ効果に寄与しない二価のYb2+イオンによる吸収は解消され、試料の黄色の色調は均質化された縁部領域において消失し、かつ均質化された試料領域の吸収の推移B2は、青色のスペクトル領域で低下し、それにより透過率は改善されることを認識することができる。
【0078】
したがって、プラズマ均質化により、Yb3+/Yb2+平衡は、Yb3+が優位になるようにシフトすることができ、かつこのプラズマ均質化は、酸素雰囲気中での加熱によるガラスの後処理と同様に作用するが、酸化作用する雰囲気にねじる際に継続して新たに作り出された表面が曝されることにより本質的により効果的である。本発明によるプラズマ均質化は、異なるレベルでの希土類金属ドープされた石英の均質化、つまり一方で組成における相違の排除およびガラスの屈折率の統一を引き起こす機械的混合、ならびに他方でガラスの電気特性および電子配置により影響を受けることが可能な屈折率の部分の変更および統一を引き起こす化学処理を実現する。
【0079】
プラズマ均質化の前のガラスの言及された黄色の色調は、Yb2+がYb3+と比べて青色スペクトル領域の付加的吸収帯を示すことに起因する。単に視覚的に、プラズマ均質化によるYb3+/Yb2+平衡のシフトは、ガラス中での黄色の色調の低下により観察することができる。
【0080】
測定試料は、僅かにだけ認識可能な気泡が示された。コアロッドおよびプリフォームの形の複数の典型的な測定試料の視覚的評価の結果は、表1にまとめられている。
【表1】
【0081】
これらの全ての測定試料において、気泡性は、10のTBCS値により表されるより気泡性も低い。
【0082】
顆粒圧粉体の清浄化により予め設定されたヒドロキシル基含有率は、引き続く処理に基づいて増加しない。図5〜8から明白なように、この均質化は、化学組成に関して際立っている。これらのグラフは、それぞれ、プラズマ均質化の前およびプラズマ均質化の後の、希土類金属ドープされた石英ガラスの特別な成分の分布プロファイルを示す。これらの分布プロファイルは、電子線微小分析(ESMA、波長分散型X線分光法(WDX)に基づく)による。y軸には、それぞれのドーパント濃度(モル%または質量ppm)が、測定位置P(mm)にわたってプロットされている。測定長さは2mmである。
【0083】
図5のグラフは、プラズマ均質化の前(曲線C1)および後(曲線C2)のドーパントAl23の半径方向の濃度分布プロファイルを示し、かつ図6のグラフは、プラズマ均質化の前(曲線D1)および後(曲線D2)のドーパントYb23の半径方向の濃度分布プロファイルを示す。この両方の場合に、プラズマ均質化の後(曲線C2、D2)のプロファイル平滑化が際立つ。
【0084】
図7のグラフも、素材の主成分SiO2について、プラズマ均質化の前のプロファイル(曲線E1)と比べて、プラズマ均質化の後の半径方向の濃度分布プロファイル(曲線E2)の明らかな平滑化を示す。
【0085】
プラズマ均質化の前(曲線F1)および後(曲線F2)の、塩素の半径方向の分布プロファイルを示す図8のグラフから、塩素濃度は、一方でプラズマ均質化により、当初の値のほぼ1/4に明らかに低減され、かつ他方で塩素濃度の均質な分布が生じることが明白である。
【0086】
プラズマ均質化のこの作用は、とりわけ望ましい、というのも、塩素濃度の平均値は、ガラスの屈折率とUV線耐久性とに関する適切な妥協であることが判明している約1500質量ppmの値に調節され、かつ他方で、曲線F1が試料中心で示すような塩素に対する不必要な濃度最大値は回避されるためである。この図中に示された塩素濃度値は、純粋な石英ガラスが参照され;ドーパントは考慮されていない。
【符号の説明】
【0087】
1 ロッド状半製品、 2 プラズマバーナー、 3 保持ロッド、 5 プラズマ火炎、 6 主軸、 7 主軸、 8 方向矢印、 9 ねじり範囲、 10 長軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8