(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
電気化学セルにおける電極の保護のための複合層を含む物品および方法が提供される。場合によっては、複合層は、ポリマー材料(例えば、ポリマー層)および該ポリマー材料に埋め込まれた多数の粒子よりなる。開示されている複合層は、例えば、電極のための保護層および/または電気化学セル内における任意の他の適切な構成要素として、電気化学セル(例えば、リチウム-イオウ電気化学セル)中に組み込まれ得る。ある特定の態様においては、リチウム金属またはリチウム金属合金よりなるアノードおよびポリマー材料および本明細書に記載の多数の粒子よりなる複合層を含む電極構造および/または電極構造の製造方法が提供される。
【0012】
充電式リチウム-イオウ(Li/S)バッテリーは、インターカレーション材料に基づいている現在のリチウムイオンバッテリー(LIB)が、エネルギー密度としてせいぜい200 Wh kg
−1程度までしか潜在的に提供できないので、長距離ドライブ(>300km)純電気自動車(PEV's)やプラグイン電気自動車(PHEV)にとって非常に将来性のある別の電源となると信じられている。この新規なタイプのバッテリーシステムは、非常により高いエネルギー密度があり、比較的高価である。イオウ(S
8)がリチウムスルフィド(Li
2S)へ完全に電気化学的に転換したとすると、理論エネルギー密度値は2500Wh kg
−1に達し、500〜600Wh kg
−1の実用値を有し得る。それ故、Li/Sバッテリーは、モバイルかつポータブル用途、特に高エネルギー用途用に研究されている。
【0013】
現在、急速な容量フェーディーングやイオウ利用の低減が、充電式システムとしてのLi/S使用の障害になっている。理論容量の約50%のみ、すなわち1672mAhg
−1の内の800mAhg
−1のみが使用できる。1つの理由が、「ポリスルフィドシャトル(polysulfide shuttle)」メカニズムであろう。元素イオウ分子は、1回目の放電プロセスの間に電子を受領し、徐々に高次から低次ポリスルフィドへ変換する。3イオウ原子(Li
2S
3)より少ない低級ポリスルフィドは、電解質に不溶性であり、不溶性かつ電子的非伝導性Li
2S
2へ続く還元ステップが阻害される。それ故、低い放電効率が、C/10より高い比率で観測される。加えて、ポリスルフィドは充電サイクル間、元素イオウに変形されない。最終ステップにおいてイオウに酸化される代わりに、高次ポリスルフィドが、それらが寄生性反応において低級ポリスルフィドへ元素リチウムにより還元されるアノードに徐々に拡散する。次に、溶解性の低級ポリスルフィドは、元のカソードに拡散し、「ポリスルフィドシャトル」を確立する。不溶性低級ポリスルフィドは電解質から沈殿し、アノード側に蓄積する。要約すると、該メカニズムは充電効率を減少させ、アノードおよびカソードの腐食の原因となっている。結果として、Li/Sバッテリーは、容量フェーディングおよびサイクル寿命不足を受けている。Li/Sバッテリーシステム技術の典型的な状態は、50−80サイクルの寿命を達成することができる。
【0014】
本明細書に記述されているような複合層を電気化学セルに取り込むことにより、例えば、ポリスルフィド(例えば、ポリスルフィドを含有する電解質に見いだされるような)とアノード(例えば、金属リチウム等のリチウムを含有するアノード)の電気活性材料との間に起こる化学反応を防止あるいは減少させ得る。本明細書に記述されているような複合層を使用すると、電気化学セル内部でのイオウの利用を高め、シャトル効果の減少あるいは除去、および/または電解質減耗の減少あるいは除去等、従来の保護層を上回るいくつかの利点が提供され得る。多数の粒子を含有する複合層(例えば、複合構造)は、本明細書においてより詳細に記述されているが、場合によっては、リチウムカチオンを選択的に通し、ポリスルフィドアニオンを通さず、電解質(例えば、液体電解質)に対してバリア(例えば、保護構造)として機能する。本明細書に記載されている複合層は、従来の保護層を凌ぎ、フレキシビリティー、機械的安定性、化学的安定性、および/または、例えばリチウムアノードと電解質との間のイオン伝導性を増大させる等のさらなる利点を提供し得る。例えば、薄くて均質なフィルム形態の保護層等の現存する保護層(例えば、セラミックベースのイオン伝導性層など)は、非常に薄く、もろく、操作、使用中に容易にひび割れを起こし、および/または、結果として、電解質および/またはポリスルフィドが、拡散する、および/またはアノード(例えば、リチウムを含有するアノード)の電気活性材料と反応するのを防止する十分なバリア特性を有していないという欠陥を含んでいる。対照的に、本明細書に記載されているような少なくとも一部分がポリマー材料中に埋め込まれている多数の粒子を含有している複合層は、フレキシビリティー(例えば、ポリマー材料の機械的特性の結果として)を増大させ、薄くて均質なフィルムの形態の現存する保護層に比べて、よりよいバリア特性になり得る。さらに、複合層中の粒子は、比較的高いイオン伝導性を有し得るので、記述されている複合層のイオン伝導性は、現存する保護層のそれに匹敵し得る。
【0015】
開示されている複合層は、例えば、1次バッテリーまたは、何度も充放電可能な2次バッテリー等の電気化学セルに組み込め得る。態様によっては、本明細書に記載されている材料、システム、および方法は、リチウムバッテリー(例えば、リチウム-イオウバッテリー)と協同して使用できる。本明細書に記載されている電気化学セルは、いろんな用途、例えば、自動車、コンピューター、パーソナルデジタルアシスタント、モバイルテレフォン、時計、ポータブルビデオカメラ、デジタルカメラ、サーモメータ―、カルキュレーター、ラップトップBIOS、コミュニケーション装置、またはリモートカーロック等の製造または操作等に採用し得る。
本明細書中の記述の多くはリチウム-イオウバッテリーに関係しているが、本明細書に記載されている複合層は、他のアルカリ金属ベースのバッテリー等、他のリチウムベースバッテリーに応用し得るということを理解されたい。
【0016】
図面に戻って、現開示の種々の態様を以下により詳細に記述する。図面に描かれているある特定の層は、お互いの上に直接配置されているが、ある特定の態様においては、描かれている層の間に他の中間層が存在してもよいということを理解すべきである。従って、本明細書に使用されているように、ある層が、他の層の、「上に配置されている」、「上に置かれている」、または「上にある」として言及されているとき、それは、直接に、その層上に配置されている、上へ置かれている、または、上にあるか、または中間層が存在していてもよい。対照的に、他の層の、「上に直接配置されている」、「と接触している」、「上に直接置かれている」、または「上に直接ある」層は、中間層が存在しないことを示している。
【0017】
図1Aは、電極構造10の1態様を描いている。電極構造は、電気活性層20および該電気活性層上に置かれている複合層を含んでいる。本明細書に記載されているように、複合層30は、保護層として使用され、電気活性層を(例えば、電解質中の電解質または種との反応から)保護し得る。複合層30は、態様によって、ポリマー材料40(例えば、ポリマー層)および多数の粒子50を含有し得る。態様によっては、該多数の粒子は該ポリマー材料中に埋め込まれている。この模式的態様に示されているように、複合層30は、電気活性層に隣接していてもよい第1の表面30’を有している。該多数の粒子は、場合によっては、第1の表面30’で電気活性層の少なくとも一部において接触していても、および/または埋め込まれていてもよい。ある特定の態様においては、多数の粒子の一部は、複合層の第1の表面で露出していてもよい(例えば、ポリマー材料40と接触せず、またその中に埋め込まれているものでもない)。例えば、多数の粒子の露出面50’は、ポリマー材料40と接触しておらず、また、その中に埋め込まれていない。さらにまたは代わりに、ある特定の態様においては、多数の粒子の一部は、複合層の第2の表面30”で露出していてもよい(例えば、ポリマー材料層40と接触しておらず、またその中に埋め込まれていない)。例えば、場合によっては、多数の粒子の露出表面50’は、ポリマー材料40に接触しておらず、またその中に埋め込まれていない。
【0018】
態様によっては、粒子はイオン伝導性(例えば、リチウムイオンに対して実質的に伝導性)であり、複合層を横切ってイオンを移送できるものであってもよい。複合層のポリマー材料もまたイオン伝導性であってもよいが、他の態様においては、該ポリマー材料(例えば、ポリマー層)は、実質的に非イオン伝導性(例えば、リチウムイオンに対して実質的に非導電性)である。有利には、複合層に対する非イオン伝導性ポリマー材料の使用は、例えば、電解質の存在下、イオン伝導性ポリマーに比べて、ポリマー材料の膨潤が減少する結果となり、そのことは、複合層のバリア特性を向上させ得る。
【0019】
態様によっては、電極構造10は、1以上のさらなる層を含むが、このようなさらなる層は任意であり、すべての態様に存在する必要はないことを理解されたい。例えば、ある特定の態様においては、電極構造10は、(例えば、第2の表面30”で)複合層30に隣接する電解質層60を含んでいる。このような態様によっては、粒子の一部は電解質層と接触していても、および/またはその中に埋め込まれていてもよい。例えば、場合によっては、粒子50の露出表面50”は、電解質層60と接触していてもよい。
【0020】
ある特定の態様において、電極構造10は、1以上のポリマー層よりなる。例えば、ポリマー材料は単一層または多層の形態であってもよい。場合によっては、該多層構造は、ポリマー層の少なくとも2つは異なっている、2以上のポリマー層を含むことができる。他のケースにおいては、該多層構造は、ポリマー層の少なくとも2つ、またはすべてが同じである、2以上のポリマー層を含むことができる。他の構成も可能である。
【0021】
本明細書に記載されているように、複合層は、多数の粒子およびポリマー材料(例えば、ポリマー層)を含有していてもよい。ある特定の態様においては、該粒子は、該ポリマー材料(例えば、ポリマー層)中に少なくとも部分的に埋め込まれていてもよい。
図1A模式的に示されているように、場合によっては、複数の粒子50が、該複合層の全厚さを越えて伸びていてもよい。例えば、場合によっては、該多数の粒子の一部は、該ポリマー材料(例えば、ポリマー層)の平均厚さより大きな平均最大断面寸法を有していてもよい。場合によっては、該多数の粒子の一部は、該ポリマー材料(例えば、ポリマー層)の平均厚さより小さな平均最大断面寸法を有していてもよい。例えば、
図1Bに模式的に示されているように、複数の粒子50は、ポリマー材料(例えば、ポリマー層)40の平均厚さより小さな平均最大断面寸法(例えば、長さ)を有している。すなわち、態様によっては、該多数の粒子の少なくとも一部が、該複合層の全平均厚さを越えて(
図1A)、あるいは、該複合層の平均厚さの一部分だけを越えて伸びていてもよい(
図1B)。
【0022】
態様によっては、複合物のポリマー材料(例えば、ポリマー層)の平均厚さより大きな平均最大断面寸法を有する粒子は、複合層の一方の側上の2つの材料間(例えば、電気活性材料と電解質材料の間)を直接的にイオンが移動することを容易にし得る。該粒子はこれらの材料の夫々と直接接触し得るからである。粒子がポリマー層の平均厚さ以下である最大断面寸法を有する態様においては、該粒子はお互いに直接接触し、該層を越えてイオン移動を可能にし得る。例えば、ある特定の態様においては、粒子の第1の部分(例えば、ポリマー材料の平均厚さより小さな平均厚さである平均最大断面寸法を有している)が、お互いに接触し複合層の厚さを越えて、例えば、電気活性材料と複合層に隣接する表面(例えば、電解質層)との間にイオン伝導性パスを形成している2以上の粒子(例えば、2つの粒子、3つの粒子、4つの粒子、5つの粒子)が存在するような該粒子の第2の部分に接触していてもよい。
【0023】
態様によっては、(例えば、複合層中の)多数の粒子の平均最大断面寸法は、例えば、100ミクロン以下、約50ミクロン以下、約25ミクロン以下、約10ミクロン以下、約5ミクロン以下、約2ミクロン以下、約1ミクロン以下、約800nm以下であってもよい。態様によっては、多数の粒子平均最大断面寸法は、約500nm以上、約800nm以上、約1ミクロン以上、約2ミクロン以上、約5ミクロン以上、約10ミクロン以上、約25ミクロン以上、約50ミクロン以上であってもよい。上記言及範囲の組合せも可能である(例えば、約100ミクロン未満かつ約50μmより大きい最大断面寸法)。
【0024】
多数の粒子の平均最大断面寸法は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により該粒子を映像化することにより測定され得る。画像は、多数の粒子の全体的寸法により、約10Xないし約100000Xの間の倍率で取得し得る。当業者であれば、サンプルの映像化のための適切な倍率を選択することができるであろう。多数の粒子の平均最大断面寸法は、各粒子の最長断面寸法を採り、該最長断面寸法を平均する(例えば、10個の粒子の最大断面寸法を平均する)ことにより決定することができる。ある特定の態様においては、(複合層中の)多数の粒子は、少なくとも約500nmの平均最小断面寸法を有し得る。例えば、態様によっては、多数の粒子の平均最小断面寸法は、少なくとも約500nm、少なくとも約800nm、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約2ミクロン、少なくとも約4ミクロン、少なくとも約6ミクロン、または少なくとも約8ミクロンであり得る。ある特定の態様においては、多数の粒子の平均最小断面寸法は、約10ミクロン以下、約8ミクロン以下、約6ミクロン以下、約4ミクロン以下、約2ミクロン以下、約1ミクロン以下、約800nm以下であり得る。上記で言及された範囲の組合せも可能である(例えば、約2μm未満であり、約500nmより大きい平均最小断面寸法)。
【0025】
態様によっては、多数の粒子の、平均最小断面寸法に対する平均最大断面寸法のアスペクト比は、例えば、1ないし200の範囲にわたり得る。ある特定の態様においては、多数の粒子の、平均最小断面寸法に対する平均最大断面寸法のアスペクト比は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、または150であり得る。態様によっては、多数の粒子の、平均最小断面寸法に対する平均最大断面寸法のアスペクト比は、200以下、150以下、100以下、75以下、50以下、30以下、15以下、10以下、5以下、3以下、または2以下であり得る。上記で言及した範囲の組合せも可能である。他のアスペクト比もまた可能である。
【0026】
態様によっては、多数の粒子の一部は電気活性層と直接接触している。すなわち、態様によっては、多数の粒子の一部分、または多数の粒子の各表面の一部は、電気活性層に接触している。この構成は、該粒子から電気活性材料へのイオン(例えば、金属イオンあるいはリチウムイオン)の直接的な移動を可能にしている。場合によっては、多数の粒子の一部は、電気活性層中に埋め込まれている。例えば、態様によっては、1以上の粒子の少なくとも約0.1容量%が電気活性層中に埋め込まれている。態様によっては、1以上の粒子の少なくとも約1容量%、少なくとも約5容量%、少なくとも約10容量%、または少なくとも20容量%が、電気活性層中に埋め込まれている。ある特定の態様においては、1以上の粒子の約50容量%以下、約30容量%以下、または約10容量%以下が、電気活性層中に埋め込まれている。上記で言及した範囲の組合せも可能である(例えば、約0.1容量%と約20容量%との間)。他の範囲もまた可能である。層中の粒子の容量パーセンテージを決定する方法は、当該分野で公知であり、態様によっては、複合層を切り裂き、例えば走査型電子顕微鏡で映像化することを含む。
【0027】
態様によっては、少なくともいくらかの該粒子は、少なくとも該粒子の一部表面上でポリマー材料と接触している。ある特定の態様においては、少なくともいくらかの該粒子は、ポリマー材料に実質的に囲まれている(例えば、ポリマー材料中に埋め込まれている)。
【0028】
ある特定の態様においては、該粒子の一部分は、複合層の第1の側および/または第2の側で露出していてもよい(例えば、どのようなポリマー材料と接触していなくてもよい)。例えば、
図1Aを再度参照すると、複数の粒子50およびポリマー材料40よりなる複合層30は、電気活性層20と接触している第1の表面30’および第1の表面30’と反対側にあり電気活性層に接触していない第2の表面30”を有し得る。この模式的な態様に示されているように、粒子50の露出表面50”は、第2の表面30”および表面50’で露出しており、表面50’は電気活性層と接触している、および/または電気活性層中に埋め込まれている。
【0029】
ある特定の態様においては、複合層の第2の表面は、電気化学セルのさらなる層(例えば、所望による電解質層60)と接触している。このような態様によっては、それぞれの多数の粒子の少なくとも一部は、複合層の第2の表面で露出している部分よりなる。ある特定の態様においては、それぞれの多数の粒子の少なくとも一部は、電気活性層と反対側の層(例えば、電解質層)と接触している部分よりなる。態様によっては、少なくともいくらかの多数の粒子は、各粒子について、複合層の第1の表面で電気活性層と直接接触している第1の部分、および複合層の第2の表面で露出している第2の部分よりなる。粒子の該第2の部分は、電解質材料(例えば、電解質層)と直接接触していてもよい。
【0030】
粒子の一部分が露出しているか、または複合層の表面(例えば、第1および/または第2の表面)で、さらなる材料(例えば、電解質)と接触している態様においては、粒子の任意の好適な量の容積が露出し得る。態様によっては、1以上の粒子の少なくとも約0.1容量%が、複合層の表面(例えば、第1および/または第2の表面)で露出していてもよい。態様によっては、1以上の粒子の少なくとも約1容量%、少なくとも約5容量%、または少なくとも約10容量%、または少なくとも20容量%が、複合層の表面(例えば、第1および/または第2の表面)で露出またはさらなる材料(例えば、電解質)と接触している。ある特定の態様においては、1以上の粒子の約50容量%以下、約30容量%以下、または約10容量%以下が、複合層の表面(例えば、第1および/または第2の表面)で露出またはさらなる材料(例えば、電解質)と接触している。上記で言及した範囲の組合せもまた可能である(例えば、約0.1容量%と約20容量%との間)。他の範囲もまた可能である。層中の粒子の容積パーセンテージを決定する方法は、当該分野で公知であり、態様によっては、複合層を切り裂き、例えば走査型電子顕微鏡あるいは走査トンネル顕微鏡で映像化することを含む。
【0031】
複合層中の粒子は、該層中で任意の好適な構成を持ち得る。ある特定の態様においては、多数の粒子の少なくとも一部は、複合層中で組織化(organized)されてもよい。例えば、粒子の少なくとも一部(例えば、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、および70%)を、実質的に一列に整列させてもよい(例えば、最長断面寸法の長さに沿って形成される軸が、2以上の粒子間で約10%を超えて異ならない)。態様によっては、多数の粒子の一部は、複合層に隣接する電気活性層の表面に対して実質的に直交して一列に整列される。ある特定の態様においては、多数の粒子の少なくとも一部(例えば、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、および70%)が、複合層内中で実質的に組織化されていない。層中での粒子の整列を測定する方法は、当該分野で公知であり、態様によっては、複合層を切り裂き、走査電子顕微鏡で映像化することを含む。さらに、本明細書に記載されているように、1以上の粒子は、複合層中の1以上のさらなる粒子と直接接触していてもよい。態様によっては、実質的に全ての粒子が、複合層におけると少なくとも1つの他の粒子と直接接触している。粒子の配置および配列は、態様によっては、複合層が、所望のイオン(例えば、リチウムイオン)の移動を許容しつつ、電解質中における電解質および/または種(例えば、ポリスルフィド種)が複合層を透過することを妨げることにより、それらの材料に対する保護層として働くことを可能とするように選択されてもよい。
【0032】
本明細書に記載されている複合層の粒子は、種々のタイプの材料で形成することができる。ある特定の態様においては、粒子が形成される材料は、イオン(例えば、リチウムイオン等の電気化学的に活性なイオン)が、該材料を通過することを可能とするが、電子が該材料を通過するのを実質的に妨げることを可能とするように選択され得る。こういった前後の脈絡の中で、「実質的に妨げる」とは、この態様において、材料が、電子の通過よりも少なくとも10倍リチウムイオン流れを可能とするということを意味している。粒子は、例えば、イオン伝導性材料(例えば、複合層の両方の側面上にある材料間でイオンの移動を容易にする)を含有していてもよい。有利には、このような粒子は、ある特定のアニオン(例えば、ポリスルフィドアニオン)を伝導しないが、特定のカチオン(例えば、リチウムカチオン)を伝導することができてもよく、および/または電気活性層にとって、電解質および/またはポリスルフィド種に対するバリアとして作用することができてもよい。
【0033】
態様によっては、粒子は、無機材料よりなる、および/または、無機材料で形成される。ある特定の態様においては、該無機材料はセラミック材料(例えば、ガラス、ガラス状セラミック材料)よりなる。好適なセラミック材料の例としては、それらに限定されるものではないが、酸化物(例えば、アルミニウムオキサイド、シリコンオキサイド、リチウムオキサイド、および/または、アルミニウム、シリコン、亜鉛、スズ、バナジウム、ジルコニウム、マグネシウム、インジウム、およびそれらの合金の窒化物および/またはオキシナイトライド(oxynitrides)、Li
10MP
2S
12(例えば、M=Sn、Ge、Si)、ガーネット、結晶またはガラススルファイド、ホスフェート、ペロブスカイト、アンチ−ペロブスカイト、他のイオン伝導性無機材料およびそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
態様によっては、複合層の粒子は、リチウムナイトライド、リチウムシリケート、リチウムボレート、リチウムアルミネート、リチウムホスフェート、リチウムリンオキシナイトライド、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィト゛、リチウムオキサイド(例えば、Li
2O、LiO、LiO
2、LiRO
2、(式中、Rは、希土類元素である)、リチウムランタンオキサイド、リチウムチタンオキサイド、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミのスルフィド、およびリチウムホスホスルフィド、オキシ−スルフィド(例えば、リチウムオキシ−スルフィド、)、およびそれらの組合せの1以上を含む材料よりなっていてもよい。態様によっては、多数の粒子は、Al
2O
3、ZrO
2、SiO
2、CeO
2、および/またはAl
2TiO
5よりなっていてもよい。材料の選択(例えば、セラミック)は、それらに限定されるわけではないが、セル中で使用される電解質およびアノードやカソードの特性を含み多数の要因に依存するであろう。
【0035】
態様によっては、複合層の粒子は、所望のイオン伝導性を有するように選択され得る。例えば、ある特定の態様においては、粒子は電気活性材料(例えば、リチウム)のイオンに対して伝導性であり得る。態様によっては、粒子は、少なくとも約10
−5 S/cmの平均イオン伝導性(例えば、リチウムイオン伝導性)を有していてもよい。ある特定の態様においては、複合層中の粒子の平均イオン伝導性(例えば、リチウムイオン伝導性等の金属イオン)は、少なくとも約10
−5 S/cm、少なくとも約10
−4 S/cm、少なくとも約10
−3 S/cm、少なくとも約10
−2 S/cm、少なくとも約10
−1 S/cmである。態様によっては、粒子の平均イオン伝導性は、約10
−1 S/cm未満、約10
−2 S/cm未満、約10
−3 S/cm未満、または約10
−4 S/cm未満である。上記で言及した範囲の組合せも可能である(例えば、約10
−5 S/cmと約10
−4 S/cmとの間のイオン伝導性)。他のイオン伝導性もまた可能である。伝導性は、室温(例えば、25℃)で測定し得る。
【0036】
態様によっては、粒子の平均イオン伝導性は、粒子を複合層に含ませる前に決定することができる。平均イオン伝導性は、3トン/cm
2までの圧力で2つの銅シリンダー間で該粒子を圧縮することにより測定することができる。ある特定の態様においては、平均イオン電導性(すなわち、平均抵抗率の逆数)は、1kHzで動作する導電性ブリッジ(すなわちインピーダンス測定回路)を用いて500kg/cm
2きざみで測定することができる。このような態様によっては、サンプルにおいて平均イオン電導性の変化が見られなくなるまで圧力を増加させる。
【0037】
ある特定の態様においては、複合層の粒子は、約10
−10 S/cm未満の電子伝導性を有し得る。例えば、態様によっては、粒子の電子伝導性は、約10
−11 S/cm以下、約10
−12 S/cm以下、約10
−13 S/cm以下、約10
−14 S/cm以下、約10
−15 S/cm以下、約10
−17 S/cm以下、または約10
−19 S/cm以下である。電子伝導性の他の値および範囲もまた可能である。
【0038】
ある特定の態様においては、複合層の粒子は、実質的に非多孔性である。例えば、態様によっては、粒子は、空気等の所望しない種が粒子内にトラップされ得る実質的な「デッドスペース」をなんら有していない。態様によっては、粒子の平均多孔率は、約10容量%未満、約5容量%未満、約2容量%未満、約1容量%未満、または約0.1容量%未満であり得る。態様によっては、粒子の平均多孔率は約0.01容量%と約0.1容量%の間、または約0.1容量%と約2容量%との間であり得る。
【0039】
平均多孔率は、例えば、水銀ポロシメーターを使用して測定可能である。簡単には、平均多孔率は、細孔中へ(例えば、液体と細孔との間の表面張力の反力に対抗する)液体(例えば、水銀)を押し込むのに要求される外圧を測定することにより決定することができる。当該分野の当業者であれば、選択された粒子に基づいて外圧の適切な範囲を選択することができるであろう。
【0040】
粒子が、電気化学セルの1以上の層と接触するときに化学的に安定である材料を含有することが有利となり得る。一般的に、粒子は、粒子を形成している材料が、該粒子と直接接触し得る1以上の材料の一成分と化学的に反応(例えば、副生成物を形成)しないとき、化学的に安定である。例えば、ある特定の態様においては、電気活性材料と接触しているとき、ポリマー材料と接触しているとき、電解質材料と接触しているとき、および/またはポリスルフィドと接触しているとき、
粒子は化学的に安定である。
【0041】
本明細書に記載されているように、複合層は、多数の粒子およびポリマー材料(例えば、ポリマー材料中に部分的に埋め込まれた粒子)よりなり得る。ある特定の態様においては、複合層中の粒子が占める容積は、全複合層の容積の約1容量%以上である。態様によっては、複合層中の粒子が占める容積は、複合層の全容積の、約5容量%以上、約15容量%以上、約20容量%以上、約30容量%以上、約50容量%以上、約70容量%以上、約80容量%以上、約90容量%以上である。態様によっては、複合層中の粒子が占める容積は、複合層の全容積の約95容量%未満、約90容量%未満、約80容量%未満、約70容量%未満、約50容量%未満、約30容量%未満、約20容量%未満、約15容量%未満である。上記で言及した範囲の組合せも可能である(例えば、約10容量%と約95容量%との間、約50容量%と約95容量%との間、約80容量%と約95容量%との間)。他の範囲もまた可能である。
【0042】
態様によっては、複合層における粒子の重量パーセンテージは、該複合層の全組成の約5重量%以上である。ある特定の態様においては、複合層における粒子の重量パーセンテージは、該複合層の全組成の、約10重量%以上、約20重量%以上、約30重量%以上、約50重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、または約90重量%以上である。態様によっては、複合層における粒子のパーセンテージは、該複合層の全組成の、約95重量%未満、約90重量%未満、約80重量%未満、約70重量%未満、約50重量%未満、約30重量%未満、約20重量%未満、または約10重量%未満である。上記で言及した範囲の組合せもまた可能である(例えば、約5重量%と約95重量%との間、約50重量%と約95重量%との間、約80重量%と約95重量%との間)。他の組合せも可能である。層中の粒子の重量パーセンテージを決定する方法は、当該分野において公知であり、態様によっては、複合層を形成する前に、粒子とポリマーの重さを図ることが挙げられる。
【0043】
本明細書に記載されているように、複合層はポリマー材料を含み得る。該ポリマー材料は、ポリマー層の形態であってもよい。該ポリマー層は、実質的に均一でなくてもよい:例えば、該層は、該ポリマー層中に少なくとも部分的に埋め込まれている粒子を含んでいてもよく、そのことが、該ポリマー材料を、該層中で不均一に分布させている。
【0044】
任意の好適なポリマー材料を複合層中に含むことができる。態様によっては、該ポリマー材料は1以上のポリマー材料から本質的になる。ポリマー材料は、態様によっては、モノマー、コポリマーの混合物、ブロックコポリマー、または相互浸透ネットワークまたは半相互浸透ネットワークにある2以上のポリマーの組合せであり得る。他の態様においては、ポリマー材料は、フィラーおよび/または固体添加物を含有していてもよい。フィラーおよび/または固体添加剤はポリマーに、強度、フレキシビリティー、および/または改良された接着特性を付与し得る。態様によっては、該ポリマーは、固相変換材料を含む、可塑剤または他の添加剤を含有し得る。可塑剤の添加は、ポリマーのフレキシビリティーを増加させ、そしてチキソトロピ−特性を改良し得る。固相変換材料の添加は、高温で融解する材料を添加し、それにより、ヒートシンクとして作用し、熱暴走を防止するという結果になり得る。
【0045】
態様によっては、ポリマー材料は、フレキシブルとなるように選択されてもよい。クリープおよび/または硬度を測定し、それによってポリマー材料のフレキシビリティーおよび/または脆性を評価するために、ナノ硬度分析を行うことができる。ある特定の態様においては、ポリマー材料は、100°C、150°C、200°C、250°C、300°C、350°C、または400°Cを越えて熱的に安定であるように選択され得る。熱安定性は、示差走査熱量測定法(DSC)により評価し得る。高温で熱安定性を発揮し得るポリマー材料は、これらのものに限定されるわけではないが、ポリシロキサン、ポリイソシアヌレート、ポリイソシアヌレートが挙げられる。
【0046】
ポリマー材料は、ある特定の場合において、電解質溶液に対して、および/またはLiポリスルフィド攻撃に実質的に不活性であるように選択され得る。電解質溶液におけるポリマー材料の安定性を決定する手段としては、電解質溶媒の蒸気に、あるいは電解質溶媒そのものに、ポリマー材料の小さなサンプルを晒すことが挙げられる。電解質溶液に安定なポリマー材料としては、ポリウレタンやポリシロキサンが挙げられるが、それらに限定されるものではない。ポリマー材料について種々の特徴を調査するさらなるテストとして、ポリマー材料が硬化しているあるいは架橋していることを確認するフーリエ変換赤外分光法(FTIR)、ポリマー材料がクラックを有しているか否かを決定するエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS)による走査電子顕微鏡法が挙げられる。このようなテストおよび他のテストは、複合層が、別々の層、あるいは相互侵入網目、または半相互侵入網目を有しているかどうかを決定するのに使用することもできる。プロフィルメトリー(Profilometry)は、高分子材料の表面の粗さを評価するために使用することができる。
【0047】
複合層に使用するに好適な他のクラスのポリマー材料としては以下のものを挙げることができるがそれらのものに限定されるものではない:ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI)); ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66))、ポリイミド(例えば、ポリイミド、ポリニトリル、およびポリ(ピロメリトイミド-1,4-ジフェニルエーテル )(Kapton)); ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルフルオライド)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート));ポリアセタール;ポリオレフィン(例えば、ポリ(ブテン-1)、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン);ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート);ポリエーテル(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)); ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニリデン)およびポリ(ビニリデンフルオライド));ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ-1,3-フェニレンイミノイソフタロイル)及びポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノテレフタロイル));ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT));ポリ複素環式化合物(例えば、ポリピロール);ポリウレタン;フェノールポリマー(例えば、フェノール - ホルムアルデヒド);ポリアルキン(例えば、ポリアセチレン);ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエン、シスまたはトランス-1,4-ポリブタジエン);ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS));および無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)。態様によっては、ポリマー材料は、ポリビニルアルコール、ポリイソブチレン、エポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。これらのポリマーの機械的および電子的特性(例えば、伝導率、抵抗率)は公知である。
【0048】
従って、当業者は、本明細書における記述を組み合わせて、それらの機械的特性および/または電子的特性(例えば、イオン伝導性および/または電子伝導性)に基づいて、好適なポリマー材料を選ぶことができ、および/または、当該分野の技術に基づいて、そのようなポリマー材料をイオン伝導性がある(例えば、単一イオンに対して伝導性である)ように、および/または、非電子伝導性であるように、変性することができる。本明細書に記載されているように、態様によっては、ポリマー材料は実質的に非イオン伝導性である。しかしながら、ポリマー材料がイオン伝導性であることが望ましい他の態様によっては、上記および本明細書にリストアップされているポリマー材料は、イオン伝導性を向上させるために、塩、例えば、リチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO
4、LiAsF
6、LiSO
3CF
3、LiSO
3CH
3、LiBF
4、LiB(Ph)
4、LiPF
6、LiC(SO
2CF
3)
3、およびLiN(SO
2CF
3)
2)をさらに含有してもよい。塩は、例えば、0ないし50モル%の範囲で該材料に添加してもよい。ある特定の態様においては、塩は、該材料の少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、または少なくとも50モル%で含まれる。ある特定の態様においては、さらなる塩は、該材料の50モル%以下、40モル%以下、または30モル%以下、20モル%以下、または10モル%以下である。上記した範囲の組合せもまた可能である。他の値のモル%もまた可能である。
【0049】
態様によっては、複合層のポリマー材料の平均イオン伝導性は、少なくとも約10
−8S/cm、10
−7S/cm、少なくとも約10
−6S/cm、少なくとも約10
−5S/cm、少なくとも約10
−4S/cm、少なくとも約10
−2S/cm、少なくとも約10
−1S/cmである。特定の態様においては、該ポリマー材料の平均イオン伝導性は、約1S/cm以下、約10
−1S/cm以下、約10
−2S/cm以下、約10
−3S/cm以下、約10
−4S/cm以下、約10
−5S/cm以下、約10
−6S/cm以下、約10
−7S/cm以下であり得る。上記で言及した範囲の組合せも可能である(例えば、少なくとも約10
-8S/cmおよび約10
-1S/cm以下の電解質における平均イオン伝導性)。伝導性は、室温で測定し得る(例えば、25℃)。
【0050】
態様によっては、ポリマー材料は実質的に非イオン伝導性および実質的に非電気伝導性であってもよい。例えば、本明細書に記載されているそれらのもの等の非電気伝導性材料(例えば、電気絶縁性材料)を使用することができる。他の態様においては、ポリマー材料は、イオン伝導性であるが、実質的に非電気伝導性であってもよい。このようなポリマー材料の例としては、リチウム塩でドープされている、アクリレート、ポリエチレンオキサイド、シリコーン、およびポリビニルクロライド等の非電気伝導性材料(例えば、電気絶縁性材料)が挙げられる。
【0051】
態様によっては、複合物に含まれるポリマー材料は、このような複合層を含む電気化学セルに使用される電解質溶媒に実質的に非膨潤性である。例えば、ポリマー材料は、少なくとも24時間の間、このような複合層を含む電気化学セルにおいて使用される電解質溶媒(なんらかの塩または存在する添加物)に接触したとき、10%未満、8%未満、6%未満、4%未満、2%未満、または1%未満の容積変化を経験してもよい。このようなポリマーの簡単なスクリーニングテストは、ポリマーピースを電解質溶媒(なんらかの塩または存在する添加物)中に置き、24時間前後のポリマーピースの重量または容積変化を測定し、そして溶媒中に置く前の容積に対する容積変化パーセンテージを決定することにより行うことができる。
【0052】
態様によっては、ポリマー材料が、電気化学セルの1以上の層(例えば、電解質層)に接触しているとき化学的に安定である材料、を含有するか、で形成されていることが有利であり得る。ポリマー材料は、もし、例えば、該材料が、該ポリマー材料と直接接触している電気化学セル中の1以上のさらなる層の成分と化学的に反応(例えば、副生成物を形成)しないなら、化学的に安定であり得る。例えば、特定の態様においては、ポリマー材料は、電気活性材料に接触しているとき,電解質材料に接触しているとき、および/またはポリスルフィドに接触しているとき、化学的に安定である。ある特定の態様においては、ポリマー材料は電気化学セル用電極の成分(例えば、電気活性材料、電解質材料(例えば、電解質中の種)、および/またはポリスルフィド)と反応生成物を形成し得る;しかしながら、このような態様においては、反応生成物は、ポリマー材料を含む層の機能を妨げない(例えば、該層はイオン伝導性を維持する)。
【0053】
特定の態様においては、ポリマー材料は実質的に非架橋であり得る。しかしながら、他の態様においては、ポリマー材料は架橋している。このような態様によっては、ポリマー材料は複数の粒子の一部と架橋されていてもよい。例えば、態様によっては、多数の粒子の一部は、(例えば、多数の粒子の一部の表面に結合する)架橋性ポリマーでコートされてもよい。架橋は、例えば、ポリマーに架橋剤を添加し、例えば、紫外線/可視光照射での照射により、γー照射、電子ビーム(e-ビーム)により、または加熱(熱架橋)することにより、例えば、熱硬化または光化学硬化により、架橋反応を行うことにより達成することができる。架橋剤の例として、2以上の炭素-炭素二重結合を有する分子、例えば、2以上のビニル基を有するものから選択されるものを挙げることができる。特に有用な架橋剤は、グリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラプロピレングリコール等のジオールのジ(メタ)アクリレート、シクロペンタジエンダイマー、1,3-ジビニルベンゼン、および1,4-ジビニルベンゼンから選択される。好適な架橋剤としては、例えば、ビスフェノールF、ビスフェノールA、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル等の分子中に2以上のエポキシ基を含有していてもよいものもある。
【0054】
上記したように、態様によっては、複合層の多数の粒子は、ポリマー材料の平均厚さ(下記に詳述するように、粒子の取り込み前に測定されるポリマー材料の平均厚さ)より大きな最大平均断面寸法を有していてもよい。ある特定の態様においては、ポリマー材料の平均厚さ(例えば、粒子を取り込む前)は、多数の粒子の平均最大断面寸法より大きくてもよい。例えば、態様によっては、本明細書に記載されているポリマー材料(例えば、ポリマー層)は、少なくとも約500nm、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約5ミクロン、少なくとも約10ミクロン、少なくとも約15ミクロン、少なくとも約20ミクロン、少なくとも約25ミクロン、少なくとも約30ミクロン、少なくとも約40ミクロン、少なくとも約50ミクロン、少なくとも約70ミクロン、少なくとも約100ミクロン、少なくとも約200ミクロン、少なくとも約500ミクロン、または少なくとも約1mmの厚さを有していてもよい。態様によっては、ポリマー材料(例えば、ポリマー層)の厚さは、約1mm以下、約500ミクロン以下、約200ミクロン以下、約100ミクロン以下、約70ミクロン以下、約50ミクロン以下、約40ミクロン以下、約30ミクロン以下、約20ミクロン以下、約10ミクロン以下、約5ミクロン以下である。他の値もまた可能である。上記した範囲の組合せもまた可能である。
【0055】
ポリマー材料の平均厚さは、例えば、ドロップゲージ(drop gauge)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて決定することができる。簡単に説明すると、ポリマー材料を(例えば、ポリマー材料を切断することにより)断面に沿って画像化することができ、該画像をSEMによって取得してもよい。平均厚さは、断面に沿ったいくつかの異なる位置(例えば、少なくとも5つの位置)でのサンプルの厚さの平均をとることによって決定されてもよい。当業者であれば、サンプルを画像化するための適切な倍率を選択することができるであろう。
【0056】
態様によっては、多数の粒子およびポリマー層よりなる複合層は、任意の好適な厚さを有し得る。態様によっては、本明細書に記載されている複合層は、少なくとも約500nm、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約5ミクロン、少なくとも約10ミクロン、少なくとも約15ミクロン、少なくとも約20ミクロン、少なくとも約25ミクロン、少なくとも約30ミクロン、少なくとも約40ミクロン、少なくとも約50ミクロン、少なくとも約70ミクロン、少なくとも約100ミクロン、少なくとも約200ミクロン、少なくとも約500ミクロン、または少なくとも約1mmの平均厚さを有し得る。態様によっては、複合層の平均厚さは、約1mm以下、約500ミクロン以下、約200ミクロン以下、約100ミクロン以下、約70ミクロン以下、約50ミクロン以下、約40ミクロン以下、約30ミクロン以下、約20ミクロン以下、約10ミクロン以下、約5ミクロン以下である。 他の範囲も可能である。上記した範囲の組合せもまた可能である。
【0057】
複合層の平均厚さは、上記したように、例えば、ドロップゲージまたは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて決定することができる。
【0058】
特定の態様においては、複合層は、少なくとも約10
−10 S/cm、10
−9S/cm、10
−8S/cm、10
−7S/cm、少なくとも約10
−6S/cm、少なくとも約10
−5S/cm、少なくとも約10
−4S/cm、少なくとも約10
−2S/cm、または、少なくとも約10
−1S/cmの総括イオン伝導性(例えば、リチウムイオン伝導性)を有する。特定の態様においては、複合層の平均イオン伝導性(例えば、リチウムイオン伝導性)は、約10
−1S/cm以下、約10
−2S/cm以下、約10
−3S/cm以下、約10
−4S/cm以下、約10
−5S/cm以下、約10
−6S/cm以下、約10
−7S/cm以下、約10
−8S/cm以下、約10
−9S/cm以下であり得る。上記で言及した範囲の組合せも可能である(例えば、少なくとも約10
−10S/cmそして約10
−1S/cm以下の平均イオン伝導性)。電解質および/または溶媒の非存在下,1kHzで動作する伝導性ブリッジ(すなわち、インピーダンス測定回路)を用いて、伝導性(例えば、乾燥伝導性)を室温(例えば25℃)で測定することができる(すなわち、乾燥複合層に対して)。
【0059】
態様によっては、上記したような複合層(例えば、ポリマーおよび多数の粒子よりなる)は、約2μm以下、約1.5μm以下、約1μm以下、約0.9μm以下、約0.8μm以下、約0.7μm以下、約0.6μm以下、約0.5μm以下、または任意の他の適切な粗さの平均山谷粗さ(R
z)を有し得る。態様によっては、複合層は、約50nm以上、約0.1μm以上、約0.2μm以上、約0.4μm以上、約0.6μm以上、約0.8μm以上、約1μm以上、または、任意の他の適切な粗さのR
zを有する。上記した範囲の組合せも可能である(例えば、約0.1μm以上、約1μm以下のR
z)。他の範囲もまた可能である。
【0060】
平均山谷粗さ(Rz)は、例えば、非接触3D光学顕微鏡(例えば光学プロファイラー(optical profiler))で表面を画像化することにより計算し得る。簡単に言えば、画像は、全体の表面粗さに応じて、約5倍から約110倍の倍率(例えば、約50ミクロン×50ミクロンと約1.2mm×1.2mmとの間の領域)で取得し得る。当業者であれば、サンプルを画像化するための適切な倍率を選択することができるであろう。平均山谷粗さは、サンプル上のいくつかの異なる位置(例えば、サンプル上の5つの異なる領域で取得された画像)で、所与のサンプル・サイズについて最高ピークと最低谷との間の高さの差の平均をとることにより(例えば、サンプルの画像化された領域を横切って5つの最高ピークと5つの最低の谷の間の高さの差を平均することにより)決定することができる。
【0061】
複合層が、非イオン伝導性であるポリマー材料および多数のイオン伝導性粒子よりなるポリマー層を含む態様においては、該複合層のイオン伝導性は、該粒子のイオン伝導性によりおおかた決定され得る。例えば、複合層の平均イオン伝導性は、該多数の粒子のイオン伝導性のそれ以下であり得る。
【0062】
特定の態様においては、本明細書に記載されている複合構造は、2以上の層を含んで(例えば、多数の粒子を含む2以上の層を含んで)いてもよい。例えば、態様によっては、複合構造は、第1のポリマー材料を含有する第1のポリマー層および第2のポリマー材料を含有し該第1のポリマー層に隣接する第2のポリマー層を含有していてもよい。少なくとも1つの第1のポリマー層および第2のポリマー層(第1のポリマー材料および第2のポリマー材料よりなる)は、例えば、少なくとも部分的にがい層に埋め込まれている、多数の粒子を含有していてもよい。態様によっては、第1のポリマー層および第2のポリマー層(例えば、ポリマー材料)の両方が例えば、該層中に少なくとも部分的に埋め込まれた、多数の粒子を含んでいる。特定の態様においては、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料は異なっている(例えば、異なるタイプのポリマー材料、異なる量の架橋を含んでいる)。他の態様においては、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料は同じであるが、その中に、異なる量またはタイプの成分(例えば、粒子)を有していてもよい。態様によっては、複合構造の1以上の層は、第1の材料で形成されている粒子および第2の材料で形成されている粒子を含有していてもよく、第1の材料および第2の材料は異なっている。態様によっては、多数の粒子は2以上の材料の混合物を含有していてもよい。
【0063】
本明細書に記載されているように、複合層(例えば、多数の粒子およびポリマー材料よりなる)は特定の電気化学システムに関して、保護層(例えば、ポリマー材料だけで形成されている保護層、イオン伝導性材料だけで形成されている保護層、またはそれらの組合せ)として使用される他の材料と比較して、有利な特性を有しているかどうかを決定することが望ましいであろう。それ故、簡単なスクリーニングテストを用いて候補物質間で選択することを助けることができる。1つの簡単なスクリーニングテストは、電気化学セル中に、例えば、セル中における保護層として、複合層(例えば、ポリマー層および多数の粒子よりなる)を配置することを含む。次に、該電気化学セルを多数回の放電/充電サイクルにかけてもよく、そして、対照系(control system)と比較して、抑制的挙動または他の破壊的挙動が生じているかどうか、該電気化学セルを観察してもよい。対照系と比較して、抑制的または他の破壊的挙動が、該セルのサイクリング中に観測されるならば、組立てられた電気化学セル内における、複合層の加水分解または他の可能性ある劣化メカニズムを示しているかもしれない。同じ電気化学セルを使用し、当業者に公知の方法を使用して、複合層の電気伝導性およびイオン伝導性を評価することも可能である。測定された値は、候補物質間で選択するために比較されてもよく、対照におけるベースライン(baseline)物質との比較に使用されてもよい。
【0064】
態様によっては、電気化学セルに使用される特定の電解質または溶媒(存在する任意の塩または添加剤を含む)の存在下に膨潤に関して複合層をテストすることが望ましいであろう。簡単なスクリーニングテストは、例えば、計量され、そして任意の好適な時間(例えば、24時間)の間、電気化学セルに使用される溶媒または電解質に置かれる複合層の切片を含み得る。溶媒または電解質の添加前後の複合層の重量(または容量)パーセント差が、電解質または溶媒の存在下における複合層の膨潤の量を決定し得る。
【0065】
他の簡単なスクリーニングテストは、ポリスルフィドに対する複合層の安定性(すなわち、保全性)を決定することを含む。簡単に述べると、複合層を任意の好適な時間(例えば、72時間)ポリスルフィド溶液/混合物に晒してもよく、そして、ポリスルフィド溶液へ晒した後の複合層のパーセント重量損失を、暴露前後の複合層の重量差を計算することにより、決定してもよい。例えば、態様によっては、ポリスルフィド溶液への暴露後の複合層のパーセント重量損失は、約15重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、または約0.5重量%以下であり得る。ある特定の態様においては、ポリスルフィド溶液への暴露後の複合層のパーセント重量損失は、約0.1重量%を超える、約0.5重量%を超える、約1重量%を超える、約2重量%を超える、約5重量%を超える、または約10重量%を超えることもあり得る。上記で言及した範囲の組合せも可能である(例えば、約0.1重量%と約5重量%の間)。
【0066】
上記したスクリーニングテストは、複合層の個々の成分(例えば、ポリマー材料/ポリマー層および/または多数の粒子)の特性を決定するために採用、使用してもよい。
【0067】
ポリマー材料(例えば、ポリマー層)および多数の粒子よりなる複合層を形成する方法を下記する。態様によっては、方法は、電気活性材料(例えば、リチウムよりなるアノード、イオウよりなるカソード)または他の好適な基体の一部に隣接して、またはその部分上に複合層を形成することを含み得る。
【0068】
1つの例示的な方法においては、
図2Aを参照すると、複合物を形成することは、複合層を形成するための基体として電気活性層120を用意することを含み得る。電気活性層は、ポリマー層の形態でポリマー材料150でコートされてもよい。本明細書に記載されているように、粒子140は、任意の好適な配置でポリマー材料の表面150”上に置かれ得る。さて、
図2Bを参照すると、外圧(矢印で指示されている)が、ポリマー層の表面上に配置された粒子に、場合によっては、印加され得る。外圧の印加する(例えば、電気活性層の表面に垂直に)ことにより、粒子が、ポリマー層中に少なくとも部分的に埋め込まれる。ある特定の態様においては、粒子が電気活性層と直接接触するような十分な外圧(電気活性層の表面に垂直な)を粒子に印加する。態様によっては、外圧(例えば、電気活性層の表面に垂直な)を印加することにより、粒子が電気活性層中に少なくとも部分的に埋め込まれる(
図2B)。
【0069】
外圧を印加する方法は、当業者に公知であろう。例えば、外圧を印加する方法は、成分(例えば、電気活性層、ポリマー層、および/または粒子)を、2つのステンレスプレートの間に配列すること、および、液圧プレスで、(例えば、電気活性層の表面に垂直な圧力/力を使用して)該プレートを圧縮することを含み得る。
【0070】
印加される外圧(例えば、電気活性層の表面に垂直)は、約5kg/cm
2以上、約10kg/cm
2以上、約20kg/cm
2以上、約35kg/cm
2以上、約50kg/cm
2以上、約75kg/cm
2以上、約90kg/cm
2以上、約100kg/cm
2以上であり得る。ある特定の態様においては、印加される外圧は、約150kg/cm
2未満、約100kg/cm
2未満、約90kg/cm
2未満、約75kg/cm
2未満、約50kg/cm
2未満、約35kg/cm
2未満、約20kg/cm
2未満、約10kg/cm
2未満であり得る。上記で言及した範囲の組合せもまた可能である(例えば、約10kg/cm
2と約50kg/cm
2の間、約20kg/cm
2と約35kg/cm
2の間、約50kg/cm
2と約100kg/cm
2の間、約100kg/cm
2と約150kg/cm
2の間、)。他の値の外圧もまた可能である。
【0071】
複合層を形成することよりなる態様によっては、ポリマー材料は、室温で(例えば、約25℃で)望ましい流動特性を有し得る。例えば、このような態様によっては、ポリマー材料は、ある温度で粘性流れ(viscous flow)が可能であり得る。態様によっては、該方法はさらに該ポリマー材料を硬化することよりなる。ある特定の態様においては、ポリマー材料の効果は、紫外光に該ポリマー材料を暴露することよりなる。さらにまたは選択的に、ポリマー材料の硬化は、少なくとも約50℃、少なくとも約60°C、少なくとも約70°C、少なくとも約90°C、少なくとも約100°C、少なくとも約120°Cの温度に該ポリマー材料を暴露することよりなり得る。ポリマー材料の硬化は、態様によっては、該ポリマー材料および/または多数の粒子(例えば、該多数の粒子の一部の表面に結合した架橋性材料よりなる)の一部を架橋してもよい。
【0072】
本明細書に記載されている態様の多くが、リチウム/イオウ電気化学セルに関連しているが、任意の類似のアルカリ金属/イオウ電気化学セル(アルカリ金属アノードを含む)を使用できるということが理解されるべきものである。上記されているように、そして本明細書により詳細に記載されているように、態様によっては、複合層は、電極用保護層としてリチウム-イオウ電気化学セル中に組み込まれる。態様によっては、本明細書に開示の複合層は、少なくとも一電極構造よりなる電気化学セルに含まれてもよい。態様によっては、電気化学セルは、電極構造、1以上の複合層および電解質層を用意することにより作製されてもよい。該電極構造は、電気活性層(例えば、アノードまたはカソード)および1以上の複合層を含み得る。上記したように、複合層は、電気活性材料イオンに対して高い伝導性であってもよく、そして、電解質中の成分との反応から下にある電気活性材料表面を保護し得る。態様によっては、複合層はアノードに隣接していてもよい。態様によっては、複合層は、カソードに隣接していてもよい。
【0073】
電気化学セルまたは電気化学セルに使用するための物品は、カソード電気活性材料層を含んでいてもよい。本明細書に記載されている電気化学セルのカソードにおいてカソード活性材料として使用するための好適な電気活性材料は、電気活性遷移金属カルコゲナイド、電気活性伝導性ポリマー、イオウ、ダー本および/またはそれらの組合せを挙げることができるが、それらのものに限定されるものではない。本明細書で使用されている「カルコゲナイド」という用語は、酸素、硫黄およびセレンの元素を1つ以上含む化合物に関する。適切な遷移金属カルコゲニドの例には、Mn、V、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、OsおよびIrからなる群から選択される遷移金属の電気活性酸化物、硫化物およびセレン化物があげられるが、それらのものに限定されるものではない。1つの態様においては、遷移金属カルコゲナイドは、ニッケル、マンガン、コバルトおよびバナジウムの電気活性酸化物、および鉄の電気活性硫化物からなる群から選択される。1つの態様においては、カソードは以下の材料を1以上含む:二酸化マンガン、ヨウ素、クロム酸銀、酸化銀、五酸化バナジウム、酸化銅、オキシ燐酸銅、硫化鉛、硫化銅、硫化鉄、ビスマス酸鉛、三酸化ビスマス、二酸化コバルト、塩化銅、二酸化マンガンおよびカーボン。別の態様においては、カソード活性層は電気活性伝導性ポリマーよりなる。好適な電気活性伝導性ポリマーの例として、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンからなるグループから選択される電気活性でかつイオン伝導性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。伝導性ポリマーの例としては、ポリピロールおよびポリアセチレンを含む。
【0074】
態様によっては、本明細書に記載されている電気化学セルにおいてカソード活性材料として使用するための電気活性材料は、電気活性イオウ含有残量を含む。本明細書に使用される「電気活性イオウ含有材料」は、任意の形態で元素イオウよりなるカソード活性材料に関し、該電気化学活性は、イオウ原子または部分の酸化または還元を含む。本発明の実施に有用な電気活性イオウ含有材料の性質は、当該分野で知られているように広く変化し得る。例えば、一つの態様においては、電気活性イオウ含有材料は、元素イオウよりなる。別の態様においては、電気活性イオウ含有材料は、元素イオウおよびイオウ含有ポリマーの混合物よりなる。かくして、好適な電気活性イオウ含有材料としては、ポリマーであってもなくてもよい、元素イオウおよびイオウ原子およびカーボン原子を含有する有機材料を例示し得るが、これらに限定されるものではない。好適な有機材料としては、ヘテロ原子、伝導性ポリマーセグメント、複合物、および伝導性ポリマーをさらに含有するものが例示できる。
【0075】
ある特定の態様においては、イオウ含有材料(例えば、酸化形態における)は、共有結合性Sm部分、イオン性Sm部分、イオン性Sm
2−部分(式中、mは3以上の整数である)からなるグループから選択されるポリスルフィド部分、Smよりなる。態様によっては、イオウ含有ポリマーのポリスルフィド部分Smのmは、6以上の整数、または8以上の整数である。態様によっては、イオウ含有材料は、イオウ含有ポリマーであってもよい。態様によっては、イオウ含有ポリマーは、ポリマー主鎖を有しており、ポリスルフィド部分Smは末端イオウ原子の1つあるいは両方により、ポリマー主鎖に側鎖として共有結合している。ある特定の態様においては、イオウ含有ポリマーは、ポリマー主鎖を有しており、ポリスルフィド部分Smは、ポリスルフィド部分の末端イオウ原子の共有結合によりポリマー主鎖中に取り込まれている。
【0076】
態様によっては、電気活性イオウ含有材料は、50重量%を超えるイオウを含有している。ある特定の態様においては、電気活性イオウ含有材料は、75重量%を超えるイオウ(例えば、90重量%を超えるイオウ)を含有している。
【0077】
当該分野の当業者には公知であるように、本明細書に記載されている電気活性イオウ含有材料の性質は広く変化し得る。態様においては、電気活性イオウ含有材料は、は、元素イオウを含有している。ある特定の態様においては、電気活性イオウ含有材料は、元素イオウとイオウ含有ポリマーの混合物を含有している。
【0078】
る特定の態様においては、本明細書に記載されている電気化学セルは、カソード活性種としてイオウを含有している1以上のカソードよりなる。このような態様においては、カソードは、カソード活性種として元素イオウを含んでいる。
【0079】
本明細書に記載されている電気化学セルにおけるアノード活性材料として使用する好適な電気活性材料は、リチウムホイルや伝導性基材上に堆積されたリチウム等のリチウム金属、およびリチウムアロイ(例えば、リチウム−アルミニウムアロイやリチウム−スズアロイ)が挙げられるが、それらのものに限定されるものではない。所望によりセラミック材料等の保護材料あるいは本明細書に記載されているイオン伝導性材料により分離して、1つのフィルムまたはいくつかのフィルムとしてリチウムを含有することができる。好適なセラミック材料として、シリカ、アルミナ、またはリチウムホスフェート、リチウムアルミネート、リチウムシリケート、リチウムリンオキシナイトライド、リチウムタンタルオキサイド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムチタンオキサイド、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムボロスルフィド、およびリチウムホスホスルフィド、およびそれらの2以上の組合せ等のリチウム含有ガラス材料を挙げることができる。本明細書に記載されている態様に使用する好適なリチウムアロイとして、リチウムとアルミニウム、マグネシウム、シリシウム(silicium)(シリコン)、インジウム、および/またはスズのアロイを挙げることができる。これらの材料は態様によっては好ましいものの、他のセル化学もまた意図される。態様によっては、アノードは1以上のバインダー材料(例えば、ポリマー等)を含有していてもよい。
【0080】
本明細書に記載されているような、1以上の電気活性層(例えば、電気活性材料よりなる)は、約2μm以下、約1.5 μm以下、約1μm以下、約0.9μm以下、約0.8μm以下、約0.7μm以下、約0.6μm以下、約0.5μm以下、または任意他の適切な粗さの平均山谷粗さ(Rz)を有していてもよい。態様によっては、1以上の電気活性層(例えば、電気活性材料よりなる)は、約50nm以上、約0.1μm以上、約0.2μm以上、約0.4μm以上、約0.6μm以上、約0.8μm以上、約1μm以上、または任意他の適切な粗さのRzを有する。上記で言及した範囲の組合せが可能である(例えば、約0.1μm以上、約1μm以下のRz)。他の範囲もまた可能である。態様によっては、1以上の電気活性層の平均山谷粗さは、電気化学セルの充/放電に先立って決定される。1以上の電気活性層の平均山谷粗さ(Rz)は、例えば、上述のように非接触3D光学顕微鏡(例えば、光学プロファイラ(profiler))を用いて表面を画像化することによって決定し得る。
【0081】
ある特定の態様においては、電気化学セルは電解質よりなる。電気化学セルまたはバッテリーセルに使用される電解質は、イオンの貯蔵および輸送の媒体として機能することができ、固体電解質およびゲル電解質といった特別なケースにおいては、これらの材料は、さらに、アノードとカソードの間のセパレータとして機能し得る。イオンを貯蔵および輸送可能な任意の好適な液体、固体、またはゲル材料は、該材料がアノードおよびカソード間でのイオン(例えばリチウムイオン)の輸送を容易にする限り、使用し得る。電解質は、電子的に非伝導性で、アノードとカソードとの間での短絡を防止している。態様によっては、電解質は非個体電解質よりなり得る。
【0082】
態様によっては、電解質は、特定の厚さを有する層の形態にある。電解質層は、例えば、少なくとも1ミクロン、少なくとも5ミクロン、少なくとも10ミクロン、少なくとも15ミクロン、少なくとも20ミクロン、少なくとも25ミクロン、少なくとも30ミクロン、少なくとも40ミクロン、少なくとも50ミクロン、少なくとも70ミクロン、少なくとも100ミクロン、少なくとも200ミクロン、少なくとも500ミクロン、または少なくとも1mmの厚さを有し得る。態様によっては、電解質層の厚さは1mm以下、500ミクロン以下、200ミクロン以下、100ミクロン以下、70ミクロン以下、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下である。他の値もまた可能である。上記した範囲の組合せもまた可能である。
【0083】
態様によっては、電解質は非水の電解質を含む。好適な非水電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および固体ポリマー電解質等の有機電解質を含んでいてもよい。これらの電解質は、本願明細書に記載されているように、所望により1以上のイオン電解質塩を含み(例えば、イオン伝導性を付与あるいは向上させてもよい)。有用な非水の液体電解質溶媒の例としては、それらに限定されるものではないが、例えば、N−メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カーボネート、スルホン、亜硫酸塩、スルホラン、脂肪族エーテル、非環式エーテル、環状エーテル、グリム、ポリエーテル、ホスフェートエステル、シロキサン、ジオキソラン、N−アルキルピロリドン、前記の置換形態、およびそれらのブレンド等の非水の有機溶媒を挙げることができる。使用し得る非環式エーテルの例としては、それらに限定されるものではないが、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、1,3−ジメトキシプロパンが挙げられる。使用し得る環状エーテルの例は、それらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、およびトリオキサンが挙げられる。使用し得るポリエーテルの例としては、それらに限定されるものではないが、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、高級グリム、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびブチレングリコールエーテルが挙げられる。使用し得るスルホンの例としては、それらに限定されるものではないが、スルホラン、3−メチルスルホラン、3−スルホレンが挙げられる。前記のフッ素化誘導体もまた液体電解質溶媒として有用である。
【0084】
態様によっては、本明細書に記載されている溶媒の混合物も使用し得る。例えば、態様によっては、溶媒の混合物は、1,3-ジオキソランとメトキシエタン、1,3-ジオキソランとジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3-ジオキソランとトリエチレングリコールジメチルエーテル、および1,3-ジオキソランとスルホランからなるグループから選択される。該混合物における2つの溶媒の重量比は、場合によっては、約5重量%:95重量%ないし95重量%:5重量%の範囲に渡る。
【0085】
好適なゲルポリマー電解質の限定するものではない例として、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、ペルフルオロ化膜(NAFION樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、前記の誘導体、前記のコポリマー、前記の架橋ネットワーク構造、および前記のブレンドを挙げられる。
【0086】
好適な固体ポリマー電解質の限定するものではない例としては、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、前記の誘導体、前記のコポリマー、前記の架橋ネットワーク構造、および前記のブレンドを挙げられる。
【0087】
態様によっては、非水の電解質は、少なくとも1つのリチウム塩よりなる。例えば、場合によっては、該少なくとも1つのリチウム塩は、LiNO
3、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、Li
2SiF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、リチウムビス−オキサラトボレート(oxalatoborate)、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2F)
2、LiC(C
nF
2n+1SO
2)
3(式中、nは1ないし20の範囲の整数である。)、および(C
nF
2n+1SO
2)
mXLi(式中、nは1ないし20の範囲の整数であり、mは、Xが酸素またはイオウから選択されるとき、1であり、mは、Xが窒素またはリンから選択されるとき、2であり、そして、mは、Xが炭素またはケイ素から選択されるとき、3である)からなるグループ選択される。
【0088】
態様によっては、本明細書に記載されている電極構造は、少なくとも1つのカレントコレクタを含有する。カレントコレクタ用材料は、場合によっては、金属(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、不動態化金属、および他の適切な金属)、金属化ポリマー、伝導性ポリマー、伝導性粒子をその中に分散含有するポリマーおよび他の適切な材料から選択され得る。ある特定の態様においては、カレントコレクタは、物理蒸着法、化学蒸着法、電気化学的堆積法、スパッタリング法、ドクターブレード法、フラッシュ蒸発法、または選択された材料のための任意他の適切な堆積技術を使用して電極層上に堆積される。態様によっては、カレントコレクタは、別個に形成し、電極構造に結合してもよい。しかしながら、態様によっては、電気活性層から離れたカレントコレクタは必要とされ得ないことは理解されたい。
【0089】
以下の実施例は、本発明のある特定の態様を説明するものであって、発明の全範囲を例示しているものではない。
【0090】
実施例1
本実施例は、実施例2および3における複合層を形成するのに使用されたポリマー材料および多数の粒子を含んでいる複合層の一般的製造スキームを記載している。複合層は、液体電解質、または電解質中の種から電極を保護するのに使用することができる。
【0091】
まず、Liホイルの層または真空蒸着リチウム(VDL)を、架橋化合物および所望により開始剤を含有している軟質ポリマー(例えばポリブタジエン、ポリイソプレンあるいはそれらのコポリマー)溶液でコーティングした。使用されたポリマーは、非イオン伝導性であった。ポリマー層は、単一層または多層構造のいずれかであった。Li伝導性セラミック粒子の単一層を、該ポリマーの表面上に塗布する。該セラミック粒子は、該ポリマー層のスターティング厚さの少なくとも2倍より厚い平均最大断面寸法を有していた。2つのステンレススチールプレートの間に該粒子および該ポリマー層を置き、液圧プレスで圧縮することにより、該ポリマー層の表面に対して垂直の方向に、該粒子に対して、圧力(10kg/cm
2より大きい)を印加した。圧力により、セラミック粒子はポリマー層に埋め込まれ、Li金属層の部分の中に貫入し、該粒子はリチウム金属と直接物理的に接触した。同時に、少なくとも一部のセラミック粒子は、側面のポリマー材料で取り囲まれているか/埋め込まれていた。次に、ポリマー層を熱処理し、ポリマー材料を架橋し、ポリマー層を電解質に不溶性かつ非膨潤性とした。
【0092】
少なくとも粒子の一部が、粒子が電解質と直接接触するように、リチウム金属層に対向する複合層側上で露出していた。複合層のこの配置は、充/放電プロセスの間、電解質溶媒がLi金属と直接接触することなく、Liイオンを、電解質から/へ、リチウム金属層へ/から、輸送することを可能とした。
【0093】
十分なイオン伝導性を有する種々のタイプのイオン伝導性セラミック材料を使用することができる。上記したように調製されるアノードは、セパレータを有する、もしくは有しない、Li−SセルまたはLi−金属酸化物(金属リチウムLi−イオンカソード)のような他の電気化学セルシステムに有用である。それは、アノード保護層としてLi−イオンバッテリーにおいて使用することもできる。
【0094】
実施例2
本実施例は、実施例1において概説されているように、複合層の製造を記述している。
【0095】
ポリイソブテン(Oppanol B150、BASF製品)の5重量%トルエン溶液を、VDL層上に、ドクターブレード技術でコーティングし、3時間室温で乾燥した。ポリマーコーティングの厚さは10μmであった。Li
10SnP
2S
12セラミック紛体(粒径が39−75ミクロンの間に及んでいる)を上記ポリマー層上に分散させ、セラミック紛体の単一層を該ポリマー層上に形成させた。35kg/cm
2の外圧を1分間該サンプルに印加した。SEM分析したところ、セラミック粒子はポリマー層を貫き、Li金属中まで入っていた(
図3A−B)。結果として得られた複合層はフレキシブルであり、曲げてもクラックは観測(例えば、SEMを使用したが)されなかった。インピーダンス測定したところ、6.4*10
−8S/cmのイオン伝導性であった。
【0096】
実施例3
本実施例は、実施例1において概説されているように、複合層の製造を記述している。
【0097】
ポリブタジエン(5重量%)、トリメチロールプロパンメルカプトプロピオネート(ポリマーに対して3重量%)および光開始剤(Lucirin TPO-L, BASF製品、ポリマーに対して1重量%)を含有するトルエン溶液をVDL層上に、ドクターブレード技術でコーティングし、3時間室温で乾燥した。ポリマーコーティングの厚さは10μmであった。Li
10SnP
2S
12セラミック紛体(粒径が39−75ミクロンの間に及んでいる)をポリマー層上に分散させた。35kg/cm
2の外圧を1分間該サンプルに印加した。結果として得られた複合物をUV光下(ウェブスピード(web speed)5ft/分)で通過させ、ポリマーを硬化させた。複合物は、フレキシブルであり、曲げてもクラックは観察されなかった。インピーデンス測定により、4.9*10
−10S/cmの乾燥イオン伝導性を示した。
【0098】
本明細書において、本発明のいくつかの態様を記述し説明してきたが、当業者は、機能を実行する、および/または本明細書に記載されている結果および/または利点を得るための色々な他の手段および/または構造を難なく思い描くであろう。そして、このようなバリエーションおよび/またはモディフィケーションのそれぞれは、本発明の範囲内にあるものと考えられる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されているすべてのパラメーター、寸法、材料、および構成は、模範的であるとことを意味していること、そして、実際のパラメーター、寸法、材料、および/または構成は、特定の応用先または本発明の技術が使用される応用先に左右されるということを難なく正しく理解している。当業者は、ただのルーチンの実験に過ぎないもの、本明細書に記載されている発明の特定の態様に等価の多くのものを認識、または確認することができる。それ故、前述の態様は、単に例として提示されているだけであるということ、そして、添付されているクレームおよびそれと等価物の範囲において、発明は、特別に記述されているとは別の他の方法で、実施し、そしてクレームされ得るということが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載の個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に向けられている。さらに、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の2つ以上の任意の組合せは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が、お互いに矛盾しないなら、本発明の範囲に含まれる。
【0099】
本明細書で定義され使用されているすべての定義が、辞書の定義、参照文献で組み込まれている文書における定義、および/または定義されている用語の通常の意味に優先して統制すると理解されるべきである。
【0100】
明細書および請求の範囲で使用されている、不定冠詞"a"および"an"は、異なると明確に指摘されていないならば、「少なくとも1つ」を意味していると理解されるべきである。
【0101】
本明細書および特許請求の範囲で使用されているフレーズ「および/または」は、そのように等位接続されている要素、すなわち、場合によっては結合的に(conjunctively)存在し、他の場合には離接的(disjunctively)に存在する要素の「いずれか一方または両方」を意味していると理解されるべきである。「および/または」で列挙されている多数の要素は、同じように、すなわちそのように等位接続されている要素の「1つまたはそれ以上」と解釈されるべきである。特別に特定されている要素に関連しようが関連していまいが、「および/または」の句で特別に特定されている要素以外に、他の要素が所望により存在してもよい。それ故、非限定的例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含有する(comprising)」等のオープン型言語と一緒に使用されているとき、一態様において、Aのみ(B以外の要素を所望により含んでいる);別の態様において、Bのみ(A以外の要素を所望により含んでいる);さらに別の態様において、AおよびBの両方(他の要素を所望により含んでいる)等を表している。
【0102】
本明細書および特許請求の範囲で使用されている、「または(or)」は、上記で定義されているように、「および/または」と同じ意味を有していると理解されるべきである。例えば、リスト中で項目を分けているとき、「または(or)」あるいは「および/または(and/or)」は、両立的(inclusive)であるとして、すなわち、多くのまたはリストの要素の少なくとも1つを含むが、1つより多くもまた含み、そして所望によりさらにリストされていない項目をも含むものとして解釈されるものとする。そうでないとして明確に指摘されている用語のみ、例えば、「〜の1つだけ(only one of)」あるいは「正確に〜の1つ(exactly one of)」、請求の範囲で使用される、「〜のみからなる(consisting of)」は、多数のあるいはリストの要素の正確に1つの要素を含んでいることを表現している。一般に、本明細書に使用される、用語「または(or)」は、「どちらかの(either)」、「〜の1つだけ(only one of)、または「正確に〜の1つだけ(exactly one of)」等の単独性(exclusivity)の用語が先行するとき、排他的選択肢(exclusive alternatives)(すなわち、「1つまたはそれ以外であるが両方でない)を示しているとして、解釈されるにすぎない。「本質的に〜からのみなる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲で使用されているとき、特許法の分野で使用されているように、その通常の意味を有しているものとする。
【0103】
本願明細書および特許請求の範囲に使用されている、「少なくとも1つの〜」というフレーズは、1以上の要素のリストに関して、要素のリストにおける任意1以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味しているが、必ずしも要素のリスト中に特に挙げられているひとつひとつの全ての要素の少なくとも1つを含んでいる必要はなく、また、要素のリストにおける要素の任意の組合せを排除するものではないことを意味していると理解すべきである。この定義は、「少なくとも1つの〜」というフレーズが言及している要素のリスト中で、特に確認されている要素以外の要素が、特に確認されているそれらの要素に関連していようがいまいが、所望により存在してもよいということも可能にしている。それ故、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つの〜」(または、等しくは、「AまたはBの少なくとも1つの〜」、あるいは、等しくは、「Aおよび/またはBの少なくとも1つの〜」)は、一つの態様においては、Bは存在しないで、所望により1つより多くのAを含んでいる、少なくとも1つのA(そして、所望によりB以外の要素を含んでいる);別の態様においては、Aは存在しないで、所望により1つより多くのBを含んでいる、少なくとも1つのB(そして、所望によりA以外の要素を含んでいる);さらに別の態様においては、所望により1つより多くのAを含んでいる、少なくとも1つのA,および、所望により1つより多くのBを含んでいる、少なくとも1つのB(そして、所望により、他の要素を含んでいる)等、ということができる。
【0104】
そうでないと明確に指摘されていないならば、1つを超える工程または行為を含む本願にクレームされている方法においては、該方法の工程または行為の順番は、該方法の工程または行為が記載されている順番に必ずしも限定されないということも理解されるべきである。
【0105】
請求の範囲においては、明細書においてと同様に、「よりなる(comprising)」、「含む(including)」、「支承する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保有している(holding)」、「構成されている(composed of)」等のすべての移行句は、オープン型である、すなわち含むがそれに限定されないことを意味していると理解されるべきである。合衆国特許庁MPEPセクション2111.03に述べられているように、「のみからなる(consisting of)」、「本質的に〜のみからなる(consisting essentially of)の移行句のみがそれぞれクローズド型または半クローズド型とされている。