(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴム成分が、天然ゴム及びイソプレンゴムよりなる群から選択される少なくとも1つと、ブタジエンゴムと、からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A〜B」の記載は、端点であるA及びBを含む数値範囲を表し、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を表す。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
【0009】
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び合成ゴムよりなる群から選択される少なくとも1つからなるゴム成分100質量部に対し、再生ゴムを150〜200質量部、及び酸化亜鉛を5質量部以上配合してなることを特徴とする。本発明のゴム組成物は、タイヤトレッド用ゴム組成物として好適である。
従来、粉末ゴムや再生ゴムをゴム組成物に配合すると、ゴム組成物の補強性が低下し、結果として耐摩耗性が低下するという問題が生じていた。その結果、再生原材料の使用量を抑制せざるを得ず、十分に環境負荷を低減することが困難であった。
本発明者等は鋭意検討することによって、再生ゴムを多量に配合しても、酸化亜鉛の配合量を特定量以上とすることにより、耐摩耗性の低下が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。その詳細な機構は不明であるが、一部は以下のように推定される。
すなわち、再生ゴムは、使用履歴及び再生の過程において、劣化、過熱等により低分子量化していると推定される。酸化亜鉛を従来よりも多量に配合することにより、酸化亜鉛が加硫促進助剤として働き、耐摩耗性が向上したものと推定される。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0010】
<ゴム成分>
本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び合成ゴムよりなる群から選択される少なくとも1つからなるゴム成分を配合してなる。ゴム成分として、天然ゴムを単独で使用してもよく、合成ゴムを単独で使用してもよく、また、天然ゴムと合成ゴムとを併用してもよい。
合成ゴムとしては特に限定されないが、合成ジエン系ゴムが好ましく例示される。合成ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が例示される。これらの合成ゴムは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、ゴム成分は、天然ゴム及びイソプレンゴムよりなる群から選択される少なくとも1つと、ブタジエンゴムとからなることが好ましく、天然ゴムとブタジエンゴムとからなることがより好ましい。本発明において、ゴム成分として天然ゴム及びイソプレンゴムよりなる群から選択される少なくとも1つと、ブタジエンゴムとを併用する場合、天然ゴム及びイソプレンゴムの合計量と、ブタジエンゴムとの比(天然ゴム及びイソプレンゴムの合計量:ブタジエンゴム(質量比))は、10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましく、30:70〜70:30であることが更に好ましく、40:60〜60:40であることが特に好ましく、45:55〜55:45であることが最も好ましい。
ゴム成分を上記の態様とすることにより、耐摩耗性及び耐発熱性により優れるゴム組成物が得られる。
【0011】
<再生ゴム>
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、再生ゴムを150〜200質量部配合してなる。
再生ゴムの配合量が、ゴム成分100質量部に対して150質量部以上であると、環境負荷低減の観点から好ましく、200質量部以下であると耐摩耗性の低下が抑制されるので好ましい。
再生ゴムの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、160〜190質量部であることが好ましく、170〜185質量部であることがより好ましい。
【0012】
本発明で使用する再生ゴムとしては、市販の再生ゴムを使用することができる。再生ゴムとは、JIS K6313−2012に規定された自動車用タイヤ、チューブ及びその他のゴム製品の使用済みのゴムなどを再生したもの並びにこれと同等の性状を有するものとする。なお、粉状のものは除く。また、再生ゴムは、脱硫処理が施される。
再生ゴムの種類は、チューブ再生ゴム、タイヤ再生ゴム、及びその他の再生ゴムよりなる群から選ばれるいずれでもよく、複数の種類を組合わせることもできる。これらの中でも、タイヤ再生ゴムが好ましい。
再生ゴムの製造方法としては特に限定されず、オイルパン法、リクレメーター法など、公知の方法を採用すればよい。
【0013】
<酸化亜鉛>
本発明のゴム組成物は、酸化亜鉛を配合してなる。酸化亜鉛は、通常、亜鉛華と称される。
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、酸化亜鉛を5質量部以上配合してなる。酸化亜鉛の配合量がゴム成分100質量部に対して5質量部以上であると、耐摩耗性の低下が抑制されるので好ましい。
酸化亜鉛の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、5〜8質量部であることが好ましく、5.5〜7質量部であることがより好ましい。
本発明のゴム組成物に配合する酸化亜鉛は、BET法による窒素吸着比表面積(N
2SA)が3m
2/g以上110m
2/g以下であることが好ましい。酸化亜鉛の比表面積は、ASTM D4567−03(2007)に規定されるBET法に準じて測定される窒素吸着法比表面積であり、以下では「BET比表面積」と記す。
酸化亜鉛のBET比表面積は、加硫速度への影響の観点から、3m
2/g以上25m
2/g以下がより好ましく、5m
2/g以上10m
2/g以下であることが更に好ましい。
【0014】
本発明のゴム組成物に配合してもよい、その他の成分について以下に説明する。
<粉末ゴム>
本発明のゴム組成物は、粉末ゴムを配合してなることが好ましい。粉末ゴムを配合することにより、再生ゴムの添加による未加硫ゴム組成物の密着性の上昇を抑制し、作業性が向上する。
粉末ゴムは、粉ゴムとも呼ばれ、廃ゴム製品をリサイクルした加硫粉末ゴム(再生粉末ゴム)である。この粉末ゴムの原料となる廃ゴムのゴム種は特に限定されるものではなく、天然ゴム及び合成ゴムの中から選択される少なくとも1種含むものであればよい。合成ゴムとしてはジエン系ゴムが好ましく、例えば、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、高シス−1,4−ポリブタジエンゴム、低シス−1,4−ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0015】
本発明に用いられる粉末ゴムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして製造される。
具体的には、チップ状に処理されたゴム原材料を微粉砕手段によって、必要に応じて固着防止剤を添加しながら、荒粉砕、中粉砕及び仕上げ粉砕によって荒粉砕ゴムから中粉砕ゴムを経て微粉砕ゴムに順次仕上げていく微粉砕工程(A)と、上記微粉砕ゴムを分級して少なくともその一部を微粉末ゴム製品として回収する分級回収工程(B)を有する微粉砕ゴム処理方法が例示される。
更に、詳細に説明すると、下記の3工程を備えていることが好ましい。
予備粉砕工程(Y):ゴムチップを予備粉砕手段である予備粉砕機によって細粉砕ゴムに加工する。但し、予備粉砕工程は必要に応じて上記製法に組み込まれる、選択的な工程である。
微粉砕工程(A):上記細粉砕ゴムを微粉砕手段である微粉砕機によって、必要に応じて固着防止剤を添加しながら段階的に粉砕して最終的に微粉砕ゴムに仕上げる。
分級回収工程(B):分級手段である分級機により上記微粉砕ゴムを所定の粒径を有する粉末ゴム(所定の粒径より小さい粒径を有する微粉末ゴムを含む。)とそれ以外のものに分級(選別)して製品として回収する。分級に当たっては、所定の篩目開きのASTM D5603−01(2008)に規定されたメッシュの篩を用いればよい。
予備粉砕工程(Y)においては、例えば廃タイヤ(ビートワイヤ、スチールベルト及びプライなどタイヤ補強材除去処理済)を幾つかに切断したカットタイヤを所定の大きさに破砕したゴムチップ(タイヤチップ)をゴム原材料として予備粉砕機に投入し、粉砕室内に設けられている粉砕部によって細粉砕ゴムに加工する。予備粉砕機に供給するゴムチップは適宜であるが、1mm〜8mm程度の大きさにカットしておくことが、細粉砕ゴムの粒径を小さくするのに役立つ。ゴムチップに対して予め加熟しておくことによって、予備粉砕機による細粉砕を円滑にするが、通常の温度で処理することになんらの問題はなく、予熱の付加作業をするか否かは適宜選択される。
またゴムチップを予備粉砕機で複数回繰り返して粉砕することにより、小さい粒径の細粉砕ゴムを生産することができる。
ゴムチップの大きさの範囲は1mm〜8mmに限られないが、ゴムチップの大きさを上記範囲内にすることで、予備粉砕工程(Y)以前において粉砕加工に手間をかけることなく、予備粉砕工程(Y)における粉砕効率の低下が抑制される。
予備粉砕機としては、ゴムチップを撹拌粉砕する押出機、ロールによって粉砕するロール粉砕機など適宜のものが選択される。
【0016】
微粉砕工程(A)においては、予備粉砕機で処理された上記細粉砕ゴムは微粉砕機によって荒粉砕から中粉砕を経て仕上げ粉砕されて微粉砕ゴムに加工される。微粉砕機は荒粉砕部、中粉砕部及び仕上げ粉砕部を上段(又は上流)から下段(又は下流)に向けて連続的に配置しているロール粉砕手段が好ましい。仕上げ粉砕工程で処理された微粉砕ゴムは分級回収工程(B)における分級機へ送られる。
【0017】
微粉砕工程において、必要に応じて添加される固着防止剤は、荒粉砕部、中粉砕部及び仕上げ粉砕部の上部に配置してある撹拌器に供給され、撹拌器内で粉砕ゴムと均一に撹拌されて上記荒粉砕部、中粉砕部及び仕上げ粉砕部にそれぞれ投入される。
固着防止剤は、充填材(炭酸カルシウム、アルミナ、酸化亜鉛等)や補強材(カーボンブラック、タルク、シリカなど)が適当である。固着防止剤の種類は、製造コスト、微粉砕ゴムの用途などを考慮して適宜選択される。
固着防止剤を添加することによって粉砕ゴムの表面がコーティングされ、粉砕ゴム同士が再び付着結合することが抑制され、分級機による分級(選別)が効率的にかつ容易となる利点がある。この種の利点を確保しながらも、固着防止剤の添加量が少ないことがコストダウンに寄与し、タイヤの原材料として再利用するのに好都合である。
【0018】
また、原料ゴムの粉砕方法は、上記の方法に限定されるものではなく、冷凍粉砕する方法、石臼式の粉砕方法、押出機による粉砕方法などを採用してもよい。冷凍粉砕する方法では、必要に応じて予めカッターミル等で細粉砕した後、液体窒素等を用いてゴムを冷凍(凍結)させた後に粉砕することが好ましい。
【0019】
本発明において、粉末ゴムの粒径は、80メッシュ以上であることが好ましい。ここで、80メッシュの粉末ゴムとは、ASTM D563−01(2008)に規定された80メッシュの篩を通過した粉末ゴムをいう。
粉末ゴムの粒径は、40〜80メッシュであることがより好ましく、50〜70メッシュであることが更に好ましい。
【0020】
粉末ゴムは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
粉末ゴムの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、3〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量部であり、更に好ましくは10〜20質量部である。
粉末ゴムの配合量が3質量部以上であると、再生ゴム添加による、ゴム組成物製造時のローター密着の発生が抑制され、良好な工場作業性が得られるので好ましい。また、粉末ゴムの配合量が40質量部以下であると、耐摩耗性が良好であるので好ましい。
【0021】
<加硫遅延剤>
本発明のゴム組成物は、加硫遅延剤を配合してなることが好ましい。
本発明で使用する加硫遅延剤は特に限定されいないが、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、N−ニトロソジフェニルアミン、N,N’,N’’−トリス(イソプロピルチオ)−N,N’,N’’−トリフェニルホスホリックトリアミド、N−シクロヘキシルチオフタルイミド、及びN−(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
これらの中でも、N−シクロヘキシルチオフタルイミドが好ましい。
【0022】
加硫遅延剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
加硫遅延剤は、加硫剤及び加硫促進剤と同一の混練段階で、すなわち、混練の最終段階で配合することが好ましい。
本発明のゴム組成物における加硫遅延剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.03〜3.0質量部であることが好ましく、0.1〜1.3質量部であることがより好ましく、0.3〜1.0質量部であることが更に好ましい。
ゴム成分100質量部に対する加硫遅延剤の配合量が上記範囲内であると、工場作業性が良好となる、つまり、ゴム焼けが生じにくくなるので好ましい。
【0023】
<加硫促進剤>
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を配合してなることが好ましい。
本発明のゴム組成物に用いられる加硫促進剤としては、グアニジン類、スルフェンアミド類及びチアゾール類が挙げられる。
グアニジン類としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩、1,3−ジ−o−クメニルグアニジン、1,3−ジ−o−ビフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−クメニル−2−プロピオニルグアニジン等が挙げられ、反応性が高いため1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン及び1−o−トリルビグアニドが好ましく、より反応性が高いため1,3−ジフェニルグアニジンがより好ましい。
【0024】
スルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−メチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−エチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−プロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−2−エチルヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジメチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジエチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジヘプチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジオクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジ−2−エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられ、反応性が高いためN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びN−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
チアゾール類としては2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4−メチル−2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−(4−メチル−2−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、2−メルカプト−ナフト[1,2−d]チアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられ、反応性が高いため2−メルカプトベンゾチアゾール及びジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0025】
加硫促進剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のゴム組成物における加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.3〜5.0質量部であることが好ましく、1.0〜4.0質量部であることがより好ましく、1.5〜3.5質量部であることが更に好ましい。
ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の配合量が上記範囲内であると、再生ゴムを配合した際にも弾性率を確保することができるため、好ましい。
【0026】
ゴム組成物中の加硫促進剤と加硫遅延剤との配合量の比(加硫促進剤/加硫遅延剤)は、0.1〜50であることが好ましく、0.5〜20であることがより好ましく、1〜5であることが更に好ましい。
加硫促進剤と加硫遅延剤との配合量の比(加硫促進剤/加硫遅延剤)が上記範囲内であると、弾性率確保と工場作業性(つまり、ゴム焼けが生じにくくなる)の両立化が可能である。
【0027】
<その他の成分>
本発明のゴム組成物には、上述した成分に加え、加硫剤、加硫促進助剤(但し、酸化亜鉛を除く)、充填剤、オイル、その他の配合剤を適宜配合してもよい。
加硫剤としては、硫黄が挙げられる。
加硫促進助剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、カプリル酸、エナント酸、カプロン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ネルボン酸等の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸、ロジン酸や変性ロジン酸等の樹脂酸を含む有機酸、並びに飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及び樹脂酸のエステル等が挙げられる。
また、充填剤としては、シリカ、及びカーボンブラックが挙げられる。
オイルとしては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマチック系オイル等が例示される。
【0028】
その他の配合剤としては、ゴム業界で通常使用されている配合剤を、本発明の目的を阻害しない限り、適宜配合することができる。具体的には、老化防止剤、軟化剤、滑剤等が例示される。
【0029】
<用途>
本発明のゴム組成物は、耐摩耗性に優れ、タイヤのトレッド部材として好適である。特に、トラック・バス用タイヤ、オフザロードタイヤ(建設車両用途、鉱山用車両用途)等の重荷重用空気入りタイヤのトレッド部材として好適である。
本発明のゴム組成物は、更生タイヤ(リトレッドタイヤ)のトレッド部材に好適であるが、新タイヤのタイヤトレッド部材に使用してもよい。
なお、更生タイヤ(リトレッドタイヤ)の製造において、摩耗して一次寿命を終えたタイヤ(以下、「台タイヤ」という。)のトレッド面をバフし、この上に、予め加硫された更生トレッドゴム部(=プレキュアトレッド)を貼りつける方法が代表的なものの1つとして知られている。この方法は、コールド(COLD)方式又はプレキュア方式等の名称で呼ばれている。その他の方法として、台タイヤに未加硫のトレッドゴムをのせてモールド加硫するホット(HOT)方式が挙げられる。
本発明のゴム組成物は、プレキュアトレッドとして特に好適である。
【0030】
[ゴム組成物の調製、タイヤ]
本発明のゴム組成物は、前記配合処方により、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られる。
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物をトレッドに用いることが好ましい。上述した本発明のゴム組成物は、十分な耐摩耗性を有しており、トレッド部材(接地トレッド部材)に好適に使用することが出来る。
本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが例示される。
【0031】
本発明のゴム組成物を新タイヤのトレッド部材として使用する場合には、前記のように各種成分を配合してなる本発明のゴム組成物が未加硫の段階で各部材に加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【0032】
また、本発明のゴム組成物を更生トレッドゴム部として貼り付ける場合には、本発明のゴム組成物を加硫成形して、タイヤ部材としてのプレキュアトレッドを得て、これを所定長さに裁断した後、被接着タイヤ部材(例えば、台タイヤ)にプレキュアトレッドを巻き付ける。プレキュアトレッドの巻き付けに際しては、台タイヤ等の被接着タイヤ部材の外周面にセメントを塗布してシート状のクッションゴムを貼付しておくか、又は押出機より直接被接着タイヤにシート状のクッションゴムを施しておくことが好ましい。かかる被接着タイヤに巻きつけられたプレキュアトレッドの先端と後端は、ゴムセメント又はクッションゴム等を介して接合される。
【0033】
なお、本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッド部材として好適であるが、これに限定されるものではなく、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム、ビードフィラー等に用いてもよい。
また、タイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、ベルト(コンベアベルト)、ゴムクローラ、各種ホース、モランなどに本発明のゴム組成物を使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
[ゴム組成物の配合成分]
各実施例及び比較例のゴム組成物に配合される成分は、以下の通りである。
・天然ゴム:TSR20
・SBR:乳化重合スチレンブタジエン共重合体ゴム、JSR株式会社製、商品名「JSR 1500」
・BR:ポリブタジエンゴム、JSR株式会社製、商品名「BR01」
・カーボンブラック:N234、東海カーボン株式会社製、商品名「シースト7HM」
・再生ゴム:リクレームゴム、村岡ゴム工業株式会社製
・粉末ゴム:株式会社新生ゴム製、商品名「P−50」を用いて、更に60メッシュ(ASTM D5603−01(2008))の篩を通過した粉末ゴム
・加硫遅延剤:N−シクロヘキシルチオフタルイミド、フレキシス製、商品名「SANTOGARDPVI・PDR・D」
・加硫促進剤:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーCZ」
・酸化亜鉛:ハクスイテック株式会社製、酸化亜鉛2種(BET比表面積6m
2/g)
【0036】
[評価]
以下の実施例及び比較例における評価は、以下のように行った。
(1)耐摩耗性
各加硫ゴム組成物のサンプルについて、ランボーン摩耗試験を行った。JIS K 6264−2:2005に規定されるランボーン摩耗試験の標準試験条件により、室温(23℃)にて耐摩耗性を評価した。
なお、評価については、比較例1−1、比較例2−1、比較例3−1、比較例4−1、又は比較例5−1の加硫ゴム組成物のサンプルの摩耗量の逆数を100とした場合の各摩耗量の逆数を指数として示し、数値が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0037】
(2)耐発熱性
各加硫ゴム組成物のサンプルに対し、スペクトロ粘弾性測定装置を使用し、引張粘弾性を測定した。温度23℃、初期歪(静歪)5%、動歪1%、周波数52Hzにて、損失正接(tanδ)を測定した
評価については、比較例1−1、比較例2−1、比較例3−1、比較例4−1、又は比較例5−1の加硫ゴム組成物のサンプルのtanδの逆数を100とした場合の、各加硫ゴム組成物のサンプルのtanδの逆数を指数として示し、指数値が大きいほど、耐発熱性が良好であることを示す。
【0038】
(3)耐テアー性
各ゴム組成物をトレッドゴムに適用した。サイズ:11R22.5の重荷重用タイヤを常法に従って試作し、耐テアー性を下記の方法で評価した。
得られたタイヤをトラックに装着し、10万km走行した後のタイヤに生じたテアーの総長さを測定し、比較例1−1、比較例2−1、比較例3−1、比較例4−1、又は比較例5−1のテアーの総長さを100としたときの指数で表した。指数の値が高いほど耐テアー性が良好であることを示す。具体的には、実施例1−1〜実施例1−4における耐テアー指数は、以下の通りであり、他の実施例についても比較の対照を比較例2−1〜比較例5−1に変更する以外は同様である。
耐テアー指数={(比較例1−1のテアー総長さ)/(各実施例のテアー総長さ)}×100
【0039】
(4)密着性
バンバリーミキサー下部での、未加硫ゴム組成物とローターとの密着性を以下の基準により評価した。評価点がA〜Cの順で、工場作業性(ローター密着性)が良好である。
A:ローター密着は全く発生せず、未加硫ゴム組成物の工場作業性は非常に良好であった。
B:軽度のローター密着が発生したが、未加硫ゴム組成物の工場作業性はほとんど低下しなかった。
C:重度のローター密着が発生し、未加硫ゴム組成物の工場作業性が大幅に低下した。
【0040】
(実施例1−1〜1−4及び比較例1−1)
表1に示す配合処方にて、バンバリーミキサーを用いて、上述したゴム組成物の配合成分を混練し、サンプルとなるゴム組成物を調製した。なお、混練の最終段階において、加硫剤である硫黄、加硫促進剤、及び加硫遅延剤を配合した。
得られたゴム組成物を、145℃にて30分間加硫し、加硫ゴム組成物を作製し、該加硫ゴム組成物を用いて、耐摩耗性及び耐発熱性を評価した。なお、比較例1−1の評価を100として評価した。
また、得られたゴム組成物を用いて重荷重用タイヤを作製し、比較例1−1を比較対照として耐テアー性を評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
(実施例2−1〜2−16及び比較例2−1)
表2、表3に示す配合処方にて、バンバリーミキサーを用いて、上述したゴム組成物の配合成分を混練し、サンプルとなるゴム組成物を調製した。
また、実施例1−1と同様にして、比較例2−1の評価を100として、耐摩耗性及び耐発熱性を評価した。また、実施例1−1と同様にして、比較例2−1を比較対照として、耐テアー性を評価した。更に、密着性を評価した。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
(実施例3−1〜3−4、並びに比較例3−1及び3−2)
表4に示す配合処方にて、バンバリーミキサーを用いて、上述したゴム組成物の配合成分を混練し、サンプルとなるゴム組成物を調製した。
また、実施例1−1と同様にして、比較例3−1の評価を100として、耐摩耗性及び耐発熱性を評価した。また、実施例1−1と同様にして、比較例3−1を比較対照として、耐テアー性を評価した。
【0046】
【表4】
【0047】
(実施例4−1〜4−2及び比較例4−1)
ゴム成分を表5に記載のように変更した以外は実施例2−1と同様にして、耐摩耗性、耐発熱性、耐テアー性、及び密着性を評価した。なお、比較対照は比較例4−1とした。
【0048】
【表5】
【0049】
(実施例5−1〜5−2及び比較例5−1)
ゴム成分を表6に記載のように変更した以外は実施例2−1と同様にして、耐摩耗性、耐発熱性、耐テアー性、及び密着性を評価した。なお、比較対照は比較例5−1とした。
【0050】
【表6】
【0051】
表1〜6の結果から、実施例の各サンプルは、耐摩耗性に優れることが示された。
一方、比較例のゴム組成物は、耐摩耗性に劣るものであった。
また、実施例2−2、2−5〜2−9の結果から、粉末ゴムを添加することにより、ゴム組成物の密着性が低減し、より作業性が向上することが分かった。
また、表5及び表6の結果から、ゴム成分として天然ゴムとブタジエンゴムとを併用した場合に、耐摩耗性、耐発熱性及び耐テアー性のいずれにも優れるゴム組成物が得られることが分かった。
更に、実施例2−2、2−10〜2−16の結果から、特定量の加硫遅延剤と加硫促進剤とを併用することによって、耐摩耗性、耐発熱性、耐テアー性により優れたゴム組成物が得られることが分かった。